説明

複合ハーネス及びその製造方法

【課題】狭い収容スペースにおいてもハーネスの損傷を起こすことなく通信の高速化を図ることが可能な複合ハーネス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数本の細径同軸ケーブル24と少なくとも1本の光ファイバ25とを有し、これら細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25の中間部が束ねられて束部26とされ、束部26で光ファイバ25が最外層に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径電線及び光ファイバを有する複合ハーネス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や小型ビデオカメラなどの普及により、これら電子機器の小型化や高画質化が求められている。このような要求に対応するために、機器本体と液晶表示部との接続や機器内の配線などに、極めて細い同軸ケーブルが用いられている。それらは配線の容易性から、複数本の同軸ケーブルを集合一体化させた同軸ケーブルハーネスとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−235690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯端末や小型ビデオカメラ等の電子機器において、機器のさらなる小型化や薄型化を図るため、回転や摺動など相対移動される筐体にそれぞれ収容されるハーネスの収容スペースの高さを低くすることが要求されている。その一方、ハーネスにはGbpsオーダーのさらなる高速シリアル通信が要求されている。
しかし、そのために同軸ケーブルの本数を増加するとハーネスの径が大きくなり、限られた収容スペースに収容しきれなくなる。また、電気信号である限りノイズを受信してGbpsオーダーの高速通信では信号が正しく伝送されないという問題が生じうる。
【0005】
本発明の目的は、狭い収容スペースに収容可能であり、かつノイズの影響を受けずに通信の高速化ができ、曲げや捻りを受けても伝送損失の増大や疲労破断のおそれの少ない複合ハーネス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の複合ハーネスは、複数本の細径電線と少なくとも1本の光ファイバとを有し、前記細径電線及び前記光ファイバの端部以外の箇所が束ねられて束部とされ、前記束部で前記光ファイバが最外層に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る複合ハーネスにおいて、前記複合ハーネスの端部で前記細径電線が並列に配置されているとともに前記光ファイバが前記細径電線の配列の端に配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る複合ハーネスにおいて、前記細径電線及び前記光ファイバの端末がコネクタに接続されてなり、前記細径電線及び前記光ファイバが前記コネクタに接続される部分において前記光ファイバの向きが前記細径電線の向きとは異なることが好ましい。
【0009】
本発明に係る複合ハーネスにおいて、前記光ファイバは、全ての前記細径電線よりも長さが長くされていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る複合ハーネスにおいて、前記束部で、束ねられた前記細径電線の外周に沿うように前記光ファイバが巻き付けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る複合ハーネスの接続構造は、上記の複合ハーネスの端部が異なる基板に接続されて配線されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の複合ハーネスの製造方法は、上記の何れかの複合ハーネスを製造する方法であって、
前記複数本の細径電線とともに前記光ファイバを最外層に配置して束ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合ハーネス、及び本発明の製造方法により製造される複合ハーネスは、少なくとも1本の光ファイバを使用するので、高速シリアル伝送をする場合も電線の本数を従来程度の本数とすることができ、狭い収容スペースに収納することができる。しかも、光ファイバには周辺の電磁波によるノイズが乗らないので通信の高速化ができる。
【0014】
また、束部では光ファイバが最外層に配置されているので、束部が変形(湾曲や回動)しても、細径電線が光ファイバを押すことがなく光ファイバに加わる側圧が極力抑えられる。これにより、細径電線に比べて曲げ剛性が高く機械的特性が異質な光ファイバへの応力集中を回避することができる。そして光ファイバが束から飛び出してキンクする(折れる)こともない。よって、光ファイバにおける伝送損失の増大や疲労破断を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の複合ハーネスに係る実施形態の例を示す平面図である。
【図2】束ね部材によって束ねる前の複合ハーネスの平面図である。
【図3】複合ハーネスの束部における断面図である。
【図4】複合ハーネスのコネクタにおける接続状態を示す概略平面図である。
【図5】光ファイバを用いた光伝送路の概略構成図である。
【図6】(A)は上下の基板への複合ハーネスの接続状態を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図7】(A)は上下の基板を重ねた状態を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図8】端部に配線板材を備えた場合の基板への取り付け構造を示す概略断面図である。
【図9】複合ハーネスの変形例を示す平面図である。
【図10】複合ハーネスを、筐体がヒンジにより回動する携帯電話内に配線した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る複合ハーネス及びその製造方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、複合ハーネス20は、複数本(数本から数十本)の細径同軸ケーブル(細径電線)24と少なくとも1本(本実施形態では1本)の光ファイバ25とを有し、配列部21a,21bを除いた中間部が、複数の細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25を束ねた束部26とされている。
細径同軸ケーブル24は、中心軸に直交する径方向の断面において、中心から外側に向かって、中心導体、内部絶縁体、外部導体、外被を有する構成であり、コネクタに接続される部分では端末処理が施されて、外部導体、内部絶縁体、中心導体が段階的に所定長さずつ露出している。
【0017】
なお、細径電線は、細径同軸ケーブル24の他に、細径絶縁電線であっても良い。あるいは、細径同軸ケーブルと細径同軸電線が混在してもよい。細径同軸ケーブル24としては、例えばAWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG42よりも細い同軸ケーブルまたは外径が0.30mmよりも細い同軸ケーブルを用いるのが望ましい。これにより、細径同軸ケーブルハーネス20は曲がり易くすることができる。
【0018】
光ファイバ25は、コアとクラッドからなるガラスファイバを外被で被覆して構成されている。光ファイバ25のコア径は0.008〜0.06mm、クラッド径は0.08〜0.125mm、外被の径は0.18〜0.25mmのものが使用できる。末端ではガラスファイバを露出させる端末処理が施され、ガラスファイバ部分は光部品に挿入されている。この光ファイバ25は、図2に示すように、複数本の細径同軸ケーブル24のいずれのものよりも長くされている。本実施形態では、1本の光ファイバ25を備えているが、この光ファイバ25は、細径同軸ケーブル24よりも少ない数本を備えていても良い。
光ファイバと細径電線の径はほぼ同径のものを組み合わせるのが好ましい。
【0019】
中間部を束ねて束部26とするには、テープまたはスリーブ等の束ね部材27が用いられる。例えば、テープからなる束ね部材27を細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25に巻き付けたり、スリーブからなる束ね部材27に細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25を通すことで、細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25が束ねられている。テープを固定するには巻き付けたテープの両端に接着テープを巻けばよい。テープには、ポリエチレンテープ、PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂テープなどを使用することができる。スリーブはPETや液晶ポリマーなどの合成繊維を編組したまたは編んだものを使用することができる。金属テープや金属糸などを利用した束ね部材を使用すれば細径電線のシールド効果が得られる。
【0020】
図3に示すように、複合ハーネス20の束部26では、光ファイバ25が束の最外層に配置されている。束ねる形状は、複数本の細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25が1つに束ねられていれば良く、不特定な形状であっても良い。また、束ね部材27は、1つで所定長さを束ねるようにしても良く、長さ方向に複数に分割して複数箇所で束ねるようにしても良い。さらに、互いに束ねられた細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25は、互いの位置が入れ替わらない程度にゆるく結束されているのが好ましい。
細径電線の本数は、例えば10〜20本とし、光ファイバを1本または2本とすると束の径は2mm以下とすることができる。
【0021】
また、複数本の細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25は、配列部21a,21bで所定のピッチで配列されてフラット状に並列にされ、コネクタ31,32が接続されている。
コネクタ31に接続される細径同軸ケーブル24は、束部からそのまま延びるようにして各線が並列される。コネクタ31の幅方向(細径同軸ケーブル24が配列される方向)に対して束部26の向きがほぼ垂直である。この接続をT字状接続と呼ぶ。
コネクタ32に接続される細径同軸ケーブル24は、束部から延びて約90°曲げられてから並列されてコネクタ32に接続される。コネクタ32の幅方向は束部の向きとほぼ平行となる。この接続をL字状接続と呼ぶ。
【0022】
このとき、図4(a),(b)に示すように、コネクタへの接続部分では、光ファイバ25が細径同軸ケーブル24の配列の端に配置されている。特に、L字状接続においては、光ファイバ25への曲げ応力を抑えるために、曲率半径の大きい外側の端に光ファイバ25を配置するのが望ましい。なお、図1,図2では、一方がT字状接続、他方がL字状接続の例を示したが、両方ともT字状接続、または両方ともL字状接続としてもよい。
図4の形態では、接続部の近くで光ファイバに余長ができるので、接続部近くで曲げや捻りが生じた場合に過度な引っ張り力が光ファイバや接続箇所に及ばず伝送損失の増加や損傷のおそれがない。
【0023】
ここで、図5は光ファイバ25を用いた光伝送路を示している。光伝送路は、光ファイバ25とこの光ファイバ25の両端に設けられた光部品55,55Aとから構成されている。送光側の光部品55は、フェルール61、光電変換素子62及び電気部品63を有している。受光側の光部品55Aは、フェルール61A、光電変換素子62A及び電気部品63Aを有している。光部品55,55Aには、光ファイバ25が図5の奥行き方向に曲げられて接続されている。
フェルール61,61Aは、ポリエステル樹脂、PPS樹脂およびエポキシ樹脂の何れかを含む材料で形成されたもので、光ファイバ25の端末が挿入される挿通孔61a,61Aaが形成されている。そして、このフェルール61,61Aには、挿通孔61a,61Aaへの光ファイバ25の挿入方向(光ファイバが接続される方向)前方側の端面61b,61Abに、光電変換素子62,62Aが取り付けられており、光ファイバ25と光電変換素子62,62Aとの光軸が直線状に配置されている。フェルール61,61Aと光電変換素子62,62Aとを直接接続するので両者の高さおよび長さを最小とすることができ、接続部の寸法を小さくすることができる。したがってコネクタの寸法も小さくできる。
【0024】
入力側の光電変換素子62としては、電気信号を光信号に変換するためのVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が用いられ、出力側の光電変換素子62Aとしては、光信号を電気信号に変換するためのPD(Photodiode)が用いられる。
入力側の電気部品63としては、VCSELを駆動させるドライバICが用いられ、出力側の電気部品63Aとしては、PDからの信号を増幅させるトランスインピーダンスアンプ(TIA)が用いられる。TIAはPDのなるべく近くに配置するのが好ましい。
各光部品55,55Aは、配線板に印刷された配線回路で結ばれている。これにより配線板上の光部品を密に配置して接続部の寸法を小さくすることができる。したがってコネクタの寸法も小さくできる。
【0025】
そして、この光伝送路では、シリアライザからなるデータ変換器64によってファイル化されたデータの電子信号が、VCSELからなる入力側の光電変換素子62で光信号に変換され、その光信号が光ファイバ25へ入力される。光ファイバ25の出力側では、光信号がPDからなる光電変換素子62Aで電気信号に変換され、その電気信号がデシリアライザからなるデータ変換器64Aによって元のデータ形式に戻される。
なお、シリアライザまたはデシリアライザからなるデータ変換器64,64Aは、配線板51に搭載する必要はなく、また、ノイズが発生するドライバICは、配線板51に搭載しない方が好ましい。これらは機器に搭載する。
このように光ファイバを使用することにより、Gbpsオーダーの高速シリアル通信が可能である。
【0026】
また、細径同軸ケーブル24は、コネクタ31,32の幅(長手)方向に対して略垂直に配置されて接続されており、中心導体24aが接点41に半田付けされ、外部導体24bがグランドバー42によって固定されている。これに対して光ファイバ25は、接続部分において細径同軸ケーブル24の向きとは異なる向きに配置されている。図4に示すように、光ファイバ25はコネクタ31,32の幅方向に対して斜めに配置され、光部品55のフェルールに差し込まれて接続されている。光ファイバ25を細径同軸ケーブルの端に配置するとT字状接続でもL字状接続でも光ファイバ25は束部から斜めに延びてくる。そして、コネクタの幅方向に対する光ファイバの角度が30〜60度となるようにして光ファイバ25をコネクタに接続するのが好ましい。
なお、コネクタ31,32としては、細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25を横一列に配列して接続するタイプでも良く、また、複数段に配列して接続するタイプでも良い。
【0027】
図6及び図7に示すように、本実施形態では、上下に重ねて配置され前後(図6,図7の左右方向)に水平移動する二つの基板11,12間が、複合ハーネス20によって接続されている。基板11,12は、例えば、携帯電話等の機器の相対的にスライドする筐体内にそれぞれ組み込まれている。
【0028】
そして、複合ハーネス20は、全体としてU字状(またはJ字状)になるように両基板11,12に接続されている。これにより、複合ハーネス20を基板11,12の平面視方向におけるU字状形状として両基板11,12間に配線することができる。なお、図6は複合ハーネス20の両端部21a,21bが最も離れた状態であり、図7は両端部21a,21bが最も近接した状態である。基板11,12の水平移動距離は、例えば30mmから60mm程度である。
【0029】
複合ハーネス20は、平面図でみて基板11,12の幅方向(図6(A)の両矢印Wの方向)に湾曲されている。基板11,12の幅が数cmあるので、この方向の曲げ径を十分確保することができる。例えば、図6(A)に示すように、複合ハーネス20の一方の端部21aがスライド方向に対して上基板11の右側(図6(A)において上側)に接続されていれば、他方の端部21bをスライド方向に対して下基板12の左側(図6(A)において下側)に接続する。複合ハーネス20はU字状に曲げられているが、複合ハーネス20を収容するスペースを小さくするためには、U字の幅(直線部分の間隔)が狭いほどよい。なお、光ファイバ25は、複合ハーネス20の湾曲の外周側に配置させることにより、曲率半径を極力大きくして曲げ応力を低減させるのが好ましい。
【0030】
上記の複合ハーネス20を製造するには、複数本の細径同軸ケーブル24及びこれら細径同軸ケーブル24よりも長い光ファイバ25を用意する。次に、細径同軸ケーブル24に対して光ファイバ25を最外層に配置させる。
【0031】
その後、細径同軸ケーブル24の端末を並列に配列させ、さらに、これら細径同軸ケーブル24の配列の端に光ファイバ25を配置させる。そして、細径同軸ケーブル24を、その配列状態をフィルムや治具等で保持しながら、細径同軸ケーブル24の端部から外部導体24bを露出させ、外部導体24bをグランドバー42に半田付け等で固定してまとめる。さらに外部導体24bの先から絶縁体、中心導体24aを露出する。そして、コネクタ31,32の接点41に中心導体24aを半田付けする。接点41または中心導体のピッチは0.3〜0.5mmとすることができる。グランドバー42をコネクタのグランドまたはシェルに接続する。コネクタを組み立てて成端処理を終える。コネクタを使用しない場合は、グランドバーに各線の外部導体を固定して、絶縁体および中心導体を露出し、必要に応じて保護部材で中心導体を覆って成端処理を終える。そして、細径同軸ケーブル24および光ファイバ25の端末以外の部分をテープあるいはスリーブ等の束ね部材27によって束ねて束部26とする。このときに光ファイバを最外層に配置する。
先に束部26を作ってから細径同軸ケーブル24を成端処理するのでもよい。
また、光ファイバ25は、細径同軸ケーブル24とは別に、ガラスファイバを露出させ、光部品55のフェルールに差し込んで固定する。
これにより、中間部が束部26とされ、この束部26で光ファイバ25が最外層に配置された複合ハーネス20が得られる。
【0032】
ここで、複合ハーネス20を製造する際に、光ファイバ25が中央に配置されていると、細径同軸ケーブル24の成端処理時に、光ファイバ25を境として細径同軸ケーブル24が二群に分割されてしまう。これに対して、光ファイバ25を最外層に配置し、しかも、両端部21a,21bで端に配置すると、細径同軸ケーブル24を一群にまとめて成端処理することができ、作業の手間を軽減することができる。また、光ファイバ25の余長を取り易くすることができる。
【0033】
このように、上記複合ハーネス20は、複数本の細径同軸ケーブル24とともに少なくとも1本の光ファイバ25の中間部が束ねられている。光ファイバ25を使用するので細径同軸ケーブルの本数が多くならず、狭い収容スペースにも収納することができ、しかも、通信の高速化を図ることができる。
【0034】
また、複合ハーネス20は、筐体間のヒンジを通されたり、基板11,12に接続されることにより曲げて配線される。そして、基板11,12が相対的に移動するときに、複合ハーネス20には、曲げや捻りが加わる。
【0035】
本実施形態の複合ハーネス20では、光ファイバ25が束部26における最外層に配置されているので、複合ハーネス20に曲げや捻りが加えられたときに細径同軸ケーブル24によって押されることによる側圧が極力抑えられる。これにより、細径同軸ケーブル24に比べて曲げ剛性が高く機械的特性が異質な光ファイバ25への応力集中を回避することができる。よって、光ファイバに側圧がかからず、光ファイバの伝送損失が増加することがなく、かつ疲労破断を防ぐことができる。
【0036】
しかも、光ファイバ25がコネクタの外側へ向かって斜めに配置されているので、コネクタ31,32における光ファイバ25の接続端で無理な曲げが生じない。よって、光ファイバ25の曲げ応力による伝送損失をなくすことができる。
【0037】
また、光ファイバ25が全ての細径同軸ケーブル24よりも長くされている。例えば光ファイバの余長(細径電線よりも長くする長さ)をハーネスの長さの1〜10%とする。これにより、複合ハーネス20を曲げや捻りが加えられた時でも光ファイバ25にかかる引っ張り応力や曲げ応力を極力抑えることができるので伝送損失をなくすことができる。
【0038】
なお、上記実施形態においては、複合ハーネス20の端部21a,21bにコネクタ31,32を取り付けて成端処理した場合について説明したが、複合ハーネス20の細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25を基板11,12に直付けして成端処理することも可能である。細径同軸ケーブル24及び光ファイバ25を基板11,12に直付けする場合には、並列させた細径同軸ケーブル24及びその端に配置させた光ファイバ25の端末を基板11,12に対してフィルムなどで仮止めする。
【0039】
図8に示すように、コネクタ31,32の替わりにFPC基板または硬質基板からなる配線板材72に接続して複合ハーネス20を構成しても良い。この場合、これらFPC基板または硬質基板からなる配線板材72を基板11,12に取り付けることとなる。配線板材72にはスルーホール等を設けることで接続端子41を配線板材72の裏面に導通させ、基板11,12に接続できる。
【0040】
特に、この場合、配線板材72の複合ハーネスが接続される面またはその裏面に、接着性を有する異方性導電フィルム(ACF)またはインターポーザなどの中継部材73を設け、加熱または加圧することにより、中継部材73を介して配線板材72の接続端子41を基板11,12に接続するのが好ましい。これにより、配線板材72の厚さ寸法及び奥行き寸法をそれぞれ抑えることができ、さらなるコンパクト化が図られる。
【0041】
本実施形態の変形例を図9に示す。図9に示す複合ハーネス20は、複数本の細径同軸ケーブル24を束ね、その束ねた細径同軸ケーブル24の外周に、光ファイバ25を曲げによる伝送損失がない程度にゆるく巻いて沿わせ(例えば巻きピッチを5〜20mmとする)、さらに、その周囲を束ね部材27(図9では図示略)によって束ねたものである。
この複合ハーネス20によれば、束ねた細径同軸ケーブル24の外周に、光ファイバ25を巻いて沿わせることにより、必然的に光ファイバ25を細径同軸ケーブル24よりも長くすることができる。よって、湾曲することによる光ファイバ25の引っ張りを極力抑えることができ、引っ張り応力による伝送損失をなくすことができる。
【0042】
さらに他の例として、図10に示すように、複合ハーネス20は、筐体の端部同士がヒンジによって回動可能に連結された携帯電話等の機器に組み込んで使用することもできる。
図10に示す形態では、第1筐体1及び第2筐体2を備えた携帯電話端末3のそれぞれの第1筐体1及び第2筐体2が、複合ハーネス20によって接続されている。
携帯電話端末3は、第1筐体1及び第2筐体2の端部同士が、ヒンジ4によって回動可能に連結され、開閉されることにより位置関係が変化する。第1筐体1及び第2筐体2は、その連結側の端面に、ケーブル挿通孔5,6がそれぞれ形成されており、これらのケーブル挿通孔5,6から、複合ハーネス20の両端がそれぞれ導入されている。また、ヒンジ4には、連通孔4aが形成されており、この連通孔4a内に複合ハーネス20が挿通されている。
複合ハーネス20は、束部では光ファイバが最外層に配置されているので、束部が変形(湾曲や回動)しても、細径電線が光ファイバを押すことがなく光ファイバに加わる側圧が極力抑えられる。これにより、狭いヒンジ4に複合ハーネス20を損傷を起こすことなく通すことができ、光ファイバにおける伝送損失の増大や疲労破断を防いで、第1筐体1に含まれる基板と第2筐体に含まれる基板とを接続して光ファイバによる通信の高速化を図ることができる。
【0043】
図1に示す形状の複合ハーネスを製造するときには、光ファイバをいずれの電線よりも長くかつ図面上の設計長よりも2%長くする。AWG46の細径同軸ケーブル20本の両端にコネクタ付けして細径電線の中央部を束ねる。その後、光ファイバを細径電線の束に添わせる。複合ハーネスが曲げや捻りを受けた場合に外側となることが多い箇所に光ファイバを添わせる。
例えば、図1において複合ハーネス20が右に曲げて使用される場合は、束の左側に光ファイバを添わせる。そしてPTFEテープである束ね部材を巻き付けて束部26とし、その両側に接着剤付きのPETテープを巻いてPTFEテープが解けないようにする。光ファイバ25の両端末はフェルールに挿入され、そのフェルールはコネクタ31,32の所定の箇所に載せられて固定される。コネクタの幅方向に対するフェルールの取付角度は45度とする。光ファイバの余長は束部26、配列部21aおよび配列部21bに吸収される。この複合ハーネスであれば20万回の捻回試験(±90度)の結果、断線なく伝送損失の増加も問題なかった。
一方、光ファイバに余長を持たせず、他の同軸ケーブルと区別なく束ねると、光ファイバが束の内部に取り込まれてしまう。複合ハーネスが20万回の捻回を受ける間に束の内部の電線が外に飛び出す現象がある確立で起こる。光ファイバが飛び出した場合、伝送損失の増加または断線が生じ不良となるものと考えられる。しかし、本発明の複合ハーネスは光ファイバが外に飛び出してキンクすることがないので伝送損失の増大や疲労破断のおそれが非常に少ない。
【符号の説明】
【0044】
20 複合ハーネス
24 細径同軸ケーブル(細径電線)
25 光ファイバ
26 束部
21a,21b 端部
31,32 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の細径電線と少なくとも1本の光ファイバとを有し、前記細径電線及び前記光ファイバの端部以外の箇所が束ねられて束部とされ、前記束部で前記光ファイバが最外層に配置されていることを特徴とする複合ハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載の複合ハーネスであって、
前記複合ハーネスの端部で前記細径電線が並列に配置されているとともに前記光ファイバが前記細径電線の配列の端に配置されていることを特徴とする複合ハーネス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合ハーネスであって、
前記細径電線及び前記光ファイバの端末がコネクタに接続されてなり、前記細径電線及び前記光ファイバが前記コネクタに接続される部分において前記光ファイバの向きが前記細径電線の向きとは異なることを特徴とする複合ハーネス。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の複合ハーネスであって、
前記光ファイバは、全ての前記細径電線よりも長さが長くされていることを特徴とする複合ハーネス。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の複合ハーネスであって、
前記束部で、束ねられた前記細径電線の外周に沿うように前記光ファイバが巻き付けられていることを特徴とする複合ハーネス。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の複合ハーネスの端部が異なる基板に接続されて配線されていることを特徴とする複合ハーネスの接続構造。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の複合ハーネスを製造する方法であって、
前記複数本の細径電線とともに前記光ファイバを最外層に配置して束ねることを特徴とする複合ハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−244800(P2010−244800A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91175(P2009−91175)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】