説明

装飾用シート、成形品、自動車両ならびに成形品の製造方法

本発明による装飾用シートは、樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、基材の第1の主面上に設けられた装飾層と、基材の第1の主面側または第2の主面側のパターン領域に対応する位置に設けられ、装飾層のパターン領域の展延を抑制する展延抑制部材と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、装飾が施された成形品およびその製造方法に関する。また、本発明は、そのような成形品の装飾に用いられる装飾用シートや、そのような成形品を備えた自動車両にも関する。
【背景技術】
近年、各種の成形品を装飾する手法として、成形品の表面に装飾用のシートを貼り付ける手法が提案されている。この手法に用いられる装飾用シートは、例えば特開平10−249999号公報に開示されている。
上記公報に開示されている装飾用シートは、基材と、基材の表面に印刷により形成されたインク層とを有しており、接着剤を用いて成形品に貼り付けられる。このような装飾用シートを用いると、塗料を用いた塗装に比べ、成形品のリサイクルが容易になる。また、塗装とは異なる美観を醸し出すこともできるので、装飾性の向上を図ることもできる。
しかしながら、従来の装飾用シートは、表面が平坦な成形品の装飾には適しているものの、表面に起伏を有する成形品の装飾には適していない。表面に起伏を有する成形品への貼り付けに際し、装飾用シートは、その起伏に追従するように展延されるので、装飾用シートの一部に文字や図形、絵柄などのパターンが表されている場合、それらのパターンが歪み、美観を損ねてしまうからである。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面に起伏を有する成形品の装飾に好適に用いることができる装飾用シート、それを備えた成形品およびその製造方法、ならびにそのような成形品を備えた自動車両を提供することにある。
【発明の開示】
本発明による装飾用シートは、樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記装飾層の前記パターン領域の展延を抑制する展延抑制部材と、を備えており、そのことによって上記目的が達成される。
ある好適な実施形態において、前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料である。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、金属または金属化合物を含む材料から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、金属から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である。
前記展延抑制部材の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記展延抑制部材は、前記パターン領域に重なる第1の部分を有していることが好ましい。
前記展延抑制部材は、前記第1の部分の外周に位置する第2の部分を有していることがさらに好ましい。
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、2mm以上8mm以下であることがさらに好ましい。
本発明による成形品は、成形品本体と、前記成形品本体の表面に接合された上記構成を有する装飾用シートとを備えており、そのことによって上記目的が達成される。
あるいは、本発明による成形品は、成形品本体と、前記成形品本体の表面に接合されたシートとを備え、前記シートは、基材と、前記基材の前記成形品本体側の面上に設けられた装飾層とを有し、前記装飾層は、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記シートの、前記パターン領域に対応した部分は、前記シートの他の部分の厚さの1.1倍以上1.8倍以下の厚さを有し、そのことによって上記目的が達成される。
前記シートの、前記パターン領域に対応した部分は、前記シートの他の部分の厚さの1.2倍以上1.6倍以下の厚さを有することが好ましい。
本発明による自動車両は、上記構成を有する成形品を備えており、そのことによって上記目的が達成される。
本発明による成形品の製造方法は、樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記装飾層の前記パターン領域の展延を抑制する展延抑制部材と、を備えた装飾用シートを用意する工程と、成形品本体を用意する工程と、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程と、を包含し、そのことによって上記目的が達成される。
ある好適な実施形態において、本発明による成形品の製造方法は、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の前に、前記装飾用シートを加熱する工程を包含する。
ある好適な実施形態において、前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料である。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、金属または金属化合物を含む材料から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、金属から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である。
前記展延抑制部材の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記展延抑制部材は、前記パターン領域に重なる第1の部分を有していることが好ましい。
前記展延抑制部材は、前記第1の部分の外周に位置する第2の部分を有していることがさらに好ましい。
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、2mm以上8mm以下であることがさらに好ましい。
ある好適な実施形態において、本発明による成形品の製造方法は、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程は、加熱された前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程と、前記成形品本体に近接した前記装飾用シートと前記成形品本体との間に形成される第1の空間を、前記装飾用シートに対して前記第1の空間とは反対側に広がる第2の空間よりも減圧する工程と、を包含する。
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程は、前記展延抑制部材が前記第2の空間に面するように行われる。
ある好適な実施形態において、本発明による成形品の製造方法は、前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程の後に、前記第2の空間に気体を導入することによって前記展延抑制部材を冷却する工程を包含する。
ある好適な実施形態において、本発明による成形品の製造方法は、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の後に、前記展延抑制部材を除去する工程を包含する。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材は、前記基材の前記第2の主面側に設けられている。
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の後、前記装飾層は前記基材と前記成形品本体との間に位置している。
ある好適な実施形態において、前記成形品本体は、第1の部材と、前記第1の部材の表面上に配置された第2の部材とを有し、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程は、前記装飾用シートを、前記第1の部材および前記第2の部材の両方を覆うように前記成形品本体の表面に接合し、それによって前記第1の部材と前記第2の部材とを結合するように行われる。
あるいは、本発明による成形品の製造方法は、樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、を備えた装飾用シートを用意する工程と、成形品本体を用意する工程と、前記装飾用シートを加熱する工程と、加熱された前記装飾用シートを、前記装飾用シートの前記パターン領域に対応した部分の温度が、前記装飾用シートの他の部分の温度よりも低い状態で前記成形品本体の表面に接合する工程と、を包含し、そのことによって上記目的が達成される。
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程は、前記装飾用シートを、前記パターン領域に対応した部分の温度が前記他の部分の温度よりも速やかに低くなるように冷却する工程を包含する。
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートは、前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する部材をさらに備えている。
ある好適な実施形態において、前記部材は、金属を含む材料から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記部材は、金属から形成されている。
ある好適な実施形態において、前記展延抑制部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である。
本発明による自動車両は、上記製造方法によって製造された成形品を備えており、そのことによって上記目的が達成される。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は、本発明による装飾用シートを模式的に示す断面図であり、図1(b)は、本発明による装飾用シートを模式的に示す上面図である。
図2(a)および(b)は、装飾層のパターン領域が表すパターンの例を示す図である。
図3は、本発明による装飾用シートの他の態様を模式的に示す断面図である。
図4(a)、(b)および(c)は、本発明による装飾用シートの利用の一態様を模式的に示す図である。
図5は、展延抑制部材の好ましい構成を模式的に示す図である。
図6(a)および(b)は、本発明による装飾用シートを成形品本体に接合する態様を模式的に示す図である。
図7(a)および(b)は、本発明による装飾用シートを成形品本体に接合する他の態様を模式的に示す図である。
図8は、本発明による装飾用シートを用いて成形品を製造する際に用いる製造装置を模式的に示す断面図である。
図9は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図10は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図11は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図12は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図13は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図14は、本発明による装飾用シートを用いた成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図15は、製造工程の所要時間の一例を示すタイムチャートである。
図16は、成形品を模式的に示す断面図である。
図17は、成形品を模式的に示す断面図である。
図18(a)および(b)は、別体に成形された複数の部材を有する成形品本体に装飾用シートを接合する様子を模式的に示す断面図である。
図19は、自動二輪車を模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(a)および(b)に、本実施形態における装飾用シート10を模式的に示す。装飾用シート10は、図1(a)および(b)に示すように、互いに対向する第1の主面1aおよび第2の主面1bを有する基材1と、基材1の第1の主面1a上に設けられた装飾層2とを備えている。
基材1は、樹脂材料から形成されており、典型的には、熱可塑性樹脂材料から形成されている。装飾層2は、インクなどから形成されている。この装飾層2は、所定のパターンを表すパターン領域2aを有している。パターン領域2aが表すパターンは、具体的には、線図、色分け、グラデーションなどの模様であり、より具体的には、図2(a)に示すような文字や、図2(b)に示すような図形、あるいは絵柄などである。
なお、図1(a)および(b)には、全面にパターン領域2aを有する装飾層2を主面1aの一部に設けた場合を示しているが、図3に示すように、一部のみにパターン領域2aを有する装飾層2を主面1aの全面に設けてもよい。装飾層2の、パターン領域2a以外の部分2bは、例えば無模様で一色の部分である。
図4(a)、(b)および(c)に、装飾用シート10の利用態様の一例を示す。装飾用シート10は、図4(a)、(b)および(c)に示すように、成形品本体21の表面に接合されて成形品20を装飾する。装飾層2は、パターン領域2aを有しているので、パターン領域2aを有しない装飾層(例えば全体が無模様で一色である装飾層)に比べ、高い装飾効果を奏し得る。パターン領域2aは、言い換えれば、成形品本体21への接合後において装飾層2の他の領域よりも装飾としての精度が高く要求される領域である。
図4(a)に示す成形品本体21は半球状(椀状)の凸部21aを有しており、表面に起伏を有している。そのため、装飾用シート10は接合される際にこの起伏に追従するように展延される。装飾用シート10の展延を好適に行うため、典型的には、装飾用シート10を加熱して軟化させた後に接合が行われる。
本発明による装飾用シート10は、図1(a)および(b)や図3に示すように、パターン領域2aの展延を抑制する展延抑制部材3を備えている。この展延抑制部材3は、パターン領域2aに対応する位置に設けられている。本実施形態における展延抑制部材3は、基材1の第2の主面1b側(装飾層2が設けられている側とは反対側)に、パターン領域2aに重なるように設けられている。
展延抑制部材3は、例えば、基材1よりも展延性が低い部材であり、そのことによってパターン領域2aの展延を抑制する。
あるいは、展延抑制部材3は、基材1の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、そのことによってパターン領域2aの展延を抑制する。展延抑制部材3が基材1の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有していると、装飾用シート10の展延抑制部材3が設けられている部分は、加熱された後に他の部分よりも速やかに温度が低下し、他の部分よりも展延性が低くなる。そのため、パターン領域2aの展延が抑制される。
勿論、パターン領域2aの展延を効果的に抑制するためには、展延抑制部材3が上記2つの物性を兼ね備えていることが好ましい。
従来の装飾用シートを用いて図4(a)〜(c)に示すような接合を行うと、文字や図形、絵柄などのパターンが歪んでしまうので、成形品の美観を損ねてしまう。
これに対して、本発明による装飾用シート10は、展延抑制部材3を備えているので、成形品本体21との接合の際のパターン領域2aの展延が抑制される。そのため、本発明による装飾用シート10を用いて成形品の装飾を行うと、パターンの歪みが防止され、美しい外観が得られる。なお、展延抑制部材3は、パターン領域2aに対応して基材1の主面1bの一部にのみ重なるように(すなわち基材1の主面に対して部分的に)設けられるので、成形品本体21の表面の起伏に対する装飾用シート10の追従性をほとんど低下させない。
以下、展延抑制部材3、装飾層2および基材1の好ましい材料や構造、配置を説明する。
展延抑制部材3の材料としては、アルミニウムや銅、ステンレスなどの金属を好適に用いることができ、展延抑制部材3としては、これらの金属から形成された箔やフィルム、薄板などを好適に用いることができる。一般的に、金属の熱伝導率は、樹脂の熱伝導率に比べて2桁〜3桁高いので、展延抑制部材3の材料として金属を用いると、展延抑制部材3の熱伝導率を樹脂材料から形成された基材1の熱伝導率よりも十分に高くすることができる。そのため、装飾用シート10の、展延抑制部材3が設けられた部分の温度を速やかに低くすることが容易となり、パターン領域2aの展延を効果的に抑制することが可能になる。
なお、展延抑制部材3は、金属から形成されたものに限定されない。金属や金属化合物は、樹脂に比べて非常に高い熱伝導率を有しているので、金属または金属化合物を含む材料を用いることによって、展延抑制部材3の熱伝導率を基材1の熱伝導率よりも高くすることができる。金属または金属化合物を含む材料としては、例えば、樹脂マトリクス中に、金属または金属化合物から形成されたフィラー(無機充填材)を分散混合した材料が挙げられる。フィラーを形成する金属化合物としては、例えば、アルミナなどの金属酸化物を用いることができる。
装飾用シート10の展延抑制部材3が設けられた部分の温度を速やかに低下させ、パターン領域2aの展延を効果的に抑制するためには、展延抑制部材3の熱伝導率は、基材1の熱伝導率の50倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。具体的には、展延規制部材3の熱伝導率は、10W/m・K以上であることが好ましく、15W/m・K以上であることがより好ましく、20W/m・K以上であることがさらに好ましい。樹脂材料の熱伝導率が0.2程度(例えばポリカーボネートの熱伝導率は0.19W/m・K、アクリル樹脂の熱伝導率は0.2W/m・K)であるのに対して、アルミナの熱伝導率は21W/m・K、アルミニウムの熱伝導率は236W/m・Kである。
なお、展延抑制部材3の材料として樹脂材料を用いることもできる。基材1を形成する樹脂材料よりも荷重たわみ温度(熱変形温度)の高い樹脂材料や、基材1を形成する樹脂材料よりも剛性が高い樹脂材料を用いると、展延抑制部材3の展延性を基材1よりも低くすることができるので、パターン領域2aの展延を抑制することができる。
展延抑制部材3の厚さは、5μm以上100μmであることが好ましい。厚さが5μm未満であると、強度が不足し、変形したり、破れたりすることがある。また、厚さが100μmを超えると、材料として金属を用いた場合、成形品本体21の起伏(凹凸)に対する展延規制部材3の追従性が十分ではないことがあり、接合の際に展延抑制部材3が剥がれてしまうおそれがある。
展延抑制部材3は、図5に示すように、パターン領域2aに重なる部分(重畳部分)3aを有していることが好ましい。このような重畳部分3aを展延抑制部材3が有していると、展延を抑制する効果をパターン領域2aに直接的に及ぼすことができるので、パターン領域2aの展延を効果的に抑制することができる。
また、同図に示すように、展延抑制部材3が、重畳部分3aの外周に位置する部分(外周部分)3bをさらに有していると、パターン領域2aの展延をより確実に抑制することができる。パターン領域2aの展延を効果的に抑制し、且つ、パターン領域2a以外の部分の展延を阻害しない観点からは、展延抑制部材3の外周部分3bの幅は、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがさらに好ましい。
なお、展延抑制部材3がパターン領域2aに重なる部分を有さず、パターン領域2aを縁取るような枠状であっても、パターン領域2aの展延を抑制することはできるが、図5に示すように、パターン領域2aに重なる部分3aを有している方が、パターン領域2aの展延を抑制する効果は高い。
装飾層2の材料としては、例えば、バインダーとしての樹脂材料と樹脂材料中に分散された顔料とを含むインクを用いることができ、装飾層2はこのようなインクを用いて印刷によって形成することができる。装飾層2の材料は、耐熱性、耐屈曲性に優れていることが好ましい。特開2002−275405号公報に開示されているインクは、優れた耐熱性、耐屈曲性を有しているので、装飾層2の材料として好適に用いることができる。
基材1を形成する樹脂材料としては、既に述べたように熱可塑性の樹脂材料を好適に用いることができ、より具体的には、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン樹脂などを好適に用いることができる。ただし、基材1には、シート基材としての剛性が要求されるので、その点を考慮して樹脂材料を選択することが好ましい。なお、基材1を形成する樹脂材料として熱硬化性の樹脂材料を用いることもできるが、装飾用シート10の成形性の観点からは熱可塑性の樹脂材料を用いることが好ましい。
基材1の厚さは、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。基材1の厚さが100μm未満であると、シートとして取り扱いにくかったり、強度が不足して貼り付けの際に破れたりするおそれがある。また、基材1の厚さが1000μmを超えると、成形品本体21の表面に対する追従性が悪くなることがある。
装飾用シート10の接合は、図6(a)に示すように、装飾層2が設けられている第1の主面1aが成形品本体21に面するように行われてもよいし、図6(b)に示すように、第1の主面1aとは反対側の第2の主面1bが成形品本体21に面するように行われてもよい。
また、展延抑制部材3は、図6(a)および(b)に示すように、基材1の第2の主面1b側(装飾層2が設けられていない側)に設けられていてもよいし、図7(a)および(b)に示すように、基材1の第1の主面1a側(装飾層2が設けられている側)に設けられていてもよい。展延規制部材3を第1の主面1a側に設ける場合には、展延規制部材3上に装飾層2を印刷などによって形成した後に、これらの積層体を基材1の主面1a上に設けてもよい。また、展延抑制部材3を基材1の第1の主面1a側と第2の主面1b側の両方に設けてもよい。
図6(a)および図7(a)に示すように、装飾層2が設けられている第1の主面1aが成形品本体21に面するように接合を行うと、完成した成形品において装飾層2が基材1と成形品本体21との間に位置するので、基材1によって装飾層2を保護することができるという利点が得られる。
一方、図6(b)および図7(b)に示すように、第2の主面1bが成形品本体21に面するように接合を行うと、成形品において装飾層2が基材1よりも表側に位置する。そのため、基材1を形成する樹脂材料として、透明な樹脂材料や半透明な樹脂材料だけでなく、不透明な樹脂材料も好適に用いることができるという利点が得られる。
また、図6(a)および図7(b)に示すように、展延抑制部材3が基材1に対して成形品本体21とは反対側に位置するように接合を行うと、接合後に展延抑制部材3を除去することが可能になり、完成した成形品に展延抑制部材3が残存することによる美観の低下を防止できる。さらに、完成した成形品における展延抑制部材3の装飾への寄与を無視することができるので、展延抑制部材3の材料の選択の自由度を高くする(例えば透明または半透明な材料を用いる必要がない)ことが可能になり、金属などの種々の材料を好適に用いることができるようになる。
特に、図6(a)に示すように、展延抑制部材3を基材1の第2の主面1b側(装飾層2の設けられている側とは反対側)に設け、装飾層2の設けられている第1の主面1aが成形品本体21に面するように接合を行うと、基材1によって装飾層2を保護することができるという利点と、展延抑制部材3を除去することが可能になるという利点の両方が得られ、実用上のメリットが大きい。
展延抑制部材3や装飾用シート10の固着には、例えば接着剤が用いられる。接着剤としては、熱可塑性の樹脂(例えば熱可塑性のポリウレタン樹脂や熱可塑性のアクリル樹脂)を用いることもできるし、熱硬化性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)を用いることもできる。接合の前に装飾用シート10を加熱する場合には、接着剤は、耐熱性が高いことが好ましい。また、接合後に展延抑制部材3を除去する場合には、展延抑制部材3の固着に用いる接着剤は、剥離が容易であることが好ましい。耐熱性が高く、且つ、剥離が容易な接着剤としては、具体的には、シリコーン系の粘着材が挙げられる。
次に、装飾用シート10を用いた成形品の製造方法とその製造方法に用いられる製造装置を説明する。
まず、図8を参照しながら成形品の製造装置100を説明する。製造装置100は、図8に示すように、装飾用シート10を保持する保持具(保持枠)30と、成形品本体21を支持する支持具(支持台)31と、保持具30および支持具31の上方に位置する加圧用ボックス32と、加圧用ボックス32を昇降させるシール用シリンダー33と、加圧用ボックス32の下方の空間に気体を導入するための加圧用ゴムホース34と、装飾用シート10を加熱するためのヒーター(例えば遠赤外線ヒーター)35と、これらを収容する真空容器36とを備えている。
真空容器36は、保持具30、支持具31、ボックス32、シリンダー33、ゴムホース34を収容する第1の容器36aと、ヒーター35を収容する第2の容器36bとを有しており、ヒーター35は、必要に応じて扉37を介して第1の容器36a内に導入される。
支持具31は、複数の開口部31aを有しており、外部に設置された真空ポンプを用い、この開口部31aを通じて空気を吸引することによって、支持具31の上方に広がる空間の減圧(真空引き)を行うことができる。また、ゴムホース34は、外部に接続されており、このゴムホース34を通じて気体を導入することによって、ボックス32の下方に広がる空間を加圧することができる。
次に、図9から図15を参照しながら、装飾用シート10を用いた成形品の製造方法を説明する。図9から図14は、成形品の製造方法を模式的に示す工程断面図であり、図15は、各工程の所要時間の一例を示すタイムチャートである。
まず、図1などに示す装飾用シート10を用意する。装飾用シート10は、上述した材料を用いて公知の手法で作製することができる。例えば、基材1の第1の主面1a上にインクを印刷することによって装飾層2を形成し、基材1の第2の主面1b側に展延抑制部材3を接着剤を用いて固着することによって作製することができる。
また、装飾用シート10の作製とは別に、成形品本体21を用意する。成形品本体21は、樹脂材料から形成されたものであってもよいし、金属材料から形成されたものであってもよく、他の材料から形成されたもの(例えば木製)であってもよい。また、成形品本体21は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、半透明であってもよい。成形品本体21は、公知の手法を用いて作製でき、樹脂材料を用いる場合、例えば射出成形により作製できる。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の両方を用いることができ、具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを用いることができる。
次に、図9に示すように、成形品本体21を支持具31上に載置し、装飾用シート10を成形品本体21の上方に位置するように保持具30に固定する。このとき、装飾用シート10の成形品本体21側の表面に接着剤を付与しておく。本実施形態では、この後、外部に設けられた真空ポンプを用いて支持具31の開口部31aから真空容器35内の空気を吸引することによって真空容器35内を予備的に減圧する。この減圧により、真空容器35内部の圧力は、例えば2.7kPa以下とされる。
続いて、図10に示すように、装飾用シート10をヒーター35を用いて加熱し、それによって装飾用シート10を軟化させる。このとき、装飾用シート10は、典型的には、基材1を形成する樹脂材料の荷重たわみ温度以上の温度に加熱される。加熱温度が低すぎると、樹脂材料が変形しにくく、成形の際(貼り付けの際)に割れたり、成形そのものができなくなったりすることがあり、また、加熱温度が高すぎると、加熱時のシートの垂れが著しく成形がしにくくなったり、樹脂材料中に気泡が発生して外観が悪くなったりすることがある。そのため、基材1の樹脂材料の種類に応じて加熱温度を適宜設定することが好ましい。基材1を形成する樹脂材料としてポリカーボネートを用いる場合、装飾用シート10を例えば195℃程度に加熱する。第2の容器36bから第1の容器36aへのヒーター35の移動は、例えば3秒〜5秒程度で行われ、ヒーター35による加熱は、例えば15秒〜30秒間程度行われる。
その後、図11に示すように、シリンダー33によって加圧用ボックス32と保持具30とを降下させることによって、装飾用シート10を成形品本体21に近接させる。この降下は、例えば1秒〜2秒程度で行われる。なお、本実施形態では装飾用シート10を降下させる場合を示したが、成形品本体21を支持する支持具31を上昇させることによって装飾用シート10を成形品本体21に近接させてもよい。
次に、図12に示すように、装飾用シート10と成形品本体21との間に形成される第1の空間を、装飾用シート10に対して第1の空間とは反対側に広がる第2の空間(すなわち装飾用シート10と加圧用ボックス32との間に形成される空間)よりも減圧することによって、図13に示すように、装飾用シート10を成形品本体21に接合する。
具体的には、真空ポンプを用いて第1の空間を減圧するとともに、ゴムホース34からボックス32内に気体を導入して第2の空間を加圧することによって、装飾用シート10を成形品本体21に対してほぼ均一な圧力で押し付け、そのことによって装飾用シート10と成形品本体21とを接合する。第1の空間の減圧は、第1の空間内が例えば2.7kPa以下になるように行われ、第2の空間の加圧は、第2の空間内が例えば0.2MPa〜0.5MPa程度になるように行われる。第1の空間の減圧状態および第2の空間の加圧状態は、所定時間(例えば15秒以上)保持される。第2の空間内に導入される気体(例えば空気)の温度は、例えば室温程度(15℃〜30℃)である。
続いて、真空容器35を開放して真空容器35内を大気圧に戻し、装飾用シート10の不要な部分を回転刃などの切断手段を用いて切断(トリミング)し、その後、成形品本体21を支持具30から取り外すことによって、図14に示すように成形品20が完成する。
上述した製造方法によれば、成形品本体21への装飾用シート10の接合(すなわち装飾用シート10の成形)を非常に短時間(例示したように1秒以下)で行うことが可能になる。また、接合の際、装飾用シート10は全体として展延されるが、装飾層2のパターン部2aは、展延抑制部材3によってその展延を抑制される。そのため、パターンの歪みが防止され、外観の美しさを損ねることがない。
展延抑制部材3の展延性が基材1の展延性よりも低い場合には、そのことによってパターン部2aの展延が抑制される。また、展延抑制部材3の熱伝導率が基材1の熱伝導率よりも高い場合には、装飾用シート10の、展延抑制部材3が設けられている部分(すなわちパターン領域2aに対応した部分)の温度が、装飾用シート10の他の部分の温度よりも速やかに低くなる。そのため、装飾用シート10の接合は、装飾用シート10のパターン領域2aに対応した部分の温度が、装飾用シート10の他の部分の温度よりも低い状態で行われ、そのことによってパターン部2aの展延が抑制される。
なお、ヒーター35による加熱を停止すれば、装飾用シート10は自然に冷却される(放冷される)ので、上述したような装飾用シート10の不均一な温度分布は実現されるが、より積極的な冷却を行ってもよい。本実施形態のように、接合の際に第2の空間に気体を導入する場合、導入された気体は、第2の空間を加圧するだけでなく、装飾用シート10の第2の空間側の表面を冷却する役割も果たし得る。従って、展延抑制部材3が第2の空間に面している場合には、展延抑制部材3をこの気体によって冷却し、上述した不均一な温度分布を速やかにつくりだすことができる。したがって、接合が上述したように非常に短時間で行われる場合でも、パターン領域2aの展延をより確実に抑制することができる。
また、展延抑制部材3が第2の空間に面するように接合が行われる場合には、必要に応じて、成形品20から展延抑制部材3を除去してもよい。展延抑制部材3の固着を、剥離が容易な接着剤を用いて行っておくことにより、この除去を好適に行うことができる。
なお、展延規制部材3は、基材1の第1の主面1aや第2の主面1bに直に接している必要はない。基材1と展延規制部材3との間には、典型的には接着剤層が存在しているし、さらに他の層が介在していてもよい。図16に、接合後の断面構造の一例を部分的に拡大して示す。
図16に例示した構造では、ポリカーボネートから形成された基材1の第2の主面1b上に、アクリル樹脂からなる保護層8が形成されており、この保護層8上に接着剤層9を介してアルミニウムから形成された展延規制部材3が設けられている。保護層8は、成形品20において基材1よりも表側に位置し、基材1を保護して装飾用シート10の耐候性を向上させる。基材1は例えば200μm〜1000μmの厚さを有し、保護層8は例えば5μm〜50μmの厚さを有している。また、展延抑制部材3は、例えば5μm〜100μmの厚さを有し、接着剤層9は、例えば5μm〜50μmの厚さを有している。
また、図16に示すように、基材1の第1の主面1a上に、インクから形成された装飾層2が設けられており、この装飾層2上に、スズから形成された金属層6が接着剤層7を介して設けられている。金属層6が金属光沢を有することにより、装飾用シート10は金属のような質感を有する金属調の色彩(メタリックカラー)を呈することができる。ここでは、金属層6は、キャリアフィルム5上にスズを蒸着し、この積層構造体を接着剤を用いて第1の主面1aに貼り付けることによって形成されている。装飾層2は、例えば5μm〜50μmの厚さを有している。金属層6は、例えば0.25μm〜0.8μmの厚さを有しており、スズ等のやわらかい金属から形成されている。
また、図16に示す装飾用シート10は、成形品本体21に接着剤層4を介して接合されており、この接着剤層4は例えば5μm〜50μmの厚さを有している。なお、既に述べたように、展延規制部材3を基材1の第1の主面1b側に設けてもよく、より具体的には、図16中に破線で示すように、基材1の第1の主面1a上に、装飾層2、接着剤層7、金属層6、キャリアフィルム5を介して展延規制部材3を設けてもよい。
装飾層2のパターン領域2aの装飾効果を高く保つ観点からは、図17に示すように、シート10のパターン領域2aに対応した部分の厚さTが、シート10の他の部分の厚さTの1.1倍以上1.8倍以下であることが好ましく、1.2倍以上1.6倍以下であることがさらに好ましい。厚さTが厚さTの1.1倍未満となるほどパターン領域2aが薄いと、成形品本体21の表面の凹凸によってパターン領域2aの段切れなどが発生するおそれがあり、所望の装飾効果が得られないことがある。また、厚さTが厚さTの1.8倍を超えると、レンズ効果によってパターン領域2aがゆがんで見えたり、パターン領域2aに対応した部分(他の部分よりも突出している)が擦れて傷ついたりするおそれがある。
また、本実施形態では、一体成形された(言い換えれば単一の部材を有する)成形品本体21を示したが、成形品本体が別体に成形された複数の部材を有してもよく、装飾用シート10の接合によってこれらの複数の部材を互いに結合してもよい。
具体的には、図18(a)に示すように、第1の部材22aと、第1の部材22aの表面上に配置された第2の部材22bとを有する成形品本体22の表面に、装飾用シート10を第1の部材22aおよび第2の部材22bの両方を覆うように接合することによって、図18(b)に示すように、第1の部材22aと第2の部材22bとが結合された成形品20’を得ることができる。
第1の部材22aと第2の部材22bとの相対的な位置関係は、任意に選択することができるため、上述したように成形品本体22の複数の部材22a、22bを装飾用シート10の接合により結合すると、多種多様な形状の成形品を比較的少ない成形型を用いて得ることができる。そのため、多種多様な形状の成形品の製造を安価に且つ容易に行うことが可能になる。なお、第1の部材22aおよび第2の部材22bには、これら同士を仮止めする構造、すなわち、これらの相対的な位置関係を決定するための位置決め構造を設けてもよい。位置決め構造は、例えば、互いに嵌合する凸部と凹部である。
装飾用シート10を用いた製造方法により製造された成形品は、自動車両の内装や外装、家電製品の外装などに好適に用いられ、例えば、図19に示す自動二輪車50のタンクカバー51やフロントフェンダー52、テールカウル53として好適に用いられる。なお、言うまでもないことであるが、「自動車両」は、自動推進式の乗物または機械で、旅客や品物の輸送あるいは物の移動のために用いられるものを広く指し、例えば、乗用車、オートバイ、バス、トラック、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などを指す。勿論、ガソリンエンジンなどの内燃機関を備えたものだけでなく、電動機を備えたものも含む。
【産業上の利用可能性】
本発明による装飾用シートは、装飾層のパターン領域に対応した位置に、パターン領域の展延を抑制する展延抑制部材を備えているので、成形品本体との接合の際のパターン領域の展延が抑制される。従って、本発明による装飾用シートは、表面に起伏を有する成形品の装飾に好適に用いることができ、本発明による装飾用シートを用いて成形品の製造を行うと、パターンの歪みが防止され、美しい外観を有する成形品が得られる。
本発明による装飾用シートを用いて製造された成形品は、各種の物品に好適に用いられ、自動車両の内装や外装に特に好適に用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、
所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、
前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記装飾層の前記パターン領域の展延を抑制する展延抑制部材と、を備えた装飾用シート。
【請求項2】
前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料である請求項1に記載の装飾用シート。
【請求項3】
前記展延抑制部材は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する請求項1または2に記載の装飾用シート。
【請求項4】
前記展延抑制部材は、金属または金属化合物を含む材料から形成されている請求項1から3のいずれかに記載の装飾用シート。
【請求項5】
前記展延抑制部材は、金属から形成されている請求項1から3のいずれかに記載の装飾用シート。
【請求項6】
前記展延抑制部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である請求項1から5のいずれかに記載の装飾用シート。
【請求項7】
前記展延抑制部材の厚さは、5μm以上100μm以下である請求項1から6のいずれかに記載の装飾用シート。
【請求項8】
前記展延抑制部材は、前記パターン領域に重なる第1の部分を有している請求項1から7のいずれかに記載の装飾用シート。
【請求項9】
前記展延抑制部材は、前記第1の部分の外周に位置する第2の部分を有している請求項8に記載の装飾用シート。
【請求項10】
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、1mm以上10mm以下である請求項9に記載の成形品の製造方法。
【請求項11】
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、2mm以上8mm以下である請求項9に記載の成形品の製造方法。
【請求項12】
成形品本体と、前記成形品本体の表面に接合された請求項1から11のいずれかに記載の装飾用シートとを備えた成形品。
【請求項13】
成形品本体と、前記成形品本体の表面に接合されたシートとを備え、
前記シートは、基材と、前記基材の前記成形品本体側の面上に設けられた装飾層とを有し、
前記装飾層は、所定のパターンを表すパターン領域を有し、
前記シートの、前記パターン領域に対応した部分は、前記シートの他の部分の厚さの1.1倍以上1.8倍以下の厚さを有する成形品。
【請求項14】
前記シートの、前記パターン領域に対応した部分は、前記シートの他の部分の厚さの1.2倍以上1.6倍以下の厚さを有する請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
請求項12から14のいずれかに記載の成形品を備えた自動車両。
【請求項16】
樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記装飾層の前記パターン領域の展延を抑制する展延抑制部材と、を備えた装飾用シートを用意する工程と、
成形品本体を用意する工程と、
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程と、を包含する成形品の製造方法。
【請求項17】
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の前に、前記装飾用シートを加熱する工程を包含する請求項16に記載の成形品の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料である請求項17に記載の成形品の製造方法。
【請求項19】
前記展延抑制部材は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する請求項17または18に記載の成形品の製造方法。
【請求項20】
前記展延抑制部材は、金属または金属化合物を含む材料から形成されている請求項17から19のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項21】
前記展延抑制部材は、金属から形成されている請求項17から19のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項22】
前記展延抑制部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である請求項17から21のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項23】
前記展延抑制部材の厚さは、5μm以上100μm以下である請求項17から22のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項24】
前記展延抑制部材は、前記パターン領域に重なる第1の部分を有している請求項17から23のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項25】
前記展延抑制部材は、前記第1の部分の外周に位置する第2の部分を有している請求項24に記載の成形品の製造方法。
【請求項26】
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、1mm以上10mm以下である請求項25に記載の成形品の製造方法。
【請求項27】
前記展延抑制部材の前記第2の部分の幅は、2mm以上8mm以下である請求項25に記載の成形品の製造方法。
【請求項28】
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程は、加熱された前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程と、前記成形品本体に近接した前記装飾用シートと前記成形品本体との間に形成される第1の空間を、前記装飾用シートに対して前記第1の空間とは反対側に広がる第2の空間よりも減圧する工程と、を包含する請求項17から27のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項29】
前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程は、前記展延抑制部材が前記第2の空間に面するように行われる請求項28に記載の成形品の製造方法。
【請求項30】
前記装飾用シートを前記成形品本体に近接させる工程の後に、前記第2の空間に気体を導入することによって前記展延抑制部材を冷却する工程を包含する、請求項29に記載の成形品の製造方法。
【請求項31】
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の後に、前記展延抑制部材を除去する工程を包含する、請求項29または30に記載の成形品の製造方法。
【請求項32】
前記展延抑制部材は、前記基材の前記第2の主面側に設けられている請求項16から31のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項33】
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程の後、前記装飾層は前記基材と前記成形品本体との間に位置している請求項16から32のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項34】
前記成形品本体は、第1の部材と、前記第1の部材の表面上に配置された第2の部材とを有し、
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程において、前記装飾用シートを、前記第1の部材および前記第2の部材の両方を覆うように前記成形品本体の表面に接合し、それによって前記第1の部材と前記第2の部材とを結合する請求項16から33のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項35】
樹脂材料から形成され互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、所定のパターンを表すパターン領域を有し、前記基材の前記第1の主面上に設けられた装飾層と、を備えた装飾用シートを用意する工程と、
成形品本体を用意する工程と、
前記装飾用シートを加熱する工程と、
加熱された前記装飾用シートを、前記装飾用シートの前記パターン領域に対応した部分の温度が、前記装飾用シートの他の部分の温度よりも低い状態で前記成形品本体の表面に接合する工程と、を包含する成形品の製造方法。
【請求項36】
前記装飾用シートを前記成形品本体の表面に接合する工程は、前記装飾用シートを、前記パターン領域に対応した部分の温度が前記他の部分の温度よりも速やかに低くなるように冷却する工程を包含する請求項35に記載の成形品の製造方法。
【請求項37】
前記装飾用シートは、前記基材の前記第1の主面側または前記第2の主面側の前記パターン領域に対応する位置に設けられ、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する部材をさらに備えている請求項36に記載の成形品の製造方法。
【請求項38】
前記部材は、金属を含む材料から形成されている請求項37に記載の成形品の製造方法。
【請求項39】
前記部材は、金属から形成されている請求項37に記載の成形品の製造方法。
【請求項40】
前記部材の熱伝導率は、10W/m・K以上である請求項37から39のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項41】
請求項16から40のいずれかの製造方法によって製造された成形品を備えた自動車両。

【国際公開番号】WO2004/062905
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566300(P2004−566300)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016838
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】