説明

表面形状転写樹脂シートの製造方法

【課題】樹脂シートの表面に転写型を精度よく転写することができ、しかも形状ロールにおけるトラレ現象の発生を防止することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】所定の組成を有する樹脂を加熱溶融状態でダイ59から連続的に押し出すことにより、表面76および裏面75を有する樹脂シート53を、表面76の樹脂組成が、熱可塑性樹脂100質量部および滑剤0.1〜2.0質量部を含むように形成する。次に、当該樹脂シート53を上ロール63と中間ロール64とで挟み込み、次いで、樹脂シート53を中間ロール64に密着させたまま搬送し、搬送された樹脂シート53を中間ロール64と下ロール65とで挟み込む。中間ロール64と下ロール65とで挟み込む際に、下ロール65に形成された凹版転写型69を樹脂シート53の表面76に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板や光学フィルム用途などに利用することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面形状転写樹脂シートは、溶融混練された樹脂をダイから連続的に押し出して樹脂シートを成形し、当該樹脂シートに転写型の凹凸形状を転写することによって得られるシートである。
表面形状転写樹脂シートの製造方法として、例えば、ダイから連続的に押し出された連続樹脂シートを、第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間に挟み込む工程と、第二押圧ロールの表面に密着させたまま搬送する工程と、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間に挟み込む工程とを含む、製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この方法では、第三ロールに転写型が装着されており、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間に樹脂シートを挟みこんだ際、樹脂シートの表面に凹凸形状が転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−220555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面形状転写樹脂シートの用途として、液晶表示装置のバックライト装置に組み込まれる光拡散板や光学フィルムとしての使用用途などが普及しつつある。その場合、樹脂シートを製造する際に凹凸形状が精度よく転写されていないと(転写率が高くないと)、光拡散板および光学フィルムに設計どおりの光学特性を付与することが困難である。そのため、近年では、転写型を精度よく樹脂シートに転写させるための手法の確立が望まれている。
【0006】
そのような手法として、例えば、転写型が装着されたロール温度を高くする手法が考えられる。この手法では、ロールから樹脂シートに伝わる熱により樹脂シートの流動性を高めることができ、転写型の溝部の先端にまで樹脂を入り込ませることができるので、転写率の向上が期待できる。
しかしながら、ロール温度を高くし過ぎると、樹脂シートがロール表面に貼り付く「トラレ現象」が発生し易くなる。その結果、形状転写後の樹脂シートの表面に、その一部が盛り上がって形成される「タックマーク」が発生するという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、樹脂シートの表面に転写型を精度よく転写することができ、しかも形状ロールにおけるトラレ現象の発生を防止することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、所定の組成を有する樹脂を溶融状態でダイから連続的に押し出すことにより、第1面および第2面を有する連続樹脂シートを、当該第1面の樹脂組成が熱可塑性樹脂100質量部および滑剤0.1〜2.0質量部を含むように形成するシート形成工程と、周面に形状転写型が形成された第1ロールと、当該第1ロールの前記周面に対して回転対向する第2ロールとで前記連続樹脂シートを挟み込むことにより、前記連続樹脂シートの前記第1面に対して前記形状転写型の形状を転写する転写工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂であることが好適である。
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記滑剤が、エステル系ワックス、グリセリン脂肪酸エステルまたはエチレンビスステアリン酸アマイドであることが好適である。
【0010】
また、前記転写工程では、前記第1ロールの前記形状転写型の温度を、100〜110℃の範囲に制御することが好適である。
さらに、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記形状転写型は、前記第1ロールの前記周面の周方向に沿って凹部が筋状に形成された凹版転写型を含み、前記凹部のピッチが30μm〜800μmであり、前記凹部の深さが30μm〜800μmであることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法によれば、第1面の樹脂組成が熱可塑性樹脂100質量部および滑剤0.1〜2.0質量部を含むように連続樹脂シートが形成される。そして、その第1面に対して第1ロールの形状転写型の形状が転写される。これにより、形状転写型の凹部に樹脂を良好に入り込ませることができる。そのため、樹脂シートの表面に転写型を精度よく転写することができる。しかも、形状転写型の温度を高温にしても、転写型に樹脂シートが貼り付く「トラレ現象」の発生を低減することができる。
【0012】
その結果、この製造方法により得られる樹脂シートを液晶表示装置の光拡散板や光学フィルムとして用いれば、優れた光学特性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂シートが搭載された液晶表示装置の模式的な側面図である。
【図2】図1に示す液晶表示装置の模式的な斜視図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る樹脂シートからなる光拡散板の模式的な斜視図である。
【図3B】本発明の一実施形態に係る樹脂シートからなる光学フィルムの模式的な斜視図である。
【図4】光拡散板および光学フィルムの取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。
【図6】下ロールが有する凹版転写型の模式断面図である。
【図7】凹版転写型の第1の変形例を示す図である。
【図8】凹版転写型の第2の変形例を示す図である。
【図9】凹版転写型の第3の変形例を示す図である。
【図10】凹版転写型の第4の変形例を示す図である。
【図11】凹版転写型の第5の変形例を示す図である。
【図12】図5に示すシート製造装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<液晶表示装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートが搭載された液晶表示装置の模式的な側面図である。図2は、図1に示す液晶表示装置の模式的な斜視図である。
液晶表示装置1(液晶テレビ)は、いわゆる直下型液晶表示装置であって、バックライトシステム2と、バックライトシステム2の前面に配置された液晶パネル3と、バックライトシステム2と液晶パネル3との間に配置された光学フィルム4とを備えている。なお、図1および図2では、液晶表示装置1を便宜的に、その前側を紙面上側に向けた姿勢で表している。また、以下の図で表される液晶表示装置1、バックライトシステム2、液晶パネル3などの各構成部材の縮尺は、説明の便宜上それぞれ設定されたものであり、全ての構成部材の縮尺が同じであるわけではない。
【0015】
バックライトシステム2は、四角板状の後壁5および後壁5の周縁から前方へ一体的に立設された四角枠状の側壁6を有し、前面側が開放された薄型箱状の樹脂製ランプボックス7と、ランプボックス7内に設けられた複数の線状光源8と、ランプボックス7の開放面9(前面)を塞ぐ光拡散板10とを備えている。
すなわち、箱状のランプボックス7は、その開放面9の輪郭が四角枠状の側壁6により区画され、側壁6および後壁5により囲まれる空間内に、線状光源8が設けられている。ランプボックス7の後壁5内面には、例えば、線状光源8から後壁5側へ入射する光を、ボックスの開放面9側へ反射させるための反射板(図示せず)が全体に取り付けられている。
【0016】
線状光源8は、例えば、直径が2mm〜4mmの円筒状ランプである。複数の線状光源8は、光拡散板10の背面20に対して一定間隔を空けた状態で、互いに平行に等しい間隔を空けて配置されている。
隣り合う線状光源8の中心同士の間隔Lは、省電力化の観点から、30mm〜60mmであることが好ましい。また、光拡散板10の背面20(例えば、背面20における中央部)と線状光源8の中心との距離Dは、薄型化の観点から、10mm〜20mmであることが好ましい。また、距離Dに対する間隔Lの比率(L/D)は、2.5〜4.0であることが好ましい。とりわけ、間隔Lは、40mm〜55mmであることが好ましく、距離Dは、13mm〜17mmであることが好ましい。また、線状光源8の数は、ランプボックス7のサイズ(液晶表示装置1の画面サイズ)および間隔Lにより必然的に決まるが、例えば、32型の液晶表示装置1では、6〜10本であることが好ましい。なお、図1および図2では、図解し易くするために、線状光源8を5本分だけ表している。
【0017】
また、線状光源8としては、例えば、蛍光管(冷陰極管)、ハロゲンランプ、タングステンランプなど、公知の筒形ランプを用いることができる。また、バックライトシステム2の光源としては、線状光源8に代えて、発光ダイオード(LED)などの点状光源などを用いることもできる。
液晶パネル3は、液晶セル11と、液晶セル11を厚さ方向両側から挟む1対の偏光板12,13とを備えている。このような液晶パネル3は、背面側の偏光板12と光拡散板10とが対向するように、バックライトシステム2の前面に配置される。
【0018】
液晶セル11としては、例えば、TFT型液晶セル、STN型液晶セルなど、公知の液晶セルを用いることができる。
光学フィルム4としては、特に制限されず、例えば、マイクロレンズフィルム、略半円状のレンチキュラーレンズフィルム、拡散フィルム、プリズムフィルム、反射型偏光分離フィルムなどが挙げられる。
<光拡散板および光学フィルムの構成>
図3Aは、本発明の一実施形態に係る樹脂シートからなる光拡散板の模式的な斜視図である。図3Bは、本発明の一実施形態に係る樹脂シートからなる光学フィルムの模式的な斜視図である。図4は、光拡散板の取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【0019】
図3Aに示すように、光拡散板10は、ランプボックス7の側壁6の枠形状とほぼ同じ四角の板状に形成されている。
光拡散板10は、厚さ方向に3枚の樹脂層が積層された光透過性の積層光拡散板(この実施形態では、3層光拡散板)であり、基材層14と、この基材層14の厚さ方向両側に積層された1対の表面層(前面側の表面層15および背面側の表面層16)とを含んでいる。
【0020】
前面側の表面層15の表面(光拡散板10の前面17)には、光拡散板10の1組の対向周縁間に延びる半円凸条18が多数筋状に形成されている。すなわち、光拡散板10の前面17には、半円凸条18と、隣り合う半円凸条18との間の凹条19とが交互に形成されている。
半円凸条18は、その形状に直交する切断面が略半円形状(シリンドリカルレンズ形状)の輪郭を有している。多数の半円凸条18は、互いに平行に等しい間隔E´(例えば、0.5μm〜10μm)を空けて配置されている。隣り合う半円凸条18の中心同士(頂部)の距離(ピッチP´)は、例えば、100μm〜800μmである。また、半円凸条18の高さ(半円凸条18の頂部から凹条19の最深部と同じ高さ位置まで垂線を下ろしたときの垂線の長さ(垂直距離))H´は、例えば、100μm〜800μmである。また、半円凸条18のピッチP´に対する高さH´の比率(H´/P´)で表されるアスペクト比は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.3〜1.0である。
【0021】
一方、背面側の表面層16の表面(光拡散板10の背面20)は、凹凸のない平坦面とされている。
また、図4に示すように、光拡散板10において、基材層14の厚さtは、各表面層15,16の厚さt,tに比べて厚く、例えば、1.0mm〜3.9mmである。また、前面側の表面層15の厚さtは、例えば、0.02mm〜1.0mmであり、背面側の表面層16の厚さtは、例えば、0.02mm〜1.0mmである。また、基材層14の厚さtと、前面側の表面層15の厚さtと、背面側の表面層16の厚さtとを足した光拡散板10の総厚さTは、例えば、1mm〜4mmである。
【0022】
また、図3Bに示すように、光学フィルム4は、光拡散板10の形状とほぼ同じ四角の板状に形成されている。
光学フィルム4は、厚さ方向に3枚の樹脂層が積層された光透過性の積層光学フィルム(この実施形態では、3層光学フィルム)であり、基材層21と、この基材層21の厚さ方向両側に積層された1対の表面層(前面側の表面層22および背面側の表面層23)とを含んでいる。
【0023】
前面側の表面層22の表面(光学フィルム4の前面24)には、光学フィルム4の1組の対向周縁間に延びる半円凸条25が多数筋状に形成されている。すなわち、光学フィルム4の前面17には、半円凸条25と、隣り合う半円凸条25との間の凹条26とが交互に形成されている。
半円凸条25は、その形状に直交する切断面が略半円形状(シリンドリカルレンズ形状)の輪郭を有している。多数の半円凸条25は、互いに平行に等しい間隔E´(例えば、0.5μm〜10μm)を空けて配置されている。隣り合う半円凸条25の中心同士(頂部)の距離(ピッチP´)は、例えば、30μm〜200μmである。また、半円凸条25の高さ(半円凸条25の頂部から凹条26の最深部までの垂直距離)H´は、例えば、30μm〜200μmである。また、半円凸条25のピッチP´に対する高さH´の比率(H´/P´)で表されるアスペクト比は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.3〜1.0である。
【0024】
一方、背面側の表面層23の表面(光学フィルム4の背面27)は、凹凸のない平坦面とされている。
また、図4に示すように、光学フィルム4において、基材層21の厚さtは、各表面層22,23の厚さt,tに比べて厚く、例えば、0.1mm〜1.0mmである。また、前面側の表面層22の厚さtは、例えば、0.02mm〜0.2mmであり、背面側の表面層23の厚さtは、例えば、0.02mm〜0.2mmである。また、基材層21の厚さtと、前面側の表面層22の厚さtと、背面側の表面層23の厚さtとを足した光学フィルム4の総厚さTは、例えば、0.1mm〜1mmである。
【0025】
光拡散板10および光学フィルム4の原料としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、例えば、非晶性の透光性樹脂あるいは結晶性樹脂を用いることができる。
用いられる非晶性透光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。
【0026】
用いられる結晶性樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂などが挙げられる。
上記非晶性透光性樹脂および結晶性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、光拡散板10の原料として用いられる場合には、好ましくは、スチレン系樹脂、ポリカーボネートが挙げられ、さらに好ましくは、スチレン系樹脂の単独使用が挙げられる。また、光学フィルム4の原料として用いられる場合には、好ましくは、ポリカーボネート、アクリル樹脂、MS樹脂、AS樹脂が挙げられる。
【0027】
スチレン系樹脂としては、スチレン系単官能単量体単位を主成分(例えば、50重量%以上)とする重合体であって、例えば、スチレン系単官能単量体の単独重合体、スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とスチレン系単官能単量体の共重合体が挙げられる。
スチレン系単官能単量体としては、例えば、スチレン、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する化合物が挙げられる。
【0028】
スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有し、当該二重結合によりスチレン系単官能単量体と共重合する化合物である。そのような化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチルなどのメタクリル酸エステル類、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロヘキシルなどのアクリル酸エステル類、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0029】
上記スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、メタクリル酸エステル類が挙げられ、具体的に好ましくは、メタクリル酸メチルが挙げられる。
また、基材層14(基材層21)の原料として用いられる樹脂(A)と、表面層15,16(表面層22,23)の原料として用いられる樹脂(B)とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
本発明では、特に、半円凸条18および凹条19(半円凸条25および凹条26)からなる形状転写面が形成される前面側の表面層15(表面層22)は、上述した熱可塑性樹脂とともに、滑剤を含んでいる。
滑剤としては、例えば、エステル系ワックス、グリセリン脂肪酸エステル、エチレンビスステアリン酸アマイド、高級アルコール、高級脂肪酸、高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの滑剤は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、エステル系ワックス、グリセリン脂肪酸エステル、エチレンビスステアリン酸アマイドが挙げられ、さらに好ましくは、エステル系ワックスが挙げられる。
【0031】
そのような滑剤の市販品としては、例えば、エステル系ワックスとしては、「リケマール SL−02」、「リケスター EW−200」、「リケスター EW−250」(以上、理研ビタミン株式会社製)などが挙げられ、例えば、グリセリン脂肪酸エステルとしては、「エキセル T−95」(花王株式会社製)、「リケマール S−100」、「リケマール B−100」、「ポエム V−100」、「ポエム K−30」(以上、理研ビタミン株式会社製)、「エキセル T−95」、「エキセル P−40」(以上、花王株式会社製)などが挙げられ、例えば、エチレンビスステアリン酸アマイドとしては、「カオーワックス EB−P」(花王株式会社製)などが挙げられ、例えば、高級アルコールとしては、「カルコール 8098」(花王株式会社製)などが挙げられ、例えば、高級脂肪酸としては、「ルナック S70V」(花王株式会社製)などが挙げられ、例えば、高級アルコール脂肪酸エステルとしては、「リケマール SL−900」(理研ビタミン株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
そして、前面側の表面層15(前面側の表面層22)は、上記例示した熱可塑性樹脂100質量部と、滑剤0.1〜2.0質量部とを含み、好ましくは、熱可塑性樹脂100質量部と、滑剤0.2〜1.5質量部とを含む。つまり、前面側の表面層15(前面側の表面層22)における滑剤濃度は、0.1〜2.0質量部/熱可塑性樹脂100質量部、好ましくは、0.2〜1.5質量部/熱可塑性樹脂100質量部である。
【0033】
なお、滑剤は、熱可塑性樹脂とのマスターバッチとして用いることができる。マスターバッチとして用いることにより、熱可塑性樹脂と滑剤とが良好に混ざり合うので、本発明の効果をより効果的に発現できる。上記した配合割合は、熱可塑性樹脂および滑剤それぞれが2種以上の原料を併用して用いられる場合には、2種以上の原料の総量で示す。滑剤が上記範囲より多いと、光拡散板10および光学フィルム4を精度よく成形することが困難になる。
【0034】
一方、平坦面とされた背面側の表面層16(表面層23)は、製造工程を簡略化させる観点から、前面側の表面層15(表面層22)と同じように、熱可塑性樹脂とともに滑剤を含んでいることが好ましい。
また、光拡散板10および光学フィルム4には、必要により光拡散剤(光拡散粒子)を含有することができる。
【0035】
光拡散剤としては、光拡散板10および光学フィルム4を構成する熱可塑性樹脂と屈折率が異なり、透過光を拡散できる粒子であれば特に制限されず、例えば、無機系の光拡散剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは、脂肪酸などで表面処理が施されたものであってもよい。
【0036】
また、例えば、有機系の光拡散剤として、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などが挙げられ、好ましくは、重量平均分子量が50万〜500万の高分子量重合体粒子や、アセトンに溶解させたときのゲル分率が10質量%以上である架橋重合体粒子が挙げられる。
上記光拡散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
光拡散板10および光学フィルム4が光拡散剤を含有する場合、光拡散剤の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部、好ましくは、0.001〜0.01質量部である。また、光拡散剤は、上記熱可塑性樹脂とのマスターバッチとして用いることができる。また、熱可塑性樹脂の屈折率と光拡散剤の屈折率との差の絶対値は、光拡散性の観点から、通常、0.01〜0.20であり、好ましくは、0.02〜0.15である。
【0038】
また、光拡散板10および光学フィルム4には、必要により、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤などの各種添加剤を添加することもできる。
紫外線吸収剤としては、特に制限されず、例えば、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤を添加する場合には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜3質量部添加することが好ましい。上記した範囲であれば、紫外線吸収剤の表面へのブリードを抑制でき、光拡散板10および光学フィルム4の外観を良好に維持することができる。
【0039】
熱安定剤としては、特に制限されず、例えば、マンガン化合物、銅化合物などが挙げられる。熱安定剤を添加する場合には、紫外線吸収剤とともに添加し、熱可塑性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を2質量部以下の割合で添加することが好ましく、熱可塑性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を0.01〜1質量部添加することがさらに好ましい。
【0040】
また、酸化防止剤としては、特に制限されず、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、酸化防止剤を0.1〜3質量部添加することが好ましい。
そして、光拡散板10は、図4に示すように、ランプボックス7内の線状光源8に対して半円凸条18が平行となる位置において、ランプボックス7の側壁6に対して光拡散板10の背面20を当接させて、ランプボックス7に固定されている。これにより、ランプボックス7の開放面9が光拡散板10により塞がれている。また、光学フィルム4は、光拡散板10の前方に配置されている。
<光拡散板(樹脂シート)の製造方法>
上記した光拡散板10および光学フィルム4は、下記の方法により製造された樹脂シートを切断することにより作製することができる。なお、以下では、光拡散板10を製造する場合について説明するが、光学フィルム4も下記の方法に倣って製造することができる。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。図6は、下ロールが有する凹版転写型の模式断面図である。
シート製造装置51は、原料樹脂をシート状に押し出して成形するシート成形機52と、押し出された樹脂シート53を押圧により成形するための一組の押圧ロール群54と、樹脂シート53を引き取るための一対の引取ロール群55とを備えている。
【0042】
シート成形機52は、基材層14の原料樹脂(A)を加熱溶融するための主押出機56と、表面層15,16の原料樹脂(B)を加熱溶融するための補助押出機57と、押出機56,57で溶融された樹脂が供給されるフィードブロック58と、フィードブロック58内の樹脂をシート状態で押し出すためのダイ59とを備えている。
主押出機56および補助押出機57としては、例えば、一軸(単軸)押出機、二軸押出機など、公知の押出成形機を用いることができる。主押出機56および補助押出機57には、そのシリンダ内に樹脂を投入するためのホッパ60,61がそれぞれ取り付けられている。
【0043】
フィードブロック58としては、2種以上の樹脂をダイ59に供給し、積層した状態で共押出しできる型式であれば特に制限されず、例えば、2種3層分配型、2種2層分配型など、公知のフィードブロックを用いることができる。この実施形態では、3層光拡散板10(3層光学フィルム)を作製するので、2種3層分配型が用いられる。
ダイ59としては、共押出し用のダイであれば特に制限されず、例えば、マルチマニホールドダイなど、公知のダイを用いることができる。ダイ59のリップ(ダイリップ62)の幅は、目的とする樹脂シート53の幅に合わせて選択され、例えば、200mm〜3000mmである。
【0044】
押圧ロール群54は、樹脂シート53を押圧により成形しながら、樹脂シート53の表面76に転写型により凹凸を形成する機構として、3つの押圧ロール63〜65を備えている。
なお、樹脂シート53の表面76が、光拡散板10の前面17(前面側の表面層15の表面)を形成する面であり、最終的に形状加工が施される第1面としての形状転写面である。一方、樹脂シート53の裏面75が、光拡散板10の背面20(背面側の表面層16の表面)を形成する面であり、最終的に形状加工が施されない第2面(例えば、この実施形態では、平坦性が維持される平坦面)である。
【0045】
3つの押圧ロール63〜65は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、クロム製、銅製、ニッケル製、ステンレス製など、あるいは樹脂製の表面材質である)ロールからなり、その周面の温度(表面温度)を調節する機能を有する冷却ロールである。3つの押圧ロール63〜65は、上から下へ向かって順に上ロール63、第2ロールとしての中間ロール64、および第1ロールとしての下ロール65として、軸線が相互に平行となるように上下方向に配置されている。
【0046】
上ロール63の周面66および中間ロール64の周面67は、この実施形態では、例えば、鏡面加工が施されることにより平滑面(鏡面)とされている。
下ロール65の周面68には、樹脂シート53に半円凸条18および凹条19を形成するための形状転写型としての凹版転写型69が設けられている。凹版転写型69は、例えば、円柱状の金属製ロールの上に銅メッキを施し、メッキされた金属製ロールを旋盤に設置し、ダイヤモンドバイト、金属砥石などを用いて、銅メッキ層を狙いのレンズ形状に彫刻したり、ケミカルエッチング、レーザ加工などで溝を形成したりした後、銅上にクロムメッキ処理を施すことにより作製する。
【0047】
なお、金属製のロールに施すメッキ処理は、銅メッキに代えて、クロムメッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキであってもよい。また、凹版転写型69の表面は、凹版転写型69の形成後、例えば、表面形状の精度を損なわない範囲で、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施していてもよい。また、凹版転写型69が設けられていない上ロール63および中間ロール64の表面にも、必要に応じて、例えば、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
【0048】
より精密な形状を再現よく形成するため、旋盤−ダイヤモンドバイトの組み合わせが好ましく、銅上に施すクロムメッキ厚は、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
この凹版転写型69には、図6に示すように、半円凸条18とは反対型の凹部としての半円凹条70が、下ロール65の周面68の周方向に沿って多数筋状に形成されている。すなわち、凹版転写型69には、半円凹条70と、隣り合う半円凹条70との間の凸条71(この凸条71は凹条19とは反対型である。)とが、下ロール65の軸方向に沿って交互に配置されている。
【0049】
半円凹条70の深さ(凸条71の頂部から半円凹条70の最深部までの垂直距離)Hは、半円凸条18の高さH´よりもやや大きく、例えば、100μm〜1000μm、好ましくは、100μm〜900μmである。深さHが過剰に大きすぎると、半円凹条70の先端にまで樹脂を入り込ませることが難しくなる。
また、隣り合う半円凹条70の中心同士の距離(ピッチP)は、半円凸条18の形状に応じて適宜定められるが、例えば、30μm〜800μm、好ましくは、50μm〜500μmである。ピッチPが30μm未満の場合、樹脂が下ロール65に接触してすぐに固化するおそれがあり、その結果、樹脂が半円凹条70の先端にまで入り込まず、目標とする転写形状を得ることができないおそれがある。一方、ピッチPが800μmを超えている場合、ピッチの筋が肉眼でも観察されたり、液晶パネル3や光学フィルム4などとのモアレ模様が現れたりするおそれがある。
【0050】
また、凸条71の下ロール65の軸方向に沿う幅Eは、隣り合う半円凸条18間の間隔E´に応じて適宜定められるが、例えば、0.5μm〜10μmである。
また、半円凹条70のピッチPに対する高さHの比率(H/P)で表されるアスペクト比は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.3〜1.0である。
なお、半円凸条18の高さH´と半円凹条70の深さHとの差は、凹版転写型69が樹脂シート53に転写されて半円凸条18が形成される際の転写率(H´/H)(%)に起因するものである。
【0051】
また、押圧ロール63〜65の回転軸にはそれぞれモータ(図示せず)が接続されていて、上ロール63および下ロール65が反時計回りに回転可能であり、中間ロール64が時計回りに回転可能である。すなわち、押圧ロール63〜65は、上から順に「反時計回りに回転可能」、「時計回りに回転可能」、「反時計回りに回転可能」である。これにより、全てのロール63〜65が樹脂シート53を挟みこんだ状態で同期回転することができる。また、押圧ロール63〜65の回転速度を適宜調節することにより、樹脂シート53の搬送速度を調整することができる。
【0052】
各押圧ロール63〜65の直径は、例えば、100mm〜500mmである。また、押圧ロール63〜65として金属製ロールが用いられる場合、その表面に、例えば、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。
また、中間ロール64の近くには、中間ロール64上を搬送される樹脂シート53の表面76(転写される側の表面)を加熱するためのヒータ72が設置されている。
【0053】
ヒータ72は、中間ロール64の周面67に対して離間するように対向配置されていて、搬送される樹脂シート53を表面76側から加熱する。ヒータ72としては、例えば、赤外ヒータなど、公知のヒータを用いることができる。また、ヒータ72は、樹脂シート53が搬送されるラインに設置するインラインタイプのものであってもよいし、作業者が手に持って測定できるハンディタイプのものであってもよい。
【0054】
一対の引取ロール群55は、樹脂シート53を厚さ方向両側から挟み込む一対の引取ロール73,74を含んでいる。
引取ロール73,74は、それぞれ円柱状のロール(通常、表面が樹脂製のロール)からなり、下側の引取ロール73の上端が下ロール65の下端と同じ高さ位置となるように対向設置されている。これにより、下ロール65から送出される樹脂シート53を、送出直後の高さで支持したまま水平搬送できるので、搬送抵抗を小さくすることができる。
【0055】
次いで、上記した製造装置を用いた樹脂シート53の製造方法を説明する。
まず、主押出機56のホッパ60に基材層14の原料樹脂(A)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック58に供給される。一方、補助押出機57のホッパ61に表面層15,16の原料樹脂(B)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック58に供給される。主押出機56のシリンダ温度は、例えば、200℃〜250℃に設定される。また、補助押出機57のシリンダ温度は、例えば、190℃〜250℃に設定される。
【0056】
なお、原料樹脂(B)として、熱可塑性樹脂および滑剤を含むマスターバッチを使用する場合には、この工程に先立って、例えば、熱可塑性樹脂と滑剤とをドライブレンドし、当該ドライブレンド樹脂を押出機に投入し、220℃〜260℃で溶融混練する。そして、溶融した樹脂をストランド状に押し出し、ペレット状に切断することにより、ペレット状のマスターバッチを得る。マスターバッチを作製する際の押出機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機であれば、熱可塑性樹脂と滑剤とを良好に溶融混練させることができる。
【0057】
次いで、フィードブロック58内の樹脂が、ダイ59から共押出しされることにより(ダイ温度が、例えば、250℃〜260℃)、中間の基材層14および上下側の表面層15,16からなる3層の積層樹脂シート53として連続的に押し出される。
ダイ59から押し出された樹脂シート53は、まず、上ロール63と中間ロール64との間(ギャップ)に送り込まれ(この際、必要に応じてメルトバンクが形成される。)、上ロール63と中間ロール64とで挟み込まれて押圧される。その後、中間ロール64の周面67に裏面75(背面20)が密着して搬送される。搬送の際、樹脂シート53は中間ロール64により冷却されつつ、表面76側からヒータ72で加熱される。上ロール63および中間ロール64の表面温度としては、樹脂シート53の押出温度よりも低いことが好ましく、例えば、上ロール63の表面温度が50℃〜100℃であり、中間ロール64の表面温度が50℃〜120℃である。
【0058】
一方、ヒータ72の出力は、樹脂シート53が下ロール65と接する前の表面76の下ロール65入口温度T(R3前)が、例えば、原料樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg+50℃≦T(R3前)≦Tg+160℃の範囲、好ましくは、Tg+70℃≦T(R3前)≦Tg+140℃の範囲となるように適宜調節する。これにより、適切な流動性を保持した状態の樹脂シート53を中間ロール64と下ロール65との間に突入させることができる。そのため、凹版転写型69の半円凹条70の先端まで良好に樹脂を入り込ませることができる。
【0059】
そして、搬送される樹脂シート53は、中間ロール64と下ロール65との間(ギャップ)に入り込み、中間ロール64と下ロール65とで挟み込まれて押圧される。そして、中間ロール64と下ロール65との押圧の際、樹脂シート53の表面76(前面17)には、凹版転写型69の表面形状が転写されることによりシートの流れ方向(送出方向)に平行な筋状の半円凸条18が多数本形成される。
【0060】
その後、樹脂シート53は、下ロール65の周面68に表面76が密着して搬送される。樹脂シート53の押圧および搬送の際、下ロール65の表面温度T(R3)は、原料樹脂(B)のガラス転移温度をTgしたとき、Tg−30℃≦T(R3)≦Tg+50℃の範囲、好ましくは、Tg−20℃≦T(R3)≦Tg+40℃の範囲に調節される。
下ロール65の表面温度T(R3)が、上記した範囲であれば、凹版転写型69に樹脂シート53が貼り付く「トラレ現象」の発生を防止しつつ、凹版転写型69の半円凹条70の先端まで良好に樹脂を入り込ませることができる。
【0061】
搬送後、樹脂シート53は、下ロール65の下端において下ロール65から剥離して、引取ロール群55へと水平方向に送出される。その後、一対の引取ロール73,74により引き取られて樹脂シート53が製造される。そして、樹脂シート53がさらに冷却された後、適当な大きさで切断されることにより、上記光拡散板10を得ることができる。
なお、樹脂シート53の搬送速度(製造ラインの速度)Vは、樹脂シート53(光拡散板10)の総厚さTを用いて、例えば、0.2/T(m/min)≦V≦50/T(m/min)の範囲、好ましくは、0.3/T(m/min)≦V≦40/T(m/min)の範囲となるように調節される。搬送速度Vが上記範囲であれば、凹版転写型69に樹脂シート53が貼り付く「トラレ現象」の発生を防止しつつ、比較的短いサイクルタイムで樹脂シート53を生産できるので、生産性がよい。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、光拡散板10(光学フィルム4)において、半円凸条18および凹条19(半円凸条25および凹条26)からなる形状転写面が形成される前面側の表面層15(表面層22)が、熱可塑性樹脂および滑剤を含む樹脂組成からなる。また、その配合割合が、熱可塑性樹脂100質量部および滑剤0.1〜2.0質量部である。
【0063】
これにより、凹版転写型69の半円凹条70の先端まで樹脂を良好に入り込ませることができる。そのため、樹脂シート53の表面76に凹版転写型69の凹凸形状を精度よく転写することができる。しかも、下ロール65の表面温度T(R3)が高くなっても、凹版転写型69に樹脂シート53が貼り付く「トラレ現象」の発生を防止することができる。その結果、得られる樹脂シート53におけるタックマークの発生を防止することができる。
【0064】
よって、本実施形態によれば、光学設計により最適化された凹版転写型69の形状を、樹脂シート53の半円凸条18として良好に再現することができる。したがって、この樹脂シート53からなる光拡散板10は、優れた光学特性を発現することができる。また、上記の方法に倣って光学フィルム4を製造すれば、その光学フィルム4は、優れた光学特性を発現することができる。
【0065】
すなわち、この実施形態で開示された製造手法を用いることにより、従来の製造手法では転写困難であった難易度の高いプリズム形状や、高H´/P´比(0.5以上)、狭ピッチ形状(30μm以下)についても、転写率を精度よく向上させることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
【0066】
例えば、下ロール65の周面68には、凹版転写型69に代えて、図7〜図11にそれぞれ示す、凹版転写型77〜81を設けることもできる。
図6の凹版転写型69と図7の凹版転写型77との違いは、凹版転写型69では、凸条71の頂部に所定の幅Eが設けられているのに対し、凹版転写型77では、凸条71の頂部が尖端状に形成されている点である。その結果、凹版転写型77では、隣り合う半円凹条70が互いに密着している。
【0067】
図6の凹版転写型69と図8の凹版転写型78との違いは、凹版転写型78では、隣り合う凸条71の間に、略半楕円形状の輪郭を有する半楕円凹条82が形成されている点である。
図6の凹版転写型69と図9の凹版転写型79との違いは、凹版転写型79では、隣り合う凸条71の間に、半楕円の円弧の一部からなる扁平湾曲状の輪郭を有する扁平凹条83が形成されている点である。
【0068】
図6の凹版転写型69と、図10および11の凹版転写型80,81との違いは、凹版転写型80,81では、断面がV字状(三角状)の三角凸条84(例えば、頂点角度θが40°〜160°)が多数筋状に形成されている点である。これにより、凹版転写型80,81には、隣り合う三角凸条84間に三角凹条85が形成されている。とりわけ、図10の凹版転写型80では、三角凹条85の底部に、下ロール65の軸方向に沿う所定の幅Eが設けられている。
【0069】
また、前述の実施形態では、凹版転写型69が設けられた形状ロールは、下ロール65として配置されていたが、例えば、図12に示すように、中間ロール64として配置されていてもよい。この場合、中間ロール64入口温度T(R2前)が、例えば、原料樹脂(B)のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg+50℃≦T(R2前)≦Tg+160℃の範囲、好ましくは、Tg+70℃≦T(R2前)≦Tg+140℃の範囲となるように適宜調節する。中間ロール64入口温度T(R2前)の調節は、ヒータ72を、ダイ59から押し出された樹脂シート53の裏面75(転写される側の表面)を加熱できるように設置し、そのヒータ72の出力を調節したり、ダイ59の温度を調節したりすることにより行うことができる。
【0070】
また、前述の実施形態では、光拡散板10の背面20および光学フィルム4の背面27は、凹凸のない平坦面であるとしたが、例えば、エンボス加工などが施されて微細な凹凸を有するマット面であってもよい。その場合、樹脂シート53の裏面75をエンボス加工などすればよい。樹脂シート53の裏面75をエンボス加工するには、例えば、樹脂シート53の製造装置51において、中間ロール64の周面67にエンボス形状の転写型を設け、当該転写型を転写すればよい。
【0071】
また、押圧ロール群54は、前述の実施形態では、上ロール63、中間ロール64および下ロール65が鉛直方向に並べて配置される形態であったが、例えば、3つの押圧ロールが水平方向や斜め方向に並べて配置される形態であってもよい。
また、例えば、搬送または樹脂シート53と押圧ロール63〜65との密着を補助する転写技術上無関係なロールであれば、樹脂シート53および凹版転写型69に接するロール(タッチロール)が設けられていてもよい。
【0072】
また、例えば、光拡散板(樹脂シート)は、光拡散板10や光学フィルム4のような3層積層樹脂板(フィルム)に限定されるものではなく、例えば、単層樹脂板であってもよい。また、2層樹脂板、4層以上の層からなる複数層の樹脂板であってもよい。
また、光拡散板10は、バックライト用の光拡散板として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。例えば、エッジライト方式の液晶表示装置のバックライト用の導光板として使用することもできる。
【0073】
また、バックライトシステム2は、液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1〜3および比較例1>
図1に示す樹脂シート製造装置と同様の構成を有する装置を用いた。押圧ロールは、上ロールおよび中間ロールとして、表面にクロムメッキが施された鏡面冷却ロールを用いた。また、下ロールとして、表面材質がクロムからなり、当該表面の全域にロール回転方向と平行に凹型レンズ形状(断面が半円形状)が形成された形状ロールを用いた。凹型レンズ形状を有する凹版転写型のピッチPは400μm、深さHは200μm、間隔Eは5μmであった。
【0075】
樹脂シートの製造に際しては、まず、熱可塑性樹脂および滑剤のマスターバッチ(原料樹脂(B))を作製した。具体的には、スチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製「HRM40」 Tg102℃)100質量部および下記表1に示す滑剤1.0質量部をドライブレンドした後、スクリュー径30mmの二軸押出機に供給した。その後、シリンダ温度230℃〜260℃で溶融混練した後、樹脂をストランド状に押し出し、これをペレット状に切断した。これにより、ペレット状のマスターバッチ(原料樹脂(B))を得た。
【0076】
次いで、原料樹脂(A)としてのスチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製「HRM40」 Tg102℃)を、スクリュー径40mmの単軸主押出機に供給し、シリンダ温度200℃〜250℃で加熱溶融した後、2種3層分配型のフィードブロックに供給した。
一方、先に得られたマスターバッチ(原料樹脂(B))を、スクリュー径20mmの単軸補助押出機に供給し、シリンダ温度190℃〜250℃で加熱溶融した後、2種3層分配型のフィードブロックに供給した。
【0077】
次いで、主押出機から供給された原料樹脂(A)が基材層となり、補助押出機から供給された原料樹脂(B)が両側の表面層となるように、フィードブロック内の樹脂を、ダイ温度250℃〜260℃でマルチマニホールドダイ(幅:250mm)により共押出しした。
その後、押し出された樹脂シートを、上ロール(鏡面冷却ロール)と中間ロール(鏡面冷却ロール)で挟み込み、中間ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、中間ロールと下ロール(転写型装着ロール)とで挟み込み、下ロールの表面に巻きつけた状態で搬送し、下ロールから剥離した樹脂シートを引き取りロールで引き取った。これにより、表面(上面)に凹形状が転写された、厚さTが2mmの表面形状転写樹脂シートを得た。なお、シートの搬送速度(ライン速度)は、0.66m/min(0.2/T〜50/T)であった。また、下ロールに接する前の樹脂シートの温度(下ロール入口温度T(R3前))は、ヒータにより調節した。
【0078】
そして、下ロールの表面温度T(R3)を変化させ、各条件下の製造工程におけるトラレ現象の発生の有無(タックマークの有無)を確認した。また、得られた樹脂シートの断面を顕微鏡で観察し、凸条の高さH´を測定することにより形状転写率Tを求めた。
形状転写率T(%)=樹脂シートの凸条の高さH´/下ロールの凹条の深さH(200μm)×100
<形状転写率Tおよびトラレ現象評価>
実施例1〜3および比較例1により得られた形状転写率Tおよびトラレ現象評価の結果を下記表1に示す。
【0079】
【表1】

【符号の説明】
【0080】
4 光学フィルム
10 光拡散板
17 (光拡散板の)前面
20 (光拡散板の)背面
24 (光学フィルムの)前面
27 (光学フィルムの)背面
53 樹脂シート
59 ダイ
64 中間ロール
65 下ロール
67 (中間ロールの)周面
68 (下ロールの)周面
69 凹版転写型
70 半円凹条
75 (樹脂シートの)裏面
76 (樹脂シートの)表面
77 凹版転写型
78 凹版転写型
79 凹版転写型
80 凹版転写型
81 凹版転写型
82 半楕円凹条
83 扁平凹条
85 三角凹条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の組成を有する樹脂を溶融状態でダイから連続的に押し出すことにより、第1面および第2面を有する連続樹脂シートを、当該第1面の樹脂組成が熱可塑性樹脂100質量部および滑剤0.1〜2.0質量部を含むように形成するシート形成工程と、
周面に形状転写型が形成された第1ロールと、当該第1ロールの前記周面に対して回転対向する第2ロールとで前記連続樹脂シートを挟み込むことにより、前記連続樹脂シートの前記第1面に対して前記形状転写型の形状を転写する転写工程と
を含むことを特徴とする、表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記滑剤が、エステル系ワックス、グリセリン脂肪酸エステルまたはエチレンビスステアリン酸アマイドであることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記転写工程では、前記第1ロールの前記形状転写型の温度を、100〜110℃の範囲に制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記形状転写型は、前記第1ロールの前記周面の周方向に沿って凹部が筋状に形成された凹版転写型を含み、
前記凹部のピッチが30μm〜800μmであり、前記凹部の深さが30μm〜800μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−111108(P2012−111108A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261332(P2010−261332)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】