説明

装飾部材の照明装置

【課題】 簡単な構成で、かつレーダ装置が誤認識することなく装飾部材を光輝表示させる照明装置を提供することである。
【解決手段】 車両のフロントグリル1に取り付けられたエンブレム3と、レーダ装置6との間に発光装置4を配置する。エンブレム3と、発光装置4を構成する導光板7及びケース体9は、レーダ装置6から送信される電波5を透過可能である。導光板7の周縁部に配置された2個のLED8の光を、導光板7の側面部7aに照射し、導光板7の表面12を発光させる。この光によって、エンブレム3をむらなく均一に光輝表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部に取り付けられ、車両に搭載されたレーダ装置から送信される送信ビーム(例えば、電波)を透過可能な装飾部材の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば、自動車)の意匠性を向上させるために、車体に各種の装飾部材が取り付けられている。これらの装飾部材は、「エンブレム」、「オーナメント」等と称されている(以下、本明細書では「エンブレム」と記載する)。
【0003】
近時の自動車において、車両に搭載されたレーダ装置から車両の前方に向けて電波(例えば、ミリ波)を送信し、先行する走行車両(以下、先行車両)に当たって戻ってきた電波を受信することにより先行車両との距離を算出し、自車の走行速度を自動的に制御する(増速させたり、減速させたりする)装置が普及している。この種の装置におけるレーダ装置は、電波の送受信の効率を高めるとともに車両の意匠性を確保するため、車両の外装部材(フロントグリル)における前面のほぼ中央部に取り付けられたエンブレムの後方に搭載されている場合が多い。レーダ装置から送信された電波は、エンブレムを透過して前方に送信される。そして、先行車両に当たって戻ってきた電波は、再びエンブレムを透過してレーダ装置に受信される。
【0004】
エンブレムの意匠性を高めるために、エンブレムに金属メッキを施すことが行われている(例えば、特許文献1を参照)。このとき、一定の金属(例えば、インジウム)をメッキすることにより、電波の透過性を損なわない。このエンブレムを、例えば夜間に光輝表示させることにより、その意匠性を更に高めることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−117048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構成で装飾部材を光輝表示させる照明装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、
車両の前部に取り付けられ、車両に搭載されたレーダ装置から車両の前方に向けて送信される送信ビームを透過可能な装飾部材と、
前記装飾部材と前記レーダ装置との間に配置され、前記送信ビームの透過を妨げることなく前記装飾部材に向かって光を照射し、該装飾部材を光輝表示させる発光装置と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の照明装置では、装飾部材とレーダ装置との間に配置した発光装置から光を照射させることにより、装飾部材を光輝表示させることができる。これにより、装飾部材におけるレーダ装置からの送信ビームの透過性を損なうことなくその意匠性が良好となる。発光装置からの光を直接的に装飾部材に照射しても、また別部材を介して間接的に装飾部材に照射してもよい。なお、レーダ装置から送信される送信ビームとは、電波、光、赤外線等である。
【0009】
前記発光装置は、
前記装飾部材と対向配置され、前記送信ビームを透過可能であるとともに側面部に光を照射することによって主表面が面発光する導光体と、
前記導光体の側面部に光を照射するために、その周縁部に配置される光源と、を備え、
前記光源から照射された光で前記導光体の主表面を面発光させることにより、前記装飾部材を光輝表示させる。
【0010】
発光装置は、装飾部材と対向配置される導光体と、導光体の側面部に光を照射する光源とを備えている。光源は導光体の周縁部に配置されるため、光源がレーダ装置における送信ビームの送受信を妨げることがなくなり、レーダ装置が誤認識するおそれが小さくなる。また、光源からの光によって導光体の主表面が面発光するため、装飾部材をむらなく、均一に光輝表示させることができる。
【0011】
前記導光体は板状であり、前記装飾部材と対向する主表面と反対側の主表面に、前記光源から照射された光を拡散して前記装飾部材と対向する主表面から出射するための光拡散部を設けることができる。
【0012】
光拡散部によって光が拡散されるため、光の出射効率が良好となる。これにより、装飾部材を明るく光輝表示させることができる。
【0013】
前記光拡散部は多数本の溝部よりなり、それらの深さ及び/又はそれらどうしのピッチを、前記光源から遠ざかるにつれて徐々に小さくなるように設けることが望ましい。
【0014】
これにより、導光体における光源に近い部分と遠い部分とで発光むらが少なくなり、装飾部材を均一に光輝表示させることができる。
【0015】
前記導光体と前記光源は、前記送信ビームを透過可能なケース体に収容され、前記ケース体における前記導光体の主表面との対向面に、該導光体の主表面から出射した光を反射するための反射面を設けてもよい。
【0016】
ケース体の反射面により、導光体からケース体の側に出射された光を装飾部材の側に反射させることができる。これにより、装飾部材をより明るく光輝表示させることができる。
【0017】
前記装飾部材は、車両の外装部材の前面中央部に取り付けることができる。
【0018】
これにより、レーダ装置からの送信ビームにより、確実に先行車両を捉えることができるとともに、車両の意匠も良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例の照明装置101の断面図である。
【図2】エンブレム3と発光装置4の斜視図である。
【図3】同じく断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、エンブレム3の製造工程を示す図である。
【図5】第2実施例の照明装置102の断面図である。
【図6】LED8が1個の場合の導光板7の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明において、図1は本発明の第1実施例の照明装置101の断面図、図2はエンブレム3と発光装置4の斜視図、図3は同じく断面図である。
【実施例1】
【0022】
図1に示されるように、車両の前部に第1実施例の照明装置101が取り付けられている。照明装置101は、フロントグリル1(外装部材)の前面のほぼ中央部に固定されるブラケット2の前川部分に嵌め込まれて支持されるエンブレム3(装飾部材)と、エンブレム3の背面部に近接して配置される発光装置4とを備えている。そして、発光装置4の後方(背面側)には、電波5(送信ビーム。本実施例の場合、76.5GHzのミリ波)を送信し、先行する走行車両(図示せず)に当たって戻ってきた電波5を受信するレーダ装置6が配置されている。レーダ装置6から送信された電波5は、エンブレム3のほぼ全面を送信領域として送信される。
【0023】
発光装置4について説明する。図1及び図2に示されるように、本実施例の発光装置4は、電波5を透過可能な樹脂材よりなる方形薄板状の導光板7(導光体)と、導光板7の周縁部に対向配置された2個のLED8(光源)と、電波5を透過可能な樹脂材よりなり、導光板7と各LED8を保持するケース体9とを備えている。導光板7は、エンブレム3と同じ程度の大きさである。本実施例の発光装置4の場合、各LED8は、導光板7の上下の側面部7aにおけるそれぞれのほぼ中央部に近接して配置されている。各LED8から照射された光は、導光板7の側面部7aから導光板7に導入される。また、導光板7と各LED8は、ケース体9の切欠部9aに嵌合されてケース体9に支持されている。導光板7と各LED8を支持したケース体9は、ブラケット2に取り付けられる。そして、ブラケット2とケース体9との隙間がシール材11によって塞がれる。
【0024】
各LED8から導光板7に照射された光は、導光板7の内部を拡散して、導光板7におけるエンブレム3と対向する側の主表面(表面12)から出射する。このため、図3に示されるように、導光板7のもう1つの主表面(裏面)には光の拡散を容易にするとともに、導光板7の表面12の全体が均一に発光するようにする光拡散部13が設けられている。この光拡散部13は、導光板7の裏面に設けられた多数本のV溝14よりなる。各V溝14における導光板7の裏面からの深さ及びV溝14どうしのピッチは各LED8の近辺では大きく、各LED8から遠ざかるにつれて徐々に小さくなっている。即ち、導光板7における高さ方向の中央部近傍のV溝14の深さ及びピッチが最も細かくなっている。各LED8から導光板7に入射した光は、各V溝14で拡散して導光板7の表面12及び裏面から出射するとともに、拡散しながら導光板7における高さ方向の中央部近傍に進入し、より細かく形成された各V溝14によって拡散しながら導光板7の表面12及び裏面から出射する。これにより、導光板7の表面12が均一に発光する。
【0025】
ケース体9の底面部9b(導光板7の裏面と対向する部分)には、導光板7の裏面から出射した光を反射させるための反射面となっている。これにより、導光板7の裏面から出射した光が反射して導光板7の表面12から出射するため、導光板7の表面12から出射される光の量が多くなり、導光板7の表面12が一層明るく発光する。
【0026】
次に、エンブレム3について説明する。このエンブレム3は、光を透過可能で、一方側の全面にインジウム等の金属層をコーティングした樹脂板15(例えばポリカーボネート)を、そのコーティング面が突出するように型成形したものである。即ち、図4の(a)に示されるように、樹脂板15の片面にインジウムを含む金属層がコーティングされ、金属層部16が形成される。インジウムを含む金属層部16には、金属粒子が島状(アイランド状)となって形成されるため、それらの島どうしの隙間から電波5を透過させることができる。この結果、樹脂板15の片面が金属光沢面となる。
【0027】
続いて、図4の(b)に示されるように、この樹脂板15にプレス成形等を施して、金属層部16に所定の模様形状を形成する。本実施例の場合、「S」字形状を形成している(図2参照)。そして、図4の(c)に示されるように、金属層部17の非突出部分を例えば黒色塗料で塗装し、塗装部17を形成する。塗装部17の塗膜は十分に薄いため、電波5を透過可能である(ただし、光は透過しない)。これにより、電波5の透過性を損なうことなく、金属光沢面の模様形状部分(「S」字形状部分)が、黒色塗装された面(塗装部17)を地の面として立体的に浮かび上がり、エンブレム3としての意匠性が良好となる。
【0028】
本実施例の照明装置101の作用について説明する。図4の(a)〜(c)に示され各工程を経てエンブレム3が製作される。このエンブレム3は、図1に示されるように、車両のフロントグリル1の前面のほぼ中央部にブラケット2を介して取り付けられる。エンブレム3の後方には、レーダ装置6が配置されている。
【0029】
そして、エンブレム3とレーダ装置6との間に発光装置4が取り付けられる。本実施例の発光装置4は、導光板7と、導光板7の上下の側面部7aに光を照射する2個のLED8と、それらを支持するケース体9とを備えている。発光装置4は、導光板7の表面12をエンブレム3の背面に近接させた状態で配置される。各LED8から導光板7の側面部7aに照射された光は、導光板7に導入され、導光板7の表面12を発光させる。導光板7の裏面に光拡散部13が設けられているため、導光板7がむらなく発光する。また、ケース体9の底面部9b(導光板7の裏面との対向面)が反射面となっているため、導光板7の裏面から漏れた光がケース体9の底面部9bに反射して、導光板7の表面12から出射する。これにより、導光板7の表面12が一層明るく発光する。そして、導光板7の光を受けて、エンブレム3が光輝表示される。ブラケット2とケース体9との隙間は、シール材11によってシールされているため、導光板7の光が後方(レーダ装置6の側)に漏れることはない。
【0030】
レーダ装置6から送信された電波5は、ケース体9、導光板7及びエンブレム3を透過して車両の前方に送信される。そして、先行車両に当たって戻ってきた電波5は、再びエンブレム3、導光板7及びケース体9を透過してレーダ装置6に受信され、その時間差等から先行車両との距離が計測される。本実施例の発光装置4の場合、各LED8は導光板7の周縁部に設けられている。このため、各LED8が、レーダ装置6から送受信される電波5の経路を妨害することはない。換言すれば、本実施例の発光装置4は電波5の経路を妨げることなく、エンブレム3を光輝表示させることができる。これにより、レーダ装置6が誤認識するおそれが小さくなる。
【実施例2】
【0031】
次に、第2実施例の照明装置102について説明する。上記した第1実施例の発光装置4は、LED8から照射された光で発光する導光板7により、エンブレム3を光輝表示させる形態である。これにより、エンブレム3を、むらなく均一に光輝表示することができるという利点がある。しかし、図5に示されるように、導光板7を介することなく、各LED8の光をエンブレム3に直接に照射して、エンブレム3を光輝表示させてもよい。この実施例の照明装置102の場合、導光板7が不要であるため、構成が一層簡単になるという利点がある。
【0032】
上記した第1及び第2の実施例の照明装置101,102では、光源として2個のLED8を使用している。しかし、LED8の数は1個又は3個以上であってもよい。また、光源はLED8ではなく、電球等であってもよい。
【0033】
特に、LED8が1個の場合、導光板7の裏面に形成される光拡散部13は図6のようになる。即ち、LED8に近い部分のV溝14の深さ及びそれらどうしのピッチは大きく、LED8から遠ざかるにつれて徐々に小さくなっている。これにより、LED8が1個でも導光板7を、むらなく均一に発光させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る装飾部材の照明装置は、車両のエンブレムとして使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 フロントグリル(外装部材)
3 エンブレム(装飾部材)
4 発光装置
5 電波(送信ビーム)
6 レーダ装置
7 導光板(導光体)
7a 側面部
8 LED(光源)
9 ケース体
9b 底面部(反射面)
12 表面(主表面)
13 光拡散部
14 V溝(溝部)
101,102 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に取り付けられ、車両に搭載されたレーダ装置から車両の前方に向けて送信される送信ビームを透過可能な装飾部材と、
前記装飾部材と前記レーダ装置との間に配置され、前記送信ビームの透過を妨げることなく前記装飾部材に向かって光を照射し、該装飾部材を光輝表示させる発光装置と、
を備えることを特徴とする装飾部材の照明装置。
【請求項2】
前記発光装置は、
前記装飾部材と対向配置され、前記送信ビームを透過可能であるとともに側面部に光を照射することによって主表面が面発光する導光体と、
前記導光体の側面部に光を照射するために、その周縁部に配置される光源と、を備え、
前記光源から照射された光で前記導光体の主表面を面発光させることにより、前記装飾部材を光輝表示させることを特徴とする請求項1に記載の装飾部材の照明装置。
【請求項3】
前記導光体は板状であり、前記装飾部材と対向する主表面と反対側の主表面には、前記光源から照射された光を拡散して前記装飾部材と対向する主表面から出射するための光拡散部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の装飾部材の照明装置。
【請求項4】
前記光拡散部は多数本の溝部よりなり、それらの深さ及び/又はそれらどうしのピッチは、前記光源から遠ざかるにつれて徐々に小さくなるように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の装飾部材の照明装置。
【請求項5】
前記導光体と前記光源は、前記送信ビームを透過可能なケース体に収容され、前記ケース体における前記導光体の主表面との対向面に、該導光体の主表面から出射した光を反射するための反射面が設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の装飾部材の照明装置。
【請求項6】
前記装飾部材は、車両の外装部材の前面中央部に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装飾部材の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93378(P2011−93378A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247804(P2009−247804)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000105925)サカエ理研工業株式会社 (110)
【Fターム(参考)】