説明

被分析物センサーにおいて使用するためのピリジニウムボロン酸消光体

【課題】被分析物センサーにおいて使用するためのピリジニウムボロン酸消光体を提供する。
【解決手段】ボロン酸で機能化された新規なピリジニウム塩およびそれらの製造方法が開示される。蛍光染料と組み合わせた場合、その化合物は、ポリヒドロキシル−置換有機分子の検出において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年5月1日付け出願の米国仮出願第60/915,372号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、ポリヒドロキシル−置換有機分子の検出、特に、蛍光染料の消光体としてボロン酸で機能化されたピリジニウム塩を使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
研究者らは、ポルフィリン環に結合されたN−ベンジル−2−ボロン酸ピリジニウム基により蛍光色素体を作製してきた(Arimori、S.ら 1996年 J Am Chem Soc 118巻:245〜246頁(非特許文献1))。それらは、分子間のエステル形成を介して、サッカリド基で置換されたもう一つのポルフィリンとの凝集を促進するために使用された。また、置換ポルフィリンにおけるピリジン窒素上のベンジル−2−およびベンジル−4−ボロン酸置換基も記載された(Arimoriら 1996年 Chemistry Letters 25巻:77頁(非特許文献2))。それらは、糖におけるキラルの向きを区別するために使用された。これらのポルフィリンおよびアントラキノンジスルホン酸塩の間で錯体を形成することで、蛍光が減衰することが示された。ボロン酸をフルクトースと反応することで錯体は解離し、結果として蛍光が増加した。この場合、消光体部分構造は、アントラキノン構成成分であった(Arimoriら 1995年 J Chem Soc、Chem Commun 9巻:961〜962頁(非特許文献3))。引き続いて、研究者らは、その構造においてベンジル−2−ボロン酸基で窒素上が置換されているピリジン環を有する染料を記載した(Takeuchiら、1996年 Bull Chem Soc(Jpn)69巻:2613〜2618頁(非特許文献4))。オルト位のピリジニウム基によってボロン酸のジオールとの反応性が増加することが述べられた。この染料は、ヌクレオチドを検出するために使用された。トリアルキルアンモニウム置換ベンジル−2−ボロン酸に関する論文において、置換基がR基(即ち、アルキル)として特定され、パラ置換されたピリジンのN−ベンジル−2−ボロン酸誘導体に対する一般式が与えられた(Takeuchiら 1996年 Tetrahedron 52巻:12931〜12940頁(非特許文献5))。
【0004】
ボロン酸置換基を有していないピリジニウム塩が、消光の研究における参照化合物として使用された(Cordesら 2005年 Langmuir 21巻:6540〜6547頁(非特許文献6))。他の研究者らは、N−ベンジルボロン酸ピリジニウム塩の3種類の異性体の蛍光消光活性およびグルコース応答を測定した。これらの化合物はピラニンの蛍光消光に劣り、グルコース応答を与えなかった(例えば、「Detection of glucose with arylboronic acid containing viologens and fluorescent dyes:Progress toward a continuous glucose monitoring system for in vivo applications」Cappuccio、Frank E.博士論文;カリフォルニア大学、サンタクルーズ、2004年(非特許文献7)参照)。
【0005】
メチルビオロゲン(MV)および一連の4−置換N−メチルピリジニウムによるRu(bpy)の消光について比較研究が報告された(JonesおよびMalba 1985年 J Org Chem 50巻:5776〜5782頁(非特許文献8))。この研究により、環に共役している電子求引基で4位が置換されているピリジニウムはMVと同様に挙動することが示された。これらの化合物は同様のポテンシャルにおいて可逆的な減衰を示し、同一範囲のシュテルン−フォルマー定数を有していた。
【0006】
アルキルピリジニウム界面活性剤が蛍光消光体として広く研究されてきた。成功裏に消光した蛍光色素体としては、多環式芳香族炭化水素(Pandeyら 1999年 Talanta 48巻:1103〜1110頁(非特許文献9);Palitら 1997年 Chem Phys Lett 269巻:286〜292頁(非特許文献10);WadekおよびTucker 2000年 Talanta 53巻:571〜578頁(非特許文献11);Maoら 2003年 J Sep Sci 26巻:1643〜1649頁(非特許文献12))、アミノフルオレン(Sahaら 1999年 J Photochem Photobiol A 121巻:191〜198頁(非特許文献13))およびポリマー上のカルバゾール置換基(Yatsueら 1992年 J Phys Chem 96巻:10125〜10129頁(非特許文献14))が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Arimori、S.ら 1996年 J Am Chem Soc 118巻:245〜246頁
【非特許文献2】Arimoriら 1996年 Chemistry Letters 25巻:77頁
【非特許文献3】Arimoriら 1995年 J Chem Soc、Chem Commun 9巻:961〜962頁
【非特許文献4】Takeuchiら、1996年 Bull Chem Soc(Jpn)69巻:2613〜2618頁
【非特許文献5】Takeuchiら 1996年 Tetrahedron 52巻:12931〜12940頁
【非特許文献6】Cordesら 2005年 Langmuir 21巻:6540〜6547頁
【非特許文献7】「Detection of glucose with arylboronic acid containing viologens and fluorescent dyes:Progress toward a continuous glucose monitoring system for in vivo applications」Cappuccio、Frank E.博士論文;カリフォルニア大学、サンタクルーズ、2004年
【非特許文献8】JonesおよびMalba 1985年 J Org Chem 50巻:5776〜5782頁
【非特許文献9】Pandeyら 1999年 Talanta 48巻:1103〜1110頁
【非特許文献10】Palitら 1997年 Chem Phys Lett 269巻:286〜292頁
【非特許文献11】WadekおよびTucker 2000年 Talanta 53巻:571〜578頁
【非特許文献12】Maoら 2003年 J Sep Sci 26巻:1643〜1649頁
【非特許文献13】Sahaら 1999年 J Photochem Photobiol A 121巻:191〜198頁
【非特許文献14】Yatsueら 1992年 J Phys Chem 96巻:10125〜10129頁
【非特許文献15】Pandaら 1998年 J Photochem Photobio A 113巻:73〜80頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
殆どの研究が単純なN−アルキルピリジニウム塩についてであり、アルキル基は塩の表面を活性にするのに十分大きいものであった。ポリマーの研究は、4−アセチルピリジン、イソニコチン酸メチルおよびイソニコチンアミドの誘導体を含むパラ−置換N−アルキルピリジニウムで行われた。環置換ピリジニウムでの他の研究においては、ナフトールの蛍光を消光するために、N,N’−アルキレン架橋基を有するビス−ピコリニウム塩が使用された。そのビス化合物の消光効率は対照であるモノ−ピコリニウムの消光効率より実質的に高く;メチレン結合体を有する化合物にとっては最高であった(Pandaら 1998年 J Photochem Photobio A 113巻:73〜80頁(非特許文献15)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(T−1)を有するターピリジニウム消光体が開示される。
【0010】
【化1】


下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、T−1の製造方法が開示される。
【0011】
【化2】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(T−2)を有するターピリジニウム消光体が開示される。
【0012】
【化3】


下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、T−2の製造方法が開示される。
【0013】
【化4】

本発明の好ましい実施形態に従い、下に示す通りの一般構造を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0014】
A.<反応性化合物>
【0015】
【化5】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合基であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)より選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されない重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zはポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基でもよいかのいずれかである。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0016】
【化6】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
【0017】
【化7】

は、メタまたはパラ位でピリジニウム環上に置換されており;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0018】
B.<非反応性化合物>
【0019】
【化8】

式中、
Xは−O−または−NH−であり;および
R’はアルキルであり、炭素鎖中に−O−単位を含んでいてもよく、末端が−OHまたは−OCHでもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(P−1)を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0021】
【化9】


下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−1の製造方法が開示される。
【0022】
【化10】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0023】
【化11】

式中、
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されない、反応性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zはポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基でよい。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0024】
【化12】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
Yは、
【0025】
【化13】

(式中、RはHまたは低級アルキルである。)
および
【0026】
【化14】

より選択される3価の連結基であり;
およびXは−O−または−NH−であり;および
、LおよびLは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択され、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(P−2)を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0028】
【化15】

式中、nは1〜10である。
【0029】
下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−2の製造方法が開示される。
【0030】
【化16】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するもう一つのピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0031】
【化17】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zはカップリング基またはオレフィン的に不飽和の基より選択される反応性基であるか、または、Zは、
【0032】
【化18】

(式中、RはHまたはCHである)
であり;
中心のベンゼン環からの結合は、隣接するピリジニウム環上のオルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造を有し、P−3と呼ばれる特定のピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0034】
【化19】

下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−3の製造方法が開示される。
【0035】
【化20】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するもう一つのピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0036】
【化21】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されず、重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zはポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基でもよいかのいずれかである。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0037】
【化22】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
曖昧に表現されている結合は、オルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造を有し、P−4と呼ばれるもう一つピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0039】
【化23】

下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−4の製造方法が開示される。
【0040】
【化24】

ある実施形態において、第1の波長において光を吸収し、第2の波長において光を発するように構成された蛍光色素体と、被分析物濃度に関する量によって蛍光色素体により発せられた光を変更するように構成された消光体(ただし、消光体はボロン酸−置換ピリジニウムを含む)とを具備する被分析物センサーが開示される。好ましい実施形態において、消光体はP1、P2、P3およびP4からなる群より選択される。
【0041】
本発明のもう一つの実施形態に従い、T−1、T−2、P−1、P−2、P−3およびP−4から成る群より選択される1種類以上の被分析物結合部分構造と;蛍光染料、例えば、HPTS−トリCys−MAと;および、任意成分として、染料および消光体を固定化するための部材を提供する被分析物透過性の構成成分、例えば、ポリマーマトリクスまたは半透膜とを具備するグルコースセンサーが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ヒドロゲルで光ファイバーのチップに固定化された消光体P−1および染料HPTS−トリCys−MAを含むセンサーのグルコース応答を図解する。検出化学物質は470nmで励起され、濃度が増加するグルコースの存在下において、520〜700nmの間で蛍光を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0043】
被分析物に結合すると蛍光を変調する蛍光染料および被分析物結合部分構造は既知であり、被分析物を検出するための測定器システムにおいて使用されてきた。例えば、米国特許第6,653,141、6,627,177、5,512,246、5,137,833、6,800,451、6,794,195、6,804,544、6,002,954、6,319,540、6,766,183、5,503,770および5,763,238号明細書、および同時係属中の米国特許出願公開第10/456,895、11/296,898、11/671,880、60/833,081、60/888,477および60/888,475号公報を参照;それぞれが、それを参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
本出願人らは提案された作動機構に束縛される意図はないが、上で参照した同時係属中の米国特許出願に記載される好ましい測定器システムの幾つかで利用できる1つの機構としては、とりわけ、被分析物結合部分構造および蛍光染料の間で基底状態錯体を形成することが挙げられる。錯体を形成した結果として、蛍光を消光できる。好ましい被分析物結合部分構造上のボロン酸基がグルコースなどのポリヒドロキシル−置換有機分子と反応すると、ホウ素が負の電荷を帯びる。これにより錯体が弱まって、結果として解離し、グルコース濃度に関連して蛍光が増加する。
【0045】
ポリヒドロキシル−置換有機分子(例えば、糖)を検出するための本発明の測定器システムは、被分析物結合部分構造としてボロン酸で機能化された新規なものに分類されるピリジニウム塩を含む。本発明の実施形態において、被分析物結合ピリジニウム消光体は以下の1つ以上の特徴を示す。それらは:1)水性媒体に相溶性があり;2)ボロン酸基で置換されており;3)好ましくはボロン酸1つ当たり少なくとも1つのカチオン基で、本質的に正に帯電しており;および4)固定化しやすい。被分析物結合消光体は優れた電子受容体であると仮定され、電子の移動過程は可逆的である。
【0046】
本明細書で使用する場合、「ボロン酸」とは構造−B(OH)のことを言う。本発明の消光体を合成する各種の段階において、ボロン酸はボロン酸エステルとして存在してもよいことが当業者によって認識される。ボロン酸は、そのようなエステルを含むことが意図されている。
【0047】
「蛍光色素体」とは、特定の波長で光により照らされると、より長い波長で光を発する、即ち、蛍光を発する物質のことを言う。蛍光色素体としては、有機染料、有機金属化合物、金属キレート、蛍光共役ポリマー、量子ドットまたはナノ粒子および上のものの組み合わせが挙げられる。蛍光色素体は、ポリマーに接続され別々の部分構造または置換基でもよい。「蛍光染料」または「染料」は、第2の別々の化合物または重合性化合物に転化可能な別々の化合物または反応性中間体より選択される。
【0048】
「L」とも言われる「結合基」は、検出部分構造をポリマーまたはマトリクスに共有結合する2価の部分構造を指す。Lの例としては、直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンよりそれぞれ独立に選択されるものが挙げられ、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)などより選択される1個以上の2価の連結基でもよい。
【0049】
「消光体」は、それが存在すると蛍光色素体の発光が減衰する化合物を言う。
【0050】
「ピリジニウム」は窒素上で置換され正電荷のオニウム塩を形成するピリジンを言い、ピリジン環の他の位置で置換されていてもよい。
【0051】
<ピリジニウム消光体>
被分析物結合消光体として使用するために、ボロン酸で機能化されたピリジニウム塩を合成した。好ましい実施形態に従い、有用なピリジニウムをカルボニル基で置換し、ポリヒドロキシル−置換有機分子(例えば、糖)に結合するよう構造的に構成し、機能的に適合させ、例えば同時係属中の米国特許出願公開第11/296,898および11/671,880号公報に記載され、3,3’−oBBVまたはそれの誘導体などのビオロゲン−ボロン酸付加物の代替としてグルコースセンサーの化学的測定器システムにおいて使用できる。
【0052】
ポリヒドロキシル−置換有機分子(例えば、糖)を認識する部分構造は芳香族ボロン酸である。ボロン酸は、結合基または共有結合のいずれかを介して、共役窒素含有ヘテロ環式芳香族構造に接続されている。ボロン酸で置換された消光体は、好ましくは、約4および9の間のpKaを有し、約6.8〜7.8のpHにおいて水性媒体中でグルコースと可逆的に反応してボロン酸エステルを形成する。反応の程度は、媒体中のグルコース濃度に関係する。ボロン酸エステルを形成することでピリジニウムによる蛍光の消光が低下し、グルコース濃度に依存して蛍光が増加する結果となる。
【0053】
反応性化合物の一般構造を下に示す。
【0054】
【化25】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されない重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zは任意にポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基であるかのいずれかである。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0055】
【化26】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
【0056】
【化27】

は、メタまたはパラ位でピリジニウム環上に置換されており;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0057】
非反応性化合物の一般構造を下に示す。
【0058】
【化28】

式中、
Xは−O−または−NH−であり;および
R’はアルキルであり、炭素鎖中に−O−単位を含んでいてもよく、末端が−OHまたは−OCHでもよい。
【0059】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(P−1)を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0060】
【化29】


下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−1の製造方法が開示される。
【0061】
【化30】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0062】
【化31】

式中、
Zは、先に定義される通りの反応性基であり;
Yは、
【0063】
【化32】

(式中、RはHまたは低級アルキルである。)
および
【0064】
【化33】

より選択される3価の連結基であり;
およびXは−O−または−NH−であり;および
、LおよびLは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択され、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよい。
【0065】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造(P−2)を有するピリジニウム消光体が開示される。
【0066】
【化34】

式中、nは1〜10である。
【0067】
ボロン酸で機能化されたピリジニウム基間の架橋基の1つの目的は、2個のボロン酸を1個のグルコース分子に協調的に結合させることである。本発明者らは、これによりグルコースの選択性が向上する結果となると仮定している。単純な炭素鎖(図解される通り、ただし、nは1〜10)だけではなく、結合基は他の化学的結合、例えば、エチレンオキシド断片などを含むこともできる。P−2はポリベンジルボロン酸ピリジニウム塩族の代表であり、ただし、ピリジニウム環はカルボニル置換基を介してメタおよびパラ位に結合している架橋基により連結されている。
【0068】
下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−2の製造方法が開示される。
【0069】
【化35】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するもう一つのピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0070】
【化36】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されず、重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zは任意にポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基であるかのいずれかである。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0071】
【化37】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
中心のベンゼン環からの結合は、隣接するピリジニウム環上のオルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0072】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造を有し、P−3と呼ばれる特定のピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0073】
【化38】

下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−3の製造方法が開示される。
【0074】
【化39】

本発明の好ましい実施形態に従い、下の一般構造を有するもう一つのピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0075】
【化40】

式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−より選択されるが限定されず、重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zは任意にポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基であるかのいずれかである。その様な基としては、限定することなく、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHが挙げられる。ある実施形態において、Zは、
【0076】
【化41】

(式中、RはHまたはCHである。)
であり;
曖昧に表現されている結合は、オルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態に従い、下の構造を有し、P−4と呼ばれるもう一つピリジニウムボロン酸消光体が開示される。
【0078】
【化42】

下の工程を含む本発明のもう一つの実施形態に従い、P−4の製造方法が開示される。
【0079】
【化43】

本明細書で開示される幾つかのピリジニウム消光体は、単一のベンジルボロン酸基を有する1価の構造を包含する。P−1は、この新しく分類される重合性でベンジルボロン酸ピリジニウム塩の1つのそのような代表である。それは容易に入手可能な中間体より作製が簡単で単純な分子であり、それはビオロゲン系ヒドロゲルのように機能する。
【0080】
ポリピリジニウム消光体と呼ばれるピリジニウム消光体の他の実施形態は、3個以上のベンジルボロン酸基(例えば、T−1およびT−2)を有する。これらの化合物は、P−1などの1価のピリジニウム変異形および2個のベンジルボロン酸基を含むビオロゲンのいずれとも異なる。T−1およびT−2は完全にN−アルキル化されたポリピリジンで、ピリジン環は直接カップルしている(即ち、環の間に結合基がない)。また、それらは拡張共役ビオロゲンと分類することもできる(即ち、2個のピリジニウム環が共役架橋部分構造で連結されている)。T−2ポリピリジニウム消光体は、反応性基および2個のターピリジニウム基につながる3官能性部分構造を含む。
【0081】
本明細書で開示される通り、P2、P3およびP4はビスピリジニウムである。ボロン酸で置換されたポリピリジニウムは好ましい消光体のもう一つに分類され、共にカップルされた環が2個より多くある。用語「ポリピリジニウム」としては、結合基によって共に共有結合した3個以上のピリジニウム基を含む別々の化合物、鎖中にピリジニウム繰り返し単位を含むポリマー、鎖へのペンダント基であるピリジニウムを有するポリマー、好ましくはピリジニウム末端基が挙げられるピリジニウム単位を含むデンドリマー、好ましくはピリジニウム末端基が挙げられるピリジニウム単位を含むオリゴマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
実施形態によっては、本明細書で開示される消光体は少なくとも2個のボロン酸基で置換されており、水に溶解または分散でき、ポリピリジニウムボロン酸を含むポリマーまたはヒドロゲルである。あるいは、ポリピリジニウムボロン酸は不活性な基体に直接結合している。ポリピリジニウムボロン酸を含む消光体の前駆体としては、重合性基またはカップリング基で更に置換された低分子量ポリピリジニウムボロン酸が挙げられる。
【0083】
本明細書で開示される構造のいくつかは、検知ポリマーを作製するために使用される消光体の前駆体(即ち、モノマー)である。生体外用途のための消光体としてモノマーを使用することは、それらの反応性のため実用的ではないであろう。一方、生体外用途のために有用で非重合性の異形を作製することができる。これらの実施形態は非重合性基を含む(例えば、PEG置換基などの可溶化基でメタクリルアミド基を置き換えることができる)。
【0084】
実施形態によっては、1価またはポリピリジニウムボロン酸付加物は約400ダルトン以上の分子量を有する別々の化合物でもよい。他の実施形態において、また、それは約10,000ダルトンを超える分子量を有する水溶性または水分散性ポリマーのペンダント基または鎖単位でもよい。ある実施形態において、消光体ポリマー単位は非共有的にポリマーマトリクスと会合していてもよく、そこに物理的に固定化されている。更にもう一つの実施形態において、消光体ポリマー単位は負に帯電した水溶性ポリマーとの錯体として固定化されていてもよい。
【0085】
他の実施形態において、1価またはポリピリジニウムボロン酸部分構造は、平衡が成立するために被分析物(例えば、グルコース)を十分に透過できる架橋された親水性ポリマーまたはヒドロゲルにおけるペンダント基または鎖単位でもよい。
【0086】
他の実施形態において、消光体は本明細書で記載される通りの結合体により第2の非水溶性ポリマーマトリクスに共有結合されていてもよい。実施形態によっては、消光体が1箇所または2箇所で非水溶性ポリマーマトリクスに結合されていてもよい。
【0087】
<被分析物センサー>
本発明の好ましい実施形態に従って使用される化学測定器システムは被分析物結合部分構造に動作可能にカップルされた蛍光色素体を含み、被分析物が結合することで蛍光色素体濃度における明らかな光学的変化(例えば、発光強度)が生じる。更に、蛍光色素体は異なる酸および塩基の形態を有し、レシオメトリックにpHを検知できるようにスペクトル特性において検出可能な差異を示すことが望ましい;例えば、同時係属の米国特許出願公開第11/671,880号公報を参照。例えば、グルコース結合部分構造、例えば、HPTS−トリCysMAなどの蛍光染料に動作可能にカップルされたP−1は蛍光染料の発光強度を消光するはずで、グルコースが結合すると消光の程度が減少し、グルコース濃度に関連して発光強度が増加する。P−1はピリジニウム1個につき少なくとも1個のボロン酸を有している一方で、他のピリジニウム消光体は複数のピリジニウム環を有していてもよく、それらの幾つかはボロン酸基で置換されていない。
【0088】
また、更なる好ましい実施形態において、測定器システムは、検知部分構造が互いに反応(消光)するために物理的に十分近くにとどまるように検知部分構造(例えば、染料−消光体)を固定化するための部材も含む。生体内検知が望まれる場合、そのような固定化部材は、好ましくは、水性環境(例えば、血管内)において不溶性であり、標的の被分析物を透過でき、検知部分構造を透過できない。典型的には、固定化部材は非水溶性の有機ポリマーマトリクスを含む。例えば、染料および消光体をDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリクス中に効率よく固定化でき、生体内でグルコースを検知できる。
【0089】
幾つかの例示的な蛍光色素体および固定化部材を下により詳細に述べる。実施形態によっては、有用な染料として、ピラニン誘導体(例えば、ヒドロキシピレントリスルホンアミド誘導体など)が挙げられる。他の実施形態では、染料はヒドロキシピレントリスルホン酸の重合体誘導体の1つでもよい。
【0090】
ある好ましい実施形態において、蛍光染料はHPTS−トリCys−MAでよい:
【0091】
【化44】

当然、実施形態によっては、HPTS核上のCys−MA以外の置換も、その置換が負に帯電しており重合性基を有している限り、本発明の態様と整合する。システインのLまたはD立体異性体のいずれかを使用できる。実施形態によっては、1個のみまたは2個のスルホン酸が置換されていてもよい。同様に、上で示されるHPTS−CysMAに対する変体において、NBuに加え他の対イオンも使用でき、正に帯電した金属が挙げられ、例えば、Naである。他の変体において、スルホン酸基は、例えば、リン酸、カルボン酸などの官能基で置き換えられていてもよい。
【0092】
実施形態によっては、移動流に関与せず生体外において使用するために、検知構成要素を個別の(別々の)部品として使用する。蛍光色素体および消光体を液体溶液中で共に混合し、被分析物を加え、蛍光強度の変化を測定し、部品を破棄する。検知構成要素を捕捉し浸出を防ぐために使用できる重合体マトリクスは存在する必要はない。場合によっては、検知構成要素を固定化し、移動流中で被分析物を測定するために検知構成要素を使用できる。
【0093】
<生体内用途>
生体内での用途のために、被分析物センサーを1種類以上のポリヒドロキシル有機化合物を含有する生理的流体の移動流中で使用するか、または、前記化合物を含有する筋肉などの組織中に埋め込む。従って、センサー組立品より検知部分構造が逃避しないことが好ましい。よって、生体内で使用するためには、検知構成要素が、好ましくは、有機ポリマー検知組立品の一部である。被分析物を通過させるが検知部分構造の通過は阻害する半透膜により、可溶性染料および消光体を閉じ込めることができる。これは、被分析物分子より実質的に大きい(被分析物の分子量の少なくとも2倍の分子量または1000より大きく、好ましくは5000より大きい)可溶性分子を検知部分構造として使用し;および、検知部分構造が定量的に保持されるように2つの間で特定の分子量分画を有する透析または限外濾過膜などの選択的半透膜を利用することで実現できる。
【0094】
好ましくは、検知部分構造を、グルコースを自由に透過する不溶性ポリマーマトリクス中に固定する。ポリマーマトリクスは、有機、無機またはそれらのポリマーの組み合わせを含む。マトリクスは、生体適合性材料から成っていてもよい。あるいは、マトリクスは、興味ある被分析物を透過する第2の生体適合性ポリマーで被覆されている。
【0095】
ポリマーマトリクスの機能は、同時に被分析物との接触を可能とし被分析物をボロン酸に結合しながら、蛍光色素体および消光体部分構造を共に保持し固定化することである。この効果を達成するためには、マトリクスは媒体中で不溶でなければならず、マトリクスおよび被分析物溶液間の高度な表面領域界面を確立することにより、それと密に会合している。例えば、超薄膜または微細孔支持マトリクスを使用する。あるいは、マトリクスは被分析物溶液において膨潤性であり、例えば、ヒドロゲルマトリクスを水性系用に使用する。幾つかの例において、検知ポリマーはライトコンジットの表面などの表面に結合されているか、または、微細孔膜中に含浸されている。全ての場合において、2相間で平衡を成立できるように結合部位への被分析物の輸送をマトリクスが妨げてはならない。超薄膜、微細孔ポリマー、微細孔ソフトゲルおよびヒドロゲルを調製する技術は当該技術で確立されている。全ての有用なマトリクスは被分析物透過性として定義される。
【0096】
実施形態によっては、ヒドロゲルポリマーを使用する。本明細書で使用される場合、ヒドロゲルとの用語は水中で実質的に膨潤するが溶解しないポリマーを言う。そのようなヒドロゲルは、直線状、分岐状または網状ポリマーでよく、または、高分子電解質複合体が可溶性または浸出性の画分を含まないとの条件で高分子電解質複合体でもよい。典型的には、ヒドロゲルのネットワークを、水溶性ポリマーが水性媒体中で膨潤するが溶解しないように水溶性ポリマー上で行う架橋工程によって調製する。あるいは、ヒドロゲルポリマーを親水性および架橋性モノマーの混合物を共重合することで調製し、水膨潤性の網状ポリマーを得る。そのようなポリマーを、付加または縮合重合、または組み合わせの工程のいずれかで形成する。これらの場合、ネットワークを形成するモノマーと組み合わせてモノマー性の誘導体を使用する共重合により、検知構造単位がポリマー中に組み込まれる。あるいは、後の反応での重合を利用して、反応性部分構造を既に調製されたマトリクスにカップルする。前記検知部分構造はポリマー鎖中の単位または鎖に結合しているペンダント基である。
【0097】
また、本発明において有用なヒドロゲルは、染料および消光体の両者が共有結合された単一のネットワークなどの単一体ポリマー、または複数の構成要素のヒドロゲルである。複数の構成要素のヒドロゲルとしては、相互貫入ネットワーク、高分子電解質錯体および水膨潤複合体を得るための2種類以上のポリマーの各種の他の混合物が挙げられ、ヒドロゲルマトリクス中の第2のポリマーの分散体および交互ミクロ層集合体が挙げられる。
【0098】
単一体ヒドロゲルは、典型的には、親水性モノマーの混合物をフリーラジカル共重合することで形成し、限定することなく、HEMA、PEGMA、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、スルホプロピルメタクリル酸ナトリウムなどが挙げられるイオン性モノマー;エチレンジメタクリレート、PEGDMA、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる架橋体などが挙げられる。当該技術においてよく確立されている原理を使用し、透過性、膨潤指数およびゲル強度が含まれるネットワーク特性を最適化するために、モノマーの比率を選択する。実施形態によっては、8−アセトキシピレン−1,3,6−N,N’,N”−トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)などの染料分子のエチレン的に不飽和な誘導体より染料部分構造を誘導し、ジハロゲン化4−N−(ベンジル−3−ボロン酸)−4’−N’−(ベンジル−4エテニル)−ジピリジニウム(m−SBBV)などのエチレン的に不飽和なビオロゲンより消光体部分構造を誘導し、HEMAおよびPEGDMAよりマトリクスを作製する。発光強度を最適化するために、染料の濃度を選択する。所望の測定可能な信号を生成し十分な消光を与えるために、染料に対する消光体の比を調節する。
【0099】
実施形態によっては、縮合重合により単一体ヒドロゲルを形成する。例えば、アセトキシピレントリススルホニルクロリドを過剰のPEGジアミンと反応させ、未反応のジアミン中に溶解するトリス−(アミノPEG)付加物を得る。過剰のトリメソイルクロリドおよび酸受容体の溶液をジハロゲン化4−N−(ベンジル−3−ボロン酸)−4’−N’−(2ヒドロキシエチル)ビピリジニウムと反応させ、ビオロゲンの酸塩化物官能性エステルを得る。例えば、一方の混合物の薄膜をキャストし、それを他方に浸漬することで、2つの反応性混合物を互いに接触させ、反応させ、ヒドロゲルを形成する。
【0100】
他の実施形態においては、染料が一方の構成要素に、および消光体がもう一方に組み込まれている複数の構成要素のヒドロゲルが本発明のセンサーを作製するために好ましい。更に、構成要素間の相互作用を増加し、他のポリヒドロキシ被分析物に対してグルコースの選択性を与えるために、これらの系は分子インプリントされていてもよい。好ましくは、多構成要素系は相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)または準相互貫入ポリマーネットワーク(準IPN)である。
【0101】
IPNポリマーは、典型的には、逐次重合で作製される。第1に、消光体を含むネットワークを形成する。次いで、染料モノマーを含有するモノマー混合物でネットワークを膨潤し、第2の重合を行い、IPNヒドロゲルを得る。
【0102】
染料部分構造を含有する可溶性ポリマーを消光体モノマーを含有するモノマー混合物中に溶解し、混合物を重合することで、準IPNヒドロゲルを形成する。実施形態によっては、ポリヒドロキシル化合物を自由に透過する不溶性のポリマーマトリクスで検知部分構造を固定化する。ヒドロゲル系に関する追加の詳細は米国特許出願公開第2004/0028612および2006/0083688号公報に開示されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
ポリマーマトリクスは、有機、無機またはそれらのポリマーの組み合わせを含む。マトリクスは、生体適合性材料から成っていてもよい。あるいは、マトリクスは、興味ある被分析物を透過する第2の生体適合性ポリマーで被覆されている。ポリマーマトリクスの機能は、同時に被分析物(例えば、ポリヒドロキシル化合物、HおよびOH)との接触を可能としポリヒドロキシル化合物をボロン酸に結合しながら、蛍光染料および消光体部分構造を共に保持し固定化することである。従って、マトリクスは媒体中で不溶であり、マトリクスおよび被分析物溶液間の高度な表面領域界面を確立することにより、それと密に会合している。また、2相間で平衡を成立できるように結合部位への被分析物の輸送をマトリクスは妨げない。ある実施形態においては、超薄膜または微細孔支持マトリクスを使用してもよい。もう一つの実施形態においては、被分析物溶液中で膨潤可能なマトリクス(例えば、ヒドロゲルマトリクス)を水性系用に使用できる。実施形態によっては、検知ポリマーはライトコンジットの表面などの表面に結合されているか、または、微細孔膜中に含浸されている。超薄膜、微細孔ポリマー、微細孔ソフトゲルおよびヒドロゲルを調製する技術は先行技術で確立されている。
【実施例】
【0104】
<例1>
【0105】
【化45】

<化合物27>水分を含まない1,4−ジオキサン(15mL)中の3,5−ジブロモピリジン(0.47g、2.0mmol)の溶液に、KPOの水溶液(2M、3mL)、続いて、PPh(0.21g、0.8mmol)およびPd(OAc)(0.05g、0.2mmol)を加えた。5分間撹拌後、[5−(メトキシカルボニル)ピリジン−3−イル]ボロン酸(0.9g、5mmol)を加え、アルゴン気流を穏やかおよび定常的に溶液を通して泡立てながら反応物を2時間還流した。室温まで冷却後、水(10mL)を加え、反応物をEtOAc(50mL)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(100%CHCl)で精製し、化合物27(0.3g、51%)を与えた。TLC:R=0.49(2%MeOH/CHCl)。H NMR(CDCl、500MHz)δ4.01(s、3H)、8.08(t、J=2.1Hz、1H)、8.49(t、J=2.1Hz、1H)、8.77(d、J=2.2Hz、1H)、8.80(d、J=2.0Hz、1H)、9.0(d、J=2.3Hz、1H)、9.28(d、J=2.0Hz、1H)。
【0106】
<化合物28>水分を含まない1,4−ジオキサン(5mL)中の化合物27(0.3g、1.0mmol)および3−ピリジンボロン酸(0.14g、1.1mmol)の懸濁液に、PPh(0.05g、0.2mmol)およびPd(OAc)(0.01g、0.05mmol)、続いて、KPOの水溶液(2M、1.1mL)を加えた。アルゴン気流を穏やかおよび定常的に溶液を通して泡立てながら、反応物を1.5時間還流した。室温まで冷却後、EtOAc(10mL)を加え、有機層を希NaHCO(5mL)、塩水(5mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜20%メタノール)で精製し、化合物28(0.24g、83%)を与えた。H NMR(CDCl、500 MHz)δ4.02(s、3H)、7.48(dd、J=8.1、4.5Hz、1H)、7.97(dt、J=7.9、1.9Hz、1H)、8.10(t、J=2.2Hz、1H)、8.57(t、J=2.1Hz、1H)、8.72(dd、J=4.8、4.2Hz、1H)、8.93(m、3H)、9.08(d、J=2.3Hz、1H)、9.30(d、J=1.9Hz、1H)。
【0107】
<化合物29>THF(15mL)、MeOH(10mL)および水(3mL)中の化合物28(0.24g、0.8mmol)の懸濁液に、LiOH(0.03g、1.4mmol)を加えた。15分間撹拌後、反応物は透明になった。反応物を18時間撹拌し、次いで、揮発物を蒸発させた。残った水性溶液をNaOH(1M、20mL)で希釈し、DCM(10mL)で洗浄し、KHSO(1M)でpHを4に調節して、生成物を沈殿させた。白色固体を濾過により回収し、水で洗浄し、真空下で乾燥した、29(0.21g、95%)。H NMR(DMSO−d6、500 MHz)δ7.56(ddd、J=7.9、4.8、0.8Hz、1H)、8.33(ddd、J=7.9、2.3、1.7Hz、1H)、8.59(t、J=2.2Hz、1H)、8.66(dd、J=4.8、1.6Hz、1H)、8.68(t、J=2.2Hz、1H)、9.04(dd、J=4.1、2.2Hz、2H)、9.12(m、2H)、9.26(d、J=2.3Hz、1H)。
【0108】
<化合物30>ジクロロメタン(50mL)中の化合物29(0.21g、0.76mmol)の冷却(0℃)された懸濁液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.17g、0.9mmol)、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール水和物(0.12g、0.9mmol)およびトリエチルアミン(0.15mL、1.1mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌後、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(0.16g、0.9mmol)およびトリエチルアミン(0.15mL、1.1mmol)を加えた。反応物を18時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO(3×25mL)で洗浄した。DCM層をMgSOで乾燥し、真空中において体積を減少させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜20%メタノール)で精製し、化合物30(0.19g、62%)を白色固体として与えた。TLC:Rf=0.50(トリエチルアミンで処理したプレート上で10%MeOH/DCM)。H NMR(CDCl、500MHz)δ1.84(p、J=6.0Hz、2H)、1.98(s、3H)、3.51(q、J=6.5Hz、2H)、3.55(q、J=6.1Hz、2H)、5.39(s、1H)、5.79(s、1H)、6.30(t、1H)、7.46(dd、J=7.9、4.9Hz、1H)、7.98(ddd、J=7.9、2.3、1.7Hz、1H)、8.06(t、1H)、8.18(t、J=2.2Hz、1H)、8.58(t、J=2.2Hz、1H)、8.71(dd、J=4.8、1.5Hz、1H)、8.92(d、J=2.1Hz、1H)、8.94(d、J=1.9Hz、1H)、8.98(d、J=2.2Hz、1H)、9.04(d、J=2.2Hz、1H)、9.22(d、J=2.1Hz、1H)。
【0109】
<化合物T−1>2−ブロモメチルフェニルボロン酸(0.6g、2.8mmol)を、DMF(3mL)およびエチレングリコール(0.16mL、2.8mmol)中の化合物30(0.19g、0.47mmol)の溶液に加えた。反応物を55℃で72時間撹拌した。ジエチルエーテル(20mL)を加え、生成物をオイルとして分離した。溶媒を静かに移し、残ったオイルが淡黄色の粉体となるまでオイルをアセトン中で超音波処理した。固体を遠心により回収し、アセトンで数回洗浄し、アルゴン下で乾燥した(0.29g、59%)。H NMR(D2O、500MHz)δ1.89(p、J=6.8Hz、2H)、2.22(s、3H)、3.36(t、J=6.8Hz、2H)、3.50(t、J=6.6Hz、2H)、5.40(s、1H)、5.65(s、1H)、6.10(s、2H)、6.16(s、2H)、6.17(s、2H)、7.60(m、9H)、7.80(m、3H)、8.26(dd、J=8.1、6.3Hz、1H)、8.93(d、J=8.5Hz、1H)、9.07(t、J=6.2Hz、1H)、9.25(m、2H)、9.28(t、J=1.6Hz、1H)、9.32(d、J=5.3Hz、2H)、9.39(s、1H)、9.46(s、1H)。
【0110】
【化46】

<例2>
【0111】
【化47】

<化合物19>水分を含まない1,4−ジオキサン(40mL)中の3,5−ジブロモピリジン(2.1g、9.0mmol)および3−ピリジンボロン酸(1.1g、9.0mmol)の懸濁液に、KPOの水溶液(2M、9mL)、続いて、PPh(0.5g、2.0mmol)およびPd(OAc)(0.11g、0.5mmol)を加えた。アルゴン気流を穏やかおよび定常的に溶液を通して泡立てながら、反応物を2時間還流した。室温まで冷却後、水性層をEtOAc(1×100mL)で抽出した。有機層を希NaHCO(3×50mL)および塩水(1×50mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜20%メタノール)で精製し、化合物19(1.3g、61%)を与えた。TLC:R=0.63(10%MeOH/DCM)。H NMR(CDOD、500MHz)δ7.59(ddd、J=8.0、4.9、0.8Hz、1H)、8.18(ddd、J=8.0、2.3、1.6Hz、1H)、8.38(t、J=2.1Hz、1H)、8.63(dd、J=4.9、1.5Hz、1H)、8.72(d、J=2.2Hz、1H)、8.85(d、J=2.0Hz、1H)、8.88(dd、J=2.4、0.7Hz、1H)。
【0112】
<化合物20>温度計を備える三口丸底フラスコに、化合物19(1.2g、5.1mmol)、トルエン(8mL)、THF(3mL)およびホウ酸トリイソプロピル(1.4mL、6.0mmol)を充填した。−40℃(ドライアイス/アセトン)まで冷却後、30分の過程にわたってn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、3.75mL)をゆっくりと加えた。次いで、反応物を放置して−20℃まで温め、HCl(2M、5mL)を加えた。反応物が室温まで達した時点で、水性層を除去し、NaOH(3M、2mL)でpHを7.6に調節し、NaClで飽和させ、THF(3×6mL)で抽出した。THF層を合わせて、MgSOで乾燥し、蒸発させてオイルとし、CHCN(40mL)で希釈し、70℃で30分間加熱した。4℃において72時間で溶液を結晶化させた。黄色の固体を濾過し、氷冷されたCHCNで洗浄し、空気乾燥した(0.38g、37%)。H NMR(CDOD、500MHz)δ7.61(dd、J=7.7、4.9Hz、1H)、8.21(dt、J=8.0、1.9Hz、1H)、8.60(s、1H)、8.65(dd、J=4.9、1.4Hz、1H)、8.72(s、1H)、8.89(d、J=2.2Hz、1H)、8.91(d、J=1.9Hz、1H)。
【0113】
<化合物31を経由して化合物29>水分を含まない1,4−ジオキサン(20mL)中の化合物20(0.37g、1.85mmol)およびエチル−5−ブロモニコチネート(0.39g、1.68mmol)の懸濁液に、PPh(0.1g、0.37mmol)およびPd(OAc)(0.02g、0.09mmol)、続いて、KPOの水溶液(2M、1.65mL)を加えた。アルゴン気流を穏やかおよび定常的に溶液を通して泡立てながら、反応物を1.5時間還流した。室温まで冷却後、EtOAc(10mL)を加え、有機層を水(10mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空中で蒸発させ、粗物31を黄色の固体として得た。メタノール(20mL)および水(5mL)中のこの固体の懸濁液に、LiOH(0.12g、5.1mmol)を加え、反応物を4時間撹拌した。真空中でメタノールを除去後、更に水(10mL)を加え、塩基性水溶液をEtOAc(3×5mL)で洗浄し、次いで、KHSO(1M)でpHを約4に調節し、結果として沈殿を生じた。白色沈殿を濾過により回収し、アセトンおよびヘキサンで洗浄し、乾燥して、化合物29(0.31g、67%)を与えた。H NMR(DMSO−d、500MHz)δ7.56(ddd、J=7.9、4.8、0.8Hz、1H)、8.33(ddd、J=7.9、2.3、1.7Hz、1H)、8.59(t、J=2.2Hz、1H)、8.66(dd、J=4.8、1.6Hz、1H)、8.68(t、J=2.2Hz、1H)、9.04(dd、J=4.1、2.2Hz、2H)、9.12(m、2H)、9.26(d、J=2.3Hz、1H)。
【0114】
<化合物32>ジクロロメタン(15mL)中の化合物29(0.3g、1.0mmol)の冷却(0℃)された懸濁液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.23g、1.2mmol)、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール水和物(0.16g、1.2mmol)およびトリエチルアミン(0.28mL、2.0mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌後、化合物10(0.14g、0.4mmol)を加えた。反応物を24時間撹拌した。白色の沈殿が形成された。飽和NaHCO(50mL)を添加後、両層に著しい量の固体が残存した。固体を濾過し、DCM、NaHCO、ヘキサンで洗浄し、乾燥して化合物32(0.19g、61%)を与えた。H NMR(CDOD、500MHz)δ1.60(m、2H)、1.73(m、4H)、1.86(s、3H)、1.96(m、2H)、3.23(m、4H)、3.49(m、2H)、4.58(dd、J=9.2、5.1Hz、2H)、5.29(s、1H)、5.63(s、1H)、7.60(dd、J=7.6、5.0Hz、2H)、8.26(m、2H)、8.46(s、1H)、8.49(s、1H)、8.53(s、1H)、8.63(d、J=4.6Hz、2H)、8.72(s、1H)、8.93(m、7H)、9.05(s、3H)。
【0115】
<化合物T−2>2−ブロモメチルフェニルボロン酸(0.47g、2.2mmol)を、DMF(4mL)およびエチレングリコール(0.12mL、2.2mmol)中の化合物32(0.19g、0.24mmol)の溶液に加えた。反応物を55℃で72時間撹拌した。アセトン(40mL)を加え、結果として生じた沈殿を、細かいピンク色の粉体が得られるまで超音波処理した。固体を遠心により回収し、アセトンで数回洗浄し、アルゴン下で乾燥した(0.30g、60%)。H NMR (DO、500MHz)δ1.53(m、2H)、1.70(m、4H)、1.78(s、3H)、1.95(m、2H)、3.20(m、4H)、3.47(m、2H)、4.46(t、1H)、5.30(s、1H)、5.53(s、1H)、6.09(s、4H)、6.14(s、4H)、6.16(s、4H)、7.56(m、18H)、7.77(m、6H)、8.25(t、2H)、8.91(d、J=7.9、2H)、9.10(d、2H)、9.26(m、6H)、9.33(m、4H)、9.38(m、2H)、9.46(s、1H)、9.50(s、1H)。
【0116】
【化48】

<例3>
【0117】
【化49】

<化合物33>ジクロロメタン(80mL)中のイソニコチン酸(0.57g、4.7mmol)の冷却(0℃)された懸濁液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.1g、5.6mmol)、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール水和物(0.76g、5.6mmol)およびトリエチルアミン(0.8mL、5.6mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌後、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(1.0g、5.6mmol)およびトリエチルアミン(0.8mL、5.6mmol)を加えた。反応物を2時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO(3×25mL)で洗浄した。DCM層をMgSOで乾燥し、真空中において体積を減少させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜10%メタノール)で精製し、化合物33(0.37g、32%)を白色固体として与えた。H NMR(CDCl、500MHz)δ1.77(m、2H)、2.01(s、3H)、3.47(q、J=6.5Hz、2H)、3.50(q、J=6.1Hz、2H)、5.40(s、1H)、5.80(s、1H)、6.36(t、1H)、7.76(d、J=6.1Hz、2H)、7.90(t、1H)、8.76(d、J=6.1Hz、1H)。
【0118】
<化合物P−1>2−ブロモメチルフェニルボロン酸(0.45g、2.1mmol)を、アセトニトリル(75mL)中の化合物33(0.19g、0.24mmol)の溶液に加えた。反応物を50℃で16時間撹拌した。反応物を、残りが約5mLとなるまで真空中で濃縮した。エーテル(20mL)を加え、沈殿を超音波処理し、遠心により回収した。過剰の出発材料を除去するために、白色沈殿をDCM中で1時間、超音波処理した。DCMをオイルより静かに移し、次いで、白色の粉体が得られるまで、オイルをエーテル中で超音波処理した。固体を遠心により回収し、エーテルで数回洗浄し、アルゴン下で乾燥した(0.23g、36%)。H NMR(DO、500MHz)δ1.87(m、2H)、1.89(s、3H)、3.34(t、J=6.7Hz、2H)、3.48(t、J=6.7Hz、2H)、5.40(s、1H)、5.65(s、1H)、6.03(s、2H)、7.55(m、3H)、7.76(d、J=7.1Hz、1H)、8.25(d、J=6.3Hz、2H)、8.96(d、J=6.5Hz、1H)。
【0119】
<例4>
【0120】
【化50】

<化合物10>ジクロロメタン(200mL)中のN,N−ジ−boc−リジン(ジシクロヘキシルアンモニウム)塩(4.2g、8.0mmol)の冷却(0℃)された溶液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.8g、9.6mmol)、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール水和物(1.3g、9.6mmol)およびトリエチルアミン(1.3mL、9.6mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌後、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(1.7g、9.6mmol)およびトリエチルアミン(1.3mL、9.6mmol)を加えた。反応物を8時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO(3×75mL)で洗浄した。DCM層をMgSOで乾燥し、真空中において体積を減少させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜20%メタノール)で精製し、化合物6を与えた。TLC:R=0.71(10%MeOH/DCM)。適当な画分を貯めて、約5mLに濃縮し(重合を避けるため乾燥させない)、次いで、1.25MのメタノールHCl(30mL)を加え、反応物を48時間撹拌し、真空中で濃縮して、10を白色の発泡体として与えた(2.1g、78%)。H NMR(DO、500MHz)δ1.44(p、J=8.3Hz、2H)、1.71(p、J=7.8Hz、2H)、1.78(p、J=6.9Hz、2H)、1.90(m、2H)、1.92(s、3H)、3.00(t、J=7.7Hz、2H)、3.29(m、4H)、3.95(t、J=6.7Hz、1H)、5.44(s、1H)、5.67(s、1H)。
【0121】
<化合物34>
化合物10(0.4g、1.2mmol)をジクロロメタン(50mL)およびトリエチルアミン(0.9mL、6.4mmol)の溶液中に懸濁し、0℃に冷却した。次いで、イソニコチン酸(0.4g、3.2mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.73g、3.8mmol)、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール水和物(0.51g、3.8mmol)およびトリエチルアミン(0.9mL、6.4mmol)を加えた。0℃で1時間撹拌後、固体が溶解するのを助けるため反応物を3時間、超音波処理した。飽和NaHCO(3×75mL)で洗浄後、DCM層をMgSOで乾燥し、真空中において体積を減少させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中2%〜20%メタノール、1%トリエチルアミンで事前処理したシリカゲル)で精製し、化合物34(19mg、3%)を与えた。TLC:R=0.59(15%MeOH/DCM、トリエチルアミンで事前処理したプレート)。
【0122】
<化合物P−2>2−ブロモメチルフェニルボロン酸(0.02g、0.1mmol)を、DMF(1mL)中の化合物34(18.7mg、40μmol)の溶液に加えた。反応物を55℃で72時間撹拌した。ジエチルエーテル(20mL)を加え、生成物をオイルとして分離した。溶媒を静かに移し、残ったオイルがベージュ色の粉体となるまでオイルをエーテル中で超音波処理した。固体を遠心により回収し、エーテルで数回洗浄し、アルゴン下で乾燥した(35mg、96%)。H NMR(DO、500MHz)δ1.46(m、2H)、1.69(m、4H)、1.86(s、3H)、1.90(m、2H)、3.22(m、4H)、3.44(t、J=6.8Hz、2H)、4.42(t、J=7.4Hz、1H)、5.38(s、1H)、5.61(s、1H)、6.02(s、2H)、6.03(s、2H)、7.56(m、6H)、7.76(d、J=7.6Hz、2H)、8.23(d、J=6.7Hz、2H)、8.28(d、J=6.7Hz、2H)、8.97(m、4H)。
【0123】
<例5>
【0124】
【化51】

<例6>
【0125】
【化52】

<例7>
<センサーの調製および試験>
消光体であるP−1を、N,N’−ジメチルアクリルアミド(100mg)およびN,N’−メチレンビスメタクリルアミド(2mg)を含有する保存液の41.4μL中に溶解した。次いで、この消光体溶液(20.7μL)を、HPTS−トリCys−MA(50μLの2mM水溶液)、HCl(20μLの100mM溶液)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(10μLの40mg/mL溶液)およびDI水(99.3μL)を含有する溶液に加えた。次いで、37℃で24時間加熱してヒドロゲルを形成することで、光ファイバーセンサーのチップ上でこの溶液の幾つかを重合した。
【0126】
センサーを、0mg/dL〜400mg/dLの範囲の異なるグルコース濃度を含有する溶液中に配置し、センサーを試験した。光ファイバーのチップにおけるヒドロゲル指示化学物質は470nmの波長における光で励起された。蛍光発光を520〜700nmの間で測定した。結果を図1に図解する。
【0127】
明瞭性および理解の目的のために、かなり詳しく本発明を記載したが、本発明の真の範囲より逸脱することなく、形態および詳細を種々に変えることができると当業者には分かるであろう。上で参照される全ての図、表および付属書ならびに特許、出願および公開が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物。
【化1】

【請求項2】
下の工程を含む請求項1の化合物を製造する方法。
【化2】

【請求項3】
下記化合物。
【化3】

【請求項4】
下の工程を含む請求項3の化合物を製造する方法。
【化4】

【請求項5】
下記反応性化合物。
【化5】

(式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンを含む2価の結合基であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−およびアミン−NR−から成る群より選択される1個以上の2価の連結基でもよく、ただし、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義され;および
Zは反応性でエチレン的に不飽和の基、または、ポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基のいずれかである。)
【請求項6】
Zが、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−およびスチリル−から成る群より選択され、反応性でエチレン的に不飽和の基である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Zが、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHから成る群より選択され、ポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基である請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
Zが
【化6】

(式中、RはHまたはCHである。)
である請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
下記非反応性化合物。
【化7】

(式中、
Xは−O−または−NH−であり;および
R’はアルキルであり、炭素鎖中に−O−単位を含んでいてもよく、末端が−OHまたは−OCHでもよい。)
【請求項10】
下記化合物。
【化8】

【請求項11】
下の工程を含む請求項10の化合物を製造する方法。
【化9】

【請求項12】
下記化合物。
【化10】

(式中、
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−およびスチリル−から成る群より選択され、反応性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、式中、Zはポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基であり;
Yは、
【化11】

(式中、RはHまたは低級アルキルである。)
および
【化12】

から選択される3価の連結基であり;
およびXは−O−または−NH−であり;および
、LおよびLは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択され、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよい。)
【請求項13】
Zが、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−およびスチリル−から成る群より選択され、重合性でエチレン的に不飽和の基である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Zが、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHから成る群より選択され、ポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基である請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
下記化合物。
【化13】

(式中、nは1〜10の整数である。)
【請求項16】
下の工程を含む請求項15の化合物を製造する方法。
【化14】

【請求項17】
下記化合物。
【化15】

(式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合または1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンより選択される2価の結合であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せより選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zはカップリング基またはオレフィン的に不飽和の基より選択される反応性基であるか、または、Zは、
【化16】

(式中、RはHまたはCHである)
であり;
中心のベンゼン環からの結合は、隣接するピリジニウム環上のオルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。)
【請求項18】
下記化合物。
【化17】

【請求項19】
下の工程を含む請求項15の化合物を製造する方法。
【化18】

【請求項20】
下記化合物。
【化19】

(式中、
は対イオンであり;
は−O−または−NH−であり;
は−O−または−NH−であり;
Lは直接結合および1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレンから成る群より選択される2価の結合体であり、末端または途中がスルホンアミド(−SONH−)、アミド−(C=O)N−、エステル−(C=O)−O−、エーテル−O−、スルフィド−S−、スルホン(−SO−)、フェニレン−C−、ウレタン−NH(C=O)−O−、ウレア−NH(C=O)NH−、チオウレア−NH(C=S)−NH−、アミド−(C=O)NH−、アミン−NR−(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルと定義される)またはそれらの組合せから成る群より選択される1個以上の2価の連結基でもよく;
Zは、メタクリルアミド−、アクリルアミド−、メタクリロイル−、アクリロイル−またはスチリル−から成る群より選択され、重合性でエチレン的に不飽和の基であるか、または、Zはポリマーまたはマトリクスと共有結合を形成できる反応性官能基でもよいかのいずれかであり、
曖昧に表現されている結合は、オルト、メタまたはパラ位であり;および
−B(OH)は、オルト、メタまたはパラ位でよい。)
【請求項21】
Zが
【化20】

(式中、RはHまたはCHである。)
である請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Zが、−Br、−OH、−SH、−COHおよび−NHから成る群より選択される請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
下記化合物。
【化21】

【請求項24】
下の工程を含む請求項23の化合物を製造する方法。
【化22】

【請求項25】
HEMA、PEGMA、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミドおよびスルホプロピルメタクリル酸ナトリウムから成る群より選択される消光モノマーと;エチレンジメタクリレート、PEGDMA、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレン−ビス−アクリルアミドおよびメチレン−ビス−メタクリルアミドから成る群より選択される架橋体とを含むポリマー。
【請求項26】
第1の波長において光を吸収し、第2の波長において光を発するように構成された蛍光色素体と;および
被分析物濃度に関する量によって該蛍光色素体により発せられた該光を変更するように構成された消光体で、ただし、該消光体はボロン酸−置換ピリジニウムを含むと
を具備する被分析物センサー。
【請求項27】
前記消光体が1価のボロン酸−置換ピリジニウム基を含む請求項26に記載の被分析物センサー。
【請求項28】
前記消光体がボロン酸−置換ポリピリジニウムを含み、ただし、前記ポリピリジニウムは3個以上のピリジニウム基を含む請求項26に記載の被分析物センサー。
【請求項29】
請求項1、3、5〜10、12〜15、17、18および20〜23のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物と、蛍光染料とを含むグルコースセンサー。
【請求項30】
前記任意の1種類以上の化合物がポリマーの形態である請求項29に記載のグルコースセンサー。
【請求項31】
グルコース透過性の固定化部材、例えば、ポリマーマトリクスまたは半透膜を更に含む請求項29に記載のグルコースセンサー。

【図1】
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【公表番号】特表2010−526094(P2010−526094A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506658(P2010−506658)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/062303
【国際公開番号】WO2008/137604
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509301633)グルメトリクス、 インク. (7)
【Fターム(参考)】