説明

被膜形成装置及び被塗物塗工方法

【課題】被塗物の表面に存在する微小凹部にまで浸漬液を到達させることのできる被膜形成装置、及びこの被膜形成装置を使用して、ボイド及び気泡等が存在せず、しかも強度の大きな塗膜を形成することのできる被塗物塗工方法を提供する。
【解決手段】塗物を収容することができる収容槽2と、前記収容槽の内部を減圧にする減圧装置9と、前記被塗物の表面に被膜を形成することのできる浸漬液を貯留する貯留槽3と、前記被塗物を収容すると共に前記減圧装置により内部が減圧にされた前記収容槽内に、前記貯留槽内の浸漬液を、導入する浸漬液導入装置4とを有することを特徴とする被膜形成装置であり、この被膜形成装置を使用する被塗物塗工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被膜形成装置及び被塗物塗工方法に関し、特に詳しくは、被塗物の表面に存在する微小凹部にまで浸漬液を到達させることのできる被膜形成装置、及びこの被膜形成装置を使用して、ボイド及び気泡等が存在せず、しかも強度の大きな塗膜を形成することのできる被塗物塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるような「定着方法」が提案されている。特許文献1に記載の「定着方法」は、「被定着物を定着溶液に浸漬乃至接触せしめ、真空雰囲気にして、被定着物の内蔵空気を定着溶液と置換して定着させることを特徴」とする(特許文献1の請求項1参照。)。この特許文献1に記載された定着方法によると、「被定着物を定着溶液に浸漬し、真空雰囲気にして、定着させる方法であるため、被定着物の内蔵空気を定着溶液と置換して定着させることができ、切り花、コンクリートブロック等の被定着物に対して、肥料、塗料、水などを良好に定着させることができる」(特許文献1の段落番号0013欄参照)と記載されている。しかしながら、この特許文献1には、定着方法を実施する具体的な装置構成が開示されていない。特許文献1の実施例1〜5を参照すると、「密閉容器に入れ」、「同容器内に・・・溶液を注入し」、「同容器内を・・・にまで吸引し」、「その真空状態を・・続け」、「常圧に戻して取り出した」との操作が開示されている。特許文献1におけるこのような開示からすると、「密閉容器」、「外部と連通している状態にした密閉容器内に外部から溶液を強制的に注入する注入手段」、「内部に溶液を収容した状態でこの密閉容器を密閉状態にする手段」、「溶液を収容した密閉容器内を真空にする排気装置」が必要であると理解される。
【0003】
ところで、上記「定着方法」以外にも、被塗物の表面に存在する微小凹部にまで浸漬液を到達させることのできる新たな構成の被膜形成装置が求められている。
【0004】
また、基材である被塗物の表面に被膜を形成することは塗工技術分野における汎用技術である。
【0005】
ところが、基材の表面に塗工された塗工液中には気泡が含まれていることが多い。例えば、燐片状金属粒子と樹脂成分と溶媒とを含有する塗料組成物を基材の表面に塗工して形成される塗膜中には燐片状金属粒子が重なりあった状態となっているばかりか、燐片状金属粒子の近辺には微小な気泡が、単位塗工体積中に50%近い割合で存在する。
【0006】
そのような塗膜を焼付けて硬化処理を行うと、塗膜から気泡が抜け出すことにより硬化塗膜に微細な孔が形成されることがある。微細な孔を有する硬化塗膜で被覆された基材は、その基材が金属である場合には、防錆塗装をしてあるといっても前記微細な孔を通じて硬化塗膜中に水分が進入することにより錆が発生するといった問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−1075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、被塗物の表面に存在する微小凹部にまで浸漬液を到達させることのできる被膜形成装置を提供することであり、より具体的には、凹部を有する被塗物の多数を、塗装し残しなく、一挙に塗装することのできる被膜形成装置を提供することである。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、被塗物の表面に気泡、ボイド等が存在しない被膜を有するようにした被塗物塗工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、
(1)被塗物を収容することができる収容槽と、
前記収容槽の内部を減圧にする減圧装置と、
前記被塗物の表面に被膜を形成することのできる浸漬液を貯留する貯留槽と、
前記被塗物を収容すると共に前記減圧装置により内部が減圧にされた前記収容槽内に、前記貯留槽内の浸漬液を、導入する浸漬液導入装置とを有することを特徴とする被膜形成装置、
(2)前記浸漬液導入装置は、前記収容槽の内部と連通する液導入路を備えた導入管と、前記液導入路を開閉可能にする開閉弁とを有して成る(1)に記載の被膜形成装置、
(3)前記導入管は、前記収容槽の底部に設けられ、
前記開閉弁は、前記導入管の前記液導入路を閉鎖する常閉弁体と、前記液導入路を前記収容槽の内部と連通するように前記常閉弁体を強制移動させる弁体駆動部材とを備える(2)に記載の被膜形成装置、
(4)前記収容槽を、前記収容槽の中心軸線を縦方向と斜め方向とのいずれかに変位させる収容槽軸線変位駆動装置を備えてなる(3)に記載の被膜形成装置、
(5)前記収容槽を、前記収容槽の中心軸線を中心にして回転させる収容槽回転駆動装置を備えてなる(1)〜(4)のいずれか一つに記載の被膜形成装置、及び、
(6)前記浸漬液が、塗料液である(1)〜(5)のいずれか一つに記載の被膜形成装置を挙げることができる。
【0011】
前記課題を解決するための他の手段としては。
(7)前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の被膜形成装置を使用して被塗物の表面に被膜を形成することを特徴とする被塗物塗工方法であり、
(8)前記被膜形成装置に使用される浸漬液が、防錆塗料液及びオーバコート塗料液であり、前記被膜形成装置における被塗物を収容した収容槽を減圧にすることにより被塗物の表面に直接に被膜を形成する浸漬液が防錆塗料液であり、被塗物の表面に形成された防錆被膜の表面にオーバコート被膜を形成する浸漬液がオーバコート塗料液である前記(7)に記載の被塗物塗工方法であり、
(9)前記防錆塗料液が、燐片状金属粒子と被膜形成成分と溶媒とを含有する防錆塗料組成物である前記(8)に記載の被塗物塗工方法である。
である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、被塗物、特に多数の被塗物を収容する収容槽内を減圧にしてあるので、収容槽内に浸漬液を大気圧により導入することができるので、収容槽内に浸漬液を強制的に送液するポンプ等の強制送液手段が無用であり、減圧にされた収容槽内に浸漬液を導入すると、被塗物の表面に存在する微小凹部内も減圧状態と成っているので、浸漬液が微小凹部内に進入し、微小凹部の最深部にまで浸漬液が到達可能となり、微小凹部の内壁面に塗装漏れを生じさせることなく、被塗物の全表面、特に多数の被塗物の全表面に、塗り残しなく被膜を形成することのできる被膜形成装置を提供することができる。
【0013】
また、この発明によると、浸漬液導入装置が導入管と開閉弁とから成ると、好ましくは浸漬液導入装置が導入管と常閉弁体と弁体駆動部材とから成ると、被塗物を収容する収容槽内を減圧した上で、その減圧状態を維持しつつ更に収容槽内に浸漬液を大気圧で導入することができるので、操作が簡便である被膜形成装置を提供することができる。
【0014】
更に、この発明によると、収容槽軸線変位駆動装置及び/又は収容槽回転駆動装置を備えていると、被塗物を収容する収容槽内を減圧し、収容槽内に浸漬液を導入した後に収容槽の中心軸線を傾斜及び/又は回転させることによって、より一層確実に浸漬液を被塗物の表面に存在する微小凹部に到達させる被膜形成装置を提供することができる。特に、多数の被塗物が収容槽に収容されている場合には、浸漬液を収容槽から排出した後に、この収容槽の中心軸線を傾斜状態にし、又は中心軸を縦にしたまま、この収容槽を回転させると、収容槽内に収容されている被塗物における微小凹部から余分の浸漬液が排出されるので、被塗物における微小凹部に浸漬液が充満した状態で被塗物が回収されることがなく、被塗物における微小凹部の表面に完全に被膜の形成された状態で被塗物が回収されることができる。
【0015】
この発明の方法によると、ボイド及び気泡等の存在しない下層にその下層表面に形成された上層が強固に結合してなる少なくとも二層構造を有する被膜を形成することのできる塗装をすることのできる被塗物塗工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】図2は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の一部拡大図である。
【図3】図3は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図4】図4は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図5】図5は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図6】図6は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図7】図7は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図8】図8は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【図9】図9は、この発明に係る被膜形成装置の一実施態様の操作概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る被膜形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、この発明の一実施態様である被膜形成装置1は、収容槽2と、減圧装置9と、貯留槽3と、浸漬液導入装置4とを備えている。
【0019】
収容槽2は、図1に示すように、タンク5とバスケット6と蓋部7とを有している。タンク5は、その中央部に浸漬液導入装置4を設置することができるように挿通管8を備える。このタンク5は、その中心軸線に直交する平面における内周面の断面形状が円形である。このタンク5は、その中心軸線を縦にして見た場合に、上方を開口する開口部と下方に形成された底部28とを有する有底円筒体と、前記開口部を気密に覆蓋する蓋部7とを備えて成る。
【0020】
タンク5の内部には、被塗物が通過しない程度の目を有する金網で形成されたバスケット6が固定されている。なお、このバスケット6は、金網で形成される代わりに格子状に形成されていてもよく、要するに浸漬液が通過するが被塗物は通過しない程度の間隙を備えるとともに、一つ又は多数の被塗物を収容することのできる構造を有していればよい。また、このタンク5の内部には邪魔板を設けておき、多数の被塗物を収容したタンク5をその中心軸線を中心にして回転させると、この邪魔板に被塗物が接触して被塗物の位置が強制的に変更されるようにしておくのが、被塗物の表面に均一に被膜を形成することができて好ましい。
【0021】
バスケット6は、タンク5に設けられた挿通管8を挿通することができるように、バスケット6の底部に開口部が設けられ、その開口部に挿通管8が挿通している。そのバスケット6は、タンク5の内部構造と同様に、その中心軸線に直交する平面における断面形状が円形であり、前記挿通管8を挿通設置する底部を有する。要するに、このバスケット6は、タンク5の内周面から一定の間隔を有するとともに、タンク5の内周面に倣うような形状に形成され、タンク5の内部に固定されている。
【0022】
このようなバスケット6がタンク5の中に設置されていると、バスケット6に被塗物を収容した状態で、収容槽2内に浸漬液を導入した後に浸漬液を収容槽2から排出すると、被膜が形成された被塗物がバスケット6内に残存することとなる。
【0023】
タンク5がその内部に浸漬液を収容し、一方で、バスケット6がその内部に被塗物を収容するという機能分化が達成されている。機能分化をしているので、タンク5内に収容されている浸漬液をタンク5の外に排出すると、浸漬液で塗装された被塗物がバスケット6に残留し、しかも余分な浸漬液が被塗物から除去される。このバスケット6は水切りの機能を有する。水切り機能を有するバスケット6により被塗物の表面に浸漬液が過剰に残存することがなくなる。
【0024】
このタンク5は、収容槽基台5Aに保持され、かつ固定される。この収容槽基台5Aは、タンク5の中心軸線を中心にしてタンク5を回転させることができるように、回転可能に形成される。
【0025】
図1に示される例では、この収容槽基台5Aは、基台底部5Bと、円筒形枠体5Cと、ベアリング16Aとを有する。前記収容槽基台5Aにタンク5の底部28が固定され、この収容槽基台5Aの中心には後述する浸漬液導入装置4のための開口部が設けられている。前記円筒形枠体5Cは、円筒形であり、基台底部5Bの上側平面の周縁部から中心軸線に沿って立設形成されている。前記ベアリング16Aは、円筒形枠体5Cにおける外周面に設けられる。また、この円筒形枠体5Cにおける上部には、第2プーリ20が設けられる。
【0026】
蓋部7は、タンク5を気密に覆蓋することにより、タンク5内に設置されるバスケット6も覆蓋することができるように、形成される。
蓋部7の一部には気体流通口9Aが設けられている。気体流通口9Aの蓋部7における配設位置は、浸漬液導入装置4の設置を阻害せず、この蓋部7をタンク5に気密に覆蓋し、しかもこのタンク5の中心軸線を垂直にし、また傾斜させることによりタンク5の姿勢を変更することのできる機構を阻害しない限り、適宜の位置に決定することができる。
この気体流通口9Aを介して減圧装置9が収容槽2内の気体を排気することによって、収容槽2内を減圧にすることができる。
【0027】
また、蓋部7は、蓋部回動装置10によって回動する。
【0028】
蓋部回動装置10は、蓋部回動軸11と駆動モータ10Aと支持部12とを備える。蓋部回動軸11は、それ自身が水平に配置され、一端を蓋部7に結合する支持部12の端部を固定的に結合する。この蓋部回動軸11は、駆動モータ10Aにより回動する。蓋部回動装置10は、駆動モータ10Aを駆動すると、蓋部回動軸11を回動させ、この蓋部回動軸11の回動により蓋部回動軸11を中心にして支持部12を垂直面内で回動させ、これによって蓋部7がタンク5の開口部を覆蓋し、また逆に覆蓋していた開口部を開放することができる。
【0029】
収容槽2は、被塗物を収容することができる十分な内容積を有する。
【0030】
なお、この発明に係る被膜形成装置において、表面に被膜が形成されることになる被塗物は、その表面に微小凹部が存在している。微小凹部としては、大気圧下にある浸漬液に被塗物を浸漬すると、その微小凹部に存在する空気によって微小凹部に浸漬液が浸入しない程度の空間であって、浸漬液が接触する表面から内部に向かって窪んでいる部位を挙げることができ、例えば、凹状に窪んだ部分、開口部よりも内部が広がった穴、金属板の重ね合わせ部に存在する空隙、及び多孔質体における孔を挙げることができる。また、被塗物としては、表面に被膜を形成する必要のある部品及び部材を挙げることができ、例えばすり割り溝を有するネジ等の小型金属部品、金属板同士を貼り合わせて製造される工業製品、並びに、多孔質のセラミックス成形体及び焼結体等を挙げることができる。
【0031】
なお、この発明に係る被膜形成装置における収容槽の大きさとしては、被塗物の大きさ及び収容する被塗物の数に応じて適宜に決定されるのであって特に限定されないが、例えば内容量が5〜20Lの大きさを挙げることができる。収容槽の内容量が前記範囲内にあると、複数回の使用によって劣化し易い浸漬液を、所定回数使用後に交換するときに、浸漬液の交換を短時間で済ませることができる。
【0032】
この発明に係る被膜形成装置においては、収容槽の形状は特に制限されないが、後述するように収容槽は減圧装置によって減圧にされるので、耐圧構造と成っていることが好ましく、例えば収容槽の中心軸線に直交する方向での内側断面形状が円形である態様を挙げることができる。また、この発明に係る被膜形成装置における収容槽の材料としては、内部が減圧状態となっても耐え得るように、金属であるのが好ましい。
【0033】
図1に示される減圧装置9は、この気体流通口9Aに接続された可撓性配管9Bと、その可撓性配管9Bの途中に介装された三方弁9Cと、三方弁9Cに結合された大気開放管9Dと前記可撓性配管9Bの三方弁9Cとは反対側の端部を結合する真空ポンプPとを備える。この減圧装置9は、三方弁9Cにおける大気開放管9D側を閉鎖するとともに真空ポンプP側及び気体流通口9A側を開放状態にして真空ポンプPを駆動すると蓋部7でタンク5の開口部を閉鎖した収容槽2の内部を減圧にすることができ、また三方弁9Cにおける真空ポンプP側を閉鎖するとともに、気体流通口9A側を開放した状態のままで大気開放管9D側を開放すると、減圧状態になっていた収容槽2の内部に大気が大気開放管9Dを通じて流入し、これによって収容槽2内が大気圧となる。
【0034】
なお、減圧装置によって実現される収容槽内部の減圧の程度としては、被塗物に不可逆的な意図しない変質を生じさせない限り特に制限はないが、例えば低真空、中真空、高真空、超高真空、及び極高真空等と称される状態の減圧を挙げることができる。
【0035】
図1において、収容槽2の底面よりも下方には、貯留槽3が設置されている。貯留槽3は、第1貯留槽13と第2貯留槽14とを有している。第1貯留槽13は収容槽2内に導入されることになる浸漬液を貯留する槽であり、第2貯留槽14は予備の浸漬液を貯留する槽である。
【0036】
なお、第2貯留槽14には、浸漬液循環路15が付設されている。浸漬液循環路15は、浸漬液の早期の劣化を防止することを目的として設けられており、第1貯留槽13に貯留する浸漬液と第2貯留槽14に貯留する浸漬液とを、浸漬液循環路15を介して適宜の流通路及びポンプ等を用いることにより、相互に循環させることができる。
【0037】
なお、この発明に係る被膜形成装置において、浸漬液は、被塗物の表面に被膜を形成する液であり、特に制限されていないが、例えば塗料液、防食成分を含有する防食液、及び防錆成分を含有する防錆液等を採用することができる。
【0038】
もっとも、この発明に係る被膜形成装置は、この発明の目的を達成することができる限り、予備の貯留槽である第2貯留槽14及び浸漬液循環路15を設けることなく、一つの貯留槽を設けるに留めておいても良い。
【0039】
また、この発明に係る被膜形成装置において、貯留槽の大きさは、前記収容槽の大きさ及び収容槽に導入される浸漬液の量に応じて適宜決定すれば良い。貯留槽の形状としては、浸漬液を貯留することができ、好ましくは収容槽に導入する流路を配置し易い形状であるのが好ましく、例えば有底の椀形状であり、中心軸線に直交する方向における断面形状が円形、楕円形及び多角形である態様を挙げることができる。
【0040】
浸漬液導入装置4については、後述する。
【0041】
被膜形成装置1に設けられている収容槽軸線変位駆動装置16は、収容槽2の中心軸線を縦方向又は斜め方向のいずれかに変位させて収容槽2の姿勢を変更することができる。すなわち、収容槽軸線変位駆動装置16は、図1に示すように中心軸線が縦方向に向いている収容槽2を、その中心軸線が傾斜した姿勢に、変位させる動作と、中心軸線が傾斜した姿勢をとる収容槽2を、その中心軸線が垂直になる姿勢に、変位させる動作とを行うことができる。
【0042】
この収容槽軸線変位駆動装置16は、タンク5を円筒状空間内に収めている円筒形枠体5Cが、ベアリング16Aを介して回転可能になるように、円筒形枠体5Cの外側に配置される外側円筒形支持体16Bと、この外側円筒形支持体16Bをその側部で保持する柱状の保持部材16Cと、この保持部材16Cが外側円筒形支持体16Bを保持する側部とは反対側の側部で前記保持部材16Cを保持する第2保持部材16Dと、この外側円筒形支持体16Bを垂直面内で回動することができるようにこの外側円筒形支持体16Bによって水平に保持された収容槽変位軸17と、収容槽変位軸17を回動させる駆動モータ(図示せず。)とを有する。
【0043】
前記保持部材16Cと第2保持部材16Dとが、収容槽基台5Aを両側から保持し、かつ支持しているので、タンク5はその初期位置としてその中心軸線を垂直に保持することができる。
【0044】
保持部材16Cは、図示しない頑丈な支持部材に固定される。前記第2保持部材16Dは、床面に固定されていない。例えば、第2保持部材16Dの下端部が、床面に直接に接してはいるが床面には固定されず、又は床面に設置された補助台(図示せず。)に接してはいるがその補助台には固定されていない。このように、第2保持部材16D自体が床面に対して固定された状態ではないから、前記収容槽変位軸17が回動すると収容槽2の姿勢を決定する中心軸線が垂直方向から斜め方向に変位することができるようになる。
【0045】
被膜形成装置1における収容槽軸線変位駆動装置16は、図示しない駆動モータを駆動すると、収容槽変位軸17が回動し、収容槽変位軸17の回動によって、中心軸線が垂直となっている姿勢にある収容層5を、前記収容槽変位軸17を中心にして収容槽2の姿勢を変更させ、垂直線と中心軸線となす角度が鋭角となって収容槽2が、またタンク5が斜めに傾斜した姿勢をとり、さらに収容槽変位軸17を回動させることにより、垂直線に対して中心軸線が鈍角となってタンク5の開口部が斜め下方に向いた姿勢をとることができるように、なっている。
【0046】
被膜形成装置1には、収容槽回転駆動装置18が設けられている。収容槽回転駆動装置18は、収容槽2の中心軸線を中心にして収容槽2を回転させることができる。収容槽回転駆動装置18は、図1に示されるように、前記第2保持部材16Dに支持された駆動モータ18Aと、この駆動モータ18Aの回転軸に直結された第1プーリ19と、前記円筒形枠体5Cに設けられた第2プーリ20と、前記第1プーリ19と第2プーリ20とに掛け渡されたベルト18Bとを有する。
【0047】
この収容槽回転駆動装置18は、前記駆動モータ18Aを駆動すると第1プーリ19、第2プーリ20及びベルト18Bによってタンク5を、つまりは収容槽2をその中心軸線を中心にして回転させる。
【0048】
収容槽固定手段21は、前記収容槽回転駆動装置18が収容槽2を回転させるときに、収容槽2の中心軸線がぶれることを防止することができるように、エアシリンダ21A、エアシリンダ21Aから進出するように前進し、またエアシリンダ21Aに向ってエアシリンダ21A内に引き込まれるように後進する軸体21B、第2保持部材16Dに設けられた係止部21C例えば係止突起に係合する連結部21D例えば係合連結器とを有する。
【0049】
この収容槽固定手段21においては、収容槽2が回転しているときには、前記エアシリンダ21Aから前進することにより前記係止部21Cに連結部21Dが結合している。したがって、回転するタンク5つまりは収容槽2の中心軸線が、例えば歳差運動をするようにぶれることがない。したがって、収容槽2がその中心軸線を中心にして回転しているときに、被膜形成装置1の全体又は各部にガタツキを発生させることがない。
【0050】
この発明に係る被膜形成装置における浸漬液導入装置4について、図2を参照しつつ説明する。図2には、図1に示した被膜形成装置1の一部を拡大して示している。なお、図2に示す被膜形成装置1において、図1を参照しつつ説明した事項については、例えばベアリング16Aなどが省略されていることがある。
【0051】
タンク5は、その内壁面の一部に、中心軸線に直交する平面において一巡するように凹状に形成された液溜め22を、有する。液溜め22は、タンク5の中心軸線を共有する縦断面における断面形状として、タンク5の内周面に対して直角に向きを変えるように形成された立上り面23と、タンク5の内周面から前記立上り面23の先端に向って傾斜するように形成されたタンクテーパ面24とで形成される。この立上がり面23は、タンク5の内周面であってタンク5の開口部に近い部位に形成される。また、タンクテーパ面24は、タンク5の内周面であって前記立上がり面23よりも下方に形成される。したがって、この液溜め22は、タンク5の中心軸線を共有する縦断面における断面形状は、略三角形になっている。この液溜め22は、図1に示した前記収容槽軸線変位駆動装置16により収容槽2の姿勢を変更してタンク5の開口部が斜め下方に向くとともにタンク5の底部28がタンク5の開口部よりも高い位置になるようにタンク5が傾斜したときに、タンク5の内部に残存する浸漬液を一時的に貯留し、これによって浸漬液がタンク5の開口部から外に漏出することを防止することができる。
【0052】
被膜形成装置1における浸漬液導入装置4は、導入管25と、開閉弁26とを備える。導入管25は、タンク5の内部と連通する液導入路27を有しており、タンク5の底部28に、中間連結部材28Aを介して、付設されている。前記導入管25の長さLは適宜の長さであってよい。もっとも、この塗膜形成装置1の操作性を向上させるのであれば、第1貯留槽13及び第2貯留槽14の配設位置を考慮することが、好ましい。つまり、この導入管25の長さは、以下の条件を満たすように設定するのが好ましい。
【0053】
導入管25の長さを設定する好適な条件は、
(1)タンク5又は収容槽2の中心軸線を垂直方向に位置させた場合に、導入管25の下端開口部が、第1貯留槽13に貯留されている浸漬液に浸漬すること、かつ、
(2)タンク5の中心軸線が垂直方向に向いている収容槽2の姿勢を、収容槽変位軸17の回動により、タンク5の中心軸線が斜め方向に向いた収容槽2の姿勢に、変更するように収容槽2が回動する場合に、収容槽2の回動に伴う導入管25の回動動作を、第1貯留槽13及び第2貯留槽14を構成する部材が、阻害しないこと、
である。
【0054】
上記条件を満たすように設定された長さを有する導入管25を有する塗膜形成装置1は、後に詳述するが、中心軸線を垂直方向に維持したタンク5内に第1貯留槽13内に貯留されている浸漬液を、導入管25を通じて移送し、タンク5内に収容されている浸漬液を、導入管25を通じて第1貯留槽13内に排出する状態と、タンク5の中心軸線が斜め方向に維持されてタンク5の開口部がタンク5の底部28よりも低くなっている姿勢に維持された状態とを、収容槽変位軸17の回転による収容槽2の回動動作だけで、実現することができる。つまり、収容槽2を平面内におけるある位置から他の位置へと移動する必要が全くなくなり、収容槽2の回動動作だけで、被膜形成装置1による被膜形成操作を連続的に行うことができる。したがって、導入管25の長さを上記条件を満たすように設計された被膜形成装置1は、作業場所及び操作平面を大きくすることがないという大きな利便性を、発揮することができる。
【0055】
開閉弁26は、常閉弁体29と弁体駆動部材30とを有する。
【0056】
常閉弁体29は、タンク5の中心軸線が垂直である場合に、タンク5の底面中央に開設された開口部に、下方に向けて外側にテーパ状に拡がる弁体密接面29Aに密着可能に形成された円錐台形に形成されている。常閉弁体29における前記円錐台形に形成されたその円錐面は、前記弁体密接面29Aに密接するテーパ部41である。
【0057】
弁体駆動部材30は、常閉弁体29におけるテーパ部41を前記弁体密接面29Aに気密に接触させ、気密に接触している前記テーパ部41を前記弁体密接面29Aから離接させるように形成され、図に示す例では、押圧部材31、ダイアフラム32、被押圧板33、挿通棒34、押さえ板35、付勢部材36、受け板37、及び係合部材38を有する。
【0058】
挿通棒34は、挿通管8の内部を挿通し、更に挿通棒34の上部が挿通管8の上端開口部39から突出している。図2における挿通棒34の上端には、被押圧板33が取付けられており、蓋部7に取付けられたダイアフラム32に当接している。押圧部材31は、図2における上下方向に上下動することができ、下方向に移動すると、その下端がダイアフラム32を介して被押圧板33を押圧することができるようになっている。なお、この発明に係る被膜形成装置において、押圧部材は電気的に駆動されて前記ダイアフラム32を押圧するようにしてもよく、また、操作者が押圧部材を手動で動かして前記ダイアフラム32を押圧するようにしてもよく、押圧部材を採用する代わりに、操作者が手で前記ダイアフラム32を押圧するようにしてもよい。
【0059】
図2における挿通棒34の下端には、挿通棒34の周側面を囲繞するようにして係合部材38が取付けられている。係合部材38の下部には常閉弁体29が固定されている。したがって、押圧部材31が被押圧板33を押圧することにより挿通棒34が図2における下方向に移動すると、係合部材38と共に常閉弁体29も下方向に移動することとなる。
【0060】
挿通管8内における挿通棒34の一部には押さえ板35が固定されていると共に、挿通管8の一部には受け板37が固定されている。押さえ板35と受け板37との間には付勢部材36例えばコイルスプリングが配置されている。この発明に係る被膜形成装置においては、付勢部材は付勢力を発揮することのできる部材であればよく、図2に示されるコイルスプリング以外に、例えば空気バネ又は板バネ等も採用することができる。
【0061】
常閉弁体29は、そのテーパ面41を、収容槽2の底部28における略中央に設けられた開口部40に形成された弁体密接面29Aに、気密に接触させることにより、開口部40を気密に閉鎖している。
【0062】
なお、浸漬液導入装置は、図2に示される態様である必要は無く、この発明の目的を達成することができる限り、種々の設計変更が可能である。
【0063】
以下に、この発明に係る被膜形成装置の作用について、図3〜9を参照しつつ説明する。
【0064】
先ず、図3に示すように、蓋部回動装置10における駆動モータ10Aを駆動することにより、水平に配置されている蓋部回動軸11を回動させて、この蓋部回動軸11を回動中心軸にして支持部12を回動させることにより蓋部7も回動することとなり、それまでタンク5の開口部を覆蓋していた蓋部7がタンク5の開口部から離脱して収容槽2が開口する。
【0065】
被塗物W、図3においては小型の金属製のネジを、収容槽2に投入する。このとき、収容槽2は開状態であるので、内部が減圧にはなっておらず、通常は大気圧である。また、図3に示す状態においては、浸漬液導入装置4が駆動していないので、貯留槽3に貯留される浸漬液Dは、収容槽2内に導入されていない。上述したように、被膜形成装置1における収容槽2は、タンク5が浸漬液Dを収容することができ、バスケット6が被塗物Wを収容することができるので、図3に示す浸漬液Dが導入されていない収容槽2においては、バスケット6内に被塗物Wが収容された状態となっている。図3に示す被膜形成装置1では、収容槽軸線変位駆動装置16及び収容槽回転駆動装置18は駆動していないので、収容槽2の中心軸線が傾斜するなどの変位をすること、及び収容槽2が回転することは無い。
【0066】
次に、図4に示すように、収容槽2の蓋部7を、蓋部回動装置10により、蓋部回動軸11を中心にして回動させることにより、タンク5の開口部を蓋部7で覆蓋して収容槽2を閉鎖状態にする。このとき、弁体駆動部材30における被押圧板33が、ダイアフラム32に対して、ダイアフラム32を僅かに持ち上げるようにして当接している。
【0067】
次いで、減圧装置(図示せず)を用いて、蓋部7の気体流通口9Aから収容槽2内の気体を吸引することにより、収容槽2の内部を減圧にする。収容槽2の内部の圧力は、低真空、中真空、高真空、超高真空、及び極高真空等と称される状態のいずれの状態であってもよいから適宜に減圧すると良い。
【0068】
図4に示す状態においては、浸漬液導入装置4が駆動していないので、貯留槽3に貯留される浸漬液Dは、収容槽2内に導入されていない。また、図4に示す被膜形成装置1では、収容槽軸線変位駆動装置16及び収容槽回転駆動装置18は駆動しないので、収容槽2の中心軸線が変位すること、及び収容槽2が回転することは無い。
【0069】
続いて、図5に示すように、浸漬液導入装置4を駆動する。このとき、導入管25の下端開口部から所定の高さまでが、第1貯留槽13に貯留されている浸漬液に、浸漬した状態になっている。この状態で、浸漬液導入装置4を駆動する。つまり、先ず、押圧部材31を図5における下方向に、収容槽2の中心軸線に沿って移動させる。押圧部材31を下方向に移動させると、押圧部材31の下端がダイアフラム32に接触する。更に押圧部材31を下方向に移動させると、押圧部材31はダイアフラム32を介して被押圧板33を押圧することになる。
【0070】
被押圧板33が下方向に押圧されると、被押圧板33が取付けられる挿通棒34も同様に下方向に押圧される。挿通棒34には押さえ板35が固定されていると共に挿通管8には受け板37が固定されており、押さえ板35と受け板37との間に付勢部材36が介装されているので、挿通棒34が下方向に移動すると、付勢部材36が付勢力に抗して縮むことになる。
【0071】
挿通棒34が付勢部材36の付勢力に抗して図5における下方向に移動すると、挿通棒34の下端部に取付けられている係合部材38、及びその係合部材38に固定されている常閉弁体29が下方向に移動する。常閉弁体29が下方向に移動すると、常閉弁体29のテーパ部41と弁体密接面29Aとの気密密着状態が解き放たれて前記テーパ部41と弁体密接面29Aとに間隙が生じる。つまり、それまで常閉弁体29により維持されていた収容槽2と導入管26の液導入路27との隔絶状態が解除される。これにより、減圧状態の収容槽2と貯留槽3とが連通する。したがって、大気圧の力により、貯留槽3に貯留されている浸漬液Dが、減圧になっている収容槽2の内部へと、吸い上げられて移動する。図5においては、液導入路27、係合部材38及び常閉弁体29の近傍に浸漬液Dの進路を矢印で示している。
【0072】
所定量の浸漬液Dを収容槽2内に移送するには、例えば収容槽2におけるタンク5に、耐圧製の透明な縦長の観察窓(図示せず。)を設けておき、この観察窓を通して収容槽2内に収容される浸漬液Dの状況を目視しておき、適性な量と判断される量の浸漬液Dが収容槽2内に収容されたときに、浸漬液導入装置4の駆動を手動で停止するようにするのが良い。またこのような手動による浸漬液導入装置4の駆動停止を自動化するために、タンク5内に液面センサー(図示せず。)を配設しておき、タンク5内に予め設定された所定量の浸漬液Dが収容されたときの前記親戚液Dの液面を検出する前記液面センサーの検知信号を入力することにより、前記浸漬液導入装置4を自動停止するようにしてもよい。
【0073】
収容槽2内に所定量の浸漬液Dが収容されると、押圧部材31が上昇移動することによりダイアフラム32を介して被押圧板33を押圧している状態が解除され。そうすると、付勢部材36の付勢力によって押さえ板35が図5における上方向に移動するので、挿通棒34が下方に移動する前の初期位置にまで戻る。挿通棒34が移動する前の初期位置に戻ると、係合部材38及び常閉弁体29が上方向に移動する。これにより、常閉弁体29のテーパ部41とタンク5の底部中央に形成されている開口部における弁体密接面29Aとが気密に接触するので、収容槽2と貯留槽3とが隔絶された状態になる。
【0074】
図5に示す被膜形成装置1では、第1貯留槽13内の浸漬液Dが収容槽2内に移送されている期間において、収容槽軸線変位駆動装置16及び収容槽回転駆動装置18が駆動していないので、収容槽2の中心軸線が変位すること、及び収容槽2が回転することは無い。
【0075】
浸漬液導入装置4を駆動することにより、収容槽2内に浸漬液Dを導入すると、被塗物Wの微小凹部にまで浸漬液Dが到達する。この発明に係る被膜形成装置においては、被塗物を収容している収容槽内を予め減圧にしておき、次いで減圧にされている収容槽内に浸漬液を導入している。そうすると、大気圧下にある浸漬液に被塗物を浸漬する場合には、被塗物における微小凹部に空気が存在することにより被塗物の微小凹部内にまで浸漬液が進入困難になってしまい、その結果として被塗物の微小凹部の隅々にまで浸漬液が浸入しないことによる被膜形成漏れが発生していたのであるが、この発明に係る被膜形成装置では収容槽内を減圧にしているので微小凹部における被膜形成を妨げる空気が存在せず、また、微小凹部内も減圧状態であるから、微小凹部の内部にまで浸漬液が導入されることになる。その結果、この発明に係る被膜形成装置によると、微小凹部の隅々にまで浸漬液を導入することができる。
【0076】
浸漬液導入装置4の駆動が完了した後は、被膜形成装置1の気体流通口を大気に開放することにより、収容槽2の内部の圧力を大気圧に戻しても良いし、収容槽2の内部を減圧状態にしたままであってもよい。図6では、タンク5の開口部から蓋部7を僅かに離脱させることにより収容槽2内を大気圧に戻している。収容槽軸線変位駆動装置16により、収容槽2を、収容槽変位軸17を回動中心にして回動させる。収容槽軸線変位駆動装置16による収容槽2の回動は、収容槽2の中心軸線が傾斜する程度である。
【0077】
収容槽軸線変位駆動装置16により収容槽変位軸17を回動させる場合、導入管25も回動する。第1貯留槽13は、導入管25の回動移動の妨げにならない形状に形成されているので、導入管25の回動動作は円滑である。
【0078】
収容槽軸線変位駆動装置16によって収容槽2の中心軸線が斜め方向に変位させられたままで、収容槽回転駆動装置18を駆動して、第1プーリ19及び第2プーリ20に懸架されたベルトによって、収容槽回転駆動装置18の回転力が収容槽2に伝達される。そうすると収容槽2はその中心軸線を傾斜させた状態で中心軸線を中心にして回転する。傾斜した収容槽2が回転すると、バスケット6内に収容されている多数の被塗物Wがバスケット6内で転動する。被塗物Wが転動すると、浸漬液Dが被塗物Wの微小凹部の内部に確実に進入する。
【0079】
なお、収容槽2の中心軸線を縦方向にしたままで収容槽2を回転させる態様に比べて、収容槽2の中心軸線を傾斜させた上で回転させる態様の方が、被塗物Wが浸漬液中でより複雑に攪拌され、転動するので、被塗物Wの微小凹部を含む全ての表面に浸漬液が接触することになる。
【0080】
所定時間のあいだ、傾斜した姿勢の収容槽2を、それが傾斜した状態のまま、中心軸線を回転中心にして回転させ続ける。所定時間の経過御に、収容槽回転駆動装置18の回転を停止すると共に、収容槽軸線変位駆動装置17により、収容槽2の中心軸線を図7に示すように縦方向に変位させる。つまり、収容槽2の姿勢を初期状態に戻す。
【0081】
次いで、浸漬液導入装置4を再度駆動する。浸漬液導入装置4の駆動方法及び各部材の動作は、図5に示した被膜形成装置1における浸漬液導入装置4の駆動についてした説明と同様であるので省略する。図7に示す被膜形成装置1が浸漬液導入装置4を駆動すると、収容槽2の内部は大気圧に戻っているので、浸漬液Dが自重によって、常閉弁体29の周側面とテーパ部41との隙間、及び導入管25内を流通し、貯留槽3に戻される。図7においては、液導入路27の下端、係合部材38及び常閉弁体29の近傍に浸漬液Dの進路を矢印で示している。
【0082】
なお、図7に示す被膜形成装置1が浸漬液導入装置4の駆動により、収容槽2から貯留槽3へと浸漬液Dを戻しても、収容槽2はバスケット6とタンク5とが分かれているので、浸漬液Dと共に被塗物Wが貯留槽3に流出することは無い。
【0083】
収容槽2から浸漬液Dを排出することによって、被塗物Wの表面には被膜が形成されているが、被塗物W表面に余分の浸漬液Dが付着している場合には、図8に示すように、収容槽2の中心軸線を縦方向に維持しつつ収容槽回転駆動装置18を駆動させることにより、余分な浸漬液Dを振り切っても良い。なお、収容槽固定手段21は、収容槽回転駆動装置18が収容槽2を回転させている間、収容槽2の中心軸線が大きくぶれないように収容槽2を固定することができる。このとき、蓋部回動装置10により蓋部7を僅かに開状態にしておくと良い。収容槽2は、タンク5と被塗物Wを収容するバスケット6とに分かれているので、余分な浸漬液Dを振り切ると、タンク5の底部に余分な浸漬液Dが溜まり、被塗物Wに再度付着することが無い。
【0084】
余分な浸漬液Dを振り切った被塗物Wには微小凹部にまで浸漬液の被膜が均一に形成されているので、図9に示すように、収容槽軸線変位駆動装置16により収容槽2の中心軸線を斜め方向に大きく変位させることによって、被塗物Wを取り出すことができる。このとき、振り切った余分な浸漬液Dは、収容槽2が傾斜することにより、収容槽2の底部からタンク5の内壁面を伝って被塗物Wと共に外部へと流出しようとするが、液溜め22に溜まるので、被塗物Wのみを取り出すことが可能である。
【0085】
なお、振り切った余分な浸漬液Dは、収容槽2の内部を大気圧に維持しつつ浸漬液導入装置4を駆動することによって、収容槽2から貯留槽3に戻すこともできる。
【0086】
図9に示すように被膜形成装置1は、バスケット6がタンク5に固定されているので、被塗物Wを取り出すときに収容槽軸線変位駆動装置16によって収容槽2を傾斜させているが、この発明に係る被膜形成装置においては、バスケットが収容槽から離脱可能にして、被塗物を取り出すときにバスケットごと取り出すようにしても良い。
【0087】
バスケット6から取り出された被塗物Wは、乾燥することにより、また浸漬液の組成によっては高温度に加熱すること、つまり焼き付けることにより、被塗物Wの表面に形成された被膜を硬化させる。
【0088】
既に説明したように、微小凹部を有する多数の被塗物の表面に被膜を形成する場合には、この発明に係る被膜形成装置は、大きなメリットがある。
【0089】
記述したように、この発明に係る被膜形成装置によると、微小凹部の隅々にまで浸漬液を導入することができる。
【0090】
従来の塗装装置にあっては、微小凹部のある被塗物を塗料等の浸漬液に浸漬し、次いでその浸漬液から被塗物を引き上げることにより被塗物の塗装を行っていたのであるが、多数の被塗物の中には微小凹部の内部表面が塗装されないという塗工漏れの被塗物が少なからず存在した。塗装が終了してから、多数の、例えば数百個の被塗物から塗装漏れの被塗物を目視で発見するのは、極めて煩雑であり、時間がかかり、人手を要するという不経済な操作である。
【0091】
ところが、この発明に係る被膜形成装置にあっては、微小凹部の隅々にまで浸漬液が進入するので、微小凹部内に被膜が形成されないという不良品が皆無となる。したがって、この発明に係る被膜形成装置は、塗装漏れという不良品発生率をゼロにするという極めて高度の製品要求に対して十分に満足することのできる高品質の被膜形成製品を大量に製造することができる。
【0092】
この発明に係る被膜形成装置は、例えば自動車における各種部品を結合する螺子の塗装、部材と部材との接合部位に微小な隙間つまり微小凹部の存在する組み立て品の塗装、多孔質のセラミックス成形体における微小孔内にまで液を充填する必要のあるセラミックス成形体表面の塗装等に、不良品発生率を殆どゼロにすることのできる高品質の被膜形成を実行することができる。
【0093】
次ぎにこの発明に係る被塗物塗工方法(以下において「この発明の方法」と略称することがある。)について説明する。
【0094】
この発明に係る被塗物塗工方法は、この発明に係る被膜形成装置を使用する。
【0095】
一般に、自動車の車体、自動車における各種部品、家電製品、並びに産業に使用される各種製品たとえば工鉱農林水産業に使用される機械、器具及び装置の表面に形成される塗装膜は、複数層から成り立つ。特に防錆を目的とする塗装膜は、被塗物である基材の表面に防錆被膜とその防錆被膜の表面に形成されたオーバコート被膜とからなる少なくとも二層構造を有する。製品によっては、前記防錆被膜が一層であり、二層であり、また三層以上であることがある。防錆被膜が多層構造である場合に、各防錆被膜層はそれぞれ異なる機能を有することがあるが故に各防錆被膜層を形成する成分が異なることがあり、また製品によっては前記オーバコート被膜が多層構造である場合には、各オーバコート被膜はそれぞれ異なる機能を有することがあるが故に各オーバコート被膜を形成する成分が異なることがある。どのような成分を有する防錆塗料液及びオーバコート塗料液をどのように使用するかは、その製品の構造、用途、要求性能等による。
【0096】
なお、防錆という用語は錆びの発生を防止するという一般的な意味を有すると考えられるが、この発明においては防錆という用語の意味に「防食」の意味を含むものとする。
【0097】
この発明の方法において浸漬液として好適な防錆塗料は、燐片状金属粒子と被膜形成成分と溶媒とを含有する塗料組成物である。なお、以下において、燐片状金属粒子と樹脂成分と溶媒とを含有する塗料組成物を「金属フレーク含有防錆塗料」と称することがある。
【0098】
前記燐片状金属粒子における金属としては亜鉛、及びアルミニウム等を挙げることができる。このような燐片状金属粒子は、金属が亜鉛であると亜鉛フレークと称され、金属がアルミニウムであるとアルミフレークと称される。
【0099】
前記被膜形成成分は、バインダーとも称されることがあり、燐片状金属粒子同士を結合するとともに基材表面に被膜を形成させる。このような被膜形成成分としては、たとえば、有機シリケート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。
【0100】
前記溶媒として水、有機溶媒等を挙げることができる。
【0101】
好適な防錆塗料、特に金属フレーク含有防錆塗料は、日本ダクロシャムロック(株)製の「GEOMET」(商品名)、マグニインダストリー社(USA)製の「ドールフレーク」(商品名)、及びドルケン社(独)製の「デルタ」(商品名)、「デルタトーン」(商品名)、「デルタプロテクト」等を商業的に入手することができる。これらの金属フレーク含有防錆塗料は六価クロム無含有の防錆塗料又は防錆表面処理剤として有用である。前記「GEOMET」と称される塗料組成物は溶媒が水であるから、環境にも優しい有望な塗料組成物である。
【0102】
前記オーバコート塗料液は、通常の場合、前記防錆塗料で形成された防錆塗工層の表面に塗工される。前記オーバコート塗料液には、顔料を有する塗料、及び顔料を含有しない塗料を挙げることができる。また、このオーバコート塗料液として有機溶剤系塗料、水系塗料及びエマルション型塗料等を使用することもできる。
【0103】
この発明の方法では、この発明の被膜形成装置における収容槽内に一つ以上の被塗物、例えば多数の被塗物を収容する。次いで、被塗物を収容した収容槽内を減圧にする。減圧にされた収容槽内に浸漬液として防錆塗料液特に金属フレーク含有防錆塗料を例えば導入管を通じて導入する。そうすると、収容槽内で、防錆塗料液に被塗物が浸漬する。収容槽の中心軸線を縦にした状態又は収容槽の中心軸線を傾斜した状態で収容槽を回転し、或いは回転させずに所定時間が経過してから収容槽から防錆塗料液を除去し、次いで収容槽から被塗物を取り出し、加熱処理をする。前記浸漬液として金属フレーク含有防錆塗料を採用する場合には、金属フレーク含有防錆塗料を表面に被膜として有する被塗物の加熱処理は、ベーク処理とも称されている。
【0104】
加熱処理前における、被塗物の表面に形成された金属フレーク含有防錆塗料の被膜においては、金属フレークが重なりあった状態で存在する。金属フレークが重なりあった状態で存在する被膜は、完全に硬化するに至らない状態となるように、加熱処理される。このような不完全硬化の状態となるように加熱処理をするのは、被膜中で重なり合って存在する金属フレーク間に存在する微小な気泡を後の工程で除去し易くするためである。
【0105】
次いで、不完全硬化状態になっている被膜を有する被塗物を、この発明の被膜形成装置における収容槽内に収容する。次いで、この被塗物を収容する収容槽内を減圧にする。減圧にすると、収容槽内に存在する被塗物においては、不完全硬化状態になっている被膜中に存在する空気が被膜内から被膜の外へと移動し、これによって被膜から空気が除去される。そうすると、被膜には気体の通過した通路が微小な穴となって存在する。つまり、微小な気体通過通路が微小凹部となっている被膜を表面に有する被塗物が、収容槽内に収容されていることになる。
【0106】
したがって、微小な気体通過孔を有する被膜が形成された被塗物は、微小凹部を有する被塗物である。
【0107】
微小な気体通過孔を有する被膜の形成された被塗物におけるその被膜の表面にオーバコート層を形成してもよいが、多くの場合、被膜の形成されていない被塗物を基材であるとすると、基材の表面に形成される防錆層は複数層である。以下の説明は、基材である被塗物の表面に二層からなる防錆層を形成する例である。
【0108】
この微小凹部を有する被塗物、つまり微小凹部である微小な気体通過孔を有する防錆層が表面に形成された被塗物を収容した収容槽内に、前記金属フレーク含有防錆塗料を、導入管を通じて導入する。金属フレーク含有防錆塗料は、導入管を通じて、大気圧に押されて減圧状態の収容槽内に、容易に導入される。したがって、この発明の方法は、被膜形成装置を使用する限り、金属フレーク含有防錆塗料を強制的に移送するポンプは無用であるという利点を有する。
【0109】
微小凹部を有する被塗物を収容した収容槽内に金属フレーク含有防錆塗料を導入すると、導入された金属フレーク含有防錆塗料が、被膜が形成される以前の被塗物の表面に形成された被膜における微小凹部すなわち微小な気体通過孔に、容易に進入する。
【0110】
収容槽の中心軸線を縦にした状態又は収容槽の中心軸線を傾斜した状態で収容槽を回転し、或いは回転させずに所定時間が経過してから収容槽から金属フレーク含有防錆塗料を除去し、次いで収容槽から被塗物を取り出し、加熱処理をする。
【0111】
防錆層を三層以上の層構成にするのであれば、被塗物の加熱処理は、被塗物の表面に形成された第1番目の防錆層の上に形成された第2番目の防錆層が不完全に硬化する程度の温度に、取り出された被塗物を、加熱する。防錆層を二層構造にするのであれば、次の工程に示すように、第1番目及び第2番目の防錆層を完全に硬化する程度の温度に、被塗物を、加熱する。
【0112】
すなわち、加熱処理をすると被膜形成成分が硬化することにより被膜全体が完全硬化する。完全硬化した被膜にあっては、最初の工程で形成された被膜に存在する微小な気体通過孔に、次ぎの工程で形成された被膜における金属フレーク含有防錆塗料が進入した状態になっている。いわば、第1番目の防錆層である被膜に形成されている微小な気体通過孔に第2番目の防錆層である被膜の一部が進入した状態になっているので第2番目の防錆層が楔又は錨となって第1番目の防錆層内に食い込んでいるいわゆるアンカー効果が発揮されて、第2番目の防錆層が第1番目の防錆層から容易に剥離しない強靭な防錆層が形成される。また、第1番目である防錆層を有する被塗物においては、第1番目の防錆層中に含まれる空気やその他の気体成分が除去されているので、ボイドや空隙のない防錆被膜となっている。したがって、例えば第2番目の防錆層にボイドが存在するにしても、第1番目の防錆層にはボイド及び空隙等が存在しないので、外部から基材である被塗物の表面に、基材を腐食させる成分例えば湿気等が到達しないので、防錆効果、防食効果に優れた塗膜を有する製品を、この発明の被膜形成装置を利用したこの発明の方法により、塗り残りのある不良品を生じさせることなく、製造することができる。
【0113】
なお、以上の説明においてはこの発明の方法を、被塗物である基材の表面に第1層つまり下層及び第2層つまり上層からなる防錆塗工膜を形成する場合について説明したのであるが、基材の表面に形成される塗工膜となる層の数は二層に限られず、三層以上であっても良い。三層以上の防錆塗工膜を形成するときには、最上層よりも下側の層である各防錆層は不完全硬化するように加熱処理し、最上層である防錆層は完全硬化するように加熱処理するのが、よい。
【0114】
多くの場合は、基材である被塗膜の表面に複数層からなる防錆層の表面にさらに一層又は複数層のオーバコート層が形成される。
【0115】
被膜であるオーバコート層を形成するときには、複数層からなる防錆層における最上層の防錆層は不完全硬化となるように加熱処理をしておく。
【0116】
最上層が不完全硬化している防錆層を表面に被膜として有する被塗物を収容槽に収容し、ついでその収容槽内を減圧にする。そうすると、既に説明したように、不完全硬化している最上層の防錆層内の気体が防錆層外に排出されることにより、最上層の防錆層に気体通過孔が形成される。かくして形成された気体通過孔を有する防錆層で表面を被覆している被塗物は、この発明における「微小凹部を有する被塗物」に相当する。
【0117】
その後に、前記微小凹部を有する被塗物を収容する収容槽内にオーバコート塗料を導入する。既に説明したように、収容槽内が減圧になっているから収容槽外のオーバコート塗料は大気圧によって簡単に収容槽内に移送される。したがって、この発明の方法は、塗料を強制的に移送するポンプが不要であり、ポンプを使用しないのでポンプ設置のスペースが不要であり、ポンプを駆動する電力も不要になってコスト削減に大きく寄与する。
【0118】
収容槽内に導入されたオーバコート塗料液に前記被塗物が浸漬すると、最上層の防錆層に形成された気体通過孔にオーバコート塗料液が進入する。収容槽内からオーバコート塗料液を排出すると、最上層の防錆層の表面にオーバコート層が形成されてなる被膜を有する被塗物が得られる。
【0119】
オーバコート層が一層である場合には、収容層から取り出したところの、複数層からなる防錆層とその表面に形成されたオーバコート層とからなる被膜を有する被塗物を加熱処理してオーバコート層を完全硬化させる。
【0120】
複数層からなる層構成のオーバコート層を形成するには、最上層のオーバコート層を不完全硬化となるように加熱処理しておく。
【0121】
複数のオーバコート層を形成する操作は、複数の防錆層を形成する操作と同様である。
【0122】
この発明の方法により形成された防錆層(防錆被膜とも称する。)とオーバーコート層(オーバコート被膜とも称する。)とを備えた被膜、あるいは一般的な塗料を塗装することにより形成されたところの、下層及びその上層からなる少なくとも二層構成の被膜は、層間剥離がなく、また層中に気泡がなく、したがって被膜強度が大きく、耐久性があり、従来のように気泡の存在による基材の錆び発生といった問題のない被膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
この発明の被膜形成装置は、塗装を行う必要のある全ての技術分野、例えば自動車産業等における各種部品の塗装技術分野に応用されることができる。この発明の方法は、塗工膜中に気泡やボイドのない塗装を行う必要のある全ての技術分野、例えば自動車産業等における各種部品の塗装技術分野に応用されることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 被膜形成装置
2 収容槽
3 貯留槽
4 浸漬液導入装置
5 タンク
5A 収容槽基台
5B 基台底部
5C 円筒形枠体
6 バスケット
7 蓋部
8 挿通管
9 減圧装置
9A 気体流通口
9B 可撓性配管
9C 三方弁
9D 大気開放管
10 蓋部回動装置
10A 駆動モータ
11 蓋部回動軸
12 支持部
13 第1貯留槽
14 第2貯留槽
15 浸漬液循環路
16 収容槽軸線変位駆動装置
16A ベアリング
16B 外側円筒形支持体
16C 保持部材
16D 第2保持部材
17 収容槽変位軸
18 収容槽回転駆動装置
18A 駆動モータ
18B ベルト
19 第1プーリ
20 第2プーリ
21 収容槽固定手段
21A エアシリンダ
21B 軸体
21C 係止部
21D 連結部
22 液溜め
23 立上り面
24 タンクテーパ面
25 導入管
26 開閉弁
27 液導入路
28 底部
28A 中間連結部材
29 常閉弁体
29A 弁体密接面
30 弁体駆動部材
31 押圧部材
32 ダイアフラム
33 被押圧板
34 挿通棒
35 押さえ板
36 付勢部材
37 受け板
38 係合部材
39 上端開口部
40 開口部
41 テーパ部
P 真空ポンプ
W 被塗物
D 浸漬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物を収容することができる収容槽と、
前記収容槽の内部を減圧にする減圧装置と、
前記被塗物の表面に被膜を形成することのできる浸漬液を貯留する貯留槽と、
前記被塗物を収容すると共に前記減圧装置により内部が減圧にされた前記収容槽内に、前記貯留槽内の浸漬液を、導入する浸漬液導入装置とを有することを特徴とする被膜形成装置。
【請求項2】
前記浸漬液導入装置は、前記収容槽の内部と連通する液導入路を備えた導入管と、前記液導入路を開閉可能にする開閉弁とを有して成る前記請求項1に記載の被膜形成装置。
【請求項3】
前記導入管は、前記収容槽の底部に設けられ、
前記開閉弁は、前記導入管の前記液導入路を閉鎖する常閉弁体と、前記液導入路を前記収容槽の内部と連通するように前記常閉弁体を強制移動させる弁体駆動部材とを備える前記請求項2に記載の被膜形成装置。
【請求項4】
前記収容槽を、前記収容槽の中心軸線を縦方向と斜め方向とのいずれかに変位させる収容槽軸線変位駆動装置を備えてなる前記請求項3に記載の被膜形成装置。
【請求項5】
前記収容槽を、前記収容槽の中心軸線を中心にして回転させる収容槽回転駆動装置を備えてなる前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の被膜形成装置。
【請求項6】
前記浸漬液が、塗料液である前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の被膜形成装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の被膜形成装置を使用して被塗物の表面に被膜を形成することを特徴とする被塗物塗工方法。
【請求項8】
前記被膜形成装置に使用される浸漬液が、防錆塗料液及びオーバコート塗料液であり、前記被膜形成装置における被塗物を収容した収容槽を減圧にすることにより被塗物の表面に直接に被膜を形成する浸漬液が防錆塗料液であり、被塗物の表面に形成された防錆被膜の表面にオーバコート被膜を形成する浸漬液がオーバコート塗料液である前記請求項7に記載の被塗物塗工方法。
【請求項9】
前記防錆塗料液が、燐片状金属粒子と被膜形成成分と溶媒とを含有する防錆塗料組成物である前記請求項8に記載の被塗物塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−92906(P2011−92906A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251434(P2009−251434)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(594146331)光機熱工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】