説明

被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材、およびそれを用いた被覆チューブの取付け方法

【課題】電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を提供する。
【解決手段】第1の筒状部材10と第2の筒状部材20とから構成され、第1の筒状部材は、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材15を有し、第2の筒状部材は、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材25と、その他方端の開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材26と、を有し、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能になっている。大径コア部材の除去によって、第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径部位が、前記第2の筒状弾性体成形物の他方の端部の内径部位に嵌着される。第1小径コア部材および第2小径コア部材の除去によって、電線を被覆している外皮と密着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の接続部に、防湿、電気的な絶縁、及び機械的保護処理を施すための被覆チューブに関するものであって、特に、電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる被覆電線同士の接続箇所を、防湿、電気的絶縁、機械的保護等の目的で被覆処理するために、例えば、特開平7−57798号に開示されているような被覆チューブが用いられている。
【0003】
この被覆チューブは、電気絶縁性を有した可撓性材料からなる管状のスリーブ部と、このスリーブ部の複数の端部に管状のシール部と、を有して構成され、管状のスリーブ部が電気接続部における電線の露出長さ部分を被覆するように構成され、管状のシール部が露出部長部分に隣接する電線外皮を包囲するように電線接続部に装着される構造を有している。そして、シール部は、電線接続部の電線外皮の外表面に密着する弾性収縮要素を備え、この弾性収縮要素の内部には、被覆チューブの装着前に一時的に電線外皮の外径よりも大きな挿入径を形成するためのコア要素が挿入されている。コア要素は被覆チューブ装着時に除去される。
【0004】
しかしながら、このような従来の被覆チューブは、接続対象となる一方の被覆電線を被覆チューブ内に挿通させ、しかる後、被覆チューブの外のエリアで他方の被覆電線と電線接続部を形成した後、この接続形成された電線接続部を被覆チューブの略中央内部に位置させるために、挿通させた一方の被覆電線を元に引き戻す作業が必要となる。そのため、電線接続部の最大外径はスリーブ部の最小内径寸法よりも小さくする必要があり、これにより電線接続部の形成の大きさ(特に、径方向)に制限が生じる。
【0005】
近時、電線接続部においては、電線の露出部分を残すことは希であり、露出部分を完全にシールテープなどで厚く覆ってから、次いでこの上に被覆チューブを被せる操作が行えるということが、高電圧接続の場合などに要望される場合がある。このような操作は、上述した従来の被覆チューブでは挿通させた一方の被覆電線を元に引き戻す作業ができないために適用できないという問題がある。
【0006】
また、従来の被覆チューブは、従来例の図からも明らかなようにコア要素を介して端部のシール部を大きく拡径させておく必要があり、拡径作業が極めて困難であるという問題がある。また、拡径できるにしても、ゴム収縮度には限度があり、コア要素を除去した後の電線外皮の外表面への密着度が不十分になる傾向が生じ、密着性を確実に行うためには特別な物性のゴムを用いることが必要となる。
【0007】
また、従来の被覆チューブでは挿通させた一方の被覆電線を引き戻す作業を行った後に、触診により電線接続部が被覆チューブの中央に位置することを確認しなければならず、その作業は決して容易であるとは言えるものではない。
【0008】
【特許文献1】特開平7−57798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実状のもとに本発明は、創案されたものであり、その目的は、(1)電線接続部においては、電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きくなるような場合において、被覆チューブを被せる操作を行なうことができ、(2)コア要素を介して被覆チューブの端部のシール部の拡径の程度を小さくできて、拡径作業が容易で、かつ、コア要素を除去した後の電線外皮の外表面への密着性が良く、かつ(3)電線接続部を被覆チューブの中央に位置させる位置決めが容易である電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材、およびそれを用いた電線接続部の被覆チューブ、さらにはその取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材であって、前記1対の組合せ部材は、第1の筒状部材と第2の筒状部材とから構成され、前記第1の筒状部材は、第1の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材と、を有し、前記第2の筒状部材は、第2の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材と、その他方端の開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材と、を有し、前記第1の筒状弾性体成形物は、一方の端部が最小内径(D1min)を構成し、他方の端部が最大内径(D1max)を構成する筒状体であって、最小内径(D1min)側の開口部内に前記第1小径コア部材が挿入されており、前記第2の筒状弾性体成形物は、一方の端部が最小内径(D2min)を構成し、他方の端部が最大内径(D2max)を構成する筒状体であって、最小内径(D2min)側の開口部内に前記第2小径コア部材が挿入されており、最大内径(D2max)側の開口部内に前記大径コア部材が挿入されており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材は、それぞれ、電線を被覆している外皮の外径よりも大きな内径を有しており、前記大径コア部材の内径は、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径よりも大きく設定されており、当該第1の筒状弾性体成形物の他方の端部が、大径コア部材の中に装着可能となっており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材は、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能になっており、前記大径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径部位が、前記第2の筒状弾性体成形物の他方の端部の内径部位に嵌着されるようになっており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の一方の端部、および前記第2の筒状弾性体成形物の一方の端部は、電線を被覆している外皮と密着されるように構成される。
【0011】
また、本発明の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の好ましい態様として、前記第1の筒状弾性体成形物および第2の筒状弾性体成形物の内腔部位(電線を被覆している外皮と密着される一方の端部部位を除く)には、組合せ後の形態において、中央から外方に向けて内径が漸減するテーパー部が形成されており、当該テーパー部に、電線を被覆している外皮よりも径の大きい電線接続部が係止可能になっているように構成される。
【0012】
また、本発明の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の好ましい態様として、前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、それぞれ、一方の端部側に電線被覆の外皮に密着できる最小内径領域と、これに連接し他端に向かって拡がる第1のテーパー領域と、この第1のテーパー領域に連接する第1の実質的ストレート領域と、この実質的ストレート領域に連接し他端に向かって拡がる第2のテーパー領域と、この第2のテーパー領域に連接する第2の実質的ストレート領域と、を有して構成される。
【0013】
また、本発明の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の好ましい態様として、前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物の最小内径領域の内腔に、第1小径コア部材および第2小径コア部材を、それぞれ、挿着して前記最小内径領域を拡張させた時に、最小内径領域の外径と、第1の実質的ストレート領域の外径とが実質的に同じ外径となるように構成される。
【0014】
また、本発明の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の好ましい態様として、前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、電気絶縁性を有する材料から構成される。
【0015】
また、本発明の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の好ましい態様として、前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、ゴム材料からなり、当該ゴム材料は、200%モジュラスが100〜215N/cm2、引張強さが500〜1185N/cm2、伸びが500〜1100%、永久伸びが3〜25%(3倍伸張70℃、240Hr)の物性を備えてなるように構成される。
【0016】
本発明は、上記の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を用いて、電線接続部を形成した後に被覆チューブを取付ける方法であって、該方法は、電線接続対象である2本の被覆電線を準備し、一方の被覆電線を第1の筒状部材の中に挿通させ、他方の被覆電線を第2の筒状部材の中に挿通させ、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを離した間隙で電線接続部を形成し、しかる後、第1の筒状部材と第2の筒状部材を組合せ、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材を除去するように構成される。
【0017】
本発明は、上記の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を用いて、電線接続部を形成した後に被覆チューブを取付ける方法であって、該方法は、電線接続対象である2本の被覆電線を準備し、一方の被覆電線を第1の筒状部材の中に挿通させ、他方の被覆電線を第2の筒状部材の中に挿通させ、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを離した間隙で電線接続部を形成した後、電線接続部が被覆チューブの中央となるように、第1の筒状部材または第2の筒状部材を位置合せし、位置合せした第1の筒状部材または第2の筒状部材の第1小径コア部材または第2小径コア部材を除去し、しかる後、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを組み合わせ、残余の第1小径コア部材または第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材を除去するように構成される。
【0018】
本発明の電線接続部の被覆チューブは、上記の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を組合せ、一体化させることにより構成される。
【発明の効果】
【0019】
電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材であって、前記1対の組合せ部材は、第1の筒状部材と第2の筒状部材とから構成され、前記第1の筒状部材は、第1の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材と、を有し、前記第2の筒状部材は、第2の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材と、その他方端の開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材と、を有し、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材は、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能になっており、前記大径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径部位が、前記第2の筒状弾性体成形物の他方の端部の内径部位に嵌着されるようになっており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の一方の端部、および前記第2の筒状弾性体成形物の一方の端部は、電線を被覆している外皮と密着されるように構成されているので、従来より例を見ない被覆チューブの被着操作が行え、いわゆる拡径作業が容易でかつコア要素を除去した後の電線外皮の外表面への密着性が良く、しかも電線接続部を被覆チューブの中央に位置させる位置決めが容易かつ確実に行えるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
本発明は、電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材、およびそれを用いた電線接続部の被覆チューブ、並びにその被覆チューブの取付け方法に関するものである。
図1は、被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の基礎部材である筒状弾性体成形物の断面図を示したものであり、図2は、電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の半片断面図を示したものであり、図3は、被覆チューブの取付け後の状態を半片断面図で示したものである。
【0022】
まず、最初に図2を基本に参照しつつ、被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材について説明する。
【0023】
〔被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材についての説明〕
本発明は、電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材に関するものである。従って、被覆チューブの中には、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい寸法を有する電線接続部が内部に収納されていることになる。
【0024】
ここで、「被覆チューブの実質的な最小内径寸法」とは、「電線外皮と密着する被覆チューブの両端部を除いた被覆チューブにおける、最小内径寸法」をいう。従来技術でいえば、スリーブ部の最小内径寸法ということになる。
【0025】
本発明における被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材は、図2に示されるように、第1の筒状部材10と、第2の筒状部材20とから構成される。
【0026】
第1の筒状部材10は、第1の筒状弾性体成形物11と、その一方端11aの開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材15と、を有している。
【0027】
第2の筒状部材20は、第2の筒状弾性体成形物21と、その一方端21aの開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材と25、その他方端21bの開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材26と、を有している。
【0028】
第1の筒状弾性体成形物11および第2の筒状弾性体成形物21は、それぞれ、成形後の単体の状態では図1に示されるような形態をなしている。ここでは、これら双方の筒状弾性体成形物11,21が同一形状として成形されている場合を例にとって説明する。もちろん、筒状弾性体成形物11,21は同一形状とする必要はないが、同一形状とすることにより、金型作製費用や成形品単価の低減等、経済的なメリットが生じる。
【0029】
第1の筒状弾性体成形物11は、図1に示されるように、一方の端部が最小内径(D1min)を構成し、他方の端部が最大内径(D1max)を構成する筒状体である。そして、図2に示されるように、最小内径(D1min)側の開口部内に、第1小径コア部材15が挿入されている。
【0030】
第2の筒状弾性体成形物21は、図1に示されるように、一方の端部が最小内径(D2min)を構成し、他方の端部が最大内径(D2max)を構成する筒状体である。そして、図2に示されるように、最小内径(D2min)側の開口部内に、第2小径コア部材25が挿入されており、最大内径(D2max)側の開口部内に大径コア部材26が挿入されている。
【0031】
第1小径コア部材15および第2小径コア部材25は、それぞれ、電線を被覆している外皮の外径よりも大きな内径を有している。被覆電線を挿通させる操作ができることが必要だからである。
【0032】
図2に示されるように、大径コア部材26の内径Pは、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bの外径Qよりも大きく設定されている。第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bを、大径コア部材26の中に装着可能とするためである。
【0033】
そして、第1小径コア部材15および第2小径コア部材25、ならびに大径コア部材26は、それぞれ、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能に構成されている。これらのコア部材の構成や、作用はすでに一般的に先行技術の中でも知られているものである。具体的には、第1小径コア部材15および第2小径コア部材25ならびに大径コア部材26は、それぞれ、例えば、硬質プラスチックからなる円筒形状の部材であり、通常、円筒壁の全長に亘って螺旋状に延びる切込みと、内部端面にストリップ状に延出する延長部15a、25a、26a(図2)を有し、延長部の先端は開口部の外方開口側に配置されている。
【0034】
前述したように大径コア部材26の内部(内径P)に、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11b(外径Q)が装着される関係から、大径コア部材26のストリップ状に延出する延長部26aの先端は、装着隙間((P−Q)/2)から引き出される。そして、このものを引っ張ることにより、螺旋状に紐解かれるようになっている。
【0035】
なお、各コア部材15、25、26は、これらが筒状弾性体成形物の端部に装着される際には、筒状弾性体成形物の弾性回復力に抗して、拡径状態を保持するに足る十分な強度を有している。
【0036】
図2に示される状態から、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bを、大径コア部材26の内径内に装着させ、しかる後、大径コア部材26を螺旋状に紐解きつつ除去することによって、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bの外径Qの部位が、第2の筒状弾性体成形物21の他方の端部21bの内径Pの部位に嵌着されるようになっている(図3の状態を参照)。
【0037】
さらに、第1小径コア部材15および第2小径コア部材25を、それぞれ、螺旋状に紐解きつつ除去することによって、第1の筒状弾性体成形物11の一方の端部11a、および第2の筒状弾性体成形物21の一方の端部21aは、電線を被覆している外皮と密着されるようになっている(図3の状態を参照)。図3において符号33は電線外皮(いわゆる電線)を示している。
【0038】
図3に示されるように、第1の筒状弾性体成形物11および第2の筒状弾性体成形物21の内腔部位(電線を被覆している外皮と密着される一方の端部部位を除く)には、組合せ後の形態において、中央から外方に向けて内径が漸減するテーパー部Tが形成されている。そして、このテーパー部Tに、電線を被覆している外皮よりも径の大きい電線接続部50が係止可能になっている。つまり、本発明では、上述したように、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい寸法を有する電線接続部を内部に収納することができているのである。既存のもの(例えば、従来技術で開示の被覆チューブ)は、電線を被覆している外皮の径の約4倍以上大きい寸法の電線接続部は収納できない場合が多く、かつ、電線接続部の最大外径寸法がスリーブ部の最小内径寸法よりも大きくなると使用できない。
【0039】
本発明において、電線を被覆している外皮よりも径の大きい電線接続部50は、例えば、絶縁ゴム材料(EPTやシリコーンゴム等)のある程度の硬さを有する材料により剥き出しの接続部を被覆するようにして形成される。
【0040】
第1の筒状弾性体成形物11および第2の筒状弾性体成形物21のそれ自体の好適な一形態を挙げると、それぞれ、図1に示されるように、一方の端部側に電線被覆の外皮に密着できる最小内径領域(H)と、これに連接し他端に向かって拡がる第1のテーパー領域(I)と、この第1のテーパー領域(I)に連接する第1の実質的ストレート領域(J)と、この実質的ストレート領域(J)に連接し他端に向かって拡がる第2のテーパー領域(K)と、この第2のテーパー領域(K)に連接する第2の実質的ストレート領域(L)と、を有して構成される。ここでいう実質的ストレート領域とは、テーパー角度として表示した場合、5度以内のものをいう。
【0041】
そして、第1の筒状弾性体成形物10および第2の筒状弾性体成形物20の最小内径領域(H)の内腔に、第1小径コア部材15および第2小径コア部材25を、それぞれ、挿着して最小内径領域(H)を拡張させた時に、最小内径領域(H)の外径と、第1の実質的ストレート領域(I)の外径とが実質的に同じ外径となり、段差をなくするように設計することが望ましい。実質的に同じ外径とは、±10%の径範囲内のものをいう。このように段差をなくするように設計することにより、1対の組合せ部材10、20そのもののハンドリングが極めて容易になり、被覆チューブの取付け作業をスムースに行うことができる。
【0042】
第1の筒状弾性体成形物11および第2の筒状弾性体成形物21は、電気絶縁性および弾性の伸縮作用が必要である。従ってこれらのものは、ゴム材料から形成することが望ましく、使用されるゴム材料としては、200%モジュラスが100〜215N/cm2、引張強さが500〜1185N/cm2、伸びが500〜1100%、永久伸びが3〜25%(3倍伸張70℃、240Hr)の物性を備えていることが望ましい。
【0043】
次いで、上述してきた電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材10、20を用いて、電線接続部を形成した後に被覆チューブを取付ける方法について説明する。
【0044】
〔被覆チューブを取付ける方法についての説明〕
以下、好適な第1の方法および第2の方法について説明する。
【0045】
(第1の方法)
本発明の被覆チューブを取付けるには、まず、最初に電線接続対象である2本の被覆電線を準備する。そして、一方の被覆電線を第1の筒状部材10の中に挿通させる。他方の被覆電線を第2の筒状部材20の中に挿通させる。その後、第1の筒状部材10と第2の筒状部材20とを離した間隙において電線接続部50を形成する。この電線接続部50は径太に形成され、電線接続部50の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい寸法を有する。そのため、中央から外方に向けて内径が漸減するテーパー部Tに、電線を被覆している外皮よりも径の大きい電線接続部50が係止可能な構造となっている。
【0046】
しかる後、第1の筒状部材と第2の筒状部材を組合せる。つまり、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bを、大径コア部材26の中に入れた後、第1小径コア部材15および第2小径コア部材25ならびに大径コア部材26を除去する。大径コア部材26の除去によって、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bの外径部位が、第2の筒状弾性体成形物21の他方の端部21bの内径部位に嵌着される。第1小径コア部材15および第2小径コア部材25の除去によって、第1の筒状弾性体成形物11の一方の端部11a、および第2の筒状弾性体成形物21の一方の端部21aは、電線を被覆している外皮と密着される。
【0047】
なお、第1の筒状弾性体成形物11の他方の端部11bと、第2の筒状弾性体成形物21の他方の端部21bの嵌着部位が、ある程度の強度を有するために、用いる双方の弾性体は、それぞれ、その硬度JISAが、40以上、特に50以上、肉厚が8mm以上、特に10mm以上というように設計されることが望ましい。
【0048】
(第2の方法)
まず、最初に電線接続対象である2本の被覆電線を準備する。そして、一方の被覆電線を第1の筒状部材10の中に挿通させる。他方の被覆電線を第2の筒状部材20の中に挿通させる。その後、第1の筒状部材10と第2の筒状部材20とを離した間隙において電線接続部50を形成する。この電線接続部50は径太に形成され、電線接続部50の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい寸法を有する。
【0049】
その後、電線接続部50が被覆チューブの中央となるように、第1の筒状部材10または第2の筒状部材20を目視にて位置合せする。位置合せした第1の筒状部材10または第2の筒状部材20の第1小径コア部材15または第2小径コア部材25を除去する。しかる後、第1の筒状部材10と第2の筒状部材20とを組み合わせ、残余の第1小径コア部材15または第2小径コア部材25ならびに大径コア部材26を除去する。この方法では、電線接続部50の被覆チューブの中央への位置が容易かつ確実に行える。
【0050】
以上の説明からもわかるように、本願発明は、電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材であって、前記1対の組合せ部材は、第1の筒状部材と第2の筒状部材とから構成され、前記第1の筒状部材は、第1の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材と、を有し、前記第2の筒状部材は、第2の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材と、その他方端の開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材と、を有し、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材は、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能になっており、前記大径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径部位が、前記第2の筒状弾性体成形物の他方の端部の内径部位に嵌着されるようになっており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の一方の端部、および前記第2の筒状弾性体成形物の一方の端部は、電線を被覆している外皮と密着されるように構成されているので、従来より例を見ない被覆チューブの被着操作が行え、いわゆる拡径作業が容易でかつコア要素を除去した後の電線外皮の外表面への密着性が良く、しかも電線接続部を被覆チューブの中央に位置させる位置決めが容易かつ確実に行えるという効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
電線の接続部に、防湿、電気的な絶縁、及び機械的保護処理を施すための被覆チューブに関する技術に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の基礎部材である筒状弾性体成形物の断面図を示したものである。
【図2】図2は、電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材の半片断面図を示したものである。
【図3】図3は、被覆チューブの取付け後の状態を半片断面図で示したものである。
【符号の説明】
【0053】
10…第1の筒状部材
11…第1の筒状弾性体成形物
15…第1小径コア部材
20…第2の筒状部材
21…第2の筒状弾性体成形物
25…第2小径コア部材
26…大径コア部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線接続部の最大外径が、被覆チューブの実質的な最小内径寸法よりも大きい場合に用いられる電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材であって、
前記1対の組合せ部材は、第1の筒状部材と第2の筒状部材とから構成され、
前記第1の筒状部材は、第1の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第1小径コア部材と、を有し、
前記第2の筒状部材は、第2の筒状弾性体成形物と、その一方端の開口部内に装着されて拡径作用を有する第2小径コア部材と、その他方端の開口部に装着されて拡径作用を有する大径コア部材と、を有し、
前記第1の筒状弾性体成形物は、一方の端部が最小内径(D1min)を構成し、他方の端部が最大内径(D1max)を構成する筒状体であって、最小内径(D1min)側の開口部内に前記第1小径コア部材が挿入されており、
前記第2の筒状弾性体成形物は、一方の端部が最小内径(D2min)を構成し、他方の端部が最大内径(D2max)を構成する筒状体であって、最小内径(D2min)側の開口部内に前記第2小径コア部材が挿入されており、最大内径(D2max)側の開口部内に前記大径コア部材が挿入されており、
前記第1小径コア部材および第2小径コア部材は、それぞれ、電線を被覆している外皮の外径よりも大きな内径を有しており、
前記大径コア部材の内径は、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径よりも大きく設定されており、当該第1の筒状弾性体成形物の他方の端部が、大径コア部材の中に装着可能となっており、
前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材は、電線接続部を被覆するように装着する際に除去可能になっており、前記大径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の他方の端部の外径部位が、前記第2の筒状弾性体成形物の他方の端部の内径部位に嵌着されるようになっており、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材の除去によって、前記第1の筒状弾性体成形物の一方の端部、および前記第2の筒状弾性体成形物の一方の端部は、電線を被覆している外皮と密着されるようになっていることを特徴とする電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項2】
前記第1の筒状弾性体成形物および第2の筒状弾性体成形物の内腔部位(電線を被覆している外皮と密着される一方の端部部位を除く)には、組合せ後の形態において、中央から外方に向けて内径が漸減するテーパー部が形成されており、当該テーパー部に、電線を被覆している外皮よりも径の大きい電線接続部が係止可能になっている請求項1に記載の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項3】
前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、それぞれ、一方の端部側に電線被覆の外皮に密着できる最小内径領域と、これに連接し他端に向かって拡がる第1のテーパー領域と、この第1のテーパー領域に連接する第1の実質的ストレート領域と、この実質的ストレート領域に連接し他端に向かって拡がる第2のテーパー領域と、この第2のテーパー領域に連接する第2の実質的ストレート領域と、を有して構成される請求項1または請求項2に記載の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項4】
前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物の最小内径領域の内腔に、第1小径コア部材および第2小径コア部材を、それぞれ、挿着して前記最小内径領域を拡張させた時に、最小内径領域の外径と、第1の実質的ストレート領域の外径とが実質的に同じ外径となる請求項3に記載の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項5】
前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、電気絶縁性を有する材料から構成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項6】
前記第1の筒状弾性体成形物および前記第2の筒状弾性体成形物は、ゴム材料からなり、当該ゴム材料は、200%モジュラスが100〜215N/cm2、引張強さが500〜1185N/cm2、伸びが500〜1100%、永久伸びが3〜25%(3倍伸張70℃、240Hr)の物性を備えてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を用いて、電線接続部を形成した後に被覆チューブを取付ける方法であって、
該方法は、
電線接続対象である2本の被覆電線を準備し、一方の被覆電線を第1の筒状部材の中に挿通させ、他方の被覆電線を第2の筒状部材の中に挿通させ、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを離した間隙で電線接続部を形成し、しかる後、第1の筒状部材と第2の筒状部材を組合せ、前記第1小径コア部材および第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材を除去することを特徴とする被覆チューブの取付け方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を用いて、電線接続部を形成した後に被覆チューブを取付ける方法であって、
該方法は、
電線接続対象である2本の被覆電線を準備し、一方の被覆電線を第1の筒状部材の中に挿通させ、他方の被覆電線を第2の筒状部材の中に挿通させ、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを離した間隙で電線接続部を形成した後、電線接続部が被覆チューブの中央となるように、第1の筒状部材または第2の筒状部材を位置合せし、位置合せした第1の筒状部材または第2の筒状部材の第1小径コア部材または第2小径コア部材を除去し、しかる後、第1の筒状部材と第2の筒状部材とを組み合わせ、残余の第1小径コア部材または第2小径コア部材ならびに前記大径コア部材を除去することを特徴とする被覆チューブの取付け方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された電線接続部の被覆チューブ形成用の1対の組合せ部材を組合せ、一体化させることにより形成された電線接続部の被覆チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−20967(P2010−20967A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178998(P2008−178998)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】