説明

製粉機

【課題】軽量化及び小型化が可能で家庭用として好適な製粉機の提供。
【解決手段】穀粒の製粉機は、上に凸のテーパ状で中心側から外周方向に向けて第1溝条Vを持つ下側擦り込み面8aを有する回転下臼8と、下に凹のテーパ状で中心側から外周方向に向けて第2溝条を持ち下側擦り込み面8aに対面する上側擦り込み面及び回転下臼の回転中心線に沿う穀粒落し込み通孔6cを有する固定上臼6とを有する。軸受ハウジング12の下端は楔ブロックの楔面に接合する斜口面12aであって、下側擦り込み面8aと上側擦り込み面6dとの対向ギャップを調節できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そば,米,麦,豆などの穀粒を製粉する製粉機に関し、特に家庭用に好適な製粉機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製粉機としては、特開2001−137728に開示の様に、固定下臼と回転上臼とを有し、回転上臼の回転中心から偏心した位置に設けた縦孔へそば粒を落とし込み、回転上臼と固定下臼とのテーパ状擦り合せ面へ導いて初期破砕と擦り込みを行いながら、そば粉がテーパ状擦り合せ面の中心から径方向外方に向って送り出されるようになっている。
【特許文献1】特開2001−137728(図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の製粉機は、テーパ状擦り合せ面では上臼の自重により互いの対向ギャップ管理が不要であるものの、回転上臼と固定下臼が石臼で重いため、重量化と大型化を招き、出し入れを必要とする家庭用製粉機としては不向きな形態となっている。また、穀粒ホッパからの穀粒を回転上臼の偏心位置の縦孔内に落とし込む穀粒供給装置の構成が大掛りなものとなっている。
【0004】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明の課題は、軽量化及び小型化が可能で家庭用として好適な製粉機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る製粉機は、上に凸のテーパ状で下側擦り込み面を有する回転下臼と、下に凹のテーパ状で下側擦り込み面に対向する上側擦り込み面及び回転下臼の回転中心線に沿う穀粒落し込み通孔を有する固定上臼と、回転下臼を上下変位可能な対向ギャップ調節手段とを備えて成る。
【0006】
例えば殻剥きの穀粒を製粉する場合はまだ粒径が大きいので、対向ギャップ調節手段を操作し、回転下臼を下げて下側擦り込み面と上側擦り込み面との対向ギャップを大きく設定した後、回転下臼を回転駆動して穀粒落し込み通孔内へ穀粒を投入すると、回転する下側擦り込み面に穀粒が引き込まれて上側擦り込み面との挟間で粉砕されながら粗い粉体が外周方向へ送り出される。次に、対向ギャップ調節手段を操作し、回転下臼を上げて下側擦り込み面と上側擦り込み面との対向ギャップを小さく設定した後、上記の粗い粉体を穀粒落し込み通孔内へ再投入することにより、今度は細かな粉体を得ることができる。また、米粒と豆粒などのように異なる粒径でも対向ギャップ調節手段を適宜操作することにより最適な製粉を実現できる。
【0007】
このように、本発明では下臼を回転臼としてこの下臼を上下変位可能な対向ギャップ調節手段を設けたため、下臼の下側に配置する電動機からの駆動伝達機構を簡素化でき、また固定上臼の穀粒落し込み通孔の上に穀粒ホッパを直接載せることができ、製粉機の小型化と軽量化を実現できるので、軽量且つ小型化の家庭用製粉機を提供できる。
【0008】
下側擦り込み面としては中心側から外周方向に向けて複数の第1溝条を持ち、上側擦り込み面としては中心側から外周方向に向けて複数の第2溝条を持つように構成できるが、下側擦り込み面は上に凸のテーパ状であり、しかもこの下側擦り込み面が回転するため、その外周側の周速度が速くなる分、粗い粉体のまま振り切り排出され易い。そこで、回転下臼の外周側に下側擦り込み面上の粉砕物を一時停留させる圧迫手段を設けることが望ましい。この圧迫手段としては回転下臼の外周側に張り出た第1鍔部とすることができる。テーパ状の下側擦り込み面上を流れ下る粉砕物は第1鍔部上では一時停留して粉体溜まりを形成し、圧迫されることになるため、振り切り排出作用が弱まり擦り込み時間が長くなるので細かな粉体を得ることができる。排出作用を更に遅らすためには、第1鍔部に第1溝条が延在して成ることが望ましい。第1溝条によって第1鍔部上の粉体の周方向に送られる割合が高まるからである。
【0009】
この第1鍔部に対応して、固定上臼は第1鍔部に対向する第2鍔部を有することが望ましい。そして、第1鍔部上でも擦り込み作用を行わすには、第2鍔部に第2溝条が延在して成ることが望ましい。
【0010】
更に製粉性能を向上させるためには、下側擦り込み面又は上側擦り込み面は小径な凹みが散点的に分布した粗面であることが望ましい。対向ギャップ調節手段の操作で微粉体を得ることができるが、特にそばの製粉においては、多少粗い粉体が混じるのを好む傾向がある。そこで、第1鍔部の外周縁に複数の切り欠き部を巡らせて設けることが望ましい。切り欠き部に落ち込む粉体は第1鍔部上での擦り込み作用にあずからないので、粗い粉体の割合が高くなるため、粗い粉体も適度に混じったそば製粉が可能となる。
【0011】
下側擦り込み面と上側擦り込み面との間隙に穀粒落し込み通孔を介して穀粒を導いた場合、対向ギャップを広げても下側擦り込み面の中心側で穀粒の詰まりを生じ易く、初期破砕の負荷が大きく、非効率である。そこで、回転下臼の頂上で当該回転下臼と一体的に回転し、下側擦り込み面のテーパよりも急傾斜の斜歯状外歯を複数持つ前置粉砕体と、この前置粉砕体の上側に固定された下方送りロールとを備え、固定上臼は斜歯状外歯に対向する斜歯状内歯を有することが望ましい。下方送りロールによる強制的な送り込み作用と、回転する前置粉砕体と斜歯状内歯の粉砕前処理よって、穀粒の詰まりを効果的に防止でき、粉砕性能が大幅向上する。
【0012】
斜歯状内歯の傾斜は斜歯状外歯の傾斜よりも急であることが望ましい。斜歯状内歯と斜歯状外歯との間隔を軸方向下側になるに従い徐々に狭くでき、穀粒の詰まりをなお一層防止できる。また、穀粒落し込み通孔の孔壁に大粒用落とし込み溝を形成した場合は、大豆などの大粒穀物をスムーズに落とし込むことができる。
【0013】
軽量化を促進するのは回転下臼及び固定上臼は肉厚を薄くした金属製とするのが適しているが、ヒートシンクの熱容量が石臼に比べて低いため、大量処理の長時間稼動では粉砕熱や摩擦熱で昇温する。そこで、冷却手段として、回転下臼の裏側又は固定上臼の表側は多数の放熱フィンを有することが望ましい。擦り込み面や前置粉砕体で発生する摩擦熱を放散でき、体温以下の低温を維持でき、上質の粉体を得ることができる。なお、回転下臼の多数の放熱フィンは送風ファンとしても機能するので、空冷効果が大きい。必要ならば、固定上臼に保冷材パックなどの収容部を形成しても構わない。
【0014】
ここで、固定上臼の固定構造としては、固定上臼の外周側を載置する環状壁を持つ固定ベースと、固定上臼を環状壁に上から押え込むクランプ手段を有することが望ましい。擦り込み時に固定上臼に作用する上向き反力を抑えて僅かな浮きも防止するためである。
【0015】
回転下臼は回転運動と回転中心線方向の上下動を必要とすることから、回転下臼の裏側中央部に上端を固定し固定ベース内を下へ貫く回転軸と、この回転軸の下端と原動軸の上端とに設けられて回転軸がスラスト方向に変位可能な軸継手とを有する構成とできる。そして、対向ギャップ調節手段としては、回転軸の軸受ハウジングを上下動する倍力機構とするのが望ましい。手動で容易に対向ギャップを調節できるからである。擦り込み時に回転下臼に作用する下向き反力を抑えるためには、倍力機構を楔機構とするのが望ましい。
【0016】
なお、本発明に係る望ましい製粉機を別言すれば、上に凸のテーパ状であって中心側から径方向外方にかけて下側急傾斜粉砕部と下側緩傾斜粉砕部と下側平坦粉砕部とを持ち頂上部に下方送りロールを有する回転下臼と、下に凹のテーパ状であって下側急傾斜粉砕部に対向する上側急傾斜粉砕部と下側緩傾斜粉砕部に対向する上側緩傾斜粉砕部と下側平坦粉砕部に対向する上側平坦粉砕部とを持ち下方送りロールを収めた穀粒落し込み通孔を有する固定上臼と、回転下臼を上下変位可能な対向ギャップ調節手段とを備えて成る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下臼を回転臼としてこの下臼を上下可動な対向ギャップ調節手段を設けてあるため、製粉機の小型化と軽量化を実現でき、家庭用に適した製粉機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次の本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例に係る家庭用製粉機の穀粒ホッパを除いた状態を示す外観斜視図、図2は同家庭用製粉機の筐体を除いた状態を示す斜視図、図3は同家庭用製粉機の製粉本体を示す縦断面図、図4は同製粉本体の分解斜視図、図5は同製粉本体の一部切欠斜視図、図6は同製粉本体の回転下臼アセンブリを示す斜視図、図7は同回転下臼アセンブリに用いる前置粉砕体を示す平面図、図8は同製粉本体の固定上臼を裏側から見た斜視図、図9は図3中のA−A′線で切断した状態を示す矢視図、図10は図3中のB−B′線で切断した状態を示す矢視図、図11は同回転下臼アセンブリの外周側部分を示す部分断面図である。
【0019】
本例の製粉機は、図1に示す如く、側面に粉度調節ダイヤルD及びタイマーダイヤルDを備えた筐体Bの頂上面に設置固定されたベース環状壁7cと、このベース環状壁7c上に外周側を重ねて固定した固定上臼6とを有する。この固定上臼6を着脱自在とするため、2つのクランプ機構20が設けられている。各クランプ機構20は、支軸21の上部に螺着した取付けネジ22を回転中心として旋回可能な押え板23と、支柱24の上部に螺着し押え板23の自由端側に形成した切り欠き部23aが係合する押えネジ25とを有し、押え板23の中央部分が固定上臼6の上フランジ6eを上から弾力的に押え込む。固定上臼6の中央部分から上方へ突出する中央管部6bには図示しない穀粒ホッパが着脱自在に設置できる。なお、25aは凹状側面25の庇部に設けた粉体排出口である。
【0020】
この製粉機は、筐体Bを取り外して示す図2のように、電動モータ1と一体的に取着されたギアボックス2と、このギアボックス2上をスライド可能な楔ブロック3と、この楔ブロック3の上に支持された製粉本体4とを有する。製粉本体4は、図4に示す如く、回転下臼アセンブリ5と固定上臼6とから成り、回転下臼アセンブリ5は、固定ベース7,回転下臼8,堰止めリング9,前置粉砕体10及び下方送りロール11を有する。
【0021】
固定ベース7は、外周側に固定上臼6の上フランジ6eを支持するベース環状壁7cと軸受ハウジング12を挿通するボス部7aを持つ端板部7bとを一体的に有し、端板部7bのうちベース環状壁7c寄りに粉落とし口7dが形成されている。固定ベース7,固定上臼6及び穀粒ホッパは筐体Bに積み上げ式に支持されている。ボス部7a内にはスラスト方向に変位可能な軸受ハウジング12が挿通している。この軸受ハウジング12はラジアル軸受14を収め、軸受ハウジング12の下端は楔ブロック3の楔面3aに係合する斜口面12aとなっており、倍力機構を構成している。ラジアル軸受14で回転自在に支持された軸部13の上端部は後述するように回転上臼8側に連結されており、軸部13の下端部は、ギアボックス2内の減速機の出力である原動軸の軸継手(図示せず)に噛み合う軸継手13aとなっている。この軸継手13aは原動側の軸継手からの回転力を伝達すると共にスラスト方向に変位可能な噛み合い深さを持っている。このため、粉度調節ダイヤルDを手動で回すことにより、楔ブロック3が図2中の矢印A方向にスライド移動すると同時に軸受ハウジング12が図2中の矢印B方向に上下動するため、軸部13が軸受ハウジング12に追動して上下動するので、回転下臼8側も上下動する。楔機構の倍力機構を用いているため、回転下臼8側の上下動操作が容易となっており、しかも支持耐久力を有している。
【0022】
回転下臼8は、図3〜図6に示す如く、上に凸のテーパ状で中心側から外周方向に向けて複数の第1溝条Vを持つ下側擦り込み面(下側緩傾斜粉砕部)8aを有する金属製(鋳造加工品)の傘型であり、中央面8bに軸部13の上端側が挿通する軸孔8cと2本の植立ピンPを有している。第1溝条Vは直線状であるが、回転上臼8の平面視で回転中心から反時計方向へ若干のスキューが掛かっている。この回転下臼8の外周面には下フランジとしての堰止めリング9が外嵌し、止めネジ9aでネジ止めされている。図11に示す如く、堰止めリング9の内周面9bは第1溝条Vの外周側の溝口Qを塞いでいる。図3に示す如く、回転下臼8と共に回転する堰止めリング9の下面には掃き出し部材9cがネジ止めされている。
【0023】
前置粉砕体10は筒部10aの下側に複数の斜歯状外歯(下側急傾斜粉砕部)Gを一体的に持ち、この斜歯状外歯Gは、図9又は図10に示す如く、外接円C又はCを通る円弧面Sを境に回転方向の前縁段差面Sと反回転方向の後縁勾配面Sとから成り、前縁段差面Sと後縁勾配面Sとで外縦溝Wを形成している。斜歯状外歯Gの傾きは下側擦り込み面8aのテーパよりも急傾斜となっている。この前置粉砕体10は回転下臼8の中央面8bの植立ピンPに挿入されて回り止めされる。
【0024】
下方送りロール11は、前置粉砕体10の筒部10aに外嵌する中空部11aと、外周面に左ネジのリードスクリュー溝11bと、前置粉砕体10の筒部10aから径方向外方へ突出する回り止めピンpに掛け止まる切り欠きKとを有する。なお、締め付けボルト10bを筒部10a内を介して軸部13のネジ孔13bに螺着するだけで、前置粉砕体10,回転下臼8及び固定ベース7がすべて一体的に組付けられる。
【0025】
固定上臼6は図3及び図8に示す如く、傘型部6aとその中央部分から上方へ延びる多段テーパ状の中央管部6bとから成る。傘型部6aの底面は、下に凹のテーパ状で中心側から外周方向に向けて第2溝条Vを持つ上側擦り込み面(上側緩傾斜粉砕部)6dであって、回転下臼8の上側擦り込み面8aを覆っている。第2溝条Vは直線状であるが、固定上臼8の平面視で回転中心から時計方向へ若干のスキューが掛かっている。この傘型部6aの上フランジ6eの係合孔hに固定ベース7のベース環状壁7cの係合ピン7eが嵌合されている。中央管部6bの中空は穀粒落し込み通孔6cとなっている。この穀粒落し込み通孔6cの孔壁のうち第2溝条Vの中心側に連絡する部分には斜歯状外歯Gに離間対向する斜歯状内歯(上側急傾斜粉砕部)gが形成されている。この斜歯状内歯gは、図9又は図10に示す如く、内接円C′又はC′を通る円弧面S′を境に段差面S′と回転方向の勾配面S′から成り、段差面S′と勾配面Sとで内縦溝W′を形成している。この斜歯状内歯gの傾斜は斜歯状外歯Gの傾斜よりも急である。
【0026】
ここで、楔ブロック3の楔面3aと下臼アセンブル5の斜口面12aとは対向ギャップ調整機構を構成しており、楔ブロック3を操作して横移動させると、軸受ハウジング12が上下動して回転下臼アセンブル5もこれに追動する。このため、回転下臼8の下側擦り込み面8aと固定上臼6の上側擦り込み面6dとの対向ギャップ(隙間)を調整できる。
【0027】
例えば、そばの剥き実を粉砕する場合は粒径が大きいので、粉度調節ダイヤルDで楔ブロック3を操作し、回転下臼アセンブリ5を下げて下側擦り込み面8aと上側擦り込み面6dとの対向ギャップを大きく設定した後、タイマーダイヤルDで回転下臼8を回転駆動して穀粒ホッパ(図示せず)から穀粒落し込み通孔6cへ剥き実を投入すると、回転する下側擦り込み面8cに剥き実が引き込まれて上側擦り込み面6dとの挟間で粉砕されながら粗い粉体が外周方向へ送り出される。次に、回転下臼8を上げて下側擦り込み面8aと上側擦り込み面6dとの対向ギャップを小さく設定した後、上記の粗い粉体を穀粒落し込み通孔6cへ再投入することにより、今度は細かな粉体を得ることができる。また、米粒と豆粒などのように粒径が大きく異なるものでも、対向ギャップを調節できるため、微粉末の製粉が可能である。
【0028】
第1溝条Vのスキューと第2溝条Vのスキューとが相反しているため、擦り合わせ面では第1溝条Vと第2溝条Vとが交差し、交差点の分散化を図ることができるため、回転下臼8の回転は安定している。
【0029】
このように、本例では下臼8を回転臼としてこれを上下変位させる対向ギャップ調節手段を設けてあるため、製粉機の小型化と軽量化を実現でき、家庭用製粉機を提供できる。また、下臼8が回転臼であるため、下臼8の下側に配置する電動モータ1からの駆動伝達機構を簡素化できる。固定上臼6は固定ベース7及び筐体Bに支持されているので、穀粒落し込み通孔の上に穀粒ホッパを直接載せることができる。
【0030】
更に本例では、回転下臼8の外周面に外嵌して第1溝条Vの外周側の溝口Qを塞ぐ堰き止めリム9が取着されているため、図11に示す如く、中心側から外周側へ案内される粉体Mは堰き止めリム9で堰き止められて一時的に停滞し、堰き止めリム9と上フランジ6eとの間に粉体溜まりが形成されるので、下側擦り込み面8aと上側擦り込み面6dとに挟まれた粉砕空間には圧迫力が加わることになり、粉体が粗いまま外周側へ流れ出すことがなく、粉砕性能が向上する。特に、斜歯状外歯Gの前縁段差面Sで後押しされる穀粒が斜歯状内歯gの段差面Sに激突するため、穀粒を砕く効果が大きい。
【0031】
本例では、回転下臼8の頂上で当該回転下臼8と一体的に回転し、下側粉砕面8aのテーパよりも急傾斜の斜歯状外歯Gを持つ前置粉砕体10と、この前置粉砕体10の上側に固定された送りロール11とを備えているため、下側擦り込み面8aの中心側で穀粒の詰まりを生じ難く、粉砕性能が向上する。加えて、斜歯状内歯gと斜歯状外歯Gとの間隔が軸方向下側になるに従い徐々に狭くなっているため、穀粒の詰まりをなお一層防止できる。
【0032】
図12は固定上臼の変形例を示す底面図、図13はその変形例に係る固定上臼の裏側を示す斜視図、図14は同固定上臼の裏側を示す斜視図、図15は回転下臼の変形例を示す斜視図、図16はその変形例に係る回転下臼の裏側を示す斜視図である。
【0033】
図8に示す固定上臼6は上フランジ6eの裏面に固定ベース7のベース環状壁7cに内嵌する環状突起6fを有しており、テーパ状の傘型部6aの裏面のみが上側擦り込み面6dとなっているが、本例の固定上臼6′はこの環状突起6fを削除してあり、上フランジ6eにまで第2溝Vが延在しており、上フランジ6eの裏面も上側擦り込み面(上側平坦粉砕部)となっている。また、上側擦り込み面6dの全面は、図13に示す如く、第2溝条Vの溝幅よりも小径な凹みRが散点的に分布した粗面である。この凹みRは、鋳造品に面削加工などを施して第2溝条Vを形成した切削平滑面において、例えば平均粒径1.7mmのサンドブラスト処理を施して得ることができる。更に、中央管部6bの孔壁には大豆用落とし込み溝6gが形成されている。このため、大豆投入と前置粉砕体10での破砕が容易となる。そして、固定上臼6′の表側には中央管部6bから輻射状に多数の放熱フィン6hが形成されている。
【0034】
この固定上臼6′に対して、改良された回転下臼8′は上フランジ6eに一部対向する下フランジ8dを一体的に有し、この下フランジ8dにまで第2溝条Vが形成されており、下フランジ8dの表面も下側擦り込み(下側平坦粉砕面)となっている。また、下側擦り込み面8aの全面は、第1溝条Vの溝幅よりも小径な凹みRが散点的に分布した粗面である。この凹みRも、鋳造品に面削加工などを施して第2溝条Vを形成した切削平滑面において、例えば平均粒径1.7mmのサンドブラスト処理を施して得ることができる。この下フランジ8dの外周縁には第1溝条Vの4条間隔で切り欠き部8eが設けられている。そして、回転下臼8′の裏側には中央環状壁8gから輻射状に多数の放熱フィン8fが形成されている。
【0035】
テーパ状の下側擦り込み面8a上を流れ下る粉体は下フランジ8d上では一時停留して粉体溜まりを形成し、圧迫されるため、排出作用が弱まり擦り込み時間が長くなるので細かな粉体を得ることができる。また、下フランジ8dに第1溝条Vが延在しているため、第1溝条Vによって下フランジ8d上の粉体溜まりの周方向に送られる割合が高まり、停留時間を延ばすことができる。更に、上フランジ6eにも第2溝条Vが形成されているため、擦り込み作用域が広くなる。しかも、下側擦り込み面8a及び上側擦り込み面6dに小径な凹みRが散点的に分布しているため、微粉体を得ることができる。そして、切り欠き部8eに落ち込む粉体は下フランジ8dでの擦り込み作用にあずからないので、粗い粉体の割合が高く、粗い粉体も混じったそば製粉に適している。
【0036】
放熱フィン6h,8gの追加によって、擦り込み面8a,6dや前置粉砕体10で発生する粉砕熱や摩擦熱を放散でき、大量処理の長時間稼動でも低温維持で上質の粉体を得ることができる。なお、回転下臼8の放熱フィン8gは送風ファンとしても機能するので、空冷効果が大きい。また必要ならば、固定上臼6に保冷材パックなどの収容部を形成して構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係る家庭用製粉機の穀粒ホッパを除いて示す外観斜視図である。
【図2】同家庭用製粉機の筐体を除いて示す斜視図である。
【図3】同家庭用製粉機の製粉本体を示す縦断面図である。
【図4】同製粉本体の分解斜視図である。
【図5】同製粉本体の一部切欠斜視図である。
【図6】同製粉本体の回転下臼アセンブリを示す斜視図である。
【図7】同回転下臼アセンブリに用いる前置粉砕体を示す平面図である。
【図8】同製粉本体の固定上臼を裏側から見た斜視図である。
【図9】図3中のA−A′線で切断した状態を示す矢視図である。
【図10】図3中のB−B′線で切断した状態を示す矢視図である。
【図11】同回転下臼アセンブリの外周側部分を示す部分断面図である。
【図12】固定上臼の変形例を示す底面図である。
【図13】同変形例に係る固定上臼の裏側を示す斜視図である。
【図14】同固定上臼の表側を示す斜視図である。
【図15】回転下臼の変形例を示す斜視図である。
【図16】同変形例に係る回転下臼の裏側を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1…電動モータ
2…ギアボックス
3…楔ブロック
3a…楔面
4…製粉本体
5…回転下臼アセンブリ
6,6′…固定上臼
6a…傘型部
6b…中央管部
6c…穀粒落し込み通孔
6d…上側擦り込み面(上側緩傾斜粉砕部)
6e…上フランジ
6f…環状突起
6g…大豆用落とし込み溝
6h,8f…放熱フィン
7…固定ベース
7a…ボス部
7b…端板部
7c…ベース環状壁
7d…粉落とし口
7e…係合ピン
8,8′…回転下臼
8a…下側擦り込み面(下側緩傾斜粉砕部)
8b…中央面
8c…軸孔
8e…切り欠き部
9…堰止めリング
9b…内周面
9c…掃き出し部材
10…前置粉砕体
10a…筒部
10b…締め付けボルト
11…下方送りロール
11…中空部
11b…リードスクリュー溝
12…軸受ハウジング
12a…斜口面
13…軸部
13a…軸継手
13b…ネジ孔
14…ラジアル軸受
20…クランプ機構
21…支軸
22…取付けネジ
22a…切り欠き部
23…押え板
24…支柱
25…押えネジ
25a…粉体排出口
B…筐体
,C…外接円
′,C′…内接円
…粉度調節ダイヤル
…タイマーダイヤル
G…斜歯状外歯(下側急傾斜粉砕部)
g…斜歯状内歯(上側急傾斜粉砕部)
h…係合孔
K…切り欠き
M…粉体
P…植立ピン
p…回り止めピン
Q…溝口
R…小径な凹み
…円弧面
…前縁段差面
…後縁勾配面
′…円弧面
′…段差面
′…勾配面
…第1溝条
…第2溝条
W…外縦溝
W′…内縦溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上に凸のテーパ状で下側擦り込み面を有する回転下臼と、下に凹のテーパ状で前記下側擦り込み面に対向する上側擦り込み面及び前記回転上臼の回転中心線に沿う穀粒落し込み通孔を有する固定上臼と、前記回転下臼を上下変位可能な対向ギャップ調節手段とを備えて成ることを特徴とする製粉機。
【請求項2】
請求項1に記載の製粉機において、前記対向ギャップ調節手段は、前記回転下臼の外周側で前記下側擦り込み面上の粉砕物を一時停留させる圧迫手段を有することを特徴とする製粉機。
【請求項3】
請求項2に記載の製粉機において、前記圧迫手段は前記回転下臼の外周側に張り出た第1鍔部であることを特徴とする製粉機。
【請求項4】
請求項3に記載の製粉機において、前記第1鍔部に前記第1溝条が延在して成ることを特徴とする製粉機。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の製粉機において、前記固定上臼は前記第1鍔部に対向する第2鍔部を有することを特徴とする製粉機。
【請求項6】
請求項5に記載の製粉機において、前記第2鍔部に前記第2溝条が延在して成ることを特徴とする製粉機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製粉機において、前記下側擦り込み面又は前記上側擦り込み面は小径な凹みが散点的に分布して成る粗面であることを特徴とする製粉機。
【請求項8】
請求項7に記載の製粉機において、前記第1鍔部の外周縁に複数の切り欠き部を巡らせて設けてあることを特徴とする製粉機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の製粉機において、前記回転下臼の頂上で当該回転下臼と一体的に回転して前記下側擦り込み面の傾斜よりも急傾斜の斜歯状外歯を周囲に複数持つ前置粉砕体と、この前置粉砕体の上側に固定された下方送りロールとを備え、前記固定上臼は前記斜歯状外歯に対向する斜歯状内歯を有することを特徴とする製粉機。
【請求項10】
請求項9に記載の製粉機において、前記斜歯状内歯の傾斜は前記斜歯状外歯の傾斜よりも急であることを特徴とする製粉機。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の製粉機において、前記穀粒落し込み通孔の孔壁は大粒用落とし込み溝を有することを特徴とする製粉機。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の製粉機において、前記回転下臼の裏側又は前記固定上臼の表側は多数の放熱フィンを有することを特徴とする製粉機。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の製粉機において、前記固定上臼の外周側を載置する環状壁を持つ固定ベースと、前記固定上臼を前記環状壁に上から押え込むクランプ手段とを有することを特徴とする製粉機。
【請求項14】
請求項13に記載の製粉機において、前記回転下臼の裏側中央部に上端を固定し前記固定ベース内を下へ貫く回転軸と、この回転軸の下端と原動軸の上端とに設けられて前記回転軸がスラスト方向に変位可能な軸継手とを有することを特徴とする製粉機。
【請求項15】
請求項14に記載の製粉機において、前記対向ギャップ調節手段は、前記回転軸の軸受ハウジングを上下変位可能な倍力機構であることを特徴とする製粉機。
【請求項16】
請求項15に記載の製粉機において、前記倍力機構は楔機構であることを特徴とする製粉機。
【請求項17】
上に凸のテーパ状であって中心側から径方向外方にかけて下側急傾斜粉砕部と下側緩傾斜粉砕部と下側平坦粉砕部とを持ち頂上部に下方送りロールを有する回転下臼と、下に凹のテーパ状であって前記下側急傾斜粉砕部に対向する上側急傾斜粉砕部と前記下側緩傾斜粉砕部に対向する上側緩傾斜粉砕部と前記下側平坦粉砕部に対向する上側平坦粉砕部とを持ち前記下方送りロールを収めた穀粒落し込み通孔を有する固定上臼と、前記回転下臼を上下変位可能な対向ギャップ調節手段とを備えて成ることを特徴とする製粉機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−248072(P2009−248072A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103280(P2008−103280)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000104434)カンリウ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】