説明

装置支持機構及びシート給送装置並びに画像形成装置

【課題】操作性を向上させることのできる装置支持機構、及びそれを備えたシート給送装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】設置面上を移動可能な装置の底部に設けられ、前記装置を設置したときに前記装置を支持可能な装置支持機構において、装置の底部に取り付けられる固定部材111と、前記固定部材111に対して突出、格納可能に設けられた連結部材115と、前記連結部材115に設けられ、前記装置の設置面に対して接地、または近接する第1の位置と、前記装置の設置面から離間する第2の位置とに変位可能な支持部材112と、前記連結部材115を突出させるときに、前記支持部材112を前記第1の位置に変位させ、前記連結部材115を格納するときに、前記支持部材112を前記第2の位置に変位させる変位手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面上を移動可能な装置の底部に設けられ、装置を設置したときに前記装置を支持可能な装置支持機構に関する。また、前記装置支持機構を備えた移動可能なシート給送装置及び該シート給送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタや複写機等の画像形成装置はその処理速度の高速化が進み、該画像形成装置にシートを供給するためのシート給送装置は、シートの積載容量を大容量化する傾向が増している。このような大容量のシート給送装置はその上部に前記画像形成装置を積載した状態で使用されるため、使用状態においてその重量や外形寸法が大きくなる傾向にある。
【0003】
この大容量のシート給送装置は、通常、移動や設置を行い易くするために、その底面に車輪を回転自在に有する取り付け部が旋回可能なキャスタが設けられている。さらに前記シート給送装置は、操作者がシート補充作業等により装置に外力を加えた場合に該装置の移動を防止するために、前記キャスタの車輪の回転をロックするロック手段や、装置底面に装置設置面とのアジャスト手段を有する場合が多い。
【0004】
また、前記装置底面に装置設置面とのアジャスト手段を有する装置の中でも、例えば重量の重い装置や重心が高い位置にある装置の場合は、安定性を確保するために前記アジャスト手段を装置の外形よりも外側に張り出して構成しなければならない場合がある。このような場合、装置の移動時に例えば段差を通過する場合に、該段差に前記装置外側に張り出したアジャスト手段が衝突してしまう等の不具合が生じる。また、装置を出荷するための梱包材も前記アジャスト手段が外側に出ている分だけ大型のものが必要となり、コストが高いうえ物流効率が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決する方法として、前記アジャスト手段を装置に対して着脱可能に構成したものがある。また、前記アジャスト手段を装置に対して外側方向にスライド可能または固定可能に構成したものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−236670号公報 (図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように装置本体に対して着脱可能なアジャスト手段を備えた従来例の場合、装置設置者が数ヶ所に取り付けてあるアジャスタねじを何回転も回転させて床面に設置する作業が必要であり、作業性が悪い。さらに、装置を一度設置した後に再びキャスタによる移動が行われる際に、アジャスタの取り外しを忘れたまま移動されてしまった場合には、アジャスタが段差や障害物に当たるおそれがある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作性を向上させることのできる装置支持機構、及びそれを備えたシート給送装置並びに画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明における代表的な手段は、設置面上を移動可能な装置の底部に設けられ、前記装置を設置したときに前記装置を支持可能な装置支持機構において、装置の底部に取り付けられる固定部材と、前記固定部材に、突出、格納可能に設けられた連結部材と、前記連結部材に設けられ、前記装置の設置面に対して接地、または近接する第1の位置と、前記装置の設置面から離間する第2の位置とに変位可能な支持部材と、前記連結部材を突出させるときに、前記支持部材を前記第1の位置に変位させ、前記連結部材を格納するときに、前記支持部材を前記第2の位置に変位させる変位手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動可能な装置を設置したときに、格納されている連結部材を引き出して突出させると、これに連動して設置面から離間していた支持部材が設置面に接地、または近接する。これにより、装置本体は支持部材によって支持されて転倒が防止される。そして、前記支持部材を突出させる動作と、これを設置面に接地させる動作を1つの操作で行うことができるため、支持機構の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の一実施形態に係る装置支持機構について、これをシート給送装置及び画像形成装置に設けた例をとって説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
{画像形成装置及びシート給送装置の全体構成と動作}
まず、装置支持機構を備えた画像形成装置について、図6を参照して画像形成動作とともに説明する。なお、図6は本実施形態に係る画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示している。上方には、プリンタ本体1があり、下方にはオプションで取り付けられるシート給送装置である給送デッキ50が設けられている。
【0012】
プリンタ本体1は、画像形成部1Aを備えており、この画像形成部1Aには感光体ドラム7a、帯電器7b、現像スリーブ7c、クリーナ7dを備えたプロセスカートリッジ7と、レーザスキャナ8、転写ローラ9が設けられている。
【0013】
画像形成動作が開始されると、画像形成部1Aにおいて、レーザスキャナ8により画像信号に応じたレーザ光が感光体ドラム7aに照射され、感光体ドラム7a上に静電潜像が形成される。この静電潜像をプロセスカートリッジ7に収納されたトナーで現像することにより、感光体ドラム7a上にトナー画像が形成される。
【0014】
上記画像形成動作に並行してプリンタ本体1に設けられている給送カセット2から給送ローラ3、分離ローラ対4により、または、給送デッキ50に設けられている給送カセット52(52a,52b,52c)からシートSが給送される。このシートSは、搬送ローラ5及びレジストローラ対6を通り、感光体ドラム7a上のトナー画像形成と同期をとって、感光体ドラム7aと転写ローラ9とにより構成される転写部に搬送される。この転写部において、トナー画像がシートSへ転写される。
【0015】
トナー画像が転写されたシートSは定着手段10へ搬送され、この定着手段10において加圧・加熱されることによりトナー画像がシートSに定着される。この後、排出ローラ11によって装置上部の排出部12へ排出される。
【0016】
シート給送装置である給送デッキ50は、複数の(本実施形態では3個)シート収容手段としての給送カセット52と、それぞれの給送カセット内のシートSを送り出すシート給送手段としての給送ローラ53(53a,53b,53c)とを備えている。3つの給送カセット52は、種々のサイズ・坪量のシートを積載給送可能に構成されている。また、給送デッキ50は、プリンタ本体1の載置台を兼用しており、プリンタ本体1を載せた状態での移動を考慮して装置本体の下面四箇所にキャスタ59が取り付けられている。
【0017】
この給送デッキ50は、プリンタ本体1から給送信号を受け取ると、給送を指示された給送カセット52から給送ローラ53によりシートSを給送するようにしている。給送ローラ53により送り出されたシートSは、分離ローラ対54(54a,54b,54c)により1枚ずつ分離された後、搬送ローラ56(56a,56b,56c)によりプリンタ本体1に送り込まれる。
【0018】
{装置支持機構}
次に、プリンタ本体1が装着された給送デッキ50に設けられた本実施形態に係る装置支持機構について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0019】
給送デッキ50の底面の4隅には、図4及び図5に示すように、それぞれキャスタ59が備えられている。このキャスタ59は、プリンタ本体1を積載した状態での移動を考慮して設けられており、十分な耐荷重性を備えている。
【0020】
図1乃至図5において、101は装置が転倒するのを防止するために、装置を支持する装置支持機構である。この装置支持機構101は、給送デッキ50の底面の隅に設けられており、以下のような構成となっている。
【0021】
図1に示すように、装置支持機構101が給送デッキ50の底面に取り付けられている。この装置支持機構101は、固定部材111と、案内部材114と、連結部材115と、支持部材112とによって構成されている。固定部材111は箱状に形成され、上部の鍔部に形成されたビス穴111aを介して給送デッキ50の底面にビス止めされて固定されている。この固定部材111内に案内部材114が取り付けられており、また連結部材115が固定部材111に対してスライドして突出、格納可能に取り付けられている。そして、連結部材115の端部に支持部材112が取り付けられ、給送デッキ50が傾斜したときに装置設置面上に接地して給送デッキ50を支持する。
【0022】
支持部材112は、図1に示すように、一辺が長い直方体形状に構成されている。そして、変位手段によって給送デッキ50の設置面に対して接地する第1の位置と、前記設置面から離間する第2の位置とに変位可能となっている。
【0023】
上記変位手段の構成について説明すると、固定部材111の内部には、図1に示すように、案内溝113を有する案内部材114が設けられている。また、前記支持部材112は軸状の連結部材115の一方側端部に固定されており、連結部材の回動により、回動可能に取り付けられている。そして、連結部材115は固定部材111に取り付けられ、且つ、固定部材111に対して突出、格納可能に取り付けられている。これに伴って、支持部材112も給送デッキ50の設置領域から外方へ突出し、また前記給送デッキ50の設置領域に格納される。
【0024】
さらに、前記連結部材115には、被案内部となる被案内ピン116が突出形成され、この被案内ピン116が案内部材114の案内溝113に係合している。
【0025】
ここで、案内溝113は連結部材115の突出及び格納方向において、螺旋状に施されている。このため、案内部材114を突出及び格納すると、被案内ピン116が螺旋状の案内溝113に沿って回転するようになっている。
【0026】
また、被案内ピン116と固定部材111の間には、連結部材115に通した圧縮バネで構成した付勢部材としての格納バネ117が取り付けられている。このため、連結部材115は、格納バネ117によって常に格納方向に付勢されている。さらに、案内溝113には連結部材115が突出した位置で、その突出状態を維持するために、被案内ピン116を係止する係止部118が設けられている。
【0027】
前記連結部材115の端部に固定されている支持部材112は、前述したように給送デッキ50の設置面に対して接地する第1の位置と、前記設置面から離間する第2の位置とに変位可能となっている。すなわち、図2に示すように、連結部材115が格納状態のとき支持部材112は長手方向が水平になって給送デッキ50の設置面から離間し(第2の位置)、給送デッキ50の設置エリア内に格納されている。このとき、図3に示すように、格納バネ117により連結部材115が引き込まれた状態に維持され、支持部材112は格納状態で固定されている。
【0028】
一方、図4に示すように、支持部材112を持って連結部材115が突出状態になるように引き出すと、前述したように被案内ピン116が螺旋状の案内溝113に案内されて1/4回転する。これにより、支持部材112は給送デッキ50の設置エリアから外方に突出するとともに、長手方向が鉛直方向を向いて設置面に接地する(第1の位置)。そして、このとき、図5に示すように、被案内ピン116が案内溝113の係止部118に入り、支持部材112はその状態で固定される。
【0029】
なお、支持部材112は前記第1の位置に変位したとき、装置設置面に完全に接地しなくてもよい。支持部材112は装置が傾いたときに、転倒するのを防止するものである。したがって、通常時は装置設置面に近接した状態にあり、装置が僅かに傾いたときに接地して装置を支持するようになっていてもよい。このため、本実施形態における支持部材112の第1の位置とは、完全に接地する場合のみならず、設置面に近接する場合も含む。
【0030】
図1に示すように、格納位置にある支持部材112を引き出すと、被案内ピン116が螺旋状の案内溝113に案内されて回転しながら引き出される。また、支持部材112が突出状態にあるときは、支持部材112を若干引き出すことで係止部118と被案内ピン116との係止を解除する。すると、格納バネ117の引張力によって、連結部材115が引き込まれて支持部材112が回転しながら格納位置に納められる。
【0031】
以上のように、本実施形態の装置支持機構によれば、装置を設置位置に移動した後、該装置の転倒を防止するために支持部材112を突出、格納する動作と、支持部材112を装置設置面に接地、離間させる動作を1つの操作で行うことができる。このため、支持機構の切り替え操作性が向上する。
【0032】
〔第2実施形態〕
前述した実施形態では装置支持機構をシート給送装置の底部に設けた例を示した。しかし、画像形成装置にオプションとしてのシート給送装置を取り付けない場合は、画像形成装置の底部にキャスタを取り付けて移動可能とし、この画像形成装置の底部に前述した装置支持機構を取り付けるようにしてもよい。
【0033】
さらには、前述した装置支持機構は、シート給送装置や画像形成装置の底部に取り付ける場合に限定する必要はなく、他の移動可能にした装置に取り付け、該装置の転倒を防止するようにした場合にも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】装置支持機構を示す斜視図である。
【図2】支持部材が格納位置のときの装置全体を示す斜視図である。
【図3】支持部材が格納位置の装置支持機構を示す上面図である。
【図4】支持部材が突出位置のときの装置全体を示す斜視図である。
【図5】支持部材が突出位置の装置支持機構を示す上面図である。
【図6】画像形成装置の全体構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
S …シート
1 …プリンタ本体
1A …画像形成部
2 …給送カセット
3 …給送ローラ
4 …分離ローラ対
5 …搬送ローラ
6 …レジストローラ対
7 …プロセスカートリッジ
7a …感光体ドラム
7b …帯電器
7c …現像スリーブ
7d …クリーナ
8 …レーザスキャナ
9 …転写ローラ
10 …定着手段
11 …排出ローラ
12 …排出部
50 …給送デッキ
52 …給送カセット
53 …給送ローラ
54 …分離ローラ対
56 …搬送ローラ
59 …キャスタ
101 …装置支持機構
111 …固定部材
111a …ビス穴
112 …支持部材
113 …案内溝
114 …案内部材
115 …連結部材
116 …被案内ピン
117 …格納バネ
118 …係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上を移動可能な装置の底部に設けられ、前記装置を設置したときに前記装置を支持可能な装置支持機構において、
装置の底部に取り付けられる固定部材と、
前記固定部材に、突出、格納可能に設けられた連結部材と、
前記連結部材に設けられ、前記装置の設置面に対して接地、または近接する第1の位置と、前記装置の設置面から離間する第2の位置とに変位可能な支持部材と、
前記連結部材を突出させるときに、前記支持部材を前記第1の位置に変位させ、前記連結部材を格納するときに、前記支持部材を前記第2の位置に変位させる変位手段と、
を有することを特徴とする装置支持機構。
【請求項2】
前記変位手段は、案内溝が形成された案内部材と、前記連結部材に設けられた被案内部と、を有し、前記連結部材を突出、格納させるときに、前記被案内部が前記案内溝に案内されて前記支持部材が回転するように構成され、前記支持部材が回転することにより該支持部材が前記第1の位置又は前記第2の位置に変位することを特徴とする請求項1記載の装置支持機構。
【請求項3】
前記連結部材を格納する方向に付勢する付勢部材と、前記連結部材を突出させた状態で前記被案内部を係止する係止部と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置支持機構。
【請求項4】
前記案内溝は螺旋状の溝であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装置支持機構。
【請求項5】
前記装置に設けられ、シートを収容するシート収容手段と、
該シート収容手段からシートを給送するシート給送手段と、
前記装置の底部に設けられた、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の装置支持機構と、
を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置により送り出されたシートに画像を形成する画像形成部と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記装置に設けられ、シートに画像を形成する画像形成部と、
前記装置の底部に設けられた、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の装置支持機構と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−58914(P2009−58914A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228480(P2007−228480)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】