説明

表面形状測定プローブおよびその校正方法

【課題】マスターボールによるスタイラス先端座標の校正を行うことができる表面形状測定プローブおよびその校正方法を提供すること。
【解決手段】表面形状測定プローブ30のスタイラス31の近傍に校正用接触子35を装着し、スタイラス31の先端と校正用接触子35とのオフセットOFSを測定し、校正用接触子35で三次元測定機の基準器であるマスターボール17を測定して校正用接触子35の座標位置を割り出し、校正用接触子35の座標位置にオフセットOFSを加算してスタイラス31の先端の座標位置を割り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定機に装着して使用される表面形状測定プローブおよびその校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の立体形状を測定するために三次元測定機(座標測定機、CMM等とも呼ばれる)が用いられている。
三次元測定機では、接触式プローブを装着し、測定対象物の表面にプローブ先端を接触させることにより、接触位置の三次元座標値を測定する。三次元測定機のプローブとしては、任意の三次元空間位置から測定対象物の表面を撮影して表面位置を測定する光学式等の非接触式プローブも用いられる。
【0003】
三次元測定機では、測定に先立って、三次元測定機の座標系におけるプローブ先端の座標位置の校正作業が行われる。
例えば、三次元測定機の定盤に基準球(マスターボール)を固定しておき、このマスターボールの表面の複数箇所(例えばマスターボールの赤道上つまり最外周上の3点および頂上の1点という離れた4点)に対して接触測定を行い、その測定座標値を用いて球計算を行い、さらにその球計算結果からプローブ先端の座標位置の割出しを行う方法が用いられている(特許文献1参照)。このようなマスターボールを用いた校正方法は、三次元測定機において最も一般的な校正方法である。
【0004】
前述のような三次元測定機が測定対象物の表面位置(三次元空間の座標位置)の測定を行うのに対し、測定対象物の任意位置の表面形状(表面粗さ、うねり、微細な段差や凹凸)を測定するものとして、表面形状測定器が用いられている(特許文献2参照)。
表面形状測定器は、本体から延びたアームの先端に接触用のスタイラスを有し、このスタイラスを測定対象物の対象領域に摺接させることで、同領域の表面粗さや凹凸を測定することができる。このような表面形状測定器では、さらにスタイラスに隣接してスキッドを設置し、スキッドが対象領域の表面に沿って倣うことで、隣接するスタイラスには対象領域の表面の凹凸変動のみを抽出することが行われている。
【0005】
ところで、三次元測定機において、前述した測定対象物の表面位置(三次元空間の座標位置)の測定だけでなく、測定対象物の任意位置の表面形状(表面粗さ、うねり、微細な段差や凹凸)をも併せて測定したいという要望がある。
このような要望に対して、三次元測定機に、前述した表面形状測定器と同様な構成を有する表面形状測定プローブを装着し、三次元測定機により表面形状測定プローブを測定対象物の任意領域に配置し、プローブ先端のスタイラスで該当領域の表面形状を測定できるようにしたものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−180103号公報
【特許文献2】特開2004−333150号公報
【特許文献3】特開昭63−289410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、三次元測定機に表面形状測定プローブを装着して測定対象物の表面形状を測定する場合、表面形状測定プローブのスタイラスを測定対象物の対象領域に正確に配置するために、スタイラス先端の座標位置を校正しておく必要がある。
しかし、表面形状測定プローブのスタイラスは、表面形状の測定という用途に起因して、接触方向が限定されるという問題がある。
【0008】
例えば、表面形状を測定する際のように測定対象物表面に接触することは何ら問題ないが、前述した特許文献1におけるマスターボール側面への接触を行おうとすると、周辺にあるアームあるいはスキッド等がマスターボールに干渉してしまう。このような状況では、マスターボールを用いた校正方法、とくにマスターボール表面の十分に離れた複数点での測定は困難となってしまう。
【0009】
表面形状測定プローブのスタイラスは表面形状を測定するために測定対象物に摺接させるものであり、接触式プローブの先端ほどの精度は要求されないものの、測定対象物の微少領域の表面形状を測定するために、同領域に対して正確にスタイラスを接触させる必要もあり、接触式プローブに準じたマスターボールによるスタイラス先端座標の校正が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、マスターボールによるスタイラス先端座標の校正を行うことができる表面形状測定プローブおよびその校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表面形状測定プローブは、三次元測定機に装着して使用される表面形状測定プローブであって、アームと、アームの先端部に固定されたスタイラスと、スタイラスの近傍に配置された校正用接触子とを有することを特徴とする。
本発明において、三次元測定機としては、校正用の基準器(例えばマスターボールなど)を有するものとする。
【0012】
このような本発明では、校正用接触子とスタイラス先端との相対位置(オフセット)を予め測定しておき、校正動作の際には校正用接触子を三次元測定機の基準器に接触させることで先ず校正用接触子の座標位置を割り出し、これに前述したオフセットを加算することでスタイラス先端の座標位置の割り出しを行う。
校正動作において、スタイラスの近傍に配置された校正用接触子を用い、いわば代理して基準器に接触させるため、スタイラスを直接基準器に接触させる際のようなスタイラス周辺との干渉などの不都合を回避することができる。
【0013】
本発明の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、少なくとも半球状の接触面を有することが望ましい。
このような半球状の接触面を有する形状としては、棒状の支持体の先端に固定された球体、あるいは丸棒の先端を半球状に加工したもの等が利用できる。
このような本発明では、校正用接触子が半球状の接触面を有することで、三次元測定機の基準器として一般的なマスターボールに対して、球計算を行うのに十分に離れた複数点での好適な接触動作が可能となる。
【0014】
本発明の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、前記アームまたは前記スタイラスに着脱自在に装着されることが望ましい。
校正用接触子を着脱自在に装着するための接続構造としては、ねじ止め、凹凸嵌合、クリップ等の弾性保持、磁石や吸盤による吸着などが適宜利用できる。
このような接続構造は、校正用接触子とスタイラス先端とのオフセットを測定したのちに狂いが出なければ十分であり、再度装着する際には改めてオフセットを測定するのであれば高精度の再現性は必要ない。但し、再び装着した際に先に装着していた際の状態(オフセット)が再現される構造であれば、再度のオフセットの測定が省略できる。
このような本発明では、校正動作が済んだら校正用接触子を取り外すことができ、表面形状測定プローブによる表面形状測定を行う際には校正用接触子がない状態とすることができる。従って、表面形状測定の際に妨げとなることがなく、例えば高精度化のためにオフセットを最小化つまり校正用接触子をスタイラスに近接させて設置することができる。
【0015】
本発明の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、前記アームに対して前記スタイラスが起立する方向に延びかつ前記スタイラス先端より突出していることが望ましい。
このような本発明では、校正用接触子をスタイラスに近接させて設置することができ、オフセットを最小化して高精度化することができる。そして、校正用接触子がスタイラス先端に最も近い位置となるため、スタイラス先端の代理としての校正用接触子の機能を最大化することができる。
【0016】
本発明の校正方法は、三次元測定機に装着して使用される表面形状測定プローブの校正方法であって、前記表面形状測定プローブのスタイラスの近傍に校正用接触子を装着し、前記スタイラスの先端と前記校正用接触子とのオフセットを測定し、前記校正用接触子で前記三次元測定機の基準器を測定して前記校正用接触子の座標位置を割り出し、前記校正用接触子の座標位置に前記オフセットを加算して前記スタイラスの先端の座標位置を割り出すことを特徴とする。
【0017】
このような本発明では、校正用接触子をいわばスタイラスの代理として基準器に接触させるため、スタイラスを直接基準器に接触させる際のようなスタイラス周辺との干渉などの不都合を回避することができ、前述した本発明の表面形状測定プローブで説明した作用効果を得ることができる。
【0018】
本発明の校正方法において、前記スタイラスの先端の座標位置を割り出した後、前記表面形状測定プローブから前記校正用接触子を取り外すことが望ましい。
このような本発明では、校正動作が済んだら校正用接触子を取り外すため、表面形状測定プローブによる表面形状測定を行う際には校正用接触子がない状態とすることができる。従って、表面形状測定の際に妨げとなることがなく、例えば高精度化のためにオフセットを最小化つまり校正用接触子をスタイラスに近接させて設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の三次元測定機を示す図である。
【図2】前記実施形態における校正動作を示す模式図である。
【図3】前記実施形態で使用する校正用接触子を示す斜視図である。
【図4】前記実施形態における校正動作を示すフローチャートである。
【図5】前記実施形態で使用できる他の校正用接触子を示す斜視図である。
【図6】前記実施形態で使用できる他の校正用接触子を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態の校正用接触子を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態の校正用接触子を示す側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔装置構成〕
図1において、本実施形態の表面形状測定装置は、表面形状測定プローブ30を支持してそのスタイラス31の三次元位置および向きを任意に制御できる5軸制御の三次元測定機1と、この三次元測定機1を駆動制御して測定対象物であるワーク4の表面形状測定処理を実行するコンピュータ2とから構成されている。
【0021】
三次元測定機1は、上面が水平な定盤11を有し、定盤11は除震台10に支持されるとともに、定盤11上には座標位置校正用の基準器であるマスターボール17が設置されている。
さらに、定盤11上には、表面形状測定プローブ30を支持して三次元移動させる移動機構19が構成されている。
【0022】
移動機構19は、定盤11の両端側に立設されたビーム支持体12A,12Bを有し、各々の上端によりX軸方向に延びるビーム13が支持されている。ビーム支持体12Aは、その下端がY軸駆動機構14によってY軸方向に駆動される。ビーム支持体12Bは、その下端がエアーベアリングによって定盤11にY軸方向に移動自在に支持されている。ビーム13には垂直方向(Z軸方向)に延びるコラム15が支持され、コラム15はビーム13に沿ってX軸方向に駆動される。コラム15にはホルダ16が支持され、ホルダ16はコラム15に沿ってZ軸方向に駆動される。各軸の駆動機構は、各軸における位置または移動量を検出する機能を有する。
ホルダ16の下端には各種のプローブが着脱可能であり、所望のプローブに交換可能である。なお、図1はホルダ16の下端に表面形状測定プローブ30が装着された場合を示しており、この場合、表面形状測定プローブ30が装着され、その先端のスタイラス31をワーク4の表面に摺接させることで、ワーク4の表面形状を測定することができる。
【0023】
コンピュータ2は、コンピュータ本体21および操作用のキーボード22、表示装置24及びプリンタ25を備えている。
コンピュータ本体21は、図示しない演算処理装置および記憶装置などを備えるとともに、図示しないインターフェイスを介して表面形状測定プローブ30に接続されている。
コンピュータ2は、外部操作により起動され、記録されたプログラムを実行することで三次元測定機1の動作を制御し、表面形状測定プローブ30からの信号を処理して指定された測定結果を出力できるようになっている。
【0024】
図2に示すように、表面形状測定プローブ30は、移動機構19に装着される箱状の本体32を有し、本体32には揺動式のアーム33が支持されている。前述した測定用のスタイラス31はアーム33の先端に設置されている。本体32内には、スタイラス31の変位を検出する検出機構(図示省略)が設置されている。
表面形状測定プローブ30を移動機構19で移動させ、測定動作つまりスタイラス31の先端をワーク4の表面に接触させて同表面に沿って移動させる動作を行うことで、スタイラス31の先端がワーク4の表面の形状あるいは凹凸に追従し、これによりワーク4の表面形状が測定されるようになっている。
【0025】
アーム33の先端には、スタイラス31に隣接して同方向に向かうスキッド34が固定されている。このスキッド34があることで、前述した測定動作の際にアーム33はスキッド34を介してワーク4の表面に接触し、ワーク4の表面の概略形状に倣って揺動する。これにより、スタイラス31においては、ワーク4の表面の概略形状を基準とした微少な変位のみが測定される。
【0026】
アーム33の先端には、スタイラス31およびスキッド34に隣接して、校正用接触子35が装着されている。
図3に示すように、校正用接触子35は、角棒状のステー36の先端にキャリブレーションボール37を形成したものであり、ステー36を貫通するボルト38によりアーム33の端面に固定される。この校正用接触子35は、ボルト38を緩めることで脱着が可能である。
【0027】
校正用接触子35は、アーム33に固定された状態では、ステー36がアーム33からスタイラス31およびスキッド34と同方向に延び、先端のキャリブレーションボール37はスタイラス31の先端より大きく突出した状態で配置される。
ここで、キャリブレーションボール37の中心位置とスタイラス31の先端位置との相対位置データは、校正用接触子35と表面形状測定プローブ30との組み合わせにおけるオフセットOFSとなる。
【0028】
〔測定手順〕
本実施形態においては、コンピュータ2で測定プログラムを実行することでコンピュータ2から三次元測定機1へ動作指令が送られ、三次元測定機1においては、表面形状測定プローブ30に校正用接触子35を装着した状態でマスターボール17を用いた所定の校正動作を行うとともに、校正用接触子35を取り外した状態で表面形状測定プローブ30によるワーク4の表面形状の測定動作が行われる。
【0029】
図4において、ワーク4の表面形状を測定する場合には、三次元測定機1に表面形状測定プローブ30を装着する(工程S01)。表面形状測定プローブ30の装着は、オペレータによる手動でもよく、自動プローブ交換装置により三次元測定機1の動作として行ってもよい。
使用する表面形状測定プローブ30については、オペレータまたはコンピュータ2が、キャリブレーションの要否を判断する(工程S02)。
表面形状測定プローブ30のキャリブレーション記録がコンピュータ2にある場合、あるいはオペレータが不要と判断した場合は、そのまま表面形状測定プローブ30によるワーク4の測定(工程S09)へ進む。
【0030】
そうでない場合、校正動作を行うために、表面形状測定プローブ30に校正用接触子35を装着する(工程S03)。
校正動作では、表面形状測定プローブ30のオフセットOFSが既に測定され、コンピュータ2に記録されているかを確認し(工程S04)、記録がない場合には表面形状測定プローブ30および校正用接触子35の測定により、オフセットOFSを測定してコンピュータ2に記録する(工程S05)。オフセットOFSが既に記録されている場合には、工程S05を省略する。
【0031】
次に、三次元測定機1により表面形状測定プローブ30を移動させ、図2のように、校正用接触子35の先端のキャリブレーションボール37をマスターボール17の4点に接触させる(工程S06)。これにより、コンピュータ2ではマスターボール17の球中心座標位置が測定され、得られたマスターボール17の球中心座標位置からオフセットOFS分の補正演算によりスタイラス31の先端の座標位置が割り出される(工程S07)。
この後、表面形状測定プローブ30から校正用接触子35を取り外し(工程S08)、これにより校正動作は終了となる。
【0032】
校正動作ができたら、校正用接触子35が取り外された状態の表面形状測定プローブ30を三次元測定機1により移動させ、スタイラス31の先端をワーク4に接触させて表面形状の測定動作を行う(工程S09)。
測定動作を繰り返し、プログラムされたワーク4に対する表面形状の測定動作が全て終了したと判定されたら(工程S10)、三次元測定機1から表面形状測定プローブ30を取り外す(工程S11)。
【0033】
〔実施形態の効果〕
このような本実施形態によれば、以下に示すような効果がある。
校正動作において、スタイラス31の近傍に校正用接触子35を装着し、いわば代理してマスターボール17に接触させるため、スタイラス31を直接マスターボール17に接触させる際のようなスタイラス31周辺のスキッド34等との干渉などの不都合を回避することができる。
【0034】
とくに、前記実施形態では、校正用接触子35にキャリブレーションボール37を形成したため、一般的な接触式プローブと同様な球状の接触面でマスターボール17と接触することができ、マスターボール17の上側の十分離れた4点での接触動作が可能となる。
なお、表面形状測定プローブ30はアーム33先端(スタイラス31部分)の上下動しか検出できないため、マスターボール17の最外周つまり赤道上での接触は利用できない。しかし、例えばマスターボール17の頂上から緯度で60度程度の範囲であれば、アーム33の上下動として接触を検出することができる。従って、この領域で互いに最大限の拡がりをもつように4点を選択することが望ましい。
【0035】
校正用接触子35は表面形状測定プローブ30に対して着脱自在としたため、校正動作が済んだら校正用接触子35を取り外すことができ、表面形状測定プローブ30による表面形状測定を行う際には校正用接触子35がない状態とすることができる。従って、表面形状測定の際に妨げとなることがなく、例えば高精度化のためにオフセットOFSを最小化するべく、校正用接触子35をスタイラス31に近接させて設置することができる。
【0036】
校正用接触子35を表面形状測定プローブ30に着脱自在に取り付ける構造として、ねじ止めを採用したため、装着状態での剛性および安定性を確保することができる。
このような強固で安定した装着を行えるようにしたことで、校正用接触子35を表面形状測定プローブ30から取り外したのち再び装着した際に、先に装着していた際の状態(オフセットOFS)を正確に再現することができ、一度オフセットOFSを測定しておけば再度の測定を省略することができる。
【0037】
校正用接触子35は、アーム33からスタイラス31が起立する方向に延びかつスタイラス31先端より突出した状態で装着されるため、校正用接触子35をマスターボール17に接触させるときのスタイラス31やスキッド34の干渉を防止することができ、スタイラス31先端の代理としての校正用接触子35の機能を最大化することができる。
【0038】
〔他の実施形態〕
本発明において、校正用接触子35を表面形状測定プローブ30に着脱自在に取り付ける構造として、前記実施形態の構造に限らず、以下に示すような他の構造を採用することもできる。
図5において、校正用接触子35Aは、丸棒状のステー36Aの先端にキャリブレーションボール37を形成したものであり、ステー36Aを貫通するボルト38によりアーム33の端面に固定される。アーム33の端面にはV溝33Aが形成されており、丸棒状のステー36Aの軸線方向が正確に規制される。規制された軸線方向におけるステー36Aの位置はボルト38で規定されるため、着脱に伴うアーム33に対する相対位置変化を最小限にすることができる。
【0039】
図6において、校正用接触子35Bは、角棒状のステー36Bの先端にキャリブレーションボール37を形成したものである。ステー36Bの側面にはいわゆるダブテイル(鳩尾)形状が形成され、アーム33の端面には同形状に対応する蟻溝33Bが形成されており、ステー36Bは一端側からダブテイル形状を蟻溝33Bに挿入することで嵌合が得られる。この際、ダブテイル形状または蟻溝33Bに緩いテーパーを施しておけば、圧入によって固定することができる。このような構造では、強固な固定が得られるとともに、反対側から押し出すことで簡単に外すことができ、ボルト38を回転させる構造よりも着脱作業が容易にできる。
【0040】
図7において、校正用接触子35Cは、丸棒の一端側の側面を切削して断面半円形にしたステー36Cを有し、当該部分を貫通するボルト38によりアーム33の端面に固定される。校正用接触子35Cの反対側の先端は元の円形断面とされており、この円形断面の側の先端は丸められ、半球状のキャリブレーションボール37Cとされている。このような校正用接触子35Cは、キャリブレーションボール37Cが半球状であるため、マスターボール17に対する接触位置に制約を受けるものの、マスターボール17の上側の十分離れた4点での接触は十分可能である。
【0041】
図8において、校正用接触子35Dは、丸棒状のステー36Dの先端にキャリブレーションボール37を形成したものであるが、ステー36Dはアーム33の先端にアーム33と同じ方向に固定されている。このような校正用接触子35Dでは、マスターボール17の赤道上(最外周上)の3点および頂上の1点という4点での接触が可能であるとともに、スタイラス31の先端より突出しないため、校正用接触子35Dを取り外さなくてもスタイラス31による表面形状の測定動作を阻害することがない。従って、校正用接触子35Dはアーム33に完全な固定とすることができ、着脱自在な接続構造を省略して簡単な構造とすることができる。
【0042】
図9において、校正用接触子35Eは、アーム33の基部に連結される別のアーム33Aをアーム33と並行に設置し、その先端にステー36およびキャリブレーションボール37を有する。
すなわち、前述した各実施形態では、1本のアーム33のスタイラス31やスキッド34を設けるとともに、同じアーム33の先端に校正用接触子35,35A〜35Cを装着したが、図9の構造ではアーム33の基部に連結される別のアーム33Aを用いるため、このアーム33Aにおいてキャリブレーションボール37をスタイラス31の先端側から退避させる構造を採用することもできる。例えば、アーム33Aを軸にステー36およびキャリブレーションボール37が回動して上向きになる構造、あるいはアーム33Aが根元を回転中心にしてアーム33から離れるように回動する構造などとしてもよい。
【0043】
その他、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内の変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、三次元測定機1に設けたマスターボール17は、角柱状ほかの他の基準器であってもよい。
表面形状測定プローブ30が装着される三次元測定機は、前述した門型の移動機構19を有する三次元測定機1に限らず、1本のコラムで支持される三次元測定器、多関節アーム式の三次元測定機などであってもよい。
表面形状測定プローブ30は、前記実施形態のようにスタイラス31の近傍にスキッド34を有するものに限らず、スキッド34がないものであってもよい。
また、前記実施形態では、マスターボール17上の4点を測定する例を説明したが、4点以上の複数点を測定してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…三次元測定機
2…コンピュータ
4…ワーク
11…定盤
17…基準器であるマスターボール
19…移動機構
30…表面形状測定プローブ
31…スタイラス
32…本体
33…アーム
34…スキッド
35,35A〜35D…校正用接触子
36,36A〜36D…ステー
37,37C…キャリブレーションボール
38…ボルト
OFS…オフセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元測定機に装着して使用される表面形状測定プローブであって、アームと、アームの先端部に固定されたスタイラスと、スタイラスの近傍に配置された校正用接触子とを有することを特徴とする表面形状測定プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、少なくとも半球状の接触面を有することを特徴とする表面形状測定プローブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、前記アームまたは前記スタイラスに着脱自在に装着されることを特徴とする表面形状測定プローブ。
【請求項4】
請求項3に記載の表面形状測定プローブにおいて、前記校正用接触子は、前記アームに対して前記スタイラスが起立する方向に延びかつ前記スタイラス先端より突出していることを特徴とする表面形状測定プローブ。
【請求項5】
三次元測定機に装着して使用される表面形状測定プローブの校正方法であって、前記表面形状測定プローブのスタイラスの近傍に校正用接触子を装着し、前記スタイラスの先端と前記校正用接触子とのオフセットを測定し、前記校正用接触子で前記三次元測定機の基準器を測定して前記校正用接触子の座標位置を割り出し、前記校正用接触子の座標位置に前記オフセットを加算して前記スタイラスの先端の座標位置を割り出すことを特徴とする表面形状測定プローブの校正方法。
【請求項6】
請求項5に記載の表面形状測定プローブの校正方法において、前記スタイラスの先端の座標位置を割り出した後、前記表面形状測定プローブから前記校正用接触子を取り外すことを特徴とする表面形状測定プローブの校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−247313(P2012−247313A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119446(P2011−119446)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】