説明

装着装置及び装着方法

【課題】ウエハ等の板状部材と接触体とをより良く密着させて装着すること。
【解決手段】半導体ウエハWに面接触して支持する粘性を備えた接触体20及びこれを支持する基台21と、ウエハWに対する接触体20の接触面積を調整する接触面積調整手段と、ウエハWと接触体20との間の空間C2を減圧可能な圧力調整手段とを備えて支持手段11が構成されている。支持手段11を保持可能な保持手段12を備えて装着装置10が構成されている。保持手段12は、接触面積調整手段に接続可能で吸引を行う貫通孔33Aと、圧力調整手段に接続可能で吸引を行う貫通孔32Aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着装置及び装着方法に係り、特に、半導体ウエハ等の板状部材を極薄に研削したり、極薄に研削された半導体ウエハを搬送する場合に、安定して半導体ウエハを支持することのできる支持手段を装着することができる装着装置及び装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する)を加工する装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。同文献の装置において、ウエハは、表面に保護シートが貼付された状態で裏面の研削が行われた後、搬送装置を介して次工程に搬送される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−343756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近時のウエハの直径の大型化や、数十μm厚にまで研削する極薄化により、ウエハの搬送中、当該ウエハが曲がったり変形したりして割れ等の損傷が生じてしまう場合があり、ウエハの搬送を行えなくなるという不都合がある。ここで、保護シートの貼付によりウエハをある程度補強できるものの、前記大型化や極薄化の技術が向上する現状では、前記不都合を十分に回避することが困難となる。
【0005】
ところで、本出願人は、前記不都合を回避すべく、特願2007−208264号を提案した。この出願では、ウエハに面接触して支持する粘性を備えた接触体及びこれを支持する基台を有する支持手段を用いてウエハの搬送を行っている。具体的には、ウエハに接触体を重ねて面接触した後、それらの界面を真空引きして支持手段にウエハを支持させている。ところが、このようにウエハを支持させた場合、真空引きされる領域が吸引口周辺のみとなるため、ウエハと接触体との密着性をより高めたい、という要請がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、前記不都合に着目しつつ前記要請に対応して案出されたものであり、その目的は、接触体と板状部材とを密着させて良好に一体化することができる装着装置及び装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、板状部材に面接触して支持する粘性を備えた接触体及びこれを支持する基台と、板状部材に対する接触体の接触面積を調整する接触面積調整手段と、板状部材と接触体との間の空間を減圧可能な圧力調整手段とを備えた支持手段の装着装置であって、
前記接触面積調整手段に接続可能な第1吸引部と、前記圧力調整手段に接続可能な第2吸引部とを有する、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記支持手段を保持可能に設けられた保持手段と、この保持手段を移動させる移動手段とを更に備える、という構成も好ましくは採用される。
【0009】
また、本発明の搬送方法は、 板状部材に面接触して支持する粘性を備えた接触体及びこれを支持する基台と、板状部材に対する接触体の接触面積を調整する接触面積調整手段と、板状部材と接触体との間の空間を減圧可能な圧力調整手段とを備えた支持手段の装着方法であって、前記接触体を接触面積調整手段により部分的に陥没させる工程と、前記部分的に陥没された接触体を板状部材に接触させて部分的に接触させる工程と、前記板状部材と接触体との間の空間を圧力調整手段により減圧する工程と、前記接触面積調整手段によって前記部分的な接触から全体的な接触とする工程と、前記圧力調整手段による減圧を解除して前記支持手段と板状部材とを一体化する工程とを備える、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1吸引部による吸引により、接触体と板状部材とが部分的に接触したり、全体的に接触したりするようにコントロールできるので、それらの密着性をより高めることができる。しかも、第2吸引部により板状部材と接触体との間の空間を減圧するので、密着性をより一層高めることが可能となる。
また、保持手段と移動手段を設けることで、板状部材と支持手段を一体化した状態で搬送することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、実施形態に係る装着装置の概略平面図が示され、図2には、図1の要部拡大断面図が示されている。これらの図において、装着装置10は、図1中右側のカセットCAに収容された支持手段11を同図中下側のテーブルT上に載置された板状部材としてのウエハWに装着するように設けられている。装着装置10は、前記支持手段11を後述の基台21側から保持可能に設けられた保持手段12と、この保持手段12を移動させる移動手段としてのロボット13とを備えている。なお、テーブルTは、前記ウエハWを下方から吸着して支持する吸着面を備えている。
【0013】
前記支持手段11は、前記ウエハWに面接触して支持する粘性を備えた接触面20Aを有する接触体20と、この接触体20を支持する基台21とを含む。接触体20は、粘着性、可撓性、耐熱性、弾性等に優れたシリコーン系、ウレタン系、アクリル系、フッ素系のエラストマーを素材としたシート状をなし、前記ウエハWと略同一の平面形状を備えたものが好ましくは採用されている。接触体20の面内中央部には孔20Bが形成されている。なお、この接触体20は、本出願人によって出願された特願2006−304366号に開示され、密着層として開示されたものと実質的に同一のものを利用することができる。
【0014】
前記基台21は、特に限定されるものではないが、図3に示されるように、平面視略円形をなす板状に設けられている。この基台21は、図2に示されるように、平面部24と、この平面部24の外周に位置する平面視略リング状の周壁25と、平面部24の下面側から下向きに突出するとともに下端位置が周壁25の下端位置と略同一平面上に位置する高さの複数の突起26とからなる。接触体20は、周壁25の下端面に固定され、この状態で、前記突起26の各下端に接触体20が当接し、これにより、基台21と接触体20との間に空間C1が形成されることとなる。この空間C1は、図2に示されるように、前記平面部24の少なくとも一箇所に形成された第1の貫通孔28に連通しており、これら平面部24、周壁25、突起26、第1の貫通孔28により、ウエハWに対する接触体20Aの接触面積を調整する接触面積調整手段が構成されている。また、前記平面部24の面内中央位置する中央突起26Aは、他の突起より大きい平面形状に設けられるとともに、上下に貫通して前記孔20Bに連通する第2の貫通孔29が形成され、これら孔20B及び第2の貫通孔29によりウエハWと接触体との間の空間を減圧可能な圧力調整手段が構成されている。
【0015】
前記保持手段12は、図4にも示されるように、前記ロボット13に連結された平面視略円形をなすフレーム板31と、このフレーム板31の下面中心部に形成された凹部32と、フレーム板31下面において当該フレーム板の同心円に沿って設けられた環状の内溝33及び環状の外溝34とを備えている。凹部32は、前記第2の貫通孔29に連通可能となっている一方、内溝33は、前記第1の貫通穴28に連通可能となっている。フレーム板31の上面側には、第1ないし第3のホース37〜39が接続されており、第1のホース37は凹部32に形成された第2吸引部としての貫通孔32Aに連通し、第2のホース38は内溝33に形成された第1吸引部としての貫通孔33Aに連通し、第3のホース39は外溝34に形成された貫通孔34Aに連通している。また、第1ないし第3のホース37〜39は、電磁バルブV1〜V3を介して減圧ポンプPにそれぞれ接続されている。従って、第1のホース37を介して減圧ポンプP、貫通孔32A、凹部32、第2の貫通孔29及び孔20Bが連通する一方、第2のホース38を介して減圧ポンプP、貫通孔33A、内溝33、第1の貫通孔28及び空間C1が連通する。また、第3のホース39を介して、減圧ポンプP、貫通孔34A及び外溝34が連通しており、これにより、支持手段11を吸着保持できるようになっている。
【0016】
前記ロボット13は、多関節構造からなる公知のロボットからなり、予め設定した軌跡に沿って先端に設けられた保持手段12を介して支持手段11をカセットCAからテーブルT上に載置されたウエハW上に搬送可能に設けられている。
【0017】
次に、本実施形態における支持手段11のウエハWへの装着方法について説明する。なお、ここでは、図2に示されるように、第1〜第3のホース37〜39は減圧ポンプPに接続され、途中に設けられた電磁バルブV1〜V3によって減圧制御される。
【0018】
先ず、ロボット13を動作してカセットCA中の支持手段11上に保持手段12を移動させた後、電磁バルブV3を動作して支持手段11を1枚保持し(図5参照)、ロボット13の動作によってカセットCAから取り出す。次いで、テーブルT上のウエハWに接触体20を当接させる前に、電磁バルブV2を動作して貫通孔33Aを介して空間C1内を減圧し、接触体20が反転凹状に空間C1内に陥没するように変形させる。これにより、接触体20におけるウエハWと接触可能な接触面20Aの面積が凹状に陥没した領域分縮小することとなる(図6参照)。その後、図7に示されるように、ウエハW上面に接触面20Aを面接触させる。このとき、接触面20Aは、ウエハWに対して部分的に接触することとなり、当該ウエハWと接触体20との間に空間C2が形成される。この状態で、電磁バルブV1が動作して、貫通孔32Aを介して前記空間C2内が減圧される。この状態で、電磁バルブV2が動作して減圧を解除すると、接触体20がウエハWに対して全体的に接触し密着性が高まることとなり、当該接触体20とウエハWとが良好に一体化する(図8参照)。そして、所定時間経過後、電磁バルブV1の動作によって空間C2(実際にはなくなっている)内の減圧を解除する。支持手段11と一体化されたウエハWは、ロボット13によってカセットCAに戻されたり、次工程に搬送されたりする。搬送先では、電磁バルブV3が動作して支持手段11の減圧を解除することで離脱が可能となっている。
【0019】
従って、このような実施形態によれば、接触体20を空間C1内に陥没させた後、ウエハWと接触体20との間の空間C2内を減圧するので、それらを全体的に接触させて密着性を高めることができ、支持手段11とウエハWとを良好に一体化することが可能となる。
【0020】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0021】
例えば、本発明における装着対象物としては、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコンウエハや化合物ウエハであってもよい。
【0022】
また、移動手段を構成するロボット13は、駆動制御できるものであれば特に限定されることはなく、エアシリンダ等によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る装着装置の概略平面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】基台の底面図。
【図4】保持手段の底面図。
【図5】図2の要部拡大断面図。
【図6】接触体の接触面積を減少させた状態を示す図5と同様の断面図。
【図7】接触体とウエハとが部分的に接触した状態を示す図5と同様の断面図。
【図8】接触体とウエハとが全体的に接触した状態を示す図5と同様の断面図。
【符号の説明】
【0024】
10 装着装置
11 支持手段
12 保持手段
13 ロボット(移動手段)
20 接触体
20A 接触面
20B 孔(圧力調整手段)
21 基台
24 平面部(接触面積調整手段)
25 周壁(接触面積調整手段)
26 突起(接触面積調整手段)
28 第1の貫通孔(接触面積調整手段)
29 第2の貫通孔(圧力調整手段)
32A 貫通孔(第2吸引部)
33A 貫通孔(第1吸引部)
C1 空間
C2 空間
W 半導体ウエハ(板状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に面接触して支持する粘性を備えた接触体及びこれを支持する基台と、板状部材に対する接触体の接触面積を調整する接触面積調整手段と、板状部材と接触体との間の空間を減圧可能な圧力調整手段とを備えた支持手段の装着装置であって、
前記接触面積調整手段に接続可能な第1吸引部と、前記圧力調整手段に接続可能な第2吸引部とを有することを特徴とする装着装置。
【請求項2】
前記支持手段を保持可能に設けられた保持手段と、この保持手段を移動させる移動手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の装着装置。
【請求項3】
板状部材に面接触して支持する粘性を備えた接触体及びこれを支持する基台と、板状部材に対する接触体の接触面積を調整する接触面積調整手段と、板状部材と接触体との間の空間を減圧可能な圧力調整手段とを備えた支持手段の装着方法であって、
前記接触体を接触面積調整手段により部分的に陥没させる工程と、
前記部分的に陥没された接触体を板状部材に接触させて部分的に接触させる工程と、
前記板状部材と接触体との間の空間を圧力調整手段により減圧する工程と、
前記接触面積調整手段によって前記部分的な接触から全体的な接触とする工程と、
前記圧力調整手段による減圧を解除して前記支持手段と板状部材とを一体化する工程とを備えていることを特徴とする装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−111272(P2009−111272A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284070(P2007−284070)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】