説明

表面処理金属板

【課題】 優れた耐食性を有し、さらなる他の特性を有し得る皮膜を備えた表面処理金属板を提供すること。
【解決手段】 表面処理組成物から得られる皮膜を備えた表面処理金属板であって、前記表面処理組成物は、EDTA、DTPA、HEDP、EDTMP、NTAおよびHEDTA並びにそれらの塩よりなる群からから選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部含有する表面処理金属板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理金属板、より詳細には耐食性に優れたクロムフリーの表面処理金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品、建材に用いられる材料として、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、またはより一層の耐食性の向上を目的として該亜鉛めっき鋼板上にクロメート処理を施した無機系表面処理鋼板が多く用いられている。しかしながら近年の環境意識への高まりから、クロメート処理を施さない鋼板の需要が増大している。
【0003】
このようなクロメート処理に代わる耐食性向上の手段として、例えばタンニン酸を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1および2)。しかしながらこれらの方法では、充分な耐食性を得ることができなかった。
【0004】
そこで高分子量キレート剤を主成分とする皮膜を備えた表面処理鋼板が提案されている(特許文献3および4)。これらの文献では、皮膜の主成分として高分子量キレート剤を用いることが提案されており、これらと比較するために、低分子量キレート剤、例えばタンニン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が、不充分な耐食性しか示さない比較例として挙げられている。
【0005】
しかしながら特許文献3および4に記載されている皮膜の特性は、主成分である高分子量キレート剤の種類に依存するため、該皮膜に耐食性以外のさらなる特性を付与することが難しい。さらに特許文献4では、高分子量キレート剤を製造するために有機高分子マトリックスにキレート形成基を付与することが提案されているが、このようなキレート形成基を付与するための高分子反応は一般に手間がかかり、その結果として表面処理鋼板の製造コストが高くなる。
【特許文献1】特開昭51−71233号公報
【特許文献2】特開2001−89868号公報
【特許文献3】特開平11−158649号公報
【特許文献4】特開平11−166151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、優れた耐食性を有し、さらなる他の特性を有し得る皮膜を備えた表面処理金属板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明の表面処理金属板とは、表面処理組成物から得られる皮膜を備えた表面処理金属板であって、前記表面処理組成物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、N,N,N’,N’−テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン(EDTMP)、ニトリロ三酢酸(NTA)およびヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部含有することを特徴とする。
【0008】
前記キレート剤の中で好ましいものは、(1)Naイオンを含む塩形態、(2)Naイオンを含み、かつMg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む塩形態、(3)アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含む塩形態、あるいは(4)アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含み、かつNa、Mg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む塩形態のEDTA、DTPA、HEDP、EDTMP、NTAまたはHEDTAである。
【0009】
前記表面処理組成物としては、(1)オレフィン/アクリル酸共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル変性エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、並びにウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂から選ばれる1種またはそれ以上の有機樹脂を含有する有機系処理組成物、(2)珪酸ソーダ、リチウムシリケート、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、鱗片状シリカおよびアルミナゾルから選ばれる1種またはそれ以上の無機化合物と;1種またはそれ以上のアルコキシシランまたはその他の有機ケイ素化合物とを含有する無機系処理組成物、(3)前記の1種またはそれ以上の有機樹脂と;前記の1種またはそれ以上の無機化合物とを含有する有機・無機複合組成物、あるいは(4)前記有機・無機複合組成物中にさらに1種またはそれ以上のアルコキシシランまたはその他の有機ケイ素化合物を含有する有機・無機複合組成物が、好ましいものとして挙げられる。
【0010】
本発明の好ましい実施態様における前記皮膜の付着量は、乾燥質量で0.1〜2.5g/m2である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐食性に優れた表面処理金属板が得られる。殊に、EDTAやその塩のような低分子量キレート剤を少量(組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部)含有する表面処理組成物から形成される皮膜を備えた表面処理金属板が、優れた耐食性を示すことは驚くべきことである。なぜなら、従来このような低分子量キレート剤は、耐食性を向上させる効果が不充分であると考えられていたからである。
【0012】
また耐食性付与のために好ましいと考えられていた高分子量キレート剤を、有機樹脂などを含む表面処理組成物と混合すると、ゲル化などの不具合を生じ得るが、本発明で用いられるEDTAやその塩などの低分子量キレート剤は、その他の表面処理組成物成分との相溶性が良好でゲル化を生ずることがなく、表面処理金属板に良好な耐食性を付与することができる。
【0013】
さらに本発明によれば、表面処理組成物中において、EDTAやその塩のようなキレート剤以外の成分またはその組成を調整することにより、表面処理金属板の皮膜にさらなる好ましい特性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表面処理金属板は、金属板の少なくとも片面に、EDTA、DTPA、HEDP、EDTMP、NTAおよびHEDTA並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部含有する表面処理組成物から形成された皮膜を備えたものである。本発明において固形分とは、表面処理組成物を加熱乾燥することにより揮発成分(例えば水または有機溶剤など)が蒸発した後に皮膜として金属板上にとどまる固形残分をいう。よって固形分の中には、使用する表面処理組成物に応じて、樹脂(室温で固形状または液状のものを含む。)や無機固形物(例えばシリカ)などが含まれる。金属板は、特に限定されないが、例えば、亜鉛または亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム板、アルミ系合金板またはチタン板等を挙げることができる。
【0015】
本発明において用いられる低分子量キレート剤は、EDTA、DTPA、HEDP、EDTMP、NTAおよびHEDTA並びにそれらの塩であり、これらの中でも塩形態のキレート剤を用いることが好ましい。塩形態のキレート剤は、水性の表面処理組成物に溶解し得るからである。この点、本発明の表面処理組成物は、特に限定されるものではないが、本発明の好ましい実施態様では水性組成物が使用される。なぜなら水性組成物は、溶剤系組成物に比べて、環境にやさしく、環境衛生上および安全上(火災など)の問題が少なく、取扱いが容易だからである。
【0016】
本発明における塩形態のキレート剤とは、キレート剤中に含まれる複数の酸官能基の一部または全部が中和されたものをいう。従って、例えばEDTA塩は、4つのカルボキシル基中の1つだけがNaOHなどの塩基により中和されたもの(例えば一ナトリウム塩:EDTA・Na)から、全てのカルボキシル基がNaOHなどの塩基により中和されたもの(例えば四ナトリウム塩:EDTA・4Na)を包含する。さらに塩形態のキレート剤には、その複数の酸官能基の一部がNaOHなどにより中和され、他の酸官能基がアミンにより中和されたNa・アミン塩(例えばキレスト(株)製のキレストM−50:EDTA・2Na・アミン塩)などが含まれる。
【0017】
塩形態のキレート剤の中で好ましいものとしては、(1)Naイオンを含むもの(Na塩)、(2)Naイオンを含み、かつMg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含むもの(Na・他の金属の複合塩)、(3)アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含むもの(アミンまたはアンモニウム塩)、あるいは(4)アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含み、かつNa、Mg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含むもの(アミンまたはアンモニウム・金属の複合塩)が挙げられる。
【0018】
キレート剤は、例えばキレスト株式会社から市販されており、そのキレスト株式会社製のEDTA系のキレート剤として、キレストMg−40、キレストM−50、キレストODなど;DTPA系としてキレストP、キレストPS、キレストPC−45など;HEDP系としてキレストPH−212、キレストPH−214など;EDTMP系としてキレストHP−540など;NTAとしてキレスト70、キレストNTAなど;HEDTAとしてキレストHなどを例示することができる。
【0019】
ここで、EDTAやその塩のような低分子量キレート剤が耐食性の向上に寄与するメカニズムは必ずしも明確ではないが、例えば亜鉛系めっき鋼板の場合、これら低分子量キレート剤と、腐食環境下で溶出するZnイオンなどの金属イオンとが安定なキレート化合物を形成し、この安定なキレート化合物が腐食部分を覆うことなどにより、さらなる腐食を防ぐのではないかと考えられる。
【0020】
本発明の表面処理組成物中のEDTAやその塩等の低分子量キレート剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部である。低分子量キレート剤の含有量が0.1質量部未満であると、安定なキレート化合物の生成が不充分であり、耐食性も不充分となる。一方、低分子量のキレート剤が10質量部を超えても耐食性は低下傾向となる。多量の低分子量キレート剤を配合することで耐食性が低下し得る理由は明らかではないが、キレート剤と、表面処理組成物中に含まれ得る有機樹脂、架橋剤またはシランカップリング剤などが反応することにより、皮膜の造膜性に影響を及ぼすことなどが考えられる。該皮膜の造膜性や他の塗膜との密着性の観点から、より好ましいキレート剤含有量の上限は、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で5質量部であり、さらに好ましい上限は3質量部であり、より好ましいキレート剤含有量の下限は0.3質量部である。
【0021】
本発明の表面処理組成物は、前記の低分子量キレート剤に加えて、有機樹脂および/または無機化合物を含む。従って本発明では、耐食性に加えて皮膜に求められる特性に応じて、表面処理組成物中の有機樹脂および/または無機化合物の種類および含有量を調整することができる。
【0022】
本発明の1つの実施態様において表面処理組成物は、オレフィン/アクリル酸共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル変性エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、並びにウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂から選ばれる1種またはそれ以上の有機樹脂を含有する。これらの有機樹脂は、当業者に周知の方法で製造することができ、または市販品として入手することができる。これらの有機樹脂に対して、メラミン系、エポキシ系およびイソシアネート系などの市販の架橋剤を使用することができる。その含有量は、表面処理組成物の固形分100質量部中に、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部、さらに好ましくは5〜20質量部である。
【0023】
本発明の他の実施態様において表面処理組成物は、珪酸ソーダ、リチウムシリケート、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、鱗片状シリカおよびアルミナゾルから選ばれる1種またはそれ以上の無機化合物、および1種またはそれ以上のアルコキシシランまたはその他の有機ケイ素化合物を含有する。これらの無機化合物やアルコキシシランのような有機ケイ素化合物は、市販されている。これらの無機化合物の含有量は、表面処理組成物の固形分100質量部中に、好ましくは95〜50質量部、より好ましくは90〜60質量部、さらに好ましくは90〜80質量部であり、アルコキシシランのような有機ケイ素化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部中に、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは10〜20質量部である。
【0024】
本発明の表面処理組成物は、(1)前記の有機樹脂と無機化合物とを含有し、あるいは(2)前記の有機樹脂と無機化合物とアルコキシシランのような有機ケイ素化合物とを含有する有機・無機複合系のものであってよい。この場合における有機樹脂の含有量は、表面処理組成物の固形分100質量部中に、好ましくは95〜10質量部、より好ましくは80〜20質量部、さらに好ましくは80〜30質量部であり、無機化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部中に、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは20〜70質量部であり、アルコキシシランのような有機ケイ素化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部中に、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは10〜20質量部である。
【0025】
本発明の表面処理組成物は、前記の低分子量キレート剤および有機樹脂および/または無機化合物に加えて、本発明の目的を阻害しない範囲で、架橋剤、希釈剤、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、乳化剤、分散剤、造膜助剤、染料、顔料、増粘剤、および潤滑剤などを含有することができる。また表面処理金属板の皮膜に好ましい加工性や潤滑性を付与するため、表面処理組成物中に、平均粒子系0.1〜3μmの球形ポリエチレンワックスを、表面処理組成物の固形分100質量部中に0.5〜20質量部含有させることも有効である。
【0026】
本発明において、表面処理組成物の作製方法は特に限定されるものではないが、EDTAやその塩のような低分子量キレート剤を、有機樹脂および/または無機化合物、さらに必要に応じてシランカップリング剤、架橋剤および/またはワックスなどと所定量配合することにより、本発明の表面処理組成物を得ることができる。これらの成分の添加時は特に限定されるものではないが、シランカップリング剤や架橋剤の添加後は、架橋反応の進行によりゲル化することがない様、熱を極力かけないようにすることが望ましい。
【0027】
既知の塗布方法、例えばロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法などを用いて、表面処理組成物を金属板表面の片面または両面に塗布して加熱乾燥すると、金属板上に皮膜が形成される。また球形のポリエチレンワックスを用いる場合、該ワックスの球形を維持して後の加工工程における加工性を良好にするために、該ワックスの軟化点未満の温度、例えば70〜130℃の範囲で加熱乾燥を行うことが望ましい。
【0028】
皮膜の付着量は、乾燥質量で0.1〜2.5g/m2であることが好ましい。付着量が少なすぎると、金属板への均一塗工が難しく、また耐食性が低下する。一方、付着量が多すぎると耐食性は向上するが、多すぎる付着量は、加工時に皮膜が剥離して金型に堆積することなどによる加工性劣化の原因、また導電性劣化の原因となる。
【実施例】
【0029】
[評価方法]
(1)耐食性
得られた表面処理金属板(鋼板)について、塩水噴霧試験をJIS−Z2371に従って実施し、白錆が1%発生するまでの時間で評価した。
(表1の評価基準)
◎:120時間以上
○: 72時間以上〜120時間未満
△: 48時間以上〜 72時間未満
×: 48時間未満

(表2〜4の評価基準)
◎:168時間以上
○:120時間以上〜168時間未満
△: 72時間以上〜120時間未満
×: 72時間未満

(表5以降の評価基準)
◎:240時間以上
○:168時間以上〜240時間未満
△:120時間以上〜168時間未満
×:120時間未満
【0030】
(2)塗装性(塗膜密着性)
得られた表面処理金属板(鋼板)に、メラミンアルキッド系塗料(関西ペイント社製:アミラック#1000)を乾燥後の塗膜厚が約20μmになるようにスプレー塗装し、130℃で20分間焼き付けて後塗装を行った。続いて、この供試鋼板を沸騰水に1時間浸漬した後、取り出し、1時間放置した後にカッターナイフで1mm角の碁盤目を100升刻み、これにテープ剥離試験を実施して、塗膜の残存升目数により塗膜密着性を4段階で評価した。
(評価基準)
◎:残存率:100%
○:残存率: 90%以上〜100%未満
△:残存率: 80%以上〜 90%未満
×:残存率: 70%以上〜 80%未満
【0031】
(3)耐アルカリ脱脂性
液温60℃に調整したアルカリ脱脂剤(CL−N364S、日本パーカーライジング社製)20g/Lに、供試鋼板を2分間浸漬してから、引き上げ、水洗、乾燥した後、該供試鋼板をJISZ2371に準じて塩水噴霧試験を実施し、白錆が1%発生するまでの時間で評価した。
(評価基準)
◎:168時間以上
○: 96時間以上〜168時間未満
△: 48時間以上〜 96時間未満
×: 48時間未満
【0032】
[表面処理組成物の作製]
(1)有機系の表面処理組成物
製造例1
水分散ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製:スーパーフレックス150)95質量部と、ポリイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製:エラストロンBN77)5質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0033】
製造例2
水分散ウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂(大日本インキ化学工業社製:ボンコートHY−364)75質量部と、ブロック化イソシアネート(大日本インキ化学工業社製:ウオーターゾルHA−NS)25質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0034】
製造例3
水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製:ケミパールS−120)95質量部と、架橋剤としてグリシジル基含有化合物(大日本インキ化学工業社製:エピクロンCR5L)5質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0035】
製造例4
水性アクリル樹脂(中央理化学工業社製:リカボンドSA−513)90質量部と、架橋剤としてエポキシ樹脂(中央理化学工業社製:EX−8)10質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0036】
(2)無機系の表面処理組成物
製造例5
珪酸ソーダ3号(日本化学工業社製)60質量部と、コロイダルシリカ(日産化学社製:スノーテックス40)30質量部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM403)10質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0037】
製造例6
リチウムシリケート(日産化学社製:リチウムシリケート45)60質量部と、コロイダルシリカ(日産化学社製:スノーテックス40)20質量部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM403)20質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0038】
(3)有機・無機複合系の表面処理組成物
製造例7
水分散ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製:スーパーフレックス150)80質量部と、ポリイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製:エラストロンBN77)5質量部と、コロイダルシリカ(日産化学社製:スノーテックス40)15質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0039】
製造例8
水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製:ケミパールS−120)75質量部と、架橋剤としてグリシジル基含有化合物(大日本インキ化学工業社製:エピクロンCR5L)10質量部と、コロイダルシリカ(日産化学社製:スノーテックス40)15質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0040】
製造例9
コロイダルシリカ(日産化学社製:スノーテックス40)60質量部と、水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製:ケミパールS−120)30質量部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM403)10質量部とを純水中で混合し、固形分15質量%の表面処理組成物を作製した。
【0041】
[表面処理金属板(鋼板)の作製および評価結果]
(実施例1)
前記の製造例1〜6で得た表面処理組成物を、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例2)
前記の製造例7〜9で得た表面処理組成物を、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例3)
前記の製造例1〜6で得た表面処理組成物に、キレート剤含有量が表面処理組成物の固形分100質量部中に1質量部となるように各種キレート剤を添加し、これらを、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0046】
【表3】

【0047】
(実施例4)
前記の製造例7〜9で得た表面処理組成物に、キレート剤含有量が表面処理組成物の固形分100質量部中に1質量部となるように各種キレート剤を添加し、これらを、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0048】
【表4】

【0049】
(実施例5)
前記の製造例8で得た表面処理組成物に、キレート剤含有量が変化するように各種キレート剤を添加し、これらを、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0050】
【表5−1】

【0051】
【表5−2】

【0052】
(実施例6)
前記の製造例9で得た表面処理組成物に、キレート剤含有量が変化するように各種キレート剤を添加し、これらを、電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面にロール絞り装置で塗布し、板温100℃で1分間乾燥して、乾燥後の皮膜付着量が1g/m2である表面処理鋼板を作製した。
【0053】
【表6−1】

【0054】
【表6−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理組成物から得られる皮膜を備えた表面処理金属板であって、前記表面処理組成物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、N,N,N’,N’−テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン(EDTMP)、ニトリロ三酢酸(NTA)およびヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を、表面処理組成物の固形分100質量部中に占める比率で0.1〜10質量部含有することを特徴とする表面処理金属板。
【請求項2】
前記表面処理組成物は、Naイオンを含むEDTA塩、DTPA塩、HEDP塩、EDTMP塩、NTA塩およびHEDTA塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を含有するものである請求項1に記載の表面処理金属板。
【請求項3】
前記表面処理組成物は、Naイオンを含み、かつMg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含むEDTA塩、DTPA塩、HEDP塩、EDTMP塩、NTA塩およびHEDTA塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を含有するものである請求項1に記載の表面処理金属板。
【請求項4】
前記表面処理組成物は、アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含むEDTA塩、DTPA塩、HEDP塩、EDTMP塩、NTA塩およびHEDTA塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を含有するものである請求項1に記載の表面処理金属板。
【請求項5】
前記表面処理組成物は、アミンのイオンまたはアンモニウムイオンを含み、かつNa、Mg、Ca、Co、Zn、MnおよびFeイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含むEDTA塩、DTPA塩、HEDP塩、EDTMP塩、NTA塩およびHEDTA塩よりなる群から選ばれる1種またはそれ以上のキレート剤を含有するものである請求項1に記載の表面処理金属板。
【請求項6】
前記表面処理組成物は、オレフィン/アクリル酸共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル変性エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、並びにウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂から選ばれる1種またはそれ以上の有機樹脂を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
【請求項7】
前記表面処理組成物は、珪酸ソーダ、リチウムシリケート、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、鱗片状シリカおよびアルミナゾルから選ばれる1種またはそれ以上の無機化合物と;1種またはそれ以上のアルコキシシランまたはその他の有機ケイ素化合物とを含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
【請求項8】
前記表面処理組成物は、オレフィン/アクリル酸共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル変性エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、並びにウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂から選ばれる1種またはそれ以上の有機樹脂と;珪酸ソーダ、リチウムシリケート、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、鱗片状シリカおよびアルミナゾルから選ばれる1種またはそれ以上の無機化合物とを含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
【請求項9】
前記表面処理組成物は、オレフィン/アクリル酸共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル変性エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、並びにウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂から選ばれる1種またはそれ以上の有機樹脂と;珪酸ソーダ、リチウムシリケート、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、鱗片状シリカおよびアルミナゾルから選ばれる1種またはそれ以上の無機化合物と;1種またはそれ以上のアルコキシシランまたはその他の有機ケイ素化合物とを含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
【請求項10】
前記皮膜の付着量は、乾燥質量で0.1〜2.5g/m2である請求項1〜9のいずれかに記載の表面処理金属板。


【公開番号】特開2006−272768(P2006−272768A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95644(P2005−95644)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】