説明

複列転がり軸受

【課題】シールリングを設けなくても、各転動体5、5を設置した軸受空間7の軸方向両端開口部のシール性を確保でき、しかも、このシールリングを設けない分、軸方向寸法を低減できる構造を実現する。
【解決手段】各保持器14、14のリム部15、15の内外両周縁部分に、内輪4の外周面及び外輪2の内周面に向けてそれぞれ突出する状態で、内径側、外径側各鍔部16、17を全周に亙り設ける。そして、これら内径側、外径側各鍔部16、17の内外両周面と、この内外両周面と対向する、上記内輪4の外周面と外輪2の内周面とを近接対向させる。この場合に、これら内径側、外径側各鍔部16、17の内外両周面と上記内輪4の外周面及び外輪2の内周面との間の隙間の大きさti、toを、全周に亙り、軸受空間7の開口部に非接触式のシールリングを設けたと仮定した場合の、このシールリングの先端縁と相手面との間に設定される、シール性能を確保する為に必要とされる隙間と同程度に規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ポンプの如き各種ポンプ等の、各種回転機械装置の回転支持部を構成する、複列アンギュラ型玉軸受、複列深溝型玉軸受、複列円筒ころ軸受、複列円すいころ軸受等の複列転がり軸受の改良に関する。具体的には、シールリングを設けなくても、各転動体を設置した軸受空間の軸方向両端開口部のシール性を確保でき、しかも、このシールリングを設けない分、軸方向寸法を低減できる構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
各種回転機械装置の回転支持部を構成する為の転がり軸受として、図3、4に示す様な複列転がり軸受が、例えば大きなラジアル荷重を支承する必要がある部分や、両方向のアキシアル荷重を支承する必要がある部分、大きな支持剛性を必要とする部分等に使用されている。これら図3、4に示した複列転がり軸受は何れも、内周面に複列の外輪軌道1、1を有する外輪2と、外周面に複列の内輪軌道3、3を有する内輪4と、これら両外輪軌道1、1とこれら両内輪軌道3、3との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体5、5とを備える。又、これら両列の各転動体5、5は、それぞれ保持器6、6により転動自在に保持されている。又、これら各転動体5、5を設置した軸受空間7の軸方向両端開口部を、1対のシールリング8、8により塞いでいる。
【0003】
尚、図3は、接触式のシールリング8、8を設けた構造、即ち、上記各シールリング8、8の径方向内端縁部分を構成する弾性材9、9を、上記内輪4の内周面の軸方向両端部にそれぞれ設けたシール溝10、10に摺接させた構造を示している。又、図4は、非接触式のシールリング8、8(シールドリング)を設けた構造、即ち、上記各シールリング8、8の径方向内端縁を同じくシール溝10、10の端縁に隙間を介して対向させた構造を示している。これら各シールリング8、8は、上記各転動体5、5を設置した軸受空間7からグリースが漏洩したり、この軸受空間7内に塵芥等の異物が外部から進入するのを防止する。
【0004】
又、図示の例の場合には、上記各転動体5、5として玉を用いると共に、背面組み合わせ型の接触角を付与した、複列アンギュラ玉軸受としている。尚、図示は省略するが、複列転がり軸受としては、この様な複列アンギュラ型玉軸受の他、複列深溝型玉軸受、各転動体を円筒ころとした複列円筒ころ軸受、各転動体を円すいころとした複列円すいころ軸受等が挙げられる。何れの場合にも、例えば外輪2をハウジング等の外側部材に内嵌固定すると共に、内輪4を回転軸等の内側部材に回転部材に外嵌固定する事により、この回転部材を上記ハウジングの内径側に支持する(或いは、支持軸の周囲に回転部材を支持する)。
【0005】
上述の図3、4に示した複列転がり軸受の場合は、各転動体5、5を設置した軸受空間7の軸方向両端開口部を1対のシールリング8、8により塞いでいる。この様な構造の場合、これら両シールリング8、8を設ける分だけ、複列転がり軸受の軸方向寸法が大きくなる。即ち、この複列転がり軸受の軸方向両端部で、各外輪軌道1、1及び各内輪軌道3、3からそれぞれ軸方向外側に外れた部分に、上記各シールリング8、8を支持する部分、並びに、これら各シールリング8、8の先端縁を摺接又は近接対向させる部分を設ける分だけ、上記複列転がり軸受の軸方向寸法が大きくなる。
【0006】
この様に軸方向寸法が大きくなる事は、軸方向寸法が限られた部分への組み込み性(組み込みのし易さ)の低下に繋がる他、複列転がり軸受を組み込む機械装置の小型化の妨げになる可能性があり、好ましくない。又、この様に軸方向寸法の限られた部分に組み込む場合に、上記各転動体5、5の大きさ(玉径、ころ軸受であれば軸方向寸法)を小さくせざるを得ず、その分、定格荷重を確保しにくくなると共に、これら各転動体5、5の耐久性(寿命)を確保しにくくなる可能性がある。
【0007】
一方、特許文献1には、図5に示す様に、単列の転がり軸受11に関し、軸方向両端開口部のうちの一方(図5の左方)の開口部のみを、非接接触式のシールリング8により塞いだ構造が記載されている。この特許文献1に記載された構造の場合には、軸方向両端開口部のうちの他方(図5の右方)の開口部を、シールリングにより塞がずに、保持器6aのリム部12の内外両周面に設けた1対の鍔部13、13の周面を、外輪2aの内周面及び内輪4aの外周面に近接対向させている。そして、この様な鍔部13、13の存在に基づき、各転動体5、5を設置した軸受空間7aからグリースが上記他方の開口部を通じて流出しない様にしている。
【0008】
但し、この様な特許文献1に記載された構造の場合は、図5に示した単列の転がり軸受11を用いて複列の組み合わせ転がり軸受を構成する場合に、シールリングにより塞がれていない他方の開口部同士を互いに付き合わせた状態で組み合わせる。この為、この様に複列の組み合わせ転がり軸受を構成した状態では、上述の図3、4に示した複列転がり軸受と同様に、各転動体5、5を設置した軸受空間7aの軸方向両端開口部が、1対のシールリング8により塞がれる。従って、この様な特許文献1に記載された構造の場合にも、複列の転がり軸受を構成した場合に、上述の図3、4に示した構造と同様に軸方向寸法が大きくなり、上述した様な不都合を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、シールリングを設けなくても、各転動体を設置した軸受空間の軸方向両端開口部のシール性を確保でき、しかも、このシールリングを設けない分、軸方向寸法を低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の複列転がり軸受(例えば、複列アンギュラ型玉軸受、複列深溝型玉軸受、複列円筒ころ軸受、複列円すいころ軸受等)は、外輪と、内輪と、複数個の転動体(玉、円筒ころ、円すいころ等)と、保持器とを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有する。
又、上記内輪は、外周面に複列の内輪軌道を有する。
又、上記各転動体は、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、上記保持器は、上記両列の各転動体を転動自在に保持する。
【0011】
特に、本発明の複列転がり軸受に於いては、上記各転動体を設置した軸受空間の軸方向両端開口部をシールリングにより塞がない。この様なシールリングにより塞がない代わりに、上記保持器を、この軸受空間の軸方向両端開口部側にそれぞれ円環状のリム部を設けたものとする。又、これと共に、これら両リム部の内外両周縁部分(内周面、外周面、側面)と、この内外両周縁部分と対向する、上記内輪及び外輪の相手面(外周面、内周面、側面)との間の隙間の大きさを、全周に亙り、上記軸受空間の開口部に非接触式のシールリングを設けたと仮定した場合の、このシールリングの先端縁と相手面との間に設定される、シール性能を確保する為に必要とされる隙間の大きさと同程度に規制する。
【0012】
上述の様な本発明の複列転がり軸受を実施する場合により好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、上記両リム部の内外両周縁部分に、上記内輪の外周面及び上記外輪の内周面に向けてそれぞれ突出する状態で内径側、外径側各鍔部を全周に亙り設ける。そして、これら内径側、外径側各鍔部の内外両周縁部分(内周面、外周面、側面)と、上記内輪及び外輪の相手面(外周面、内周面、側面)との隙間の大きさを規制する。
又、請求項3に記載した発明の様に、上記外輪の相手面を、この外輪の内周面、又は、この外輪に設けられた、この外輪の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面(例えば、外輪の内周面に設けた段部の側面、外輪の軸方向外端面)とする。又、上記内輪の相手面を、この内輪の外周面、又は、この内輪に設けられた、この内輪の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面(例えば、内輪の外周面に設けた段部の側面、内輪の軸方向外端面)とする。
【発明の効果】
【0013】
上述の様に構成する本発明の複列転がり軸受によれば、シールリングを設けなくても、各転動体を設置した軸受空間の軸方向両端開口部のシール性を確保でき、しかも、このシールリングを設けない分、軸方向寸法を低減できる。
即ち、上記軸受空間の軸方向両端部に位置する、保持器の各リム部の内外両周縁部分と、この内外両周縁部分と対向する、内輪及び外輪の相手面とが、非接触式のシールリングと同程度の隙間を介して対向する。この為、この保持器の各リム部の内外両周縁部分の働きにより、上記軸受空間の軸方向両端開口部からグリースが漏洩したり、この軸受空間内に塵芥等の異物が外部から進入するのを防止できる。そして、この軸受空間の軸方向両端開口部をシールリングにより塞がなくて済む分、上記内輪及び外輪の軸方向両端部で、内輪軌道及び外輪軌道からそれぞれ軸方向外側に外れた部分の寸法を小さくでき、これら内輪及び外輪の軸方向全体としての寸法も小さくできる。この結果、シール機能を備えた複列転がり軸受を、軸方向寸法が限られた部分に組み込み易くでき、この複列転がり軸受を組み込む各種機械装置の小型化を図れる。又、これと共に、軸方向寸法が限られた部分に組み込む場合でも、より大きな寸法の転動体を備えた複列転がり軸受を組み込む事ができ、その分、定格荷重や耐久性の確保(長寿命化)を図り易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】同第2例を示す部分断面図。
【図3】従来構造の第1例を示す断面図。
【図4】同第2例を示す断面図。
【図5】単列の転がり軸受に関する従来構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、シールリングを設けずに、軸受空間7の軸方向両端開口部をシールすべく、保持器14、14の形状等を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図3、4に示した従来構造と同様であるから、同等部分に関する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0016】
本例の場合には、各転動体5、5を設置した軸受空間7の軸方向両端開口部を、前述の図3、4に示した従来構造の様なシールリング8、8(図3、4)で塞いでいない。本例の場合には、この様なシールリング8、8により塞がない(シールリング8、8を設けない)代わりに、上記各転動体5、5をそれぞれの列毎に回転自在に保持する、1対の保持器14、14のリム部15、15(に設けた内径側、外径側各鍔部16、17)の内外両周縁部分を、内輪4の外周面の軸方向両端部、並びに、外輪2の内周面の軸方向両端部に、それぞれ近接対向させている。
【0017】
即ち、本例の場合は、上記各保持器14、14を、円環状のリム部15、15と、このリム部15、15の片側面の円周方向等間隔の複数個所から、それぞれ軸方向に延出する状態で設けた柱部18、18とを備えた、冠型保持器としている。上記各転動体5、5は、上記リム部8、8と円周方向に隣り合う1対の柱部18、18とにより周囲を囲まれた各ポケット19、19に、転動自在に保持されている。そして、本例の場合には、上記各保持器14、14を、上記各リム部15、15が上記軸受空間7の軸方向両端開口部側にそれぞれ位置する状態で組み込んでいる。
【0018】
又、本例の場合には、上記各リム部15、15の内外両周縁に、上記内輪4の外周面及び外輪2の内周面に向けてそれぞれ突出する状態で、内径側、外径側各鍔部16、17を、全周に亙り設けている。そして、これら内径側、外径側各鍔部16、17の内外両周面と、この内外両周面と対向する、上記内輪4及び外輪2の相手面、即ち、これら内輪4の外周面と外輪2の内周面とを近接対向させている。より具体的には、これら内径側、外径側各鍔部16、17の内外両周面と上記内輪4の外周面及び外輪2の内周面の隙間の大きさti、toのそれぞれを、全周に亙り、上記軸受空間7の開口部に非接触式のシールリングを設けたと仮定した場合の、このシールリングの先端縁と相手面との間に設定される、シール性能を確保する為に必要とされる隙間の大きさと同程度{例えば、呼び番号が5305〜5313である複列アンギュラ玉軸受(ピッチ円直径が46.5〜105mm、内輪の内径が25〜65mm)の場合で、内輪の内径の0.6〜1.2%}に規制している。例えば、上記隙間の大きさti、toを、複列転がり軸受のサイズに応じて、前述の図4に示した、シールリング付複列転がり軸受の、非接触式のシールリング8、8(シールドリング)の先端部とシール溝10、10(図4参照)の端縁との隙間の大きさと同程度とする。
【0019】
尚、上記各隙間の大きさti、toは、上記各保持器14、14の案内を転動体5、5により行う{転動体(玉)案内とする}場合には、これら各隙間の大きさti、toをほぼ同じ(ti≒to)にする。この場合には、これら各隙間の大きさti、toの両方を、内輪の内径の0.6〜1.2%の範囲内に収める。この様な転動体案内の構造を採用する場合には、上記各保持器14、14のポケット19、19の内面と上記各転動体と5、5の転動面との間のポケット隙間(特にラジアル方向隙間)の大きさを、これら各ポケット隙間内への潤滑剤の取り込みに支障をきたさない範囲で、できるだけ小さくして、上記各保持器14、14のラジアル方向の変位を抑える。
【0020】
一方、上記各保持器14、14を軌道輪案内とする場合には、上記各隙間の大きさti、toを、次の様に規制する。即ち、これら各保持器14、14の案内を内輪4により行う{内輪案内とする}場合には、この内輪4の外周面と上記各内径側鍔部16、16の内周面との隙間の大きさtiを、上記外輪2の内周面と上記各外径側鍔部17、17の外周面との隙間の大きさtoよりも小さく(ti<to)する。又、これら各保持器14、14の案内を外輪2により行う{外輪案内とする}場合には、この外輪2の内周面と上記各外径側鍔部17、17の外周面との隙間の大きさtoを、上記内輪4の外周面と上記各内径側鍔部16、16の内周面との隙間の大きさtiよりも小さく(to<ti)する。この様な軌道輪案内の構造を採用する場合でも、大きい方の隙間の大きさto(ti)を、内輪の内径の0.6〜1.2%の範囲内に収める。軌道輪案内の為に、上記内輪4の内周面又は上記外輪2の内周面に近接している部分の隙間は、内輪の内径の0.6%未満であっても良い。
【0021】
上述の様に構成する本例の場合には、シールリングを設けなくても、各転動体5、5を設置した軸受空間7の軸方向両端開口部のシール性を確保でき、しかも、このシールリングを設けない分、軸方向寸法を低減できる。
即ち、上述の様に、上記軸受空間7の軸方向両端部に位置する内径側、外径側各鍔部16、17の内外両周面と、これら両内外両周面と対向する、内輪4及び外輪2の外内両周面とが、非接触式のシールリングと同程度の大きさの隙間を介して対向している。この為、上記内径側、外径側各鍔部16、17の存在に基づいて、上記軸受空間7の軸方向両端開口部からグリースが漏洩したり、この軸受空間7内に塵芥等の異物が外部から進入するのを防止できる。
【0022】
そして、この軸受空間7の軸方向両端開口部をシールリングにより塞がなくて済む分、上記内輪4及び外輪2の軸方向両端部で、内輪軌道3及び外輪軌道1からそれぞれ軸方向外側に外れた部分の寸法を小さくでき、これら内輪4及び外輪2の軸方向全体としての寸法も小さくできる。この結果、シール機能を備えた複列転がり軸受を、軸方向寸法が限られた部分に組み込み易くでき、この複列転がり軸受を組み込む各種機械装置の小型化を図れる。又、これと共に、軸方向寸法が限られた部分に組み込む場合でも、より大きな寸法の転動体5、5を備えた複列転がり軸受を組み込む事ができ、その分定格荷重や耐久性の確保(長寿命化)を図り易くできる。
【0023】
[実施の形態の第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、内輪4の外周面の軸方向両端部に、この外周面から径方向内方に凹入する状態で、それぞれ内径側段部20、20を設けている。又、外輪2の内周面の軸方向両端部に、この内周面から径方向外方に凹入する状態で、それぞれ外径側段部21、21を設けている。そして、各保持器14a、14aのリム部15a、15aに設けた内径側、外径側各鍔部16a、17aの側面を、これら各側面に対向する、上記内径側、外径側各段部20、21の側面(内輪4及び外輪2の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面)に、全周に亙り近接対向させている。本例の場合には、これら各側面同士の隙間の大きさti、toを、軸受空間7の開口部に非接触式のシールリングを設けたと仮定した場合の、このシールリングの先端縁と相手面との間に設定される、シール性能を確保する為に必要とされる隙間と同程度(例えば、呼び番号が5305〜5313である複列アンギュラ玉軸受の場合で、内輪の内径の0.6〜1.2%)に規制している。本例の場合には、上記各側面同士が摺れ合わない様に(ti、toが消滅しない様に)、上記各保持器14a、14aのポケット隙間(特にアキシアル隙間)を小さく抑える。
【0024】
尚、本例の場合には、上述した実施の形態の第1例の構造に比べ、側面同士が対向する部分の面積を確保し易くでき、その分(対向面積を大きくできる分)、隙間の大きさti、toを大きくしても、シール性能を確保し易くできる(隙間の大きさti、toが大きくても同じシール性能を確保できる)。又、本例の場合には、上記内径側、外径側各段部20、21の側面と上記内径側、外径側各鍔部16a、16bの側面との隙間の大きさti、toのみを、上述の様に非接触式のシールリングの隙間と同程度に規制しているが、上記内径側、外径側各段部20、21の外周面及び内周面と上記内径側、外径側各鍔部16a、16bの外周面及び内周面との間の隙間の大きさTi、Toも同様に規制する事もできる。
その他の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0025】
尚、図示は省略するが、上記内輪4及び外輪2に上述の様な内径側、外径側各段部20、21を設けずに、これら内輪4及び外輪2の軸方向両端部から軸方向外側に保持器のリム部を突出させると共に、この突出させたリム部(の内径側、外径側各鍔部)の側面を、上記内輪4及び外輪2の軸方向両端面にそれぞれ近接対向させる事もできる。又、保持器14、14aの型式に関しては、図1、2にそれぞれ示した様な冠型のものに限定されず、軸方向両端部にそれぞれリム部を有する(1対のリム部を各柱部で連結させた)籠型のもの(籠型保持器)とする事もできる。この場合には、軸受空間7の軸方向両端開口部側に位置する各リム部(の内径側、外径側各鍔部)の内外周縁を、内輪4及び外輪2に近接対向させる。
【0026】
又、図1、2には、各転動体5、5の各列毎にそれぞれ保持器14、14aを設けた(1対の保持器14、14aを設けた)構造を示したが、両列の転動体5、5を1個の保持器により保持する事もできる。この場合には、軸方向両端部に設けたリム部(の内径側、外径側各鍔部)の内外両周縁を、内輪4及び外輪2の相手面にそれぞれ近接対向させる。又、互いに近接対向させる事によりシールとしての役割を持たせる各面(内周面、外周面、側面)を、前述の実施の形態の第1例の場合には、内輪4及び外輪2の中心軸と平行な周面とし、同じく第2例の場合には、内輪4及び外輪2の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面としたが、これらに限定されるものではない。必要なシール性能等を確保できるのであれば、上記各面を中心軸に対し傾斜したもの(中心軸とのなす角が例えば45度、60度等の面)とする事もできる。
【符号の説明】
【0027】
1 外輪軌道
2、2a 外輪
3 内輪軌道
4、4a 内輪
5 転動体
6、6a 保持器
7、7a 軸受空間
8 シールリング
9 弾性材
10 シール溝
11 単列の転がり軸受
12 リム部
13 鍔部
14、14a 保持器
15、15a リム部
16、16a 内径側鍔部
17、17a 外径側鍔部
18 柱部
19 ポケット
20 内径側段部
21 外径側段部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2002−235751号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有する内輪と、これら両外輪軌道とこれら両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体と、これら両列の各転動体を転動自在に保持する保持器とを備えた
複列転がり軸受に於いて、
上記各転動体を設置した軸受空間の軸方向両端開口部をシールリングにより塞がずに、上記保持器を、この軸受空間の軸方向両端開口部側にそれぞれ円環状のリム部を設けたものとすると共に、これら両リム部の内外両周縁部分と、この内外両周縁部分と対向する、上記内輪及び外輪の相手面との間の隙間の大きさを、全周に亙り、上記軸受空間の開口部に非接触式のシールリングを設けたと仮定した場合の、このシールリングの先端縁と相手面との間に設定される、シール性能を確保する為に必要とされる隙間の大きさと同程度に規制した
事を特徴とする複列転がり軸受。
【請求項2】
両リム部の内外両周縁部分に、内輪の外周面及び外輪の内周面に向けてそれぞれ突出する状態で内径側、外径側各鍔部を全周に亙り設け、これら内径側、外径側各鍔部の内外両周縁部分と上記内輪及び外輪の相手面との間の隙間の大きさを規制した、請求項1に記載した複列転がり軸受。
【請求項3】
外輪の相手面が、この外輪の内周面、又は、この外輪に設けられた、この外輪の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面であり、内輪の相手面が、この内輪の外周面、又は、この内輪に設けられた、この内輪の中心軸に対し直交する仮想平面に平行な側面である、請求項1、2のうちの何れか1項に記載した複列転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−144899(P2011−144899A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7117(P2010−7117)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】