説明

装飾体

【課題】箔の上層部にポリオール化合物を添加した塗膜とクリヤー塗膜からなる複数の塗膜を形成し、ポリオール化合物を添加した塗膜が、内部応力干渉の働きをすることにより、箔が塗膜の内部応力により凝集破壊することを防止し、密着性の低下を抑制する、基材上に箔を形成した装飾体の提供。
【解決手段】基材上に直接又は間接的に箔を被覆し、その上層部に複数の塗膜層を形成した装飾体において、前記複数の塗膜層の少なくとも一層を形成するための塗料に水酸基を2個以上持った化合物を添加した装飾体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に箔を形成した装飾体に関するものであり、筆記具、時計、化粧品等の容器、装飾品などに適したものである。
【背景技術】
【0002】
箔を転写した装飾体は、種々の意匠性を付与できることより様々な発明がなされている。特に近年、金属蒸着層にエンボス加工が施された所謂ホログラム箔は、光の干渉作用により従来の色材(顔料や染料など)では表現できない装飾性を有するために様々な分野で使用されている。
【特許文献1】特開平10−71665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的な箔は、耐摩耗性などの耐性を向上させるために着色層(及び/又は金属蒸着層)上に合成樹脂からなる保護層(離型層を併用したものも含む)を有している。しかし、前記保護層だけでは製品品質を維持できない場合があった。そこで、箔又は保護層を形成した箔を基材上に転写した後、光が透過し得る塗膜(クリヤー塗膜やカラークリヤー塗膜など)を形成し、耐摩耗性などの耐性を向上させていた。しかし、箔を転写した装飾体の製品品質としては前記方法で十分であるものの、装飾性(意匠性、光沢感、深み感、立体感など)を付加させるために複数の塗膜を形成した場合、前記保護層が上層部の塗膜の内部応力により凝集破壊を起こし、密着性が極端に低下する問題があった。さらに、前記内部応力が大きい場合には、保護層の凝集破壊に伴い下層の着色層及び/又は金属蒸着層を含む箔全体にクラック等が生じ、その結果接着層及び/又は基材から剥離する問題があった。この問題は、特に上層部の塗膜が複数の時に顕著であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、基材上に直接又は間接的に箔を被覆し、その上層部に複数の塗膜層を形成した装飾体において、前記複数の塗膜層の少なくとも一層を形成するための塗料に水酸基を2個以上持った化合物を添加し、且つ、前記化合物の重量濃度が乾燥塗膜中に80wt%未満であることを第1の要旨とし、水酸基を2個以上持った化合物を添加した塗料が、アクリル樹脂及び/又はメラミン樹脂を主成分とする熱硬化型塗料であることを第2の要旨とし、前記水酸基を2個以上持った化合物が、ポリエステルポリール及び/又はポリカーボネートポリオールであることを第3の要旨とし、前記水酸基を2個以上持った化合物の重量濃度が、乾燥塗膜中に20〜50wt%であることを第4の要旨とし、前記箔が、少なくとも金属蒸着層と合成樹脂からなる保護層を有することを第5の要旨とし、前記金属蒸着層にエンボス加工が施されたことを第6の要旨とするものである。
【0005】
被転写物の材質は、箔が転写できる材料であればよく特に限定されない。具体的には、アルミニウムまたはその合金、銅またはその合金、鉄またはその合金、亜鉛またはその合金、マグネシウムまたはその合金、チタンまたはその合金、金またはその合金、銀またはその合金、白金またはその合金、スズまたはその合金、ニッケルまたはその合金などの金属材料、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂材料、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー、シリコーン、スチレンブタジエン、ウレタン、ブタジエン、イソプレン、フッ素などの合成ゴムと天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂などの熱硬化樹脂材料、アルミナ、ジルコニア、陶磁器などのセラミック材料、木材、紙、石などの天然材料などを用いることができる。
また、これらの材料は1種または2種以上の混合物であってもよい。さらに、これらの材質には、予め湿式めっき法や乾式めっき法、塗装、印刷、化成処理などの公知の方法により、ニッケルやクロムや黒クロムなどの金属めっき層、あるいは金や銀やパラジウムなどの貴金属めっき層、塗膜層、印刷層、接着層、酸化物層などの下地処理層を形成してもよい。
【0006】
箔は、被転写物に転写できる材料や材質であればよく特に限定されない。具体的には、アルミニウムまたはその合金、銅またはその合金、鉄またはその合金、亜鉛またはその合金、マグネシウムまたはその合金、チタンまたはその合金、金またはその合金、銀またはその合金、白金またはその合金、スズまたはその合金、ニッケルまたはその合金、クロムまたはその合金、コバルトまたはその合金などの金属や、前記金属の酸化物や窒化物を公知の方法によりベースフィルムに形成した金属箔や、ベースフィルムに染料や顔料などの色材により着色した顔料(染料)箔や、ベースフィルムに模様やキャラクターなどをグラビア印刷やシルク印刷した印刷箔などが使用できる。
特に、装飾性を加味するとアルミニウム、金、白金などをベースフィルムに蒸着した金属箔が好適に使用できる。さらに、深み感や立体感を表現するために蒸着層にエンボス加工を施すことにより良好となる。
また、これら箔には、各種の処理が施されたベースフィルムのほか、離型層や着色層や接着層や保護層などが形成されていていてもよい。
【0007】
本発明において特に重要な水酸基を2個以上持った化合物を添加した塗料は、水酸基を2個以上持った化合物所謂ポリオール化合物を添加した塗料であればよく、少なくとも前記ポリオール化合物とバインダー樹脂と液媒体を含んでいればよい。例えば、有機溶剤を使用した有機溶剤系塗料に前記ポリオール化合物を分散したものや、水、または、水と有機溶剤を混合した溶液を使用した水系塗料に前記ポリオール化合物を分散したものなどが使用でき特に限定しない。また、有機溶剤系塗料や水系塗料は、色材を含まないクリヤー塗料であってもよいし、色材として染料や顔料、金属粉体やパール顔料などを含有したカラークリヤー塗料やエナメル塗料であってもよい。
前記塗料に使用される樹脂は、一般に塗膜形成用として用いられる樹脂であえばよく特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂であればよい。また添加剤として、ポリイソシアネートなどの硬化剤、ポリエチレンやポリプロピレンなどのワックス類、可塑剤、ポリエステルやポリカーボネートやポリウレタンなどの塗膜改質剤、分散剤などを適宜添加してもよい。特に、塗膜の内部応力を低下させるために前記ポリオール化合物を極力反応硬化させないことが望ましく、前記ポリオール化合物の反応硬化システムとは異なるアクリル樹脂及び/又はメラミン樹脂を主成分とする熱硬化型塗料が好適に使用できる。
【0008】
前記水酸基を2個以上持った化合物は、所謂、ポリオール化合物が使用でき、具体的にはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが使用でき、カルボン酸やアミンなどの活性水素を含有する化合物を併用してもよい。特に、一般的に入手が容易なポリエステルポリール及び/又はポリカーボネートポリオールが好適に使用できる。前記ポリオール化合物の添加量としては、乾燥塗膜中に10〜70wt%にすることが望ましく、特に20〜50wt%にすることで塗膜の内部応力が低下し、箔及び/又は保護層を形成した箔の凝集破壊による密着性の低下を防止できる。尚、10wt%以下、並びに、70wt%以上では環境中の水分等により塗膜の耐性が悪化する傾向になる。また、80wt%以上では、塗膜が硬化せず装飾体として使用できない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基材上に直接又は間接的に箔を被覆し、その上層部に複数の塗膜層を形成した装飾体において、水酸基を2個以上持った化合物を添加した塗膜を配置することにより、前記塗膜の内部応力による保護層の凝集破壊又は着色層及び/又は金属蒸着層を含む箔全体のクラックの発生を抑制し、密着性が極端に低下することが防止できる。
また、水酸基を2個以上持った化合物を添加した塗膜の内部構造は、水酸基を2個以上持った化合物のみが未硬化状態でミクロ的に分散し、内部応力の吸収材的な働きを有すると推察される。この効果(働き)により、下層への内部応力の影響を極力防止するため保護層の凝集破壊又は着色層及び/又は金属蒸着層を含む箔全体のクラックの発生を抑制するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、箔の上層部にポリオール化合物を添加した塗膜とクリヤー塗膜からなる複数の塗膜を形成したことを最も主要な特徴とし、ポリオール化合物を添加した塗膜が、内部応力干渉の働きをすることにより、箔が前記塗膜の内部応力により凝集破壊することを防止し、密着性の低下を抑制する目的を実現した。
【0011】
(実施例1)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被転写物とした。次に、接着層とベースフィルムにアルミニウムを蒸着した蒸着層と保護層を有する金属箔を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(下記の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、熱硬化型クリヤーアクリル樹脂塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000クリヤー)を専用シンナー(関西ペイント(株)製、カンペ焼付用シンナーNo4)で1:1の割合で希釈しスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
<クリヤーアクリル樹脂塗料(組成物A)>
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
47.06wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 47.06wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 5.88wt%
上記成分をボールミルにて10分間分散し、クリヤーアクリル樹脂塗料を得た。
【0012】
(実施例2)
実施例1における組成物Aを下記の組成物Bに代えた以外同様の装飾体を得た。
<クリヤーメラミン樹脂塗料(組成物B)>
オルガノセレクト100クリヤー(メラミン合成樹脂塗料:日本ペイント(株)製)
51.95wt%
オルガノセレクト520シンナー(有機溶剤:日本ペイント(株)製)41.56wt%
ニッポラン1004(ポリエステルポリオール化合物:日本ポリウレタン工業(株)製)
6.49wt%
上記成分をボールミルにて10分間分散し、クリヤーアクリル樹脂塗料を得た。
【0013】
(実施例3)
実施例1における組成物AのFLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製)を、ニッポラン980R(ポリカーボネートポリオール化合物:日本ポリウレタン工業(株)製)に代えた以外同様の装飾体を得た。
【0014】
(実施例4)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が5wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
49.35wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 49.35wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 1.30wt%
【0015】
(実施例5)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が10wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
48.65wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 48.65wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 2.70wt%
【0016】
(実施例6)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が30wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
45.16wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 45.16wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 9.68wt%
【0017】
(実施例7)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が50wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
40wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 40wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 20wt%
【0018】
(実施例8)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が70wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
31.58wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 31.58wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 36.84wt%
【0019】
(実施例9)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が78wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
46.71wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 46.70wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 6.59wt%
【0020】
(実施例10)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し、次に熱可塑性ポリエステル系ホットメルト接着剤(アロンメルトPES360S30、東亜合成(株)製)にポリイソシアネトート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を重量比で10:1に配合し、さらに、有機溶剤(トルエン)にて2倍に希釈したポリエステル樹脂塗料をスプレー塗装した後、140℃、20分の条件で乾燥し被転写物とした。次に、接着層とベースフィルムにアルミニウムを蒸着しエンボス加工を施した蒸着層と保護層を有するホログラム金属箔((株)村田金箔製、HK−K247レンチャー箔)を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に、乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(実施例1記載の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次にパール顔料を添加した熱硬化型アクリル塗料(下記の組成物C)をスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
<アクリル樹脂塗料(組成物C)>
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
49.36wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 49.36wt%
カラーストリーム F20−00 WNT Autumu Mystery(パール顔料:メルク(株)製) 1.28wt%
上記成分をボールミルにて24時間分散し、アクリル樹脂塗料を得た。
【0021】
(実施例11)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し、次に熱可塑性ポリエステル系ホットメルト接着剤(アロンメルトPES360S30、東亜合成(株)製)にポリイソシアネトート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を重量比で10:1に配合し、さらに、有機溶剤(トルエン)にて2倍に希釈したポリエステル樹脂塗料をスプレー塗装した後、140℃、20分の条件で乾燥し被転写物とした。次に、接着層とベースフィルムにアルミニウムを蒸着しエンボス加工を施した蒸着層と保護層を有するホログラム金属箔((株)村田金箔製、HK−K247レンチャー箔)を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に、乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(実施例1記載の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。青い熱硬化型カラークリヤーアクリル樹脂塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000紺色)を専用シンナー(関西ペイント(株)製、カンペ焼付用シンナーNo4)で1:1の割合で希釈しスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、青い熱硬化型クリヤーアクリル樹脂塗料(大橋化学工業(株)製、フランボヤンNo.160(A)青)を専用シンナー(関西ペイント製、No.2300)で2:1の割合で希釈しスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、紺色の熱硬化型アクリル樹脂塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000紺色)を専用シンナー(関西ペイント(株)製、カンペ焼付用シンナーNo4)で1:1の割合で希釈し塗装用マスキング材((株)大脇萬蔵商店製、板ふのり(薄板))を介してマーブル調(部分塗装)塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に熱硬化型クリヤーアクリル樹脂塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000クリヤー)を専用シンナー(関西ペイント(株)製、カンペ焼付用シンナーNo4)で1:1の割合で希釈しスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
【0022】
(実施例12)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し、次に、熱可塑性ポリエステル系ホットメルト接着剤(アロンメルトPES360S30、東亜合成(株)製)にポリイソシアネトート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を重量比で10:1に配合し、さらに有機溶剤(トルエン)にて2倍に希釈したポリエステル樹脂塗料をスプレー塗装した後、140℃、20分の条件で乾燥し被転写物とした。次に、ホログラム金属箔(日本コーバン(株)製、KP63)を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に、乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(実施例1記載の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、微粒子酸化チタンを添加した熱硬化型アクリル塗料(下記の組成物D)をスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
<アクリル樹脂塗料(組成物D)>
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
48.64wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 48.64wt%
MT−100S(微粒子酸化チタン:テイカ(株)製) 2.72wt%
上記成分をボールミルにて24時間分散し、アクリル樹脂塗料を得た。
【0023】
(実施例13)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し、次に、熱可塑性ポリエステル系ホットメルト接着剤(アロンメルトPES360S30、東亜合成(株)製)にポリイソシアネトート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を重量比で10:1に配合し、さらに有機溶剤(トルエン)にて2倍に希釈したポリエステル樹脂塗料をスプレー塗装した後、140℃、20分の条件で乾燥し被転写物とした。次に、金属箔((株)村田金箔製、MP08スタイン箔)を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に、乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(実施例1記載の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、微粒子酸化チタンを添加した熱硬化型アクリル塗料(実施例10記載の組成物D)をスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
【0024】
(実施例14)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料の、表面にバフ研磨を施して表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し、次に、熱可塑性ポリエステル系ホットメルト接着剤(アロンメルトPES360S30、東亜合成(株)製)にポリイソシアネトート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を重量比で10:1に配合し、さらに、有機溶剤(トルエン)にて2倍に希釈したポリエステル樹脂塗料をスプレー塗装した後、140℃、20分の条件で乾燥し被転写物とした。次に、特殊リップマンホログラム(日本ペイント(株)と大日本印刷(株)の共同開発、モーションイマージュ)を用いて熱圧着法により被転写物に全面転写した。次に乾燥塗膜中に20wt%となるように水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(実施例1記載の組成物A)をスプレー塗装した後、160℃、5分の条件で乾燥した。次に、微粒子酸化チタンを添加した熱硬化型アクリル塗料(実施例10記載の組成物D)をスプレー塗装した後、160℃、30分の条件で乾燥し装飾体を得た。
【0025】
(比較例1)
実施例1における水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(組成物A)から水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))を添加しないこと以外は同様の装飾体を得た。
【0026】
(比較例2)
実施例1における組成物Aの配合量を下記に代え乾燥塗膜中に水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))が80wt%になるようにした以外同様の装飾体を得た。
マジクロン1000クリヤー(アクリル合成樹脂塗料:関西ペイント(株)製)
25wt%
カンペ焼付用シンナーNo4(有機溶剤:関西ペイント(株)製) 25wt%
FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製) 50wt%
【0027】
(比較例3)
実施例9における水酸基を2個以上持った化合物を添加したクリヤーアクリル樹脂塗料(組成物A)から水酸基を2個以上持った化合物(FLEXOREZ 148(ポリエステルポリオール化合物:KING INDUSTRIES SPECIALTY CHEMICALS製))を添加しないこと以外は同様の装飾体を得た。
【0028】
<塗膜密着性評価(碁盤目試験)>
実施例及び比較例で得た装飾体をJIS K 5600−5−6「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に規定されているクロスカット法(1mmの正方形を10×10コマ(計100コマ))にて密着性を評価する。尚、評価は、100コマの碁盤目内で塗膜が残ったコマ数とした。
【0029】
<水に対する塗膜密着性評価(沸騰水試験)>
2級の純度の水(ISO3696)を沸騰状態にし、実施例及び比較例で得た装飾体を前記沸騰状態の水に25分間浸漬した後、塗装物を沸騰状態の水の中から取りだし常温に戻す。次に、JIS K 5600−5−6「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に規定されているクロスカット法(1mmの正方形を10×10コマ(計100コマ))にて密着性を評価する。尚、評価は、100コマの碁盤目内で塗膜が残ったコマ数とした。
【0030】
前記2項目による評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に直接又は間接的に箔を被覆し、その上層部に複数の塗膜層を形成した装飾体において、前記複数の塗膜層の少なくとも一層を形成するための塗料に水酸基を2個以上持った化合物を添加し、且つ、前記化合物の重量濃度が乾燥塗膜中に80wt%未満であることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
水酸基を2個以上持った化合物を添加した塗料が、アクリル樹脂及び/又はメラミン樹脂を主成分とする熱硬化型塗料であることを特徴とする請求項1記載の装飾体。
【請求項3】
前記水酸基を2個以上持った化合物が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールであることを特徴とする請求項1〜2記載の装飾体。
【請求項4】
前記水酸基を2個以上持った化合物の重量濃度が、乾燥塗膜中に20〜50wt%であることを特徴とする請求項1〜3記載の装飾体。
【請求項5】
前記箔が、少なくとも金属蒸着層と合成樹脂からなる保護層を有することを特徴とする請求項1〜4記載の装飾体。
【請求項6】
前記金属蒸着層にエンボス加工が施されたことを特徴とする請求項5記載の装飾体。

【公開番号】特開2008−307833(P2008−307833A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159549(P2007−159549)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】