説明

表面欠陥検査装置

【課題】欠陥検出の精度を高めつつ、効率良く欠陥を検出する。
【解決手段】表面欠陥検査装置は、被検査物1の表面1aを撮像する撮像部2と、撮像部2により得られた画像に基づいて被検査物1の表面1aの欠陥を検出する処理部4と、を備える。撮像部2は、受光面11aに形成された像を撮像する撮像素子11と、受光面11aに被検査物1の表面1aの像を形成する光学系12とを有する。光学系12の光軸Oが被検査物1の1a表面の法線N1に対して傾けられる。受光面11aの法線N2が光学系12の光軸Oと平行である場合に比べて、受光面11aの周辺部での光学系12による被検査物1の表面1aのデフォーカス量が低減されるように、受光面11aの法線N2が光学系12の光軸Oに対して相対的に傾けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板などの被検査物の表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板などの被検査物の表面の欠陥を検出する場合、CCDカメラ等の撮像部で被検査物の表面を撮像し、撮像部から得られた画像を処理して被検査物の表面の欠陥を検出している(例えば、下記特許文献1)。CCDカメラ等の撮像部は、受光面に形成された像を撮像するCCD等の撮像素子と、前記受光面に前記被検査物の表面の像を形成する光学系とを有している。そして、前記撮像部では、前記光学系の光軸と撮像素子の受光面の法線とは平行にされている。
【0003】
このように撮像部で被検査物の表面を撮像し、撮像部から得られた画像を処理して被検査物の表面の欠陥を検出する場合、撮像部の光学系の光軸が被検査物の表面の法線に対してある程度傾くように撮像部が配置される場合がある。例えば、下記特許文献1に開示された表面欠陥検査装置では、照明光を被検査物に照射し、撮像部によって被検査物の表面の暗視野像を撮像するために、撮像部の光学系の光軸が被検査物の表面の法線に対して傾くように撮像部が配置されている。
【特許文献1】特開平4−344447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の研究の結果、前述した従来の表面欠陥検査装置では、撮像部の光学系の光軸が被検査物の表面の法線に対して傾くように撮像部が配置されていることに起因して、欠陥検出の精度が低下してしまうかあるいは効率良く欠陥を検出できなくなってしまうことが、判明した。
【0005】
すなわち、前記従来の表面欠陥検査装置では、前述したように、撮像部の光学系の光軸が被検査物の前記表面の法線に対して傾けられ、撮像部の撮像素子の受光面の法線が撮像部の光学系の光軸と平行にされている。したがって、撮像部の視野内で被検査物の表面からの撮像素子の受光面までの距離が変化し、得られる被検査物の表面の画像は、中央付近ではジャストフォーカスの良好な像となるが、周辺部では傾いた方向にデフォーカスが発生してしまう。このため、デフォーカスが発生した周辺部の画像領域に基づいて欠陥検出を行うと、欠陥検出の精度が低下してしまう。
【0006】
一方、デフォーカスが発生した周辺部の画像領域を用いずにジャストフォーカスの良好な像が得られる中央付近の画像領域のみを用いて欠陥検出を行うと、欠陥検出の精度は高まるが、一度に欠陥を検出し得る領域(「一括検査領域」と呼ぶ。)が狭まってしまうために、被検査物の表面の所望の被検査領域の全体について検査を行うには、一括検査領域を順次移動させて当該領域を撮像する回数が増大してしまい、効率良く欠陥を検出することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、欠陥検出の精度を高めつつ効率良く欠陥を検出することができる表面欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の一態様による表面欠陥検査装置は、被検査物の表面を撮像する撮像部と、該撮像部により得られた画像に基づいて前記被検査物の前記表面の欠陥を検出する処理部と、を備え、前記撮像部は、受光面に形成された像を撮像する撮像素子と、前記受光面に前記被検査物の前記表面の像を形成する光学系とを有し、前記光学系の光軸が前記被検査物の前記表面の法線に対して傾けられ、前記受光面の法線が前記光学系の光軸と平行である場合に比べて、前記受光面の周辺部での前記光学系による前記被検査物の前記表面のデフォーカス量が低減されるように、前記受光面の法線が前記光学系の光軸に対して相対的に傾けられたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、欠陥検出の精度を高めつつ効率良く欠陥を検出することができる表面欠陥検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による表面欠陥検査装置について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態による表面欠陥検査装置を模式的に示す概略構成図である。図2は、図1中の要部を模式的に示す概略拡大図である。説明の便宜上、図1及び図2に示すように、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を定義する。透明基板1の表面1aがXY平面と平行となっている。
【0012】
本実施の形態による表面欠陥検査装置は、被検査物としてのガラス基板等の透明基板1の−Z側の表面1aの欠陥を検査するように構成され、透明基板1の−Z側の表面1aを撮像する撮像部としてのカメラ2と、透明基板1の−Z側の表面1aに照明光を照射する照明光学系3と、カメラ2により得られた画像に基づいて透明基板1の−Z側の表面1aの欠陥を検出する処理部4と、制御部5と、移動機構としてのXYステージ6とを備えている。
【0013】
カメラ2は、受光面11aに形成された像を撮像して電気信号に変換するCCD等の撮像素子11と、前記受光面11aに透明基板1の−Z側の表面1aの像を形成する光学系としての撮像レンズ12とから構成されている。このように本実施の形態では、撮像レンズ12が撮像素子11の受光面11aに直接に透明基板1の−Z側の表面の像を形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、撮像レンズ12が形成した像を、光ファイバ束を介して撮像素子11の受光面11aに入射させるようにしてもよい。この場合、撮像レンズ12が透明基板1の−Z側の表面の像を形成する受光面は、光ファイバ束の入射端面となる。撮像素子11による撮像動作は、制御部5からの指令によって行われる。
【0014】
照明光学系3は、光源13と、光源13からの光をコリメートとして透明基板1に照射するコリメータレンズ14とから構成されている。
【0015】
本実施の形態では、照明光学系3からの照明光が−Z方向に進行して透明基板1を透過してその−Z側の表面に照明光を照射するように、透明基板1の+Z側に配置されている。一方、カメラ2は、透明基板1の−Z側に配置され、照明光学系3からの照明光がカメラ2の視野に直接入らないように、撮像レンズ12の光軸Oが透明基板1の−Z側の表面1aの法線N1に対して傾けられている。本実施の形態では、図1及び図2に示すように、撮像レンズ12の光軸Oは、法線N1に対してY軸回りに図中の時計方向に角度θだけ傾けられている。これにより、カメラ2の撮像素子11によって、透明基板1の−Z側の表面1aの照明光学系3による被照明領域の暗視野像が撮像されるようになっている。図面では、法線N1はZ軸と平行となっている。なお、本実施の形態では、照明光学系3による被照明領域は、カメラ2の視野よりも広くなるように設定されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、本実施の形態では、照明光学系3が透明基板1に対してカメラ2とは反対側に配置され、照明光学系3が透明基板1の−Z側の表面1aの欠陥による前方散乱光を捉えるようになっているが、本発明では、逆に、照明光学系3を透明基板1に対してカメラ2と同じ側に配置し、照明光学系3が透明基板1の−Z側の表面1aの欠陥による後方散乱光を捉えるようにしてもよい。後方散乱光を捉える場合には、被検査物は透明基板1等の透明体でなくてもよい。なお、前記角度θは、欠陥と散乱光の角度依存性等の観点からより高感度での欠陥の検出が可能となるように、最適化して設定することが好ましい。
【0016】
そして、本実施の形態では、カメラ2の撮像素子11の受光面11aの法線N2が撮像レンズ12の光軸Oと平行である場合に比べて、受光面11aの周辺部での撮像レンズ12による透明基板1の−Z側の表面1aのデフォーカス量が低減されるように、受光面11aの法線N2が撮像レンズ12の光軸Oに対して相対的に傾けられている。本実施の形態では、図1及び図2に示すように、法線N2は、光軸Oに対してY軸回りに図中の時計方向に角度θ’だけ傾けられている。この点については、後に詳述する。
【0017】
XYステージ6は、制御部5の制御下で、カメラ2及び照明光学系3の全体をXY平面と平行な面内において2次元に移動させるようになっている。
【0018】
処理部4は、制御部5の制御下で、カメラ2により得られた画像(本実施の形態では、暗視野画像)に基づいて、透明基板1の−Z側の表面における欠陥を検出する。
【0019】
ここで、本実施の形態による表面欠陥検査装置の具体的な動作の一例について説明する。動作を開始すると、まず、制御部5は、XYステージ6を制御して、カメラ2及び照明光学系3の全体を、カメラ2の視野が透明基板1の最初の被検査領域となるように、移動させる。次いで、制御部5は、カメラ2の撮像素子11に透明基板1の最初の被検査領域の暗視野像を撮像させる。
【0020】
次に、処理部4は、カメラ2の撮像素子11により得られた暗視野画像を処理して、欠陥を検出する。この欠陥の検出は、例えば、暗視野画像から欠陥を検出する種々の公知の手法により行うことができる。欠陥の検出は、例えば、撮像素子11により得られた暗視野画像を2値化処理してラベリングすることにより行うことができる。このとき、必要に応じて、パターン認識技術等を利用して、欠陥の検出の精度を高めるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0021】
その後、処理部4は、未検査の被検査領域(未だ前述した撮像及び欠陥検出処理が行われていない透明基板1の被検査領域)があるか否かを判定する。未検査の被検査領域があれば、制御部5は、XYステージ6を制御して、カメラ2及び照明光学系3の全体を、カメラ2の視野が透明基板1の次の被検査領域となるように、移動させる。その後、当該被検査領域について、前述した撮像及び欠陥検出処理を繰り返す。
【0022】
このようにして、全ての被検査領域について、前述した撮像及び欠陥検出処理が終了すると、処理部4は、欠陥の有無、欠陥の数や位置などを、検査結果として外部へ出力する。これにより、一連の動作を終了する。なお、検査結果としては、欠陥の有無のみを出力してもよい。
【0023】
前述したように、カメラ2の撮像レンズ12の光軸Oが透明基板1の−Z側の表面1aの法線N1に対してなす角度をθとし、カメラ2の撮像素子11の受光面11aの法線N2が、カメラ2の撮像レンズ12の光軸Oに対してなす角度をθ’とする。また、図2に示すように、撮像レンズ12と透明基板1の表面1aとの間の距離(撮像レンズ12の光軸Oに沿った撮像レンズ12の主点から透明基板1の表面1aまでの距離)をLとし、カメラ2の視野角(光軸Oを含みXZ平面と平行な面内での視野角)をαとし、撮像レンズ12と撮像素子11の受光面11aとの間の距離(撮像レンズ12の光軸Oに沿った撮像レンズ12の主点から撮像素子11の受光面11aまでの距離)をL’とする。さらに、撮像レンズ12の投影倍率をMとし、撮像レンズ12の焦点距離をfとする。なお、図2に示す例では、撮像素子11の受光面(有効受光領域)の中心が、撮像レンズ12の光軸O上に位置しているものとしているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0024】
図2から理解できるように、視野角αに対応する各光線K1,K2に関する、撮像素子11の受光面上での撮像レンズ12による透明基板1の表面1aのデフォーカス量Dは、下記の数1で表される。
【0025】
【数1】

【0026】
一方、CCD面のみがθ’傾いた場合のデフォーカスD’も同様に、
【数2】

である。カメラが傾いていることによって発生するデフォーカスをCCD面の傾きで相殺するためにはデフォーカス量を考慮したレンズの公式
【数3】

を満たせばよい。
【0027】
撮像倍率がM=L’/LであることからL,L’をMとfであらわすと、L=(M+1)f/M、L’=(M+1)fであり、これを利用してθとθ’の関係を求めると、
【数4】

である。これを満たすためには、
【数5】

とすればよい。
【0028】
なお、上記は平面を撮像した場合の像面が平面となることを前提としており、大きな視野角αに対しては厳密には成り立たないが、レンズの焦点距離fがCCDサイズに対して大きい通常の場合については十分よい近似である。
【0029】
したがって、数5で示される条件を満たすθ’となるように、カメラ2の撮像素子11の受光面11aの法線N2がカメラ2の撮像レンズ12の光軸Oに対してなす角度をθ’を、設定すれば、カメラ2により得られる透明基板1の表面1aの画像は、カメラ2の視野の中央付近のみならず周辺部においてもジャストフォーカスの良好な像となり、カメラ2の視野の全面に渡ってジャストフォーカスの良好な像となる。
【0030】
本実施の形態によれば、このように、カメラ2により得られる透明基板1の表面1aの画像が、カメラ2の視野の全面に渡ってほぼジャストフォーカスの良好な像となるので、デフォーカスによる欠陥検出の精度の低下を招くことなく欠陥検出の精度を高めつつ、一度に欠陥を検出し得る領域(一括検査領域)をカメラ2の視野の全面にして欠陥検出の効率を高めることができる。
【0031】
例えば、透明体の表面のキズのように信号レベルの低いものは、暗視野での観察と本実施形態を組み合わせることにより、感度良くキズを検出することが出来る。
【0032】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、被検査物は、前述したように、透明基板に限定されるものではなく、シリコン基板等の不透明基板であってもよい。また、被検査物は必ずしも基板に限定されるものではない。
【0034】
また、本実施の形態による表面欠陥検査装置は、被検査物の表面の暗視野像を撮像する装置であったが、本発明は、被検査物の表面の明視野像を撮像し、その画像に基づいて被検査物の表面の欠陥を検出する装置であっても、撮像レンズの光軸が被検査物の表面の法線に対して傾けられた装置であれば、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態による表面欠陥検査装置を模式的に示す概略構成図である。
【図2】図1中の要部を模式的に示す概略拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
1 透明基板
2 カメラ
3 照明光学系
4 処理部
11 撮像素子
12 撮像レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面を撮像する撮像部と、該撮像部により得られた画像に基づいて前記被検査物の前記表面の欠陥を検出する処理部と、を備え、
前記撮像部は、受光面に形成された像を撮像する撮像素子と、前記受光面に前記被検査物の前記表面の像を形成する光学系とを有し、
前記光学系の光軸が前記被検査物の前記表面の法線に対して傾けられ、
前記受光面の法線が前記光学系の光軸と平行である場合に比べて、前記受光面の周辺部での前記光学系による前記被検査物の前記表面のデフォーカス量が低減されるように、前記受光面の法線が前記光学系の光軸に対して相対的に傾けられたことを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記光学系の投影倍率をMとし、前記光学系の焦点距離をfとし、前記光学系の光軸が前記被検査物の前記表面の法線に対してなす角度をθとし、前記受光面の法線が前記光学系の光軸に対してなす角度をθ’としたとき、tanθ’がほぼ−Mtanθであることを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記被検査物の前記表面に照明光を照射する照明光学系を備え、
前記撮像部は、前記照明光による前記撮像素子の前記表面の暗視野像を撮像することを特徴とする請求項1又は2記載の表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−276207(P2009−276207A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127764(P2008−127764)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】