説明

表面検査装置

【課題】機械加工が施されたワークの表面の傷の有無を検出し、かつ、その位置、大きさを推定できる表面検査装置を提供する。
【解決手段】シリンダブロック5に切削加工されたボア3の内側表面3Aを検査する表面検査装置9において、切削加工と直交する方向に所定長さ延びる1次元デジタル輝度画像を前記デジタル輝度画像から抽出し、1次元パワースペクトル処理部63と、1次元パワースペクトルデータの周波数fに対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するツール目ピッチ変換部64と、ピッチデータを並列に並べて評価用画像を生成する評価用画像生成部55と、前記評価用画像に基づいて傷の有無を検出する評価部57とを有し、前記1次元パワースペクトル処理部は、1次元方向の長さLを可変しながら1次元パワースペクトルデータを算出し、前記ツール目ピッチ変換部は、複数のピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工が施されたワーク表面を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程では、エンジンのシリンダブロックにボアをボーリング加工が行われる。このボアのボーリング加工では、ボーリング用バイトを回転させながらシリンダブロックに対して進退させてボアを形成するため、ボアの内側表面に螺旋状の加工痕が生じ、この加工痕をエンジンオイルの通り道(オイルピット)として利用できる。
また、ボアの内側表面はピストンの摺動面となるため、ピストンとの摺動抵抗を抑えてエンジンに所望の性能を発揮させるには、該摺動面が適切な表面粗さ及び面性状に形成されている必要がある。そこで、通常、ボアのボーニング加工後には、該ボアの内側表面に対して、オイルピットが残る程度に研磨仕上げするホーニング加工が行われる。また、このホーニング加工後には、摺動抵抗の要因となるボアの研磨残りの検査が行われる。
この検査には、例えば、ボアの内側表面を撮影したデジタル画像に対して2次元フーリエ変換を施すことにより2次元パワースペクトル画像を生成し、この2次元パワースペクトル画像の各画素値に基づいて、ボアの内側表面の平滑状態を評価する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−132900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パワースペクトル画像を用いた検査においては、ボアの内側表面の全体的な粗さの判定は可能なものの、パワースペクトル画像には空間的な情報が無いため、該パワースペクトル画像に基づいて研磨残りが見られる範囲や大きさを知ることはできない。したがって、研磨残りの箇所を特定するためには、ボアを撮影したデジタル画像を作業者が目視して見つけ、或いは、ボアを直接観察する等の作業が必要となる。そして、作業者は、研磨残りの箇所を確認した後、その大きさや形状などを勘案して、オイルピットであるか、或いは、研磨残りであるかといった最終的な判断を下している。
【0005】
このように、従来の検査では、ボアの内側表面の全体的な粗さの程度が分かるのみであり、研磨残りの範囲や大きさが分からないため、結局は、作業者が研磨残りの箇所を見つけ出し目視で確認する必要があり、検査に時間がかかる、という問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、機械加工が施されたワークの表面の傷の有無を検出し、かつ、その位置、大きさを推定可能とし、以って、検査時間を短縮することができる表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、機械加工が施されたワークの表面のデジタル画像に基づいて傷の有無を検査する表面検査装置において、前記機械加工の方向と直交する方向に所定長さ延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、前記機械加工の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて評価用画像を生成する評価用画像生成手段と、前記評価用画像に基づいて前記表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、前記1次元パワースペクトル算出手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出し、前記ピッチデータ変換手段は、前記1次元パワースペクトル算出手段が算出した複数の1次元パワースペクトルのそれぞれをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、機械加工の方向に直交する方向を1次元方向とした1次元パワースペクトルを生成する構成とした。この1次元パワースペクトルにおいては、機械加工のピッチに対応した周波数に該機械加工の深さに応じた信号が得られことから、ボア3の内側表面3Aの機械加工の痕を他の凹凸と区別して効率良く抽出することができる。
【0008】
これに加えて、本発明によれば、1次元パワースペクトルを変換したピッチデータを並列に並べ、並列方向が機械加工の方向に対応させた画像である評価用画像を生成する構成とした。この構成により、評価用画像に基づいて、機械加工痕による傷の有無を効率よく検出することができるとともに、その傷が存在する箇所を特定することができる。さらに、この傷が存在する箇所の並列方向への広がりに基づいて、傷の大きさ(延びる長さ)を推定することができる。
したがって、作業者はワークを目視せずとも傷の有無、その箇所及び大きさを推定することが可能となり、ワーク表面の良否の判断が容易となる。また作業者が実際に目視で確認する場合でも傷の箇所を絞り込めるため検査時間を短縮することができる。
【0009】
さらに、本発明によれば、1次元デジタル画像からピッチデータを生成する際に、この1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の1次パワースペクトルを算出し、各1次元パワースペクトルをピッチデータに変換し、全てのピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成する構成とした。この構成によれば、各ピッチデータによりピッチのサンプル点が補間されるため、ピッチデータの分解能を簡単に高めることができ、傷の検出精度を高めることができる。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第2態様は、シリンダブロックに切削加工により形成され研磨されたボアの内側表面のデジタル画像に基づいて該内側表面を検査する表面検査装置において、前記切削加工の方向と直交する方向に所定長さ延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、前記切削加工の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて評価用画像を生成する評価用画像生成手段と、前記評価用画像に基づいて前記内側表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、前記評価用画像生成手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出するとともに各1次元パワースペクトルをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、本発明の第1態様と同様な効果を奏する。これに加え、視認し難いボアの内側表面を高精度に検査することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第3態様は、機械加工が施されたワークの表面のデジタル画像に基づいて傷の有無を検査する表面検査装置において、所定長さに延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、一定の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて画像を生成するとともに、該一定の方向を前記デジタル画像に対して所定角度ずつ回転させ、それぞれの回転角度で前記画像を生成し、各画像の中から高い信号強度が最も多く含まれる画像を評価用画像に選択する評価用画像生成手段と、前記評価用画像に基づいて前記表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、前記1次元パワースペクトル算出手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出し、前記ピッチデータ変換手段は、前記1次元パワースペクトル算出手段が算出した複数の1次元パワースペクトルのそれぞれをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、本発明の第1態様と同様な効果を奏する。これに加え、機械加工の方向が予め分かっていないワークの表面も検査することができる。
【0014】
本発明の第4態様は、本発明の第1〜第3態様において、前記1次元デジタル画像の長さを、所定の傷を検出可能なS/Nとなる長さに設定したことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、1次元デジタル画像の長さによって、ピッチデータの分解能とS/Nとの間にトレードオフが生じるにもかかわらず、高い分解能でありながらも良好なS/Nを実現することができる。
【0016】
本発明の第5態様は、本発明の第1〜第4態様において、前記1次元パワースペクトル算出手段は、複数の前記1次パワースペクトルを算出するときには、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを縮めながら算出することを特徴とする。
【0017】
1次元デジタル画像の1次元方向の長さを長くしながら複数の1次パワースペクトルを算出する場合には、その都度、1次元デジタル画像をデジタル画像から抽出し直す必要があるものの、本発明によれば、1次元デジタル画像の1次元方向の長さを縮めながら複数の1次元パワースペクトルを算出するため、1次元デジタル画像を1度だけ抽出すればよい。これにより、処理の簡略化及び処理時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1次元パワースペクトルを変換したピッチデータが機械加工の方向に沿って並列に並べられた評価用画像が生成されるため、この評価用画像に基づいて、機械加工痕による傷の有無を効率よく検出することができるとともに、その傷が存在する箇所を特定することができる。さらに、この傷が存在する箇所の並列方向への広がりに基づいて、傷の大きさ(延びる長さ)を推定することができる。
これに加え、本発明によれば、1次元デジタル画像からピッチデータを生成する際に、この1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数のピッチデータを生成し、全てのピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することで、サンプル点を補間したピッチデータが得られる。これにより、ピッチデータの分解能を簡単に高めることができ、傷の検出精度を高めることができる。
また、ボアの内側表面の検査においては、作業者が視認し難いボアの内側表面を簡単かつ正確に検査することができる。
また、一定の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて画像を生成するとともに、該一定の方向をデジタル画像に対して所定角度ずつ回転させ、それぞれの回転角度で前記画像を生成し、各画像の中から高い信号強度が最も多く含まれる画像を評価用画像に選択することで、機械加工の方向が不明な場合でも、この機械加工の方向にピッチデータが並んだ画像を評価用画像とすることができる。
また、1次元デジタル画像の長さを、所定の傷を検出可能なS/Nとなる長さに設定することで、高い分解能で、かつ、良好なS/Nを実現することができる。
また、複数の1次パワースペクトルを算出するときには、1次元デジタル画像の1次元方向の長さを縮めながら算出することで、複数の1次パワースペクトルを算出する際に、その都度、1次元デジタル画像をデジタル画像から抽出し直す必要がなく、処理の簡略化及び処理時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るボア内面検査システムと、検査対象となるボアが形成されたシリンダブロックの概略構成を示す図である。
【図2】穴内面検査で生成される画像を、検査の流れに沿って示した図である。
【図3】評価用画像生成部による1次元パワースペクトル画像の生成過程を示す図である。
【図4】1次元デジタル輝度画像と1次元パワースペクトルの関係を示す図である。
【図5】1次元デジタル輝度画像を抽出する抽出窓の高さとツール目ピッチの分解能及びS/Nとの関係を示す図である。
【図6】抽出窓の高さ変化によるツール目ピッチのサンプル点のシフトを示す図である。
【図7】ツール目ピッチの補間処理の説明図である。
【図8】ボア内面検査処理のフローチャートである。
【図9】本発明の変形例に係る表面検査システム100の概略構成を、検査対象のワークとともに示す図である。
【図10】加工方向の判定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボア内面検査システム1と、検査対象となるボア3が形成されたシリンダブロック5の概略構成を示す図である。
ボア3は、回転軸に設けたボーリングヘッドに切削バイトを径方向に突設し、該ボーリングヘッドを回転させながらワークとしてのシリンダブロック5に対して進退させる、いわゆるボーリング加工により形成されている。このボーリング加工により、ボア3の内側表面3Aには、方向性を有する螺旋状の切削加工痕ができる。その後、ボア3の内側表面3Aにオイルピットを残しつつエンジンの所望の性能を発揮可能な表面粗さ及び面性状をとすべく、該ボア3の内側表面3Aに対し、ホーニング用砥石を配設した加工ヘッドを用いてホーニング加工が施されている。
【0021】
ボア内面検査システム1は、ホーニング加工後にボア3の内側表面3Aを撮影したデジタル画像に基づいて、研磨残りの有無を評価する。すなわち、ボア内面検査システム1は、ボア3の内側表面3Aを走査するセンサヘッド7と、このセンサヘッド7の出力信号に基づいてデジタル画像を生成し該デジタル画像に基づいて研磨残りを評価する表面検査装置9と、センサヘッド7を移動駆動する駆動機構11とを備えている。
センサヘッド7は、ボア3に進入可能な円筒状を成し、中心軸線12の回りに回転可能かつ高さ方向に移動可能に上記駆動機構11に取り付けられており、高さ位置を変えながらボア3の全内周面をセンシング可能に構成されている。このセンサヘッド7の構成について詳細には、センサヘッド8は、その周面に設けた開口15からレーザ光をボア3の内側表面3Aに向けて照射し、切削加工痕の形状に応じた反射光量を検出して表面検査装置9に出力する。すなわち、センサヘッド7は、光源としてのLD(レーザダイオード)17、光ファイバ19及び集光光学ユニット21を備え、LED17の光を光ファイバ19で集光光学ユニット21に導き、集光光学ユニット21で集光して開口15からレーザ光をボア3の内側表面3Aに照射する。また、センサヘッド7は、反射光を受光する受光センサ23を備えるとともに、集光光学ユニット21を介してボア3の内側表面3Aから戻ってくる反射光を受光センサ23に導く複数の光ファイバ25が光ファイバ19に隣接して配設されている。
【0022】
駆動機構11は、センサヘッド7を回転させる回転駆動機構31と、この回転駆動機構31を進退させる進退機構33とを備えている。
回転駆動機構31は、ハウジング34と、先端に上記センサヘッド7が取り付けられハウジング34を上下に貫通して設けられたシャフト35と、表面検査装置9の制御の下、シャフト35を回転駆動するシャフトモータ37と、シャフト35の回転速度および回転角を検出し表面検査装置9に出力するロータリエンコーダ39とを備えている。
進退機構33は、送りねじ機構であり、ねじが刻設された軸部41と、この軸部41を回転駆動する進退モータ43と、軸部41の回転速度および回転角を検出し表面検査装置9に出力するロータリエンコーダ45とを備える。軸部41は、ハウジング34のナット部36に螺合されており、進退モータ43を駆動することにより軸部41が回転し、回転駆動機構31を進退させる。
【0023】
表面検査装置9は、駆動機構11を制御してセンサヘッド7の位置を制御する位置制御部51と、センサヘッド7の受光信号に基づいてボア3の内側表面3Aのデジタル画像を生成する画像化部53と、このデジタル画像に基づいて、研磨残りを評価するための評価用画像73(図2)を生成する評価用画像生成部55と、この評価用画像73に基づいて研磨残りを評価する評価部57とを備えている。かかる表面検査装置9は、例えばパーソナルコンピュータに、各部を実現するためのプログラムを実行させることで構成可能である。
【0024】
表面検査装置9の各部について説明すると、位置制御部51は、シャフトモータ37及び進退モータ43を駆動するサーボ機構を内蔵し、センサヘッド7の中心軸線12上の位置と回転角を制御する。すなわち、位置制御部51は、検査開始時に、センサヘッド7をボア3に挿入し、開口15を検査範囲Kの下端位置Kaに位置させる。そして、ボーリング加工時のボーリング用バイトの軌跡に倣うように、センサヘッド7を中心軸線12の回りに回転させながら上昇させる動作を、センサヘッド7の開口15が検査範囲Kの上端位置Kbに至るまで行い、該センサヘッド7で検査範囲Kの全表面を螺旋状に走査する。この検査範囲Kは、シリンダとの摺動面として機能する範囲により決定される。
【0025】
画像化部53は、センサヘッド7からの受光信号をA/D変換し、輝度を示すデジタル信号として出力するA/D変換ボード59と、このデジタル信号に基づいて、ボア3の内側表面3Aの上記検査範囲Kについてのデジタル輝度画像70を構成する画像化部61とを備えている。
デジタル輝度画像70は、図2(A)に示すように、ボア3内の各検査位置でセンサヘッド7により得られる反射光強度を該検査位置と対応させて画像化したものであり、本実施形態では、センサヘッド7の高さ位置とセンサヘッド7の回転角をそれぞれ縦軸及び横軸として画像化している。なお、同図のデジタル輝度画像70における破線は、ボーリング加工時の切削加工痕(いわゆるツール目)Pを模式的に示している。
【0026】
評価用画像生成部55は、図2及び図3に示すように、デジタル輝度画像70から抽出した1次元デジタル輝度画像70Aに基づいて、切削加工痕Pの方向と直交する方向の1次元パワースペクトルデータ80を、切削加工痕Pの方向に沿って順次生成する1次元パワースペクトル処理部(1次元パワースペクトル算出手段)63と、1次元パワースペクトルデータ80を、該1次元パワースペクトルデータ80の周波数fに対応するピッチごとの信号強度を示すピッチデータ81に変換するツール目ピッチ変換部(ピッチデータ変換手段)64とを備え、このピッチデータ81を、各ピッチデータ81の信号強度に応じて多値化した明暗置換画像71を並列に並べて評価用画像73を生成する。また、この評価用画像生成部55は、1次元デジタル輝度画像70Aを1次元方向の長さLを縮めながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出するとともに各1次元パワースペクトルデータ80をピッチデータ81に変換し、各ピッチデータ81を合成して1つのピッチデータ81を生成する補間処理部65を備えている。なお、これら1次元パワースペクトルデータ80、ピッチデータ81、及び、評価用画像73については後に詳述する。
評価部57は、評価用画像73の各画素の輝度値に基づいてボア3の内側表面3Aの研磨残り(傷の有無)を評価する検出手段として機能する。
【0027】
図3は、評価用画像生成部55による明暗置換画像71の生成過程を示す図である。
評価用画像生成部55には、デジタル輝度画像70において1次元パワースペクトル処理を施す領域を規定する窓として、幅Wが1ピクセル(pix)、長さLが200ピクセルの抽出窓(列)75が予め設定されている。この抽出窓75の長さLの方向が1次元パワースペクトルデータ80の1次元方向に相当する。
評価用画像生成部55は、図2(A)に示すように、デジタル輝度画像70において抽出窓75を、長さLの方向が切削加工痕Pの方向に直交するように配置し、図3(A)に示すように、この抽出窓75に対応した範囲のデジタル輝度画像、すなわち幅Wが1ピクセルの1次元デジタル輝度画像70Aを抽出する。なお、図3(A)には、ホーニング処理による研磨が足りない(加工痕が深い)切削加工痕Pを研磨残りQとして模式的に示している。
【0028】
次いで、評価用画像生成部55は、この1次元デジタル輝度画像70Aに対して1次元フーリエ変換を施し、図3(B)に示すように、周波数fごとの信号強度を示す1次元パワースペクトルデータ80を生成する。この1次元パワースペクトルデータ80においては、切削加工痕Pの深さに応じた強度信号が、該切削加工痕Pのピッチに対応した周波数fに出現する。
詳述すると、図4(A)に示すように、1次元デジタル輝度画像70Aにおいて、白黒が1ピクセルごとに変化している場合、各ピクセルの輝度値は、図4(B)のように、輝度値「250」(白)と「0」(黒)が交互に出現するパターンとなり、これを、1次元方向(長さLの方向)の輝度変化で表すと図4(C)のような波形が得られる。一方、パワースペクトルで表した場合には、2ピクセルごとに黒と白が入れ替わることから、図4(D)に示すように、2ピクセル/サイクルに対応したピッチの信号が現れ、パワースペクトルにおいては、このピッチの逆数(サイクル/ピクセル)に相当する周波数fに信号が出現することとなる。なお、パワースペクトルにおいて、周波数fは離散化した値をとる。
ボーリング加工においては、切削加工痕Pが略一定ピッチの螺旋状となるから、1次元パワースペクトルデータ80においても、切削加工痕Pが螺旋のピッチに対応した周波数fの信号として現れる。このとき、信号強度は、切削加工痕Pが深いほど大きくなる。なお、ボア3の内側表面3Aに切削加工痕Pの他に打痕などにより凹凸がある場合には、この凹凸の深さに応じた強度の信号が他の周波数fとして出現することになる。
【0029】
また、評価用画像生成部55は、図3(C)に示すように、離散化した周波数fごとの信号強度を示す1次元パワースペクトルデータ80を、同じく離散化したピッチT(以下、「ツール目ピッチT」と言う)ごとの信号強度を示すピッチデータ81に変換する。このピッチデータ81においては、各ツール目ピッチTの信号強度により、抽出窓75の範囲に分布する切削加工痕Pのピッチと深さ(大きさ)が示されることとなる。なお、このピッチの単位はピクセルで表現されるが、デジタル輝度画像70における1ピクセルあたりの実寸(mm)を用いることで、ピクセルで表現されたピッチの長さを実寸(mm)で表現することもできる。
【0030】
抽出窓75の長さLについて詳述すると、この長さLには、ピッチデータ81の分解能とS/Nを良好にする値が設定されている。すなわち、ピッチデータ81の分解能は、抽出窓75の長さLに依存し、図5(A)〜図5(C)に示すように、抽出窓75の長さLが短いほど分解能が低下する。このため、高い分解能を得るには、図5(C)に示すように、抽出窓75の長さLを例えば1200ピクセル程度まで長くする必要がある。
しかしながら、長さLが長いと、この抽出窓75における切削加工痕Pの成分(信号)が相対的に減少するためS/Nが低下してしまう。また、細かい(浅い)切削加工痕Pを検出するには抽出窓75の長さLは小さい方がよい。
したがって、抽出窓75の長さLを25ピクセル程度まで短くすることで、S/Nを良好にし、また、細かい切削加工痕Pの検出が可能になるものの、上述のように、分解能が不足するという問題がある。このように、長さLを可変する際には、ピッチデータ81の分解能とS/Nとの間にトレードオフが生じる。
【0031】
そこで発明者らは、まず、有意な傷を良好に検出可能なS/Nが得られる抽出窓75の長さLを実験等を通じて求めた。この結果、長さL=200ピクセル(pix)が最適であるとの知見が得られ、この長さLを抽出窓75に用いることとした。しかしながら、この長さLでは、ピッチデータ81の分解能は比較的低いため、有意な傷の検出漏れが生じる可能性がある。そこで、発明者らは、抽出窓75の長さLを大きくしてピッチデータ81の分解能を高めるのではなく、次のようにして、実質的な分解能を高めることとした。
【0032】
すなわち、1次元デジタル輝度画像70Aの抽出窓75の長さLを可変すると、これに応じて、ツール目ピッチTのサンプル点(離散値)がシフトする。具体的には、図6に示すように、抽出窓75の長さLを200ピクセルから199ピクセルに縮めると、長さLの減少に応じた分だけ、ツール目ピッチTのサンプル点が全体的にピッチ長が減少する方向(左側)にシフトする。これにより、長さLが200ピクセルのときとは異なるツール目ピッチTの離散値の信号強度が補間されることとなる。このとき、図6に示す例では、抽出窓75の長さLを1ピクセル減じるため抽出窓75に含まれる情報が1ピクセル/200ピクセル(=0.5%)だけ欠落するものの、ピッチデータ81のツール目ピッチTのサンプル点が約倍に増え分解能を実質的に約倍(200%)アップさせることができる。
【0033】
本実施形態では、図7に示すように、同一の1次元デジタル輝度画像70Aに対して端部から長さLが200ピクセルから195ピクセルになるまで、該長さLを1ピクセルずつ減じながら合計5つの1次元パワースペクトルデータ80を算出し、各1次元パワースペクトルデータ80をピッチデータ81に変換し、これらのピッチデータ81を合成する。これにより、ツール目ピッチTのサンプル点を約5倍に増やしてピッチデータ81の分解能を実質的に5倍にアップさせている。
【0034】
なお、1次元デジタル輝度画像70Aの長さLを減らしながらピッチデータ81を求めるのではなく、高さLを増やしながらピッチデータ81を求めて分解能を実質的に高めてもよい。ただし、1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを長くしながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する場合には、その都度、1次元デジタル輝度画像70Aをデジタル輝度画像70から抽出する必要がある。これに対して、1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを縮めながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する場合には、1次元デジタル輝度画像70Aを1度だけ抽出すればよく、これにより、処理の簡略化及び処理時間の短縮化が図られる。
【0035】
また、本実施形態では、複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する際に、1次元デジタル輝度画像70Aの長さLを1ピクセルずつ減じることとしたが、1ピクセルに限らず、複数ピクセル(例えば5ピクセル)ずつ可変させてもよい。ただし、1回あたりに減じるピクセル数は、図6に示すように、ピッチデータ81のサンプリング点のシフト幅M1が、長さLの1次元デジタル輝度画像70Aから求めたピッチデータ81のサンプリング点の間隔幅(離散幅)M2の範囲内に収まるように設定することが好ましい。
【0036】
かかる処理は、評価用画像生成部55により行われる。すなわち、前掲図3(C)に示すように、評価用画像生成部55は、1つの1次元パワースペクトルデータ80(図3(B))をピッチデータ81に変換するとともに、同一の1次元デジタル輝度画像70Aの長さLを減じながら1次元パワースペクトルデータ80を算出し、それぞれをピッチデータ81に変換する。そして、全てのピッチデータ81を合成し、図3(D)に示すように、ツール目ピッチTのサンプル点を補間したピッチデータ81を生成する。
【0037】
次いで、評価用画像生成部55は、図3(E)に示すように、信号強度が大きいほど、すなわち、傷が大きい(深い)ほど輝度値を低くした凡例にしたがって、ピッチデータ81を多値化して明暗置換画像71を生成する。なお、この明暗置換画像71の寸法は抽出窓75と同一となる。
【0038】
評価用画像生成部55は、図2(A)に示すように、長さLの方向ごとに抽出窓75を切削加工痕Pの方向Aに沿って回転角を0度〜360度まで移動させて順次明暗置換画像71を生成し、図2(B)に示すように、これらを切削加工方向に沿って並列に並べて評価用画像73を生成する。これにより、センサヘッド7の回転角に対応して明暗置換画像71が並列に並んだ画像が得られることとなる。
【0039】
このようにして得られた評価用画像73に基づいて評価部57が研磨残りQを評価する。詳述すると、評価部57は、前掲図2(C)に示すように、オイルピットを除外して研磨残りQに応じた強度だけをより確実に残すために、該オイルピットを区別可能な所定の輝度閾値で2値化処理を行って2値化画像78を生成する。
そして、評価部57は、図2(D)に示すように、2値化処理で残った各画素に対し、それらの画素を抽出した抽出窓75(すなわち、該画素を含んでいた明暗置換画像71)を当てはめ該抽出窓75に対応するエリアを着色により色分けした異常エリア抽出画像79を生成する。これにより、この異常エリア抽出画像79においては、研磨残りQが存在する範囲Rが色分けして明示されることとなる。なお、この色分けした範囲Rには、研磨残りQ以外にも、切削工具などが衝突して付いた打痕といった、各種の傷も含まれる。
【0040】
図8は、ボア内面検査システム1によるボア内面検査処理のフローチャートである。
検査対象のボア3が形成されたシリンダブロック5を駆動機構11の直下の所定位置にセットした後、位置制御部51によりセンサヘッド7をボア3に進入させ、回転させながら進退させることでボア3の内側表面3Aを検査範囲Kに亘って走査し、この走査によって得られた信号に基づいて画像化部53により検査範囲Kのデジタル輝度画像70を生成する(ステップS1)。次いで、評価用画像生成部55の1次元パワースペクトル処理部63により、デジタル輝度画像70に切削加工痕Pに対して直交する方向に長さLだけ延びた抽出窓75を設定し該抽出窓75の範囲から1次元デジタル輝度画像70Aを抽出する(ステップS2)。
【0041】
次いで、1次元パワースペクトル処理部63により、この1次元デジタル輝度画像70Aの長さLを1ピクセルずつ縮めながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する(ステップS3)。そして、ツール目ピッチ変換部64により、各1次元パワースペクトルデータ80をピッチデータ81に変換し(ステップS4)、補間処理部65により全てのピッチデータ81を合成してツール目ピッチTのサンプル点を補間したピッチデータ81を生成する(ステップS5)。次に、評価用画像生成部55は、このピッチデータ81の信号強度に基づいて多値化した明暗置換画像71を生成する(ステップS6)。
【0042】
評価用画像生成部55は、検査範囲Kの全てについて明暗置換画像71を生成するまでの間(ステップS7がNOの間)、デジタル輝度画像70において抽出窓75を切削加工痕Pに沿って移動させ(ステップS8)、明暗置換画像71の生成を繰り返し行う。そして、評価用画像生成部55は、これらの明暗置換画像71を並列に並べて評価用画像73を生成する(ステップS9)。
【0043】
次に、評価部57により、研磨残りQに応じた強度だけを残すために所定の輝度閾値で評価用画像73の2値化処理を行って2値化画像78を生成し(ステップS10)、残った画素を抽出した抽出窓75に相当する範囲(すなわち、残った画素を含んでいた明暗置換画像71の全画素)を着色により色分けして異常エリア抽出画像79を生成する(ステップSS11)。次いで、評価部57は、このようにして生成された異常エリア抽出画像79に着色範囲が存在しない場合には(ステップS12:NO)、ボア3の内側表面3Aには研磨残りQが無いと評価し(ステップS13)、着色範囲が存在する場合には(ステップS12:YES)、研磨残りQありと評価する(ステップS14)。
【0044】
研磨残りQがある場合には、異常エリア抽出画像79を図示せぬモニタ装置に表示することで作業者に提示される。この異常エリア抽出画像79によれば、着色された範囲の広さから研磨残りQの大きさを推し量ることができる。さらに、その着色範囲の位置から研磨残りQが存在する位置も容易に推定することが可能となり、実際に目視で確認する際に研磨残りQを見つけ出すことが容易となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態によれば、切削加工痕Pの方向に直交する方向を1次元方向とした1次元パワースペクトルデータ80を生成する構成とした。この1次元パワースペクトルデータ80においては、切削加工痕Pのピッチに対応した周波数fに該切削加工痕Pの深さに応じた信号が得られことから、ボア3の内側表面3Aから切削加工痕Pを他の凹凸と区別して効率良く抽出することができる。
【0046】
これに加えて、本実施形態によれば、1次元パワースペクトルデータ80を変換したピッチデータ81の多値化画像である明暗置換画像71を並列に並べ、並列方向が切削加工痕Pの方向に対応させた画像である評価用画像73を生成する構成とした。この構成により、評価用画像73の画素値に基づいて、切削加工痕Pの研磨残りQの有無を効率よく評価することができるとともに、その研磨残りQが存在する範囲Rを特定することができる。さらに、この範囲Rの並列方向への広がりに基づいて、研磨残りQの大きさ(延びる長さ)を推定することができる。
したがって、作業者は目視せずとも研磨残りQの有無、その箇所及び大きさを推定することが可能となり、ボア3の良否の判断が容易となる。また作業者が実際に目視で確認する場合でも該研磨残りQの箇所が絞り込めるため検査時間を短縮することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、1次元デジタル輝度画像70Aからピッチデータ81を生成する際に、この1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを短くしながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出し、各1次元パワースペクトルデータ80をピッチデータ81に変換し、全てのピッチデータ81を合成して1つのピッチデータ81を生成する構成とした。この構成によれば、各ピッチデータ81によりツール目ピッチTのサンプル点が補間されるため、ピッチデータ81の分解能を簡単に高めることができ、研磨残りQの検出精度を高めることができる。
【0048】
特に本実施形態によれば、1次元デジタル輝度画像70Aの長さLを、所望の深さの傷を検出可能なS/Nとなる長さに設定する構成としたため、長さLによって分解能とS/Nにトレードオフが生じるにもかかわらず、高い分解能でありながらも良好なS/Nを実現することができる。
【0049】
また本実施形態によれば、1次元デジタル輝度画像70Aから複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する場合には、該1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを縮めながら算出する構成としたため、次のような効果を奏する。
すなわち、1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを長くしながら複数の1次元パワースペクトルデータ80を算出する場合には、その都度、1次元デジタル輝度画像70Aをデジタル輝度画像70から抽出する必要があるものの、本構成によれば、1次元デジタル輝度画像70Aの1次元方向の長さLを縮めながら算出するため、1次元デジタル輝度画像70Aを1度だけ抽出すればよく、これにより、処理の簡略化及び処理時間の短縮化が図られる。
【0050】
また本実施形態によれば、評価用画像73を二値化してなる異常エリア抽出画像79に対し、二値化により残った画素を、この画素を含んでいた明暗置換画像71の各画素とともに色分けする構成とした。こうすることで、研磨残りQが存在する範囲Rが明確になり、作業者が実際に目視する際に、研磨残りQの箇所を見つけ出し易くなる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形可能である。
例えば、実施形態では、ボア3の内側表面3Aを検査する装置について例示したが、本発明は、ボア3のような穴の機械加工面を検査する装置に限らない。すなわち、図9に示すように、ワーク90の平面な表面に略等ピッチで同一方向に切削加工が施された機械加工面を検査する装置にも適用可能である。この場合、機械加工面が平面であるため、機械加工面のデジタル輝度画像70をカメラ91で全体を1度で撮影することで得ることができる。
【0052】
また、機械加工方向(切削加工痕Pの方向)が予め分かっていなくとも、次のようにして機械加工方向を特定することができる。すなわち、図10(A)〜図10(C)に示すように、機械加工面のデジタル輝度画像70を所定角度ずつ回転させるごとに、明暗置換画像71(ピッチデータ81)を、この明暗置換画像71の1次元方向(長さLの方向)と直交する方向Bに沿って順次生成し並列に並べて評価用画像73を生成する。このとき、明暗置換画像71の1次元方向が切削加工痕Pの方向と直交するようにデジタル輝度画像70が回転したときに、各明暗置換画像71に強い信号強度が最も多く含まれる評価用画像73が得られる。したがって、このような評価用画像73を特定することで、機械加工方向を特定することができる。
そして、図9に示すように、このようにして機械加工方向を判定する加工方向判定部92を備えて表面検査システム100の表面検査装置109を構成することで、機械加工痕の方向が予め分かっていないワーク90についても機械加工面を評価可能な表面検査装置109を構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ボア内面検査システム
3 ボア
3A 内側表面
5 シリンダブロック
7 センサヘッド
9、109 表面検査装置
55 評価用画像生成部(評価用画像生成手段)
57 評価部(検出手段)
63 1次元パワースペクトル処理部(1次元パワースペクトル算出手段)
64 ツール目ピッチ変換部(ピッチデータ変換手段)
65 補間処理部
70 デジタル輝度画像(デジタル画像)
70A 1次元デジタル輝度画像(1次元デジタル画像)
71 明暗置換画像
73 評価用画像
75 抽出窓
79 異常エリア抽出画像
80 1次元パワースペクトルデータ
81 ピッチデータ
90 ワーク
91 カメラ
92 加工方向判定部
100 表面検査システム
L 抽出窓(1次元デジタル画像)の長さ
P 切削加工痕
Q 研磨残り
T ツール目ピッチ(ピッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工が施されたワークの表面のデジタル画像に基づいて傷の有無を検査する表面検査装置において、
前記機械加工の方向と直交する方向に所定長さ延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、
前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、
前記機械加工の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて評価用画像を生成する評価用画像生成手段と、
前記評価用画像に基づいて前記表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、
前記1次元パワースペクトル算出手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出し、
前記ピッチデータ変換手段は、前記1次元パワースペクトル算出手段が算出した複数の1次元パワースペクトルのそれぞれをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
シリンダブロックに切削加工により形成され研磨されたボアの内側表面のデジタル画像に基づいて該内側表面を検査する表面検査装置において、
前記切削加工の方向と直交する方向に所定長さ延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、
前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、
前記切削加工の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて評価用画像を生成する評価用画像生成手段と、
前記評価用画像に基づいて前記内側表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、
前記1次元パワースペクトル算出手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出し、
前記ピッチデータ変換手段は、前記1次元パワースペクトル算出手段が算出した複数の1次元パワースペクトルのそれぞれをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
機械加工が施されたワークの表面のデジタル画像に基づいて傷の有無を検査する表面検査装置において、
所定長さに延びる1次元デジタル画像を前記デジタル画像から抽出し、1次元パワースペクトルを算出する1次元パワースペクトル算出手段と、
前記1次元パワースペクトルを、該1次元パワースペクトルの周波数に対応するピッチごとに信号強度を示すピッチデータに変換するピッチデータ変換手段と、
一定の方向に沿って順次求められたピッチデータを並列に並べて画像を生成するとともに、該一定の方向を前記デジタル画像に対して所定角度ずつ回転させ、それぞれの回転角度で前記画像を生成し、各画像の中から高い信号強度が最も多く含まれる画像を評価用画像に選択する評価用画像生成手段と、
前記評価用画像に基づいて前記表面の傷の有無を検出する検出手段と、を有し、
前記1次元パワースペクトル算出手段は、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを可変しながら複数の前記1次パワースペクトルを算出し、
前記ピッチデータ変換手段は、前記1次元パワースペクトル算出手段が算出した複数の1次元パワースペクトルのそれぞれをピッチデータに変換し、各ピッチデータを合成して1つのピッチデータを生成することを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
前記1次元デジタル画像の長さを、所定の傷を検出可能なS/Nとなる長さに設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記1次元パワースペクトル算出手段は、複数の前記1次パワースペクトルを算出するときには、前記1次元デジタル画像の1次元方向の長さを縮めながら算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−43446(P2011−43446A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192699(P2009−192699)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】