説明

製菓用途のエマルション

製菓用コーティング用途のエマルション及びこれに関する方法を提供する。一実施形態において、エマルションは、水相と、少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも1種のテンパリング脂肪を有する脂肪相と、シーディング剤とを含む。長期保存可能なこのエマルションは、精製又はコンチングを行う必要がなく、製菓用の成形、エンロービング、又はパンコーティングの施用法に効率的に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般的に菓子類製品に関する。本発明は、より具体的には製菓用途のエマルション及びこれに関わる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]従来の脂肪ベースの菓子類は、通常高脂肪及び高カロリーを有する。さらに、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪が、その組成物内で利用される場合がある。そのような部分水素化脂肪が含有されている場合、ヒトのコレステロール濃度を有害に増加させることが知られているトランス脂肪が高濃度の可能性があるため、健康に悪い影響を及ぼす恐れがある。水分量が高い製菓用コーティングにラウリン酸脂肪を使用すると、加水分解型酸敗のリスクが高まり、菓子類がすぐに腐敗して、消費できない結果となる。
【0003】
[0003]エマルションは、製菓用途に使用することができる。従来の脂肪質菓子類よりも低い脂肪及びカロリー含有量を有するこうしたエマルションを形成することができる。残念ながら現在知られているエマルション型の製菓用素材塊の多くは柔らかく、中心部又は詰め物の用途に一番適している。したがって、そのような素材塊は、ある種の製菓用途へ使用できるほど十分な構造を有していない。例えば、こうしたエマルション型の製菓用素材塊は、コーティング用途への使用を可能とする構造上の完全性又は性能特性を有していない。
【0004】
[0004]これまでに記載されてきたエマルション型の製菓用素材塊で、コーティング用途に使用するだけ十分な構造及び機能を確かに有すると報告されているものは、数が限られている。しかし、これまでに記載されたこうしたエマルション型の製菓用素材塊には、ラウリン酸脂肪、部分水素化脂肪又は蝋への依存を含め、明確な欠点がある。さらにこうしたエマルションの大部分においては、エマルション型の素材塊に十分な構造をもたらすために、無脂肪固形物(通常はココア固形物又は炭水化物類)を脂肪の連続相に組込むことに頼っている。分散した無脂肪固形物の欠点は、固形物の粒径を小さくする必要があるため、精製機及び他のチョコレート製造機器の汚染を余儀なくする恐れがあることである。コーティング材料として用いることができる現存のエマルション型の製菓用素材塊の別の問題は、需要者へ冷蔵又は冷凍で流通させることを意図していることである。
【0005】
[0005]したがって、望ましくない原料(例えば、高濃度のトランス脂肪又はラウリン酸脂肪)を使用せず、チョコレート製造機器(精製機及びコンチ)の使用を必要とせず、周囲温度で流通できる改善されたエマルションを製菓用途に使用するために提供する必要性がある。
【概要】
【0006】
[0006]本発明は、製菓用途のためのエマルション及びこれに関わる方法に関する。一実施形態において、本発明は、水相と、少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも1種のテンパリング脂肪を有する脂肪相とを含むエマルションを提供する。
【0007】
[0007]一実施形態において、脂肪相は部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まない。
【0008】
[0008]一実施形態において、脂肪ブレンドは、テンパリングを行うことによって所望のコーティング構造を達成する。例えば、脂肪ブレンドは、ココアバター、ココアバター等価物、ココアバター改良品及びこれらの組合せからなる群から選択されるテンパリング脂肪から主に構成することができる。
【0009】
[0009]一実施形態において、ココアバター等価物は、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、シアナッツバター、イリッペバター及びこれらの組合せからなる群から選択される成分から生成される。
【0010】
[0010]一実施形態において、乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリグリセリンポリリシノレート、スクシニル化モノグリセリド、ポリソルベート65、アセチル化モノグリセリド、モノグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドの乳酸エステル、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセロールラクトパルミテート、ステアロイル−2−乳酸ナトリウム、レシチン、ポリソルベート80、スクロースヘキサユウセレート、ショ糖エステル及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0011】
[0011]一実施形態において、ショ糖エステルは、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖アルキルレート及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0012】
[0012]一実施形態において、乳化剤は少なくとも1種のシーディング剤をさらに含む。
【0013】
[0013]一実施形態において、シーディング剤は、BOBトリグリセリド、ココアバター、ココアバター等価物、粉末ココアバター及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0014】
[0014]一実施形態において、水相は、果汁、果汁濃縮液、野菜ジュース、野菜ジュース濃縮液、防腐剤、炭水化物、ガム、タンパク質、砂糖、ポリオール、ミネラル、親水コロイド、澱粉、香料、塩、酸味料、乳化剤、高HLB乳化剤、ココアパウダー、着色剤及びこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む。
【0015】
[0015]一実施形態において、水相は、ココア由来の固形物、乳製品由来の固形物、ナッツ由来の固形物、果実由来の固形物、野菜由来の固形物、大豆由来の固形物及びこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む。
【0016】
[0016]一実施形態において、エマルションは約0.3〜約0.84の範囲の水分活性を有する。
【0017】
[0017]一実施形態において、エマルションは菓子製品用コーティングとして使用する。
【0018】
[0018]一実施形態において、エマルションは、成形、共成形、エンロービング、吹付けコーティング、パンコーティング及びこれらの組合せからなる群から選択される付着法により、菓子製品用コーティングを形成することができる。
【0019】
[0019]一実施形態において、エマルションは長期保存可能である。
【0020】
[0020]一実施形態において、本発明は、水相及び少なくとも1種の乳化剤を有する脂肪相を含む製菓用途のエマルションであって、前記脂肪相が、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まないエマルションを提供する。
【0021】
[0021]一実施形態において、本発明は、水及び添加剤の組合せを混合及び加熱することによって水相を調製して、シロップを形成し、少なくとも1種のテンパリング脂肪及び少なくとも1種の乳化剤をブレンド及び加熱することによって脂肪相を調製して、脂肪ブレンドを形成し、前記シロップ及び前記脂肪ブレンドを交ぜ合わせて、エマルションを形成することを含むエマルションを生成する方法を提供する。
【0022】
[0022]一実施形態において、本発明は、水及び添加剤の組合せを混合及び加熱することによって水相を調製して、シロップを形成し、少なくとも1種の脂肪及び少なくとも1種の乳化剤をブレンド及び加熱することによって脂肪相(この脂肪相は、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まないものである)を調製して、脂肪ブレンドを形成し、シロップ及び脂肪ブレンドを交ぜ合わせ、少なくとも1種の結晶化シーディング剤を、交ぜ合せたシロップ及び脂肪ブレンドに添加して、エマルション(このエマルションは精製又はコンチングする必要がないものである)を形成することを含む、製菓用コーティング用途のエマルションを生成する方法を提供する。
【0023】
[0023]本発明のある利点は、従来の脂肪ベースの菓子類より改善及び改質された味を有するエマルションを提供することである。
【0024】
[0024]本発明のさらに別の利点は、従来の脂肪ベースの菓子類よりも、栄養固形物を高濃度で有するエマルションを提供することである。
【0025】
[0025]本発明のさらに別の利点は、例えば果汁又は濃縮液のような含水原料の使用が可能なエマルションを提供することである。
【0026】
[0026]本発明の別の利点は、エマルションのために、特定の固形物の水含有量を低下させる必要がない(例えば果実固形物を乾燥させなくてもよい)ので、所望の固形物(例えば果実固形物)を供給する上で原料費のより安いエマルションを提供することである。
【0027】
[0027]本発明のさらに別の利点は、精製及びコンチングの費用なしに、滑らかな口当たりをもたらすエマルションを提供することにある。例えば、エマルションは所望の粘度を達成するためにコンチングを必要としない。
【0028】
[0028]本発明のさらに別の利点は、水性液滴が脂肪の連続相に埋め込まれているために、水の乾燥成分への移動が遅いエマルションを提供することである。
【0029】
[0029]本発明の別の利点は、エマルション型の製菓用素材塊は、付随する問題(例えば粘着)を起こさず、典型的な脂肪ベースの懸濁液(例えばチョコレート)のように取り扱えるので、最終菓子製品にシロップを供給することができることである。
【0030】
[0030]本発明の追加の特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明に記載され、これにより明白になるであろう。
【詳細な説明】
【0031】
[0031]本発明は、製菓用途のための新規なエマルション及びこれに関わる方法に関する。さらに詳しくは、本発明は例えば製菓用のコーティング材料及び詰め物として使用できるエマルション及び菓子製品用エマルションを生成する方法に関する。コーティング組成物として使用するエマルションをエマルションコーティング材料と呼ぶことにする。本発明のエマルションは周囲保存状態で安定して存在する。本発明はまた、精製及びコンチングの必要のない新しい製菓用水含有コーティングに関する。
【0032】
[0032]菓子という用語は、全てのチョコレート、チョコレートコンパウンド、チョコレートコーティング並びに通常菓子製品と呼ばれる他の全ての食べ物を網羅する。但し、例えばアイスクリーム又はシャーベットのような冷凍の品目は含まない。
【0033】
[0033]一実施形態において、エマルションは、エンロービング、流し型内堆積又はパンコーティングに使用できる、水含有素材塊(例えば>4%)を含む。エマルションは、構造的完全性を維持しながら標準の菓子用流し型から取り出すことが可能であり、これによって新しい製品の提供が可能となる。エマルションは、従来から知られているエマルション型の菓子よりも安定しているので、より長い期間、標準の製菓用エンローバー内で使用することができる。エマルションは、標準の菓子用冷却及び/又は伝送ベルトから取り出す。エマルションは、従来からの脂肪質菓子素材塊と一緒に堆積させることができる。
【0034】
[0034]一実施形態において、エマルションは、コーティングに十分な構造を有し、標準の製菓工業機器で扱うことができるという点で、従来技術より有利な点を持つエマルションコーティング材料を形成することができる。例えば、文献に記載されている従来からのエマルション型の菓子素材塊の多くは、コーティング用途ではなく、詰め物の用途にしか使用できない。コーティング用途に必要な性能特性を有する本発明のエマルションを創製するのに、かなりの努力が費やされた。
【0035】
[0035]一般的に、製菓用コーティングは、製造、包装、流通及び出荷作業に耐えるための構造上の完全性を持たなければならない(例えば、粘着性がない、破損しない)。さらに、標準の菓子流し型(例えばポリカーボネート)からの適切な取出し、ベルトからの適切な放出、パンコーティング中の適切な硬化など、エマルションが工業的に実現可能であるために特定の性能特性が要求される。本発明のエマルションコーティング材料はこれらの特性を備えている。
【0036】
[0036]本発明のエマルションコーティング材料と、これまでの脂肪ベースの組成物との間にはいくつかの違いがある。例えば、今までの果実組成のコーティング材料は、連続した脂肪相又は油相に分散した乾燥果実の固形物(例えば、凍結乾燥したラズベリー粉末)、砂糖及びミルク固形物から構成されている。今までのコーティング材料のテクスチャーは当業界には既知のいくつかの技術によって改質することができる。これらの改質法は、組成物内の脂肪の割合及び種類を変更すること、並びに固形物の粒径、無脂肪固形物の種類及び無脂肪固形物と脂肪との比率を変更することを含む。
【0037】
[0037]本発明のエマルション及びエマルションコーティング材料は、一般的に「油中水」型のエマルションと表現し得る点において従来の脂肪ベースの組成物と部分的に異なる。エマルションの大部分は、「油中水」型に当てはまるが、エマルションの中には「水中油」型の部分も含有するか、又は別の相へと分離し得るものもある。さらに、脂肪が水相中に含有されている状態では、エマルションは油性エマルション中の水中油型と表現するのが最もふさわしい。
【0038】
[0038]一実施形態において、エマルションの不連続な相又は水の相は、水と共に任意の追加の適当な添加剤(例えば水溶性)、固形物又は分散可能な物質で構成してもよい。添加剤、固形物又は分散可能な物質を例えば1種又は複数の乳化剤で取り囲むことができる。少量の脂肪又は油を水性相へと乳化して、油性エマルション中の水中油型を生成してもよい。不連続な相又は水の相の液滴を脂肪の連続相内に分散する。液滴という用語は必ずしも別個の球体を指すとは限らないことを理解されたい。本発明のいくつかの高内相比の実施形態において、水性ゾーンは、理想的な球体から歪められる可能性があるが、それでも連続する脂肪相からは、はっきりと分散している。
【0039】
[0039]本発明のエマルションコーティング材料の各実施形態は、無脂肪固形粒子を連続な相又は脂肪相内に分散させる必要がない点において利点を有する。この結果、精製又はコンチングを必要としない滑らかなコーティングが生成できる。連続相に無脂肪固形物を添加することにより、最終的な水含有素材塊の食感特性が完全に変化する。コーティング用途を明記した文献に記載されたこれまでのエマルション型の素材塊も、その多くが連続相(W/O+S)内に無脂肪固形物が分散している。無脂肪固形物を連続相に添加する方法は、様々なものが多数ある。しかし全ての場合で、分散した固形物の粒径は縮小しなければならない。多くの場合、粒子は、コンチング又は精製したチョコレート又は他の菓子素材塊を介して添加する。
【0040】
[0040]一実施形態において、エマルションは一般的に水性相又は水相及び油相又は脂肪相を含む。脂肪相は1種又は複数の乳化剤及び1種又は複数のテンパリング脂肪を含む。別の実施形態において脂肪相は、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まない。部分水素化脂肪含有量が低いとは、例えば約3重量%未満のトランス脂肪を有することを指す。ラウリン酸脂肪含有量が低いとは、例えば約10重量%未満のラウリン酸脂肪(例えば、パーム核油、ココナッツ油又はこれらの画分)を有することを指す。脂肪ブレンドは、例えばこのブレンドがコーティング脂肪に適した使用ができなくなるまで柔らかくならない量でラウリン酸脂肪を含有してもよい。
【0041】
[0041]エマルションに使用される脂肪(複数可)又は油(複数可)の主な種類は、伝統的に部分水素化脂肪又はラウリン酸脂肪と呼ばれるものであってはならない。ラウリン酸脂肪は、そのトリグリセリド組成物中に大きな割合のラウリン酸を含有している。水の存在下で、このラウリン酸は放出され、その結果石鹸異臭を生じ得る。したがって、本発明のエマルションには、低量使用すべきである。
【0042】
[0042]エマルションに使用される脂肪がテンパリング用の場合、加工及び/又は配合を操作することによって所望の結晶構造を実現し得る。結晶の形状及び充填の種類は、加工性及び最終製品のテクスチャーに影響を及ぼす。
【0043】
[0043]テンパリング脂肪には、ココアバター、ココアバター等価物、ココアバター改良品及びこれらの組合せがあり得る。ココアバター等価物は、例えばヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、シアナッツバター、イリッペバター及び類似の油類から生成されるが、これらはココアバターの特性を模倣するように改質及びブレンドすることができる。ココアバター等価物は、分別、部分的及至完全水素化、又はエステル交換をしてもよい。典型的な商品例は、Fuji Vegetable Oils Co.,Inc.,のPalmyタイプ及びLoders−CroklaanのChoclin又はCoberineである。ココアバター改良品は、前述の油類から生成することができるが、油の最も硬質な画分から作り、これを使用することによりエマルションの全脂肪部分の融点を上げて、その結晶化作用を改善する。ココアバター改良品の一例としては、Aarhus Oils,Inc.のAkoimpが挙げられよう。
【0044】
[0044]エマルションはさらに1種又は複数の適切なシーディング剤を含むことができる。該シーディング剤は、例えばFuji Vegetable Oils Co.,Inc.,のBOB(Bohenic−Oleic−Bohenic triglyceride)、テンパリングしたココアバター、テンパリングしたココアバター等価物、又はBarry−CallebautのBeta Form VI中の粉末化した(例えば吹付け乾燥した)ココアバターなど、任意の適切なシーディング剤であってもよい。
【0045】
[0045]従来、文献に記載されたエマルション型素材塊の多くが、含水量が高いために、長期保存することができず、室温での微生物増殖を許してしまう。本発明のエマルションコーティングは、長期保存可能であり、水性相の水分活性を低下させることによって生成される。これを達成するためには、水性相の粘度が増すにつれてエマルションが不安定になる傾向を克服しなければならなかった。さらに、水性相が保存期間中にエマルション中で結晶化しないことを確実にしなければならなかった。
【0046】
[0046]エマルションが約0.3〜約0.84の範囲の水分活性を有するように、エマルションの水相の固形分濃度を変化させることができる。水分活性は、約0.3〜約0.80の範囲が好ましい。約0.3〜約0.60の範囲の水分活性では、水性相は微生物増殖に対する耐性を持つことになり、その結果長期保存可能なエマルション及びそのようなエマルションを用いた菓子製品が得られる。約0.61〜約0.84の範囲の水分活性では、水性相は微生物増殖を阻止するために保存料(すなわちソルベート)を含有するか、又はエマルションコーティングを加工及び包装して、微生物増殖の可能性を制限(すなわち熱加工/無菌包装)する必要があろう。
【0047】
[0047]水性相又は水相は、任意の所望の味又は色をつけることができる。例えば、果実の固形物を水相に入れて、果実風味のエマルションを生成することができる。エマルションの味及び色は、溶解又は分散した添加物又は固形物(例えば牛乳固形物、果実、砂糖)の組成物を変えることで改質し得る。
【0048】
[0048]水相は、例えば天然又は人工の果汁及び果汁濃縮液、天然又は人工の野菜ジュース及び野菜ジュース濃縮液、保存料、炭水化物、ガム、タンパク質、砂糖、ポリオール、ミネラル、澱粉、香料、塩、酸味料、乳化剤、高HLB乳化剤、ココアパウダー、着色剤及びこれらの組合せなど、任意の適切な添加物を含むことができる。
【0049】
[0049]水相はまた、例えばココア由来の固形物、乳製品由来の固形物、ナッツ由来の固形物、果実由来の固形物、野菜由来の固形物、大豆由来の固形物及びこれらの組合せなどの添加物を含むことができる。
【0050】
[0050]親水コロイドを水性相に添加することもできる。これによって、生成されるエマルションのテクスチャー及び性能特性が変わることになる。任意の適切な種類の親水コロイドを使用できることを理解されたい。
【0051】
[0051]エマルションは、例えばモノグリセリド、ジグリセリド、ポリグリセリンポリリシノレート、スクシニル化モノグリセリド、ポリソルベート65、アセチル化モノグリセリド、モノグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドの乳酸エステル、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセロールラクトパルミテート、ステアロイル−2−乳酸ナトリウム、レシチン、ポリソルベート80、スクロースヘキサユウセレート、ショ糖エステル及びこれらの組合せからなどの任意の適切な食品用乳化剤であってよい。
【0052】
[0052]ショ糖エステルは、例えばショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖アルキルレート及びこれらの組合せであってよい。
【0053】
[0053]一実施形態において、エマルションは菓子製品用のエマルションコーティング材料として使用される。別の実施形態において、エマルションは成形又は共成形される菓子製品を形成することができる。例えば、エマルションを任意の適切な菓子成形、エンロービング又はパンコーティングの施用法で利用してもよい。エマルションは単独で又は従来の菓子素材塊と組み合わせて使用することによって菓子製品を生成してもよい。
【0054】
[0054]
【実施例】
【0055】
[0055]以下の実施例は、例証として、しかしこれらに限定されずに、本発明の様々な実施形態を例示し、本発明の実施形態に従って実施された実験的試験をさらに例示するものである。
【0056】
[0056]実施例1 プロセス工程
【0057】
[0057]一実施形態において、エマルションは水(例えばシロップ)の相、及び脂肪と乳化剤のブレンドからなる脂肪又は油の相を含む油中水型エマルションである。これら2つの要素(すなわち水相及び脂肪ブレンド)は、別々に加工し確定した割合で一緒にブレンドすることによってエマルション又はエマルションコーティング材料を形成する。形成するとすぐにエマルションは最終調整ステップを経て、例えばコーティング材料として使用可能な状態となる。
【0058】
[0058]一実施形態において、水相は水、砂糖及び他のいかなる所望の添加物又は原料をミキサーに添加することによって生成する。このミキサーは、トレース可能(例えば蒸気又は水)で、攪拌機能(例えば、表面スイープ、軌道回転又はレギュラー)を有し、開放型又は真空の容器であってもよい。水を210〜240°Fの範囲の温度に加熱して砂糖及び他の原料を溶解する。生成したシロップを200°F未満に冷却する。温度が158°F未満になったとき、グリセロールをシロップに添加する。最終的シロップの固形濃度及び水分活性を検査する。固形濃度は、約70%〜約91%の範囲、水分活性は約0.3〜約0.84の範囲が好ましい。シロップは、次のステップで使用するまで室温で保存し、次のステップではそれを約110°F〜約140°に再加熱し、エマルションを形成する。
【0059】
[0059]一実施形態において、脂肪相又は油相は、脂肪ブレンド(例えばラウリン酸脂肪及び乳化剤の混合物)用の原料を計量し、適切な比率を求めることによって生成する。バッチサイズによっては、全ての構成要素を一緒に計量することができる。バッチサイズが大きすぎて原料を別々に計量する場合には、乳化剤は一緒に維持すべきである。脂肪ブレンドは乳化剤の融点より高い温度まで加熱する。通常、温度は、約160°F〜約180°Fの範囲であってよい。
【0060】
[0060]最終的エマルションは、調製した水相(すなわちシロップ)及び脂肪相から生成する。加熱した脂肪ブレンドを混合容器に添加してエマルションを形成する。混合容器は加熱及び冷却のためにスチーム又は水トレースを行い、攪拌を行う(例えば、速度を変動するのが好ましい)。水相(すなわちシロップ)を約110°F〜140°Fの範囲に加熱した後、脂肪相へ加えて計量する。攪拌速度を調整して、均質な混合物を確実に得る。最終的エマルションはその後冷却する。水トレース温度を調整して、必要な冷却プロファイルを確実に得る(例えば最終的エマルション組成物は、放出前に90±10°Fに達するべきである)。
【0061】
[0061]一実施形態において、エマルションはシーディングを行う。例えば選択したシーディング剤を事前に結晶化する。シーディング剤はテンパリングしたココアバター、テンパリングしたココアバター等価物(「CBE」)のような任意の適切な非ラウリン酸脂肪又は結晶化促進剤であってよい。好ましくは、使用するシーディング剤にテンパリング/シーディングを行い必要な結晶構造及び含有量を得る。エマルションを約85°F〜約95°Fの範囲の温度に事前調整をしてから、結晶化したシーディング剤をエマルションに添加する。このシーディング剤は、次いで調整したエマルションへブレンドする。このシーディングしたエマルションは、さらなる製造又は加工への準備が整った。
【0062】
[0062]この混合プロセスを経て、エマルションを形成する。安定したエマルションを生成するために使用する特定された原料の選択物及び乳化剤を以下の実施例に記載する。
【0063】
[0063]実施例2 サンプルエマルションの配合表
【表1】


【表2】


【表3】

【0064】
[0064]実施例3 サンプルエマルションの配合表
【表4】


【表5】


【表6】

【0065】
[0065]実施例4 サンプルエマルションの配合表
【表7】


【表8】


【表9】

【0066】
[0066]当業者であれば、様々な変更及び修正が、本明細書に記載の現在好ましい実施形態になされることが明白であることは理解できよう。本発明の精神と範囲から逸脱することなく、及び意図された利点を縮小させることなく、そのような変更及び修正を行うことができる。したがって、そのような変更及び修正が、添付の特許請求の範囲によって網羅することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、
少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも1種のテンパリング脂肪を有する脂肪相と
を含むエマルション。
【請求項2】
前記脂肪相は、部分水素化脂肪の含有量が低い、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記脂肪相は、ラウリン酸脂肪の含有量が低い、請求項1に記載のエマルション。
【請求項4】
前記脂肪相が、蝋を含まない、請求項1に記載のエマルション。
【請求項5】
前記テンパリング脂肪が、ココアバター、ココアバター等価物、ココアバター改良品及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項6】
前記ココアバター等価物が、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、シアナッツバター、イリッペバター及びこれらの組合せからなる群から選択される成分から構成される、請求項5に記載のエマルション。
【請求項7】
前記乳化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリグリセリンポリリシノレート、スクシニル化モノグリセリド、ポリソルベート65、アセチル化モノグリセリド、モノグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドの乳酸エステル、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセロールラクトパルミテート、ステアロイル−2−乳酸ナトリウム、レシチン、ポリソルベート80、スクロースヘキサユウセレート、ショ糖エステル及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項8】
前記ショ糖エステルが、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖アルキルレート及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載のエマルション。
【請求項9】
少なくとも1種のシーディング剤をさらに含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項10】
前記シーディング剤が、BOBトリグリセリド、テンパリングしたココアバター、テンパリングしたココアバター等価物、結晶化促進剤、粉末ココアバター及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のエマルション。
【請求項11】
前記水相が、果汁、果汁濃縮液、野菜ジュース、野菜ジュース濃縮液、防腐剤、炭水化物、ガム、タンパク質、砂糖、ポリオール、ミネラル、親水コロイド、澱粉、香料、塩、酸味料、乳化剤、高HLB乳化剤、ココアパウダー、着色剤及びこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項12】
前記水相が、ココア由来の固形物、乳製品由来の固形物、ナッツ由来の固形物、果実由来の固形物、野菜由来の固形物、大豆由来の固形物及びこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項13】
約0.3〜約0.84の範囲の水分活性を有する、請求項1に記載のエマルション。
【請求項14】
菓子製品用コーティングとして使用される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項15】
成形、共成形、エンロービング、吹付けコーティング、パンコーティング及びこれらの組合せからなる群から選択される付着法によって、菓子製品用コーティングを形成することができる、請求項1に記載のエマルション。
【請求項16】
長期保存可能である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項17】
水相と、
少なくとも1種の乳化剤を有し、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まない脂肪相と
を含む製菓用途のエマルション。
【請求項18】
少なくとも1種のシーディング剤をさらに含む、請求項17に記載のエマルション。
【請求項19】
水相と、
少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも1種のテンパリング脂肪を有し、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まない脂肪相と
を有するエマルションを含む菓子製品。
【請求項20】
水及び添加剤の組合せを混合及び加熱することによって水相を調製して、シロップを形成する第1ステップと、
少なくとも1種のテンパリング脂肪及び少なくとも1種の乳化剤をブレンド及び加熱することによって脂肪相を調製して、脂肪ブレンドを形成する第2ステップと、
前記シロップ及び前記脂肪ブレンドを交ぜ合わせる第3ステップと、
前記交ぜ合わせたシロップ及び脂肪ブランドに少なくとも1種のシーディング剤を添加して、エマルションを形成する第4ステップと
を含むエマルションを作製する方法。
【請求項21】
水及び添加剤の組合せを混合及び加熱することによって水相を調製して、シロップを形成する第1ステップと、
少なくとも1種の脂肪及び少なくとも1種の乳化剤をブレンド及び加熱することによって脂肪相を調製して、脂肪ブレンドを形成する第2ステップと、
前記シロップ及び前記脂肪ブレンドを交ぜ合わせる第3ステップと、
少なくとも1種のシーディング剤を、前記混ぜ合わせたシロップ及び脂肪ブレンドに添加して、エマルションを形成する第4ステップと
を含む、製菓用コーティング用途のエマルションを作製する方法であって、
前記第2ステップにおける前記脂肪相が、部分水素化脂肪及びラウリン酸脂肪の含有量が低く、蝋を含まないものであり、
前記第4ステップにおける前記エマルションが精製又はコンチングする必要がないものである、方法。

【公表番号】特表2009−505669(P2009−505669A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528420(P2008−528420)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008525
【国際公開番号】WO2007/025755
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】