説明

表面金属化の方法、プラスチック製品を調製する方法、およびそのような方法から製造されたプラスチック製品

プラスチックの表面を金属化する方法を提供する。この方法は、1)前記プラスチックの表面を気化して、前記無電解めっき促進剤を露出させるステップと、2)前記プラスチックの表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきし、その後、電解めっきまたは第2の無電解めっきにより、前記プラスチックの表面に、金属化層を形成するステップと、を有する。また、プラスチック製品を調製する方法、およびその方法によって製造されたプラスチック製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、表面処理に関し、特に、プラスチックのような非金属材料の表面金属化に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に、電磁気信号の伝導の経路として金属化層を有するプラスチック基板は、自動車、工業、コンピュータ、および遠隔通信等の分野で広く使用されている。選択的に金属化層を形成することは、そのようなプラスチック製品を調製する上で重要なプロセスの一つである。従来の金属化層を形成する方法は、通常、プラスチックサポート表面に、触媒中心として金属コアを形成することにより実施され、無電解めっきが実施される。しかしながら、これに関するプロセスは、複雑であり、装置に対する厳格な要求が必要となる一方で、エネルギー消費が高くなる。また、コーティングとプラスチックサポートの間の接合力が低い場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のことに鑑み、プラスチックの金属化が低いエネルギー消費で容易に行われるような、プラスチック表面を金属化する方法を提供することに関する要望が残存する。また、コーティング層とプラスチックまたは非金属サポートの間の接合力が向上するような、プラスチック製品を調製する方法、およびその方法から製造されたプラスチック製品を提供することに関する要望が残存する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例では、プラスチックの表面を金属化する方法が提供される。プラスチックは、支持材料および無電解めっき促進剤を有し、当該方法は、1)前記プラスチックの表面を気化して、前記無電解めっき促進剤を露出させるステップと、2)前記プラスチックの表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきし、その後、電解めっきまたは第2の無電解めっきにより、前記プラスチックの表面に、金属化層を形成するステップと、を有する。
【0005】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された、1または2以上の材料を含む:(a)Co、Ni、Agから選択された金属元素の酸化物;(b)Co、Ni、Cuから選択された金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩;(c)Co、Ni、Cu、Agから選択された、1または2以上の金属元素を含む水素化触媒;または(d)デラフォス石(delafossite)構造を有するABO2型複合酸化物であって、Aは、Co、Ni、Cuから選択された金属元素の一つであり、Bは、Ni、Mn、Cr、Al、およびFeからなる群から選択された元素であり、AとBは異なる、ABO2型複合酸化物;ならびに(e)Cu/Fe/Mn、Cu/Fe/Al、および/またはCu/Fe/Al/Mnの多成分酸化物からなる群から選択された多成分酸化物。
【0006】
本発明の実施例では、プラスチック製品を調製する方法が提供される。この方法は、1)支持材料および無電解めっき促進剤を含むサポートを有するプラスチック製品の少なくとも一部を形成するステップと、2)前記サポートの表面を気化して、前記無電解めっき促進剤を露出させるステップと、3)前記表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきしてから、少なくとももう一度、電解めっきまたは無電解めっきを行い、前記表面に金属化層を形成するステップと、を有しても良い。
【0007】
本発明のさらに別の実施例では、前述の方法によって製造されたプラスチック製品が提供される。
【0008】
本願発明者らによって見出されたように、無電解めっき促進剤を含む表面に、直接無電解めっきが行われるため、プラスチックは、劣化しない。本発明の実施例では、無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された少なくとも一つであっても良い:Ni2O3、Co2O3、CoO、Co3O4、CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CoC2O4、CuC2O4、MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、MFeO2、CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、およびCuFeaAlbMncOd、ここで、Mは、Cu、Ni、またはCoから選択され、0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4、0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4、および0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4である。
【0009】
プラスチック製品を調製する方法では、無電解めっき促進剤は、プラスチックサポートに、均一に分散されても良い。プラスチックサポートの表面の所定の領域は、例えばレーザによって気化され、無電解めっき促進剤が露出され、無電解めっき促進剤は、大きなエネルギーを消費することなく、純金属に還元される。さらなる電解めっきまたは無電解めっきが実施され、所望の金属化層が形成され、これにより、単純なプロセスで、低いエネルギー消費および低コストで、選択的な表面金属化が達成される。
【0010】
また、無電解めっき促進剤は、プラスチックサポートに均一に分散されても良く、この場合、無電解めっき後のコーティング層とプラスチックサポートの間の接合力が大きくなり、製造されたプラスチック製品の品質が向上する。
【0011】
本願に示された永久磁石材料の他の形態、実施例および特徴は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、本質的な特徴または思想から逸脱しないで、他の特定の形態で実施されても良いことは当業者には明らかである。従って、本願で示された実施例は、あらゆる点で一例であって、限定的なものではない。
【0013】
以下、プラスチック表面を金属化する方法について説明する。プラスチックは、支持材料および無電解めっき促進剤を有しても良い。本発明の実施例では、この方法は、1)プラスチックの表面を気化して、無電解めっき促進剤を露出するステップと、2)プラスチックの表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきした後、電解めっきまたは第2の無電解めっきを行い、プラスチックの表面に金属化層を形成するステップと、を有する。本発明の実施例では、プラスチックの表面は、レーザにより気化され、無電解めっき促進剤が露出されても良い。また、レーザは、約157nmから約10.6μmの範囲の波長を有し、走査速度は、約500から約8000mm/秒であり、走査ステップサイズは、約3から約9μmであり、走査時間遅延は、約30から100μsであり、レーザパワーは、約3から4Wであり、周波数は、約30から40kHzであり、充填距離は、約10から50μmであっても良い。
【0014】
無電解めっき促進剤は、平均直径が100μm以下の粒子であっても良い。本発明の実施例では、無電解めっき促進剤の平均直径は、約20nmから約100μmの範囲であっても良い。
【0015】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された、1または2以上の材料を含んでも良い:(a)Co、Ni、Agから選択された金属元素の酸化物、(b)Co、Ni、Cuから選択された金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩、(c)Co、Ni、Cu、Agから選択された、1または2以上の金属元素を含む水素化触媒、または(d)デラフォス石(delafossite)構造を有するABO2型複合酸化物、ここでAは、Co、Ni、Cuから選択された金属元素の一つであり、Bは、Ni、Mn、Cr、Al、およびFeからなる群から選択された元素であり、AとBは異なり、ならびに(e)Cu/Fe/Mn、Cu/Fe/Al、および/またはCu/Fe/Al/Mnの多成分酸化物からなる群から選択された多成分酸化物。
【0016】
無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選択された1または2以上の部材を含むことが好ましい:(a)Ni2O3、Co2O3、Co3O4、(b)CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CoC2O4、CuC2O4、(c)Cu−Zn、Cu−Zn−Ni、Cu−Zn−Co、Cu−Zn−Ga、Co−La、Cu−Cd、およびCu−Zn−Siの水素化触媒、(d)MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、MFeO2、ここでMは、Cu、Ni、またはCoである。多成分酸化物は、それぞれ、以下の化学式を有する:CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、およびCuFeaAlbMncOd、ここで、x、y、z、e、f、g、a、b、c、およびdは、0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4、0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4、および0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4を満たす。
【0017】
支持材料は、熱可塑性または熱硬化性の樹脂であっても良く、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、多環芳香族エーテル、ポリエステルイミド、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン複合材、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリベンズイミダゾール、および液晶ポリマからなる群から選択された1または2以上の材料を含む。熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、およびポリウレタンからなる群から選択された1または2以上の材料を含む。
【0018】
前述の表面金属化の方法では、プラスチックサポートの表面は、例えばレーザによって気化され、無電解めっき促進剤が露出されるため、無電解めっき促進剤は、大きなエネルギーを消費しなくても、純金属に還元される。また、無電解めっき後のコーティング層とプラスチックサポートの間の接合力は、極めて大きく、このため、選択的表面金属化のプロセスが改善される。
【0019】
ただし、プラスチックの表面を金属化する方法は、電気装置、例えば携帯電話、ラップトップコンピュータ、冷蔵庫の外郭、ランプスタンド、プラスチック容器等のシェルのようなプラスチック製品の製造に使用しても良いことに留意する必要がある。このような場所には、選択的な表面の金属化処理が必要となり得る。以下、プラスチック製品を調製する方法について、詳しく説明する。
【0020】
本発明の実施例では、プラスチック製品を調製する方法は、1)支持材料および無電解めっき促進剤を含むサポートを有するプラスチック製品の少なくとも一部を形成するステップと、2)サポートの表面を気化して、無電解めっき促進剤を露出させるステップと、3)表面に銅またはニッケル層を無電解めっきした後、少なくとももう一度、電気めっきまたは無電解めっきして、表面に金属化層を形成するステップと、を有する。
【0021】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選択された1または2以上の材料を含んでも良い:Cuを除く、周期律表の9、10、11族から選択された金属元素、例えばCo、Ni、Agの酸化物;周期律表の9、10、11族から選択された、Co、Ni、Cuのような金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩;周期律表の9、10、11族から選択された、1または2以上の金属元素を含む水素化触媒であって、カルボキシルを含むアルデヒド、ケトン、脂肪酸、または脂肪酸エステルを、アルコールに水素化する水素化触媒;ABO2のデラフォス石構造を有する複合酸化物;ならびにCu/Fe/Mn、Cu/Fe/Al、またはCu/Fe/Al/Mnの共熱処理酸化物。AとBは、異なる元素であり、Aは、周期律表の9、10、11族から選定された金属元素の一つ、例えばCo、Ni、Cuであっても良い。Bは、Ni、Mn、Cr、Al、およびFeからなる群から選択された元素であっても良い。
【0022】
本発明の実施例では、Cuを除く周期律表の9、10、11族から選択された金属元素の酸化物は、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、およびAuを含んでも良い。本発明の実施例では、酸化物は、触媒作用に基づいて、Co、Ni、Agから選択された金属元素を含んでも良い。NiまたはCoの酸化物には、Ni2O3、Co2O3、およびCo3O4を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の実施例では、周期律表の9、10、11族から選択された金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩は、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuを含んでも良い。本発明の実施例では、ケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩は、Co、Ni、およびCuから選択された金属元素であっても良い。ある実施例では、これは、CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CuC2O4、およびCoC2O4を含んでも良い。
【0024】
本発明の実施例では、水素化触媒は、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、または脂肪酸エステルを含むカルボニル化合物のアルコールへの水素化還元を促進しても良い。ある例では、これは、Cu−Zn水素化触媒、Cu−Zn−Ni水素化触媒、Cu−Zn−Co水素化触媒、Cu−Zn−Ga水素化触媒、Co−La水素化触媒、Cu−Cd水素化触媒、およびCu−Zn−Si水素化触媒からなる群から選定された少なくとも一つの材料を含んでも良い。
【0025】
本発明の実施例では、複合酸化物ABO2の元素Aは、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuから選定されても良い。Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、またはAuは、触媒の観点から好ましく、Ni、Cu、またはCoがより好ましい。元素Bは、Ni、Mn、Cr、Al、またはFeであっても良く、ここでAとBは、異なる。本発明の実施例では、複合酸化物ABO2は、環境汚染の点から、Crを含まないことが好ましい。より具体的には、複合酸化物ABO2は、MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、またはMFeO2であり、ここでMは、Cu、Ni、またはCoから選定される。
【0026】
本発明の実施例では、Cu/Fe/Mn複合成分または共熱処理酸化物は、CuFexMnyOzの一般式を有し、ここで0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4であっても良い;Cu/Fe/Mn共熱処理酸化物は、CuFeeAlfOgの一般式を有し、ここで0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4であっても良い;およびCu/Fe/Mn共熱処理酸化物は、CuFeaAlbMncOdの一般式を有し、ここで0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4であっても良い。
【0027】
研究の結果では、無電解めっき用の核またはグレインとして、純CuおよびPdを追加することにより、ナノCuOは、プラスチック表面での無電解めっきの化学的析出速度を増進することが示されている。しかしながら、ナノCuOは、プラスチックの劣化の原因となる。本願発明者らは、多くの実験を通じて、Ni2O3、Co2O3、CoO、CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CoC2O4、CuC2O4、MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、MFeO2、CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、CuFeaAlbMncOdから選択された1または2以上の無電解めっき促進剤は、表面処理に使用することができ、これらの材料は、プラスチックの劣化を生じさせずに、プラスチックに残留することを見出した。
【0028】
本発明の実施例では、ステップ1)における無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された、1または2以上の材料を含む:Ni2O3、Co2O3、CoO、CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CoC2O4、CuC2O4、MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、MFeO2、CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、CuFeaAlbMncOdからなる群から選定された、1または2以上の材料を含み、Mは、Cu、Ni、またはCoから選定され、0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4、0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4、0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4である。そのような無電解めっき促進剤は、プラスチックの劣化を生じさせずに、表面での無電解めっきの化学的析出を促進し、長時間サポートに残留する。
【0029】
本発明のプラスチック製品を調製する方法では、まず、支持材料および無電解めっき促進剤を有するサポートが提供される。無電解めっき促進剤は、支持材料中に均一に分散されても良い。
【0030】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤の平均粒子直径は、100ミクロン以下である。他の実施例では、無電解めっき促進剤の平均粒子直径は、約20nmから約10μmの範囲であっても良い。無電解めっき促進剤のほとんどは、市販されている。複合酸化物ABO2および共熱処理酸化物は、以下のステップで準備されても良い:前述のような対応する酸化物を提供するステップ;ボールミル処理および混合後に、約700から1500℃の温度範囲で、真空炉内で混合物を焼結するステップ;混合物を所望の粒子になるまでボールミル処理するステップ。
【0031】
本発明の実施例では、支持材料は、熱可塑性または熱硬化性の樹脂であっても良い。熱可塑性の樹脂は、ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリアミド、多環芳香族エーテル、ポリエステルイミド、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン複合材(PC/ABS)、ポリフェニレン酸化物(PPO)、ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリサルフォン(PSU)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、および液晶ポリマ(LCP)からなる群から選定された、1または2以上の材料を含んでも良い。ポリオレフィンは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)であっても良い。ポリエステルは、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリ(イソフタル酸ジアリル)(PDAIP)、ポリ(ジアリルフタレート)(PDAP)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、またはポリブチレンテレフタレート(PBT)であっても良い。ポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA-66)、ナイロン69(PA-69)、ナイロン64(PA-64)、ナイロン612(PA-612)、ポリヘキサメチレンセバクアミド(PA-610)、ナイロン1010(PA-1010)、ナイロン11(PA-11)、ナイロン12(PA-12)、ナイロン8(PA-8)、ナイロン9(PA-9)、ポリカプロラクタム(PA-6)、ポリ(p−フェニテン(phenytene)テレフタルアミド)(PPTA)、ポリ−メタ−キシリレンアジパミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、およびナイロン9T(PA9T)であっても良い。熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、およびポリウレタンからなる群から選択された、1または2以上の材料を含んでも良い。
【0032】
本発明の実施例では、サポートは、従来のいかなる方法で形成されても良い。
【0033】
まず、例えば、内部ミキサー、シングルスクリュー押出機、ツインスクリュー押出機、またはミキサーにより、支持材料および無電解めっき促進剤が混合される。次に、射出成形、ブロー成形、押出法、またはホットプレス法により、混合物が処理され、所望の形状のサポートが形成される。
【0034】
従来から知られているように、CuC2O4は、高温下では不安定であり、サポートの劣化を引き起こすおそれがあり、通常、サポートの形成温度は、300℃よりも高くはされない。サポートがCuC2O4の無電解めっき促進剤を含む場合、温度は、CuC2O4が分解しないようにされる。
【0035】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤の量は、重量比で、サポートの約1%から約40%の範囲であっても良い。他の実施例では、無電解めっき促進剤の量は、重量比で、サポートの約2%から約30%の範囲であっても良い。
【0036】
本発明の実施例では、サポートは、さらに、酸化防止剤、光安定化剤、潤滑剤、および無機フィラーから選択された、少なくとも一つの材料を有しても良い。酸化防止剤、光安定化剤、潤滑剤、および無機フィラーは、市販のものであっても良く、支持材料および無電解めっき促進剤と混合して、サポートを形成しても良い。
【0037】
本発明の実施例では、酸化防止剤は、重量比で、サポートの約0.01%から約2%であっても良い。光安定化剤は、重量比で、サポートの約0.01%から約2%であっても良い。潤滑剤は、重量比で、サポートの約0.01%から約2%であっても良い。無機フィラーは、重量比で、サポートの約1%から約70%であっても良い。
【0038】
酸化防止剤は、サポートの耐酸化性を高め、光安定化剤は、サポートの光安定性を高める。
【0039】
潤滑剤は、プラスチックの流動性を高め、プラスチックサポートを均一に混合することができる。潤滑剤は、メチルポリシロキサン、エチレン/ビニルアセテートワックス(EVA wax)、ポリエチレンワックス、およびステアリン酸塩からなる群から選定された1または2以上の材料を含んでも良い。
【0040】
無機フィラーは、タルカムパウダー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム繊維、スズ酸化物、またはカーボンブラックであっても良い。ガラス繊維は、レーザによる気化の際に、サポートのエッチング深さを大きくする。これは、Cuの無電解めっきの間のCuの密着性にとって好ましい。スズ酸化物またはカーボンブラックは、レーザのエネルギー効率を高め得る。ある実施例では、無機フィラーは、さらに、ガラスビード、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、真珠パウダー、珪灰石、珪藻岩、カオリン、石炭粉、陶土、雲母、油頁岩灰、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、カーボン繊維、二酸化ケイ素、または亜鉛酸化物であっても良い。無機フィラーは、Crのような、環境および人体に有害な元素を含まないことが好ましい。
【0041】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤は、支持材料内に均一に分散され、無電解めっき促進剤と支持材料の間の接合力は、極めて高いため、以降の無電解めっきは、無電解めっき促進剤の表面に、直接実施される。その結果、形成されたコーティング層とサポートの間の接合力は、大きく向上する。
【0042】
レーザ気化処理は、プラスチック製品の表面の、プラスチックで構成された部分で行われ、無電解めっき促進剤が露出される。本発明の実施例では、本発明の方法により、サポートの表面に、所望のパターンが形成されても良い。レーザ機器は、赤外線レーザ、例えばCO2レーザのマーキングシステムであっても良い。レーザ気化処理の条件は、以下を含む。レーザの波長は、約157nmから約10.6μmであっても良く、走査速度は、約500から約8000mm/秒であっても良く、走査ステップサイズは、約3から約9μmであっても良く、走査時間遅延は、約30から100μsであっても良く、レーザパワーは、約3から4Wであっても良く、周波数は、約30から40kHzであっても良く、充填距離は、約10から50μmであっても良い。本発明のエネルギー需要は低い。これは、エネルギーは、サポートの表面を気化して、無電解めっき促進剤を露出させるためのみに必要となり、サポートを純金属まで還元する必要はないからである。
【0043】
本発明の実施例では、サポートの厚さは、約500μmよりも厚く、サポートのエッチング深さは、約1から約20μmであるため、無電解めっき促進剤が露出され、微細で粗い表面が形成され、その後、この上に無電解めっきが実施される。
【0044】
プラスチックサポートの気化処理では、プラスチックスモークが発生し、このスモークは、下降し、露出された無電解めっき促進剤を被覆する。本発明の実施例では、レーザ気化処理の間、スモークを排気するため、換気ユニットが使用されても良い。また、レーザ気化処理後に、サポートに対して超音波洗浄を行っても良い。
【0045】
本発明の実施例では、露出された無電解めっき促進剤上に、銅またはニッケル層を無電解めっきするプロセスが実施され、その後、再度、電解めっきまたは無電解めっきが行われ、サポート上に、金属化層領域が形成されても良い。無電解めっき法は、従来より実施されている方法であっても良い。例えば、サポートは、無電解めっき浴中に浸漬しても良い。
【0046】
露出された無電解めっき促進剤は、無電解めっき浴において、化学的銅溶液または化学的ニッケル溶液と接触した後、CuイオンまたはNiイオンの還元を促進し、純粋なCuまたはNi粒子が形成される。これらの粒子は、無電解めっき促進剤の表面を覆い、レーザ気化処理領域に、コンパクトで緻密な第1のめっき層が形成される。
【0047】
表面装飾性、適用性、および耐食性を高めるため、第1のめっき層上に、1または2以上のめっき層が形成され、最終金属化層が形成されても良い。
【0048】
ある実施例では、第1のめっき層は、ニッケル層であり、ニッケル層上に第2の無電解めっきが実施され、第2の銅層が形成され、その後、第2の層上に第3の無電解めっきが実施され、第3のニッケル層が形成されても良い。その結果、金属化層は、プラスチック製品の内側から外側に向かって、Ni−Cu−Niとなる。別の実施例では、Ni−Cu−Ni層上に、Au層がストライクめっきされ、Ni−Cu−Ni−Auの金属化層が得られる。
【0049】
別の実施例では、第1のめっき層は、銅層であり、銅層の上で第2の電解めっきが実施され、第2のニッケル層が形成される。その結果、金属化層は、プラスチック製品の内側から外側に向かってCu−Niとなる。さらに別の実施例では、Cu−Ni層上にAu層がストライクめっきされ、Cu−Ni−Auの金属化層が得られても良い。
【0050】
Ni−Cu−Ni、Ni−Cu−Ni−Au、Cu−Ni、またはCu−Ni−Auの層において、Ni層の厚さは、約0.1から約10μmであり、Cu層の厚さは、約0.1から約100μmであり、Au層の厚さは、約0.01から約10μmである。
【0051】
無電解めっき液および電解めっき液は、従来知られたものであっても、市販のものであっても良い。本発明の実施例では、銅の無電解めっき液は、約12から約13のpH値を有し、銅塩、および還元剤を有しても良く、この還元剤は、銅塩を金属銅に還元する。還元剤は、グリオキシル酸、ヒドラジン、および次亜リン酸ナトリウムから選定された1または2以上であっても良い。ある例では、銅の無電解めっき液は、約12.5から約13のpH値を有し、以下のように提案される:約0.12mol/LのCuSO4・5H2O、約0.14mol/LのNa2EDTA・2H2O、約10mol/Lのフェロシアン化カリウム、約10mg/Lの2,2’−ビピリジン、約0.10mol/LのHCOCOOH、NaOHおよびH2SO4。本発明の実施例では、85から90℃の温度下でNaOHにより調整された、約5.2のpH値を有するニッケルの無電解めっき液は、以下のように提案される:約23g/Lの硫酸ニッケル、約18g/Lの次亜リン酸ナトリウム、約20g/Lの乳酸、および約15g/Lのリンゴ酸。
【0052】
本発明の実施例では、銅の無電解めっき時間は、約10分から約240分であり、ニッケルの無電解めっき時間は、約8分から約15分であっても良い。
【0053】
本発明の実施例では、無電解めっき促進剤が存在しないサポートの表面には、実質的に無電解めっき成膜は行われない。すなわち、電解めっき速度は、極めて遅く、接合力は、弱くなる。化学成膜がほとんどないため、これは、容易に除去される。従って、本発明では、直接選択的表面金属化法が容易に達成される。
【0054】
また、本発明では、前述の方法により製造されるプラスチック製品が開示される。プラスチック製品は、サポートの表面に、サポートおよび金属化層領域を有しても良い。金属化層は、プラスチック製品の内側部から外側部に向かって、Ni−Cu−Ni、Ni−Cu−Ni−Au、Cu−Ni、またはCu−Ni−Auであっても良い。
【0055】
本発明の追加の細部は、本発明のいくつかの実施例により提供される。
【0056】
(実施例1)
ステップ(1)
真空下でCuC2O4・2H2Oの結晶水を脱水した後、D50が1μm以下となるように、CuC2O4をボールミル処理し、乾燥する;PP樹脂、CuC2O4、タルカムパウダー、および酸化防止剤1010を、重量比で、100:15:10:0.2となるようにミキサーで混合してから、混合物をシングルスクリュー押出機で処理し、管状製品を形成する。
【0057】
ステップ(2)
管状製品の外表面に、赤外線レーザ(DPF-M12)を照射する。照射条件は、以下を含む:レーザ波長約1064nm、走査速度約1000mm/秒、走査ステップサイズ約9μm、走査時間遅延約30μs、レーザパワー約3W、周波数約40kHz、充填距離約50μm。次に、管状製品を超音波洗浄する。
【0058】
ステップ(3)
銅の無電解めっき液中に、管状製品を3時間配置し、約10μmの銅層を形成する。次に、ニッケルの無電解めっき液中に、10分間配置し、厚さ約3μmのニッケル層を形成する。銅の無電解めっき液は、pH値が約12.5から13であり、以下のように準備した:約0.12mol/LのCuSO4・5H2O、約0.14mol/LのNa2EDTA・2H2O、約10mg/Lのフェロシアン化カリウム、約10mg/Lの2,2’−ビピリジン、約0.10mol/LのHCOCOOH、NaOHおよびH2SO4。ニッケルの無電解めっき液は、NaOHおよびH2SO4によりpH値が約5.2となるように調整され、以下のように準備した:約23g/Lの硫酸ニッケル、約18g/Lの次亜リン酸ナトリウム、約20g/Lの乳酸、約15g/Lのリンゴ酸。
【0059】
管状製品は、前述のステップで製作した。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、ほとんどの点で、実施例1と実質的に同様であるが、以下の点が異なる。
【0061】
ステップ(1)
D50が2μm以下となるように、CuSiO3をボールミル処理する;PC樹脂、CuSiO3、酸化防止剤168、およびEVAワックスを、重量比で、100:20:0.2:0.1となるように混合した後、混合物を射出成形し、電気装置のシェルを形成する。
【0062】
ステップ(2)
赤外線レーザ(DPF-M12)により、シェルの表面に回路パターンを印刷する;次に、シェルを超音波洗浄する。
【0063】
ステップ(3)
ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、約3μmのニッケル層を形成する。次に、銅の無電解めっき液中に3時間配置し、約11μmの銅層を形成する。最後に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、約3μmのニッケル層を形成する。
【0064】
上記ステップにより、電気装置のプラスチックシェルを形成した。
【0065】
(実施例3)
実施例3は、ほとんどの点で、実施例2と実質的に同様であるが、以下の点が異なる。
【0066】
ステップ(1)
D50が5μm以下となるように、Co2O3をボールミル処理する;ツインスクリュー押出機で、PBT樹脂、Co2O3、ガラス繊維、および光安定化剤944を、重量比で、100:15:35:0.2となるように混合した後、混合物を射出成形し、自動車コネクタのシェルを形成する。
【0067】
ステップ(3)
ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、約3μmのニッケル層を形成する。次に、銅の無電解めっき液中に2時間配置し、約6μmの銅層を形成する。次に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、約3μmのニッケル層を形成する。最後に、ストライクめっきにより、厚さ約0.03μmのAu層をシェルに形成する。
【0068】
上記ステップにより、自動車コネクタのシェルを形成した。
【0069】
(実施例4)
実施例4は、ほとんどの点で、実施例2と実質的に同様であるが、以下の点が異なる。
【0070】
ステップ(1)
D50が10μm以下となるように、Ni2O3をボールミル処理する;PC樹脂、Ni2O3、酸化防止剤1076、およびポリエチレンワックスを、重量比で、100:10:0.2:0.1となるように混合した後、混合物をブロー成形し、車両用の電気装置のシェルを形成する。
【0071】
ステップ(3)
ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、約3μmのニッケル層を形成する。次に、銅の無電解めっき液中に2時間配置し、約6μmの銅層を形成する。最後に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを12分間配置し、約4μmのニッケル層を形成する。
【0072】
上記ステップにより、車両用の電気装置のシェルを形成した。
【0073】
(実施例5)
ステップ(1)
54.1gのCuO(0.68モル)、27.13gのFe2O3(0.17モル)、および26.87gのMn2O3(0.17モル)を混合し、真空炉内で、約1000℃の温度で2時間焼結した。次に、平均粒子直径が約0.8μmになるまで、混合物をボールミル処理し、その後、XPS法により、混合物をCuFe0.5Mn0.5O2.5として分析した。
【0074】
ステップ(2)
PPO樹脂、CuFe0.5Mn0.5O2.5、ケイ酸カルシウム繊維、酸化防止剤1076を、重量比で、100:10:0.2:0.1となるように混合し、その後、混合物を射出成形し、太陽電池のコネクタシェルを形成する。
【0075】
ステップ(3)
赤外線レーザ(DPF-M12)により、シェルの表面に回路パターンを印刷する;次に、シェルを超音波洗浄する。
【0076】
ステップ(4)
ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを8分間配置し、厚さ約2μmのニッケル層を形成する。次に、銅の無電解めっき液中に、シェルを4時間配置し、厚さ約15μmの銅層を形成する。最後に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、厚さ約3μmのニッケル層を形成する。
【0077】
上記ステップにより、太陽電池のコネクタシェルを形成した。
【0078】
(実施例6)
実施例6は、ほとんどの点で、実施例5と実質的に同様であるが、以下の点が異なる。
【0079】
ステップ(1)
54.1gのCuO(0.68モル)、27.13gのFe2O3(0.17モル)、および17.33gのAl2O3(0.17モル)を混合し、真空炉内で、約1000℃の温度で2時間焼結した。次に、平均粒子直径が約0.5μmになるまで、混合物をボールミル処理し、その後、XPS法により、混合物をCuFe0.5Al0.5O2.5として分析した。
【0080】
ステップ(2)
PA6T樹脂、CuFe0.5Al0.5O2.5、酸化防止剤1076、およびポリエチレンワックスを、重量比で、100:10:0.2:0.1となるように混合し、その後、混合物を射出成形し、車両用の電気装置のコネクタシェルを形成する。
【0081】
ステップ(4)
ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを8分間配置し、厚さ約2μmのニッケル層を形成する。次に、銅の無電解めっき液中に、シェルを4時間配置し、厚さ約15μmの銅層を形成する。次に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、厚さ約3μmのニッケル層を形成する。最後に、ストライクめっきにより、シェルに厚さが約0.03μmのAu層を形成する。
【0082】
上記ステップにより、車両用の電気装置のシェルを作製した。
【0083】
(実施例7)
実施例7は、ほとんどの点で、実施例5と実質的に同様であるが、以下の点が異なる。
【0084】
ステップ(1)
54.1gのCuO(0.68モル)、13.56gのFe2O3(0.085モル)、8.67gのAl2O3(0.085モル)、および26.87gのMn2O3(0.17モル)を混合し、真空炉内で、約1000℃の温度で2時間焼結した。次に、平均粒子直径が約1.0μmになるまで、混合物をボールミル処理し、その後、XPS法により、混合物をCuFe0.25Al0.25Mn0.5O2.5として分析した。
【0085】
ステップ(2)
PPS樹脂、CuFe0.25Al0.25Mn0.5O2.5、酸化防止剤1076、およびポリエチレンワックスを、重量比で、100:10:0.2:0.1となるように混合し、その後、混合物を射出成形し、電気コネクタのシェルを形成する。
【0086】
ステップ(4)
銅の無電解めっき液中に、シェルを3時間配置し、約12μmの銅層を形成する。次に、ニッケルの無電解めっき液中に、シェルを10分間配置し、厚さ約3μmのニッケル層を形成する。
【0087】
上記ステップにより、電気コネクタのシェルを形成した。
【0088】
(実施例8)
ステップ(1)
平均粒子直径が50nmのNi2O3を100g、およびタルカムパウダー10gを、1000gのポリカーボネートに加える;高速で混合物を混合してから押出機に移し、粒子を形成する。次に、混合物を射出成形して、厚さ2mmのプラスチックサンプルを形成する。
【0089】
ステップ(2)
実施例1のステップ(2)と実質的に同様の方法で、プラスチックサンプルの表面にレーザを照射する。
【0090】
ステップ(3)
銅の無電解めっきのため、実施例1のステップ(3)で採用されたような銅の無電解めっき液中に、処理されたプラスチックサンプルを浸漬する。測定された銅のめっき速度は、4μm/時間である。
【0091】
(実施例9)
実施例9の各ステップは、本発明に示すようなプラスチック製品を調製するための実施例8のステップと同様であるが、以下の点が異なる。
【0092】
ステップ(1)
平均粒子直径が100nmのCo2O3を100gおよびガラス繊維30gを、5000gのPCに添加する;混合物を高速で回転混合してから、押出機に混合物を移し、粒子を形成する;粒子を射出成形し、厚さ2mmのプラスチックサンプルを形成する。
【0093】
ステップ(2)
レーザは、以下のパラメータを有する:波長300nm;走査速度5000mm/秒;走査ステップ3μm;時間遅延60μs;周波数40kHz;パワー3W;充填距離30μm。
【0094】
ステップ(3)
銅の無電解めっきのため、実施例1のステップ(3)で採用したような銅の無電解めっき液中に、処理されたプラスチックサンプルを浸漬する。測定された銅のめっき速度は、2μm/時間である。
【0095】
(実施例10)
実施例10の各ステップは、本発明に示すようなプラスチック製品を調製するための実施例8のステップと同様であるが、以下の点が異なる。
【0096】
ステップ(1)
平均粒子直径が500nmのCuSiO3を100gおよびカオリン70gを、10000gのPETに添加する;混合物を高速で回転混合してから、押出機に混合物を移し、粒子を形成する;粒子を射出成形し、厚さ2mmのプラスチックサンプルを形成する。
【0097】
ステップ(2)
レーザは、以下のパラメータを有する:波長10600nm;走査速度8000mm/秒;走査ステップ6μm;時間遅延100μs;周波数30kHz;パワー4W;充填距離40μm。
【0098】
ステップ(3)
銅の無電解めっきのため、実施例1のステップ(3)で採用したような銅の無電解めっき液中に、処理されたプラスチックサンプルを浸漬する。測定された銅のめっき速度は、5μm/時間である。
【0099】
(実施例11〜26)
実施例11〜26では、実施例8と同様の表面金属化プロセスを使用したが、無電解めっき促進剤として、表1における材料を採用した点が異なる。実施例11〜26の測定された銅のメッキ速度を表1に示す。
【0100】
実施例20〜22における水素化触媒は、Acta Physico-Chimica Sinica,20(5),524-528,2004、およびAngew. Chem. Int. Ed. 42,3815-3817,2003に記載の方法により調製した。
【0101】
例えば、Cu−Zn水素化触媒は、以下のように調製した:Cu:Znがモル比で、8:1となるように、CuおよびZnの混合硝酸溶液を調製する。混合溶液中の金属イオンの全濃度は、0.5mol/Lである。沈殿剤として0.5mol/Lの濃度のNa2CO3を加えて、85℃の温度で、急速撹拌し、Na2CO3溶液をリアクタに添加し、pHが6.8から7.0の溶液を得る。反応の最後に、溶液は、7.0のpH値を示した。この温度で、溶液を1時間保持した。その後、溶液を冷却し、溶液をろ過し、脱イオン水で洗浄し、110℃の温度で乾燥する。その後、350℃で4時間熱処理することにより、所望のCu−Zn水素化触媒が得られる。酸化物換算で、Cu−Zn水素化触媒は、Cu:Znが重量比で8.1:1であることが検出された。
【0102】
(参考例1)
参考例1では、選択的なプラスチック表面金属化のため、実施例8で使用された方法と同様の方法を使用した。違いは、ステップ(1)において、無電解めっき促進剤に、表1に示すような化合物を使用したことである。測定された銅のメッキ速度を、表1に示した。
【0103】
【表1】


実施例8および参考例1から、既存の触媒ZnOの場合、銅の無電解めっき速度は、0.05μm/時間しかないことがわかる。一方、同じ条件において、Ni2O3触媒の場合、銅の無電解めっき速度は、4μm/時間に達することがわかる。
【0104】
(実施例27〜45)
実施例27〜45では、プラスチック表面に選択的金属化処理を実施するため、実施例8〜26と同様のプロセスを採用した。違いは、ステップ(3)における銅の無電解めっきの前に、ニッケルの無電解めっき液中で、ニッケルの無電解めっきを実施したことである。めっき液は、温度が90℃であり、測定されたニッケルのめっき速度は、表2に示されている。
【0105】
ニッケルの無電解メッキ液は、NaOHで調整された5.2のpH値を有する:硫酸ニッケルは、約23g/L、次亜リン酸ナトリウムは、約18g/L、乳酸は、約20g/L、リンゴ酸は、約15g/Lである。
【0106】
(参考例2)
参考例2では、選択的なプラスチック表面金属化のため、実施例27で使用された方法と同様の方法を使用した。違いは、ステップ(1)において、無電解めっき促進剤に、表2に示すような化合物を使用したことである。測定されたニッケルのメッキ速度を、表2に示した。
【0107】
【表2】


実施例27および参考例2から、既存の触媒ZnOの場合、ニッケルの無電解めっき速度は、0.05μm/時間しかないことがわかる。一方、同じ条件において、Ni2O3触媒の場合、ニッケルの無電解めっき速度は、3μm/時間に達することがわかる。
【0108】
一例としての実施例を示し記載したが、本発明の思想および原理から逸脱しないで、実施例の変更、代替、および改変が可能であることは、当業者には明らかである。そのような変更、代替、および改変は、特許請求の範囲および均等の範囲に含まれる。
【0109】
本願は、以下の出願の優先権の利益を主張するものである。
1)2009年12月17日に国家知的財産庁、中国P.R.に出願された中国特許出願第200910261216.2号、および
2)2009年12月30日に国家知的財産庁、中国P.R.に出願された中国特許出願第200910238957.9号
前述の特許出願は、その全内容を本願の参照として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックの表面を金属化する方法であって、
前記プラスチックは、支持材料および無電解めっき促進剤を有し、
当該方法は、
1)前記プラスチックの表面を気化して、前記無電解めっき促進剤を露出させるステップと、
2)前記プラスチックの表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきし、その後、電解めっきまたは第2の無電解めっきにより、前記プラスチックの表面に、金属化層を形成するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された、1または2以上の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法:
(a)Co、Ni、Agから選択された金属元素の酸化物;
(b)Co、Ni、Cuから選択された金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩;
(c)Co、Ni、Cu、Agから選択された、1または2以上の金属元素を含む水素化触媒;
(d)デラフォス石(delafossite)構造を有するABO2型複合酸化物であって、Aは、Co、Ni、Cuから選択された金属元素の一つであり、Bは、Ni、Mn、Cr、Al、およびFeからなる群から選択された元素であり、AとBは異なる、ABO2型複合酸化物;ならびに
(e)Cu/Fe/Mn、Cu/Fe/Al、および/またはCu/Fe/Al/Mnの多成分酸化物からなる群から選択された多成分酸化物。
【請求項3】
前記プラスチックの表面は、レーザにより気化され、前記無電解めっき促進剤が露出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザは、約157nmから約10.6μmの波長範囲を有し、走査速度は約500から約8000mm/秒であり、走査ステップサイズは、約3から約9μmであり、走査時間遅延は、約30から100μsであり、レーザパワーは、約3から4Wであり、周波数は、約30から40kHzであり、充填距離は、約10から50μmであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無電解めっき促進剤は、100μm以下の平均直径を有する粒子であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された1または2以上の材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
(a)Ni2O3、Co2O3、Co3O4
(b)CuSiO3、NiSiO3、CoSiO3、CuB2O4、Cu3B2O6、NiB2O4、Ni3B2O6、NiC2O4、CoC2O4、CuC2O4
(c)Cu−Zn、Cu−Zn−Ni、Cu−Zn−Co、Cu−Zn−Ga、Co−La、Cu−Cd、およびCu−Zn−Siの水素化触媒;
(d)MNiO2、MMnO2、MCrO2、MAlO2、MFeO2、ここでMは、Cu、Ni、またはCoである。
【請求項7】
前記多成分酸化物は、それぞれ、以下の化学式を有することを特徴とする請求項2に記載の方法:
CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、およびCuFeaAlbMncOd、ここで、x、y、z、e、f、g、a、b、c、およびdは、0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4、0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4、および0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4を満たす。
【請求項8】
前記支持材料は、熱可塑性材料または熱硬化性樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記無電解めっき促進剤は、重量比で、前記支持材料の約1%から約40%の量であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記支持材料は、さらに、無機フィラー、酸化防止剤、光安定化剤、および潤滑剤から選択された少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
プラスチック製品を調製する方法であって、
1)支持材料および無電解めっき促進剤を含むサポートを有するプラスチック製品の少なくとも一部を形成するステップと、
2)前記サポートの表面を気化して、前記無電解めっき促進剤を露出させるステップと、
3)前記表面に、銅またはニッケルの層を無電解めっきしてから、少なくとももう一度、電解めっきまたは無電解めっきを行い、前記表面に金属化層を形成するステップと、
を有する方法。
【請求項12】
前記ステップ1)の前記無電解めっき促進剤は、以下からなる群から選定された、1または2以上の材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法:
(a)Co、Ni、Agから選択された金属元素の酸化物;
(b)Co、Ni、Cuから選択された金属元素のケイ酸塩、ホウ酸塩、またはシュウ酸塩;
(c)Cu、Zn、Ni、Co、Ga、La、Cd、Siから選択された、1または2以上の金属元素を含む水素化触媒;
(d)デラフォス石(delafossite)構造を有するABO2型複合酸化物であって、Aは、Co、Ni、およびCuから選択された金属元素の一つであり、Bは、Ni、Mn、Cr、Al、およびFeからなる群から選択された元素であり、AとBは異なる、ABO2型複合酸化物;ならびに
(e)Cu/Fe/Mn、Cu/Fe/Al、および/またはCu/Fe/Al/Mnの多成分酸化物からなる群から選択された多成分酸化物。
【請求項13】
前記プラスチック製品は、射出成型法、ブロー成型法、押出法、またはホットプレス法により形成されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面は、レーザによって気化され、前記無電解めっき促進剤が露出されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザは、約157nmから約10.6μmの波長範囲を有し、走査速度は、約500から約8000mm/秒であり、走査ステップサイズは、約3から約9μmであり、走査時間遅延は、約30から100μsであり、レーザパワーは、約3から4Wであり、周波数は、約30から40kHzであり、充填距離は、約10から50μmであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ3)は、さらに、追加の電解めっきおよび/または無電解めっきを実施するステップを有し、前記サポート上に、それぞれ、Ni−Cu−Ni、Ni−Cu−Ni−Au、Cu−Ni、またはCu−Ni−Au層が形成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
Ni−Cu−Ni、Ni−Cu−Ni−Au、Cu−Ni、およびCu−Ni−Auの層において、それぞれ、前記ニッケル層は、約0.1〜100μmの厚さを有し、前記銅層は、約0.1〜100μmの厚さを有し、前記Au層は、約0.01〜10μmの厚さを有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記無電解めっき促進剤は、100μm以下の平均直径を有する粒子であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記多成分酸化物は、それぞれ、以下の化学式を有することを特徴とする請求項12に記載の方法:
CuFexMnyOz、CuFeeAlfOg、およびCuFeaAlbMncOd、ここで、x、y、z、e、f、g、a、b、c、およびdは、0.01≦x≦2、0.01≦y≦2、2≦z≦4、0.01≦e≦2、0.01≦f≦2、2≦g≦4、および0.01≦a≦2、0.01≦b≦2、0.01≦c≦2、2≦d≦4を満たす。
【請求項20】
前記無電解めっき促進剤は、重量比で、前記サポートの約1%から約40%の量であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記支持材料は、さらに、無機フィラー、酸化防止剤、光安定化剤、および潤滑剤から選択された少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水素化触媒は、Cu−Zn水素化触媒、Cu−Zn−Ni水素化触媒、Cu−Zn−Co水素化触媒、Cu−Zn−Ga水素化触媒、Co−La水素化触媒、Cu−Cd水素化触媒、およびCu−Zn−Si水素化触媒からなる群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記無電解めっき促進剤は、前記支持材料内に均一に分散されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法によって製造されたプラスチック製品。

【公表番号】特表2012−524169(P2012−524169A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506325(P2012−506325)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/CN2010/072055
【国際公開番号】WO2011/072506
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510177809)ビーワイディー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】