説明

表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルム表面検査方法

【課題】被検査物の厚みが大きく変化する場合でも、検出感度を損なうことのない、表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】被検査物に光を投射する投光手段と、該被検査物を介した透過光または反射光を受光する受光手段と、該受光手段が受光した透過光または反射光に基づいて前記被検査物の表面凹凸欠点を検査するデータ処理手段とを有する表面検査装置であって、前記投光手段と前記受光手段との投受光軸上に複数の遮光手段を有することを特徴とする表面検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、被検査物の厚みが大きく変化する場合でも、検出感度を損なうことのない、安価な表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被検査物の欠点を検査する場合、被検査物に光を投射し、その透過光または反射光の状態を参照することで、被検査物の欠点を検出する方法がよく用いられている。
【0003】
特に、被検査物の表面凹凸欠点を検出するためには、光軸ずらし方式と呼ばれる方法が良く用いられる。この方法を、被検査物(屈折率≠1.0)に光を投射し、その透過光を受光して検査する場合を例にとり、図8および図9を用いて説明する。図8は表面凹凸欠点のない場合の投受光の説明図で、図9は表面凹凸欠点のある場合の投受光の説明図である。
【0004】
被検査物102を挟んで、受光手段101と投光手段104を設置する。このとき、受光手段101が受光する光の軸(受光光軸)の中心軸(以後、受光中心光軸と呼ぶ)Lcが投光手段104に直接届かないように、遮光手段103を設置する。即ち、投光手段104と受光手段101との間で投・受光される光の軸(投受光軸。ここでは簡単のため、受光中心光軸Lcのみとする)上に遮光手段103が存在しており、投光手段104からの光を受光手段101は受光しない。これに対し、被検査物102に表面凹凸欠点105が存在すると、受光手段101の受光中心光軸Lcは、被検査物102での屈折状態が変化し、遮光手段103を避けて投光手段104に届く。即ち、投光手段104からの光を、受光手段101は受光する。この受光手段101が受光する光量の変化によって、表面凹凸欠点105を検出する。または、投光手段104の光指向性を高めることで、同様の効果を得ても良い。
【0005】
光軸ずらし方式による被検査物102の表面凹凸欠点105の検出感度を高めるには、表面凹凸欠点105が存在しない状態で、遮光手段103の、投光手段104側の端部103aに、受光手段101の受光中心光軸Lcを合わせることが好ましい。このように設定すれば、表面凹凸欠点による屈折状態の変化が微小でも、受光手段101の受光する光量が変化するからである。また、さらに好ましくは、入射角θを大きくすることである。こうすることで、表面凹凸欠点での屈折による受光光軸の変化が大きくなるからである。
【0006】
図8および図9のように遮光手段103によって遮光される方向を1方向とせず、2方向としたものは遮光方式とも呼ばれるものである(例えば、特許文献1など参照)。表面凹凸欠点の検出原理は、光軸ずらし方式と同様である。
【0007】
上記のように、光軸ずらし方式および遮光方式は、受光手段が受光する光量の変化によって、被検査物の表面凹凸欠点を検出する方法である。しかしながら、受光光量を変化させるものは、表面凹凸欠点による、被検査物での屈折状態の変化だけではなく、被検査物の厚みの変化もある。このことを、図10および図11を用いて説明する。図10は厚い被検査物の場合を、図11は薄い被検査物の場合を示した説明図である。
【0008】
図10においては受光手段101の受光中心光軸Lcは遮光手段103によって遮られているが、図11のように被検査物102が薄くなると、表面凹凸欠点がないにも関わらず、受光中心光軸Lcは投光手段104に届く。したがって、被検査物102の厚みが大きく異なる場合、厚みに依存せず、同程度の検出感度を維持するためには、受光手段101と、遮光手段103または/および投光手段104の相対位置を変化させる、またはこれに準じた対策が必要となる。例えば、dの方向に移動するに従い、投光手段104の、光量を(大きく)変化させる、波長を変化させる、位相を変化させるなどの工夫を施す必要がある。
【0009】
しかしながら、被検査物102の厚みに従って光学系(受光手段101、遮光手段103、投光手段104)を変更することは、一般の光学的手段を用いた検査装置では好ましくなく、また、投光手段104への上記工夫もコストがかかり、さらに受光手段101の受光した信号を処理する手順が複雑になるため好ましくない。
【特許文献1】特開2002−39952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に鑑みて、本発明の目的は、被検査物の厚みが大きく変化する場合でも、検出感度を損なうことのない、安価な表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
【0012】
すなわち、被検査物に光を投射する投光手段と、該被検査物を介した透過光または反射光を受光する受光手段と、該受光手段が受光した透過光または反射光に基づいて前記被検査物の表面凹凸欠点を検査するデータ処理手段とを有する表面検査装置であって、前記投光手段と前記受光手段との投受光軸上に複数の遮光手段を有することを特徴とする表面検査装置である。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記複数の遮光手段は、前記投光手段と前記受光手段との投受光において、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しないものであることを特徴とする表面検査装置である。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、被検査物に光を投射する投光ステップと、該被検査物を介した透過光または反射光を受光する受光ステップと、該受光ステップで受光した透過光または反射光に基づいて前記被検査物の表面凹凸欠点を検査するデータ処理ステップとを有する表面検査方法であって、該投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光軸上において複数の遮光ステップを有することを特徴とする表面検査方法である。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記複数の遮光ステップは、前記投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光において、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しないことを特徴とする表面検査方法である。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、シート状にすることで高分子フィルムを製造するに際して、該高分子フィルムに光を投射する投光ステップと、高分子フィルムを介した透過光または反射光を受光する受光ステップと、前記受光ステップで受光した透過光または反射光に基づいて前記高分子フィルムの表面凹凸欠点を検査するデータ処理ステップとを有する高分子フィルム表面検査方法であって、前記投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光軸上において複数の遮光ステップを有することを特徴とする、高分子フィルム表面検査方法である。
【0017】
本発明における「所定方向の投受光」を、図12を用いて説明する。図12は、所定方向の投受光の一例を示す説明図である。一般に、受光手段101は、受光中心光軸Lcに沿った光のみを受光するのではなく、その周辺の光も受光することに注意する。今、受光中心光軸Lcが予め定めた所定方向Ldを向いており、投光手段104から投射された光の中で、受光手段101が、受光可能な光全てを受光することを、所定方向Ldの投受光とする。ただし、受光中心光軸Lcの向いている方向は予め定めた方向に厳密に一致している必要はなく、各手段を設置する精度程度の許容範囲は持つものとする。
【0018】
また、本発明における「投受光軸」とは、投光手段104から投射され、受光手段101が受光する、投受光における光の軸である。したがって、上記受光中心光軸Lcも、この投受光軸に含まれる。
【0019】
また、本発明における「略遮光」とは、受光手段が受光する光量が予め設定した範囲内に収まるように遮光することである。即ち、設定した範囲に従って、投受光軸の一部または全てを遮光することである。例えば、受光手段の出力が受光光量に依存して0〜255の値を取りうる場合に、範囲を110以下と設定し、受光手段の出力がこの範囲となるように遮光することである。
【0020】
また、本発明における「第1の所定方向とは異なる第2の所定方向」を、図13を用いて説明する。図13は、第2の所定方向の一例を示す説明図である。第1の所定方向を方向Ld1としたとき、第2の所定方向Ld2は、方向Ld1とは異なり、かつ、予め定めた範囲Φd(図では、被検査物102からの出射角度の範囲)に含まれる任意の方向であるとする。例えば、第1の所定方向が被検査物102の表面の法線から30度ずれた方向であり、予め定めた範囲Φdを被検査物102表面の法線から33度以上50度以下ずれたものとしたときに、範囲Φdに含まれる任意の方向が第2の所定方向となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下に説明するとおり、被検査物の厚みが大きく変化する場合でも、検出感度を損なうことのない、安価な表面検査装置、表面検査方法および高分子フィルムの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明における最良の実施形態を、製膜中の、単層透明高分子フィルムの表面に生じる突起欠点を、透過光を受光することで検出する場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の装置構成を、図1に示す。図1は、本実施形態の概略構成図である。
【0024】
1は被検査物で、ここでは単層の透明高分子フィルムとしている。図示しない口金の間隙から溶融されたポリマが押し出され、これを図示しない大型のドラムで受けてシート状にすることで高分子フィルムとなる。ここでは単層の透明高分子フィルムを用いて説明しているが、被検査物1としては特に限定されず、ガラスなどの透明体や、表面が鏡面であるものなどを用いることができる。また、紙や金属などでも良い。しかし、被検査物1としては高分子フィルムを用いることが好ましい。高分子フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルアミド、ポリスルホン、ポリオレフィン、セルローストリアセテート、ポリフェニレンオキサイド、ポリビニルアルコール、セルロース系重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PPT)等が挙げられるが、より好ましくは溶融材料(溶融樹脂)からなるプラスチックフィルムである。その中でも特に好ましくはポリエステル樹脂を主成分とするものである。ここで、主成分とは50重量%以上100%以下であることを言う。好ましくは、80重量%〜100重量%である。また、例えば、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の樹脂属ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、さらにはトリメリット酸等のトリカルボン酸等を用いることができ、ジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。また、製膜性を損ねないものであれば、その他のモノマやプレポリマを共重合しても良く、各種ポリマとブレンドしても良い。上記のようなポリエステル樹脂を重合するに際し、エステル交換触媒としては、Ca、Li、Mn、Zn、Ti等を用いることができる。あるいはテレフタル酸を直接エステル交換させても良い。また、重合触媒として、Sb、酸化ゲルマニウム等を用いても良い。
【0025】
上記ポリエステル樹脂に、必要に応じて公知の添加剤、例えば安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等を添加しても良い。 また、被検査物1として好ましくは、被検査物1の流れ方向および/または幅方向に高分子フィルムが延伸されることである。
【0026】
また、高分子フィルムは単層であっても多層であっても良い。また、表面(上面)および/または裏面(下面)に、塗剤がコーティングされていても良い。
【0027】
また、本発明の被検査物1として用いられる高分子フィルムは、半透明であっても良く、着色されていても良い。図1では光学系を透過方式として、被検査物1を透過した光を検出した例を示すが、もし高分子フィルムの光透過率が小さければ、光学系は反射方式とすることができる。また、被検査物1が紙や金属などの場合も、同様に反射方式とすることができる。
【0028】
1aは表面凹凸欠点で、ここでは突起欠点を示す。欠点は、凹み欠点でも、凹凸欠点でも、特定の1方向に長く続くスジ状欠点でも良い。また、高分子フィルムそのものの表面凹凸でも良いし、塗剤の抜けやハジキによる凹凸を伴う欠点でも良い。
【0029】
2は投光手段であり、被検査物1に光を投射している。投光手段2は、蛍光灯であっても良く、ハロゲン光源であっても良く、メタルハライド光源であっても良く、LED光源であっても良い。また、特定の波長特性を持っていても良い。好ましくは、1方向に長く投光部位を有しており、また、投光部位から投射される光量が略均一であることである。図1では、白色の高周波蛍光灯を用い、被検査物1の幅方向と蛍光灯長手方向が略一致するように設置されている。
【0030】
3は受光手段であり、被検査物1を介した、投光手段2からの透過光を受光するように配置されている。好ましくは、被検査物1の透過光を介した箇所が、バタツキやシワが少ないことである。受光手段3は、ラインセンサカメラであっても良く、エリアセンサカメラであっても良く、その他、複数の光電変換センサを有する構成物であっても良い。好ましくは、受光手段3の有する光電変換センサが、感度が良く、ノイズに強く、センサ間の差異が小さいことである。図1ではラインセンサカメラを用い、そのセンサの並び方向が、投光手段2の長手方向と略一致するように配置されている。
【0031】
なお図1においては、投光手段2からの透過光を受光するように配置しているが、上述したように反射方式として、投光手段2からの光を被検査物1で反射した反射光を受光するように、受光手段3を配置することもできる。
【0032】
4は遮光構造物であり、複数の、特定の遮光部位を有する遮光手段で構成されている。図1では3つの遮光手段4a、4b、4cで構成されており、それらは、投光手段2から投射され、受光手段3が受光する光の一部を遮るように配置されている。遮光手段4a、4b、4cは、遮光板であっても良いし、スリット状であっても良いし、格子状であっても良いし、その他、特定のパターンを施したものであっても良い。また、透明体に特定のパターンを施したものであっても良い。好ましくは、遮光部位のエッジの加工精度が高いことである。ここでは、3枚の遮光板が、それらの長手方向が、投光手段2の長手方向と略一致するように配置されている。なおこれら複数の遮光手段は、投光手段2と受光手段3との投受光軸上に配置される。
【0033】
5はデータ処理手段であり、受光手段3と接続されている。受光手段3が受光した透過光(または反射光)の受光量に基づいて、被検査物1の表面凹凸欠点を検出する。
【0034】
6は外部出力手段であり、データ処理手段5と接続されている。データ処理手段5が被検査物1の表面凹凸欠点を検出した場合、その情報を外部に出力する。外部出力手段6は、ディスプレイ、警報装置、プリンタなどに代表されるものである。
【0035】
ところで、被検査物1の、表面凹凸欠点1aの有無と厚み変化とにおける、受光光軸の、被検査物1での屈折状態の違いは、屈折後の角度に影響される。すなわち、被検査物1の厚みが変化したときには、被検査物1を出た後の受光光軸の出射角度は変化せずに、被検査物1からの出射位置が変化するだけであるが、表面(上面)凹凸欠点1aがあると、出射角度も変化する。本発明者は、この事実に着目し、鋭意検討を進めた結果、特許文献1を始め、従来方法では、1枚の遮光板またはそれに準じたもののみで構成されていた遮光構造物4を、複数の遮光手段で構成すれば良いことを見いだしたのである。
【0036】
以下、遮光構造物4を、複数の遮光手段で構成したときの設計および配置について、図2〜図6を用いて説明する。図2は投受光の説明図で、図3は遮光構造物4の設計・配置を行う際の説明図で、図4は遮光手段(遮光板)4aを設計・配置するときの説明図で、図5は遮光手段(遮光板)4bを設計・配置するときの説明図で、図6は遮光手段(遮光板)4cを設計・配置するときの説明図である。
【0037】
このとき、図2に示すように、受光手段3が受光するのは、受光中心光軸Lcだけでなく、受光光軸L1、L2に囲まれる領域に及ぶことに注意する。これは、受光手段3(ここではラインセンサカメラ)の絞りおよびカメラのレンズに依存する。これら受光光軸L1、L2が(作図上)交わる点が、レンズ焦点となる。微小な欠点を検出するために被検査物1の表面(上面)(または裏面(下面))に、焦点を合わせることが好ましい。
【0038】
図3に示すように、ここでは、被検査物1の表面(上面)凹凸欠点1aによって、受光光軸の出射角度φが大きくなるとして設計・配置する。また、複数の遮光手段を3枚の遮光板とし、被検査物1に近い方から遮光板4a、4b、4cとする。また、それぞれの遮光板において、点P(受光光軸の出射位置)に近い端部を左端、反対側の端部を右端とする。
【0039】
まず、受光光軸L1、L2、被検査物1の厚みおよび屈折率を考慮し、表面凹凸欠点1aがない場合における、被検査物1下面(裏面)からの受光光軸の出射位置の範囲を見極める。ここでは点Pから点Qまで、出射位置が変化する(図では、点P、点Qそれぞれから受光光軸L1、L2が出ているが、実際には受光光軸L1、L2は少し離れた箇所から出射する。ただし、その距離は非常に小さいため、ここでは無視できるとした)。すなわち、請求項2または請求項4における第1の所定方向とは、表面凹凸欠点1aがない場合に、受光中心光軸Lcが向く方向である。
【0040】
また、点P、点Qそれぞれが出射位置となる被検査物1の厚みにおいて、限度レベル(欠点として検出したい最小レベル)の表面凹凸欠点1aが存在していたときの出射位置を、それぞれ点P’、点Q’とする。また、表面凹凸欠点1aがないときの受光光軸L1、L2それぞれが、表面凹凸欠点1aによって変化した後の受光光軸を、それぞれL1’、L2’とする。ここでも、受光光軸L1’、L2’は、同一の出射位置から出るものとする。すなわち、請求項2または請求項4における第2の所定方向とは、表面凹凸欠点1aがある場合に、受光中心光軸Lcが向く方向である。本実施形態では表面凹凸欠点1aが限度レベルである場合に限定して説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
以下で、遮光板4a、4b、4cそれぞれの設置位置と幅の一例を示すが、前記のとおり、本発明は、従来ならば1つの遮光手段で構成していた遮光構造物4を、複数の遮光手段で構成するところに意義があり、ここに示す例に限定されるものではない。ここでの方針は、以下のとおりである。
【0042】
点Pから点Qに亘って受光光軸L1、L2の組が移動しても、これらに囲まれる領域が投光手段2に到達することがなく(つまり、第1の所定方向の投受光を略遮光し)、点P’から点Q’に亘って受光光軸L1’、L2’の組が移動しても、これらに囲まれる領域の一部が投光手段2に到達するように(つまり、第2の所定方向の投受光を略遮光しないように)、遮光板4a、4b、4cそれぞれの設置位置と幅を決定する。好ましくは、点P’から点Q’に亘って受光光軸L1’、L2’の組が移動するときに、投光手段2に到達する受光領域の範囲が同程度となることである。
【0043】
まず、遮光板4aの、設置位置と幅waを決定する。図4に示すように、被検査物1の下面(裏面)からの距離laを暫定的に定める。このlaは、実際の遮光板設置スペースや、以下に述べる遮光板4aの幅waの製作難易度に従って、変更していく。laが定まったら、遮光板4aの右端位置を決定する。遮光板4aを延長して行き、点Q’からの受光光軸L2’との交点を考える。この交点から幅Δwaだけ離して、そこを遮光板4aの右端位置とする。このΔwaは、表面凹凸欠点1aが発生したときに、受光手段3が受光する光量の変化をどの程度とするかに依存する。このΔwaは、外乱成分による受光光量の変動よりも、大きくなるように設定することが好ましい。ここでは、点Qから受光光軸L2’が出射したときに、遮光板4aの右端位置を通過するように、Δwaを設定する。次に、点Q’から受光光軸L2が出射すると仮想的に考え、その受光光軸L2が遮光板4aの左端位置を通過するように遮光板4aの幅waを決定する。
【0044】
次に、遮光板4bの、設置位置と幅wbを決定する。図5に示すように、被検査物1の下面(裏面)からの距離lbを暫定的に定める。このlbは、実際の遮光板設置スペースや、以下に述べる遮光板4bの幅wbの製作難易度に従って、変更していく。lbが定まったら、点Qからの受光光軸L2を考え、遮光板4bの右端を通過するように、遮光板4bの右端位置を決める。次に、遮光板4aの左端を、受光光軸L2’が通過するような被検査物1下面の出射位置の点Rを考える。この点Rから出射される受光光軸L2を考え、遮光板4bの左端位置を通過するように、幅wbを決定する。
【0045】
次に、遮光板4cの、設置位置と幅wcを決定する。まず、図6に示すように、遮光板4cの右端位置を決めるが、遮光板4cの右端位置は、点Rからの受光光軸L2上のどこかと一致するようにする。次に、幅wcを決めるが、遮光板4cの左端位置は、点Pからの受光光軸L1上のどこかと一致するようにする。最後に、被検査物1の下面(裏面)からの距離lcを定めるが、点Rから点P’に亘って受光光軸L1’、L2’の2つが移動するときに、遮光板4bの左端と遮光板4cの右端との間からの投光手段2からの光を、受光手段3が受光できるように、幅lcを決定する。この際に、受光する光量が、外乱成分による受光光量の変動よりも、大きくなるように設定することが好ましい。
【0046】
上記のように、複数の遮光手段4a、4b、4cを設計・配置する、つまり複数の遮光手段は、投光手段2と受光手段3との投受光において、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しないものとなるように設計・配置することにより、被検査物1の厚みが変化しても、被検査物1の表面凹凸欠点1aの検出感度が大きく変化することのない表面検査装置を実現することができる。
【0047】
なお、図1などでは遮光手段を3つとして説明したが、本発明では2つ以上の遮光手段を有すればこれに限定されるものではない。被検査物1の品質管理に充分な検査精度を実現できるように、上記方針に沿って設計・配置を行えば良い。好ましくは、投光手段2、受光手段3、遮光構造物4の設計・配置が容易になることである。
【0048】
また、本発明でいう投光ステップとは、被検査物1に投光手段2から光を投射する工程を示し、受光ステップとは、投光手段2から投光され被検査物1を透過した光を受光手段3により受光する工程、もしくは投光手段2から投光され被検査物1で反射した光を受光手段3により受光する工程を示し、遮光ステップとは投受光軸上においた複数の遮光手段(図1では、4a、4b、4c)により投光手段2と受光手段3との投受光を略遮光する工程を示し、データ処理ステップとは、受光手段3の受光量に基づいてデータ処理手段5により表面(若しくは裏面)の凹凸欠点を検出する工程を示す。
【0049】
上述した表面検査装置を用いることで、被検査物1に投光手段2から光を投射する投光ステップを実現し、その透過光を受光手段3により受光する受光ステップを実現し、この投受光軸上において複数の遮光ステップを実現できる。この複数の遮光ステップにおいて、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しない表面検査方法を実現可能である。
【0050】
さらに上述した高分子フィルムを製造するに際し、上述した表面検査装置を用いることで、シート状の高分子フィルムを製造するに際して、該高分子フィルムに光を投射する投光ステップと、高分子フィルムを介した透過光または反射光を受光する受光ステップと、前記受光ステップで受光した透過光または反射光に基づいて前記高分子フィルムの表面凹凸欠点を検査するデータ処理ステップとを有する高分子フィルム表面検査方法であって、前記投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光軸上において複数の遮光ステップを有することを特徴とする、高分子フィルム表面検査方法、を実現可能である。なお、本発明の表面検査装置は、例えば、溶融材料を吐出した直後の工程や溶融材料のプラスチックフィルムを延伸した直後の工程など、溶融材料によるプラスチックフィルムを製造する際の様々な工程に設置することができる。
【実施例】
【0051】
溶融されたポリマを口金の間隙から吐出し、大型のドラムによってシート状にした後、シート流れ方向への延伸、幅方向への延伸を行うことで得られる、ポリエステル樹脂による単層のプラスチックフィルムを製造するに際し、図1に示す表面検査装置を導入して検査を行った。図1における方向Dは、被検査物1の流れ方向である。
【0052】
投光手段2として白色の高周波蛍光灯を使用し、その長手方向を、被検査物1の幅方向に略一致させた。受光手段3としてラインセンサを用い、センサ並び方向を、蛍光灯の長手方向に略一致させた。遮光手段4として遮光板を選び、3枚用いた。これら3枚の遮光板について、それぞれの長手方向を蛍光灯長手方向と略一致させた。遮光板それぞれの、被検査物1の下面(裏面)からの距離や幅については、前記考え方の通りに設計・配置した。
【0053】
表面凹凸欠点の検査位置における被検査物1の厚みが、100μmの場合と、1500μmの場合において、それぞれ検査を行った。表面検査装置による検査後に、被検査物の目視検査を行い、同程度と判断されたそれぞれの厚みにおける欠点を、どのように検出したかを確認した。その結果を、図7に示す。
【0054】
図7は、受光手段3からのデータ信号を処理したデータ処理手段5の出力結果である。この出力に基づいて、表面凹凸欠点の有無を判断する。図7にあるように、厚みが大きく変わっても表面凹凸欠点の検出感度にはほとんど変化がなく、被検査物の厚みによる検出感度の変化(低下)という従来方式の課題を解決できている。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、被検査物の表面凹凸欠点を検出する表面検査装置に限らず、キズ欠点や異物欠点など種々の欠点を検出する、光学的手段を用いた検査装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態における装置構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における投受光の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態における遮光構造物の設計・配置の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態における遮光手段の設計・配置の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態における遮光手段の設計・配置の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態における遮光手段の設計・配置の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるデータ処理手段の出力図である。
【図8】光軸ずらし方式の説明図である。
【図9】光軸ずらし方式の説明図である。
【図10】被検査物が厚い場合の光軸ずらし方式の説明図である。
【図11】被検査物が薄い場合の光軸ずらし方式の説明図である。
【図12】所定方向の投受光の一例を示す説明図である。
【図13】第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1:被検査物
1a:表面凹凸欠点
2:投光手段
3:受光手段
4:遮光構造物
4a:遮光手段
4b:遮光手段
4c:遮光手段
5:データ処理手段
6:外部出力手段
θ:受光光軸の入射角度
φ:受光光軸の出射角度
D:被検査物の流れ方向
Lc:受光中心光軸
L1:受光光軸
L2:受光光軸
L1’:受光光軸
L2’:受光光軸
P:受光光軸の出射位置
P’:受光光軸の出射位置
Q:受光光軸の出射位置
Q’:受光光軸の出射位置
R:受光光軸の出射位置
wa:遮光板4aの幅
Δwa:遮光板4aに関する配置パラメータ
la:遮光板4aと被検査物1下面との距離
wb:遮光板4bの幅
lb:遮光板4bと被検査物1下面との距離
wc:遮光板4cの幅
lc:遮光板4cと被検査物1下面との距離
101:受光手段
102:被検査物
103:遮光手段
103a:遮光手段103の端部
104:投光手段
105:表面凹凸欠点
d:光軸ずらし方式の説明における方向
Ld:所定方向
Ld1:所定方向
Ld2:所定方向
Φd:範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に光を投射する投光手段と、該被検査物を介した透過光または反射光を受光する受光手段と、該受光手段が受光した透過光または反射光に基づいて前記被検査物の表面凹凸欠点を検査するデータ処理手段とを有する表面検査装置であって、前記投光手段と前記受光手段との投受光軸上に複数の遮光手段を有することを特徴とする、表面検査装置。
【請求項2】
前記複数の遮光手段は、前記投光手段と前記受光手段との投受光において、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しないものであることを特徴とする、請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
被検査物に光を投射する投光ステップと、該被検査物を介した透過光または反射光を受光する受光ステップと、該受光ステップで受光した透過光または反射光に基づいて前記被検査物の表面凹凸欠点を検査するデータ処理ステップとを有する表面検査方法であって、該投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光軸上において複数の遮光ステップを有することを特徴とする、表面検査方法。
【請求項4】
前記複数の遮光ステップは、前記投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光において、第1の所定方向の投受光を略遮光し、前記第1の所定方向とは異なる第2の所定方向の投受光を略遮光しないことを特徴とする、請求項3に記載の表面検査方法。
【請求項5】
シート状の高分子フィルムを製造するに際して、該高分子フィルムに光を投射する投光ステップと、高分子フィルムを介した透過光または反射光を受光する受光ステップと、前記受光ステップで受光した透過光または反射光に基づいて前記高分子フィルムの表面凹凸欠点を検査するデータ処理ステップとを有する高分子フィルム表面検査方法であって、前記投光ステップで投射され、前記受光ステップで受光される光の投受光軸上において複数の遮光ステップを有することを特徴とする、高分子フィルム表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−292171(P2008−292171A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135059(P2007−135059)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】