説明

表面性状測定装置、表面性状測定方法、及びプログラム

【課題】高精度に接触子の交換判定を実行可能な表面性状測定装置、表面性状測定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御部51は、接触子24を基準ワーク4Aの表面に倣うように駆動すると共に接触子24の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列P1iとして取得する。制御部51は、第1擬似測定点列P1i、及び基準ワーク4Aの表面を特定する設計面S0に基づき、接触子24の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルM1を算出する。制御部51は、被測定物4Aの表面41Aを特定する参照面S2に接触子モデルM1の表面が接し且つ測定時の接触子24と接触子モデルM1との姿勢を一致させるように接触子モデルM1を配置し、接触子モデルM1の基準位置Oを、第2擬似測定点列P2iとして算出する。制御部51は、第2擬似測定点列P2iに基づき、接触子24を交換すべきか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子を用いて変位測定を行う3次元測定機などの表面性状測定装置、表面性状測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
接触式プローブ(接触子)を使用した接触測定方式においては、使用される接触子の先端形状の変形(磨耗、破損など)を検査する必要がある。この接触子の先端形状の変形検査としては、以下に示す2つの方法がある。第1の方法は、接触子の先端を顕微鏡で観察して検査する方法である。第2の方法は、特定の基準ワークを測定し、その測定結果により検査する方法である。しかしながら、現状、一般に顕微鏡が使用できない測定環境が多く、上記第2の方法で検査が行われている。
【0003】
第2の方法を詳細に説明する。先ず、測定機は、基準ワークに接触子を接触させ、接触子を基準ワークに沿って移動させることで、擬似測定点列を取得する。ここで、擬似測定点列とは、測定時に得られる接触子の中心の軌跡をサンプリングして得られた離散化された点列である。擬似測定点列については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
続いて、測定機は、擬似測定点列から特定の粗さパラメータ(評価量)を算出し、その粗さパラメータに基づき、接触子を交換すべきか否かを判定する(交換判定)。具体的に、交換判定は、現時点の特定の粗さパラメータと、公称値とを比較して行われる。ここで、公称値とは、正常な接触子を使用して測定した場合に、得られる特定の粗さパラメータを意味する。基準ワークを測定して得られた粗さパラメータと公称値とが大きく相違する場合には、接触子が変形しているので交換すべきと判断する。また、交換判定は、現時点の特定の粗さパラメータと、過去の特定の粗さパラメータとを比較して行われることもある。更には、接触子の形状変化に敏感な基準ワークと鈍感な基準ワークを測定し、それらの粗さパラメータとの比を評価量とすることにより、検査の精度を向上させようとする提案もなされている。このように、従来の交換判定は、接触子にて基準ワークを測定して得られる特定の粗さパラメータに基づき判定される。
【0005】
しかしながら、接触子の変形に伴う粗さパラメータの変化量は、その粗さパラメータを求めるために測定する被測定物の表面性状に依存して変化する。よって、従来の交換判定では、基準ワークを測定して得られた特定の粗さパラメータに基づく変化量が所定値以下(交換が必要であると判定されない場合)であっても、実際に測定する被測定物の測定において求められる粗さパラメータによる評価値が基準値を満たさない場合があり得る。すなわち、従来の交換判定では、実際の被測定物の測定に影響を与える接触子の変形を正確に特定することができず、接触子を交換すべきか否かは、正確に判断されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−357415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高精度に接触子の交換判定を実行可能な表面性状測定装置、表面性状測定方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表面性状測定装置は、被測定物に先端が接触可能な接触子と、前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する第1擬似測定点列取得手段と、前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する接触子モデル演算手段と、前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する第2擬似測定点列取得手段と、前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する交換判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る表面性状測定方法は、被測定物に先端が接触可能な接触子を用いた表面性状測定方法であって、前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する工程と、前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する工程と、前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する工程と、前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る表面性状測定プログラムは、被測定物に先端が接触可能な接触子を用いた表面性状測定プログラムであって、コンピュータに、前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する工程と、前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する工程と、前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する工程と、前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する工程と実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度に接触子の交換判定を実行可能な表面性状測定装置、表面性状測定方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面性状測定装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】第1実施形態における基準ワーク4Aを示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る表面性状測定装置の演算処理装置本体21の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】「簡易モデル」及び「詳細モデル」を示す図である。
【図6】図4のステップS102の処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS201の処理を示す概略図である。
【図8】図6のステップS202の処理を示す概略図である。
【図9】図4のステップS103の処理を示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS302〜S304の処理を示す概略図である。
【図11】接触子モデルM1A、M1Bを示す図である。
【図12】参照面S2A、第2擬似測定点列P2iAA、P2iAB、及びそれらの粗さパラメータの変化率を示す図である。
【図13】参照面S2B、第2擬似測定点列P2iBA、P2iBB、及びそれらの粗さパラメータの変化率を示す図である。
【図14】第2実施形態における基準ワーク4Bを示す斜視図である。
【図15】第2実施形態に係る図4のステップS102の処理を示すフローチャートである。
【図16】図15のステップS201aの処理を示す概略図である。
【図17】図15のステップS206aの処理を示す概略図である。
【図18】図15のステップS206aの処理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
[第1実施形態に係る表面性状測定装置の構成]
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る表面性状測定装置の構成を説明する。この表面性状測定装置は、測定機本体1と、駆動制御装置1aを介して測定機本体1に接続された演算処理装置2とから構成される。測定機本体1は、基台3と、この基台3上に設けられて被測定物4を載置するテーブル5と、このテーブル5に載置された被測定物4の表面の変位を検出する変位検出装置6と、これらを操作するための操作部7とを備えて構成されている。テーブル5は、基台3上を図中X軸方向(左右方向)、及び図中Y軸方向(紙面と直交する方向)に移動可能に構成されている。また、テーブル5は、基準ワーク4の載置面を任意の姿勢に調整可能な傾斜調整機能付きの構成を有している。
【0015】
変位検出装置6は次のように構成されている。即ち、基台3には上方に延びるコラム21が立設されており、このコラム21にスライダ22が上下動可能に装着されている。スライダ22にはスタイラス23が装着されている。スタイラス23は、水平(X軸)、垂直(Z軸)方向に駆動可能に構成されており、その先端には接触子24が設けられている。すなわち、スタイラス23は、テーブル5に対して相対移動可能に構成されている。接触子24は、その先端が被測定物に接触可能に構成されている。
【0016】
スライダ22及びスタイラス23をテーブル5に対して相対的に移動させ、接触子24で、テーブル5上に載置された被測定物4の表面をトレースすることによってX軸方向の各位置における表面の高さZを第1擬似測定点列P1iとして取り込む。なお、コラム21、スライダ22、及びスタイラス23は、接触子24を駆動させる接触子駆動手段を構成している。
【0017】
また、測定機本体1の定盤11上には、被測定物4の他に、図2に示す基準ワーク4Aが配置される。基準ワーク4Aは、既知の形状(基準形状)を有するものであって、接触子モデルM1の生成に用いられる。接触子モデルM1は、擬似空間上に配置され、接触子24の表面形状を現す情報である。基準ワーク4Aの表面41Aは、図2に示すように、所定ピッチで所定方向に凹凸をもつように形成されている。
【0018】
演算処理装置2は、変位検出装置6で得られた第1擬似測定点列P1iを取り込む。演算処理装置2は、演算処理を実行する演算処理装置本体31、及び操作部32、表示画面33を有する。
【0019】
次に、図3を参照して、演算処理装置本体31の構成について説明する。演算処理装置本体31は、図3に示すように、主に、制御部(CPU:Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、HDD(Hard Disk Drive)54、表示制御部55を有する。演算処理装置本体31において、操作部32から入力されるコード情報及び位置情報は、I/F56aを介して制御部51に入力される。制御部51は、ROM53に格納されたマクロプログラム及びHDD54からI/F56bを介してRAM52に格納された各種プログラムに従って、各種の処理を実行する。
【0020】
制御部51は、測定実行処理に従って、I/F56cを介して測定機本体1を制御する。また、制御部51は、表示制御部55を介して表示画面24に測定結果等を表示する。制御部51は、HDD54から各種プログラムを読み出し、それらプログラムを実行することにより、後述する図4に示す動作を実行する。制御部51は、接触子24を移動させる。制御部51は、接触子24を被測定物4又は基準ワーク4Aの表面に倣うように駆動させる。RAM52は、各種プログラムを格納する他、各種処理のワーク領域を提供する。HDD54は、各種制御プログラムを格納する記録媒体である。
【0021】
[第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作]
次に、図4を参照して第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作について説明する。先ず、制御部51は、図4に示すように、基準ワーク4A上で接触子24を倣うように駆動させて、接触子24の所定位置、例えば中心位置Oの軌跡を離散的な第1擬似測定点列P1iとして取得する(ステップS101)。
【0022】
続いて、制御部51は、第1擬似測定点列P1i、及び基準ワーク4Aの表面41Aを特定する設計面S0に基づき接触子モデルM1を生成する(ステップS102)。
【0023】
接触子モデルM1の生成方法については、後に詳細に説明するが、例えば、図5の(a)に示すように、球の先端までの変形を平面で近似した「簡易モデル」を使用する方法、同図(b)に示すように、先端形状を離散化させて詳細に表現した「詳細モデル」を使用する方法等が考えられる。また、接触子24の3次元形状が必要な場合には、接触子24またはテーブル5を回転可能に構成しておき、基準ワークとして既知の基準半球を用い、基準半球と接触子24との間の各回転位置について第1疑似測定点列P1iを取得する。次に、各回転位置において取得された第1疑似測定点列P1iに基づき、接触子24の2次元モデルを算出する。そして、算出された接触子24の各回転位置における2次元モデルを合成して3次元の接触子モデルM1を算出するようにしても良い。
【0024】
次に、制御部51は、接触子モデルM1、及び被測定物4の表面を特定する参照面S2に基づき、第2擬似測定点列P2iを生成する(ステップS103)。具体的に、制御部51は、参照面S2に接触子モデルM1の表面が接し且つ測定時の接触子24と接触子モデルM1との姿勢を一致させるように接触子モデルM1を配置し、接触子モデルM1の基準位置を、第2擬似測定点列P2iとして算出する。参照面S2は、予め記憶されている代表的な面性状(旋削面、研削面、ホーニング面など)である。また、参照面S2は、以前に被測定物4を測定した際の測定値にて構成されていてもよい。
【0025】
ステップS103に続いて、制御部51は、第2擬似測定点列P2iに基づき、評価量Dを計算する(ステップS104)。評価量Dは、設計面S2に固有の粗さパラメータである。そして、制御部51は、評価量Dに基づき、接触子24を交換すべきか否かを判定する交換判定を行う(ステップS105)。
【0026】
ステップS105において、制御部51は、「上記の評価量D」と「公称値に従って作成した接触子モデルに基づく評価量D0」とを比較する。或いは、制御部51は、「上記の評価量D」と「評価量Dよりも以前に生成した接触子モデルに基づく評価量D0」とを比較する。具体的に、制御部51は、以下の(数式1)に示す「判定値F」が許容範囲内に入るか否かで交換判定を行う。
【0027】
F=100×((D−D0)/D0) …(数式1)
【0028】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、上記ステップS102について詳細に説明する。ここでは、図5の(a)に示す「簡易モデル」を使用した例について記載する。制御部51は、ステップS101に続いて、基準ワーク4Aに対する第1擬似測定点列P1iに基づき、第1擬似測定面S1を生成する(ステップS201)。ここで、基準ワーク4Aの表面41Aは、図7に示すように所定方向に所定ピッチをもって凹凸状に形成されている。よって、測定により得られる擬似測定点列P1iは、この表面41Aから所定距離をもって凹凸状に分布する。第1擬似測定面S1は、これら第1擬似測定点列P1iを結ぶ面で表現される。
【0029】
ステップS201に続いて、制御部51は、図8に示すように、第1擬似測定面S1と基準ワーク4Aの設計面S0とを照合させ、接触子モデルM1を生成する(ステップS202)。接触子24の先端が変形している場合、本来の形状の場合に得られる曲線とズレが生じるので、このずれ量ΔRpを知ることによって、接触子モデルM1を生成することができる。以上で、制御部51は、ステップS102の処理を終了させる。
【0030】
次に、図9のフローチャートを参照して、上記ステップS103について詳細に説明する。制御部51は、キーボード22及びマウス23からの情報を受け付け、被測定物4の参照面S2を特定する(ステップS301)。続いて、制御部51は、参照面S2を構成する任意の点Hiを対象として、測定時の姿勢で接触子モデルM1を所定位置に配置する(ステップS302)。ここで、例えば、所定位置は、図10の(a)に示すように、接触子モデルM1の表面が、点Hiに交わる位置である。
【0031】
次に、制御部51は、接触子モデルM1の姿勢を保ちつつ接触子モデルM1を所定方向Vに移動させる(ステップS303)。ここで、所定方向Vは、図10の(b)に示すように、Z軸に平行な方向である。続いて、制御部51は、所定方向Vに移動させて接触子モデルM1が参照面S2に接触する位置を求める。このときの接触子モデルM1の基準位置(例えば、中心位置)Oを第2擬似測定点列P2iとして取得する(ステップS304)。次に、制御部51は、参照面S2を構成する全ての点Hiに対して、ステップS302〜ステップS304の処理を実行したか否かを判断する(ステップS305)。ここで、制御部51は、参照面S2を構成する全ての点Hiに対して、ステップS302〜ステップS304の処理を実行していないと判断すると(ステップS305、N)、再びステップS302〜ステップS304の処理を実行する。一方、制御部51は、参照面S2を構成する全ての点Hiに対して、ステップS302〜ステップS304の処理を実行したと判断すると(ステップS305、Y)、上記処理を終了させる。
【0032】
次に、図11〜図13を参照して、上記ステップS104について詳細に説明する。図11は、接触子モデルM1A、M1Bを示す図である。図11(a)に示すように、接触子モデルM1Aの先端は、半球状に形成されており、磨耗のない状態を示している。また、同図(b)に示すように、接触子モデルM1Bの先端は、平面状に形成されており、磨耗した状態を示している。
【0033】
図12は、所定の表面性状をもつ参照面S2A、その参照面S2Aに対して接触子モデルM1A、M1Bを用いて生成した第2擬似測定点列P2iAA、P2iABを示している。また、図12は、第2擬似測定点列P2iAAに基づく粗さパラメータから、第2擬似測定点列P2iABに基づく粗さパラメータに変化する場合(接触子24の先端が、半球状から平面状に磨耗する場合)であって参照面S2Aを対象とした場合における、粗さパラメータの変化率を示している。
【0034】
図13は、参照面S2B、その参照面S2Bに対して接触子モデルM1A、M1Bを用いて生成した第2擬似測定点列P2iBA、P2iBBを示している。参照面S2Bは、参照面S2Aと異なる表面性状をもち、参照面S2Aよりも平坦に形成されている。また、図13は、第2擬似測定点列P2iBAに基づく粗さパラメータから、第2擬似測定点列P2iBBに基づく粗さパラメータに変化する場合(接触子24の先端が、半球状から平面状に磨耗する場合)であって参照面S2Bを対象とした場合における、粗さパラメータの変化率を示している。
【0035】
図11〜図13に示すように、接触子モデルM1(M1A、M1B)の形状変化により、粗さパラメータは、変化する。また、粗さパラメータの変化率は、参照面S2(S2A、S2B)の表面性状に依存して変化する。制御部51は、ステップS104にてこの粗さパラメータを評価量Dとする。例えば、制御部51は、図12に示す参照面S2Aを対象とする場合、変化率の最も大きい粗さパラメータ“λa”を評価量Dとする。また、制御部51は、図13に示す参照面S2Bを対象とする場合、変化率の最も大きい粗さパラメータ“mra[5.000%]”を評価量Dとする。
【0036】
[第1実施形態に係る表面性状測定装置の効果]
第1実施形態に係る表面性状測定装置において、制御部51は、上記のように、基準ワーク4Aを測定して接触子モデルM1を生成し、その接触子モデルM1に基づき、実際に測定する測定面に対応した参照面S2を測定した場合に得られる第2擬似測定点列P2iを生成し、この第2擬似測定点列P2iに基づき評価量Dを計算し、接触子24の交換判定処理を実行する。
【0037】
したがって、第1実施形態に係る表面性状測定装置は、実際に測定する被測定物4に対して、接触子24の先端形状が適切であるかどうかを判断することができる。すなわち、第1実施形態に係る表面性状測定装置は、高精度で交換判定を実行することができる。
【0038】
[第2実施形態]
[第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作]
【0039】
次に、第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作について説明する。第2実施形態に係る表面性状装置は、図4に示すステップS102において、「詳細モデル」を生成する方法による処理を実行する。
【0040】
第2実施形態においては、第1実施形態の凹凸面を有する基準ワーク4Aの代わりに、図13に示す半球状の基準ワーク4Bが用いられる。
【0041】
続いて、図15のフローチャートを参照して、基準ワーク4Bを用いた第2実施形態のステップS102について詳細に説明する。制御部51は、基準ワーク4Bに対する第1擬似測定点列P1iaに基づき、擬似測定面S1aを生成する(ステップS201a)。ここで、基準ワーク4Bの表面41Bは、図16に示すように半球状に形成されている。よって、測定により得られる第1擬似測定点列P1iaは、この表面41Bから所定距離をもって半球状に分布する。擬似測定面S1aは、これら第1擬似測定点列P1iaを結ぶ面で表現される。
【0042】
ステップS201aに続いて、制御部51は、擬似測定面S1aと基準ワーク4Bの設計面S0aとを照合させる(ステップS202a)。次に、制御部51は、初期接触子モデルM0の入力を受け付ける(ステップS203a)。続いて、制御部51は、初期接触子モデルM0の基準位置を第1擬似測定点列P1iaに合わせるように、初期接触子モデルM0を配置する(ステップS204a)。次に、制御部51は、初期接触子モデルM0と基準ワーク4Bの設計面S0aとの接触状況を確認する(ステップS205a)。
【0043】
続いて、制御部51は、接触状況に基づき、初期接触子モデルM0を修正する(ステップS206a)。ここで、制御部51は、図17に示すように、初期接触子モデルM0が設計面S0Bに食い込んでいる場合、設計面S0aに接するように初期接触子モデルM0を窪ませて修正する。また、制御部51は、図18に示すように、初期接触子モデルM0が設計面S0aから離れている場合、設計面S0aに接するように初期接触子モデルM0を突出させて修正する。
【0044】
ステップS206aに続いて、制御部51は、修正した値が所定値未満であるか否かを判断する(ステップS207a)。ここで、制御部51は、修正した値が所定値未満でないと判断する場合(ステップS207a、N)、ステップS204a〜ステップS206aの処理を再び実行する。一方、制御部51は、修正した値が所定値未満であると判断する場合(ステップS207a、Y)、上記処理を終了させる。
【0045】
[第2実施形態に係る表面性状測定装置の効果]
第2実施形態に係る表面性状測定装置は、初期接触子モデルM0を複数回に亘って修正することで、接触子モデルM1を生成する。したがって、第2実施形態に係る表面性状測定装置は、第1実施形態よりも高精度に接触子モデルM1を生成することができ、もって第1実施形態よりも高精度に交換判定を実行することができる。
【0046】
[その他の実施形態]
以上、表面性状測定装置の実施形態を説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、本発明は、輪郭測定機にも適応可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…測定機本体、 2…演算処理装置、 4…被測定物、 4A、4B…基準ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に先端が接触可能な接触子と、
前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する第1擬似測定点列取得手段と、
前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する接触子モデル演算手段と、
前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する第2擬似測定点列取得手段と、
前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する交換判定手段と
を備えることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
前記交換判定手段は、前記第2擬似測定点列を用いて粗さパラメータを算出し、当該粗さパラメータに基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の表面性状測定装置。
【請求項3】
被測定物に先端が接触可能な接触子を用いた表面性状測定方法であって、
前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する工程と、
前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する工程と、
前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する工程と、
前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する工程と
を備えることを特徴とする表面性状測定方法。
【請求項4】
被測定物に先端が接触可能な接触子を用いた表面性状測定プログラムであって、
コンピュータに、
前記接触子を基準形状を持つ基準ワークの表面に倣うように駆動させると共に前記接触子の所定位置の軌跡を第1擬似測定点列として取得する工程と、
前記第1擬似測定点列、及び前記基準ワークの表面を特定する設計面に基づき、前記接触子の表面形状を示し且つ擬似空間上に配置される接触子モデルを算出する工程と、
前記被測定物の表面を特定する参照面に前記接触子モデルの表面が接し且つ測定時の前記接触子と前記接触子モデルとの姿勢を一致させるように前記接触子モデルを配置し、前記接触子モデルの基準位置を、第2擬似測定点列として算出する工程と、
前記第2擬似測定点列に基づき、前記接触子を交換すべきか否かを判定する工程と
を実行させるための表面性状測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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