説明

表面検査システム及びこれを用いた表面検査方法

【課題】人手によらずプレス鋼板における微小な凹凸を検出することのできる、表面検査システム及びこれを用いた表面検査方法を提供する。
【解決手段】プレスされた鋼板に向けて赤外光を含む光を照射するライト21と、鋼板に反射した赤外光を含む光を検知するカメラ22と、このカメラ22により撮像された画像から凹凸を検出する画像処理装置3と、この画像処理装置3により算出された情報を出力する出力装置としての表示装置4及び記録装置5とを有する表面検査システム1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査システム及びこれを用いた検査方法に係り、特に、プレス鋼板における微小な凹凸を検出するシステム及びこれを用いた表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの鋼板のプレス工程においては、付着している亜鉛粉や鉄粉が原因となってプレス鋼板に微小な凹凸が生じることがある。この段階で発生した凹凸は、その後の塗装処理等を施すことによってさらに強調されてしまう。そのため、プレス加工の段階で人が目視、触手、砥石がけをしながら問題箇所を検出している。
【0003】
目視による検査として、例えば蛍光灯の光を部品に映し、鏡のように見える状態にして視線を上下させ、角度を変えながら面の凹凸状態を見ることが行われている。
【0004】
触手による検査とは、例えば手袋を装着して車両状態の流れに沿って鋼板に触り、面に凹凸がないか見ることをいう。
【0005】
また、砥石がけによる検査としては、例えば砥石を軽く持ち、車両状態の流れに沿って真っ直ぐに砥石をかけ、面の凹凸を見るようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状の人手による検出作業では、作業者の疲労度や体調、作業の負荷状態による影響を受けるから、十分な精度であるとは言い難い。さらに、砥石を用いて研磨を行う際にプレス鋼板に対して傷を付けてしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、人手によらずプレス鋼板における微小な凹凸を検出することのできる、表面検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の表面検査システムは、プレスされた鋼板に向けて赤外光を含む光を照射する光源と、鋼板に反射した赤外光を含む光を検知する撮像部と、この撮像部により撮像された画像から凹凸を検出する画像処理装置と、この画像処理装置により算出された情報を出力する出力装置とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の表面検査方法は、鋼板に反射した赤外光を含む光を検知する撮像工程と、この撮像工程で得られた画像中の高周波ノイズを取り除くノイズ除去工程と、画像中の正常領域と異常領域とを分別する異常領域抽出工程と、上記異常領域中の凹凸欠陥領域を同定すると共にその面積を求めるラベリング工程と、凹凸欠陥領域の面積について閾値との比較を行って凹凸欠陥を認識する面積閾値比較処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
異常領域抽出工程は、カラーヒストグラム処理を行うステップと、クラスタリング処理を行うステップとを含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面検査システムによれば、光源から照射された赤外光を含む光が鋼板に反射し、これを撮像部で撮影し、撮像された赤外線画像から画像処理装置が凹凸を検出し、この画像処理装置により算出された情報が出力装置に出力されるから、検査作業員の人員を削減できるとともに、検査作業員の負担軽減となる。この際、赤外光を含む光を利用することで、微細な凹凸をも検出することができる。
【0012】
また、本発明の表面検査方法によれば、ノイズの影響を排除して高い精度で凹凸欠陥を検出することができる。
【0013】
カラーヒストグラム処理及びクラスタリング処理を行う場合には、正常領域と凹凸欠陥領域とを簡単に分別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、例として、車体製造工程のプレス工程で発生する微小凹凸欠陥を、非接触かつ短時間で自動検出する方法について説明する。その工程としては、撮像部から画像を取得し、凹凸の持つ特徴点をカラーヒストグラムを用いた画像処理で求め、検査作業員に凹凸検出の有無と発生位置情報を提供するまでの流れを説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の表面検査システム1は、プレスされた鋼板Sに向けて赤外光を含む光を照射する光源としてのライト21と、プレスされた鋼板Sに反射した赤外光を含む光を検知する撮像部としてのカメラ22と、カメラ22により撮像された赤外線画像から凹凸を検出する画像処理装置3と、画像処理装置3により得られた結果を出力する出力装置としての表示装置4と、凹凸の発生箇所の画像を記録する記録装置5とを有する。ここで、カメラ22は、通常のデジタルカメラにおける赤外線カットフィルタを外し、赤外領域の波長を撮影可能としたものである。このようなカメラ22によれば、カラー素子R,G,Bのうち、G,Bでは可視光の緑,青が検知でき、Rでは赤外光と可視光が検知できる。
【0016】
[撮像工程]
ライト21は、プレスされた鋼板Sの表面に対し60度の角度で鋼板Sに向けて赤外光を含む光を照射する。カメラ22は、ライト21に対向する位置で、プレスされた鋼板Sの表面に対し60度の角度に設置され、鋼板Sからの赤外光と可視光とを含む反射成分を取得する。ここで、カメラ22のカラー素子R,G,Bのうち、G,Bでは可視光の緑,青を検知する。一方、Rでは赤外光と可視光とを検知する。画像の取得は静止画で行うが、取得枚数は少なくてよい。取得された画像は解像度250dpi(ドットパーインチ)程度でよい。赤外光を含む光を光源とすることで、プレス鋼板の分光特性により、一般的なカメラで撮影するよりも凹凸が強調された画像が得られる。その後、取得された画像は画像処理装置へと送られる。
【0017】
次に、画像処理装置において行われる画像処理工程について、図2を参照しつつ説明する。
【0018】
[ノイズ除去工程]
ノイズ除去工程は、撮影の際にできる照明ムラやレンズの埃、画像中に入り込む電子ノイズといった画像中の高周波ノイズをフィルタ、具体的には移動平均フィルタで取り除く工程である。実際には3×3ピクセルのフィルタを用い、ノイズの有無を調べるステップS1と、ノイズがあると判断された場合にこのノイズを除去するステップS2とが、ノイズがなくなるまで複数回にわたって繰り返される。
【0019】
[異常領域抽出工程]
異常領域抽出工程は、撮影された画像における正常領域と異常領域とを分別する工程であり、カラーヒストグラム処理を行うステップS3と、クラスタリング処理を行うステップS4とからなる。カラーヒストグラム処理とは、画像において近似するRGB値を持つ画素をカウントし、各RGB値の出現頻度を調べることをいう。ここで、RGB値のうちRには赤外光と可視光の赤とを含む。また、クラスタリング処理とは、カラーヒストグラム処理により数値化されたRGB値に従って画素を分類することをいう。凹凸欠陥領域は正常領域と比べ面積も小さく、正常領域と異なったRGB値を持つことから、凹凸部のRGB値の出現頻度は小さくなる。そこで、RGB値から画素を2種類にクラスタリング処理し、出現頻度が多い画素を正常部、出現頻度が小さい画素を凹凸欠陥領域と定義する。
【0020】
[ラベリング工程]
ラベリング工程は、凹凸欠陥領域を同定すると共にその面積を求める工程であり、番号付けを行うステップS5と、それぞれの領域面積を算出するステップS6とからなる。ステップS5では、異常領域抽出工程でクラスタリング処理された画素のうち、凹凸欠陥領域と判断された領域に番号付けを行う。また、ステップS6では、番号付けされたそれぞれの領域の面積を求める。
【0021】
[面積閾値比較処理工程]
面積閾値比較処理工程S7は、ラベリング工程で算出された凹凸欠陥の面積について、閾値である基準面積との比較を行い、凹凸欠陥を認識する工程である。基準面積より大きいものが最終的に凹凸欠陥と判断される。この処理により、ノイズ除去で取り切れなかったノイズと、凹凸欠陥とが区別される。
【0022】
以上の工程を経て算出されたデータは、画像処理装置3から、表示装置4及び記録装置5に送信される。そして、凹凸欠陥の有無及び最終的に凹凸欠陥と判断された部分が表示装置4に表示されるとともに、記録装置5に格納される。検査作業員Pは、表示装置4を視認することで、鋼板Sにおける凹凸欠陥の有無や、最終的に凹凸欠陥と判断された部分を知ることができる。また、過去の鋼板についてのデータについては記録装置5を参照することで知ることができる。
【0023】
本実施形態の表面検査システムによれば、プレスエ程の目視検査の代替手段とすることができるから、検査作業員の人員を削減できるとともに、検査作業員の負担軽減となる。この際、可視光より波長の短い赤外光を含む光を利用することにより、微細な凹凸をも検出することができる。また、製品の修正が早期過程で可能となることにより無駄をなくし、コストダウンにつながる。さらに、従来手法である砥石研磨法と比べ、製品を傷つける恐れがないので、品質の低下を防ぐことができる。また本実施形態の表面検査システムは単純な画像処理装置から構成されるため検査時間の短縮ができるとともに、プレス鋼板全体を同一精度で検査することができ、全面保証ができる。
【0024】
以上説明したように、本発明の表面検査システム及び表面検査方法は、人手を介さず自動的に凹凸欠陥を検出するものであり、その主旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施することができる。例えば、ライト及びカメラは鋼板の表面に対し60度±15度程度の位置であればよい。また、表面検査システムの構成要素は必ずしも別体である必要はなく、表面検査装置に一体化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の表面検査システムを示す図である。
【図2】図1の表面検査システムの画像処理装置において行われる画像処理工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 表面検査システム
3 画像処理装置
4 表示装置
5 記録装置
21 ライト
22 カメラ
P 検査作業員
S 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスされた鋼板に向けて赤外光を含む光を照射する光源と、上記鋼板に反射した赤外光を含む光を検知する撮像部と、この撮像部により撮像された画像から凹凸を検出する画像処理装置と、この画像処理装置により算出された情報を出力する出力装置とを有する、表面検査システム。
【請求項2】
鋼板に反射した赤外光を含む光を検知する撮像工程と、この撮像工程で得られた画像中の高周波ノイズを取り除くノイズ除去工程と、上記画像中の正常領域と異常領域とを分別する異常領域抽出工程と、上記異常領域中の凹凸欠陥領域を同定すると共にその面積を求めるラベリング工程と、上記凹凸欠陥領域の面積について閾値との比較を行い凹凸欠陥を認識する面積閾値比較処理工程と、を含む、表面検査方法。
【請求項3】
前記異常領域抽出工程は、カラーヒストグラム処理を行うステップと、クラスタリング処理を行うステップとを含むことを特徴とする、請求項2に記載の表面検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−216475(P2009−216475A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58849(P2008−58849)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(507234427)公立大学法人岩手県立大学 (22)
【Fターム(参考)】