説明

複合サイクル発電システムの始動をスケジュールするためのシステム及び方法

【課題】CC発電システムの様々な始動運転条件についての始動持続期間を正確に予測すること。
【解決手段】ガスタービンエンジン(12)、蒸気タービン(16)、並びにユーザ入力デバイス(26)及び出力デバイス(24)を含むコンピュータ制御システム(22)を備えた複合サイクル発電システム(10)の起動期間(42)を予報する方法であって、本方法は、複合サイクル発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間(38)を入力する段階(144)と、複合サイクル発電システムの所定運転条件の現在値(124)を収集する段階と、コンピュータ制御システムが、所望時間及び現在値に基づいて予報起動時間(150)を生成するアルゴリズムを実行し、複合サイクル発電システムが、予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする段階と、コンピュータシステムが、予報起動時間(42)を出力デバイスに出力する段階(148)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に複合サイクル(CC)発電システムに関し、詳細には、CC発電システム(本明細書では「プラント」とも呼ばれる)の始動のスケジューリングに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントは、通常、電力設備会社により、又は電力設備会社向けに運転され、最終的には中央卸市場又は調整された発電システムオペレータを介して送電される電力を発生する。電力設備会社は、1つ又はそれ以上のCC発電システム及び他の発電システムから電力を生成することができる。
【0003】
電力会社に対する電力需要は、時間毎、日付毎、季節毎、及び年毎に変化する傾向がある。これらの顧客からの電力需要は、例えば、予想される天気、顧客による将来の電力要求、電力需要に影響を及ぼす生起予定の事象など、電力需要及び他の情報に関する履歴データに基づいて、系統オペレータにより予報される。系統オペレータは、予報電力需要を発電所のオペレータ(例えば、電力会社)に助言する。電力需要は変化するので、各プラントで電力設備会社により作成されるスケジュールは、多くの場合、例えば前日など、電力が生成される少し前の時間に確定する。スケジュールが確定すると、発電システムのオペレータは、電力需要が発生することをスケジュールが示したときに、給電可能負荷レベルで電力を提供するようCC発電システム(プラント)を起動させるタイミングを決定する。
【0004】
プラント起動のタイミングの決定は、複雑で困難なスケジューリング問題を生じる。始動シーケンスは、オフ状態から、プラントが給電可能負荷レベルで電力を生成する状態にする。始動シーケンスは通常、種々のガスタービン、蒸気タービン、ボイラ、及び蒸気を発生する他のシステム、並びにガス及び蒸気タービンにより駆動される発電機を伴う複雑なスケジュールである。プラントが停止すると、ガスタービンには燃料が提供されておらず、蒸気タービンには蒸気が提供されていない。プラントが停止すると、ガスタービン及び蒸気タービンは、最終作動状態から冷却される。プラントが再起動されると、始動シーケンスの始動期間すなわち始動シーケンスを完了するまでの時間は、始動シーケンスが開始されたときの蒸気タービンの温度に大きく依存する。
【0005】
始動シーケンスの持続時間を正確に算出するツールを有することは、プラントのオペレータに有用となる。オペレータは通常、プラントが何時給電可能負荷レベルで電力の生成に取りかかるかを認識している。正確な始動持続期間が分かると、オペレータは、プラントが電力の生成に取りかかる直前に給電可能負荷に到達するように、可能な最も遅い時間に最少量の燃料を用いてプラントを起動できるようになる。
【0006】
始動シーケンスを開始するタイミングを決定するには、システムオペレータが該シーケンスに必要な時間長を推定することが必要となる。CC発電システムについての正確な条件ベース始動スケジュールの算出は、始動シーケンスの持続期間を正確に予報することが困難であることに起因して、従来はシステムオペレータにより手動で実施された厄介で複雑な作業となる可能性がある。プラントオペレータは通常、正確な条件ベース始動スケジュールを算出するのではなく、幾つかの始動条件についての始動期間の事前準備のテンプレートを用いて始動スケジュールを予報する。準備始動テンプレートは、推定期間が適用される始動シーケンスの種類の何れよりも予測始動期間が確実に短くならないように、控えめに長い始動期間を予測する。この予測が控えめであるので、始動期間の準備テンプレートは、始動シーケンスの起動時の蒸気ロータの温度など、幅広い初期条件に一般的に適用することができる。準備テンプレートは、ほとんどの実始動期間よりも有意に長い始動期間を提示することができる。
【0007】
既存のスケジュールテンプレートを再利用すると、新規の運転日又は時間期間についての新しい始動スケジュールの準備を効率的に処理できるが、スケジュールテンプレートは、任意の所与の日又は時間期間に対する最適な始動シーケンス及び始動期間をもたらさないことが多い。更に、事前準備スケジュールは、スケジュールを適用できる可能な状況の全てに適合するよう様々な発電構成要素が確実に利用可能となる長い時間マージンを組み込む場合がある。これらの長いマージンは、発電構成要素が必要となるまでに最大で数時間の給電可能負荷が利用可能になり、低負荷レベルで非効率的に燃料を無用に燃焼する結果となる。必要とされるよりも早期に給電可能負荷に到達すると、必要な電力を生成するために電力構成要素が適用されるのを待機している間に該構成要素が作動していることに起因して金銭的損失が生じ、最適未満の価格水準で生成電力が販売される結果となる。
【0008】
始動持続期間の推定準備に関する問題は、プラントが給電可能電力を生成するようスケジュールされている30分前又はそれ以上前に、給電可能負荷レベルにプラントが到達する可能性があることである。プラントが、電力を供給するようスケジュールされる前に電力を生成する場合には、該プラントは、燃料を消費し、過剰な熱及びエミッションを発生し、比較的低効率で作動する可能性があり、オペレータは、市場価格未満の価格での電力の販売を余儀なくされる可能性がある。十分な需要もなく給電可能負荷でプラントを運転することは望ましいことではない。周期的デューティ要件が増大し、燃料コストが高くなり、競争の激しい規制緩和されたエネルギー市場及び厳しい環境規制は、CC発電システム運転からのより迅速で予測可能な始動シーケンスに対する需要を創出している。
【0009】
CC発電システムを始動させるために簡単且つ正確にスケジュール及び予報を生成する方法及びシステムについての長年にわたる要求がある。この要求が存在する理由は、幾つかの準備始動スケジュールの1つを選択する従来の手動による手法では、発電構成要素(例えば、ガスタービン及び蒸気タービン)が実際に必要とするよりも数時間前に給電可能負荷レベルに達することに起因して非効率的な結果となるためである。更に、発電プラントが電力を生成しようとしている要件により、始動スケジュールを迅速に生成し、発電コストを低減するよう最適化された正確なスケジューリング及び予報ツールに対する必要性が高くなる。
【0010】
CC発電システムを始動するのに必要な時間を短縮することは、システム始動時の考慮事項だけではない。発電システムの所有者は、局所的環境規制、エネルギー送給要件、及び現在の燃料及びエネルギー価格に応じた様々な始動対象物を管理している。発電システムオペレータは、エミッション、燃料コスト、又は正味熱消費率を最小限にすることが必要になる場合がある。これらの考慮事項は、始動運転のタイミングに影響を及ぼすことができる。各CC発電システムは、始動スケジュールに影響を及ぼす現場固有要因を有することができる。CC発電システムの様々な始動運転条件についての始動持続期間を正確に予測する始動スケジュールに対する長年にわたる強い要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,206,644号公報
【発明の概要】
【0012】
ガスタービンエンジン、蒸気タービン、並びにユーザ入力デバイス及び出力デバイスを含むコンピュータ制御システムを備えた複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法は、複合サイクル発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間を入力する段階と、複合サイクル発電システムの所定運転条件の現在値を収集する段階と、コンピュータ制御システムが、所望時間及び現在値に基づいて予報起動時間を生成するアルゴリズムを実行し、複合サイクル発電システムが、予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする段階と、コンピュータシステムが、予報起動時間を出力デバイスに出力する段階と、を含む。
【0013】
ガスタービンエンジン、蒸気タービン、及びコンピュータ制御システムを備えた複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法は、発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間を入力する段階と、発電システムの所定運転条件の現在値を入力する段階と、コンピュータ制御システムが、発電システム又は同様の発電システムの以前の起動期間に所定運転条件を関連付けるデータベースからデータを取り出す段階と、コンピュータ制御システムが、所望時間、現在値、及び取り出したデータに基づいて予報起動時間を生成するアルゴリズムを実行し、発電システムが、予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷に到達するよう予測されるようにする段階と、コンピュータシステムが、予報起動時間を出力デバイスに出力する段階と、を含む。
【0014】
ガスタービンエンジン、蒸気タービン、並びにユーザ入力部及び表示装置を有する制御システムを備えた複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法は、現在時間での蒸気タービン温度の現在タービン温度を決定する段階と、現在時間から発電システムが予め定義された出力レベルになる目標時間までの期間として給電可能負荷に対する目標時間期間を決定する段階と、現在時間から発電システムの始動シーケンスの起動時間までの期間として予報起動時間期間を選択する段階と、予報起動時間期間及び現在タービン温度に基づいて、予報起動時間の推定タービン起動温度を決定する段階と、推定タービン起動温度を用いて、始動シーケンスの推定時間期間を決定する段階と、予報起動時間期間と始動シーケンスの推定時間期間とを合計して総時間期間を算出する段階と、第1の時間から目標時間までの目標時間期間と総時間期間とを比較する段階と、推定総時間が目標時間期間の所定期間内にあると該比較により判定された場合、予報起動時間期間を用いて始動シーケンスを起動するタイミングを決定する段階と、推定総時間が目標時間期間の所定期間外にあると比較により示された場合、予報起動時間を減分する段階と、当該方法の各段階を繰り返す段階と、を含む。
【0015】
ガスタービンエンジン(GT)と、少なくとも1つの蒸気タービン(ST)と、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)のユーザ入力部及び表示装置を有するコンピュータを含む制御システムとを備えた複合サイクル発電システムの起動時間を予報する方法は、蒸気タービンの少なくとも1つのうちの最新時間に対応する温度を制御システムに入力する段階と、制御システムが、第1の時間から発電システムが給電可能負荷にあるようにスケジュールされる目標時間までの期間として目標時間期間を決定する段階と、制御システムが、第1の時間から発電システムの始動シーケンスの起動までの期間として予報起動時間期間を選択する段階と、予報起動時間期間及び第1の温度に基づいて、コントローラにより予報起動時間で生じる推定タービン温度を決定する段階と、推定タービン温度に基づいて、コントローラにより始動シーケンスの推定時間期間を決定する段階と、コントローラにより、予報起動時間期間と始動シーケンスの推定時間期間とを合計し、第1の時間から始動シーケンスの終わりまでの推定総時間を生成する段階と、コントローラにより、推定総時間及び目標時間期間を比較する段階と、コントローラが、比較の実施時に推定総時間が目標時間期間の所定期間内にあると判定した場合に、予報起動時間を出力する段階と、コントローラが、推定総時間が目標時間期間の所定期間外にあると判定した場合に、予報起動時間を減分する段階と、本方法を繰り返す段階と、を含む。
【0016】
ガスタービン及び蒸気タービンを有する複合サイクル発電システムの予報起動期間を生成するコンピュータ制御システムは、複合サイクル発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間と、複合サイクル発電システムの所定運転条件の現在値とを受け取るユーザ入力部と、予報起動時間を出力し、複合サイクル発電システムが予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする出力デバイスと、プロセッサと、電子メモリと、を備え、当該電子メモリが、所望時間及び現在値を示すデータと、発電システム又は同様の発電システムの起動期間に所定運転条件を関連付ける履歴情報を有するデータベースと、所望時間と、現在値と、データベースから取り出されるデータとに基づいて予報起動時間を生成するアルゴリズムと、を記憶している。
【0017】
ガスタービン及び蒸気タービンを含む複合サイクル発電システムの制御システムは、プロセッサと、以前の始動プロセスのデータベース及び将来の始動プロセスの起動時間をスケジュールするコンピュータプログラムを記憶する電子メモリとを備え、プログラムによって、制御システムに対する入力として蒸気タービンの現在温度を入力する段階と、制御システムが、現在時間から発電システムが給電可能負荷になるようスケジュールされる目標時間までの期間として給電可能負荷期間に対する時間期間を決定する段階と、現在時間から発電システムの始動プロセスの起動時間までの期間として予報起動時間期間を選択する段階と、予報起動時間期間及び蒸気タービンの少なくとも1つのうちの現在温度に基づいて、予報起動時間での推定ロータ温度を決定する段階と、推定ロータ温度に基づいて、予報起動時間に開始され、発電システムが予め定義された給電可能負荷に到達したときに終了する期間である始動プロセスの推定時間期間を決定する段階と、予報起動時間期間と始動プロセスの推定時間期間とを合計し、給電可能負荷までの総時間を生成する段階と、給電可能負荷までの総時間と、現在時間から目標時間までの時間期間とを比較する段階と、比較の実施時に給電可能負荷までの総時間が目標時間までの現在時間の所定期間内にあるとコントローラが判定した場合に、始動プロセスを起動するタイミングを決定する段階と、比較時に給電可能負荷までの総時間が目標時間までの現在時間の所定期間外にあるとコントローラが判定した場合に、所定期間だけ予報起動時間を減分する段階と、本方法を繰り返す段階とを含む処理段階をプロセッサに実施させるようにする。
【0018】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、図面全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むと更に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】例示的な複合サイクル発電システムの概略図。
【図2】複合サイクル発電システムの始動シーケンスの起動を予報するための例示的なヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)コンピュータシステムにより生成されるコンピュータ表示スクリーンのスクリーン画像。
【図3】複合サイクル発電システムの以前の始動シーケンスの統計データの例示的表現を示すコンピュータ表示スクリーンのスクリーン画像。
【図4】複合サイクル発電システムのコントローラのデータベース内に記憶されたデータの例示的表現を示すコンピュータ表示スクリーンのスクリーン画像であり、該データベースは、システム及び任意選択的に同様のシステムの前の始動シーケンスに関する履歴情報を含む。
【図5】複合サイクル発電システムの始動シーケンスの予報起動を生成するため、コントローラによって実行されるアルゴリズムの例示的なフローチャート。
【図6】複合サイクル発電システムの始動シーケンスの予報起動を生成するため、コントローラによって実行されるアルゴリズムの例示的なフローチャート。
【図7】複合サイクル発電システムの始動シーケンスの予報起動を生成するため、コントローラによって実行されるアルゴリズムの例示的なフローチャート。
【図8】複合サイクル発電システムの始動シーケンスの予報起動を生成するため、コントローラによって実行されるアルゴリズムの例示的なフローチャート。
【図9】始動期間中の蒸気タービン(ST)ロータ温度及び出力を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
複合サイクル発電システム(プラントとも呼ばれる)のオペレータがプラントの始動プロセスの開始を予測しスケジューリングするのを支援するために、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が開発されてきた。HMIは、ソフトウェアスーツ、プラントの蒸気タービン構成要素のソフトウェアベースのモデル、並びにプラント及び類似のプラントの始動に関する履歴情報のデータベースとオペレータが対話できるようになるスクリーン画像を生成する一連の対話型コンピュータシステムとして具現化することができる。HMIは、オペレータ入力、センサデータ、発電システムにおける制御システム内の補助アルゴリズム、及び他の入力から、複合サイクル発電システムの給電可能負荷に達するスケジュール及び現在の運転条件に関する情報を収集することができる。HMI生成スクリーン画像は、オペレータが実施可能な選択肢、及び以下のような複合サイクル発電システムに関する情報を提示する。
(i)プラント構成(例えば、1つのガスタービンと1つの蒸気タービン(1X1)、2つのガスタービンと1つの蒸気タービン(2X1)、3つのガスタービンと1つの蒸気タービン(3X1))
(ii)現在の条件(例えば、蒸気タービンのロータ温度)
(iii)プラントからの給電可能負荷が要求されるまでの残り時間
(iv)プラントの最近の始動運転の始動性能履歴
(v)プラントの始動シーケンスを開始する提案スケジュール及び予報
(vi)蒸気ロータ温度を含む、CC発電システムの動作パラメータの最小値、最大値、及び標準偏差などの統計データ履歴
HMIは、プラントの推定始動条件に基づき始動シーケンスを実施するのに必要な時間期間を推定するツールを提供する。HMIツールは、システムにおける蒸気タービンの初期ロータ温度など、既知の始動条件に基づいて始動シーケンスの期間を算出する。既知の始動条件を決定するために、HMIツールは、プラントの始動シーケンスの時間量を推定する計算を実施し、プラントからの電力需要が生じるようスケジュールされたときに給電可能電力レベルに到達させるために、HMIツールが何時始動シーケンスを開始すべきかを予報できるようにする。HMIスクリーンの出力は、プラントオペレータが、通信指令員、系統オペレータ、又は電力業者により要求される起動時間及び燃料消費量などの入力を容易に伝達できるように提示される。HMIコンピュータシステムの技術的作用は、複合サイクル発電システムにおいて、当該システムが開始できる予報起動時間を生成し、例えば電力網に要求電力を提供する予定時間に給電可能負荷に到達させることである。例えば、予報起動時間により、発電システムは、要求電力を提供する予定時間前の3から5分を超えない時間に給電可能負荷に到達できるようになる。
【0021】
始動シーケンス中のタービンの加熱は、プラントの始動シーケンスに必要な時間を決定する際の支配的要因である。蒸気タービンは、ガスタービン及びCC発電システムの他の構成要素に必要な起動期間と比べて、相対的に長い開始期間を必要とする。蒸気タービンを起動する時間を推定することによって、始動シーケンスの期間を推定することができる。蒸気タービンを起動するのに必要な時間は、始動時間期間にロータ温度を相関付けたルックアップテーブルを用いることなどにより、現在の条件と履歴データとの間の相関関係に基づいて決定又はモデル化することができる。蒸気タービンのモデルはまた、予め定義された入力条件に基づいてタービンの動作条件を正確に予測する数学アルゴリズムのセットとすることができる。蒸気タービンのモデルを使用すると、始動シーケンスの期間は、該始動シーケンスの開始時の蒸気タービンの初期温度に基づいて予測することができる。更に、蒸気ロータのモデルを用いて、将来のタービン温度を予測することができる。
【0022】
図1は、1つ又はそれ以上のガスタービンエンジン(GT)12、熱回収蒸気発生器(HRSG)14、1つ又はそれ以上の蒸気タービン(ST)16、蒸気凝縮機23、並びに電力会社網20及び電力網に接続された顧客などの電力需要に対して電力を出力する1つ又はそれ以上の発電機18を含む複合サイクル(CC)発電システム(プラント)10の概略図である。
【0023】
制御システム22は、蒸気タービンのロータ温度、HRSG及び蒸気タービンへの蒸気入口及び出口圧力、ガス及び蒸気タービンの各々による電力出力、ガスタービンによる燃料流量及び消費量、並びに発電機の出力など、システムの構成要素の動作条件を検知することによりCC発電システムを監視し制御する。制御システムは、CC発電システムの下現在及び履歴上の動作条件に関するデータの取り込み、記憶、及び提供を行う。
【0024】
制御システム22はまた、ガスタービンの各々への燃料流量の調整、ガスタービン及び蒸気タービンにおける起動シーケンスの開始、並びにシステムが給電可能負荷レベルに到達した後の電力供給網への発電機の電力出力の連結など、CC発電システムに対して指令を提供する。例えば、制御システムは、制御システムと対話するシステムオペレータにより入力又は承認された始動シーケンスに従ってCC発電システムを起動する指令を生成することができる。制御システム22は、中央処理ユニット(CPU)、ソフトウェア制御スーツなどのソフトウェアプログラムを格納するコンピュータメモリ、ユーザ表示スクリーン24、キーボードなどのユーザ入力デバイス26、並びにCC発電システムを監視するセンサからのセンサ信号及びシステムに関して生成されたデータを受け取る通信モジュールを有するコンピュータ制御システムとすることができる。
【0025】
図2は、複合サイクル発電システムの提案された起動時間を算出するための例示的なヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を示すコンピュータ表示スクリーン24のスクリーン画像30である。スクリーン画像30は、プラントの始動シーケンスの推奨起動時間を算出するための情報及び選択可能な選択肢を提供する。スクリーン画像は、選択可能ナビゲーションボタン32を含み、オペレータが、入力デバイス26を用いて、起動期間算出スクリーン30と図3に示すような性能統計スクリーンとを切り替えるよう選択することができる。加えて、ナビゲーションボタン32を用いてプラント構成(1X1及び2X1で表記されたボタンバーを参照)を設定し、起動時間が予報されることになるプラントのプラント構成をコンピュータシステムに入力することができる。
【0026】
スクリーン画像30は、システムに入力されて、プラントの始動シーケンスの起動時間を予報するのに使用される初期プラント条件を提示する。初期プラント条件は、プラント構成(手動で入力可能)、蒸気タービンの現在温度36(蒸気タービンのロータ温度を検出する温度センサに基づいて自動的に又は手動で入力することができる)、及びプラントが給電可能負荷レベルに到達するようスケジュールされている目標時間38を含む。
【0027】
スクリーン画像上に表示されている入力条件34、36及び38が適正であることをオペレータが確認した後、オペレータが算出スクリーンボタン40を作動させることにより、コンピュータシステムは、予報アルゴリズムに入力条件を適用し、プラントの始動シーケンスを開始する予報起動時間を生成するようにする。起動時間予報42は、スクリーン画像30上に表示される。加えて、スクリーン画像は、始動シーケンスの起動時にプラント内の蒸気タービン(例えば、再熱(RH)蒸気タービン)の予期されるロータ温度44を表示し、始動シーケンスが開始された後に残り時間量46(例えば、145.5分)を表示することができる。
【0028】
スクリーン画像30はまた、ナビゲーションボタン32により選択され且つロータ温度表示44に示される初期ロータ温度を有する同じ構成で作動している間、始動シーケンスを実行する同じプラント及び同様のプラントの履歴情報を表示することができる。履歴情報48は、蒸気ロータ温度の範囲51などの同様の条件及びプラント構成下でのプラントの始動シーケンスの平均期間の比較起動データ50を含むことができる。範囲51は、始動シーケンスの予報起動42時の推定ロータ温度44に対応するよう自動的に選択することができる。履歴情報はまた、同様の条件下で実施される始動シーケンスの計数の表示、及び同様の条件下で実施される始動シーケンスの時間長の範囲54を含むことができる。
【0029】
図3は、プラントの履歴始動プロセスに関する統計データを示すスクリーン画像60である。統計を見るために、オペレータは最初に、ボタン34を用いてプラント構成(例えば、1X1又は2X1)を入力し、起動蒸気タービンロータ温度(例えば、600〜700°F)に対応する温度範囲プルダウンメニュー62を選択する。選択された温度範囲は、スクリーン画像30における温度範囲51として用いることができる。或いは、温度範囲51、62は、プラントの始動シーケンスの起動時の蒸気タービンのロータの推定温度を含む範囲としてコンピュータによって自動的に選択することができる。このスクリーンは、起動時間の問題の解決、ベンチマーク、及び最適化を得ようとするプラントエンジニア及び管理者に合わせて調整される。
【0030】
温度範囲62及びプラント構成34が選択されると、コンピュータシステムは、プラントによって実施される履歴始動シーケンスの統計チャート64を表示し、ここでは始動は、範囲62内の蒸気ロータ温度で開始される。チャート64は、種々の始動パラメータの始動データを示すように配列することができる。例えば、統計データは、時間(例えば、分)及び消費燃料(例えば、100万イギリス熱単位(MMBTU))の観点で始動データを示すことができる。
【0031】
始動データはまた、「プレIPC」から「対負荷IPC」までのチャート64に分けることができる。期間プレIPCは、多くの場合、手動設定に従い、従って、プラントのオペレータにより行われる調整によって変化する。対負荷(給電可能負荷である)IPCからの期間は、自動化される傾向があり、オペレータの手動設定に従わない。チャート64で提示される統計データは、同じプラント構成(1X1又は2X1)及び起動時ロータ温度を有する幾つかの始動プロセスの平均値(EWMA)を表すことができる。提示される統計データは、平均値に加えて、履歴起動についての最小及び最大時間、並びに消費される燃料を含むことができる。加えて、提示される統計データは、本明細書で開示されるような自動予報機構でスケジュールされる(ステージ2)場合と、図9に示すような従来の手動による始動スケジューリング技法でスケジュールされる(ステージ1)、始動プロセスのデータを含むことができる。始動プロセスは、2つ又はそれ以上のステージを含むことができる。本明細書で開示される2つのステージは、図9における例証に過ぎない。
【0032】
スクリーン表示60はまた、始動シーケンスの起動時に蒸気タービンロータ温度に相関付けられた始動シーケンスの全期間のような、履歴プラント始動データの種々の構成を示すグラフ68を選択するグラフ選択ボタン66を含むことができる。始動シーケンスの起動時のロータ温度を相関付けるデータは、プレIPCに対する起動時間の期間及び給電可能負荷に対するIPCの期間に関してグラフ化することができる。説明部70は、スクリーン画像60上に提示されるグラフ69及び他のデータのテキスト説明を提供することができる。
【0033】
プラントの始動シーケンスの起動は、先導するガスタービン(GT)が起動される時点として定義することができる。スクリーン画像60はまた、従来の手動による始動スケジューリング技法と比較して、本明細書で開示されるような自動予報機構を用いることによる時間及び燃料の節減の推定値を表示することができる。
【0034】
図4は、プラント及び可能な同様のプラントの始動プロセスのデータベース82(図1を参照)のデータベースフィールドを示すスクリーン画像80である。データベースは、始動シーケンスの起動時の蒸気タービンのロータ温度についての種々の温度範囲84のデータフィールドを有することができる。温度範囲84は、図2において参照符号51で示され、図3において参照符号62で示される温度範囲に対応することができる。データフィールドはまた、データベースに提示される各始動シーケンスの起動日;再熱及び高圧蒸気タービンなどのプラント内の蒸気タービンの1つ又はそれ以上についてのロータ温度;起動からIPC、IPCから給電可能負荷の時間期間(例えば、分)並びに始動プロセスの総時間;起動からIPC、IPCから給電可能負荷のエネルギー消費量(MMBTU)並びに始動プロセス中に消費された合計エネルギー;及び始動プロセス中のピークロータ応力に関するデータについての追加フィールド86を含むことができる。加えて、スクリーン表示80は、オペレータが特定の始動プロセスからのデータをデータベースに恒久的に入力可能にするデータ入力フィールド88を含むことができる。
【0035】
図5及び6は、複合サイクル(CC)発電システムを起動するのに必要な時間期間を予報するアルゴリズム100の例示的なフローチャートを示す。アルゴリズムの起動時には、データ102は、例えば、(i)CC発電システムの構成(例えば、ガスタービン及び蒸気タービンの1X1及び2X1構成)、(ii)蒸気タービンの現在メタル温度(例えば、再熱蒸気タービンのタービンバケットの第1の列のメタル温度)、及び(iii)CC発電システムが給電可能負荷レベルで電力を生成するようになるまでの時間量など、複合サイクル(CC)発電システム(プラント)の初期条件に関して収集される。
【0036】
蒸気タービンは、CC発電システムの他の構成要素と比べて加熱速度が遅いので、蒸気タービンのロータ温度は、入力条件として選択することができる。蒸気タービンは、CC発電システムが所期の負荷において給電可能電力を生成する温度まで加熱するのに最も長い時間を必要とする。ステップ102において入力されるこれらの初期条件は、アルゴリズム100を実行するコンピュータシステムのメモリ内に手動で入力することができ、ここでCC発電システムの起動期間についての予報を生成することになる。或いは、初期プラント条件は、CC発電システムを監視するセンサからのデータ収集に基づいて、CC発電システムからの給電可能負荷電力を発電負荷が必要とするときのタイミングスケジュールに関するなど、コンピュータに送られるデータについてコンピュータシステムにより自動的に取得することができる。
【0037】
予報起動時間は、現在時間から、電力網に負荷を供給するようスケジュールされたときにシステムが給電可能負荷レベルに到達するように、蒸気タービンCC発電システムが起動される時点までの時間である。最初に、ステップ104において、予報起動期間(A)は、プラントが電力網に給電可能負荷を提供するようスケジュールされるまでの残りの期間(D)に等しいように設定される。起動期間(A)の初期設定は、プラントが給電可能負荷に直ちに到達するときの現実的な実起動時間ではない。
【0038】
起動期間(A)の初期設定は、プラントが電力負荷レベルを供給するようスケジュールされたときに、プラントが給電可能電力負荷レベルに到達できるようになる実際の起動時間を決定する算出部109を開始するのに使用される。算出部109は、予報起動期間(A)が、時間期間(D)終了時にプラントの給電可能負荷電力レベルへの到達をもたらすことになるかどうかを判定する。残りの期間(D)は、プラントが給電可能負荷電力を提供するようスケジュールされるまでの残りの期間である。予報期間(A)が、時間期間(D)終了時にプラントの給電可能負荷電力レベルへの到達をもたらさない場合、予報時間が調整され、例えば、ステップ111において5分だけ減分される。
【0039】
算出部109では、プラントが給電可能電力レベルに到達するまでの予報時間期間(A+Z)と、プラントが電力レベルに到達するようスケジュールされるまでの残りの期間(D)との間で比較106を行う。予報時間期間(A+Z)が、残りの期間(D)の所定時間期間106(例えば、5分)内にある場合、起動期間(A)は許容可能であり、アルゴリズム100は、現在時間に付加された起動期間として正確な起動時間を算出する。
【0040】
ステップ110での算出109は、メタル冷却時間期間(M)と後続の始動持続期間との合計として期間(X)を求め、現在時間からプラントが給電可能負荷に到達するまでの期間を推定する。冷却時間期間(M)の間、蒸気タービンは冷却が継続され、蒸気タービンのロータのメタル温度は、現在ロータ温度まで下がる。時間「M」は、蒸気タービンが現在冷却温度まで冷却するのに要する時間数である。
【0041】
始動シーケンスの期間(Z)を推定するために、アルゴリズムは、始動シーケンスが開始されたときに蒸気タービンの推定ロータ温度(Y)112を用いる。始動シーケンスが開始されたときのロータ温度(Y)を推定するために、アルゴリズム100は、現在ロータ温度から始動シーケンスの推定起動時間におけるロータ温度までのロータの冷却によるロータメタル温度低下を求める。
【0042】
ステップ112において、冷却期間(X)を用いて、起動時間(A)での予測メタル温度(Y)を求める。メタル温度(Y)の決定は、例えば、再熱(RH)蒸気タービン内のタービンブレードの第1の列などの特定のメタル温度を相関付ける、コンピュータメモリ内に記憶されたルックアップテーブルを用いることができる。蒸気タービン/ロータのルックアップテーブル又はモデルは、RH蒸気タービンにおけるロータ冷却時間及び温度に関するプラントの履歴データに基づいて作成することができる。
【0043】
ステップ114では、起動時間(A)として予測メタル温度(Y)に基づいて始動シーケンスの予報時間期間(Z)を求める。始動の時間期間(Z)は、起動時間(A)からCC発電システムが給電可能負荷電力レベルに到達するまでの期間である。予報始動時間期間(Z)は、予報始動時間期間(Z)を始動時間期間の開始である起動時間(A)のメタル温度(Y)に相関付ける、CC発電システムのコンピュータに格納されたルックアップテーブルから求めることができる。始動時間期間(Z)を決定するルックアップテーブルは、同じ構成(例えば、1X1及び2X1)を有する同じ又は同様のCC発電システムに対する前の始動点順からの経験的データに基づいて策定することができる。
【0044】
ステップ106において、起動時間(A)が決定され、CC発電システムが給電可能負荷を供給するようスケジュールされたときに時間(D)の所定範囲内にある始動時間期間(A)が得られる。現在時間及び起動までの時間(A)に基づいて、正確な起動時間が決定される。ステップ118において、図2に示すスクリーン画像に提示されることにより、正確な起動時間がシステムオペレータに表示される。加えて、表示は、起動時間、及びCC発電システムが給電可能負荷レベルに到達するまでの時間のメタル温度(Y)を示すことができる。アルゴリズム100により得られる技術的効果は、起動時間、予測メタル温度、及び給電可能負荷までの総時間の生成及び表示である。
【0045】
予報起動時間(A)が、給電可能負荷の予定される時間(D)の所定期間(例えば、5分)内にない場合(ステップ106)、ステップ116において算出109が繰り返される。算出を繰り返す前に、ステップ111において、起動時間(A)は、5分の所定量などを減分される。起動時間(A)の算出の減分及び算出109の繰り返しによって、起動時間(A)は、給電可能負荷を電力網又は他の顧客施設に供給されるようスケジュールされる時間にCC発電システムが到達する結果をもたらす始動手順が得られるまで調整されることになる。
【0046】
図7及び8は、CC発電システム(プラント)における予報起動時間(A)を決定するアルゴリズム120の例示的なフローチャートである。現在の蒸気ロータ温度124及び初期推定起動時間(A)126は、コンピュータへの入力データとして提供され、プラントのコンピュータのメモリ内に電気的に記憶される蒸気タービンロータモデル128に適用される。蒸気タービンロータモデル128は、再熱(RH)蒸気タービンなど、プラント内の蒸気タービンのロータのメタル冷却率をシミュレートする。モデル128は、蒸気タービン冷却期間中に種々の時間(例えば、5分毎)でのロータメタル温度を相関付けるルックアップテーブルとすることができる。現在ロータ温度及びプラントを起動する推定時間の入力データ124、126に基づいて、コンピュータは、蒸気タービンロータモデルにアクセスし、システムの起動時のロータの予測温度(Y)130を決定する。
【0047】
始動シーケンスの起動時の予測ロータ温度(Y)130及びプラント構成(1X1及び2X1)133は、同じプラント又は同様のプラントにおけるプラント起動の履歴起動のデータベース132にアクセスするのに用いる入力である。データベースは、プラント始動運転の起動からプラントが給電可能負荷に到達したときまでの時間期間に関する情報を有する。データベースは、最新の始動手順に関する情報を含むことができる。データベースを格納するコンピュータメモリに十分な記憶容量が不足している場合、古い始動期間に関するデータは、データベースから消去することができる。コンピュータは、データベース132にアクセスすることによって、始動シーケンスの予測始動時間期間(Z)134を生成し、ここで期間(Z)は、プラントの起動から該プラントが給電可能負荷に到達したときまでである。始動期間(Z)は、プラントが同じ構成を有して同様の蒸気タービンロータ温度で起動したときに実施されるプラントの前の始動シーケンスに基づく平均始動シーケンス挙動をベースとすることができる。
【0048】
ステップ136において、予測始動時間期間134が現在推定起動時間に付加され、予報起動時間と始動期間との総和を得る。プラントが給電可能負荷140に到達するよう予報されるまでの総時間は、プラントが給電可能負荷レベルに到達するようスケジュールされた目標時間(D)144と比較142される。
【0049】
推定総時間(T)140と目標時間(D)144との差違が、許容差(α)の予め定義された期間内にある場合、現在推定起動時間(A)140がコンピュータによって関連表示デバイス148に出力され、該表示デバイスは、プラントが起動されて始動期間が始まる予報起動時間122を現在推定起動時間(A)138として月、日、及び年並びに時間及び分で示す。加えて、コンピュータは、始動シーケンスの起動時の蒸気タービンの予測ロータ温度(Y)、及び現在時間からプラントが給電可能電力負荷レベルに到達したときまでの推定総時間(T)を出力することができる。
【0050】
許容差(α)146の期間は、手動設定され且つプラントが給電可能電力負荷レベルに到達するのに許容可能な目標時間前後の時間期間(例えば、5分から30分)を定める入力とすることができる。
【0051】
ステップ142において、目標時間期間(D)144と給電可能負荷(T)140までの現在推定総時間との間の差違が許容差期間146を超える場合には、プラント起動前の現在推定時間が減分(例えば、5分)され、プラント起動前の新しい現在推定時間(A)138を生成する。許容差(α)146の期間は、ステップ152において推定起動時間(A)を減分するのに使用されるのと同じ期間とすることができる。プラント起動前の新しい現在推定時間(A)138を用いて、アルゴリズム120が繰り返されて、プラントが給電可能負荷に到達するまでの新しい推定時間を生成する。プラントが給電可能負荷に到達するまでの総推定時間(T)が、プラントが給電可能負荷にある目標時間(D)の許容差期間内になるまで、現在推定起動時間(A)は順次減分され、アルゴリズムが繰り返されることになる。
【0052】
図9は、複合サイクル発電システムの例示的な始動シーケンスを示すタイムチャートである。図示するように、シーケンスは、発電システムがシャットダウン160したときに始まり、この時点では、システム全体又は少なくともガスタービン(GT)の出力がゼロに低下する。シャットダウン後、高温ガスが蒸気タービン(ST)を通過しないので、STロータ温度は漸次的に低温になる。ロータは、ガスタービンからの高温ガスが蒸気タービンに適用されるときまで連続して冷却され、この時点164で蒸気タービンが回転すなわち「転動」を開始する。STロールポイントの前に、少なくとも先導するガスタービンが起動166される。STロールポイントの後、STロータ温度が、CC発電システムの出力168と共に上昇167し始める。STロータ温度が定常運転レベル170に到達すると、システムは、給電可能負荷レベル172に到達する。
【0053】
オペレータは、CC発電システムが給電可能電力を供給するようスケジュールされたときに、システムに給電可能負荷レベルに到達させることを要求している。オペレータは、現在時間、現在時間でのSTロータ温度、並びにシステムが給電可能電力を供給するようスケジュールされるタイミングを認識する。この情報は、HMIツールに入力され、本明細書で開示されるアルゴリズムを適用し、少なくとも先導ガスタービンを起動するタイミング(期間A)を決定する。
【0054】
本発明の特定の特徴のみを本明細書で例示し説明してきたが、当業者であれば、多くの変更形態及び変形が想起されるであろう。従って、添付の請求項は、本発明の真の技術的思想内にあるこのような全ての変更形態及び変形を保護することを意図している点を理解されたい。
【符号の説明】
【0055】
10 複合サイクル(CC)発電システム
12 ガスタービン(複数)
14 熱回収蒸気発生器
16 蒸気タービン
18 発電機
20 電力会社網
22 制御システム
23 凝縮器
24 表示スクリーン
26 ユーザ入力デバイス
30 図2の算出の起動期間のスクリーン画像
32 ナビゲーションボタン
34 プラント構成
36 ロータ温度
38 プラントが給電可能負荷に到達する目標時間
40 算出ボタン
42 起動時間予報
44 起動時のロータ温度
46 起動までの時間
48 履歴データ
50 比較起動データ
51 ロータ温度範囲
52 同様の起動数
54 同様の始動シーケンスの期間範囲
60 図3のスクリーン表示
62 温度範囲選択
64 始動統計データ
66 入力ボタン
68 始動データのグラフ
70 グラフの説明部
72 推定燃料及び時間節減
80 図4のスクリーン画像
82 データベース(fig.1)
84 温度範囲
86 追加データベースフィールド
88 始動シーケンスのデータを記憶するためのデータ入力フィールド
100 予報起動期間に対するアルゴリズム
102 起動条件に関する初期情報
104 給電可能負荷時間に等しい起動時間
106 予報時間と給電可能出力時の時間との比較
108 正確な起動時間
109 算出(破線ボックス)
110 時間期間X
111 調整起動時間A
112 起動時間時のメタル温度(Y)決定
114 メタル温度(Y)の起動平均時間を決定する
116 算出109の繰り返し
118 起動時間,メタル温度、給電可能負荷までの時間を表示
120 図8及び7のアルゴリズム
122 予報起動時間
124 現在ロータ温度
126 初期推定起動時間(A)
128 蒸気タービンモデル
130 起動(Y)時の予測ロータ温度
132 履歴始動シーケンスのデータベース
133 プラント構成
134 予測始動期間
136 予報期間及び始動期間の合計
138 新しい推定起動時間
140 プラントが給電可能負荷に到達するまでの総時間
142 比較
144 プラントが給電可能負荷に到達する目標時間
146 起動時間の許容差期間
148 表示デバイス
150 予報起動時間
152 予報起動時間の減分
160 システムシャットダウン
162 STロータ温度低下
164 ST転動
166 GT起動
168 出力
170 定常STロータ温度
172 給電可能負荷レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(12)、蒸気タービン(16)、並びにユーザ入力デバイス(26)及び出力デバイス(24)を含むコンピュータ制御システム(22)を備えた複合サイクル発電システム(10)の起動期間(42)を予報する方法であって、
前記複合サイクル発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間(38)を入力する段階(144)と、
前記複合サイクル発電システムの所定運転条件の現在値(124)を収集する段階と、
前記コンピュータ制御システムが、前記所望時間及び現在値に基づいて予報起動時間(150)を生成するアルゴリズムを実行し、前記複合サイクル発電システムが、前記予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする段階と、
前記コンピュータシステムが、前記予報起動時間(42)を前記出力デバイスに出力する段階(148)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記コンピュータ制御システムが、前記発電システム又は同様の発電システムの以前の起動期間に前記所定運転条件を関連付けるデータベース(82、322)からデータを取り出す段階と、
前記コンピュータ制御システムが、前記取り出したデータに基づいて予報起動時間を生成する前記アルゴリズム(134)を実行する段階と、
を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定運転条件が、前記蒸気タービンのタービン温度(124)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予報起動時間(40)の出力が、前記制御システムと電気的に連通した表示装置上に提示される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータシステムが、前記予報起動時間での前記所定運転条件の起動条件値を決定(109、118、130)し、該起動条件を適用して、前記データベースから前記起動条件に対応する起動期間を示すデータを取り出すようにする、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複合サイクル発電システムが、前記所望時間(146)より前の5分を超えずに給電可能負荷に到達するよう予測される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガスタービン(12)及び蒸気タービン(16)を有する複合サイクル発電システム(10)の予報起動期間(42)を生成するコンピュータ制御システム(22)であって、
前記複合サイクル発電システムが給電可能負荷に到達するようになる所望時間(38)と、前記複合サイクル発電システムの所定運転条件の現在値(124)とを受け取るユーザ入力部(26)と、
予報起動時間(42)を出力し、前記複合サイクル発電システムが前記予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする出力デバイス(24)と、
プロセッサと、
電子メモリと、
を備え、
前記電子メモリが、
前記所望時間及び前記現在値を示すデータと、
前記発電システム又は同様の発電システムの起動期間に前記所定運転条件を関連付ける履歴情報を有するデータベース(82)と、
前記所望時間と、前記現在値と、前記データベースから取り出され又は前記複合サイクル発電システムの少なくとも一部の数学モデルにより生成されるデータとに基づいて前記予報起動時間を生成するアルゴリズム(109)と、
を記憶している、コンピュータシステム(22)。
【請求項8】
前記所定運転条件(124)が、前記蒸気タービンのタービン温度である、
請求項7に記載のコンピュータ制御システム。
【請求項9】
前記予報起動時間(42)の出力が、表示装置(24)上に提示される、
請求項7に記載のコンピュータ制御システム。
【請求項10】
前記アルゴリズム(109)が、前記予報起動時間での前記所定運転条件の起動条件値を決定し、該起動条件を適用して、前記データベースから前記起動条件に対応する起動期間を示すデータを取り出すようにする、
請求項7に記載のコンピュータ制御システム。
【請求項11】
ガスタービンエンジン(GT)(12)と、少なくとも1つの蒸気タービン(ST)(16)と、ユーザ入力部(26)及び表示装置(24)を有するコントローラ(22)とを含む複合サイクル発電システム(10)の起動時間(42)を予報する方法であって、
(a)前記蒸気タービンの少なくとも1つのうちの最新時間に対応する温度を前記制御システムに入力する段階と、
(b)前記制御システムが、前記最新時間から前記発電システムが給電可能負荷にあるようにスケジュールされる目標時間までの期間として目標時間期間を決定する段階と、
(c)前記制御システムが、前記最新時間から前記発電システムの始動シーケンスの起動までの期間として予報起動時間期間を選択する段階と、
(d)前記予報起動時間期間及び最初の温度に基づいて、前記コントローラにより前記予報起動時間で生じる推定タービン温度を決定する段階と、
(e)前記推定タービン温度に基づいて、前記コントローラにより前記始動シーケンスの推定時間期間を決定する段階と、
(f)前記コントローラにより、前記予報起動時間期間と前記始動シーケンスの推定時間期間とを合計(136)し、前記最新時間から前記始動シーケンスの終わりまでの推定総時間を生成する段階と、
(g)前記コントローラにより、前記推定総時間及び前記目標時間期間を比較する段階と、
(h)前記コントローラが、前記比較の実施時に前記推定総時間が前記目標時間期間の所定期間内にあると判定した場合に、前記予報起動時間を出力する段階と、
(i)前記コントローラが、前記推定総時間が前記目標時間期間の所定期間外にあると判定した場合に、前記予報起動時間を減分する段階と、
前記段階(d)から(h)を繰り返す段階と、
を含む方法。
【請求項12】
段階(d)から(h)は、前記推定総時間が前記目標時間期間の所定期間内にあると前記比較が判定するまで繰り返される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記予報起動時間期間が、前記所定期間に等しい量だけ減分(152)される、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記段階(d)が、前記第1の温度と、第1の時間と前記予報起動時間との間の期間とを入力として受け取り、前記予報起動時間に対応する推定ロータ温度を出力する、蒸気タービンの電子モデル(128)を用いる段階を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記段階(e)が、始動シーケンス中に時間に相関付けられた蒸気タービンロータ温度のデータフィールドを有する始動シーケンスの履歴データベース(82)にアクセスする段階(132)を含む、
請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−69356(P2011−69356A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−198420(P2010−198420)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】