説明

複合ギヤ

【課題】従来の樹脂ギヤでは得られない高疲労強度、高耐熱性、高耐衝撃性を有しつつ、静粛性をさらに向上させた複合ギヤを提供する。
【解決手段】複合ギヤ(100)は、軸または軸への取付け部(120)を含む内周部材(102)と、前記内周部材の外周側に配置されギヤ歯(111)に対応する芯歯(131)を有する環状の芯部材(103)と、前記芯歯を包覆する表歯部(141)と前記芯部材および前記内周部材の外周部側面を被覆する側面部(142)とを含む樹脂製の表層部材(104)と、を備え、前記内周部材および前記芯部材が金属等の剛性素材からなり、前記芯部材と前記内周部材とが緩衝材(105)を介して周方向に相対変位可能に同軸配置され、前記表層部材の前記側面部と前記内周部材とが係合部(127,147)を介して周方向に相対変位不可能に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属等のインサートと樹脂製の表層部材で構成される複合ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製芯部材をインサートして射出成形し、ギヤ歯部を樹脂材で被覆した樹脂ギヤが開示され、特許文献2には、金属製芯部材の中間部に樹脂製の緩衝帯を設けた樹脂ギヤが開示されている。しかし、特許文献1では、ギヤ歯部の樹脂材のみで衝撃を受けるため、樹脂部への負担が大きく、充分な緩衝性能は得られない。また、特許文献2では、緩衝帯を介してトルクが伝達されるため、高負荷耐性と緩衝性能とを両立できない欠点がある。
【0003】
本発明者は、特許文献3に開示されるように、ギヤ外周部を高弾性率かつ高強度の樹脂材からなる内芯部とそれを覆う低弾性率の樹脂材からなる表層部とで構成し、内芯部を金属製インサート(ハブ)の周方向に相対変位可能とする一方、表層部と金属製インサートとの接合部分に、軸回りの相対変位を阻止する係合部を設けた樹脂ギヤを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−192955号公報
【特許文献2】特開2004−150518号公報
【特許文献3】特開2008−151277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に開示された樹脂ギヤによって、静粛性や摺動特性といった樹脂ギヤとしての長所を維持しつつ、疲労強度や耐衝撃性に対する一定の改善が見られた。しかし、内芯部も樹脂材で構成されているため、高負荷で使用される金属製ギヤの代替品としての強度、特に高温強度の点でさらなる改善が望まれることとなった。
【0006】
そこで、本発明者は、図7に示すように、芯部材73を金属製とし、該芯部材73を金属製内周部材72の外周部に嵌合した組立体をインサート材として、その周囲に表層部材74を射出成形して一体とした複合ギヤ70を開発した。この複合ギヤ70では、樹脂製表層部材74による静粛性や摺動特性を維持しつつ、金属製の芯部材73により強度向上を達成できた。その一方で、全体的な性能向上に伴って新たな課題が浮上した。
【0007】
上記複合ギヤ70において、金属製の芯部材73が金属製の内周部材72に対して周方向に相対変位すなわち摺動可能となるためには、芯部材73と内周部材72との間に適度な嵌合公差が設定される必要がある。しかし、公差の存在によって、僅かではあるが、芯部材73が内周部材72に対して径方向に変位する余地が生じ、それに伴い、表層部材74の側面部には、ギヤ噛合時に周方向の剪断力と同時に径方向の圧縮力が作用することになる。
【0008】
このような複合ギヤ70を実際に駆動すると、噛合音、歯打音は非常に小さいが、芯部材73と内周部材72との接触による衝突音が発生する。静粛性や摺動特性を維持するために、表層部材74には、強化繊維などを含まない低弾性率の樹脂材を選定する必要があり、径方向の圧縮力を公差内で吸収することは不可能である。前記衝突音は、かみ合い周波数およびその高調波の音として認識されるが、表層部材74で覆われたギヤ内部で発生するので、金属製ギヤ同士のかみ合いで発生する噛合音や歯打音に比べれば小さな音である。しかし、噛合音や歯打音が低減された複合ギヤ70にあっては、相対的に大きな音として認識される。
【0009】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の樹脂ギヤでは得られない高疲労強度、高耐熱性、高耐衝撃性を有しつつ、静粛性をさらに向上させた複合ギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
軸または軸への取付け部を含む内周部材と、
前記内周部材の外周側に配置されギヤ歯に対応する芯歯を有する環状の芯部材と、
前記芯歯を包覆する表歯部と前記芯部材および前記内周部材の外周部側面を被覆する側面部とを含む樹脂製の表層部材と、を備え、
前記内周部材および前記芯部材が金属等の剛性素材からなり、前記芯部材と前記内周部材とが緩衝材を介して周方向に相対変位可能に同軸配置され、前記表層部材の前記側面部と前記内周部材とが係合部を介して周方向に相対変位不可能に係合している、複合ギヤにある。
【0011】
上記構成により、本発明に係る複合ギヤは、ギヤ歯に対応する芯歯を有する環状の芯部材が金属等の剛性素材からなることで、従来の樹脂ギヤでは得られない高い疲労強度と耐熱性を有しつつも、芯歯表面が樹脂製の表層部材(表歯部)で包覆されることで良好な摺動特性と静粛性が得られることに加えて、芯部材と内周部材とが緩衝材を介して周方向に相対変位可能に同軸配置されたことで、急激なトルク変動などでギヤ歯に負荷される衝撃荷重が、表層部材側面部の粘弾性的挙動によって吸収緩和され、良好な耐衝撃性が得られる。
【0012】
しかも、芯部材と内周部材との間に介在する緩衝材によって、芯部材と内周部材との直接接触とそれに伴う衝突音の発生が防止されることに加えて、芯部材の周方向への相対変位に対する抵抗すなわち摺動抵抗が軽減されることで、表層部材側面部の粘弾性的挙動による衝撃吸収が効果的に誘導され、静粛性および耐衝撃性がさらに向上される。
【0013】
本発明に係る複合ギヤは、緩衝材の材質によって、以下のような3つの基本的態様が存在する。
【0014】
本発明の第1の基本的態様では、前記緩衝材が、Oリングまたは環状の弾性体からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との嵌合面に形成された周溝内に挿入されている。この態様では、緩衝材が、表層部材とは異なるゴム弾性と表面材質特性を有することで、芯部材と内周部材との間に良好な緩衝性および摺動特性が得られ、複合ギヤの静粛性および耐衝撃性がさらに向上される。
【0015】
本発明の第2の基本的態様では、前記緩衝材が、グリースまたは流動性のない塑性流体または粘性流体からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との嵌合面に形成された周溝内に充填されている。この態様では、径方向の緩衝性能という点では、緩衝材が樹脂材や弾性体からなる場合に及ばないものの、グリースまたは前記流体が、複合ギヤの回転による遠心力で前記嵌合面内に滲入し、その潤滑性によって、芯部材の周方向への相対変位に対する摺動抵抗が低減され、芯部材と内周部材との間に良好な緩衝性および摺動特性が得られ、複合ギヤの静粛性および耐衝撃性がさらに向上される。
【0016】
本発明の第3の基本的態様では、前記緩衝材が、樹脂材からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との間に配設されている。この態様では、弾性体のような緩衝性やグリースのような潤滑性は得られないものの、芯部材と内周部材との当接が完全に防止されることに加えて、芯部材と内周部材とのそれぞれの側に、自己潤滑性を有する樹脂材の接触面が形成されることで、芯部材の周方向への相対変位に対する摺動抵抗が低減され、芯部材と内周部材との間に良好な緩衝性および摺動特性が得られ、複合ギヤの静粛性および耐衝撃性がさらに向上される。
【0017】
上記本発明の第3の基本的態様において、前記緩衝材が、前記表層部材と同じ樹脂材で一体に成形されていることが好適である。この態様では、緩衝材を表層部材と同時に一体成形でき、製造コスト面で有利である。
【0018】
本発明の好適な態様では、前記芯部材と前記内周部材とが、軸方向に隣接した環状スラスト面を含み、該環状スラスト面にて当接している。この態様では、表層部材側面部のスラスト荷重に対する負担が軽減され、ヘリカルギヤやベベルギヤ等、スラスト荷重を恒常的に受けるギヤへの実施に好適である。
【0019】
本発明の好適な態様では、前記芯部材と前記内周部材とが、軸方向に隣接した環状スラスト面を含み、前記環状スラスト面の間に、前記表層部材と同じ樹脂材で一体成形されたスラスト緩衝層が形成されている。この態様では、前記同様に、表層部材側面部のスラスト荷重に対する負担が軽減され、ヘリカルギヤやベベルギヤ等、スラスト荷重を恒常的に受けるギヤへの実施に好適であることに加えて、スラスト方向の荷重に対しても緩衝性が得られる。
【0020】
本発明の第3の基本的態様において、前記緩衝材と前記芯部材の内周面との間に周溝が画成され、該周溝内にグリースが充填されていても良い。この態様では、内周部材に対しては樹脂材による緩衝性が得られる一方、芯部材に対しては、樹脂材による緩衝性とグリースによる潤滑性とが得られ、これらの複合的作用によって、芯部材と内周部材との間に良好な緩衝性および摺動特性が得られ、静粛性および耐衝撃性がさらに向上される。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明に係る複合ギヤは、従来の樹脂ギヤでは得られない高疲労強度、高耐熱性、高耐衝撃性を有しつつ、静粛性や動作特性をさらに向上でき、かつ、それによる耐久性の向上も見込め、実用性の高い複合ギヤを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明第1実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図2】(a)は本発明第2実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図3】(a)は本発明第3実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図4】(a)は本発明第4実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図5】(a)は本発明第5実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図6】(a)は本発明第6実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はその歯先部分を示す拡大図である。
【図7】(a)は比較例1の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図8】(a)は比較例2の複合ギヤを示す一部切除した側面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図9】(a)は本発明第3実施形態の複合ギヤ、(b)は比較例1のギヤ、(c)は比較例2のギヤの振動レベルを示すパワースペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面と共に詳細に説明する。なお、以下において、各実施形態に共通または対応する構成には、共通または対応する符号を付すことで説明を省略する場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
図1(a)〜(c)は、本発明第1実施形態に係る複合ギヤ100を示している。図において、複合ギヤ100は、金属製の内周部材102(第1インサート材)とその外周側に同軸配置された金属製の環状芯部材103(第2インサート材)、該環状芯部材103および前記内周部材102の外周部122を被覆する樹脂製の表層部材104から主に構成されている。
【0025】
内周部材102は、中央に軸孔120が貫通したハブ121と、その周囲にフランジ状に延在する外周部122とで構成されている。外周部122は、ハブ121の外周面の幅方向(軸方向)中央部から径方向外方に延出しており、その幅方向両側に、ハブ121の外周面をなす肩部126,126が形成されている。それぞれの肩部126,126には、周方向に所定の間隔を有して複数の凹部127(切欠部)が形成されている。
【0026】
内周部材102の外周部122は、前記凹部127を除き、全周に亘り一様な断面形状をなしており、ハブ121に連なる薄肉の基部に対して最外周部(外周面123側、大径側)が、環状芯部材103と同幅まで拡幅され、拡幅された外周面123,123の中央に周溝125が形成されている。この周溝125には、緩衝材として環状弾性体105が装着されている。
【0027】
環状芯部材103は、複合ギヤ100の各ギヤ歯111に対応した複数の芯歯131、および各芯歯を周方向に結合する環状本体132から構成されている。環状芯部材103(環状本体132)の内周面135は、内周部材102の外周面123,123に所定の嵌合公差(ラジアルクリアランス)で隙間嵌めされる内径寸法を有し、全周に亘り一様な断面形状をなしている。
【0028】
また、図1(b)に示されるように、環状芯部材103(環状本体132)の一方の側面には、位置決め穴138が設けられている。位置決め穴138は、後述するインサート成形時に、環状芯部材103が、内周部材102に対して正確に心出しされ、かつ、各芯歯131の位相が金型のギヤ歯(111)に一致した状態で位置決めされるように、周方向に等ピッチで複数設けられている。
【0029】
環状弾性体105は、ゴムまたはゴム弾性を有する弾性体からなり、周方向に一様な断面円形のリング状をなしている。環状弾性体105としては、シール材として市販されているOリングを使用可能であるが、内周部材102の外周面123,123と、環状芯部材103の内周面135との間のクリアランスを維持する緩衝材もしくはインシュレータとしての機能が求められるため、硬質なゴム製のものが好ましい。また、後述するインサート成形時の高温、複合ギヤ100として使用される際の摩擦や振動に対する耐性および耐久性を備えたものが選定される。
【0030】
表層部材104は、複合ギヤ100の各ギヤ歯111に対応して環状芯部材103の各芯歯131を被覆する複数の表歯部141、および、環状芯部材103の環状本体132から内周部材102の外周部122にかけての側面部分を被覆する側面部142,142から構成され、樹脂材により射出成形される。表層部材104には、各種熱可塑性樹脂を使用可能であり、必要に応じて、熱可塑性樹脂に強化繊維などの補強材を含有させることもできる。
【0031】
表層部材104の射出成形に際しては、先ず、周溝125に環状弾性体105を装着した内周部材102(第1インサート材)の外周部122に、環状芯部材103(第2インサート材)を嵌合して組立体(102,103)とする。この際、環状弾性体105は、内周部材102の外周面(周溝125)と環状芯部材103の内周面135との間で圧縮され、予圧を付与される。
【0032】
次いで、上記組立体(102,103)をインサート材として、射出成形用の金型内にセットする。その際、金型内中央に突設された不図示のボスに、内周部材102の軸孔120を係合させ、かつ、金型内周辺部に突設されたピン(図1(b)に138,148で示される部分に相当)に、環状芯部材103の位置決め穴138を係合させることで、内周部材102と環状芯部材103とが正確に心出しされかつ各芯歯131の位相が金型のギヤ歯に一致された状態で回り止めされて金型内に同軸配置される。
【0033】
この状態で金型を閉じ、表層部材104の一方の内周縁146に沿って設定されたディスクゲートまたはピンゲートなど(図示せず)を通じて金型キャビティ内に樹脂を射出することで、表歯部141および側面部142,142が一体となった表層部材104が形成され、環状芯部材103および内周部材102の外周部122が表層部材104で被覆された複合ギヤ100が形成される。
【0034】
上記射出成形時に、表層部材104(側面部142,142)の内周縁146,146に、内周部材102(ハブ121)の凹部127に係合する凸部147が形成され、これら凸部147と凹部127との係合によって、表層部材104の内周縁146,146と、内周部材102(ハブ121)の肩部126,126とは、周方向に相対変位不可能に結合されており、表層部材104の側面部142,142によって、ギヤ歯111(表歯部141)と内周部材102との間でトルクを伝達可能である。しかも、表層部材104の内周縁146,146が、側面部142,142に対して厚肉化されていることで、凸部147と凹部127との係合面積が確保され、かつ、内周縁146,146の強度も向上しているので、大きなトルクを伝達可能である。
【0035】
一方、表層部材104で被覆された複合ギヤ100の内部において、内周部材102の外周部122に環状弾性体105を介して嵌合された環状芯部材103は、環状弾性体105による若干の摺動抵抗を受けるものの、周方向に相対変位可能であり、環状芯部材103(芯歯部131)と内周部材102との間では実質的にトルクを伝達できない構成となっている。
【0036】
以上のように構成された複合ギヤ100を他のギヤと噛合させてトルク伝達機構を構成した場合、その使用状態において、ギヤ歯111の歯面(表歯部141)に負荷される荷重は、表層部材104の側面部142,142の凸部147と凹部127との係合によって、内周部材102に伝達される。その際、環状芯部材103は、個々の芯歯部131において表歯部141を補強し、各ギヤ歯111に剛性を付与するとともに、噛合中のギヤ歯111に作用する荷重を周方向全体に分散させる。
【0037】
すなわち、環状芯部材103が内周部材102に対して周方向に相対変位可能(回動可能)な構成によって、噛合中のギヤ歯111に作用する荷重が、表層部材104の側面部142,142全体の内周側(146,146)と外周側(141)との間に作用する周方向の剪断力に変換され、この剪断力を介して、内周側(146,146)と外周側(141)との間でトルクが伝達され、剪断力の変動分は、表層部材104の側面部142,142の弾性変形に費やされる。したがって、急激なトルク変動などでギヤ歯111に衝撃荷重が負荷された場合には、表層部材104の側面部142,142を構成する樹脂材の粘弾性的挙動によって吸収緩和されることになる。
【0038】
ギヤ歯111の歯面(表歯部141)に負荷される衝撃荷重によって、表層部材104の側面部142,142には、周方向の剪断力と同時に径方向の圧縮力が作用することは既に述べた通りである。しかし、上記複合ギヤ100では、環状芯部材103の内周面135と、内周部材102の外周面(周溝125)との間に、上記荷重(径方向成分)に対して充分に大きい弾性係数を有する環状弾性体105が介在するので、環状芯部材103の内周面135と内周部材102の外周面123,123との衝突が阻止され、もしくはその衝撃が緩和され、内部衝突音の発生が防止される。
【0039】
また、環状弾性体105によって、環状芯部材103の内周面135と内周部材102の外周面123,123との直接接触が回避または緩和され、環状芯部材103の周方向への相対変位に対する抵抗すなわち摺動抵抗が軽減されることで、上述した表層部材104(側面部142,142)による衝撃吸収が効果的に誘導され、環状弾性体105との複合的な制振作用が得られる。これにより、高負荷、高回転における高い耐久性能と耐衝撃性を維持しつつも、さらに静粛性を向上できる。
【0040】
(第2実施形態)
図2(a)〜(c)は、本発明第2実施形態に係る複合ギヤ200を示している。複合ギヤ200の基本構造は、第1実施形態の複合ギヤ100と同様であるので、以下、差異点を中心に説明する。第2実施形態の複合ギヤ200も、第1実施形態の複合ギヤ100と同様に、金属製の内周部材202(第1インサート材)とその外周側に同軸配置された金属製の環状芯部材203(第2インサート材)、該環状芯部材203および前記内周部材202の外周部222を被覆する樹脂製の表層部材204から主に構成されており、環状芯部材203と内周部材202との間に介在する緩衝材のみが異なっている。
【0041】
第2実施形態の複合ギヤ200では、内周部材202(外周部222)の外周面に形成された周溝225に、緩衝材としてグリース205が充填されている。グリース205は、潤滑性を有するとともに、増稠剤によって構造粘性を有しているので、内周部材202に環状芯部材203を嵌合する以前に、または、部分的に嵌合した状態で、内周部材202の周溝225に充填し保持させておくことができる。
【0042】
したがって、それ以降は、第1実施形態の複合ギヤ100と同様に、内周部材202(第1インサート材)と環状芯部材203(第2インサート材)との組立体(202,203)をインサート材として、表層部材204を樹脂材により射出成形することによって製造可能であるが、緩衝作用を生じるメカニズムは多少異なっている。
【0043】
複合ギヤ200の使用状態では、グリース205は、複合ギヤ200の回転によって生じる遠心力で、環状芯部材203の内周面235と内周部材202(外周部222)の外周面223,223との間の隙間に滲入し、その隙間内に保持され、環状芯部材203の内周面235と、内周部材202(外周部222)の外周面(223,223)との間に緩衝作用を生じさせる。
【0044】
グリース205は、半固体ではあるが、環状弾性体105(Oリング)のような弾性は期待できないので、衝撃荷重の径方向成分に対する直接的な緩衝性能という点では、第1実施形態の複合ギヤ100に及ばない。しかし、グリース205は、優れた潤滑性を有しているので、環状芯部材203の周方向への相対変位に対する摺動抵抗が低減され、周方向への相対変位が容易に誘導される。これにより、環状芯部材203と内周部材202との間に、第1実施形態に匹敵する緩衝性と静粛性を得ることができる。
【0045】
なお、グリース205の種類は特に限定されるものではなく、鉱物油や合成油などの液状潤滑油に増稠剤を添加したもの、例えば、フッ素系オイルをベースにPTFEで増稠したグリースなどを好適に用いることができる。また、グリース205を、第1実施形態の複合ギヤ100における環状弾性体105(Oリング)と併用することもできる。
【0046】
(第3実施形態)
図3(a)〜(c)は、本発明第3実施形態に係る複合ギヤ300を示している。図において、複合ギヤ300は、金属製の内周部材302(第1インサート材)とその外周側に同軸配置された金属製の環状芯部材303(第2インサート材)、該環状芯部材303および前記内周部材302の外周部322を被覆する樹脂製の表層部材304から構成されているが、環状芯部材303と内周部材302との間に介在する緩衝材(343,344,345)が、表層部材304と同じ樹脂材で一体に成形されている点に特徴がある。
【0047】
本発明第3実施形態の複合ギヤ300では、内周部材302の外周部322に、軸方向に対して平行で径方向位置のみが異なる第1および第2外周面323,325と、それらの間に軸方向に対して垂直な環状スラスト面324(段差面)とが形成され、全周に亘り一様な断面形状をなしている。
【0048】
一方、環状芯部材303(環状部332)の内周側には、前記第1および第2外周面323,325に対応して、軸方向に対して平行で径方向位置のみが異なる第1および第2内周面333,335と、それらの間に軸方向に対して垂直な環状スラスト面334(段差面)とが形成されている。但し、第1内周面333と内周部材302の第1外周面323との間、および、第2内周面335と内周部材302の第2外周面325との間には、それぞれ、一般的な隙間嵌めの嵌合公差よりも充分に大きい第1および第2のクリアランスが設定されている。また、環状スラスト面334と内周部材302の環状スラスト面324との間にも軸方向のクリアランスが設定されている。
【0049】
表層部材304の射出成形に際しては、上記のように構成された内周部材302(第1インサート材)および環状芯部材303(第2インサート材)を射出成形用の金型内にセットする。その際、金型内中央に突設された不図示のボスに内周部材302の軸孔320を係合させ、さらに、金型内周辺部に突設されたピン(図3(b)に338,348で示される部分に相当)に環状芯部材303の位置決め穴338を係合させる。これにより、内周部材302と環状芯部材303とが、上記第1および第2クリアランスおよび軸方向クリアランスを有した状態で正確に心出しされかつ各芯歯331の位相が金型のギヤ歯に一致された状態で回り止めされて金型内に同軸配置される。
【0050】
この状態で金型を閉じ、前記同様に表層部材304の一方の内周縁346に沿って設定されたディスクゲートまたはピンゲートなど(図示せず)を通じて金型キャビティ内に樹脂を射出することで、上記第1および第2クリアランスおよび軸方向クリアランスに樹脂が流入し、第1内周面333と第1外周面323との間の第1樹脂層343、第2内周面335と第2外周面325との間の第2樹脂層345、および、2つの環状スラスト面324,334の間のスラスト樹脂層344が、表歯部341および側面部342,342と一体になった表層部材304が形成され、環状芯部材303および内周部材302の外周部322が表層部材304で被覆された複合ギヤ300が形成される。
【0051】
上記射出成形時に、表層部材304の内周縁346,346に、内周部材302の凹部327に係合する凸部347が形成され、これら凸部347と凹部327との係合によって、表層部材304の内周縁346,346と、内周部材302の肩部326,326とが周方向に相対変位不可能に結合され、表層部材304の側面部342,342によって、ギヤ歯311(表歯部341)と内周部材302との間でトルクを伝達可能となる点や、厚肉化された内周縁346,346によって凸部347と凹部327との係合面積が確保され、大きなトルクを伝達可能である点は先述した各実施形態と同様であるが、第3実施形態では、上記第1、第2樹脂層343,345およびスラスト樹脂層344の構成によって、緩衝材(343,344,345)を表層部材304と樹脂材で一体に成形するうえで以下のような利点もある。
【0052】
すなわち、第3実施形態の複合ギヤ300の射出成形時には、上記第1、第2樹脂層343,345およびスラスト樹脂層344に対応して屈曲した樹脂流入経路(343,344,345)を通って一方の側面部342から他方の側面部342に至る樹脂流れを生じるが、前記樹脂流入経路(343,344,345)の屈曲によって、この樹脂流入経路を通じた樹脂流れが遅延され、表歯部341を通じた樹脂流れとの合流地点が、前記樹脂流入経路内またはその付近の側面部342に誘導される。これにより、表歯部341におけるウエルドラインの発生が防止され、ウエルドラインによる歯面(341)の摺動特性や構造強度への影響を回避できる。
【0053】
以上のように構成された第3実施形態の複合ギヤ300は、環状芯部材303の内周面333,335と内周部材302の外周面323,325との当接が完全に防止されることに加えて、環状芯部材303の内周面333,335、内周部材302の外周面323,325のそれぞれに対して、自己潤滑性を有する樹脂層343,345の接触面が形成されることで、環状芯部材303の周方向への相対変位に対する摺動抵抗が低減され、環状芯部材303と内周部材302との間に良好な緩衝性が得られ、静粛性および耐衝撃性を向上可能である。
【0054】
また、第3実施形態の複合ギヤ300は、2つの環状スラスト面324,334とそれらの間に形成されたスラスト樹脂層344によって、スラスト荷重を受圧可能であるとともに、スラスト方向に対する緩衝性も得られる。さらに、環状芯部材303と内周部材302との間に介在する樹脂層343,344,345が、表層部材304と同じ樹脂材で一体に成形されるので、部品点数が少なく、製造コスト面で有利である。
【0055】
(第4実施形態)
図4(a)〜(c)は、本発明第4実施形態に係る複合ギヤ400を示している。この複合ギヤ400は、前記第3実施形態の複合ギヤ300の変形例である。複合ギヤ300との構造上の差異点は、内周部材402の環状スラスト面424と、環状芯部材403の環状スラスト面434との間にクリアランスが設定されておらず、環状スラスト面424,434が直接接触している点である。
【0056】
したがって、第4実施形態の複合ギヤ400では、第1樹脂層443と第2樹脂層445とが分離しており、表層部材404のそれぞれの側面部442,442は、基本的に表歯部441によってのみ結合されている。そのため、第4実施形態の複合ギヤ400では、第1樹脂層443と第2樹脂層445とを結ぶ樹脂流れは生じず、上述した第3実施形態の場合のようなウエルドライン対策は基本的に不要である。但し、第4実施形態の複合ギヤ400では、環状スラスト面424,434の直接接触があるので、静粛性という点では、第3実施形態の複合ギヤ300が有利である。
【0057】
(第5実施形態)
図5(a)〜(c)は、本発明第5実施形態に係る複合ギヤ500を示している。この複合ギヤ500では、金属製の内周部材502(第1インサート材)と金属製の環状芯部材503(第2インサート材)との間に介在する緩衝材が、環状緩衝部材505(中間リング)として、表層部材504と異種または同種の樹脂材で別に形成されている点に特徴がある。
【0058】
この複合ギヤ500では、前記第3(および第4)実施形態の複合ギヤ300(400)に設定されていた、内周部材302(402)と環状芯部材303(403)との間で軸方向に隣接した環状スラスト面324,334(424,434)の代わりに、内周部材502の外周面の突条525が形成され、環状芯部材503の内周面535には段差形状534が形成され、樹脂製の環状緩衝部材505にそれらに対応した溝条555および段差形状554が形成されている。
【0059】
第5実施形態の複合ギヤ500の製造に際しては、先ず、環状緩衝部材(505)成形用の第1の金型内に内周部材502(第1インサート材)をセットし、この状態で第1の金型を閉じ、金型キャビティ内に第1の樹脂を射出することで、内周部材502の周囲に環状緩衝部材505を射出成形し、中間成形品(502,505)を形成する。
【0060】
次いで、この中間成形品(502,505)の外周側に環状芯部材503(第2インサート材)を嵌合して組立体(502,505,503)とする。この組立体(502,505,503)は、環状芯部材503が、前記突条525や段差形状534に案内されて、内周部材502に対して周方向に相対変位すなわち回動可能となっている。
【0061】
次に、この組立体(502,505,503)を、表層部材(504)成形用の第2の金型内にセットする。軸孔520および位置決め穴538を利用して心出しされかつ各芯歯531の位相が金型のギヤ歯に一致された状態で回り止めされて金型内に同軸配置される点は前記同様である。この状態で第2の金型を閉じ、金型キャビティ内に第2の樹脂を射出することで、環状芯部材503、環状緩衝部材505、および内周部材502の外周部522が表層部材504で被覆された複合ギヤ500が形成される。
【0062】
以上のように構成された第5実施形態の複合ギヤ500は、前記同様に環状芯部材503の内周面535と内周部材502の外周面525との当接が完全に防止され、かつ、それらに対して、自己潤滑性を有する樹脂製の環状緩衝部材505の接触面が形成されることで、環状芯部材503の周方向への相対変位に対する摺動抵抗が低減され、環状芯部材503と内周部材502との間に良好な緩衝性が得られ、静粛性および耐衝撃性を向上可能である。
【0063】
(第6実施形態)
図6(a)〜(c)は、本発明第6実施形態に係る複合ギヤ600を示している。この複合ギヤ600は、前記第5実施形態の複合ギヤ500の樹脂製の環状緩衝部材505に、前記第2実施形態の複合ギヤ200で緩衝材として用いたグリース205を併用した変形例である。
【0064】
第5実施形態に対する変更点としては、環状緩衝部材605の成形時に、その外周面に段部655を形成しておき、中間成形品(602,605)の外周側に環状芯部材603を嵌合して組立体(602,605,603)とすることで、前記段部655と環状芯部材603の内周面635との間に、側方に開放された周溝(655,635)が形成されるようにし、この周溝(655,635)内にグリース608を充填した後、環状緩衝部材605と環状芯部材603の側面とに跨ってリングプレート607を設置して周溝(655,635)を閉鎖する点にある。
【0065】
この第6実施形態の複合ギヤ600では、それぞれの接触面における樹脂製の環状緩衝部材605の自己潤滑性に加えて、環状芯部材603の内周面635と環状緩衝部材605の外周面653との間ではグリース608による潤滑性が得られ、環状緩衝部材605の緩衝性と相俟って良好な緩衝性が得られ、静粛性および耐衝撃性を向上可能である。
【実施例】
【0066】
次に、本発明に係る複合ギヤの静粛性を評価するため、本発明第3実施形態の複合ギヤ300(図3)、それと同じ外形状で、内周部材72と環状芯部材73が緩衝材を介さずに直接接触する複合ギヤ70(図7、比較例1)、内周部材と環状芯部材が一体の芯部材82で形成されたギヤ80(図8、比較例2)を用いて、以下のような条件でモータリング試験を行った。
【0067】
実験に使用した本発明に係る複合ギヤ300および比較例1の複合ギヤ70の内周部材302,72、環状芯部材303,73、比較例2のギヤ80の芯部材82は、いずれも金属(焼結金属)で構成した。また、各ギヤの表層部材304,74,84の樹脂材には、補強材を含まず、低弾性率(常温における曲げ弾性率が3.3GPa)のナイロン66であって、電子線照射により高分子鎖間に架橋を生じる樹脂材料を使用し、射出成形後に電子線の照射を実施した。
【0068】
各ギヤ300,70,80の諸元は、何れも、モジュール2.5mm、圧力角20度、歯数35、基準円直径87.5mm、歯先円直径92.9mm、歯幅11mm、転位係数0.145の平歯車である。また、各ギヤに噛合う相手ギヤの諸元は、モジュール2.5mm、圧力角20度、歯数35、基準円直径87.5mm、歯先円直径92.175mm、歯幅12mm、転位係数0の鋼製平歯車であり、チップリリーフによる作用線方向の逃し量0.10mm、歯先R0.227による作用線方向の逃し量が0.04mm、合計0.14mmの歯先修整が施されたものを使用した。
【0069】
モータリング試験の条件としては、伝達トルク20Nm、回転数5000rpm、100℃の高温雰囲気中で、各ギヤ300,70,80を相手ギヤにより駆動し、試験装置の一箇所に装着した加速度ピックアップにより振動を測定し、FFT分析を実施した。
【0070】
図9(a)は本発明の複合ギヤ300、(b)は比較例1の複合ギヤ70、(c)は比較例2のギヤ80のそれぞれの振動レベルを示すパワースペクトラムである。
【0071】
先ず、図9(b)に示す比較例1のギヤ70における累積1.35×10回転後のパワースペクトラムでは、噛合周波数2,916Hzにおいて約2,600m/sのピーク振幅が認められたが、歯面や芯歯に損傷は認められず、運転の継続に支障を来す状況ではなかった。
【0072】
また、図9(c)は、比較例2のギヤ80のパワースペクトラムであるが、前記と異なるのは試験開始から短時間しか経過してない累積7.5×10回転後のパワースペクトラムという点である。噛合周波数(2,916Hz)以外にもピーク振幅が数箇所確認でき、全体的に大きいレベルの振幅が測定され、歯面に損傷は認められなかったが、運転を継続できる状況ではなかった。
【0073】
一方、図9(a)に示す本発明の複合ギヤ300における累積1.35×10回転後のパワースペクトラムでは、噛合周波数(2,916Hz)に約1,900m/sのピーク振幅があるが、図9(b)に示した比較例1のギヤ70と比較して約27%低減されている。さらに、全帯域に亘って振幅レベルが低減されていることが分かる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0075】
例えば、上記各実施形態においては、内周部材102〜602と表層部材104〜604との係合部として、肩部126〜626に凹部127〜627を、内周縁146〜646に凸部147〜647を設ける場合を示したが、これらの凹凸関係が逆であっても良く、また、内周部材102〜602と表層部材104〜604との相互回動を阻止できる他の形状なしていても良く、例えば、スプラインやセレーションなどで構成できる。
【0076】
さらに、上記各実施形態においては、本発明を平歯車として実施する場合について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘリカルギヤ、ベベルギヤなど、他の形態のギヤとして実施することも本発明の範囲内において可能である。また、内周部材102〜602に軸孔120〜620を形成する代わりに、回転軸や他の回転体が一体に形成されていても良い。
【0077】
また、上記各実施形態では、内周部材102,202,302,402,502,602および環状芯部材103,203,303,403,503,603が何れも金属製の場合について述べたが、内周部材および環状芯部材は、複合ギヤに要求される性能に応じて、金属や焼結金属以外のセラミック、繊維強化プラスチックなどの剛性素材で構成でき、かつ、内周部材と環状芯部材とが、異種剛性素材の組み合わせによって構成されていても良い。
【符号の説明】
【0078】
100,200,300,400,500,600 複合ギヤ
102,202,302,402,502,602 内周部材
103,203,303,403,503,603 環状芯部材
104,204,304,404,504,604 表層部材
105 環状弾性体(Oリング、緩衝材)
111,211,311,411,511,611 ギヤ歯
120,220,320,420,520,620 軸孔
121,221,321,421,521,621 ハブ
122、222,322,422,522,622 外周部
126,226,326,426,526,626 肩部
125,225,655 周溝
127,227,327,427,527,627 凹部(係合部)
131,231,331,431,531,631 芯歯
132,232,332,432,532,632 環状部
138、238,338,438,538,638 位置決め穴
141、241,341,441,541,641 表歯部
142、242,342,442,542,642 側面部
146、246,346,446,546,646 内周縁
147、247,347,447,547,647 凸部(係合部)
205,605 グリース(緩衝材)
324,334、424,434 環状スラスト面
343,443 第1樹脂層(緩衝材)
345,445 第2樹脂層(緩衝材)
344 スラスト樹脂層(スラスト緩衝層)
505,605 環状緩衝部材(緩衝材)
607 リングプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸または軸への取付け部を含む内周部材と、
前記内周部材の外周側に配置されギヤ歯に対応する芯歯を有する環状の芯部材と、
前記芯歯を包覆する表歯部と前記芯部材および前記内周部材の外周部側面を被覆する側面部とを含む樹脂製の表層部材と、を備え、
前記内周部材および前記芯部材が金属等の剛性素材からなり、前記芯部材と前記内周部材とが緩衝材を介して周方向に相対変位可能に同軸配置され、前記表層部材の前記側面部と前記内周部材とが係合部を介して周方向に相対変位不可能に係合している、複合ギヤ。
【請求項2】
前記緩衝材が、Oリングまたは環状の弾性体からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との嵌合面に形成された周溝内に挿入されている、請求項1に記載の複合ギヤ。
【請求項3】
前記緩衝材が、グリースまたは流動性のない塑性流体または粘性流体からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との嵌合面に形成された周溝内に充填されている、請求項1に記載の複合ギヤ。
【請求項4】
前記緩衝材が、樹脂材からなり、かつ、前記内周部材の外周面と前記芯部材の内周面との間に配設されている、請求項1に記載の複合ギヤ。
【請求項5】
前記緩衝材が、前記表層部材と同じ樹脂材で一体に成形されている、請求項4に記載の複合ギヤ。
【請求項6】
前記芯部材と前記内周部材とが、軸方向に隣接した環状スラスト面を含み、該環状スラスト面にて当接している、請求項2〜5の何れか一項に記載の複合ギヤ。
【請求項7】
前記芯部材と前記内周部材とが、軸方向に隣接した環状スラスト面を含み、前記環状スラスト面の間に、前記表層部材と同じ樹脂材で一体成形されたスラスト緩衝層が形成されている、請求項2〜5に記載の複合ギヤ。
【請求項8】
前記緩衝材と前記芯部材の内周面との間に周溝が画成され、該周溝内にグリースが充填されている、請求項4に記載の複合ギヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−174526(P2011−174526A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38495(P2010−38495)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】