説明

複合ろ材

複合ろ材構造体は、例示の実施形態において、複数の繊維から、スパンボンド法により形成された合成不織布を含むベース基材を含む。ベース基材は、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有する。ナノ繊維層は、ベース基材の片側に堆積されている。複合ろ材構造体は、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約70%の最小ろ過効率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して、複合不織ろ材、特に、少なくとも1つの表面に適用されたナノ繊維ベース層を有するスパンボンド不織ろ材に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のろ材複合構成物の中には、基材を製造するために湿式製紙プロセスが、およびろ材基材の片側または両側に軽量ナノ繊維コーティングを堆積するためにエレクトロスパン技術が組み込まれているものがある。典型的に、ろ材基材は、(g/m2)、ナノ繊維層の坪量は、0.1(g/m2)以下、坪量は1平方メートル当たり100〜120グラムである。
【0003】
軽量ナノ繊維層は、高い機械応力にかけられたときに損傷を受けやすいことが知られている。これは、特に、ナノ繊維層は、500ナノメートル(nm)未満、より典型的には、100nmの直径の繊維から形成されているからである。ナノ繊維が、極性引力に依拠する従来のエレクトロスパン繊維の場合ナノ繊維とベースろ材との間の引力結合が比較的弱いことによりろ材から脱落する「脱落」問題があることは知られている。また、公知のエレクトロスパンナノ繊維層は、構造が二次元すなわち厚さにおいて単一の繊維層であり、ナノ繊維層が裂けたり、壊れたりすると、塵がベースろ材基材に容易に入り込む可能性がある。ナノ繊維層が傷つくと、塵がベースろ材に入り込み、フィルタの操作圧力降下の増大の原因となる。さらに、公知のろ材基材は機械応力制限もあり、塵が多いと変形する傾向がある。
【0004】
これらの公知のろ材複合構造体は、発電ガスタービンの入口空気をろ過するのに用いられると、塵の微粒子が、フィルタの操作寿命にわたってフィルタに入り込む可能性がある。典型的に、この公知のろ材タイプは、EN1822(1998)試験手順に従って、公知の操作流量で試験すると、7.0mmH2Oより大きい圧力降下および300未満の品質係数で0.4μmの粒子を約55%捕捉するという、新たな、またはクリーンな電気的に中和された操作効率を与える。この低い初期効率のために、24,000時間の操作寿命にわたって、15〜20ポンドもの塵が公知のろ材に入り込む可能性があることが知られている。タービンブレードが、長期にわたって塵に露出されると、タービンブレードの深刻で最悪な汚染および腐食を生じる恐れがある。タービンブレードをクリーニングする現在の手順では、ブレードを水で洗って清浄にするために周期的な間隔でタービンをオフラインにする必要がある。タービンのダウンタイムは高くつく。タービンを操作しないということは、発電が抑制されるからである。タービンブレードを清浄にするためのタービンダウンタイムおよび/または損傷したブレードの交換を減じる、または排除するために、同様または低減された圧力降下で、公知のろ材よりも高効率のろ材を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、複合ろ材構造体が提供される。複合ろ材構造体は、複数の繊維から、スパンボンド法により形成された合成不織布を含むベース基材を含む。ベース基材は、EN−1822(1998)に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有する。ナノ繊維層が、ベース基材の片側に堆積されている。複合ろ材構造体のEN1822(1998)に従って測定される最小ろ過効率は、約70%である。
【0006】
他の態様において、フィルタ要素が提供される。フィルタ要素は、第1のエンドキャップ、第2のエンドキャップおよび複合ろ材構造体を含む。複合ろ材構造体は、スパンボンド法により、複数の繊維から形成された合成不織布を含むベース基材を含み、ベース基材は、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有する。ナノ繊維層が、ベース基材の片側に堆積されている。複合ろ材構造体のEN−1822(1998)に従って測定される最小ろ過効率は、約70%である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】複合ろ材の例示の実施形態の断面図である。
【図2】図1に示す繊維の顕微鏡写真である。
【図3】図1に示すベースろ材基材の顕微鏡写真である。
【図4】図1に示すベースろ材基材のボンドパターンの上面図である。
【図5】図1に示すろ材を含むフィルタカートリッジの側面図である。
【図6】図4に示すフィルタカートリッジを含むフィルタ組立体の斜視図である。
【図7】例示の実施形態による、様々な坪量でのベースろ材基材の0.3ミクロンでのろ過効率のバーグラフである。
【図8】比較のナノ繊維層のあるベースろ材基材とナノ繊維層のないベースろ材基材に比べた、例示の実施形態によるナノ繊維層のあるベースろ材基材とナノ繊維層のないベースろ材基材の0.3ミクロンでのろ過効率のバーグラフである。
【図9】比較のナノ繊維層のあるベースろ材基材とナノ繊維層のないベースろ材基材に比べた、例示の態様によるナノ繊維層のあるベースろ材基材とナノ繊維層のないベースろ材基材に対する圧力降下のバーグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
フィルタ組立体の複合ろ材について以下に詳述する。例示の実施形態において、複合ろ材は、独特のスパンボンド法により繊維の2層から形成された合成不織布のろ材基材を含む。ナノ繊維層が、ろ材基材の少なくとも片側に堆積されている。複合ろ材は、欧州規格EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、0.4μmの粒子の捕捉を保つ約70%以上の初期ろ過効率を与え、これは、公知のろ材に比べて、性能が約15%高い。また、複合ろ材は、公知のろ材より30%超低い圧力降下で、70%の効率を与える。ベース基材は、EN1822(1998)に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有する。
【0009】
複合ろ材は、公知のろ材よりも耐久性があり、低圧力降下の積層である。ろ過および逆洗操作中、ろ材にかかる力によるろ材の撓みが少ないからである。複合ろ材の品質係数(Qc)は、約370より大きく、好ましい実施形態においては、約440より大きい。また、複合ろ材は、EN−1822(1998)に従って測定すると、約4.0mm(水)未満の抵抗性(または圧力降下)を有し得るし、ベース基材は、EN−1822(1998)に従って測定すると、約2.5mm(水)未満の抵抗性を有する。さらに、ナノ繊維膜層は、公知のろ材よりも大きな坪量を有し、逆パルスクリーニングで、ろ材を、公知のろ材よりも効率的にクリーニングすることが可能となる。ナノ繊維層の大きな坪量によって、気流を実質的に制限したり、圧力降下を増大させたりすることなく、高効率および微粒子捕捉が可能となる広い蛇行路を有する耐久性のある三次元表面ろ過層が得られる。
【0010】
「品質係数(Qf)」とは、式Qf−25000・log(P/100)/Apにより定義されるパラメータを意味し、式中、「P」=%での粒子の透過、「Ap」=パスカルでのろ材の圧力降下。
【0011】
「抵抗」とは、EN−1822(1998)に記載された試験方法を用いて測定される抵抗(圧力降下)を意味する。
【0012】
図面を参照すると、図1は、ろ材10の例示の実施形態の断面図である。ろ材10は、第1の側14と第2の側16を有するベースろ材基材12を含む。ナノ繊維層20が、ろ材基材の第1の側14に堆積されている。他の実施形態において、ナノ繊維層20が、第2の側16に堆積され、他の実施形態において、ナノ繊維層20が、第1および第2の側14および16のそれぞれに堆積されている。
【0013】
ろ材基材12は、スパンボンド法を用いて、合成繊維から形成される不織布である。不織布は、二重繊維断面形状を含む。好適な二重繊維層断面は、円形構造またはトリローバル構造を有する繊維形状を有することができる。図2を参照するとまた、例示の実施形態において、二重繊維断面30は、円柱形繊維32の層およびトリローバル形繊維33の層を有する。繊維32および33は、ジェットを通して、不規則三次元ウェブへと均一に堆積された複数の連続繊維へとメルトスパンされている。次に、ウェブを加熱して、エンボスカレンダ加工し、図3に示すとおり、ウェブを圧密スパンボンド布36へと熱ボンドする。カレンダロールエンボス加工パターンの接触による熱によって、熱可塑性繊維30が軟化または溶融して、カレンダロールエンボス加工パターンの接触点で、不織繊維を一緒に結合する。繊維30の少なくとも軟化または溶融が生じるような温度を選択する。一実施形態において、温度は、約90℃〜約240℃である。繊維の所望の連結は、冷却後、繊維32および33を溶融および再圧密することによりなされる。
【0014】
円形繊維32は、約18ミクロン〜約23ミクロンの直径を有し、トリローバル繊維33は、約22〜30ミクロンの2点間の断面距離を有する。
【0015】
図4を参照すると、ベースろ材12のボンドパターン40によって、ベースろ材12に許容される耐久性が得られ、繊維をよりろ過に利用でき、ろ過効率が増大する。ボンドパターン40は、ベースろ材12に広がる結合域の複数の平行な不連続ライン42を含む。結合域の平行な不連続ライン42は、不連続ライン42の結合域のない44位置で、近接する不連続ライン42の結合域46と並ぶように、互いにオフセットである。例示の実施形態において、ベースろ材12の坪量は、約100g/m2〜約330g/m2、他の実施形態において、約100g/m2〜約220g/m2である。
【0016】
任意の好適な合成繊維を用いて、ろ材基材12の不織布を作製することができる。円形32およびトリローバル33繊維について好適な材料としては、これらに限られるものではないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミドおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
例示の実施形態において、ナノ繊維層20は、ポリマー溶液を、スピニングノズルに供給し、高圧をスピニングノズルに適用し、スピニングノズルの下端へ圧縮空気を注入しながら、スピニングノズルをとおして、ポリマー溶液を放出することを含むエレクトロブローン紡糸法により形成される。適用される高電圧は、約1kV〜約300kVの範囲である。ナノ繊維を形成するエレクトロブローン紡糸法および用いる独特な装置は、米国特許出願公開第2005/00677332号明細書に詳細に記載されている。エレクトロブローン紡糸法は、公知のろ材の公知のナノ繊維ろ過層より厚いナノ繊維の耐久性のある三次元ろ過層を提供する。例示の実施形態において、ナノ繊維層20の坪量は、約0.6g/m2〜約20g/m2、他の実施形態においては、約2g/m2〜約20g/m2、他の実施形態においては、約5g/m2〜約10g/m2、他の実施形態においては、約1.5g/m2〜約2.5g/m2である。ナノ繊維層20のナノ繊維の平均直径は、約500nm以下である。
【0018】
変形実施形態において、ナノ繊維層20は、電気紡糸法、遠心紡糸法またはメルトブローンにより形成してよい。古典的な電気紡糸法は、米国特許第4,127,706号明細書に詳細が記載されている技術である。高圧を溶液中のポリマーに適用して、ナノ繊維および不織マットを作製する。しかしながら、電気紡糸法全体の処理量は、重い坪量のウェブを形成しようとするには、低すぎる。遠心紡糸法は、少なくとも1つの溶媒に溶解した少なくとも1つのポリマーを有するスピニング溶液を、回転する円錐ノズルを有する回転スプレーに供給することを含む繊維形成プロセスである。ノズルは、凹部内面と、前部表面放出端を有する。スピニング溶液は、凹部内面に沿ってロータリスプレーを移動し、スピニング溶液を、ノズルの放出端の前部表面に分配する。個別の繊維状流れが、スピニング溶液から形成され、溶媒が揮発して、電場あり、または電場なしで、ポリマー繊維を生成する。成形流体はノズルの周囲を流れて、スピニング溶液をロータリスプレーから離れる方向に指向する。繊維は、コレクタに集められて、ナノ繊維ウェブを形成する。さらに、メルトブローンについては、米国特許第6,520,425号明細書に詳細が記載されている。
【0019】
エレクトロブローン紡糸法によりナノ繊維を形成するのに好適なポリマーは、熱可塑性ポリマーに制限されず、熱硬化性ポリマーも含まれる。好適なポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ポリイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマーおよびこれらの混合物が挙げられる。また、架橋および非架橋形態で、様々な程度(87%〜99.5%)の加水分解のポリ(塩化ビニル)、ポリメチレンメタクリレート(およびその他アクリル樹脂)、ポリスチレンおよびそのコポリマー(ABAタイプのブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコールの一般的な部類に含まれる材料、そのコポリマーまたは誘導体化合物を用いてもよい。ポリアミド縮合ポリマーのある好適な部類は、ナイロン材料、例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10等である。ポリマー溶液は、選択したポリマーを溶解する溶剤を選択することにより調製される。ポリマー溶液は、添加剤、例えば、可塑剤、紫外線安定剤、架橋剤、硬化剤、反応開始剤等と混合することができる。ポリマーの溶解は、何らかの具体的な温度範囲を必要としないであろうけれども、溶解反応を補助するのに加熱が必要なことがある。
【0020】
繊維ポリマーのTgを減じるために、可塑剤を、上述した様々なポリマーに添加すると有利とすることができる。好適な可塑剤は、ポリマーに応じて、かつ、ナノ繊維層の特定の最終用途に応じて異なる。例えば、ナイロンポリマーは、水、または電気紡糸法またはエレクトロブローン紡糸法から残った残渣溶剤によっても可塑化することができる。ポリマーTgを下げるのに有用となり得るその他可塑剤としては、これらに限られるものではないが、脂肪族グリコール、芳香族スルファノミド、フタレートエステル、これらに限られるものではないが、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジドデカニルフタレートおよびジフェニルフタレート等が挙げられる。
【0021】
図5は、ろ材10から形成されたフィルタ要素50の側面図である。例示の実施形態において、ろ材10は、複数のプリーツ52を含む。フィルタ要素50は、第1のエンドキャップ54と、対向する第2のエンドキャップ56を含み、ろ材10は、エンドキャップ54と56の間に延在している。フィルタ要素50は、内側管58(図6に図示)により管形を有している。フィルタ要素50は、円柱形状であるが、図6に示すような円錐とすることもできる。フィルタ要素50はまた、ろ材10用のフィルタ要素50および/またはサポートの構造上の完全性を与えるために、内側および/または外側サポートライナも含むことができる。
【0022】
図6は、端と端が、管シート62に対で装着された複数のフィルタ要素50を含むフィルタ組立体60の斜視図である。管シート62は、フィルタ組立体60の汚れた空気側を清浄な空気側から分離する。フィルタ要素50をパルスエアでクリーニングするクリーニングシステム64は、吸気管68に装着された複数のエアノズル66を含む。フィルタ要素50の内部管58に指向された圧縮空気のパルスを用いて、集めたごみや塵をフィルタ要素50からクリーニングする。
【0023】
様々な坪量を有するベースろ材基材12試験試料の平シートを、EN1822(1998)試験方法による平シート分別効率試験で、比較のベースろ材基材と比較した。空気含有DENS粒子を、約5.3cm/sの流量で、各試験試料に指向させた。図7に、スパンボンドベースろ材12の比較試験および改善されたろ過効率性能のグラフ図を示す。バーAは、165g/m2の坪量でのベース基材12を表わし、バーBは、230g/m2の坪量での比較のベース基材を表わす。バーCは、130g/m2の坪量の比較のベースろ材基材を表わす。ベースろ材基材は、ナノ繊維層を含んでいなかった。ベースろ材基材12は、0.3ミクロンの粒子サイズで5.3cm/sで試験した際、比較のベースよりも効率が高い。
【0024】
ベースろ材基材12およびナノ繊維層20を含むベースろ材基材12の平シートを、EN1822(1998)試験方法による平シート分別効率試験で、比較のナノ繊維層のあるベースろ材基材、またはナノ繊維層のないベースろ材基材と比較した。空気を含有する0.3ミクロンのDEHS粒子を、約5.3cm/sの流量で、各試験試料に指向させた。図8に、比較試験のグラフ図を示す。バーAは、165g/m2の坪量でのベースろ材基材12を表わし、バーBは、ナノ繊維層20を含む、165g/m2の坪量でのベースろ材基材12を表わす。バーCは、比較のベースろ材基材を表わし、バーDは、比較のナノ繊維層を含むベースろ材基材を表わす。ナノ繊維層20のあるベースろ材基材12、およびナノ繊維層20のないベースろ材基材12は、比較のナノ繊維層のあるベース基材、およびナノ繊維層のないベース基材よりも効率が高い。
【0025】
ベースろ材基材12およびナノ繊維層20を含むベースろ材基材12の平シートを、EN1822(1998)試験方法による平シート圧力降下試験で、比較のナノ繊維層のあるベースろ材基材、またはナノ繊維層のないベースろ材基材と比較した。空気を含有するDENS粒子を、約5.3cm/sの流量で、各試験試料に指向させた。図9に、比較試験のグラフ図を示す。バーAは、比較のベースろ材基材を表わし、バーBは、比較のナノ繊維層を含むベースろ材基材12を表わす。バーCは、165g/m2の坪量でのベースろ材基材12を表わし、バーDは、ナノ繊維層20を含む165g/m2の坪量でのベースろ材基材を表わす。ナノ繊維層20のあるベースろ材基材12、およびナノ繊維層20のないベースろ材基材12は、比較のナノ繊維層のあるベース基材、および比較のナノ繊維層のないベース基材よりも圧力降下が低い。
【0026】
ろ材10から形成される上述のフィルタ要素50は、ほとんどあらゆる用途において気流をろ過する、例えば、ガスタービン入口空気をろ過するのに用いることができる。ろ材10の独特な構造は、ろ過および逆洗操作中、ろ材にかかる力によるろ材の撓みが少ないため、公知のろ材よりも耐久性があり、比較的低い圧力降下蓄積となる。フィルタ要素50は、公知のフィルタ要素の約50〜55%の効率に比べて、ほとんど透過する粒子サイズのエアロゾルまたは塵(約0.3〜約0.4ミクロン)の捕捉が約70%より大きい平均効率をもたらすことができる。また、ナノ繊維層20は、公知のろ材よりも高い坪量を有し、公知のろ材よりも、逆パルスクリーニングで、ろ材10を、より効率的にクリーニングすることができる。さらに、ナノ繊維層20の坪量が高いと、気流を制限したり、圧力降下を増大させることなく、高効率の微粒子捕捉を可能とする広い蛇行路を有する耐久性のある三次元表面ろ過層が与えられる。
【実施例】
【0027】
実施例1および2、比較例3〜7の例のろ材は、ろ材10の実施形態の、公知のろ材との比較を示すものである。効率、抵抗および品質係数を、実施例1および2、比較例3〜7の各ろ材について測定する。効率は、EN1822(1998)試験手順に従って測定し、抵抗は、EN1822(1998)に従って測定し、品質係数Qfは、上述したとおりにして計算した。
【0028】
実施例1は、円形およびトリローバル繊維を含むスパンボンドポリエステル二重層ベースろ材基材であり、実施例2は、実施例1のベースろ材基材とエレクトロブローン紡糸法により形成された2g/m2のナノ繊維層との組合せである。比較例3は、公知の乾式ポリエステルベースろ材基材であり、比較例4は、比較例3の公知の乾式ポリエステルベースろ材基材と2g/m2のナノ繊維層との組合せである。比較例5は、湿式合成紙と<0.5g/m2のナノ繊維層との組合せである。比較例6は、湿式合成紙であり、比較例7は、例6の湿式合成紙と20g/m2のメルトブローン繊維層との組合せである。実施例の結果を以下の表Iに示す。実施例2を、比較例4、5および7の複合体と比べると、抵抗を減じることで効率が犠牲になっておらず、これに関連して高い品質係数値が得られる。
【表1】


効率は0.3ミクロン、5.3cm/s面速度EN1822(1988)で測定。
抵抗はEN−1822(1998)に従って測定。
品質因子は式Qf_−25000・log(P/100)/Apにより定義。
【0029】
本明細書では、ベストモードを含む本発明を開示するために実施例を用いており、当業者であれば、任意のデバイスまたはシステムを作製および使用すること、および任意の組み込まれた方法を実施することにより、本発明を実施することも可能である。本発明の特許範囲は、請求項により定義されるが、当業者が行う他の実施例も含まれるであろう。かかる他の実施例は、それらが、請求項の文言と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが、請求項の文言とは実質的に異ならない等価の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあるものとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド法により、複数の繊維から形成された合成不織布を含むベース基材であって、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有するベース基材と、
前記ベース基材の片側に堆積されたナノ繊維層とを含む複合ろ材構造体であって、前記複合ろ材構造体が、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約70%の最小ろ過効率を有する複合ろ材構造体。
【請求項2】
前記ベース基材が、円形繊維断面とトリローバル繊維断面の両方を含む二重層で構成されている、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項3】
前記ベース基材と前記ナノ繊維層との組み合わせが実質的に電気的に中性である、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項4】
前記ナノ繊維層が、エレクトロブローン紡糸法、電気紡糸法、遠心紡糸法またはメルトブローイング法により形成される、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項5】
前記ナノ繊維層が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホンおよびアラミドのうち少なくとも1つを含む、請求項4に記載の複合ろ材構造体。
【請求項6】
前記ベース基材の坪量が約100g/m2〜約300g/m2である、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項7】
前記ナノ繊維層が平均直径が約500nm以下の複数のナノ繊維を含み、前記ナノ繊維層の坪量が約0.6g/m2〜約20g/m2である、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項8】
前記ナノ繊維層が平均直径が約500nm以下の複数のナノ繊維を含み、前記ナノ繊維層の坪量が約1.5g/m2〜約2.5g/m2である、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項9】
前記合成不織布が、複数の実質的に平行な不連続線の結合域を含む結合域パターンを含む、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項10】
前記複数の繊維の平均直径が約18〜約30ミクロンである、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項11】
前記ベース基材が、EN−1822(1998)に従って測定すると、約2.5mm(水)未満の抵抗性を有し、前記複合ろ材構造体が、EN−1822(1998)に従って測定すると、約4.0mm(水)未満の抵抗性を有する、請求項1に記載の複合ろ材構造体。
【請求項12】
前記複合ろ材構造体の品質係数Qfが約370より大きい、請求項11に記載の複合ろ材構造体。
【請求項13】
前記複合ろ材構造体の品質係数Qfが約440より大きい、請求項11に記載の複合ろ材構造体。
【請求項14】
第1のエンドキャップ、第2のエンドキャップおよび複合ろ材構造体を含むフィルタ要素であって、前記複合ろ材構造体が、
スパンボンド法により、複数の繊維から形成された合成不織布を含むベース基材であって、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約35%〜50%未満のろ過効率を有する前記ベース基材と、
前記ベース基材の片側に堆積されたナノ繊維層とを含み、前記複合ろ材構造体が、EN1822(1998)試験手順に従って測定すると、約70%の最小ろ過効率を有する、フィルタ要素。
【請求項15】
前記ベース基材と前記ナノ繊維層との組み合わせが実質的に電気的に中性である、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項16】
前記複数の繊維が、円形繊維断面とトリローバル繊維断面の両方を含む二重層で構成されている、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項17】
前記ナノ繊維層が、エレクトロブローン紡糸法、電気紡糸法、遠心紡糸法またはメルトブローイング法により形成される、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項18】
前記ナノ繊維層が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホンおよびアラミドのうち少なくとも1つを含む、請求項17に記載のフィルタ要素。
【請求項19】
前記ベース基材の坪量が約100g/m2〜約300g/m2である、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項20】
前記ナノ繊維層が平均直径が約500nm以下の複数のナノ繊維を含み、前記ナノ繊維層の坪量が約0.6g/m2〜約20g/m2である、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項21】
前記ナノ繊維層が平均直径が約500nm以下の複数のナノ繊維を含み、前記ナノ繊維層の坪量が約1.5g/m2〜約2.5g/m2である、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項22】
前記合成不織布が、複数の実質的に平行な不連続線の結合域を含む結合域パターンを含む、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項23】
前記複数の繊維の平均直径が約18〜約30ミクロンである、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項24】
前記ベース基材が、EN−1822(1998)に従って測定すると、約2.5mm(水)未満の抵抗性を有し、前記複合ろ材構造体が、EN−1822(1998)に従って測定すると、約4.0mm(水)未満の抵抗性を有する、請求項14に記載のフィルタ要素。
【請求項25】
前記複合ろ材構造体の品質係数QFが約370より大きい、請求項24に記載のフィルタ要素。
【請求項26】
前記複合ろ材構造体の品質係数QFが約440より大きい、請求項24に記載の複合ろ材構造体。
【請求項27】
前記複合ろ材構造体が複数のプリーツをさらに含む、請求項16に記載のフィルタ要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−529778(P2011−529778A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521375(P2011−521375)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/052567
【国際公開番号】WO2010/014980
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】