説明

製造の過程で変性されるチーグラー/ナッタ触媒組成物

【課題】改善された生産性を示し、定常的な高品質を再現可能に維持する、触媒組成物を用いるC2−C10−1−アルケン重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】担体としての無機酸化物と液状アルカン中のマグネシウム化合物の溶液とを混合し、10から120℃で0.5から5時間攪拌し、ジ(C1−C10アルキル)マグネシウムに対して2倍の過剰量でハロゲンまたはハロゲン化水素、及び芳香族炭化水素を添加し、20から120分後にこの反応生成物を、10から150℃で、C1−C8アルカノール、3価ないし4価チタンのハロゲン化物もしくはアルコキシド、およびカルボン酸エステルと反応させ、この生成混合物を10から150℃で30分間攪拌し、得られる固体分を濾別し、洗浄し、次いで、得られた固体分を、少なくとも5重量%のチタンテトラクロリドを含有する芳香族炭化水素で抽出し、洗浄して得た触媒組成物を用いる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)チタン化合物とマグネシウム化合物、ハロゲン、担体としての無機酸化物、C1−C8アルカノールおよび電子供与体化合物としてのカルボン酸エステルとを反応させることにより得られるチタン含有固体組成分、(b)共触媒としてのアルミニウム化合物、および(c)必要に応じて、さらに他の電子供与体化合物を活性組成分として含有するチーグラー/ナッタ触媒組成物に関する。
【0002】
本発明は、さらにこのようなチーグラー/ナッタ触媒組成物の製造方法、このような触媒組成物の使用によりプロピレン重合体を製造する方法、このようにして得られる重合体、このような重合体から成るフィルム、ファイバーその他の成形体に関する。
【背景技術】
【0003】
チーグラー/ナッタタイプの触媒組成物は、ことに特許文献1(DE−A4216548号)、特許文献2(DE−4419438号)、特許文献3(EP−A530599号)各公報、特許文献4(US−A4857613号明細書)から公知であって、このような組成物は、ことにC2−C10の1−アルケンの重合用に使用され、ことに多価チタン化合物、アルミニウムハロゲン化物および/またはアルミニウムアルキル、さらに電子供与体化合物、ことに珪素化合物、エーテル、カルボン酸エステル、ケトン、ラクトンを含有する。上記アルミニウム化合物および電子供与体化合物は、チタン化合物に関連して、また共触媒として使用される。
【0004】
チーグラー/ナッタ触媒は、従来から2工程で製造される。チタン含有固体組成分がまず調整され、次いでこれが共触媒と反応せしめられる。これにより得られる触媒を使用して重合が行なわれる。
【0005】
上記特許文献4(US−A4857613号)および特許文献5(US−A5288824号明細書)には、チタン含有固体組成分、アルミニウム化合物および電子供与体化合物としての有機シラン化合物を含有するチーグラー/ナッタタイプの触媒組成物が記載されている。このような触媒組成物は、高い生産性を有し、高い立体特異性、すなわち高いアイソタクチック性、低い塩素含有分および良好な形態学的特性、すなわち低い微細粉割合のプロピレン重合体をもたらす。
【0006】
上記両米国特許明細書は、チタン含有固体組成分を2工程で製造する方法を記載している。すなわち、不活性の脂肪族炭化水素、一般にヘプタン中で依然として不都合な物質ないし副生成物を含有する触媒前駆材料が、まず形成される。この第1工程に次いで、この前駆材料から、芳香族炭化水素と、チタンテトラクロリドとの混合物により、副生成物が固液抽出される。この触媒前駆材料の精製は、しばしば不充分であるのみならず、触媒生産性を著しく損耗させる。さらに、チタン含有固体組成分からの不充分な副生成物除去の原因となる品質の変動ないし非再現性が、ことに工業的規模の触媒製造において、しばしば認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE−A4216548号
【特許文献2】DE−4419438号
【特許文献3】EP−A530599号
【特許文献4】US−A4857613号
【特許文献5】US−A5288824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この技術分野における課題ないし本発明の目的は、上述した両米国特許明細書から出発して、ことに改善された生産性を示し、定常的な高品質を再現することができる、触媒組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、上述した課題ないし目的は、C2−C10−1−アルケンおよび場合によりコモノマーを、20から150℃、1から100バールの圧力下において、チーグラー/ナッタ触媒の存在下に重合させるC2−C10−1−アルケン重合体の製造方法において、
活性成分としての、
(a)チタン化合物と、ジ(C1−C10アルキル)マグネシウム、ハロゲンまたはハロゲン化水素、担体としての無機酸化物、C1−C8アルカノールおよび電子供与体化合物としてのカルボン酸エステルとを反応させることにより得られるチタン含有固体組成分、並びに
共触媒としての、
(b)アルミニウム化合物、および
(c)必要に応じて、さらに他の電子供与体化合物、
を含有するチーグラー/ナッタ触媒組成物が使用され、
チタン含有固体組成分(a)が、
第1工程において、まず担体としての無機酸化物と液状アルカン中のマグネシウム化合物の溶液とを混合し、この混合物を10から120℃で0.5から5時間攪拌し、次いで絶えず攪拌しながらジ(C1−C10アルキル)マグネシウムに対して少なくとも2倍の過剰量でハロゲンまたはハロゲン化水素、及び不活性溶媒として芳香族炭化水素を添加し、20から120分後にこの反応生成物を、10から150℃で、C1−C8アルカノール、3価ないし4価チタンのハロゲン化物もしくはアルコキシド、および電子供与体化合物としてのカルボン酸エステルと反応させ、この生成混合物を10から150℃で少なくとも30分間攪拌し、これにより得られる固体分を濾別し、洗浄し、
次いで、
第2工程において、この第1工程で得られた固体分を、少なくとも5重量%のチタンテトラクロリドを含有する不活性溶媒としての芳香族炭化水素で抽出し、洗浄する、ことにより製造されることを特徴とするC2−C10−1−アルケン重合体の製造方法により達成されることが、本発明者らにより見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による触媒組成分は、ことにチタン含有固体組成分(a)と、共触媒を含有する。共触媒としては、アルミニウム化合物(b)が適当である。このアルミニウム化合物(b)のほかに、電子供与体化合物(c)も、共触媒の他の組成分として使用される。
【0011】
チタン含有固体組成分(a)を製造するためのチタン化合物としては、一般的に3価もしくは4価チタンのハロゲン化物、アルコキシドが使用されるが、ことにチタンテトラクロリドが好ましい。チタン含有固体組成分(a)は、さらに担体を含有する。
【0012】
チタン含有固体組成分(a)を製造するためには、ことにマグネシウム化合物が使用される。適当なマグネシウム化合物は、マグネシウムハロゲン化物、マグネシウムアルキル、マグネシウムアリール、さらにはマグネシウムアルコキシ、マグネシウムアリールオキシ化合物であるが、ことに好ましいのは、ジ(C1−C10アルキル)マグネシウム化合物である。チタン含有固体組成分(a)は、さらにハロゲン、ことに塩素または臭素を含有し得る。
【0013】
チタン含有固体組成分(a)は、さらに、電子供与体化合物、例えば単官能性もしくは多官能性のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、さらにケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機燐化合物、有機珪素化合物を含有する。チタン含有固体組成分に含有される電子供与体化合物として、ことに好ましいのは、下式(II)
【0014】
【化1】

で表わされ、かつ式中のX、Yがそれぞれ塩素原子またはC1−C10アルコキシを意味し、あるいはこれらが合体して酸素を形成する場合のフタール酸誘導体である。ことに好ましいフタール酸誘導体は、このX、YがそれぞれC1−C8アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシを意味する場合である。
【0015】
チタン含有固体組成分に含有されるさらに他の好ましい電子供与体化合物は、3員もしくは4員の、置換もしくは非置換シクロアルキル−1,2−ジカルボン酸のジエステル、置換もしくは非置換ベンゾフェノン−2−カルボン酸のモノエステルである。これらエステルを形成するヒドロキシ化合物は、エステル化に慣用されているアルコール、例えばC1−C15アルカノール、置換基としてC1−C10アルキルを持っていてもよいC5−C7シクロアルカノール、さらにはC6−C10フェノールである。
【0016】
チタン含有固体組成分は、それ自体公知の方法、例えばEP−A171200号、GB−A2111066号各公報、US−A4857613号明細書に記載されている方法により製造され得る。
【0017】
チタン含有固体組成分(a)の製造は、下記の2工程法によるのが好ましい。
【0018】
すなわち、第1工程において、一般的に、1から6.5のpH値、5から200μm、ことに20から70μmの平均粒径、0.1から10cm3/g、ことに1.0から4.0cm3/gの孔隙容積、10から1000m2/g、ことに100から500m2/gの比表面積を有する無機酸化物を、まずマグネシウム含有化合物の液状アルカン溶液と混合し、次いでこの混合物を10から120℃において0.5から5時間攪拌する。この場合、担体1モルに対して、0.1から1モルのマグネシウム化合物を使用するのが好ましい。次いで、絶えず攪拌しながら、マグネシウム含有化合物に対して、少なくとも2倍モル、好ましくは少なくとも5倍モルの過剰量で、ハロゲンもしくはハロゲン化水素、ことに塩素もしくは塩化水素を添加する。各組成分は、芳香族炭化水素、好ましくはC7−C12アルキルベンゼン、ことにエチルベンゼンの存在下に反応せしめられる。約30から120分後に、C1−C8アルカノール、ことにエタノール、3価もしくは4価チタンのハロゲン化物またはアルコキシ化合物、ことにチタンテトラクロリドおよび電子供与体化合物を、10から150℃において、この反応生成物に添加する。この場合、第1工程から得られる固体分中のマグネシウム1モルに対して、1から10モルの3価もしくは4価チタンおよび0.01から1モル、ことに0.1から0.5モルの電子供与体化合物を使用するのが好ましい。この混合物を10から150℃において、少なくとも30分間攪拌し、濾別し、C7−C10アルキルベンゼン、ことにエチルベンゼンで洗浄する。
【0019】
第2工程において、上記第1工程で得られた固体分を、100から150℃において、数時間にわたり、過剰量のチタンテトラクロリドまたは不活性溶媒、ことにC7−C10アルキルベンゼン中に少なくとも5重量%のチタンテトラクロリドを溶解させた過剰量の溶液で抽出する。この生成物を、洗浄液中におけるチタンテトラクロリド量が0.2重量%以下になるまで、液状アルカンで洗浄する。
【0020】
本発明によれば、チタン含有固体組成分(a)を構成する各構成分は、芳香族炭化水素、ことにC7−C12アルキルベンゼンまたはハロゲン化ベンゼン誘導体、ことにエチルベンゼン中において反応せしめられる。この溶媒としては、少なくとも10重量%、ことに少なくとも20重量%の芳香族炭化水素と、90重量%までの、ことに80重量%までの脂肪族炭化水素との混合液を使用することもできる。この脂肪族炭化水素としては、C5−C12アルカン、ことにヘキサン、ヘプタン、イソドデカンが好ましい。
【0021】
この各構成分の反応により得られる好ましくない副生成の易溶解性にかんがみて、抽出処理に先立ち除去することにより第2工程の抽出は極めて効率的に行なわれる。
【0022】
チタン含有固体組成分(a)において使用される無機酸化物は、1から6.5のpH値、5から200μm、ことに20から70μmの平均粒径、1から20μm、ことに1から5μmの1次粒子平均粒径を有する微細粉酸化物であるのが望ましい。ここで1次粒子と称するのは、対応するヒドロゲルから、磨砕により、場合により適当な篩分け処理後により得られる多孔性酸化物粒子そのものを意味する。ヒドロゲルは、酸性範囲、すなわちpH1から6.5で得られるか、あるいは適当な酸溶液で洗浄され、精製される。
【0023】
有利に使用され得る無機酸化物粒子は、さらに0.1から20μm、ことに1から15μmの平均径を有する孔隙ないし条溝を有し、しかもこの孔隙ないし条溝が、全粒子容積に対して、5から30%、ことに10から30%の容積割合で存在することが好ましい。無機酸化物粒子は、さらに、0.1から10cm3/g、ことに1.0から4.0cm3/gの孔隙容積、10から1000m2/g、ことに100から500m2/gの比表面積を有するのが好ましい。上述したようにpH値は一般的に1から6.5であるが、さらに好ましいのは2から5である。
【0024】
好ましい無機酸化物は、さらに具体的に珪素、アルミニウム、チタンあるいは周期表IもしくはII主族のいずれかの金属の酸化物である。アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、板状シリカートの他に、ことに好ましいのは、シリカゲル(SiO2)であって、これはことに噴霧乾燥により得られる。いわゆるコゲル、すなわち異なる2種類の無機酸化物の混合物を使用することもできる。
【0025】
無機酸化物は、その1モルに対して0.1から1.0モル、ことに0.2から0.5モルのマグネシウム化合物が、チタン含有固体組成分(a)中に存在するような量で存在するのが好ましい。
【0026】
このようにして得られるチタン含有固体組成分(a)は、共触媒と共にチーグラー/ナッタ触媒系として使用される。適当な共触媒は、例えばアルミニウム化合物(b)である。
【0027】
共触媒として適当なアルミニウム化合物(b)は、トリアルキルアルミニウムおよびそのアルキル基がアルコキシ基または、ハロゲン原子、例えば塩素、臭素で置換されている化合物である。アルキル基部分が1から8個の炭素原子を有するトリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムまたはメチルジエチルアルミニウムがことに好ましい。
【0028】
アルミニウム化合物(b)の他に、さらに共触媒として、電子供与体化合物(c)を使用するのが好ましい。このような電子供与体化合物(c)の例としては、単官能性もしくは多官能性のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、さらにケトン、エーテル、アルコール、ラクトンおよび有機燐、有機珪素化合物が挙げられる。ことに好ましい電子供与体化合物は、以下の一般式IR1 nSi(OR24-n Iで表わされ、かつR1 が複数の場合(n>2)、相互に同じであっても異なってもよく、それぞれ、C1−C20アルキル、置換基としてC1−C10アルキルを持っていてもよい5員から7員のシクロアルキル、またはC6−C20アリールもしくはアリールアルキルを意味し、R2が、同様に相互に同じであっても異なってもよく、それぞれC1−C20アルキルを意味し、nが1、2または3であるときの有機珪素化合物である。ことに好ましいのは、R1がC1−C8アルキルまたは5員から7員のシクロアルキルを、R2がC1−C4アルキルを意味し、nが1または2である場合の有機珪素化合物である。これら化合物のうち、ことにジメトキシジイソプロピルシラン、ジメトキシイソブチルイソプロピルシラン、ジメトキシジイソブチルシラン、ジメトキシジシクロペンチルシラン、ジメトキシイソブチル−s−ブチルシラン、ジメトキシイソプロピル−s−ブチルシラン、ジエトキシジシクロペンチルシラン、ジエトキシイソブチルイソプロピルシランがことに好ましい。
【0029】
個々の化合物(b)と、使用される場合の化合物(c)とは、共触媒として、それぞれ任意の順序で、あるいは両者の混合物の形態で添加され得る。
【0030】
共触媒として作用する化合物(b)および必要に応じて使用される化合物(c)は、チタン含有固体組成分(a)に対して順次にまた同時に作用させ得る。これは通常、0から150℃、ことに20から90℃、1から100バール、ことに1から40バールの圧力で行われる。
【0031】
化合物(b)および場合により使用される化合物(c)は、アルミニウム化合物(b)に由来するアルミニウムと、チタン含有固体組成分(a)に由来するチタンとの原子割合が、10:1から800:1、ことに20:1から200:1となり、また助触媒として使用されるアルミニウム化合物(b)と、電子供与体化合物(c)との分子割合が1:1から250:1、ことに10:1から80:1となるような割合で使用されるのが好ましい。
【0032】
本発明による触媒組成物は、C2−C10の1−アルケンを重合させるために使用される。ことにプロピレン、エチレンの重合体、すなわち、これらの各単独重合体と、さらに他のC2−C10−1−アルケンとの共重合体を製造するのに適する。この共重合体中のプロピレンまたはエチレン単量体の割合は、少なくとも50モル%である。
【0033】
本発明の目的からして、このC2−C10の1−アルケンは、ことにエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンであり、コモノマーとしては、ことにエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0034】
しかしながら、本発明触媒組成物は、他のC2−C10−1−アルケンの重合体、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンまたは1−オクテンの重合体を製造するためにも使用され得る。
【0035】
本発明触媒組成物は、ことに、50から100モル%のプロピレン、0から50モル%、ことに0から30モル%のエチレン、および0から20モル%、ことに0から10モル%のC4−C10−1−アルケンから成る重合体の製造のためにことに有利に使用される。ただし、上記モル%の数値合計は常に100となるべきである。
【0036】
このようなC2−C10−1−アルケンの重合体の製造は、このような重合に慣用されている反応器において、バッチ式で、好ましくは連続的に懸濁重合法、ことに気相法で行われ得る。適当な反応器の例としては、適当な撹拌器により運動状態に維持される重合体微細粉固体床を有する連続稼働撹拌反応器が挙げられる。もちろん、反応は複数の反応器を直列接続した反応装置(カスケード)中において行われ得る。反応時間は、それぞれの場合に設定される反応条件に応じて著しく変化するが、一般的に0.2から20時間、通常0.5から10時間である。
【0037】
重合反応は、20から150℃、1から100バールの圧力で有利に行われ得る。ことに40から100℃の温度、10から50バールの圧力が好ましい。生成する1−アルケン重合体の分子量は、重合技術において慣用の制御剤、例えば水素の添加により制御され得るが、極めて広い範囲に設定可能である。さらに、トルエン、ヘキサンのような不活性溶媒、窒素、アルゴンのような不活性ガス、比較的少量のポリプロピレン粉末の使用も可能である。
【0038】
本発明触媒組成物の存在下に得られるプロピレン単独重合体および共重合体は、1−アルケン重合体に一般的な分子量(重量平均)、20000から500000を有するのが好ましい。またこの重合体は、DIN53735により、230℃、荷重2.16kgで測定して、0.1から100g/10分、ことに0.5から50g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を示すのが好ましい。
【0039】
これまでに公知であった触媒組成物に対して、本発明によるチーグラー/ナッタ触媒組成物は、ことに気相重合において、増大された生産性および秀れた立体特異性を示し、またこれを使用して得られる重合体は、高い嵩密度、低いヘプタン、キシレン可溶性分および低い残留塩素分を示す。
【0040】
本発明触媒の使用により製造されるプロピレン重合体は、その良好な機械特性の故に、フィルム、ファイバーその他の成形体の製造にことに適する。
【実施例】
【0041】
実施例1
(a)チタン含有固体組成分の製造
第1工程において、20から45μmの粒径、1.5cm3/gの孔隙容積、260m2/gの比表面積を有するシリカゲル(SiO2)微細粉を、このSiO2 1モルに対して0.3モルの、マグネシウム化合物として、n−ブチルオクチルマグネシウムを含有するn−ヘプタン溶液と混合した。このシリカゲル微細粉としては、6.5のpH値、3−5μmの1次粒子平均粒径、径3−5μmの孔隙、条溝、全粒子中に占める孔隙、条溝の容積割合約15%有するものを使用した。この溶液95℃において30分間攪拌し、次いで20℃に冷却し、これに有機マグネシウム化合物に対して、10倍モル量の塩化水素を導通した。溶媒としてエチルベンゼン170ミリリットルを使用して反応させた。60分後、絶えず攪拌しながら、この反応生成物を、マグネシウムのモル当たり、3モルのエタノールと混合した。この混合物を80℃において0.5時間攪拌してから、さらにマグネシウム1モル当たり、7.2モルのチタンテトラクロリドおよび0.5モルのジ−n−ブチルフタラートと混合した。次いで、この混合物を100℃でさらに1時間攪拌し、得られた固体分を濾別し、エチルベンゼンで洗浄した。
【0042】
第2工程において、この固体分を、125℃において2時間にわたり、チタンテトラクロリドの10%濃度エチルベンゼン溶液で抽出した。固体生成物を抽出液から濾別し、洗浄液のチタンテトラクロリド含有分が0.3重量%に減少するまで、n−ヘプタンで洗浄した。
【0043】
得られたチタン含有固体組成分の組成は以下の通りであった。
【0044】
Ti 3.6重量%Mg 7.1重量%Cl 27.9重量%
【0045】
粒径はクールターカウンター分析(シリカゲル粒子の粒度分布)、孔隙容積、比表面積は、DIN66131による窒素吸収ないしDIN66133による水銀多孔度計により測定した。1次粒子の平均粒径、孔隙、条溝の径、その巨視的容積割合は走査電子顕微鏡ないし電子プローブ顕微鏡分析で測定した(いずれもシリカゲル粒子表面および粒子横断面について)。シリカゲルのpH値は、1977年、ニューヨークのプレナムプレス社刊、S.R.モリソンの「ザ、ケミカル、フィジクス、オブ、サーフェセズ」130、131頁に記載の方法で測定した。
【0046】
(b)プロピレンの重合
重合は、有効容積10リットルの攪拌器附設オートクレーブ反応器中において、分子量制御剤としての水素の存在下に、気相法で行なわれた。
【0047】
水素8リットルの存在下に、気体状プロピレンを、70℃、28バールの圧力で気相反応器中に圧送した。100mgのチタン含有固体組成分、助触媒として、10ミリモルのトリエチルアルミニウム、1ミリモルのジメトキシイソブチルイソプロピルシランから成る、実施例1(a)の触媒組成物を使用して、1時間の滞留時間で重合させた。
【0048】
気相重合完了により、230℃、2.16kgで測定(DIN53735による)して、11.4g/分のメルトフローインデックス(MFI)を示すプロピレン単独重合体が得られた。
【0049】
下表2において、得られたプロピレン単独重合体に関して、触媒組成物の生産性(gで表わされる生成重合体量/gで表わされる使用チタン含有固体組成分量)、キシレン、ヘプタン可溶性分割合、塩素分割合、MFIおよび嵩密度が示される。
【0050】
対比例A
チタン含有固体組成分(a)を製造するため、エチルベンゼン溶媒の代わりに同量のn−ヘプタンを使用したほかは、全く実施例1と同様の条件で、まずチタン含有固体組成分を製造し、次いでプロピレンを重合させた。
【0051】
下表1において、実施例1と対比例Aにつき、チタン含有固体組成分(a)の製造に使用した溶媒、マグネシウム化合物、担体(孔隙の容積割合)、チタン含有固体組成分製造のための第2工程における抽出時間、およびそのマグネシウム、チタン、塩素含有分が示されている。
【0052】
実施例2から4および対比例C、D
さらに、実施例2から4、対比例BおよびCにおいても、チタン含有固体組成分(a)の製造のための溶媒、抽出時間、担体が表1に示されるように変えられているが、その他は同じ条件下において、まずチタン含有固体組成分が製造され、次いでプロピレンが重合された。
【0053】
表2は、実施例1と同様に、すべての実施例、対比例につき、得られたプロピレン重合体の、キシレン、ヘプタン可溶性分、塩素分、MFIおよび嵩密度を示している。なお表2は、使用された触媒組成物の生産性を併わせて示している。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
上記表1および表2から認められるように、チタン含有固体組成分製造のために芳香族炭化水素を使用することにより、キシレン、ヘプタン可溶性分の量が著しく低減され、また塩素分の量も著しく低減された重合体を製造し得る触媒組成がもたらされ得る。本発明による触媒組成物は、ことに増大された生産性を示し、またその製造のための抽出時間が著しく短縮される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−C10−1−アルケンおよび場合によりコモノマーを、20から150℃、1から100バールの圧力下において、チーグラー/ナッタ触媒の存在下に重合させるC2−C10−1−アルケン重合体の製造方法において、
活性成分としての、
(a)チタン化合物と、ジ(C1−C10アルキル)マグネシウム、ハロゲンまたはハロゲン化水素、担体としての無機酸化物、C1−C8アルカノールおよび電子供与体化合物としてのカルボン酸エステルとを反応させることにより得られるチタン含有固体組成分、並びに
共触媒としての、
(b)アルミニウム化合物、および
(c)必要に応じて、さらに他の電子供与体化合物、
を含有するチーグラー/ナッタ触媒組成物が使用され、
チタン含有固体組成分(a)が、
第1工程において、まず担体としての無機酸化物と液状アルカン中のマグネシウム化合物の溶液とを混合し、この混合物を10から120℃で0.5から5時間攪拌し、次いで絶えず攪拌しながらジ(C1−C10アルキル)マグネシウムに対して少なくとも2倍の過剰量でハロゲンまたはハロゲン化水素、及び不活性溶媒として芳香族炭化水素を添加し、20から120分後にこの反応生成物を、10から150℃で、C1−C8アルカノール、3価ないし4価チタンのハロゲン化物もしくはアルコキシド、および電子供与体化合物としてのカルボン酸エステルと反応させ、この生成混合物を10から150℃で少なくとも30分間攪拌し、これにより得られる固体分を濾別し、洗浄し、
次いで、
第2工程において、この第1工程で得られた固体分を、少なくとも5重量%のチタンテトラクロリドを含有する不活性溶媒としての芳香族炭化水素で抽出し、洗浄する、ことにより製造されることを特徴とするC2−C10−1−アルケン重合体の製造方法。
【請求項2】
使用されるC2−C10−1−アルケンが、プロピレンであることを特徴とする請求項1の製造方法。

【公開番号】特開2011−174087(P2011−174087A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106826(P2011−106826)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願平9−248866の分割
【原出願日】平成9年9月12日(1997.9.12)
【出願人】(510140135)ルームス、ノヴォレン、テクノロジー、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (1)
【Fターム(参考)】