説明

複写機能付画像形成装置

【課題】 多量の文字を不鮮明になることなく複写することのできる複写機能付画像形成装置の提供。
【解決手段】 原稿としての記録紙Pには、文章を構成する文字Pbと、各文字Pbのフォント情報が書き込まれたバーコードPaとが印刷されている。コピー機能を備えた複合機が、OCRを利用して文字Pbを読み取って文字コード情報を取得し、バーコードPaからフォント情報を取得することにより、他の記録紙Pに文字Pbを印刷する。その結果、原稿とフォントまで含めて同様の文字Pbを、文字数の制限を受けずに印字することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に文字を印刷可能な画像形成装置に関し、詳しくは、原稿としての被記録媒体に印刷された文字を他の被記録媒体に印刷可能な複写機能付画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の複写機能付画像形成装置としては、原稿の画像を光学的に読み取って同様の画像を被記録媒体に印刷するコピー機が周知である。ところが、コピー機で複写を行うと、光学系の汚れ等によって文字が不鮮明になる場合がある。そこで、名刺にその印刷内容の印刷制御情報(すなわち、文字コード,フォント,サイズ,スタイル,及び位置)を示す二次元バーコードを印刷しておき、その二次元バーコードを読み取ることで同様の名刺を印刷可能にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−40603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記技術のように文字コード,フォント,サイズ,スタイル,及び位置の全てを二次元バーコードとして記録する場合、二次元バーコードに記録できるデータ量に制限があるため文字数にも制限があった。このため、上記技術は文章などを構成する多量の文字を複写するのには不向きであった。そこで、本発明は、多量の文字を不鮮明になることなく複写することのできる複写機能付画像形成装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達するためになされた本発明は、原稿としての被記録媒体に印刷された文字を読み取る読み取り手段と、該読み取り手段の読み取り結果に基づき、その文字を認識する認識手段と、該認識手段の認識結果を、文字の形状を表す画像データに変換する変換手段と、該変換手段に変換された画像データに基づき、上記文字を被記録媒体に印刷する印刷手段と、を備えたことを特徴としている。
【0005】
このように構成された本発明では、原稿としての被記録媒体に印刷された文字を読み取り手段が読み取ると、その読み取り結果に基づき、認識手段がその文字を認識する。すると、変換手段が、その認識手段の認識結果を、文字の形状を表す画像データに変換し、該変換された画像データに基づき、印刷手段が上記文字を被記録媒体に印刷する。
【0006】
このように、本発明では、原稿としての被記録媒体に印刷された文字を直接読み取って複写印刷しているので文字数に限度がない。また、上記読み取られた文字を一旦認識して、その認識結果を文字の形状を表す画像データに変換しているので、複写によって文字が不鮮明になることもない。
【0007】
なお、本発明において、上記原稿としての被記録媒体に設けられてその被記録媒体に印刷された上記文字のフォント情報を記憶した図形コードから、上記フォント情報を抽出するフォント情報抽出手段を、更に備え、上記変換手段が、上記フォント情報抽出手段に抽出されたフォント情報に基づいて、上記文字を、その文字の形状を表す画像データに変換する場合、次のような更なる効果が生じる。
【0008】
この場合、フォント情報抽出手段は、上記図形コードからフォント情報を抽出し、そのフォント情報に基づいて、変換手段が上記文字を画像データに変換する。このように、フォント情報を原稿としての被記録媒体に設けられた図形コードから抽出すれば、複写を行っても文字のフォントが変化しない。従って、この場合、原稿としての被記録媒体に印刷された文字を一層良好に複写することができる。
【0009】
そして、更にこの場合、上記認識手段は、上記読み取り結果に基づき、その文字を表す文字コードとその文字のフォント情報とを生成し、上記フォント情報抽出手段によって上記フォント情報が抽出されない場合、上記変換手段が、上記認識手段に生成されたフォント情報に基づいて、上記文字コードを、その文字の形状を表す画像データに変換してもよい。この場合、原稿としての被記録媒体に図形コードが設けられていない場合やその図形コードが汚損するなどして上記フォント情報を抽出できない場合でも、認識手段に生成された文字コードとフォント情報とを利用して良好に文字を複写することができる。
【0010】
なお、本発明は上記フォント情報を特に限定するものではないが、例えば、上記フォント情報は、文字サイズ、フォントの種類、スタイル、文字色、または文字間隔の、少なくともいずれか1つを含むものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を、図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された複写機能付画像形成装置としての多機能装置(MFD:Multi Function Device )1の斜視図であり、図2は、その側断面図である。
【0012】
[多機能装置1の機械的構成の説明]
この多機能装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能を有したものであり、図1及び図2に示すように、合成樹脂製のハウジング2の上部に、原稿の読み取りに用いられる画像読取装置12が設けられている。
【0013】
画像読取装置12は、その左端部に設けられた図示しない枢軸を中心にハウジング2に対して上下開閉回動可能に構成されており、更に、この画像読取装置12の上面を覆う原稿カバー体13が、その後端部に設けられた枢軸12a(図2参照)を中心に画像読取装置12に対して上下開閉回動可能に装着されている。
【0014】
そして、図2に示すように、画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて読み取り用の原稿を載置するための載置用ガラス板16が設けられ、その下側には、原稿読み取り用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor)17が図2の紙面と直交する方向(左右方向)に延びるガイドシャフト44に沿って往復移動可能に設けられている。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、画像読取装置12の前方には、入力操作を行うための操作ボタン群14aや各種情報を表示するための液晶表示部(LCD)14bを備えた操作パネル部14が設けられている。なお、操作ボタン群14aは、矢印キー,実行キー,キャンセルキー,テンキー等を備えた周知のものである。
【0016】
一方、ハウジング2の底部には、被記録媒体としての記録紙Pを給紙するための給紙部11が設けられている。この給紙部11には、記録紙Pを積層(堆積)した状態で収容する給紙カセット3が、ハウジング2の前側に形成された開口部2aを介して、ハウジング2に対し前後方向に着脱可能に設けられている。
【0017】
そして、図2に示すように、給紙カセット3の奥側(後端部側)には、記録紙分離用の傾斜分離板8が配置されている。この傾斜分離板8は、記録紙Pの幅方向(左右方向)中央部において突出し、記録紙Pの幅方向左右両端部側へ向かうに従って後退するように平面視で凸湾曲状に形成されており、記録紙Pの幅方向中央部には、記録紙Pの先端縁に当接して分離を促進するための鋸歯状の弾性分離パッドが設けられている。
【0018】
また、給紙部11において、ハウジング2側には、給紙カセット3から記録紙Pを給紙するための給紙アーム6aの基端部が上下方向に回動可能に装着され、この給紙アーム6aの先端部に設けられた給紙ローラ6bには、給紙アーム6a内に設けられた歯車伝達機構6cにより、LF(搬送)モータ131(図6参照)からの回転駆動力が伝達される。そして、この給紙ローラ6bと前述の傾斜分離板8の弾性分離パッドとにより、給紙カセット3に堆積された記録紙Pを一枚ずつ分離搬送する。こうして給紙方向(矢印A方向)に沿って進むように分離された記録紙Pは、第1搬送路体60と第2搬送路体52との間隙に形成された横向きU字形状のパスを含む給送路9を介して、給紙カセット3の上方(高い位置)に設けられた記録部7に搬送される。
【0019】
図3は、画像読取装置12を除いた状態での多機能装置1の内部構造を表す平面図である。同図に示すように、記録部7は、上向き開放の箱状に形成されたメインフレーム21と、その左右一対の側板21aによって支持され左右方向(主走査方向)に延びる横長の板状の第1ガイド部材22及び第2ガイド部材23を備えている。そして、第1ガイド部材22と第2ガイド部材23との間には、下面からインクを吐出することで記録紙Pに画像を記録するインクジェット式の記録ヘッド4(図2、図4参照)と、この記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5とを備えている。
【0020】
キャリッジ5は、排紙方向(矢印B方向)上流側の第1ガイド部材22及び下流側の第2ガイド部材23に跨って摺動自在に支持されており、左右方向に往復移動可能となっている。そして、排紙方向(矢印B方向)下流側に配置された第2ガイド部材23の上面には、キャリッジ5を往復移動させるために、主走査方向(左右方向)に延びるようにタイミングベルト24が巻回されており、このタイミングベルト24を駆動するCR(キャリッジ)モータ132(図6参照)が、第2ガイド部材23の下面に固定されている。
【0021】
一方、記録部7において、キャリッジ5における記録ヘッド4の下面には、記録ヘッド4と対向して左右方向に延びる扁平状のプラテン26が、上記両ガイド部材22,23の間にて、メインフレーム21に固定されている。
【0022】
そして、図2に示すように、プラテン26の排紙方向(矢印B方向)上流側には、記録紙Pを記録ヘッド4の下面に搬送するための駆動ローラ50と、この駆動ローラ50に対向する下方にニップローラ51とが配置されている。また、プラテン26の排紙方向(矢印B方向)下流側には、記録部7を通過した記録紙Pを排紙方向(矢印B方向)に沿って排紙部10に搬送する排紙ローラ28と、これに対向して排紙ローラ28側に付勢された拍車ローラ(図示せず)とが配置されている。
【0023】
記録部7にて記録された記録紙Pがその記録面を上向きにして排出される排紙部10は、給紙部11の上方に配置され、排紙口10aがハウジング2の前面の開口部2aと共通にして開口されている。そして、排紙部10から排紙方向(矢印B方向)に排紙された記録紙Pは、開口部2aの内部側に位置する排紙トレイ10bに堆積収容される。
【0024】
一方、画像読取装置12によって覆われたハウジング2の前部右端位置には、図示しないインク貯蔵部が設けられている。このインク貯蔵部には、フルカラー記録のための4色(ブラック(Bk)、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M))のインクをそれぞれ収容した4つのインクカートリッジが、画像読取装置12を上方に開いた状態で着脱可能となるように装着されている。そして、各色のインクカートリッジと上述した記録ヘッド4とは、可撓性を有する4本のインク供給管で連結されており、各インクカートリッジに収容されたインクは、各インク供給管を介して記録ヘッド4へ供給される。
【0025】
図4は、記録ヘッド4を下面から見た模式図である。同図に示すように、記録ヘッド4には、記録紙Pの搬送方向(排紙方向、副走査方向)に沿って配列された複数のノズルからなるノズル列4k,4c,4y,4mが設けられている。具体的には、フルカラー記録のための4色(ブラック(Bk)、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M))のインクに対応して、各色のインクを吐出する4つのノズル列4k,4c,4y,4mが並設されている。
【0026】
また、記録ヘッド4には、記録紙Pの幅方向(左右方向)における端縁(搬送方向に沿った端縁)を検出可能なメディアセンサ40が取り付けられている。このメディアセンサ40は、発光素子(例えば、発光ダイオード)と受光素子(例えば、フォトトランジスタ)とを有した光学式センサ(反射型センサ)であり、発光素子を発光させることによる反射光を受光素子で受光することにより、メディアセンサ40の下における記録紙Pの存在を検出する。
【0027】
次に、図5は、イメージスキャナ装置17の内部構造を表す横断面図である。図5に示すように、イメージスキャナ装置17は、イメージデバイス17A、セルフォックレンズ17B、及び光源17Cを備え、載置用ガラス板16上の原稿に対して光源17Cから光を照射し、原稿からの反射光をセルフォックレンズ17Bによってイメージデバイス17Aに結像し、イメージデバイス17Aで画像を読み取るように構成されている。
【0028】
[多機能装置1の制御系の説明]
次に、多機能装置1の制御系を図6のブロック図を参照しながら説明する。多機能装置1は、図6に示すように、各種演算を実行するCPU(中央演算装置)61と、制御プログラム等を記憶させたROM(読み出し専用メモリ)62と、各種のデータを一時的に記憶させるRAM(随時読み書き可能メモリ)63とを備えている。なお、ROM62の記憶領域の一部には、文字コードをその文字コードに対応付けられたフォント情報に基づいて文字の形状を表すビットマップデータ(画像データに相当)に変換するCG(character generator )62aが設けられている。
【0029】
また、上記CPU61には、電源スイッチが切られても記憶内容が消えないようにされたNVRAM64や、ハードディスク装置(HDD)65も接続され、更に、外部装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)70と接続するためのプリンタポートインタフェース(プリンタポートI/F)66、図示しないLANと接続するためのLANインタフェース(LANI/F)67、前述の操作ボタン群14a,液晶表示部14b,イメージスキャナ装置(CIS)17,LFモータ131,CRモータ132、などが接続されている。
【0030】
パソコン70も、CPU71,ROM72,RAM73を備え、そのCPU71には、ハードディスク装置(HDD)74、キーボード,マウス等の操作部75,CRT等の表示部76,多機能装置1と接続するためのプリンタポートインタフェース(プリンタポートI/F)77、図示しないLANと接続するためのLANインタフェース(LANI/F)78が接続されている。なお、多機能装置1とパソコン70とは、LANインタフェース67,78を介して接続しても差し支えない。
【0031】
[印字処理についての説明]
次に、上記制御系で実行される印字処理について説明する。先ず、図7は、パソコン70で実行される処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、図8に例示する画面表示例のように本文のテキストと共にフォント名,文字サイズ,書体等を設定可能なアプリケーションによって、パソコン70で文章が作成された後、印刷が指示されるとCPU71により実行される。
【0032】
図7に示すように、処理が開始されると、先ずS1(Sはステップを表す:以下同様)にて、パスワードを設定するか否かが表示部76を介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作部75からの入力に基づいて判断される。パスワードを設定する場合は(S1:Y)、S2にて、表示部76,操作部75を介して使用者にパスワードを入力させる処理が実行され、処理はS3へ移行する。また、パスワードを設定しない場合は(S1:N)、処理はS1からS3へ直接移行する。
【0033】
S3では、記録紙Pに後述のフォント情報等を記憶したバーコードPa(図12参照)を印刷するか否かが表示部76を介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作部75からの入力に基づいて判断される。バーコードPaを印刷しない場合は(S3:N)、処理はS4へ移行し、上記アプリケーションにて作成された文章に対応する文字コードとフォント情報とを含む印刷データが作成される。続くS5では、その印刷データが多機能装置1(プリンタ)へ送信され、パソコン70における処理が終了する。
【0034】
一方、バーコードPaに情報を書き込む場合は(S3:Y)、処理はS7へ移行し、上記文章を構成する各文字の文字コードを羅列した情報(以下、文字コード情報という)をバーコード化するか否かが表示部76を介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作部75からの入力に基づいて判断される。文字コード情報をバーコード化する場合は(S7:Y)、S8にて上記アプリケーションで作成されたデータから文字コード情報が抽出され、処理はS10へ移行する。また、文字コード情報をバーコード化しない場合は(S7:N)、処理はS7からS10へ直接移行する。
【0035】
S10では、その文章のフォント情報を抽出するか否かが表示部76を介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作部75からの入力に基づいて判断される。フォント情報を抽出する場合は(S10:Y)、S11にてそのフォント情報が抽出され、S12にて、後述のようにバーコードPaに書き込むべきバーコード情報が作成される。
【0036】
図9は、バーコードPaに書き込むべき情報としてのフォント情報の一例を表す説明図である。図9に例示するように、フォント情報は、例えば、フォント名(フォントの種類に相当),文字サイズ,書体(スタイルに相当),及び文字色を、開始位置及び終了位置と対応付けたテーブルとして構成されてもよい。なお、開始位置及び終了位置は、それぞれ文頭から何文字目かを表す数値である。また、フォント情報は、上記の一部の項目を省略して構成されてもよく、文字間隔,改行幅等の項目を追加して構成されてもよい。
【0037】
図10は、S11の処理を詳細に表すフローチャートである。すなわち、この処理によってフォント情報を抽出する場合は(S10:Y)、先ず、S111にてフォント情報が別ファイルに保存されているか否かが判断され、別ファイルに保存されていない場合は(S111:N)、S112にて、文章中のフォント情報が抽出される。続くS113では、抽出されたフォント情報がフォント情報テーブルに対応した形式に変換され、S114にてそのフォント情報が図9に例示したようなフォント情報テーブルに保存されて、処理はS12(図7参照)へ移行する。
【0038】
一方、フォント情報が別ファイルにある場合は(S111:Y)、S117にて、その別ファイルのフォント情報がフォント情報テーブルに対応した形式に変換され、S118にてそのフォント情報がフォント情報テーブルに保存されて、処理はS12(図7参照)へ移行する。
【0039】
図7へ戻って、一方、フォント情報を抽出しない場合は(S10:N)、S13にて、フォント情報を新たに作成するか否かが表示部76を介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作部75からの入力に基づいて判断される。フォント情報を作成する場合は(S13:Y)、表示部76,操作部75を介して使用者にフォント情報を作成させる処理がS14にて実行され、処理は前述のS12へ移行する。この場合は、上記アプリケーションにて設定されたフォント等とは異なるフォント等に対応するフォント情報が、バーコードPaに書き込むべき情報とされる。また、フォント情報を作成しない場合は(S13:N)、処理はS13からS12へ直接移行する。この場合、バーコードPaに書き込むべき情報としてはフォント情報が設定されない。
【0040】
上記のようにして処理がS12へ移行すると、次のようにしてバーコードPaに書き込むべきバーコード情報が作成される。図11は、S12の処理を詳細に表すフローチャートである。図11に示すように、この処理では、先ずS120にて、上記フォント情報のデータ量が計算される。なお、フォント情報がバーコードに書き込まれない場合は(S13:N)、フォント情報のデータ量は0として計算される。
【0041】
続くS121では、バーコードPaとして印刷可能なデータ量の範囲内(以下、バーコードPaの容量という)に上記フォント情報が収まるか否かが判断される。そして、収まる場合は(S121:Y)、処理はS122へ移行し、前述のS7により文字コード情報をバーコード化する設定がなされているか否かが判断される。文字コード情報をバーコード化する設定がなされていない場合は(S122:N)、処理はS123へ移行し、上記フォント情報(パスワードが設定されている場合はそのパスワードのデータも含む)をバーコードPaとして表現するためのバーコード情報(例えばコードデータ)が作成されて、処理はS13(図7参照)へ移行する。
【0042】
一方、文字コード情報をバーコード化する設定がなされている場合は(S122:Y)、S124にて、フォント情報のデータ量と文字コード情報のデータ量との和がバーコードPaの容量未満であるか否かが判断される。上記各情報のデータ量の和がバーコードPaの容量以上である場合は(S124:N)、S126にて、容量不足のため文字コード情報をバーコードに含めない旨のメッセージが液晶表示部14b表示され、処理は前述のS123へ移行する。すなわち、上記メッセージを表示した上で(S126)、フォント情報のみ(パスワードが設定されている場合はそのパスワードのデータも含む)に対応するバーコード情報を作成する処理がなされ(S123)、処理はS13(図7参照)へ移行する。
【0043】
また、フォント情報のデータ量と文字コード情報のデータ量との和がバーコードPaの容量未満であった場合は(S124:Y)、S127にて、フォント情報及び文字コード情報(パスワードが設定されている場合はそのパスワードのデータも含む)に対応するバーコード情報が作成され、処理はS13(図7参照)へ移行する。
【0044】
更に、フォント情報のみですらバーコードPaの容量に収まらない場合は(S121:N)、S128にて、容量不足のためフォント情報を含んだバーコードを印刷しない旨のメッセージが液晶表示部14bに表示され、そのまま処理はS13(図7参照)へ移行する。すなわち、この場合は、S12にてバーコード情報が作成されることなく処理はS13へ移行する。また、文字コード情報をバーコード化する設定がなされておらず(S122:N)、かつ、フォント情報が抽出も作成もされていない場合は(S13:N)、バーコード化すべきデータが存在しないので、この場合も、前述のS123ではバーコード情報が作成されることなく処理はS13へ移行する。
【0045】
図7へ戻って、S13では、バーコード情報が作成されているか否かが判断される。前述のS121にて否定判断された場合などのように、バーコード情報が作成されていない場合は(S13:N)、処理は前述のS4へ移行し、上記アプリケーションにて作成された文章に対応する文字コードとフォント情報とを含む印刷データが作成される。従って、この場合は、続くS5にて、その印刷データが多機能装置1へ送信されても、その印刷データにはバーコードPaを印刷するためのデータが含まれない。
【0046】
一方、前述のS123またはS127の処理でバーコード情報が作成されている場合は(S13:Y)、S15にて、そのバーコード情報に基づいてバーコードPaの印刷データが作成される。更に、続くS16では、S4と同様に文章の印刷データが作成され、S17にて、その文章の印刷データにS15で作成されたバーコードPaの印刷データが合成され、処理は前述のS5へ移行する。従って、この場合は、文章の印刷データとバーコードPaの印刷データとを合成した印刷データが、多機能装置1へ送信される(S5)。
【0047】
多機能装置1は、上記印刷データをパソコン70から受信すると、その印刷データに基づいて周知のように印刷を行う。図12は、文章の印刷データとバーコードPaの印刷データとが合成された印刷データ(S17参照)を、多機能装置1が受信した場合の印刷結果を例示する説明図である。図12に例示するように、記録紙P(原稿としての被記録媒体に相当)には、上記各種情報を表すバーコードPaと、上記文章を構成する文字Pbとが印刷される。なお、バーコードPaはQRコードなどの二次元バーコードによって構成されている。また、図12に例示するように、文字Pbは各種フォント,サイズ,書体等によって印刷することができ、そのフォント,サイズ,書体等を表すフォント情報は前述のようにバーコードPaに書き込むことができる。
【0048】
次に、多機能装置1は、このように文章を構成する文字PbとバーコードPaとが印刷された原稿としての記録紙Pを、上記バーコードPaの情報を利用可能な特殊モードでコピー可能に構成されている。図13は、載置用ガラス板16に何らかの原稿が載置された上で、上記特殊モードのコピーが操作ボタン群14aを介して指示された場合の、CPU61の処理を表すフローチャートである。なお、コピーが開始されると、先ず、予め載置用ガラス板16上に載置された原稿がイメージスキャナ装置17を介して読み取られ、RAM63の所定のエリアに記憶される。
【0049】
図13に示すように、処理が開始されると、先ずS30にて、イメージスキャナ装置17を介して読み取られRAM63に記憶されたバーコードPaのデータにパスワードが設定されているか否かが判断される。パスワードが設定されている場合は(S30:Y)、液晶表示部14b,操作ボタン群14aを介して使用者にパスワードを入力させる処理がS31にて実行され、続くS32にて、入力されたパスワードがバーコードPaに書き込まれたパスワードと一致するか否かが判断される。例えば、S31では、図15(A)に例示するような画面が液晶表示部14bに表示され、それに応じてテンキー等から入力されたパスワードが、バーコードPaに設定されたパスワードと一致するか否か判断される(S32)。
【0050】
入力されたパスワードとバーコードPaに設定されたパスワードとが一致しない場合は(S32:N)、処理はそのまま終了し、一致する場合は(S32:Y)、処理は続くS33へ移行する。また、バーコードPaのデータにパスワードが設定されていない場合は(S30:N)、処理はS30からS33へ直接移行する。バーコードPaが印刷されていない一般の原稿が載置用ガラス板16に載置されている場合や、バーコードPaが印刷されていても汚損等により解読不能となっている場合も、同様にS30にて否定判断され、処理はS33へ直接移行する。
【0051】
S33では、予めRAM63に記憶されたバーコードPaから文字コード情報を読み取ることができるか否かが判断される。文字コード情報が読み取り可能な場合は(S33:Y)、S34にてその文字コード情報が抽出され、処理は続くS35へ移行する。一方、文字コード情報の読み取りが不可能な場合は(S33:N)、S36にて次のような文字情報取得処理が実行された後、処理はS35へ移行する。
【0052】
図14は、S36の文字情報取得処理を詳細に表すフローチャートである。なお、以下の説明では、前述の文字コード情報とフォント情報とを総称して文字情報という。図14に示すように、この処理では、先ずS361にて、予めイメージスキャナ装置17を介して読み取られ、RAM63に記憶された文字Pbのイメージデータを既存の文字認識処理(OCR)で処理することにより原稿の文字情報が取得される。なお、上記OCRは、CPU61がROM62に記憶されたプログラムを実行することによってなされる。続くS362では、その文字情報から文字コード情報が取得され、続くS363では、取得した文字情報からフォント情報が取得可能であるか否かが判断される。
【0053】
フォント情報が取得可能な場合は(S363:Y)、それに対応するフォント名のフォントが多機能装置1(プリンタ)のCG62aに内蔵されているか否かが判断される。内蔵されている場合は(S364:Y)、S365にて、取得されたフォント情報を利用する旨のフラグ設定がなされる。続くS366では、上記処理により取得された各情報がRAM63の所定領域に保存されて、処理はS35(図13参照)へ移行する。一方、OCRにより取得された文字情報からフォント情報が取得不可能な場合や(S363:N)、フォント情報が取得可能であってもそのフォント名のフォントが多機能装置1に内蔵されていない場合は(S364:N)、S365におけるフォント情報の利用設定をすることなく、処理は前述のS366へ直接移行する。
【0054】
図13へ戻って、続くS35では、RAM63に記憶されたバーコードPaからフォント情報を読み取ることができるか否かが判断され、フォント情報が読み取り可能な場合は(S35:Y)、S37にてフォント情報が取得される。続くS38では、S37にて取得されたフォント情報に対応するフォント名のフォントのなかに、内蔵されていないフォントがあるか否かが判断される。上記フォント情報に対応するフォント名のフォントが全て内蔵されている場合は(S38:N)、処理はS41へ移行する。S41では、S34またはS36にて取得された文字コード情報と上記フォント情報とを組み合わせてCG63aによる変換を行うことにより、ドットイメージの印刷データが作成される。続くS42では、記録ヘッド4,LFモータ131,CRモータ132に駆動信号が出力されて印字が実行され、処理が終了する。このため、記録紙Pには、図12に例示したような文字Pbがフォントまで同一にして印字される。
【0055】
一方、バーコードPaから抽出されたフォント情報に対応するフォント名のフォントのなかに、多機能装置1に内蔵されていないフォントがある場合は(S38:Y)、S43にて、内蔵されているフォントに置き換えるか否かが液晶表示部14bを介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが判断される。この処理は、例えば、図15(B)に例示するように液晶表示部14bにフォント名を表示することによってなされる。そして、フォントを置き換える場合は(S43:Y)、S44にて、内蔵されているどのフォント名のフォントに置き換えるか、液晶表示部14b及び操作ボタン群14aを介して使用者に選択させる処理が実行され、処理は前述のS41へ移行する。なお、S44の処理は、例えば、図15(C)に例示するような画面を液晶表示部14bに表示することによってなされる。また、フォントを置き換えない場合は(S43:N)、S45にてデフォルトのフォント名のフォントを利用する設定に設定変更がなされ、処理は前述のS41へ移行する。このように、例えば前述の文字Pbを構成する少なくとも一部のフォントが内蔵されていない場合は(S38:Y)、そのフォントを選択されたフォント名のフォントまたはデフォルトのフォント名のフォントに置き換えて印字を行うことができる。
【0056】
また、バーコードPaからフォント情報を読み取ることができない場合は(S35:N)、S46にて、フォント情報が前述のOCRにより取得されているか否か、すなわち、S365における上記設定がなされているか否かが判断される。そして、取得済みの場合は(S46:Y)、処理はそのまま前述のS41へ移行し、利用に設定されているフォント情報と前述の文字コード情報とに基づいて印字がなされる(S42)。
【0057】
一方、フォント情報が取得済みでない場合は(S46:N)、S47にて、印字用フォントを選択するか否かが液晶表示部14bを介して使用者に問い合わされ、いずれが選択されたかが操作ボタン群14aからの入力に基づいて判断される。印字用フォントを選択する場合は(S47:Y)、処理は前述のS44へ移行し、選択しない場合は(S47:N)、処理は前述のS45へ移行する。このように、バーコードPaにフォント情報が書き込まれていない場合や、書き込まれていてもバーコードPaが汚損して解読不能な場合も(共にS35:N)、OCRで取得されたフォントまたは選択されたフォントまたはデフォルトのフォントを利用して印字を行うことができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、バーコードPaからデータとして読み取った、若しくは原稿としての記録紙PからOCRで読み取った文字コード情報及びフォント情報に基づいて印字を行っているので、不鮮明になることなく原稿の文字を複写することができる。また、比較的データ量として小さいフォント情報をバーコードPaに書き込んでおき、文字コード情報は原稿から直接読み取るようにすれば、文字数に限度を設けることなく原稿と全く同一の正確なフォントで印字を行うことができる。なお、フォント情報をバーコードPaに書き込んでおいた場合、OCRによる文字情報取得時(S361)にそのフォント情報に基づいて文字の認識を行ってもよく、この場合、認識精度を一層向上させることができる。
【0059】
更に、本実施の形態では、文字コード情報及びフォント情報の双方を原稿から読み取って、それに基づいて印字を行うことができるので、バーコードPaが原稿に設けられていない場合や、バーコードPaが汚損するなどしてそこから情報を取得できない場合でも、良好に文字Pbを複写することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態において、イメージスキャナ装置17が読み取り手段に、S361の処理が認識手段に、CG62a及びS41の処理が変換手段に、記録ヘッド4,LFモータ131,CRモータ132,及びS42の処理が印刷手段に、S37の処理がフォント情報抽出手段に、それぞれ相当する。
【0061】
[本発明の他の実施の形態]
また、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、パソコン70と多機能装置1とはインターネット経由で接続されてもよい。また、上記実施の形態では、バーコードPaの印刷データと文章の印刷データとを合成して多機能装置1へ送信しているが(S17,S5)、バーコードPaの印刷データと文章の印刷データとは別々に送信してもよい。
【0062】
また、本発明は、レーザプリンタ式の印刷手段を備えた画像形成装置やモノクロの印刷手段を備えた画像形成装置等、各種画像形成装置に適用することができる。そして、印刷手段が両面印刷可能に構成された場合、バーコードPaは、記録紙Pの裏側に印刷されてもよい。更に、本発明における図形コードは、一次元のバーコードなど、二次元バーコード以外の図形コードであってもよい。
【0063】
また更に、上記実施の形態では、バーコードPaの容量不足の場合、メッセージを表示した上で(S126,S128)一部のデータを省略したバーコード情報を作成しているが、S126またはS128にてメッセージを表示した場合、処理をS7まで戻してバーコード化すべき情報を使用者に再選択させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明が適用された多機能装置の構成を表す斜視図である。
【図2】その多機能装置の構成を表す側断面図である。
【図3】画像読取装置を除いた多機能装置の内部構造を表す平面図である。
【図4】その多機能装置の記録ヘッドを下面から見た模式図である。
【図5】その多機能装置のイメージスキャナ装置の内部構造を表す横断面図である。
【図6】その多機能装置の制御系の構成を表すブロック図である。
【図7】上記制御系のパソコン側で実行される処理を表すフローチャートである。
【図8】そのパソコンでの文章作成時の画面表示例を表す説明図である。
【図9】そのパソコンで作成されるフォント情報テーブルを例示する説明図である。
【図10】上記処理のうちのフォント情報抽出処理を表すフローチャートである。
【図11】上記処理のうちのバーコード情報作成処理を表すフローチャートである。
【図12】上記処理による多機能装置側での印刷結果を例示する説明図である。
【図13】上記多機能装置で実行される特殊モードでのコピー処理を表すフローチャートである。
【図14】その処理のうちの文字情報取得処理を表すフローチャートである。
【図15】上記処理における多機能装置の画面表示例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1…多機能装置 4…記録ヘッド 17…イメージスキャナ装置
62a…CG 131…LFモータ 132…CRモータ
P…記録紙 Pa…バーコード Pb…文字

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿としての被記録媒体に印刷された文字を読み取る読み取り手段と、
該読み取り手段の読み取り結果に基づき、その文字を認識する認識手段と、
該認識手段の認識結果を、文字の形状を表す画像データに変換する変換手段と、
該変換手段に変換された画像データに基づき、上記文字を被記録媒体に印刷する印刷手段と、
を備えたことを特徴とする複写機能付画像形成装置。
【請求項2】
上記原稿としての被記録媒体に設けられてその被記録媒体に印刷された上記文字のフォント情報を記憶した図形コードから、上記フォント情報を抽出するフォント情報抽出手段を、
更に備え、
上記変換手段が、上記フォント情報抽出手段に抽出されたフォント情報に基づいて、上記文字を、その文字の形状を表す画像データに変換することを特徴とする請求項1記載の複写機能付画像形成装置。
【請求項3】
上記認識手段は、上記読み取り結果に基づき、その文字を表す文字コードとその文字のフォント情報とを生成し、
上記フォント情報抽出手段によって上記フォント情報が抽出されない場合、上記変換手段が、上記認識手段に生成されたフォント情報に基づいて、上記文字コードを、その文字の形状を表す画像データに変換することを特徴とする請求項2記載の複写機能付画像形成装置。
【請求項4】
上記フォント情報が、文字サイズ、フォントの種類、スタイル、文字色、または文字間隔の、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複写機能付画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−180789(P2007−180789A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375598(P2005−375598)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】