説明

表面材、表面材を備えた建築用壁材及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、最適条件に粉砕された遠赤外線放射物質を構成成分として有することにより、遠赤外線効果を発揮することが可能な表面材及びその表面材を備えた建築用壁材を提供することにある。
【解決手段】建築用建材の表面に塗布される表面材Tに関する。
表面材Tは、遠赤外線放射物質を粉砕して得られる粉末体T2を有して構成されており、粉末体T2の粒径は、0.9μm以上50μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面材、表面材を備えた建築用壁材及びその製造方法に係り、特に、表面に塗布されることにより遠赤外線効果を奏する表面材、表面材を備えた建築用壁材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等を構成する建材においては、断熱性、防火性、防湿性等、住宅に必要とされる(住環境を快適にするために要求される)機能を向上させることを目的として、その機能性構成成分として様々な素材が使用されてきた。
このような機能性構成成分としては、通気性及び断熱性を向上させることを目的とした多孔性素材、脱臭性を向上させることを目的とした臭気吸着材、カビの発生を防止することを目的とした防カビ材等が使用されることが多い。
このように、機能性構成成分を何等かの形態で、建材に使用することにより、住環境の快適化を図ることが行われている。
【0003】
一方、近年、遠赤外線が人体及び環境に与える様々な効果が、各種研究により解明されてきた。
例えば、この遠赤外線は、血行促進、発汗作用促進、温熱作用、安眠促進、脱臭作用、抗菌作用、水質浄化作用等の様々な効果を奏するといわれており、暖房、乾燥、健康、医療、美容、保温等様々な用途に使用されている。
つまり、岩盤浴場等の内壁、エステティック用マット表面材、エステティック用化粧品添加剤等の用途に広く使用されている。
【0004】
遠赤外線とは、電磁波の一種である。
電磁波の中で、波長0.75μm〜1000μmの波長領域に属するものを、一般的に赤外線と称しており、この赤外線は、更にその波長領域に応じて、近赤外線、遠赤外線、超遠赤外線に分類される。
遠赤外線とは、赤外線領域のうち4.0μm〜25μmの波長領域に属するものを指す。
【0005】
遠赤外線は、電気極性を持つ分子に運動エネルギーを与えて、分子を活性化する。
このように活性化した分子は加速度を得て他の分子と衝突し、この衝突により熱が生じることとなる。
つまり、遠赤外線は、分子に自己発熱を生じさせる電磁波である。
また、遠赤外線は電磁波であるため放射伝達され、このため、遠赤外線は物質の表面ではなく、物質内部を暖める(物質内部の分子を自己発熱させる)ことができる。
このような遠赤外線の効用に着目し、遠赤外線放射物質を機能性構成成分として使用して建築用の建材を作成する技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1には、機能性建築組成物が開示されている。
この機能性建築組成物は、水硬性の基材と、イオン性を有する機能性素材と、この機能性素材との間にイオン性結合を生成することのできるイオン性添加剤とを有して構成されており、この機能性素材としては、遠赤外線効果を有する紫金石や麦飯石等が使用される。
【0007】
また、特許文献2には、遠赤外線放射性無機系建築材料が開示されている。
この遠赤外線放射性無機系建築材料には、鉱物粉末が全体重量に対して5〜30重量%含有されており、この鉱物粉末が赤外線放射物質としての機能を果たす。
この鉱物粉末としては、トルマリン、緑泥石、麦飯石、ゼノタイム石、サマルスキー石、モナズ石、医王石、ホルンヘルス、貴陽石、隕石の粉末が使用される。
【0008】
更に、特許文献3には、健康建材が開示されている。
この健康建材は、遠赤外線・マイナスイオンを発生・放射する微石粉末を混合した接着剤を使用して加工される。
また、この健康建材は、合板、平行合板、化粧合板片、集成材、パーチクルボード、石膏ボード等の表面に、遠赤外線・マイナスイオンを発生・放射する微石粉末を混合した接着剤を混合した塗料を塗装して形成されている。このように、接着剤に遠赤外線放射機能を有する微石を混入することにより、接着剤・塗料に含有されているトルエン・キシレン等の揮発性有機物質から発生する刺激臭や悪臭を分解除去することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平10−291850号公報(第3頁及び第4頁)
【特許文献2】特開2005−097859号公報(第3頁乃至第9頁)
【特許文献3】特開2001−239503号公報(第3頁乃至第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に開示された建材においては、遠赤外線放射機能を有する物質の粉体を混合することによって、建材を構成するため(例えば、コンクリートに混合する等)、遠赤外線放射効果を十分に発揮することができなかった。
また、建材製造時に同時に混入加工を行う必要があるため、建材が仕上がった後に加工を行うことができず、加工時期が制限される。
また、上記特許文献3に開示された建材によれば、遠赤外線放射機能を有する微石粉末を含んだ接着剤を混入した塗料により基材表面を塗装するため、遠赤外線放射効果を発揮することができるが、遠赤外線の温熱効果等、人体に対して有用な効果を目的としたものではなく、また、それらの効果を発揮するための最適条件(微石粉末の粒径等)を検討したものではなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、最適条件に粉砕された遠赤外線放射物質を構成成分として有することにより、遠赤外線効果を発揮することが可能な表面材、表面材を備えた建築用壁材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、請求項1に係る発明によれば、建築用建材の表面を被覆する表面材であって、該表面材は、遠赤外線放射物質を粉砕して得られる粉末体を有して構成されており、前記粉末体の粒径は、0.9μm以上50μm以下であることにより解決される。
【0013】
このように、本発明に係る表面材においては、遠赤外線放射物質を粒径0.9μm以上50μm以下に粉砕することによって得られた粉末体を、表面材の構成成分として使用しているため、遠赤外線放射物質の粉体を混合して建材を構成する場合に比して、遠赤外線による効果を十分に発揮することができる。
つまり、遠赤外線放射物質である粉末体を表面材として使用することにより、この遠赤外線放射物質である粉末体が生活空間へ近接して配設されることとなるため、遠赤外線による効果をより十分に発揮することができる。
また、遠赤外線放射物質を粒径0.9μm以上50μm以下に粉砕しているため、遠赤外線放射物質の総表面積が増大し、「成長光線(grow ray)」と称さる、遠赤外線の中でも特に人体に有益である波長領域の遠赤外線放射率が高められる。
更に、本発明では、遠赤外線放射物質の粉末体を構成成分とした表面材を使用しているため、建材が仕上がった後でも塗装加工を行うことができ、加工時期が制限されることがない。
【0014】
このとき、前記表面材は、積層された複数の層を有して構成されており、前記複数の層のうちの一の層は、前記建築用建材表面に直接塗布される下地層であり、前記粉末体は、前記下地層に固着されていると、下地層に遠赤外線放射物質の粉末体を確実に固着できるため好適である。
【0015】
また、このとき、前記複数の層のうちの一の層は、表面を保護する被覆層であり、前記下地層及び前記粉末体は、前記被覆層に被覆された状態で固定されていると、遠赤外線放射物質の粉末体が固着された下地層を保護するとともに、粉末体を確実に下地層に固定することができるため好適である。
【0016】
更に、このとき、前記遠赤外線放射物質は、麦飯石であると好適である。
このように構成されていると、麦飯石という鉱石は、遠赤外線放射能が極めて高い遠赤外線放射物質であるため、本発明に係る表面材の遠赤外線効果を十分に高めることができる。
【0017】
また、本発明に係る建築用壁材は、請求項1乃至請求項4いずれか一項記載の表面材を備えている。
このため、生活空間内に、この建築用壁材の表面に塗布されている表面材から遠赤外線が十分に放射され、遠赤外線が奏する効果を生活空間内において十分に享受することができる。
【0018】
また、上記課題は、請求項6に係る発明によれば、建築用壁材の製造方法であって、
前記建築用壁材の表面にプライマー処理を施す第1の工程と、粒径0.9μm以上300μm以下に水粉砕した後、乾燥させた遠赤外線放射物質を、前記プライマーに吹き付ける第2の工程と、前記プライマーに固着した前記遠赤外線放射物質に、表面を保護するための被覆材を塗布する第3の工程と、前記建築用壁材を乾燥させて、前記プライマー及び前記被覆材により前記遠赤外線物質を固定する第4の工程と、を行うことにより解決される。
このように、本発明によれば、遠赤外線放射物質を確実に建築用建材の表面に固着させることができる。
このため、遠赤外線放射物質である粉末体を表面材として使用することにより、この遠赤外線放射物質である粉末体が生活空間へ近接して配設されることとなり、遠赤外線による効果をより十分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る表面材には、遠赤外線放射機能を有する物質が混入されている。
この遠赤外線放射機能を有する物質は、0.9μm以上300μm以下の粒径に粉砕された状態で使用される。
また、この遠赤外線を放射する機能を有する物質は、花崗斑岩類に属する鉱石等から粉砕加工される。
このように、赤外線放射機能を有する物質として、0.9μm以上300μm以下の粒径のものを使用することにより、赤外線放射物質の総表面積を増大させることができるため、遠赤外線のなかでも特に4.0〜14.0μmの波長領域の遠赤外線を効率良く得ることができる。
【0020】
この波長領域の遠赤外線は、「成長光線(grow ray)」と称され、遠赤外線の中でも特に人体に有益なものであることが知られている。
このように本発明に係る表面材及びこの表面材を備えた建築用壁材によれば、遠赤外線の中でも特に人体に有益な波長領域のものを有効に利用することができる。
【0021】
また、この赤外線放射物質の粉末体は、表面材の構成成分となっているため、生活空間内において効率良く遠赤外線効果を享受することができるとともに、壁材が仕上がった後でも塗装加工を行うことができ、加工時期が制限されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、所定粒径に粉砕した花崗斑岩(赤外線放射能を有する鉱石である)を構成成分とする表面材とその表面材が施された建築用壁材に関するものである。
【0023】
図1乃至図7は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は壁を示す斜視図、図2は建築用壁材の断面相当図、図3は麦飯石の粒度分析結果を示すグラフ、図4は粉砕していない状態の麦飯石の遠赤外線放射状態を示すチャート、図5は粉砕した状態の麦飯石の遠赤外線放射状態を示すチャート、図6は麦飯石粉末の製造工程を示す工程図、図7は建築用壁材の製造工程を示す工程図である。
なお、本明細書において、遠赤外線の供与体として使用される「麦飯石」とは、花崗斑岩の俗称であり、天照石、天降石等の別名も知られている。
この麦飯石(花崗斑岩)は、高い遠赤外線放射能を有することが知られている。
【0024】
まず、図1及び図2により本実施形態に係る壁Sについて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る壁Sとは、住宅内の部屋と部屋の境界となる界壁、住宅の輪郭を形成する外壁等として使用されるものである。
本実施形態においては、壁Sをパネルとして構成した例を示す。
ただし、壁Sの構成は、これに限定されるものではなく、壁Sとして一枚若しくは複数枚の板状体、一枚若しくは複数枚集成材等、本発明の要旨を変更するものでなければ、どのような形態であってもよい。
【0025】
図1に本実施形態に係る壁Sの構成を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る壁Sは、縦枠1,1、横枠2,2、建築用壁材3、を有して構成されている。
本実施形態に係る縦枠1,1は、公知の角パイプであり、壁Sの縦胴縁となる。
本実施形態に係る横枠2,2は、公知の略矩形の平板状鉄鋼であり、壁Sの横胴縁となる。
【0026】
本実施形態に係る建築用壁材3は、略矩形状の板状体であり、縦枠1,1に固定されている。
横枠2,2は、略平行に配設され、その両端部には、縦枠1,1が1本ずつ固定されている。
なお、横枠2,2と縦枠1,1は、略垂直に交わるように固定され、横枠2,2、縦枠1,1とで略矩形の枠状体である外枠が構成される。
建築用壁材3は、縦枠1,1間を架橋するように配設される。
【0027】
なお、この縦枠1,1及び横枠2,2の構成はこれに限られるものではなく、材質、形状等、施工現場及び施工条件に応じて変更することができる。
また、本実施形態では、建築用壁材3を1枚使用しているが、これに限られるものではなく、必要に応じて何枚使用してもよい。
【0028】
また、本実施形態に係る建築用壁材3の片面(外部に露出する側の面)には、表面材Tが塗装されている。つまり、建築用壁材3は、下地板31及び表面材Tにより構成されている。
図2により、建築用壁材3の構成を説明する。
図2は、建築用壁材3の断面相当図を示す。
本実施形態に係る表面材Tは、アクリル系のプライマーT1に麦飯石粉末T2を吹き付けたものを、エマルジョン系の合成塗料T3で被覆固定することにより構成されている。
なお、プライマーT1が請求項記載の下地層に相当し、合成塗料T3が請求項記載の被覆層に相当する。
また、麦飯石粉末T2が請求項記載の粉末体に相当する。
【0029】
アクリル系プライマーとは、公知の塗料用プライマーであり、主としてアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体(例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル等の重合体)を包含する高分子化合物が使用される。
【0030】
麦飯石は、粒径0.9μm以上50μm以下となるように粉砕して使用される。
これは、小麦粉と同等の粒径である。
詳細は後述するが、この範囲に粉砕することによって、未粉砕の麦飯石を使用した場合に比して、成長光線の範囲の遠赤外線放射率を高めることができる。
これは、麦飯石を粉砕して微粒子化することによって、麦飯石の総表面積が増加し、遠赤外線放射効率が高くなるためであると考えられる。
【0031】
本実施形態に使用された麦飯石の粒径の分析結果(n=2)を表1に示す。
また、分析結果のグラフを図3に示す。
分析は、X線透過式重量沈降法により行った。
【0032】
【表1】

【0033】
表1及び図3に示すように、麦飯石の粒径は、50μm以下であることが望ましく、20μm以下であれば更に望ましい。更に、15μm以下であれば最適である。
また、吹き付けを行う際の扱いやすさの観点から、麦飯石の粒径は、0.9μm以上であることが望ましい。
つまり、麦飯石をこの範囲の粒径に粉砕することによって、遠赤外線放射効率を高めることができるとともに、プライマーT1上に麦飯石粉末T2を吹き付ける際、麦飯石粉末T2を効率良く均一に吹き付けることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、赤外線放射物質として麦飯石を使用したが、これに限られるものではなく、トルマリン、緑泥石、ゼノダイム石、サマルスキー石、モナズ石、医王石、ホルンヘルス、貴陽石、隕石等、遠赤外線を放射する能力を有する物質であればどのようなものであってもよい。
また、プライマーT1及び合成塗料T3(固着材)は、上記アクリル系及びエマルジョン系に限られるものではなく、本発明の趣旨を変えない範囲であればどのような成分のものを使用してもよい。
なお、本実施形態においては、シックハウス症候群を回避するために、水性の合成塗料T3を使用している。
【0035】
本実施形態に係る表面材Tに使用される麦飯石とは、上記の通り、花崗斑岩のことを指し、特に風化が進み、多孔性岩石となったものを指すことが多い。
この麦飯石は、遠赤外線放射能を有する物質であり、この遠赤外線は、人体に有益な電磁波の一種である。
この麦飯石の成分定性分析結果を表2に示す。
また、この麦飯石の成分定量分析結果を表3に示す。
表2は、蛍光X線分析を行った結果であり、麦飯石を構成する成分のX線相対強度を示す。
また、表3は、ICP発光分光分析を行った結果であり、各成分の含有量を重量%で示す。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
上記表2及び表3に示すように、麦飯石は、ケイ素(Si)を主成分とした岩石であることがわかる。
他に、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等を比較的多く含有し、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)は、ほとんど検出されなかった。
【0039】
ついで、表4及び表5に、遠赤外線分光放射計(JIE−E500)による、麦飯石の遠赤外線放射率を示す。
表4は、ネックレスブレスレット加工用麦飯石の遠赤外線放射率を示し、表5は、板状部材表面に麦飯石を塗布したものの遠赤外線放射率を示す。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
表4及び表5に示すように、麦飯石には、約90%の遠赤外線放射率(積分放射率)があることがわかる。
このように、麦飯石は、遠赤外線放射機能を有する物質であり、麦飯石を使用することにより人体に有益な効果を奏する壁材Sを作成することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、麦飯石粉末を使用した表面材を建築用建材の表面を被覆するものとして使用したが、用途はこれに限られるものでない。
例えば、遠赤外線マット炭素ヒータの表面材、岩盤浴場内壁面に塗布する表面材等として使用することが可能である。
また、麦飯石粉末は、エステ用化粧品の添加剤等として好適に使用される。
このように、遠赤外線効果を期待され得る製品一般に広く使用することができる。
【0044】
次いで、図4及び図5は、麦飯石の遠赤外線放射状態を示すチャートである。
図4は、サンプルとして粉砕していない状態の麦飯石(表4に示したネックレスブレスレット加工用麦飯石)の遠赤外線放射状態を示すチャートであり、図5は、サンプルとして粉砕した状態の麦飯石(表5に示した板状部材表面に麦飯石を塗布したもの)の遠赤外線放射状態を示すチャートである。
【0045】
これは、遠赤外線放射計であるFT−IR(Fourier transform infrared
spectroscopy)を用いて測定を行ったものである。
この方法は、遠赤外線放射体から放射されるエネルギーをカメラで連続的に捕らえる方法であり、理想黒体とともに被検遠赤外線放射体を各波長毎に複数回測定し、その平均値を算出した後、理想黒体の放射率を100%として、被検遠赤外線放射体の放射率をプロットしたものである。
横軸に波長(wavelength)を、縦軸に各波長に対応する放射率(emissivity)をとった。
【0046】
図4及び図5に示すように、麦飯石からは遠赤外線が放射されていることがわかる。
双方共に、遠赤外線の中でも、成長光線(grow ray)と称される波長領域(4.0〜14.0μm)の遠赤外線が放射されていることがわかる。
しかし、両者を比較すると、図4の粉砕していない麦飯石においては、波長8.0〜10.0μmの範囲において放射率が低下しているのに対して、図5の粉砕した麦飯石においては、この範囲において放射率の低下がみられない。
【0047】
この範囲の波長は、成長光線(grow ray)の領域において、特に人体に有益なエネルギーを与える領域であることが知れられている。
つまり、麦飯石を粉砕して使用することによって、この成長光線(grow ray)領域における赤外線放射率が高められており、この高められた範囲は、特に人体に有益なエネルギーを与える範囲であるということがわかった。
このように、麦飯石を粉砕することにより、有用な遠赤外線の効果が高まることがわかった。
これは、赤外線放射物質である麦飯石を粉砕して微粒子化することによって、この麦飯石の総表面積が増大したことによるものと考えられる。
【0048】
次いで、図6及び図7により、建築用壁材3の製造方法を説明する。
図6により、麦飯石粉末T2の製造方法を説明する。
まず、工程1において、麦飯石を所定粒径に粉砕する。
本実施形態においては、この粉砕は、窯業において陶土を作成する際に一般的に行われている水粉砕により行っている。
しかし、粉砕方法はこれに限られるものではなく、所定の粒径を得られる粉砕方法であれば、どのような方法であってもよい。
【0049】
次いで、工程2により、一度粉砕した麦飯石を乾燥させる。
上述の通り、本実施形態においては、麦飯石は水粉砕されるため、粉砕直後は泥状である。よって、本実施形態においては、粉末を得るために乾燥を行う。
この乾燥工程では、約180℃以上の熱を照射することにより乾燥を実施する。このため、麦飯石粉末T2が得られるととともに、殺菌も同時に行うことが可能となる。
なお、乾式粉砕を行う場合には、この乾燥工程を省略できるとともに、別個に殺菌工程を設けてもよい。
また、麦飯石粉末T2を、溶媒に懸濁して吹き付ける場合には、工程2で麦飯石粉末T2を得た後、この麦飯石粉末T2を適当な溶媒に懸濁して麦飯石粉末液とする。
更に、本実施形態においては、麦飯石粉末T2のみを使用しているが、この麦飯石粉末T2にチタン粒子粉末を混合して使用してもよい。
このように、チタン粒子粉末を混合することにより、殺菌効果及び防錆効果が増強される。
【0050】
次いで、図7により、建築用壁材3の製造工程を説明する。
まず、工程11で、建築用壁材3の下地板31にプライマー処理を施す。
このプライマーT1は、前述の通り、アクリル系プライマーであり、下地板31表面に均一となるように塗布する。
【0051】
次いで、工程12で、プライマーT1が乾燥する前に、麦飯石粉末T2をプライマーT1表面に均一となるように吹き付ける。
麦飯石粉末T2は、図6に示す工程で製造されたものが使用され、この吹き付けは、スプレー等の吹き付け具を使用して行うとよい。
次いで、工程13により、麦飯石粉末T2上に、合成塗料T3を塗布して、麦飯石粉末T2が剥離しないように固着する。
次いで、工程14により、表面材Tを乾燥させて工程を終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る建築用壁材3には、表面材Tが塗布されており、この表面材Tには遠赤外線放射物質である麦飯石粉末T2が塗布されている。
この麦飯石粉末T2は、粉砕された状態で塗布されており、このため、遠赤外線の成長光線の領域の中で、特に人体に有益なエネルギーを与える領域(波長8.0〜10.0μmの範囲)での赤外線放射率が高められた状態となっている。
このため、本実施形態に係る建築用壁材3は、人体に有益であるとともに、空気浄化効果等、住環境の快適性を高めるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る壁を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る建築用壁材の断面相当図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る麦飯石の粒度分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る粉砕していない状態の麦飯石の遠赤外線放射状態を示すチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る粉砕した状態の麦飯石の遠赤外線放射状態を示すチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る麦飯石粉末の製造工程を示す工程図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る建築用壁材の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0054】
1 縦枠
2 横枠
3 建築用壁材
31 下地板
S 壁
T 表面材
T1 プライマー
T2 麦飯石粉末
T3 合成塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用建材の表面を被覆する表面材であって、
該表面材は、遠赤外線放射物質を粉砕して得られる粉末体を有して構成されており、
前記粉末体の粒径は、0.9μm以上50μm以下であることを特徴とする表面材。
【請求項2】
前記表面材は、積層された複数の層を有して構成されており、
前記複数の層のうちの一の層は、前記建築用建材表面に直接塗布される下地層であり、前記粉末体は、前記下地層に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の表面材。
【請求項3】
前記複数の層のうちの一の層は、表面を保護する被覆層であり、
前記下地層及び前記粉末体は、前記被覆層に被覆された状態で固定されていることを特徴とする請求項2に記載の表面材。
【請求項4】
前記遠赤外線放射物質は、麦飯石であることを特徴とする請求項1に記載の表面材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4いずれか一項記載の表面材を備えたことを特徴とする建築用壁材。
【請求項6】
建築用壁材の製造方法であって、
前記建築用壁材の表面にプライマー処理を施す第1の工程と、
粒径0.9μm以上300μm以下に水粉砕した後、乾燥させた遠赤外線放射物質を、前記プライマーに吹き付ける第2の工程と、
前記プライマーに固着した前記遠赤外線放射物質に、表面を保護するための被覆材を塗布する第3の工程と、
前記建築用壁材を乾燥させて、前記プライマー及び前記被覆材により前記遠赤外線物質を固定する第4の工程と、を行うことを特徴とする建築用壁材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−106584(P2008−106584A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292966(P2006−292966)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(504040254)有限会社スペース・オブジェクト (1)
【出願人】(506362691)株式会社ネイチャーストーン (1)
【Fターム(参考)】