説明

表面清浄活性化装置および電極接合装置

【課題】チップ積層をウェハレベルで行うための電極接合に適した電極面の表面清浄活性化装置および電極接合装置を提供する。
【解決手段】本発明では、電極面の表面清浄活性化装置と、電極面同士の位置合わせを行うアライメント装置と、位置合わせされた電極を重ね合わせる重ね合わせ装置と、重ね合わされた電極同士を加圧する加圧装置とを有して構成された電極接合装置において、表面清浄活性化装置が、表面汚染層を除去するための清浄化部材111…と、金属蒸発源120とを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合に関する技術であり、特に、金属電極を低温において接合する、低温接合技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、ディジタルカメラ等の携帯電子機器の製造にとって、メモリやMPU等の電子部品を高密度に実装する技術は最重要技術である。このための技術としてフリップチップ実装技術の開発が従来から行われており、最近ではこの技術を利用して半導体チップを積層して更なる高密度電子装置を得るための開発が盛んに行われている。このフリップチップ技術による実装では半導体チップを配線基板に接合する際や半導体チップを半導体チップ上に接合する際に、接合電極としてバンプを形成することが行われている。このバンプ形成にあたっては、電極材として金、銅、アルミニウム等が使用されているが、導電性や酸化されにくいという点、さらに価格の点から銅が一般的に使用されている。
【0003】
このような電極接合を行う一般的な方法として加圧と加熱による拡散接合方式がとられている。しかしながら、接合をチップレベルで行う場合には問題ないが、ウェハレベルで接合を行う場合には接合物間の熱膨張率の違いによる電極位置ずれの問題が発生する。この問題点を解消する方法として、加熱による熱膨張を伴わない常温接合方式が検討されている。この方式は物質が本来有している原子間結合力を利用するもので、接合面同士を接触状態にさせることにより接合を実現するものである。この際に重要な条件は接合面に表面汚染層(表面酸化層を含む)が存在しないことである。接合面に汚染層が形成されないようにするために従来考えられている技術には以下のようなものがある。
【0004】
第1の従来技術として、表面の汚染層や酸化層を除去するために、アルゴンイオンビームにより表面をスパッタリングし、かつ表面の原子レベルでの接触を向上させるために接合面間に擦り作用を加える方法があり、また表面皮膜が再度生じる前に接合する必要性が記され、洗浄工程と接合工程を同一真空槽で行う(例えば、特許文献1を参照)。また、低温での接合を可能にする他の技術として、以下のようなものがある。この第2の従来技術では、銅(Cu)電極の接合のために接合材料として錫(Sn)を用いる(例えば、特許文献2を参照)。なお、表面の平坦化に係わる技術としては、CMP(化学的機械的平坦化、又は化学的機械的研磨)により行われている。これらの技術に使用される装置は公知である(例えば、特許文献3を参照)。
【特許文献1】特公昭62−22712号公報
【特許文献2】特開2002−110726号公報
【特許文献3】特開2003−51481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、半導体チップを積層することによる半導体素子の高密度化及び高速動作化を図るために、ウェハレベルで半導体チップを接合する技術として第1の従来技術が有効性か、どうかを検討した。
【0006】
まず、複数の半導体チップが形成されたウェハを準備し、各チップの接合電極にアルゴンイオンビームを照射して表面を清浄活性化し、電極間の位置合わせを行って重ねあわせ、重ね合わせを保持して超音波振動を重ね面に平行な方向に加えた後、加圧を行った。温度は室温(23℃)で行った。次に、接合されたウェハ積層体(電極接合が行われた2枚のウェハ)を通常のダイシング方法により個々のチップに分離し、接合強度の試験を行った。試験方法は、温度サイクル試験で行った。試験の結果、満足に接合されている電極を有するチップは少なかった。チップの電極の接合は不完全で温度サイクルにより剪断的な破損が生じていた。
【0007】
本発明は、このような従来の常温接合が有する課題を解決するためになされたもので、チップ積層をウェハレベルで行うための電極接合に適した電極面の表面清浄活性化装置及び電極接合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的達成のため、本発明に係る表面清浄活性化装置は、電極表面の表面清浄活性化装置であって、表面汚染層を除去するための清浄化部材と、金属蒸発源とを有している。
【0009】
なお、上述の表面清浄活性化装置において、前記清浄化部材と前記金属蒸発源とが1つのチャンバ内に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、上述の表面清浄活性化装置において、前記清浄化部材がクラスターイオン照射装置であることが好ましい。
【0011】
また、上述の表面清浄活性化装置において、前記金属蒸発源が主に錫を蒸発材として有することが好ましい。
【0012】
また、上述の表面清浄活性化装置において、清浄活性化する電極面の前面にマスクを有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電極接合装置は、電極面の表面清浄活性化装置と、電極面同士の位置合わせを行うアライメント装置と、位置合わせされた電極を重ね合わせる重ね合わせ装置と、重ね合わされた電極同士を加圧する加圧装置とを有して構成された電極接合装置であって、前記表面清浄活性化装置が本発明に係る表面清浄活性化装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、接合すべき電極の表面汚染層を除去する際に表面に荒れ(微小な凹凸)が生じるが、蒸発源に適切な金属を取り付けた金属蒸発装置を用い、表面活性化装置と同時に金属の蒸着を行うと、表面荒れが緩和され電極表面に界面において電極材と化合物を形成した金属薄膜が得られる。得られた表面金属同士を加熱接合することにより、電極同士自体を接合するより遙かに低温で強い接合が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明者は上記従来技術の問題点を解決するために接合実験を繰り返した結果、従来の方法の問題点の所在を見出し、本願発明に至った。以下に本願発明の基礎となる本願発明者が見出した接合に係わる物理的な現象の説明を行う。
【0016】
清浄活性化工程では、この表面がアルゴンイオンビームの照射により表面汚染層(酸化層)が除去される。ところが、この表面汚染層(酸化層)の除去は基本的にはスパッタ作用により行われるものであるため、表面の汚染層(酸化層)が除去された後の電極面には微小ではあるが、常温接合に要求される平坦性の観点から見ると無視できない凹凸が形成されてしまう。この凹凸は接触面に所定の加圧力を加えて互いに摺動するように振動させると、研磨効果のような形になって、凹凸は減少する。しかし、ウェハ全面に渡って加圧力を所定の値に保って接触面同士の振動による研磨効果をもたらすことは困難が多く、現実的ではなかった。接触面での加圧力が大きすぎると、電極部を中心に半導体ウェハが破損することがあり、特に、薄層化された半導体ウェハを積層する場合にはこの現象が顕著であった。
【0017】
また、第2の従来技術のような、電極接合材料として錫を所定の厚さだけ電極表面に付与し、接合に要する温度を下げる技術もあるが、電極上にメッキによりつけるものであって、処理工程が複雑で時間を要する技術である。また、CMPにより平坦化された表面の酸化が防止できる状態を維持しながらメッキ工程を行う必要があり、工程管理上も問題を生じることが多かった。
【0018】
本願発明者は、上述のように微小な凹凸が電極接合の接合強度不足の原因であることを見出し、またメッキ工程を回避する方法を検討した結果、本発明を着想するに至った。
【0019】
本願発明の表面清浄活性化装置の第1実施形態について図1を用いて説明する。図1の表面清浄活性化装置は清浄化部材と金属蒸発源とを有している。清浄化部材としてクラスターイオンビーム照射装置を例として説明する。クラスターイオンビーム照射装置は、供給されたガスをもとにクラスターイオンビーム粒子を発生する機能を有している。ガスはガス導入管111より導入される。導入するガスは不活性ガスなら何でもよいが、イオン化された時の粒子の大きさや取り扱いの簡便性、費用等の観点よりアルゴン(Ar)が一般的に使用される。ガスはクラスター化部材112を通過する際にクラスター化され、クラスター化された粒子113はイオン化部材114を通過してイオン化される。負の電位を有するカソード115が形成する加速電場によりイオン化されたクラスターは加速され、ホルダ117に保持されている、接合すべき半導体チップが多数形成されたウェハ101上に照射される。イオン化部材114には数本のイオン化電極が配置されており、その電極間には100〜300V、100〜400mA程度の電圧、電流が印可されている。このイオン化部材114には引き出し電極が備えられており、カソード115には20KV程度の電位が与えられている。このようなクラスターイオンビーム照射装置としては、例えば、株式会社アルバック製のGCIB−25を使用することが出来る。
【0020】
次に、本願発明の他の構成要件である金属蒸発源の説明を行う。金属蒸発源120はタングステンやタンタルを加工してボート状になされた保持容器131(図1中に記載)を有している。電極に蒸着すべき金属(粒状や塊状である)をこのボート状の容器131に入れ、容器の両端より電流を流して抵抗加熱を行うようになされている。蒸着すべき金属層の厚さ制御のために、水晶振動子を利用した膜厚計が配設されることもある(不図示)。金属蒸発源120を使用して金属を蒸着させる時の金属層の厚さに関する説明を行う。金属層は初期段階では金属の島状構造になっている(融点が低い金属ほど島状になりやすい)が、平均厚が5nmを超えると連続膜を形成するようになる。金属層が連続膜を形成するほど厚くなると、電極間で場合よっては電気的短絡という現象を引き起こす。埋め戻し効果はこの膜厚内で十分作用するため、膜厚計を用いて膜厚を制御すると、電極間同士の短絡現象も顕在化することなく、洗浄化工程で生じた表面の凹凸、荒れを低減でき、電極接合を安定して行わせることができる。
【0021】
このクラスターイオンビーム照射装置と金属蒸発源の配置であるが、図1では同一チャンバ161内にクラスターイオンビーム照射装置と金属蒸発源を配置し、2つの装置の間には真空装置151,153及び開口を有するパーティション171(図では3枚ある)を主たる構成要素とする差動排気機構を採用した例を示している。これはクラスターイオンビーム照射装置が動作している環境が高真空ではない場合に、残留ガスが接合すべき電極面に悪影響を及ぼすことを回避したり、金属層の蒸着工程に悪影響を及ぼしたりすることを回避するためである。例えば、使用するガスが不活性ガスであっても、真空度が低下して平均自由工程が短くなっている環境で金属を蒸発させると、蒸発された金属分子は散乱され、電極表面に到達する割合が減少する。清浄化部材の動作環境と金属蒸発源の使用環境が大きく異なる場合には、図1のように付加的な部材(パーティション171)を取りつけることにより、残留ガスの影響を排除しながら、クラスターイオンビームによる表面洗浄と電極接合補助金属の蒸着を同時に行うことができる。なお、チャンバ161には、チャンバ161内を真空雰囲気にするための真空装置155が取り付けられる。
【0022】
図2は本願発明の表面清浄活性化装置の第2実施形態を示すものである。図2が図1と異なる点はホルダ117が回転自由度を有している点である。クラスターイオンビームを照射する場合、照射角を調整することが必要になることもある。表面の汚染状態、また表面の酸化層の種、酸化層の厚さによる照射角の調整である。また、クラスターイオンビーム照射処理と金属層蒸着処理とを同時に行わない場合には、図2のような機能構成にすることにより、照射条件の設定、金属蒸着条件の設定をそれぞれ独立に行うことが可能になり、より有効な処理が行えるという利点がある。
【0023】
次に、図2の表面清浄活性化装置において、金属蒸着時に使用するマスク711について図7を用いて説明する。図7(a)は、金属蒸発源120と、清浄化すべき電極を有するウェハ701、本願発明のマスク711の配置関係を示している。清浄化すべきウェハ701とマスク711の位置関係がこのような位置関係になるように、図2のチャンバ161内では不図示の機構により、マスク711は位置合わせされる。マスク711は低熱膨張セラミック板により作られていて、必要な部分に開口が設けられている。図7(b)に、マスク712の開口の例を示した。電極の位置、配置に応じて、サイズが調整された開口721が適切な位置に配置されている。図7(c)には他のマスクの開口例を示した。このマスク713では、個々の電極に対応した開口をマスク713に形成するのではなく、電極配置領域にメッシュ状の開口731を形成したものである。このメッシュ状の開口731は、耐熱性の高分子のファイバを縦糸、横糸に使用して織ることによって形成されている。高分子材としてはポリエステル(例えばPET)であり、ファイバの直径は数μmであり、ファイバの間隔は数十μmである。電極の間隔によりファイバの間隔が決まる。メッシュ状の開口の場合、開口部の配置によっては、金属遮断部741をメッシュにより保持することが出来ない場合がある。この時には、補助的な梁733を用いてマスク713の強度を保つようにしている。
【0024】
次に、マスクの使用方法と効果を説明する。清浄活性化工程の初期においては、図1および図2に示すようにマスクを用いずに金属を蒸着する。この初期段階での蒸着する平均厚さは1nm〜5nmであり、この厚さの金属層が形成されると清浄化部材による加工処理を中止する。前述のように、この段階で金属層の埋め戻し効果により清浄化部材により生じた凹凸、荒れの程度が緩和されている、と同時にイオン粒子により蒸着された金属と電極金属とは合金を形成している。
【0025】
ところで、電極接合がウェハ上の各電極で一様に接合されるためには、ウェハ自体の平坦性が問題となる。ウェハ面の平坦性が十分で無い場合、マスクを使用して金属層を蒸着すると、ウェハ上の全ての電極において実用的な強度を有する電極接合が可能になる。しかし、平坦性が十分でないと、埋め戻し効果だけでは接合条件を満たさない場合もある。この場合には、金属と電極が合金を形成していることを利用して、電極と電極の接合温度よりはるかに低温で接合する方法を採ることができる。
【0026】
電極上に数nmだけ金属が蒸着された電極前面に、図7(a)のように本願マスク711をセットして金属層を更に厚く蒸着し、厚さが数μmになったら蒸着を止める。このようにすると、電極部だけに金属(例えば低融点の錫)の膜が数μm形成され、その膜と電極とは化合物を形成している膜が得られる。図7(b)に記された開口721を有するマスク712を用いた場合には、図7(d)のように、電極791のみに金属層793が形成される。他方、図7(c)に示された開口を有するマスクを利用した場合の電極配置と金属層形成状態は、マスクがメッシュ状の開口であるため、蒸着される金属層は正方形であり、これがメッシュの織り糸分を周期として並べられたパターンになっている。図7(e)がこのパターンを説明するものである。ウェハ701上の電極791に対して、蒸着された金属層は符号795,797のようになる。電極の大きさと電極間間隔に合わせてメッシュの開口の大きさと間隔を調整しおくと、電極上、電極のないウェハ面上に金属層が形成されるが、金属層により電極同士が短絡することはなくなる。この金属層の厚さを数μmにして電極同士を重ね合わせ、金属が溶融する程度の熱を加え、適切な圧力を加える。すると、ウェハ自体の平坦性に問題が有る場合にも、金属の溶融によって局所的な厚さ変化が吸収されて、一様な電極接合が得られる。
【0027】
次に、図3〜5を参照して本願発明の電極接合装置の説明を行う。図3は、本願発明の電極接合装置の装置構成を示す図である。本願発明の電極接合装置は、表面清浄活性化装置302と、アライメント装置・重ね合わせ装置303と、加圧装置304とを有している。また、表面清浄活性化装置302とアライメント装置・重ね合わせ装置303間、及びアライメント装置・重ね合わせ装置303と加圧装置304間には搬送装置315,325が配設されている。これらの装置及び搬送装置は、それぞれの工程での処理方法に必要な加工雰囲気を保つように設計されたチャンバ(処理室)内に設置されている。従って、加工雰囲気が異なる場合には、処理雰囲気に応じてチャンバを分離し、チャンバ間で加工物を問題なく受け渡しするために、不図示のロードロック機構を有する受け渡し室をチャンバ間に取りつけることもある(図4を使用して後述する)。
【0028】
以下に、装置構成の実施例を記す。表面清浄活性化装置に関しては、図1もしくは図2を用いて説明を行った前記装置の使用が可能である。即ち、不活性ガスの供給を受けてクラスター化、イオン化する部材、イオン化されたクラスターを加速する部材、金属蒸着を行う金属蒸発部材を構成部材とする装置である。
【0029】
アライメント装置・重ね合わせ装置については、図4を参照して説明を行う。アライメント装置は、2視野顕微鏡417、基盤413上に設置されたXYステージ409とティルトステージ407より構成されている。ウェハの搬送手順を基にして、その他の関連装置の説明を行う。表面が平坦化され、清浄活性化処理が終了したウェハは搬送装置315(図3を参照)により開かれたゲートバルブ423を通って搬送台427上にセットされる。ウェハ受け渡しの際には搬送台427に設けられたリフトピン425を介して受け渡される。ウェハが搬送台427にセットされると、ゲートバルブ423が閉じられ、真空装置431が稼働を始めてチャンバ内を真空雰囲気にする。所定の真空度に達するとゲートバルブ421が開かれ、ウェハ401は搬送装置455により搬送台427から下保持板406に搬送される。(このウェハを403と記す)。次に同様な操作を経て、接合されるべき電極を有する他方のウェハ401が上保持板405に保持される。上下の保持板にはウェハを静電的に吸着する静電吸着機構が設けられている。接合すべき電極を有するウェハがそれぞれ保持板に保持されると、近接したウェハ401,403間に2視野顕微鏡417が挿入されてウェハ間の位置合わせ情報を得る。位置合わせ情報が得られると、XYステージ409、ティルトステージ407を駆動させて位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、重ね合わせ部材を動作させる。重ね合わせ装置は、上下の保持板405,406、上部固定梁415、Zステージ(高さ方向)441である。位置あわせ情報により、Zステージ441が動作し、2枚のウェハは重ね合わされる。重ね合わせ時には仮固定用の樹脂が塗布されていて、次工程である加圧工程まで搬送可能になされている。このアライメント装置・重ね合わせ装置が置かれる雰囲気は、電極表面の再酸化を防止するために真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気である。従って、このチャンバへの真空装置433の取りつけ、不図示の不活性ガス供給路と制御バルブの取りつけが行われる。
【0030】
加圧装置に関しては図5を用いて説明を行う。装置の構成としては、基盤507上に配置された下加圧板502、フレーム511に固定された上部梁513、この梁に支持された加圧機構509と上部加圧板501からなる。必要に応じて、ウェハを加圧中に加熱するための加熱部材505,503が加圧板の表面に取りつけられている。仮固定されたウェハ積層体521は搬送装置325(図3を参照)により下加圧板502、又は加熱装置505上に搬送され、加圧板501,502同士の平行度の調整が行われたあと、上加圧板501を加圧機構509により押し下げることにより仮固定されたウェハ積層体を加圧する。この加圧装置の設置雰囲気は真空又は不活性ガス雰囲気であるので、チャンバには真空装置515が取りつけられている。勿論、真空装置の代わりに不活性ガス導入管と流量制御バルブを取りつけることも可能である。また、高真空度を容易に達成するために、ベーキング装置531を取りつけることは効果がある。このベーキング装置は、チャンバ及びその中に置かれた装置を加熱するもので、加熱することにより表面に吸着した水分子の放出を促すものである。加熱方法としては、ニクロム線への通電方法や赤外線ランプ照射方法等がある。
【0031】
以上の装置説明では、清浄活性化、アライメント・重ね合わせ、加圧の工程がどのような雰囲気で行われても対応可能な装置対応になっている。しかし、例えば、清浄活性化、アライメント・重ね合わせ、加圧工程を同一雰囲気、例えば真空状態又は不活性ガス雰囲気で行う場合には、装置構成としては各部材を1つのチャンバ内に配置することも可能である。図6がこの配置の例を示す。平坦化装置611(例えばCMP等)により表面の平坦化が行われたウェハはロードロックチャンバ603を経て、搬送装置601により表面清浄活性化装置613に搬送される。処理が完了すると、アライメント装置・重ね合わせ装置615、加圧装置617へと順次搬送装置601により転送される。このような配置を採ることにより搬送系、ロードロック系等の装置の全体構成が簡単になり、装置費用の低減、設置面積の低減が可能になる。
【0032】
また、記すまでもないが、上述の実施形態では、アライメント装置と重ね合わせ装置を同一の装置に2つの機能を載せているが、別々の装置にアライメント機能と重ね合わせ機能を載せても良い。
【0033】
以上で説明したように、本願発明に係る表面清浄活性化装置により、表面汚染層を清浄化部材により除去し、その後、清浄活性化された電極表面を酸化雰囲気にさらすことなく接合するウェハを金属蒸発工程に移動させることが可能になり、電極表面に汚染層(酸化層)の形成がない状態で金属を蒸着することが可能になる。蒸発させる金属として融点の低い金属を用いることにより汚染層(酸化層)除去工程で生じた表面の凹凸、荒れが低減され、電極金属間で、金属の拡散が起こり拡散接合により金属間接合が実現される。
【0034】
さらに、イオンビームにより表面を清浄化処理しながら金属を接合面に蒸着することにより、電極表面に金属層を形成すると、蒸着された金属層はイオンビーム照射を受けてノックオン効果により電極の金属と界面で容易に合金を形成する。従って、電極同士を接合する場合、蒸着された金属層と電極とは合金を形成しているので、接合すべき電極上の金属蒸着膜同士を接合するだけで電極同士が強く接合されることになる。これに対して、従来法では、電極と金属接合材との接合に加熱を用いているため、接合材同士の接合温度より高い温度が必要である。本願発明の装置を使用すれば、より低温での接合が可能になる。
【0035】
また、本願発明に係る表面清浄活性化装置における汚染層(酸化層)の清浄化部材はクラスターイオンビーム照射装置である。原子レベルのイオンビームを照射すると表面の凹凸(荒れ)が細かい周期で、且つ振幅も大きい荒れが表面に生じる。これに対して照射粒子のサイズが大きいクラスタ−イオン粒子を照射すると表面の凹凸(荒れ)の周期が長くなり、且つ振幅も小さくなる。このような好ましい表面状態を残しながら、汚染層(酸化層)の除去には十分な効果を有している。
【0036】
また、金属蒸発源に金属として錫を有する蒸発材料を用いている。低融点であるために表面汚染層(酸化層)除去工程の結果生じた表面の荒れを埋め戻す作用があり、これにより表面汚染層(酸化層)除去工程により生じた表面の荒れの程度が緩和され、低温においても良好な金属の拡散が起こり、拡散接合により金属間接合が実現される。
【0037】
また、表面清浄活性化装置に、マスクを配置している。清浄活性化すべき電極面の前面にマスクを配置することにより、必要な部分にのみ金属層を蒸着できるようになる。また、金属層を必要な部分に限定するのではなく、金属層が電極同士の短絡を回避すれば良い場合もあり、適切なマスクの選択が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
半導体チップ内の素子の高密度化、高速動作化は常に半導体チップに求められている課題である。本願発明は半導体チップの高密度化、高速動作化にとって必至の技術であり、産業上の利用は、従って必至の技術である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態の表面清浄活性化装置を示す構成図であり、清浄化部材と金属蒸発源を示す。
【図2】第2実施形態の表面清浄活性化装置を示す構成図である。
【図3】電極接合装置の構成図である。
【図4】アライメント装置・重ね合わせ装置の構成図である。
【図5】加圧装置の構成図である。
【図6】電極接合装置の変形例を示す構成図である。
【図7】表面清浄活性化装置に使用するマスクおよび、当該マスクを使用して蒸着した金属層のパターンの例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
101 接合すべき電極が形成されているウェハ
111 ガス導入管 112 クラスター化部材
113 クラスター化された粒子 114 イオン化部材
115 カソード 117 ホルダ
120 金属蒸発源 131 保持容器
161 チャンバ
302 表面清浄活性化装置 303 アライメント装置・重ね合わせ装置
304 加圧装置
401,403 接合すべき電極が形成されているウェハ
405 上保持板(重ね合わせ装置) 406 下保持板
415 上部固定梁 441 Zステージ
417 2視野顕微鏡(アライメント装置)
407 ティルトステージ 409 XYステージ
509 加圧機構 521 ウェハ積層体
613 表面清浄活性化装置 615 アライメント装置・重ね合わせ装置
617 加圧装置
701 ウェハ
711,712,713 マスク
791 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極表面の表面清浄活性化装置であって、
表面汚染層を除去するための清浄化部材と、
金属蒸発源とを有することを特徴とする表面清浄活性化装置。
【請求項2】
前記清浄化部材と前記金属蒸発源とが1つのチャンバ内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表面清浄活性化装置。
【請求項3】
前記清浄化部材がクラスターイオン照射装置であることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の表面清浄活性化装置。
【請求項4】
前記金属蒸発源が主に錫を蒸発材として有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の表面清浄活性化装置。
【請求項5】
清浄活性化する電極面の前面にマスクを有することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の表面清浄活性化装置。
【請求項6】
電極面の表面清浄活性化装置と、電極面同士の位置合わせを行うアライメント装置と、位置合わせされた電極を重ね合わせる重ね合わせ装置と、重ね合わされた電極同士を加圧する加圧装置とを有して構成された電極接合装置であって、
前記表面清浄活性化装置が請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の表面清浄活性化装置であることを特徴とする電極接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−294098(P2008−294098A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136137(P2007−136137)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】