説明

表面弾性波フィルタ

開示されているのは、音響的に結合された電気音響変換器(11、12、13)でトラックを囲む帯域通過フィルタ(100)を含む電気フィルタである。さらに、フィルタは、少なくとも1つの電気音響直列素子(21、22)および少なくとも1つの電気音響並列素子(23、24)を備える帯域阻止フィルタ(200)を含む。帯域阻止フィルタの直列素子(21、22)は帯域通過フィルタの少なくとも1つの変換器(11、12)に連続的に接続される。帯域阻止フィルタの並列素子(23、24)は、帯域通過フィルタの少なくとも1つの変換器(11、12、13)に電気接続されるシャントアーム内に配置される。少なくとも1つの電気音響素子(21、22、23、24)の共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタ(100)の帯域の外側にある。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
表面弾性波フィルタは、特許文献1から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第5,521,453号明細書
【発明の概要】
【0003】
ある形態において、改善された隣接チャネル選択性および/または改善された遠隔チャネル選択性を有する、冒頭で引用される種類のフィルタが開示される。
【0004】
一実施形態において、電気フィルタは、音響的に結合した電気音響変換器を備えたトラックを含む帯域通過フィルタを有する。該フィルタは、少なくとも1つの電気音響直列素子、および少なくとも1つの電気音響並列素子を有する帯域阻止フィルタを含む。帯域阻止フィルタの直列素子は、帯域通過フィルタの少なくとも1つの変換器に直列に接続される。したがって、帯域阻止フィルタの直列素子は、フィルタ回路の直列分岐に配置される。帯域阻止フィルタは、少なくとも1つの電気音響並列素子が配置される少なくとも1つのシャントアームを含む。帯域阻止フィルタの少なくとも1つの電気音響素子において、共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の外側に位置する。
【0005】
帯域阻止フィルタという用語は、阻止帯域において信号の高減衰をもたらすフィルタを示す。阻止帯域のいずれかの側において、すなわち、より高い周波数、およびより低い周波数の側の隣接周波数領域において、帯域阻止フィルタは、阻止帯域に比べて広い、低減衰の通過帯域を有する。
【0006】
理想的には、阻止帯域よりも低い周波数、および高い全ての周波数は、低減衰で送信される。
【0007】
好適には、通過帯域は、移動通信システムにおいて、または他の無線送信および通信システムにおいて使用される少なくとも1つまたは複数の帯域に及ぶ。
【0008】
帯域阻止フィルタは、例えば、およそ3〜8%の、そして周波数によっては50%またはそれ以上にもなる相対帯域幅を持つ通過帯域を有し得る。
【0009】
開示されるフィルタは、好適には特にGHz帯域用の高周波数フィルタの形で実装される。それは、通過帯域における低挿入損により特徴づけられる。帯域阻止フィルタの設計次第で、帯域通過フィルタの隣接チャネル選択性または遠隔チャネル選択性を改善することが可能である。
【0010】
ある一つの変形形態において、開示されたフィルタは送信フィルタの形態で実装される。この場合、帯域阻止フィルタは、送信路において受信された信号を抑制するだろう。この抑制は、送信フィルタの通過帯域よりも高い周波数にある阻止帯域において改善される。また別の変形形態においては、開示されるフィルタは、受信フィルタの形態で実装される。この場合、帯域阻止フィルタは、受信路において送信された信号を抑制するだろう。この抑制は、送信フィルタの通過帯域よりも低い周波数にある阻止帯域において改善される。
【0011】
また、帯域阻止フィルタは、相互変調積および帯域雑音を抑制するためにも、とりわけ有利である。
【0012】
帯域阻止フィルタにより、妨害信号を少なくとも50dB抑制することができる。帯域阻止フィルタによりもたらされる挿入損の増加は0.2dBを下回る。
【0013】
様々な公知のノッチフィルタと、小さな阻止帯域幅を有する帯域阻止フィルタとは、本質的にインピーダンス素子の相互接続に基づくものである。インピーダンス素子のそのような相互接続は、例えば、この場合に直列または並列分岐に配置されるSAW共振器を有するはしご型配置から構成され得る。適正な帯域幅を有する通過帯域は、整合する回路網によって実現できる。ある有利な変形形態において、直列素子は、直列変換器として下記に示される少なくとも1つのSAW変換器を含む。ある有利な変形形態において、並列素子は、並列変換器として下記に示される、少なくとも1つのSAW変換器を含む。SAWは、表面弾性波、すなわち弾性表面波を意味する。
【0014】
SAW変換器は、第1および第2のフィンガが配置されている音響トラックを含む。フィンガは、トラック方向に対して垂直に伸びる金属片の形態で実装される。第1のフィンガは第1の母線に接続され、第2のフィンガは第2の母線に接続される。第1および第2のフィンガは好適には交互に配置される。
【0015】
原則的に、フィンガは個別の変換器の少なくとも中央領域に周期的ピッチで配置される。フィンガ間隔は、連続して配置されたフィンガの中心間で測定される。フィンガ間隔は、特に変換器の端領域において、周期的ピッチからずれることがある。
【0016】
個別のインピーダンス素子の周波数を定めるインターディジタル型変換器のフィンガ周期の比率は、SAWインターディジタル型変換器に基づく帯域阻止フィルタの阻止効果に決め手となる。この場合、少なくとも1つの直列素子のインターディジタル型変換器における平均フィンガ周期は、1または複数の電気音響並列素子のインターディジタル型変換器における平均フィンガ周期よりも大きい。結果として、フィンガ周期に相当する並列素子のインターディジタル型変換器における中心周波数または共振周波数は、直列素子の中心周波数または共振周波数よりも高い。直列素子のインターディジタル型変換器のフィンガ周期Psと、並列素子のインターディジタル型変換器のフィンガ周期Ppとの間の好適な比率は、1.03ないし1.10であり、その場合は、中心周波数または共振周波数の比率にも相当する。
【0017】
好適には、SAW変換器はSAW共振器の一部を形成する。ある変形形態において、SAW共振器は、変換器と、変換器がその間に配置された2つの反射器から構成される。別の変形形態において、SAW共振器は、音響的に互いに結合された、少なくとも2つの隣接配置された変換器を有する変換器配置を含む。この変換器配置は、2つの反射器の間に配置される。SAW共振器は、DMSトラックを含んでもよい。DMSとは、二重モード表面弾性波を意味する。
【0018】
ある有利な変形形態において、直列素子は少なくとも1つのBAW共振器を含む。ある変形形態において、並列素子は少なくとも1つのBAW共振器を含む。BAWとは、バルク音波、すなわち音響バルク波を意味する。
【0019】
並列素子の共振周波数は、直列素子の共振周波数よりも好適には高いという一般的なルールは、BAW共振器に基づく電気音響的直列素子および/または並列素子を有する帯域阻止フィルタにもまた適合する。
【0020】
記述されたフィルタは、SAW変換器を特徴とするが、該記述はBAW構成にもまた同様にあてはまる。この点において、SAW変換器はBAW共振器に置き換えられる。音響的に結合された変換器またはインライン配置の変換器を含む音響トラックの記述は、妥当な場合に、交互に配置され、かつ音響的に結合したBAW共振器を有する共振器積層体に対してもまた、同様に適合する。
【0021】
原則として、上述の表面弾性波帯域通過フィルタは、バルク音波フィルタ(BAWフィルタ)に置き換えられ得る。好適には、BAWフィルタは、互いに音響的に結合するBAW共振器を含む。別の変形形態において、BAWフィルタは、はしご型配列中で相互接続されたBAW共振器を含む。はしご型配列は、信号路に配置されている直列共振器と、シャントアームに配置されている並列共振器とを含む。
【0022】
フィルタの有利な実施形態は、以下に記述される。
【0023】
ある変形形態において、直列素子および並列素子は互いに導電的に接続される。この場合、帯域阻止フィルタは帯域通過フィルタの上流または下流に接続され得る。
【0024】
別の変形形態において、直列素子は入力側の信号路に配置されるのに対し、並列素子を有するシャントアームは、好適には入力側の信号路から電気的に絶縁した出力側の信号路に接続される。入力側と出力側は、入れ替えが可能である。この場合、帯域通過フィルタは、帯域阻止フィルタの直列素子と並列素子との間に配置される。
【0025】
ある実施形態において、直列素子、および並列素子の共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の外側にある。
【0026】
ある変形形態において、帯域阻止フィルタの両方の素子の共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の上方にある。この場合、帯域阻止フィルタの直列変換器および並列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタの各平均フィンガ間隔よりも小さい。
【0027】
帯域通過フィルタの平均フィンガ間隔は、音響トラックの長さと、このトラックにおけるフィンガの数との比率として定義される。音響トラックの長さは、端に位置するフィンガの外向きの縁間で測定される。
【0028】
別の変形形態において、帯域阻止フィルタの直列素子の共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域内にあるのに対し、その反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の上方にある。帯域阻止フィルタの並列素子の共振周波数および反共振周波数もまた、帯域通過フィルタの通過帯域の上方にある。直列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタのものと基本的に同一である。並列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタのそれよりも小さい。
【0029】
別の変形形態において、帯域阻止フィルタの両方の素子の共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の下方にある。この場合、帯域阻止フィルタの直列変換器および並列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタのそれよりも大きい。
【0030】
また別の変形形態において、帯域阻止フィルタの直列素子の共振周波数および反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域の下方にあるのに対し、帯域阻止フィルタの並列素子の反共振周波数は、帯域通過フィルタの通過帯域内にある。この場合、並列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタのものと基本的に同一である。直列変換器の平均フィンガ間隔は、帯域通過フィルタのものよりも大きい。
【0031】
フィルタは、ある変形形態において対称的に(平衡状態に)実装される第1の電気ポートを特徴とする。この場合、フィルタは、平衡信号の経路設定のために設計された第1の信号路と第2の信号路とを含む。
【0032】
フィルタは、ある変形形態において対称的に(平衡状態に)実装される第2の電気ポートを特徴とする。これは、フィルタが、入力側と出力側とで対称的になるように配線されることを意味する。
【0033】
別の変形形態において、第2のポートは非対称的に(シングルエンドで)実装される。この場合、フィルタは平衡不平衡変成器を示す。別の変形形態において、フィルタの両方のポートは、非対称的に実装される。
【0034】
帯域通過フィルタの変換器は、フィルタの入力路に接続される少なくとも1つの入力変換器と、フィルタの出力路に接続される少なくとも1つの出力変換器とを含む。
【0035】
帯域通過フィルタは、音響トラック内に配置される変換器配列を特徴とし、好適には互いに音響的に結合し隣接して配置された少なくとも3つの変換器を含む。好適には、各変換器は接地される。帯域通過フィルタの音響トラックの2つの側面は、2つの音響反射器により境界が定められる。好適には帯域通過フィルタはDMSフィルタの形態で実装される。
【0036】
ある有利な変形形態において、帯域通過フィルタの変換器配列は、3つ以上の変換器、特に入力変換器と出力変換器とを含む。少なくとも2つの入力または出力変換器は並列に、かつ信号路に接続され得る。
【0037】
ある変形形態において、帯域阻止フィルタの第1の直列素子および帯域通過フィルタの第1の変換器からなる直列回路は、第1の信号路内に配置される。帯域阻止フィルタの第2の直列素子および帯域通過フィルタの第2の変換器からなる直列回路は、第2の信号路内に配置される。
【0038】
ある変形形態において、帯域阻止フィルタは第1の並列素子および第2の並列素子を含む。第1および第2の並列素子の直列回路は、シャントアーム内に配置される。並列素子は、導電的接続で互いに接続される。その接続は、フローティング状態、または接地状態でもよい。
【0039】
ある実施形態において、帯域阻止フィルタは、帯域阻止フィルタの少なくとも2つの素子を含む、変換器のインライン配列を特徴とする。この場合、帯域阻止フィルタの各素子は変換器の形態で実装される。
【0040】
ある変形形態において、インライン配列は帯域阻止フィルタの第1および第2の直列素子を含む。別の変形形態において、インライン配列は帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子を含む。
【0041】
また別の変形形態において、インライン配列は帯域阻止フィルタの第1および第2の並列素子を含む。ある変形形態において、第1および第2の並列素子は、妥当な場合には、互いに導電的に接続、かつ接地される。
【0042】
インライン配列の形態で配置される帯域阻止フィルタの素子(変換器)は、好適には互いに隣接して配置され、かつ互いに音響的に結合する。
【0043】
インライン配列は、帯域阻止フィルタの第1および第2の直列素子を含む多重ポート共振器の形態で実装可能である。インライン配列は、帯域阻止フィルタの第1および第2の並列素子を含む多重ポート共振器の形態で実装可能である。一般に、多重ポート共振器という用語は、音波の伝播方向に互いに隣接して配置され、かつ2N極を形成する、N個の変換器を有する音響トラックを示す。Nは2以上の自然数である。
【0044】
N個の別々の共振器と比べると、1つのトラック内にN個の変換器を有する多重ポート共振器は、特に省スペースの解決策を提供する。多重ポート共振器により、損失を低減することが可能となる。
【0045】
多重ポート共振器の個々の変換器は、音響的に結合し、かつフィルタ回路のシャントアーム内のみならず直列分岐内にも配置され得る。2つの共振器または変換器の音響的結合により、全体として、フィルタの伝達関数における極またはゼロ点を追加生成することが可能になる。これは、所定の周波数で目標とする抑制用に使用可能である。
【0046】
インライン配列は、変換器間に配置される中間反射器を特徴とし得る。ある変形形態において、中間反射器は音響的に一部透過性を有する。
【0047】
別の変形形態において、音響反射器は音響的に不透過性を示す。この場合、インライン配列は、1つの共通の反射器を有し、互いに音響的に分離されている2つの共振器を含む。この設計は、とりわけ省スペースである。
【0048】
帯域阻止フィルタは、いくつかのインライン配列または多重ポート共振器を特徴とし得る。第1のインライン配列は好適には2つの直列素子を含み、第2のインライン配列は帯域阻止フィルタの2つの並列素子を含む。
【0049】
フィルタは、帯域通過フィルタの第3の変換器が配置される第3の信号路を特徴とする。好適には、第3の信号路は不平衡で(シングルエンドで)、第1および第2の信号路から電気的に絶縁される。第3の信号路は入力路を形成し、第1および第2の信号路は出力路を形成し、その逆もまた同様である。
【0050】
ある変形形態において、シャントアームは第1の信号路と第2の信号路とを接続する。また、シャントアームは信号路の1つ、例えば第3の信号路を接地してもよい。
【0051】
ある変形形態において、帯域通過フィルタの直列素子および第3の変換器の直列回路は、第3の信号路内に配置される。
【0052】
ある変形形態において、帯域阻止フィルタは、別の電気音響的並列素子または並列素子の直列回路が配置される、少なくとも1つの他のシャントアームを含む。
【0053】
ある実施形態において、帯域通過フィルタの第1および第2の変換器は並列に、かつ共通の信号路に接続される。ある変形形態において、並列素子を有するシャントアームは、共通信号路に接続される。ある変形形態において、直列素子は共通信号路内に配置される。あるいは帯域阻止フィルタの直列素子は、第3の信号路に配置され得る。
【0054】
ある変形形態において、共通信号路は第3の信号路から電気的に絶縁され、(第1および第2の信号路のかわりに)出力路を形成する。
【0055】
ある有利な変形形態において、直列素子およびシャントアーム内の少なくとも1つの並列素子は、共通の音響トラック内に配置される。直列素子および少なくとも1つの並列素子は、互いに音響的に結合する。
【0056】
開示されたフィルタは、真の縮尺ではない概略図を参照して下記に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図1B】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図1C】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図1D】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図1E】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図1F】開示されたフィルタに使用される帯域通過フィルタを示す図である。
【図2A】等価回路を示す図である。
【図2B】等価回路を示す図である。
【図2C】等価回路を示す図である。
【図3】帯域阻止フィルタが、2つの直列素子と、直列に接続された2つの並列素子を有するシャントアームとを含む、フィルタを示す図である。
【図4】帯域阻止フィルタが、2つの直列素子と、1つの並列素子を有するシャントアームとを含む、フィルタを示す図である。
【図5】帯域阻止フィルタが、2つの直列素子と、1つの並列素子をそれぞれ備える2つのシャントアームとを含む、フィルタを示す図である。
【図5A】4つの共振器のブリッジ回路を特徴とする帯域阻止フィルタを有する、フィルタを示す図である。
【図6】帯域阻止フィルタが、出力側に接続された2つの直列素子と、入力側に接続された1つの並列素子とを含む、フィルタを示す図である。
【図7】直列素子が互いに音響的に結合した、図6に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図7A】直列素子が互いに音響的に結合した、図6に係るフィルタの別の変形形態を示す図である。
【図8】互いに音響的に結合した2つの直列素子と、直列に接続した2つの並列素子を持つ1つのシャントアームとを有する、フィルタを示す図である。
【図8A】表面弾性波多重ポート共振器を特徴とする帯域阻止フィルタを有する、図8に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図8B】2つの音響変換器を含み、それぞれは互いに音響的に結合した同一の変換器である帯域阻止フィルタを有する、図8に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図8C】並列素子に音響的に結合した直列素子を有する、図8に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図9】帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子が、L素子を形成する、フィルタを示す図である。
【図10】帯域阻止フィルタが、音響トラック内に配置される直列素子と、並列素子とを有する多重ポート共振器を含む、フィルタを示す図である。
【図11】両側で不平衡に接地配線されたフィルタであって、帯域阻止フィルタの直列素子が出力路内に配置され、並列素子が入力路内に配置された、フィルタを示す図である。
【図12】両側で不平衡に接地配線されるフィルタであって、帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子が、互いに音響的に結合された、フィルタを示す図である。
【図12A】帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子が、音響トラック内に配置された、図12に係るフィルタを示す図である。
【図13】帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子が、互いに音響的に結合した、平衡不平衡変成器型のフィルタを示す図である。
【図13A】帯域阻止フィルタの直列素子および並列素子が、音響トラック内に配置された、図13に係るフィルタを示す図である。
【図14】両側部で不平衡に接地配線される、図9に係るフィルタを示す図である。
【図15】並列素子が、共振器積層体内に実装された、図3に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図15A】並列素子が、中間反射器を有するインライン配列内に実装された、図3に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図16】並列素子が、共振器積層体内に実装された、図6に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図16A】並列素子が、中間反射器を有するインライン配列内で実装された、図6に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図17】直列素子および並列素子が、それぞれ中間反射器を用いてインライン配列内で実装された、図3に係るフィルタの変形形態を示す図である。
【図18A】帯域阻止フィルタを有するフィルタ、および帯域阻止フィルタを有しないフィルタに対する伝達関数を示す図である。
【図18B】帯域阻止フィルタを有するフィルタに対する伝達関数ならびに帯域阻止フィルタの直列素子と並列素子とのコンダクタンスYの合計の周波数レスポンスを示す図である。
【図19A】帯域阻止フィルタを有するフィルタおよび帯域阻止フィルタを有しないフィルタに対する伝達関数を示す図である。
【図19B】帯域阻止フィルタを有するフィルタに対する伝達関数ならびに帯域阻止フィルタの直列素子と並列素子とのコンダクタンスYの合計の周波数レスポンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1Aは、長手方向に音響的に結合された変換器52、61、62を有し、DMSフィルタの形態で実装された、典型的な帯域通過フィルタ100を示す。帯域通過フィルタ100は、両側で音響反射器31、32により境界が定められた音響トラックを含む。2つの出力変換器61、62と、それらの出力変換器間に配置された1つの入力変換器52とを含む変換器配列が、トラック内に配置される。
【0059】
入力変換器52は、(不平衡の)入力路に接続される。第1の出力変換器61は第1の出力路に接続され、第2の出力変換器62は第2の出力路に接続される。
【0060】
DMSフィルタは、第1および第2の出力路が共同で平衡信号路を形成する平衡不平衡変成器として動作し得る。
【0061】
しかし、出力変換器61、62は、互いにかつ共通の(不平衡の)信号路に導電的に接続され得る。これは、2つの不平衡ポートを有するDMSフィルタに相当する。
【0062】
いくつかの入力変換器といくつかの出力変換器がある場合には、少なくとも1つの第1の入力変換器は第1の代替パスに接続され得、少なくとも1つの第2の入力変換器は平衡入力路の第2の代替パスに接続され得る。その際、少なくとも1つの第1の出力変換器は第1の代替パスに接続され、少なくとも1つの第2の出力変換器は平衡出力路の第2の代替パスに接続される。これは、2つの平衡ポートを有するDMSフィルタに該当する。
【0063】
各変換器は、互いに係合する電極フィンガを有する2つのくし状電極を特徴とする。音波は、異なる電位に接続される2つのフィンガの間で励起される。音波は音響トラックの長手方向に伝播する。入力および出力変換器は長手方向に音響結合される。入力変換器52内で刺激された音波は、出力変換器61、62内で電気信号を励起する。
【0064】
図1Bは、帯域通過フィルタを実装するための別の変形形態を示す。ここでは、変換器配列は、並列に接続された3つの入力変換器51、52、53を特徴とする。
【0065】
図1Aにおいて、入力変換器52は、2つの出力変換器61、62の間に配置される。逆に、出力変換器を2つの入力変換器の間に配置してもよい。入力および出力変換器は、好適には交互に連続して配置される。ある変形形態において、例えば図1Cおよび図1D中の中央の出力変換器62のような、入力または出力変換器のうちの1つは、V分割によって連続的に配置される部分変換器62aと62bとに分割される。部分変換器62aと62bとは、好適には共通母線99により互いに導電的に接続される。
【0066】
1つの入力変換器のみを備える代わりに、原則的には、少なくとも2つの入力変換器からなる並列回路を使用することも可能であろう。1つの出力変換器のみを備える代わりに、原則的には、少なくとも2つの出力変換器からなる並列回路を使用することもまた可能であろう。
【0067】
図1Cに示される変形形態において、2つの入力変換器51、52は、並列に、かつ入力ポートの入力端子に接続される。部分変換器62aは、第1の出力変換器61および出力ポートの第1の出力端子に導電的に接続される。部分変換器62bは、第2の出力変換器62、および出力ポートの第2の出力端子に導電的に接続される。
【0068】
中央の出力変換器62の2つの部分変換器62a、62bを接続する共通母線99は、フローティングの態様で実装されてもよく、また接地されてもよい。図1Dに示される変形形態に従って、母線99の接地接続は、母線99と、入力変換器51および/または52のシャーシの接地バスとの間の導電接続の形態で実装することができる。この導電接続は、変換器51、62aおよび62b、52の接地電極の延伸フィンガによって生成され、音響トラックを貫通する。
【0069】
帯域通過フィルタ100は、図1Eに示されるとおり、互いに導電的に接続される2つのDMSフィルタを特徴とし得る。2つのDMSトラックの入力変換器52、53は、互いに、かつ帯域通過フィルタの入力端子に導電的に接続される。第1のDMSフィルタの出力変換器61、62は、互いに、かつ帯域通過フィルタの第1の出力端子に導電的に接続される。第2のDMSフィルタの出力変換器63、64は、互いに、かつ帯域通過フィルタの第2の出力端子に導電的に接続される。
【0070】
図1Eに示される2つのDMSフィルタはインライン配列を形成する。反射器32、33は、両方のDMSフィルタに対し1台の共有反射器に置き換えることができる。図1Fは、帯域通過フィルタ100の別の実施形態を示す。この場合、帯域通過フィルタは、互いに結合され、かつそれぞれにDMSトラックの形態で実装される2つの音響トラックを特徴とする。
【0071】
第1のDMSトラックの各出力変換器62a、62b、66、67は、第2のDMSトラックの入力変換器55a、55b、58、59のうちのいずれか1つに直列に接続される。(変換器66から変換器58に、変換器62aから変換器55aに、変換器62bから変換器55bに、変換器67から変換器59に)これらの変換器は、両方のDMSトラックを音響的に結合するための結合変換器を表す。
【0072】
第1のDMSトラックの入力変換器51、52は、互いに、かつ帯域通過フィルタの入力端子に導電的に接続される。第2のDMSフィルタの第1の出力変換器68は、帯域通過フィルタの第1の出力端子に接続される。第2のDMSフィルタの第2の出力変換器69は、帯域通過フィルタの第2の出力端子に接続される。
【0073】
下記フィルタの実施形態において、図1Aに係る帯域通過フィルタ100は、図1B〜1Fのうちのいずれか1つに係る変形形態、または、同様に設計された帯域通過フィルタに置き換えることができる。入力および出力の変換器の数量は、示されている変形形態に限定されない。
【0074】
図2A、2B、2Cは、下記図中の帯域阻止フィルタ200の直列素子21、22および/または並列素子23、24として使用されている、音響共振器(右図)用の等価回路記号(左図)を示す。図2A、2Bは音響1ポート共振器を示し、図2Cは音響2ポート共振器を示す。
【0075】
表面弾性波共振器は、少なくとも1つのSAW変換器71、72を特徴とする変換器配列を有する音響トラックを含む。変換器配列は、音響トラックの両側の境界を定める2つの反射器31、32の間に配置される。変換器配列と反射器は、共同でインライン配列を形成する。インライン配列は、音響的に一部透過性があり、かつ変換器配列(図2C、15A、16A、17参照)の中の2つの変換器71、72の間に配置される、中間反射器35、または36を含んでもよい。
【0076】
別の変形形態において、表面弾性波共振器は、変換器71、72に加えて音響的に不透過性の中間反射器35を特徴とするインライン配列を含む。変換器71と反射器31、35とは共同で第1の共振器を形成し、変換器72と反射器35、32とは別個の第2の共振器を形成する。この場合、両方の音響的に分離した共振器は、共通の反射器を有する。
【0077】
インライン配列のSAW変換器は、図2Bに示されるとおり、互いに導電的に接続され得る。この形式の接続は、共通の母線により生成可能である。しかし、N個の変換器を有する共振器は、図2Cに示されるとおり、2N極の様にもまた接続され得る。Nは、2以上の自然数である。
【0078】
バルク音波共振器は、少なくとも1つのBAW共振器を有する共振器積層体を含む。各BAW共振器は2つの電極81、83、85、87と、該電極の間に配置された圧電層82、84を含む。交互に配置されるBAW共振器801、802は、図2B中の電極83の様な共通の電極を特徴とし得る。別の変形形態において、好適には音響的に一部透過性のある結合層86が、BAW共振器801と802との間に配置される。しかし、この結合層86はまた、不透過性の音響鏡に置き換えることもできる。
【0079】
BAW共振器801、802はSAW変換器71、72に相当する。結合層86は、音響的に一部透過性を有し、また結合素子としても好適な中間反射器35に相当する。一体型の、同一の音響トラックに配置される、2つの隣接するSAW変換器間の長手方向の音響的結合は、一体型の、同一の共振器積層体内に実装される2つのBAW共振器間の垂直方向の音響的結合に相当する。これが、実施形態においてSAW共振器がBAW共振器に置き換えられ得る理由であり、その逆も同様である。したがって、N個の結合した変換器を有するSAW共振器は、N個の結合したBAW共振器を有する共振器積層体に置き換えることができる。
【0080】
帯域通過フィルタ100と帯域阻止フィルタ200とを有するフィルタの異なる実施形態が、図3以下に示される。帯域通過フィルタ100は、第1の変換器11、第2の変換器12および第3の変換器13を含む。
【0081】
帯域阻止フィルタ200は、第1の直列素子21、第2の直列素子22、第1の並列素子23および第2の並列素子24を含む。
【0082】
変換器11、12は出力変換器として機能し、変換器13は入力変換器として機能する。変換器13は入力路内に配置される。変換器11、12は、それぞれ第1および第2の出力路内に配置されるか(図3、4、5、5A、6、7、7A、8、8A、8B、8C、9、10、13、13A、15、15A、16、16A、17)または並列に、かつ共通(シングルエンド)の出力路に接続される(図11、12、12A、14)。DMSトラックの第3の変換器13に接続される信号路は、図において入力路として示される。入力側と出力側ともまた、入れ替えることができる。
【0083】
前述の変形形態において、入力路はシングルエンド型で実装される。相応数の入力変換器が与えられ、かつそれに応じて配線されれば、入力路も出力路と同様に、平衡型で実装可能である。
【0084】
図3は、第1のフィルタを示す。第1の変換器11および第1の直列素子21の直列回路は、第1の出力路内に配置される。第2の変換器12および第2の直列素子22の直列回路は、第2の出力路内に配置される。第1および第2の出力路は、共同で平衡信号路を形成する。直列素子21、22は音響共振器の形態で実装され、かつ互いに音響的に分離される。これは図4、5、5A、6、14、15Aにもまた適合する。
【0085】
シャントアームは、2つの出力路の間に配置される。帯域阻止フィルタの第1および第2の並列素子23、24の直列回路は、シャントアーム内に配置される。並列素子23、24は、互いに音響的に分離され、かつ互いに導電的に接続される音響共振器として構成される。これは図5A、8、8Aにもまた適合する。
【0086】
一方が他方の後ろに接続された2つの並列素子23、24は、接地接続してもよい。しかしながら、並列素子23、24の間の電気接続はフローティング態様のままでもよい。これらのことは図8、8A、8B、10、15、15A、16Aにもまた該当する。
【0087】
図4に係る変形形態において、第1および第2の並列素子23、24の直列回路の代わりに、1個の並列素子23のみが設けられる。図5に係る変形形態において、第1の並列素子23を有する第1のシャントアームに加えて、第2の並列素子24を有する第2のシャントアームが設けられる。
【0088】
図3、図4および図5に係る変形形態において、帯域阻止フィルタ200の直列および並列素子は、平衡信号路の出力側に音響共振器のはしご型配列を形成する。一方、図9および14に示されるとおり、シングルエンド入力路内に配置されるはしご型配列は、直列分岐内に配置される直列素子21と、シャントアーム内に配置される接地並列素子23とを含有し得る。
【0089】
図9および図14において、互いに音響的に分離された帯域阻止素子21、23は、単純なはしご型素子(L素子)を形成する。結合された帯域阻止素子21、23を有する変形形態は、図13、13Aに示される。原則的には、図9に相当する図14に係るフィルタは、非対称(すなわち、シングルエンド/シングルエンド)の動作用である。
【0090】
図5Aは、図5に示される実施形態の代替例を示す。音響共振器のはしご型配列は、共振器の格子型配置、すなわちブリッジ回路に置換されてもよい。
【0091】
帯域通過フィルタ100は、図6、7、7A、11、16、16Aに示されるとおり、帯域阻止フィルタ200の直列素子と並列素子との間に配置されうる。この場合、並列素子23、24を有するシャントアームは、入力路および入力変換器13に接続される。図6、7、7A、16、16Aにおいて、直列素子21、22は、図3、4、5と同様に、平衡出力路の直列分岐内に配置される。
【0092】
平衡信号路は、第1および第2の部分路を特徴とする。それらの部分路における信号振幅は、好適には少なくとも1つの周波数範囲内で根本的に同一であり、部分路間の位相差は180°である。
【0093】
図11において、帯域阻止フィルタの直列素子21は、両方の出力変換器11、12が接続されるシングルエンドの出力路内に配置される。原則的には図11に係るフィルタは、図6に係るフィルタに相当するものであるが、非対称(すなわち、シングルエンド/シングルエンド)の動作用に設計されている。
【0094】
図7、7A、8、8A、8Bに係る変形形態において、帯域阻止フィルタ200の直列素子21、22は、互いに音響的に結合されるが、異なる出力路内に配置される。
【0095】
図7Aにおいて、並列素子23は、1ポート共振器の形態で実装される。結合した直列素子21、22は、音響トラック内に互いに隣接して配置される変換器の形態で実装される。音響トラックは、音響反射器33、34により境界が定められ、四重極を表す2ポート共振器の形態で実装される。
【0096】
図8Aに係る変形形態におけるシャントアームは、図3に示される変形形態に関連してすでに記述された。図8、8Aに係るフィルタは、それぞれ図3に示されるフィルタの変形形態を示し、図3とは異なり、直列素子21、22は互いに音響的に結合される。このことは図6、7、7Aにもまた該当する。
【0097】
図8Bに係る変形形態において、帯域阻止フィルタ200の並列素子23、24もまた、互いに音響的に結合される。それらは、直列に接続し、音響的に結合した部分共振器を有する2ポート共振器または1ポート共振器中に実装される。
【0098】
図8Cは、図8に係るフィルタの更なる変形形態を示し、帯域阻止フィルタ全体は1つのトラック内に実装される。シャントアーム内に配列された直列素子21、22および並列素子23、24は、この場合、共通の音響トラック内に配置される。直列素子21、22および並列素子23、24は音響的に互いに結合される。
【0099】
並列素子23、24は互いに隣接して配置され、かつ直列に接続される。好適には、並列素子23、24は変換器の部分変換器の形態で実装され、かつ片側で、共通の母線に接続される。2つの並列素子が互いに電気的に接続した電気ノードは、示される変形形態において、接地される。このノードまたは共通の母線もまた、フローティング態様で実装されてもよい。図15、15A、16、16A、17は、帯域阻止フィルタ200の並列素子23、24が互いに音響的に結合される、フィルタの異なる実施形態を示す。
【0100】
図10に係る変形形態において、帯域阻止フィルタ200は、4つの隣接して配置された変換器を有する変換器配列を特徴とする多重ポート共振器を含む。2ポート共振器の端に位置する変換器(この場合、直列変換器)は、帯域阻止フィルタ200の直列素子21、22として設けられている。直列に接続される中央配置の変換器(この場合、並列変換器)は、帯域阻止フィルタ200の並列素子23、24として設けられ、DMSフィルタの変換器11、12に導電的に接続される。並列変換器は、DMSフィルタの出力信号を多重ポート共振器の音響トラック中に結合するための結合変換器として機能する。
【0101】
この場合、帯域阻止フィルタ200の直列素子21、22は、並列素子23、24と同様に、互いに音響的に結合される。
【0102】
図8C、12、12A、13、13Aは、直列素子21が並列素子23に音響的に結合されるフィルタの異なる実施形態を示す。図12Aおよび13Aにおいて、帯域阻止フィルタ200の結合した素子21、23は、音響トラック内で互いに隣接して配置される変換器の形態で実装される。
【0103】
図12、12Aにおいて、両方の帯域阻止素子21、23は互いに、かつ帯域通過フィルタ100の変換器11、12に導電的に接続される。この場合、並列素子23を有するシャントアームは、直列素子21と帯域通過フィルタ100との間に配置される。
【0104】
図13、13Aにおいて、帯域阻止フィルタ200は入力INと帯域通過フィルタ100との間に配置される。並列素子23を有するシャントアームは、フィルタの入力INに接続される。直列素子21は、帯域通過フィルタ100の第3の変換器13に直列に接続される。
【0105】
図15A、16Aに係る変形形態において、帯域阻止フィルタ200は図2Cに係るインライン配列を含む。
【0106】
図15Aに係るインライン配列は、並列素子23、24(図2Cの変換器71、72)と、端部反射器33、34と、変換器間に配置される中間反射器35とを含む。妥当な場合には、並列素子23、24は直列に接続され、接地される。
【0107】
図15、15Aに係るフィルタは、それぞれ図3に係るフィルタの変形形態を示し、図3とは異なり、並列素子23、24は互いに音響的に結合される。
【0108】
図16、16Aに示される帯域阻止フィルタは、入力側に配置される並列素子23と、出力側に配置され、かつ配線され、図8に示される変形形態と同様に、互いに音響的に結合した直列素子21、22とを含む。
【0109】
図16Aに係るインライン配列は、直列素子21、22(図2Cの変換器71、72)と、端部反射器33、34と、変換器間に配置される中間反射器36とを含む。直列素子21、22は異なる出力路に配置される。
【0110】
図17は、帯域阻止フィルタ200が2つのインライン配列を含む実施形態を示す。図16Aに示される変形形態と同様に、第1のインライン配列は2つの変換器(直列素子21、22)を含み、それらの間には、妥当な場合には音響的に一部透過性であり得る中間反射器36が配置される。第2のインライン配列は、図16Aに示されるものに相当する。
【0111】
中間反射器35、36により、変換器間を所望の音響的結合度に調整することが可能になる。
【0112】
図1A〜1Eに示される帯域通過フィルタ100と帯域阻止フィルタ200との他の組合せを実現することは、可能である。反射器31、32、33、34、35、36は、図においてフローティングの態様で実装される。しかしながら、原則的には、それらは接地されてもよい。
【0113】
図5Aに係る帯域阻止フィルタはブリッジ回路の形態で実装され、互いから音響的に分離される4つの音響共振器を含む。しかしながら、2つの各共振器または4つすべての共振器は、互いに音響的に結合されてもよい。
【0114】
好適に配線された場合、ブリッジ回路は、原則として図8Bにあるような2つの結合した変換器をそれぞれ特徴とする2つの2ポート共振器、図17に係る2つのインライン配列、または図10に係る音響トラック内に4つの変換器を有するインライン配列により実装され得る。
【0115】
図18Aは、DMSフィルタを特徴とするが、帯域阻止フィルタを有しないフィルタ回路の伝達関数1を示す。また、本図は、DMSフィルタと帯域阻止フィルタとを含むフィルタ回路の伝達関数2を示す。
【0116】
図18Bは、伝達関数2、ならびに直列素子に対するアドミタンス曲線2sおよび帯域阻止フィルタの並列素子に対するアドミタンス曲線2pを示す。アドミタンス曲線は、周波数の関数として示されるコンダクタンスY21の大きさに相当する。直列素子の共振は2142MHz、すなわちDMSフィルタの通過帯域内にある。
【0117】
直列素子の反共振は2220MHz、すなわち伝達関数2の上方傾斜面の範囲内にある。並列素子の共振は2263MHzにあり、並列素子の反共振は2343MHzにある。これら全ての共振周波数はDMSフィルタの帯域よりも上方にある。帯域阻止フィルタを有するフィルタ回路は、これらの状況下でDMSフィルタの帯域よりも上方で、改良された隣接チャネル広帯域選択性を有する。
【0118】
この場合において、フィルタの隣接チャネル選択性をおよそ15dBから39dBに増加することが可能になった。
【0119】
図19A、図19Bに係る変形形態において、直列素子の共振は2400MHzに、直列素子の反共振は2488MHzに、並列素子の共振は2537MHzにあり、そして並列素子の反共振は2600MHzより上方にある。この場合も、直列素子の共振周波数はDMSフィルタの帯域よりもはるか上方にある。この場合、2500ないし2600MHzの周波数範囲内で、フィルタの遠隔選択性を42dB(帯域阻止フィルタなしで)から58dB(帯域通過フィルタを用いて)まで改善することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 帯域阻止フィルタなしのDMSフィルタの伝達関数
2 帯域阻止フィルタによるDMSフィルタの伝達関数
2s 直列素子に対するアドミタンス曲線
2p 並列素子に対するアドミタンス曲線
11 第1の変換器
12 第2の変換器
13 第3の変換器
21、22 帯域阻止フィルタの直列素子
23、24、25 帯域阻止フィルタの並列素子
31、32、33、34 音響反射器
35、36 中間反射器
51、52、53 入力変換器
58、59 入力変換器
55a、55b 変換器55の部分変換器
61、62、63 出力変換器
62a、62b 変換器62の部分変換器
66、67、68、69 出力変換器
71、72 変換器
81、83、85、87 電極
82、84 圧電層
86 結合層
100 帯域通過フィルタ
200 帯域阻止フィルタ
801、802 BAW共振器
IN 入力ポートの端子
OUT、OUT1、OUT2 出力ポートの端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響的に結合された電気音響変換器(11、12、13)を有するトラックを含む帯域通過フィルタ(100)と、
前記帯域通過フィルタ(100)に電気的に接続され、かつ少なくとも1つの電気音響直列素子(21、22)と少なくとも1つの電気音響並列素子(23、24)とを含む帯域阻止フィルタ(200)と、
を含む電気フィルタであって、
前記少なくとも1つの電気音響直列素子(21、22)は、前記帯域通過フィルタの前記変換器(11、12)の少なくとも1つに直列に接続され、
前記帯域阻止フィルタ(200)は、少なくとも1つの前記電気音響並列素子(23、24)が配置されるシャントアームを含み、
共振周波数および反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタ(200)の少なくとも1つの前記電気音響素子(21、22、23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の通過帯域の外側にある、ことを特徴とする、
電気フィルタ。
【請求項2】
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタ(200)の前記直列素子(21、22)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の外側にあり、
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタ(200)の前記並列素子(23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の外側にある、ことを特徴とする、
請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記直列素子(21、22)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の上方にあり、
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記並列素子(23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の上方にある、ことを特徴とする、
請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記直列素子(21、22)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記通過帯域内にあり、
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記並列素子(23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の上方にある、ことを特徴とする、
請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記直列素子(21、22)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の下方にあり、
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記並列素子(23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の下方にある、ことを特徴とする、
請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記共振周波数および前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記直列素子(21、22)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域の下方にあり、
前記反共振周波数は、前記帯域阻止フィルタの前記並列素子(23、24)内で前記帯域通過フィルタ(100)の前記帯域内にある、ことを特徴とする、
請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項7】
少なくとも一つの前記電気音響直列素子(21、22)は、少なくとも1つのSAW変換器を含み、および/または、
少なくとも一つの前記電気音響並列素子(23、24)は、少なくとも1つのSAW変換器を含む、ことを特徴とする、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項8】
少なくとも一つの前記電気音響直列素子(21、22)は、少なくとも1つのBAW共振器を含み、および/または、
少なくとも一つの前記電気音響並列素子(23、24)は、少なくとも1つのBAW共振器を含む、ことを特徴とする、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項9】
第1の信号路と第2の信号路を含むフィルタであって、
前記帯域阻止フィルタ(200)の第1の直列素子(21)および前記帯域通過フィルタ(100)の第1の変換器(11)からなる直列回路は、前記第1の信号路内に配置され、
前記帯域阻止フィルタの第2の直列素子および前記帯域通過フィルタの第2の変換器からなる直列回路は、前記第2の信号路内に配置される、ことを特徴とする、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記帯域阻止フィルタは、前記帯域阻止フィルタの前記第1および第2の直列素子を含むインライン配置である、ことを特徴とする、
請求項9に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記帯域阻止フィルタの前記第1および第2の直列素子は、音響的に結合されている、ことを特徴とする、
請求項9または10に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記帯域阻止フィルタは、第1の並列素子(23)および第2の並列素子(24)を含み、
前記第1および第2の並列素子(23、24)の直列回路は、前記シャントアーム内に配置される、ことを特徴とする、
請求項9または10に記載のフィルタ。
【請求項13】
前記シャントアームは、前記第1の信号路と前記第2の信号路とを接続する、ことを特徴とする、
請求項9ないし12のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項14】
前記帯域阻止フィルタ(200)の前記第1および第2の並列素子(23、24)を含むインライン配置を含む、ことを特徴とする、
請求項12または13に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記第1および前記第2の並列素子(23、24)は、音響的に結合している、ことを特徴とする、
請求項12ないし14のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記帯域阻止フィルタは、前記帯域阻止フィルタ(200)の前記直列素子(21)および前記並列素子(23)を含むインライン配置である、ことを特徴とする、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項17】
前記帯域阻止フィルタの前記直列素子(21)および前記並列素子(23)は、音響的に結合している、ことを特徴とする、
請求項16に記載のフィルタ。
【請求項18】
前記帯域阻止フィルタ(200)の前記第1および前記第2の直列素子の間に配置された音響反射器(35)を含む、ことを特徴とする、
請求項11、15または17に記載のフィルタ。
【請求項19】
前記帯域通過フィルタ(100)の第3の変換器(13)が配置される第3の信号路をさらに含むフィルタであって、
前記第3の信号路は、前記第1の信号路および前記第2の信号路から電気的に隔離され、
前記シャントアームは前記第3の信号路に接続され、および/または、
前記帯域阻止フィルタ(200)の少なくとも1つの前記直列素子(21、22)は前記第3の信号路内に配置される、ことを特徴とする、
請求項9ないし18のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項20】
前記帯域通過フィルタ(100)の第1および第2の変換器(11、12)は、並列にかつ共通の信号路に接続される、ことを特徴とする、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項21】
前記シャントアームは、前記共通の信号路に接続され、および/または、
前記帯域阻止フィルタ(200)の少なくとも1つの前記直列素子(21、22)は、前記共通の信号路内に配置される、ことを特徴とする、
請求項20に記載のフィルタ。
【請求項22】
第3の信号路をさらに含むフィルタであって、
前記共通の信号路は前記第3の信号路から電気的に隔離され、
前記帯域阻止フィルタ(200)の少なくとも1つの前記直列素子(21、22)は、前記第3の信号路内に配置される、ことを特徴とする、
請求項20または21に記載のフィルタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【図13A】
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【図14】
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【図15】
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【図15A】
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【図16】
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【図16A】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2010−519813(P2010−519813A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549776(P2009−549776)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000292
【国際公開番号】WO2008/101482
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】