説明

被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム

【課題】解析処理を単純化することにより、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道を効率よくシミュレーションする。
【解決手段】フロアパネル40の数値計算モデルを最低要素および隣接要素の二次元の要素に分割し、最低要素の重力方向Gにおける最高位置にある基準節点と複数の隣接要素の重力方向Gにおける最高位置にある各節点とを結ぶ線分の各勾配を比較し、急勾配の線分を形成する節点に向けて次々と空気(AIR)が流れることをシミュレーションして、その結果としての空気軌道をディスプレイに表示するようにした。したがって、解析処理にかかる初期状態から収束状態に至るまでの計算時間を短縮することができ、ひいては車体パネルの開発時間を短縮して、その製造コストを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品としての半導体や車両の車体ボディ等の被浸漬処理物は、金属溶液や電着溶液等で満たされた処理槽に浸漬することにより、その表面にめっき処理や塗装処理を施すようにしている。このような表面処理方法によれば、被浸漬処理物の表面に形成されるめっき層厚さや塗膜厚さを略均一にしたり、被浸漬処理物の溶接箇所にも同様の表面処理を施したりすることができる等の利点がある。この反面、複雑な形状の被浸漬処理物には、例えば、車体ボディであればフード内面,ルーフ内面およびフロア下面等に複数の凹部が形成されるため、この凹部がエアポケットと呼ばれる空気溜まりとなり、この空気溜まりの空気が残留した状態のもとでは、当該部分に表面処理を施すことができないといった欠点がある。
【0003】
そこで、被浸漬処理物に空気溜まりが発生しないように、空気を大気中に排出するための排出経路を被浸漬処理物に予め形成しておき、この排出経路を介して空気を大気中に排出させ、被浸漬処理物の表面全域に表面処理を施せるようにすること等が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−045037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道は、自由表面を用いた周知の解析手法によりシミュレーションすることが可能である。しかしながら、従来は、このような解析を行うにあたり、解析対象としての被浸漬処理物を三次元の要素に分割して解析するので、被浸漬処理物の形状が、例えば、車体ボディのように複雑な形状である場合には解析処理が複雑とならざるを得ず、空気溜まりの空気が抜ける軌道のシミュレーションを行うのに時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、解析処理を単純化することにより、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道を効率よくシミュレーションすることができる被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法は、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法であって、複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、前記最低要素における最高位置にある節点を基準節点に設定する基準節点設定ステップと、前記基準節点を含み前記最低要素に隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、前記基準節点と前記各隣接要素における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の節点を記憶する節点記憶ステップと、前記節点記憶ステップで記憶した節点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準節点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の節点と新たな基準節点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記節点記憶ステップで記憶した節点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法は、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法であって、複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、前記最低要素の重心点を基準重心点に設定する基準重心点設定ステップと、前記最低要素における最高位置にある節点を含み隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、前記基準重心点と前記各隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の重心点を記憶する重心点記憶ステップと、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準重心点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の重心点と新たな基準重心点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法は、前記被浸漬処理物が車体ボディであることを特徴とする。
【0009】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、前記最低要素における最高位置にある節点を基準節点に設定する基準節点設定ステップと、前記基準節点を含み前記最低要素に隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、前記基準節点と前記各隣接要素における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の節点を記憶する節点記憶ステップと、前記節点記憶ステップで記憶した節点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準節点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の節点と新たな基準節点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記節点記憶ステップで記憶した節点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、前記最低要素の重心点を基準重心点に設定する基準重心点設定ステップと、前記最低要素における最高位置にある節点を含み隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、前記基準重心点と前記各隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の重心点を記憶する重心点記憶ステップと、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準重心点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の重心点と新たな基準重心点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記被浸漬処理物が車体ボディであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法によれば、被浸漬処理物の数値計算モデルを最低要素および隣接要素の二次元の要素に分割するとともに、最低要素の重力方向における最高位置にある基準節点と複数の隣接要素の重力方向における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の各勾配を比較し、最も急勾配となる線分を形成する節点に向けて次々と空気の軌道が形成されることをシミュレーションして、その結果となる空気軌道を外部に表示することができる。
【0013】
したがって、三次元の要素に分割して解析処理する場合に比して、解析処理にかかる初期状態から収束状態に至るまでの計算時間を短縮することができ、ひいては被浸漬処理物の開発時間を短縮して、その製造コストを抑制することができる。
【0014】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法によれば、上記最低要素の基準節点と複数の隣接要素の各節点とを結ぶ線分の各勾配を比較してシミュレーションすることに代えて、最低要素の基準重心点と複数の隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の各勾配を比較してシミュレーションすることにより、最も急勾配となる線分を形成する重心点に向けて次々と空気の軌道が形成されることをシミュレーションして、その結果となる空気軌道を外部に表示することができる。
【0015】
本発明の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディにおける空気軌道をシミュレーションすることができる。例えば、予測した空気軌道の終点を空気溜りと判定して当該部分に外部に空気を逃がす逃がし穴を成形しておくことができ、この逃がし穴の個数等を最適化することで剛性を確保しつつ軽量化が図れる車体ボディを効率良く設計することができる。
【0016】
上記本発明における各シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、コンピュータに、被浸漬処理物の数値計算モデルを最低要素および隣接要素の二次元の要素に分割させるとともに、最低要素の重力方向における最高位置にある基準節点と複数の隣接要素の重力方向における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の各勾配、または、最低要素の基準重心点と複数の隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の各勾配を比較させ、最も急勾配となる線分を形成する節点または重心点に向けて次々と空気の軌道が形成されることをシミュレーションさせて、その結果となる空気軌道を外部に表示させることができる。
【0017】
したがって、三次元の要素に分割させて解析処理する場合に比して、解析処理にかかる初期状態から収束状態に至るまでの計算時間を短縮することができ、ひいては被浸漬処理物の開発時間を短縮して、その製造コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行する流体解析装置を示すブロック図を、図2は車体ボディの塗装ラインを説明する説明図を、図3は車体ボディのフロアパネルの数値計算モデルを示す斜視図を、図4は第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法の動作を説明するフローチャートを、図5(a),(b),(c)は分割した二次元の要素の一部を抜き出して示す模式図をそれぞれ表している。
【0019】
図1に示すように、本発明に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行する流体解析装置10は、被浸漬処理物(図示せず)の解析条件等を入力するキーボード11と、解析処理結果等を表示するディスプレイ12と、被浸漬処理物の各種データ等を保存するHDD(ハードディスクドライブ)13と、FD(フレキシブルディスク)に解析処理結果等を保存したりするFDD(フレキシブルディスクドライブ)14とを有している。
【0020】
この流体解析装置10には、さらに、CPU15,ROM16およびRAM17からなる制御部18と、キーボード11のキーボードコントローラ19と、ディスプレイ12のディスプレイコントローラ20と、HDD13およびFDD14のディスクコントローラ21と、流体解析装置10をネットワーク22と接続するためのネットワークインターフェースコントローラ23とが設けられており、これらは相互にシステムバス24を介して通信可能となっている。
【0021】
制御部18を構成するCPU15は、ROM16やHDD13に保存されたソフトウェア、または、FDD14から供給されるソフトウェアを実行することにより、システムバス24に接続された種々の構成部材を総括的に制御するようになっている。すなわち、CPU15は、所定の処理シーケンスに従ってROM16やHDD13、あるいはFDD14からソフトウェアを読み出して、そのプログラムを実行することにより、図4に示す動作を実現する制御を行うようになっている。
【0022】
CPU15は、解析対象となる被浸漬処理物の各種データをHDD13から読み出して、この読み出した各種データから複数の要素に分割された二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。また、CPU15は、構築した数値計算モデルに基づいて、図4に示す動作を実現するために必要な最低要素,隣接要素および節点の設定や、最終的に空気軌道を決定する勾配の計算等を行うようになっている。
【0023】
制御部18を構成するRAM17は、CPU15のメインメモリあるいはワークエリア等として機能するものである。キーボードコントローラ19は、キーボード11や図示しないポインティングデバイス等の入力手段からの入力信号を制御し、ディスプレイコントローラ20は、ディスプレイ12の表示を制御するようになっている。ディスクコントローラ21は、ブートプログラム,種々のアプリケーション,編集ファイル,ユーザファイルおよびネットワーク管理プログラム等を保存または読み出すHDD13やFDD14とのアクセスを制御するようになっている。ネットワークインターフェースコントローラ23は、ネットワーク22上の他のデバイス(図示せず)と双方向にデータを送受信するようになっている。
【0024】
第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法は、乗用車等の車体ボディの電着塗装時に、車体ボディに発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションするものである。まず、車体ボディの塗装ラインについて図2を参照して説明する。
【0025】
図2に示すように、被浸漬処理物としての車体ボディ30は、フロアパネル,サイドパネルおよびルーフパネル等よりなる複数の車体パネル(図示せず)をスポット溶接等により接合することで形成されている。この車体ボディ30は、搬送装置31のハンガ32に吊り下げられた状態で塗装ライン33上を略水平方向に搬送されるようになっている。
【0026】
搬送装置31の塗装ライン33の前段には、前処理ライン(図示せず)が設けられており、この前処理ラインでは、車体ボディ30に対して電着塗装の前処理として、湯洗,脱脂,水洗,表面調整,皮膜化成,水洗,乾燥の処理をこの順番で連続して施すようにしている。この前処理ラインにおける処理を終えた後、車体ボディ30は、塗装ライン33に移行して電着槽(処理槽)34に向かって下降し、電着溶液35に完全に浸漬された状態で略水平方向に移動するようになっている。この状態のもとで、車体ボディ30と電着槽34内の電極(図示せず)に所定の大きさの電圧を加えることにより、車体ボディ30の表面に所定の膜厚の塗膜を析出させることができる。その後、搬送装置31により車体ボディ30を電着槽34から引き上げるとともに、車体ボディ30に電着せずに付着している余剰の電着溶液35を、水洗等により除去するようになっている。
【0027】
次に、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法について詳細に説明する。なお、第1実施の形態においては、解析手法として有限要素法を用いるとともに、車体ボディ30を構成するフロアパネルを解析対象として解析を行っている。
【0028】
図3に示すものは、車体ボディ30におけるフロアパネル40の数値計算モデルを表しており、流体解析装置10の制御部18は、図3のフロアパネル40の表面を複数の要素41(図3の破線円内にその一部を示す)に分割して種々の数値計算を行うための二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。ただし、二次元の数値計算モデルを構築するにあたり、例えば、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等で用いられる二次元の数値計算モデルを流用することができる。
【0029】
制御部18は、フロアパネル40のほか、サイドパネルやルーフパネル等の複数の車体パネルにおける二次元の数値計算モデルを構築するようになっており、この構築された数値計算モデルに基づく全ての要素の属性を空気(AIR)に設定するようになっている。このように全ての要素の属性を空気に設定することにより、車体ボディ30が電着槽34に投入される前の各種パネルの周辺が空気で満たされた状態を模擬的に作り出している。
【0030】
図4のフローチャートに示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するプログラムが実行される(ステップS1)。次に、操作者により解析対象となる部品番号、例えば、フロアパネル40を解析対象とすべくこれに対応する部品番号(No_i)を、キーボード11を介して入力する(ステップS2)。
【0031】
ステップS3においては、フロアパネル40の電着槽34への投入角度等を考慮して空気の流れを正確にシミュレーションするために、重力方向G(例えば、投入角度右方斜め下45°等)をキーボード11から入力する。すると、フロアパネル40の二次元の数値計算モデルに重力方向Gが付加されて、HDD13等からRAM17に読み込まれる(ステップS4)。
【0032】
ステップS5では、フロアパネル40の全ての要素41の中から、重力方向Gに対して最低位置にある最低要素(Elem_j)を設定する。ここで、複数の要素41は、図5(a)に示すように四角形の平面によって形成されており、各要素41の角には4つの節点が設けられている。これらの各節点は、XYZ軸方向の座標データを備えており、この座標データによって所定の基準位置からそれぞれの節点がどの位置にあるのかを判断するようになっている。
【0033】
最低要素(Elem_j)を設定、つまり、図5(a)に示すようにNo.(14)の最低要素(クロスハッチング部分のElem14)を設定した後、当該最低要素(Elem14)を空気軌道の出発地点としてRAM17に格納する。このように、最低要素(Elem14)を設定するステップS5の処理が、本発明における最低要素設定ステップを構成している。
【0034】
ステップS6では、ステップS5でRAM17に格納された最低要素(Elem14)の節点、つまり、No.(42),(7),(41)および(38)の4つの節点の中から、Z座標データに基づいて重力方向Gに対する最高位置にある最高節点(Node_j_h)を設定する。ここで、最高節点(Node_j_h)は、図5(a)に示すようにNo.(38)の節点(Node38)となり、この最高節点(Node38)が、空気が向かう方向となる基準節点と判断されてRAM17に格納される。このように、プログラムの実行直後に設定された最低要素(Elem14)の最高節点(Node38)を基準節点に設定するステップS6の処理が、本発明における基準節点設定ステップを構成している。
【0035】
ステップS7では、ステップS5で設定された最低要素(Elem14)に隣接する複数の隣接要素(Elem_k)を設定し、その隣接要素(Elem_k)の数を抽出する。ここで、複数の隣接要素(Elem_k)は、基準節点(Node38)を含むものであり、この場合、図5(a)のハッチング部分に示すようにNo.(10),(12)および(15)の3つの要素を隣接要素(Elem_k)に設定するとともに、その数「3」を抽出する。このように、基準節点(Node38)を含む隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)を設定し、その数「3」を抽出するステップS7の処理が、本発明における隣接要素設定ステップを構成している。
【0036】
ステップS8では、ステップS7で抽出した隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)を、この順番で解析処理するために「K=1」としてカウントし、解析対象を隣接要素(Elem12)に設定する。その後、設定された隣接要素(Elem_1)、つまり、隣接要素(Elem12)の重力方向Gに対する最高節点(Node_1_h)をZ座標データに基づき設定する(ステップS9)。ここでは、図5(a)に示すNo.(39)の節点が最高節点(Node_1_h)として設定される。
【0037】
ステップS10では、ステップS6で設定した最高節点(Node_j_h)となる基準節点(Node38)と、ステップS9で設定した最高節点(Node_1_h)となる最高節点(Node39)とを結ぶ線分の勾配(Tan_1_j)を所定の演算式により導出する。ここで、基準節点(Node38)と最高節点(Node39)とを結ぶ線分の勾配、つまり、隣接要素(Elem12)の勾配(Tan12)は、基準節点(Node38)と最高節点(Node39)との座標データに基づいて下記式(1)に従って導出される。このように、勾配(Tan_1_j)を導出するステップS10の処理が、本発明における勾配導出ステップを構成している。
【0038】
【数1】

【0039】
式(1)により導出された勾配(Tan12)は0.2052となり、この勾配(Tan12)の数値データを、現時点における最も急勾配の数値データ(Tan_max)とするともに、勾配(Tan12)を形成する最高節点(Node39)を最高節点(Node_max)としてRAM17にそれぞれ一時的に格納する(ステップS11)。
【0040】
次にステップS12へ進み、このステップS12では、ステップS7で抽出した隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)のうち、次の順番の隣接要素(Elem10)の解析処理を行うために、「K=k+1」としてカウントして隣接要素(Elem10)に設定する。その後、設定された隣接要素(Elem_2)、つまり、隣接要素(Elem10)の重力方向Gに対する最高節点(Node_2_h)を設定する(ステップS13)。ここでは、No.(58)の節点が最高節点(Node_2_h)として設定される。
【0041】
ステップS14では、ステップS6で設定した基準節点(Node38)と、ステップS13で設定した最高節点(Node_2_h)となる最高節点(Node58)とを結ぶ線分の勾配(Tan_2_j)を、上記式(1)により同様に導出する。このように、勾配(Tan_2_j)を導出するステップS14の処理においても、本発明における勾配導出ステップを構成している。
【0042】
勾配(Tan_2_j)としての勾配(Tan10)は0.1194となり、続くステップS15では、勾配(Tan10)の数値データを、ステップS11でRAM17に格納した勾配(Tan12)の数値データと比較する。ステップS15における数値データの比較結果が、(Tan_2_j)が(Tan_max)以上であればyesとしてステップS16へ進み、(Tan_2_j)が(Tan_max)以下であればnoとしてステップS17へ進む。ステップS16では、勾配(Tan_2_j)を最も急勾配であるとして、RAM17に格納された勾配(Tan_1_j)の数値データ(Tan_max)を、勾配(Tan_2_j)の数値データに書き換えるとともに、勾配(Tan_2_j)を形成する最高節点(Node_2_h)を最高節点(Node_max)とする。なお、本実施の形態においては、(Tan_2_j)≦(Tan_max)であるためステップS17へ進む。
【0043】
ステップS17では、ステップS7で抽出した隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)の全てについて解析処理したか否か、つまり、解析処理した隣接要素(Elem_k)がその抽出した数「3」(Kmax)に達したか否かを判断する。そして、未だ全ての隣接要素の解析処理を行っていなければnoと判断し、ステップS12に戻って「1」カウントするとともに、例えば、解析処理をしていない他の隣接要素(Elem_3)、つまり、隣接要素(Elem15)について上記と同様の解析処理を行う。一方、ステップS17でyesと判断、つまり、ステップS7で抽出した隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)の全てについての解析処理を終えた場合にはステップS18へ進む。
【0044】
ステップS18では、隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)のうち、RAM17に一時的に格納された最高節点(Node_max)、つまり、図5(a)に示す隣接要素(Elem12)の最高節点(Node39)を、今回のルーチンにおける最高節点(Node_max)としてRAM17に記憶させ、基準節点(Node38)と最高節点(Node39)とを結ぶ線分(図5(a)の矢印A参照)が最も急勾配であるとして、この線分を空気軌道の一部に設定する。このように、隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)のそれぞれから最も急勾配となる線分を形成する最高節点(Node_max)を記憶するとともに、その線分を空気軌道の一部として設定するステップS18の処理が、本発明における節点記憶ステップを構成している。
【0045】
このように、ステップS18までの処理が今回のルーチンにおける一連の処理を表しており、続くステップS19では、次回のルーチンにおける処理を行うための準備を行う。すなわち、ステップS19では、ステップS18で記憶された最高節点(Node39)を備える隣接要素(Elem12)を(j)として、次回の各ステップ(次回のルーチン)における新たな最低要素(Elem_j)としての最低要素(Elem12)を設定するとともに、設定された最低要素(Elem12)の最高節点(Node_j_h)を、新たな基準節点として基準節点(Node39)を設定する。
【0046】
ステップS19では、さらに、設定された新たな基準節点(Node39)を含む隣接要素が所定数以下(3つ以下)であるか否か、または、隣接要素の節点と基準節点(Node39)とを結ぶ線分の勾配が負であるか否か、つまり、隣接要素の節点よりも基準節点(Node39)の方が重力方向Gに対して高い位置にあるか否かを判断する。
【0047】
隣接要素が所定数以下であると判断した場合には、本来、隣接要素が存在すべき場所に隣接要素が無く、当該部分には「穴」や「エッジ」があり、この「穴」や「エッジ」を介して空気が外部に排出されるとし、また、隣接要素の節点と基準節点(Node39)とを結ぶ線分の勾配が負であると判断した場合には、基準節点(Node39)の部分に空気が溜まるとされ、新たな最低要素としての最低要素(Elem12)が(Jmax)に達したと判断、つまり、空気軌道のシミュレーションが収束した(空気軌道が終着地点に到達した)と判断してステップS20へ進む。
【0048】
ステップS20では、車体ボディ30を構成する他の車体パネル(サイドパネルやルーフパネル等)の解析処理を終えたか否か、つまり、部品番号(i)が解析対象とする所定の部品数(I)に達したか否かを判断し、部品番号(i)が部品数(I)に達したと判断(yesと判断)した場合には、ステップS21へ進み外部表示出力をする。
【0049】
ステップS21では、ステップS18においてRAM17に一時的に格納した節点で形成される線分、つまり、シミュレーション結果としての空気軌道(図3の矢印参照)を、操作者に対して視覚的にシミュレーション結果を理解し易くさせるために、図1に示すディスプレイコントローラ20を制御することによりディスプレイ12に表示させる。ただし、ディスプレイ12に表示させる内容としては、上記空気軌道の表示に加え、空気軌道を形成するNode番号等の情報や、「正常空気抜け」(隣接要素が所定数以下の場合)なる文字、「空気溜まり発生」(勾配が負の場合)なる文字等を表示させるようにしても良い。
【0050】
このように、シミュレーション結果としての空気軌道を、ディスプレイ12を介して外部に表示させるステップS21が、本発明における空気軌道表示ステップを構成している。このステップS21において、空気軌道等をディスプレイ12に表示させた後、ステップS22へ進み、空気軌道のシミュレーションが終了する。
【0051】
ステップS19でnoと判断、つまり、新たな最低要素(Elem_j)である最低要素(Elem12)の基準節点(Node39)を含む隣接要素が所定数以上、または、隣接要素の節点と基準節点(Node39)とを結ぶ線分の勾配が正であると判断した場合には、ステップS7へ戻り上述した解析処理(各ステップ)を繰り返し実施する。本実施の形態においては、図5(b)に示すように基準節点(Node39)を含む隣接要素がNo.(7),(8)および(13)のように3つあるため、当該隣接要素(Elem7),(Elem8)および(Elem13)について、上述した解析処理を引き続き実施する。
【0052】
また、ステップS20でnoと判断、つまり、解析対象とする部品(他の車体パネル)が未だ存在すると判断した場合には、他の車体パネルを解析するために、ステップS23へ進んで「I=i+1」としてカウントし、その後、ステップS4へ戻り、他の車体パネルを解析対象として、上述した解析処理を繰り返し実施する。
【0053】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法によれば、フロアパネル40の数値計算モデルを最低要素および隣接要素の二次元の要素に分割するとともに、最低要素の重力方向Gにおける最高位置にある基準節点と複数の隣接要素の重力方向Gにおける最高位置にある各節点とを結ぶ線分の各勾配を比較し、図5(c)の矢印に示すように急勾配の線分を形成する節点に向けて次々と空気(AIR)の軌道が形成されることをシミュレーションして、その結果となる空気軌道をディスプレイ12に出力することができる。
【0054】
したがって、従前のように三次元の要素に分割して解析処理する場合に比して、解析処理にかかる初期状態から収束状態に至るまでの計算時間を短縮することができ、ひいては車体パネルの開発時間を短縮して、その製造コストを抑制することができる。
【0055】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディ30としたので、複雑な形状の車体ボディ30を構成する車体パネルにおける空気軌道をシミュレーションすることができる。例えば、予測した空気軌道の終点を空気溜りと判定して当該部分に外部に空気を逃がす逃がし穴等を成形しておくことができ、この逃がし穴の個数等を最適化することで剛性を確保しつつ軽量化が図れる車体ボディ30を効率良く設計することができる。
【0056】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図6は第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法の動作を説明するフローチャートを、図7(a),(b),(c)は分割した二次元の要素の一部を抜き出して示す模式図をそれぞれ表している。
【0057】
上述した第1実施の形態では、各要素の「節点」における座標データに基づいて解析処理を行なったが、第2実施の形態では、各要素の「重心点」における座標データに基づいて解析処理を行うようにしている。第1実施の形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
図1に示す流体解析装置10のHDD13やRAM17には、複数の要素(最低要素や隣接要素)の重心点データ(図7の黒点参照)が格納されており、この重心点データは、XYZ軸方向の座標データから構成されている。
【0059】
図6のフローチャートに示すように、ステップS6Aでは、最低要素(Elem_j)における重心点(Cent_j_h)を基準重心点として設定するようにしており、本実施の形態においては、図7(a)に示すように、最低要素(Elem14)の重心点(Cent14)が基準重心点となる。ここで、基準重心点(Elem14)を設定するステップS6Aの処理が、本発明における基準重心点設定ステップを構成している。
【0060】
ステップS9Aでは、隣接要素(Elem_1)の重心点(Cent_1_h)を設定するようにしており、本実施の形態においては、隣接要素(Elem12)の重心点(Cent12)に設定される。
【0061】
ステップS10Aでは、ステップS6Aで設定された最低要素(Elem14)の重心点(Cent14)と、ステップS9Aで設定された隣接要素(Elem12)の重心点(Cent12)とを結ぶ線分の勾配(Tan_1_j)、つまり、勾配(Tan12)を、各重心点の座標データに基づき下記式(2)により導出する。
【0062】
【数2】

【0063】
ステップS11Aでは、式(2)により導出した勾配(Tan12)の数値データを、現時点における最も急勾配の数値データ(Tan_max)とするともに、勾配(Tan12)を形成する重心点(Cent12)を、重力方向Gに対して最高位置にある重心点(Cent_max)としてRAM17にそれぞれ一時的に格納する。
【0064】
ステップS13Aでは、次に設定される隣接要素(Elem_2)、つまり、隣接要素(Elem10)の重心点(Cent_2_h)を設定するようになっており、本実施の形態においては、重心点(Cent_2_h)は重心点(Cent10)となる。
【0065】
ステップS14Aでは、ステップS6Aで設定した基準重心点(Cent14)と、ステップS13Aで設定した重心点(Cent10)とを結ぶ線分の勾配(Tan_2_j)、つまり、勾配(Tan10)を上記式(2)により同様に導出する。
【0066】
ステップS16Aでは、勾配(Tan_2_j)を最も急勾配であるとして、RAM17に格納された勾配(Tan_1_j)の数値データ(Tan_max)を勾配(Tan_2_j)の数値データに書き換えるとともに、勾配(Tan_2_j)を形成する重心点(Cent_2_h)を最高位置にある重心点(Cent_max)とする。
【0067】
ステップS18Aでは、隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)のうち、RAM17に一時的に格納された重心点(Cent_max)、つまり、図7(a)に示す隣接要素(Elem12)の重心点(Cent12)を、今回のルーチンにおける重心点(Cent_max)としてRAM17に記憶させ、基準重心点(Cent14)と重心点(Cent12)とを結ぶ線分(図7(a)の矢印B参照)が最も急勾配であるとして、この線分を空気軌道の一部に設定する。このように、隣接要素(Elem12),(Elem10)および(Elem15)のそれぞれから最も急勾配となる線分を形成する重心点(Cent_max)を記憶するとともに、その線分を空気軌道の一部として設定するステップS18Aの処理が、本発明における重心点記憶ステップを構成している。
【0068】
その後、このような解析処理を第1実施の形態と同様に、図7(b)に示すように繰り返し行うことによって、図7(c)に示すような空気軌道をシミュレーションして、ディスプレイ12に表示させることができる。
【0069】
以上のように構成した第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
上述した第1実施の形態(「節点」による解析処理)および第2実施の形態(「重心点」による解析処理)に係るシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、コンピュータとしての流体解析装置10に、車体ボディ30の数値計算モデルを最低要素および隣接要素の二次元の要素に分割させるとともに、最低要素の重力方向Gにおける最高位置にある基準節点と複数の隣接要素の重力方向Gにおける最高位置にある各節点とを結ぶ線分の各勾配、または、最低要素の基準重心点と複数の隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の各勾配を比較させる。そして、流体解析装置10に、図5(c)および図7(c)に示すように、最も急勾配となる線分を形成する節点または重心点に向けて次々と空気(AIR)の軌道が形成されることをシミュレーションさせて、その結果となる空気軌道をディスプレイ12に表示させることができる。
【0071】
したがって、従前のように三次元の要素に分割して解析処理する場合に比して、解析処理にかかる初期状態から収束状態に至るまでの計算時間を短縮することができ、ひいては車体パネルの開発時間を短縮して、その製造コストを抑制することができる。
【0072】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、空気軌道のみをシミュレーションするものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、空気や電着溶液35の粘性抵抗、その他、雰囲気温度や湿度等の解析条件を加味した上で所定の演算を行い、これにより空気軌道を通って空気が抜けるまでの時間を導出して外部に表示するようにしても良い。この場合、ディスプレイ12に、上述した空気軌道の表示とともに「空気排出予想時間」等と表示することもできる。
【0073】
また、上記各実施の形態においては、複数の隣接要素のZ座標データが異なる値である場合を例に説明したが、複数の隣接要素のZ座標データが同じ値である場合には、空気軌道が双方を流れるように枝分かれすることが考えられる。この場合には、枝分かれした複数の隣接要素について各々並行して同じ解析処理(各ステップ)を行うようにすれば良い。
【0074】
さらに、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物として車両の車体ボディ30を構成する複数の車体パネルにおける空気軌道をシミュレーションするものを示したが、本発明はこれに限らず、形状が複雑で空気溜まりが発生し易い、例えば、電子部品としての半導体等にも適用することができる。
【0075】
また、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物を電着溶液35に浸漬し、被浸漬処理物の表面に塗膜を析出するもの(電着塗装するもの)を示したが、本発明はこれに限らず、被浸漬処理物を金属溶液で満たされた処理槽に浸漬して、当該被浸漬処理物の表面にめっき処理等を施す技術にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行する流体解析装置を示すブロック図である。
【図2】車体ボディの塗装ラインを説明する説明図である。
【図3】車体ボディのフロアパネルの数値計算モデルを示す斜視図である。
【図4】第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法の動作を説明するフローチャートである。
【図5】(a),(b),(c)は、分割した二次元の要素の一部を抜き出して示す模式図である。
【図6】第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法の動作を説明するフローチャートである。
【図7】(a),(b),(c)は、分割した二次元の要素の一部を抜き出して示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
10 流体解析装置
11 キーボード
12 ディスプレイ
13 HDD
14 FDD
15 CPU
16 ROM
17 RAM
18 制御部
19 キーボードコントローラ
20 ディスプレイコントローラ
21 ディスクコントローラ
22 ネットワーク
23 ネットワークインターフェースコントローラ
24 システムバス
30 車体ボディ(被浸漬処理物)
31 搬送装置
32 ハンガ
33 塗装ライン
34 電着槽
35 電着溶液
40 フロアパネル(被浸漬処理物)
41 要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法であって、
複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、
前記最低要素における最高位置にある節点を基準節点に設定する基準節点設定ステップと、
前記基準節点を含み前記最低要素に隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、
前記基準節点と前記各隣接要素における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、
前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の節点を記憶する節点記憶ステップと、
前記節点記憶ステップで記憶した節点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準節点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の節点と新たな基準節点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記節点記憶ステップで記憶した節点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法。
【請求項2】
被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法であって、
複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、
前記最低要素の重心点を基準重心点に設定する基準重心点設定ステップと、
前記最低要素における最高位置にある節点を含み隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、
前記基準重心点と前記各隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、
前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の重心点を記憶する重心点記憶ステップと、
前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準重心点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の重心点と新たな基準重心点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法において、前記被浸漬処理物が車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法。
【請求項4】
被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、
前記最低要素における最高位置にある節点を基準節点に設定する基準節点設定ステップと、
前記基準節点を含み前記最低要素に隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、
前記基準節点と前記各隣接要素における最高位置にある各節点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、
前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の節点を記憶する節点記憶ステップと、
前記節点記憶ステップで記憶した節点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準節点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の節点と新たな基準節点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記節点記憶ステップで記憶した節点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項5】
被浸漬処理物に発生する空気溜まりの空気が抜ける軌道をシミュレーションする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の要素に分割された前記被浸漬処理物の数値計算モデルに基づき、重力方向の最低位置にある要素を最低要素に設定する最低要素設定ステップと、
前記最低要素の重心点を基準重心点に設定する基準重心点設定ステップと、
前記最低要素における最高位置にある節点を含み隣接する複数の要素を隣接要素に設定する隣接要素設定ステップと、
前記基準重心点と前記各隣接要素の各重心点とを結ぶ線分の勾配をそれぞれ導出する勾配導出ステップと、
前記各勾配を比較し、最も急勾配となる線分の重心点を記憶する重心点記憶ステップと、
前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を含む隣接要素を、次回の前記各ステップにおける新たな最低要素とし、当該最低要素の新たな基準重心点を含む隣接要素が所定数以下、または、当該隣接要素の重心点と新たな基準重心点との勾配が負となるまで前記各ステップを繰り返し行った後、前記重心点記憶ステップで記憶した重心点を結ぶ線分を空気軌道として外部に表示させる空気軌道表示ステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項6】
請求項4または5記載の被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記被浸漬処理物が車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気軌道のシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−68220(P2008−68220A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250307(P2006−250307)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】