説明

複合ポリアミド物品

本発明は、複合材料の製造のための、工業用織物の布帛の形を採る補強用材料の含浸に役立つ高流動性ポリアミドの使用に関する。本発明の分野は、複合材料の分野及びそれらの製造方法の分野である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料を製造するための、工業用織物(tissus)の布帛(etoffe)の形を採る補強用材料の含浸に役立つ高メルトフロー(高流動性)ポリアミドの使用に関する。本発明の分野は、複合材料の分野及びそれらの製造方法の分野である。
【背景技術】
【0002】
高性能材料の分野においては、性能及び重量上の利点の理由で、複合材料が優勢的な地位を得ている。従来最もよく知られている高性能複合材料は、熱硬化性樹脂から得られるものであるが、その使用は、小規模から中規模用途、主として航空産業やモータースポーツ、及び最善の場合でも例えばスキーの製造の際のような約15分間程度の製造時間を示すものに限られる。これらの材料のコスト及び/又は製造時間は、それらを大量生産における使用に適合させることを困難にする。さらに、熱硬化性樹脂の使用は溶剤及びモノマーの存在を伴うことが多い。最後に、これらの複合材料はリサイクルが難しい。
【0003】
製造時間に関する1つの対応策は、熱可塑性マトリックスを含む複合材料によって与えられる。熱可塑性ポリマーは一般的に高粘度として知られており、このことは、一般的に非常に稠密なマルチフィラメント束から成る補強用材料の含浸に関しては、制約となっている。市場で入手可能な熱可塑性マトリックスの使用は、含浸における困難をもたらし、長い含浸時間や有意の処理圧力を必要とする。多くの場合、これらのマトリックスから得られる複合材料は、小さな空隙及び含浸されていない領域を示しがちである。これらの小さな空隙は、機械的特性の低下、材料の早過ぎる老化、及び材料が複数の補強層から成る場合の層間剥離の問題をもたらす。この機械的特性の損失の現象は、複合物品の製造のためのサイクル時間が短縮された時に、特に顕著となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、上記の欠点を解消するために、良好な機械的特性等の良好な使用特性を有していながら、短いサイクル時間で製造することができる複合物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は、予期しなかったことに、複合物品の製造において高メルトフローポリアミドを使用することによって、良好な機械的特性、特に良好な剛性、極限強さ、衝撃強さ及び疲労挙動等を示す物品を得ることが、従来より短いサイクル時間でしかも他の処理なしで製造された場合にさえ、可能であることを見出した。このことは、短縮されたサイクル時間を採用する装置を使用することにより、製造コストの低下という利点を示す複合材料を提供することを可能にする。
【0006】
本発明に従う物品は特に、剛性、軽量性及びリサイクルの可能性、並びに良好な表面外観という利点を示す。
【0007】
本発明の第1の主題事項は、複合物品の製造方法であって、少なくとも次の工程:
(a)1〜50Pa・sの範囲の溶融粘度ηを示す溶融状態のポリアミド組成物を、このポリアミドの融点に対して±50℃の温度に保った補強用布帛に含浸させる工程;及び
(b)複合物品を冷却し、次いで回収する工程:
を含む前記方法にある。
【0008】
より特定的には、本発明は、複合物品の製造方法であって、少なくとも次の工程:
(a)8000超の分子量Mnを有し、1〜50Pa・sの範囲の溶融粘度ηを示す、溶融状態のポリアミド組成物を、このポリアミドの融点に対して±50℃の温度に保った補強用布帛に、含浸させる工程;及び
(b)複合物品を冷却し、次いで回収する工程:
を含み、
前記のポリアミド組成物による布帛の含浸を、
・前記布帛上に溶融状態の前記ポリアミド組成物を射出することによって;又は
・前記布帛を粉体若しくはフィルムの形の前記ポリアミド組成物と一緒にし、次いで該ポリアミド組成物を溶融させることによって:
実施する、前記方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
布帛とは、ヤーンやファイバーを任意の方法、特に接着結合、縮充(フェルト加工)、編組(tressage)、製織(tissage)又は編成(tricotage)等によって一体化させて組み立てる(集めて一つにする、assemblage)ことによって得られるテキスタイル表面を意味するものとする。これらの布帛はまた、繊維又はフィラメントの網状構造としても知られている。ヤーンとは、単一のタイプのファイバーから又はいくつかのタイプのファイバーの緊密混合物から得られるモノフィラメント、連続マルチフィラメントヤーン又はステープルファイバーヤーンを意味するものとする。また、いくつかのマルチフィラメントヤーンを組み立てることによって連続ヤーンを得ることもできる。ファイバーとは、細断し、折り又は加工したフィラメント又はフィラメントの集合を意味するものとする。
【0010】
本発明に従う補強用ヤーン及び/又はファイバーは、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル、コイア、黄麻、ケナフ及び/又はそれらの混合物から形成されたヤーン及び/又はファイバーから選択されるのが好ましい。より一層好ましくは、前記補強用布帛は、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル、コイア、黄麻、ケナフ及び/又はそれらの混合物から形成されたヤーン及び/又はファイバーから選択される補強用ヤーン及び/又はファイバーのみから成る。
【0011】
これらの布帛は、100〜1000g/m2の範囲の坪量(即ち重量/m2)を有するのが好ましい。
【0012】
それらの構造は、ランダム、単方向性(1D)又は多方向性(2D、2.5D、3D他)であることができる。
【0013】
本発明に従うポリアミドは、1〜50Pa・sの範囲の溶融粘度ηを示す。この粘度は、50mmの直径を有するプレート/プレートレオメーターを用いて、1〜160秒-1の範囲の段階的な剪断スイープ下で測定することができる。前記ポリマーは、厚さ150μmのフィルムの形又は細粒の形にあるものである。このポリマーをその融点より25〜30℃高い温度にし、次いで測定を実施する。
【0014】
ポリアミドの分子量(Mn)は、好ましくは8000超、より一層好ましくは8000〜20000の範囲であり、様々な造形プロセスの間に満足できる機械的強度及びある程度の品質を有する。
【0015】
半結晶質ポリアミドが特に好ましい。
【0016】
前記ポリアミドは、少なくとも1種の直鎖状脂肪族ジカルボン酸と脂肪族若しくは環状ジアミンとの重縮合又は少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族若しくは芳香族ジアミンとの間の重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸若しくはラクタム自体の重縮合によって得られるポリアミド、並びにそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドより成る群から選択することができる。
【0017】
本発明のポリアミドは特に、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族若しくは環状ジアミンとの重縮合によって得られるPA6.6、PA6.10、PA6.12、PA12.12、PA4.6若しくはMXD6等のポリアミド、又は少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族若しくは芳香族ジアミンとの間の重縮合によって得られるポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミド若しくはポリアラミド等のポリアミド、並びにそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドより成る群から選択される。本発明のポリアミドはまた、少なくとも1種のアミノ酸(このアミノ酸は、ラクタム環の加水分解的開環によって生じさせたものであることができる)又はラクタム自体の重縮合によって得られる例えばPA6、PA7、PA11又はPA12等のポリアミド、並びにそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドから選択することもできる。
【0018】
高メルトフローのポリアミドは特に、それらの合成の際にそれらの分子量を調節する(特にポリアミドのモノマーの重合の前又は間に鎖の長さを変更するモノマー、特にジアミン類、ジカルボン酸類、モノアミン類及び/又はモノカルボン酸類等を添加する)ことによって得ることができる。また、多官能性化合物を重合に添加することも可能である。
【0019】
本発明に従うポリアミドはまた、ポリアミドと鎖の長さを変更するモノマー、特にジアミン類、ジカルボン酸類、モノアミン類及び/又はモノカルボン酸類等とをブレンド、特に溶融ブレンドすることによって、得ることもできる。
【0020】
本発明の組成物はまた、特に上記のポリアミドから誘導されたコポリアミド又はこれらのポリアミド若しくは(コ)ポリアミドのブレンドを含むこともできる。
【0021】
また、高メルトフローポリアミドとして、星形マクロ分子鎖及び適宜に線状マクロ分子鎖を含む星形ポリアミドを用いることもできる。
【0022】
星形構造を有するポリアミドは、星形マクロ分子鎖及び随意としての線状マクロ分子鎖を含むポリマーである。斯かる星形マクロ分子鎖を含むポリマーは、例えば仏国特許第2743077号明細書、仏国特許第2779730号明細書、欧州特許公開第0682057号公報及び欧州特許公開第0832149号公報に記載されている。これらの化合物は、線状ポリアミドと比較して改善されたメルトフローを示すことで知られている。
【0023】
星形マクロ分子鎖は、コア部と少なくとも3個のポリアミド枝部とを含む。枝部は、共有結合により、アミド基を介して又は別の性状の基を介して、コア部に結合する。コア部は、有機化合物又は有機金属化合物、好ましくは随意にヘテロ原子を含む炭化水素化合物であり、これに前記枝部が連結される。枝部は、ポリアミド鎖である。この枝部を構成するポリアミド鎖は、ラクタム又はアミノ酸の重合によって得られるタイプのもの、例えばポリアミド−6タイプのものであるのが好ましい。
【0024】
本発明に従う星形構造を有するポリアミドは、星形鎖に加えて随意に線状ポリアミド鎖を含む。この場合、(星形鎖の量)対(星形鎖の量と線状鎖との合計)の重量比は0.5〜1の範囲(境界を含む)とする。この比は、0.6〜0.9の範囲であるのが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施態様に従えば、星形構造を有するポリアミド、即ち星形マクロ分子鎖を含むポリアミドは、少なくとも
(a)次の一般式(I)のモノマー:
【化1】

(b)次の一般式(IIa)及び/又は(IIb)のモノマー:
【化2】

(c)随意としての次の一般式(III)のモノマー:
【化3】

(ここで、
1は、少なくとも2個の炭素原子を含み、直鎖状又は環状であり、芳香族又は脂肪族であり、且つヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
Aは共有結合又は1〜20個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基であり、
Zは第1アミン官能基又はカルボン酸官能基を表わし、
Yは、Xがカルボン酸官能基を表わす場合には第1アミン官能基を表わし、Xが第1アミン官能基を表わす場合にはカルボン酸官能基を表わし、
2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、2〜20個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含んでいてもよい、置換又は非置換の脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素基を表わし、
mは3〜8の範囲の整数を表わす)
を含むモノマー混合物の共重合によって得られる。
【0026】
カルボン酸とは、カルボン酸及びそれらの誘導体、例えば酸無水物、酸クロリド、エステル等を意味するものとする。
【0027】
これらの星形ポリアミドの製造方法は、仏国特許第2743077号及び仏国特許第2779730号の各明細書に記載されている。これらの方法は、星形マクロ分子鎖を随意に線状マクロ分子鎖との混合物として、生成させるものである。
【0028】
式(III)のコモノマーを用いる場合、熱力学的平衡に達するまで重合反応を実施するのが有利である。
【0029】
また、式(I)のモノマーを押出操作の際に溶融ポリマーとブレンドすることもできる。
【0030】
従って、本発明の別の実施態様に従えば、星形構造を有するポリアミドは、ラクタム及び/又はアミノ酸の重合によって得られるタイプのポリアミドと式(I)のモノマーとを例えば押出装置を用いて溶融ブレンドすることによって、得られる。斯かる調製方法は、例えば欧州特許公開第0682070号及び欧州特許公開第0672703号の各公報に記載されている。
【0031】
本発明の特定の特徴に従えば、R1基は、四価シクロヘキサノイル基等の環状脂肪族基又は1,1,1−プロパントリイル若しくは1,2,3−プロパントリイル基である。本発明にとって好適なR1基の他の例としては、置換又は非置換三価フェニル及びシクロヘキサニル基、四価ジアミノポリメチレン基(有利にはメチレン基の数が2〜12のもの)、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)から得られる基等、八価シクロヘキサノイル又はシクロヘキサジノイル基、及びグリコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール又はマンニトール等のポリオールとアクリロニトリルとの反応の結果として得られる化合物から得られる基を挙げることができる。
【0032】
有利には、式(II)のモノマー中に少なくとも2個の異なるR2基を用いることができる。
【0033】
A基は、メチレン基又はエチレン、プロピレン若しくはブチレン基等のポリメチレン基、又はポリオキシエチレン基等のポリオキシアルキレン基であるのが好ましい。
【0034】
本発明の特定の実施態様に従えば、数mは3以上であり、3又は4であるのが有利である。
【0035】
記号Zが表わす多官能性化合物の反応性官能基は、アミド官能基を生成することができる官能基である。
【0036】
好ましくは、式(I)の化合物は、2,2,6,6−テトラ(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、トリメシン酸、2,4,6−トリ(アミノカプロン酸)−1,3,5−トリアジン及び4−アミノエチル−1,8−オクタンジアミンから選択される。
【0037】
星形マクロ分子鎖の源であるモノマーの混合物は、他の化合物、例えば連鎖抑制剤、触媒又は光安定剤若しくは熱安定剤等の添加剤等を含むことができる。
【0038】
高メルトフローポリアミド及び補強用布帛の含浸工程は、様々な可能な方法に従って、様々なやり方で実施することができる。1以上の補強用布帛に含浸させることも完全に可能である。
【0039】
例えば、少なくとも1又はそれ以上の補強用布帛を入れた成形チャンバー中に溶融ポリアミド組成物を注入することができる。成形チャンバーの内側は、前記ポリアミドの融点に対して±50℃の温度にする。次いで成形チャンバー及び得られた物品を冷却して、最後に該物品を回収することができる。この方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)法の名前で、熱硬化プロセスとして知られており、前もって補強用ファイバーが入れられた密閉成形型中に樹脂を注入することから成る。この方法は、加圧下で実施することができる。
【0040】
また、補強用布帛とポリアミドフィルムとの積層物(スタック)を加温圧縮して成るフィルムスタッキング法によって、本発明に従う複合物品を製造することもできる。特に、1以上の補強用布帛と1以上の高メルトフローポリアミドのフィルムとを接触させ、ポリアミドを溶融させることによって布帛に含浸させる。良好な組み立てのために必要な圧力は、一般的に30バール超である。
【0041】
また、1以上の補強用布帛と前記のポリアミドの粉体(特に微粉)とを接触させ、前記ポリアミドを該ポリアミドの融点又はそれ以上の温度において随意に加圧下で溶融させることによって前記含浸を実施することによって、本発明に従う複合物品を製造することもできる。
【0042】
補強用布帛に前記ポリアミドを含浸させた後に、マトリックスを固化させることによって物品が得られる。ポリアミドの有意の結晶化を防止し、特に物品の特性を維持するためには、冷却を迅速に実施するのが有利となり得る。冷却は、特に5分未満、より一層好ましくは1分未満で実施することができる。例えば、低温流体を循環させることによって成形型を冷却することができる。また、場合によっては、低温の成形型中に複合物品を随意に加圧下で移すことも可能である。
【0043】
本発明に従うポリアミド組成物及び/又は複合物品はまた、物品の製造のために用いられるポリアミドをベースとする組成物中に通常用いられるすべての添加剤をも含むことができる。添加剤の例としては、熱安定剤、UV安定剤、抗酸化剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤、補強用フィラー及び衝撃強さ改良剤を挙げることができる。
【0044】
また、補強用布帛/ポリアミドの界面の品質を改善するための添加剤を用いることもできる。これらの添加剤は、例えばポリアミド組成物中に組み込むこともでき、補強用布帛のヤーン及び/又はファイバー中に組み込むこともでき、該布帛のヤーン及び/又はファイバー上に存在させることもでき、補強用布帛上に付着させることもできる。これらの添加剤は、アミノシラン若しくはクロロシランタイプのもののようなカップリング剤、又は液化剤若しくは湿潤剤、又はそれらの組合せであることができる。
【0045】
補強用フィラーは、ポリアミド組成物中に組み込むことができる。これらのフィラーは、例えば短いガラスファイバー等の繊維質フィラー、又はカオリン、タルク、シリカ、マイカ若しくはウォラストナイト等の非繊維質フィラーから選択することができる。それらのサイズは、一般的に1〜50μmの範囲である。また、ミクロン以下、さらにはナノメートル寸法のフィラーを、単独で又は他のフィラーに加えて、用いることもできる。
【0046】
本発明は、本発明の方法によって得ることができる物品にも関する。該物品は特に、ポリアミドをベースとし、補強用布帛を含む複合物品であって、前記ポリアミドが1〜50Pa・sの範囲の溶融粘度ηを示す、前記複合物品であることができる。
【0047】
本発明に従う物品は、総重量に対して25〜65体積%の補強用布帛を含むのが好ましい。
【0048】
前記複合物品は、好ましくは、50体積%の補強度について、480MPa超の破壊応力及び25GPa超の弾性率を示す(典型的には0〜5%の範囲の空隙含有率について)。
【0049】
本発明の物品は、完成物品又は半完成物品(予備含浸物品と称することもできる)であることができる。例えば、シートの形の複合物品の加熱成形を実施し、冷却後にそれらに所望の形状を与えることができる。従って、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる複合物品又は予成形品(プレフォーム)に関する。
【0050】
本発明の物品はまた、2つのスキンの間にコアが装填されたサンドイッチタイプの構造であることもできる。本発明の複合材料は、ハニカムタイプ又はフォームタイプのコアとの組合せとして外側層を形成させるために用いることができる。これらの層は、化学的結合又は熱結合によって組み立てることができる。
【0051】
本発明に従う複合構造は、多くの分野、例えば航空産業や自動車産業、電気産業、スポーツ・レジャー産業等において用いることができる。これらの構造は、スキー等のスポーツ器具を製造するため、又は特殊床や仕切り、乗物の車体、広告板等の様々な表面を製造するために、用いることができる。航空産業においては、これらの構造は特に整形(fairing)(流線型化)(胴体、翼、尾翼)に用いられる。自動車産業においては、これらは例えば床や支持台、例えば手荷物棚用に用いられる。
【0052】
本明細書においては本発明の原理の理解を容易にするために特定の言語を用いている。しかしながら、この特定言語の使用によって本発明の範囲が限定されるものではないことを理解されたい。特に、この技術分野の当業者であれば、その一般的知識に基づいて修正及び改良を検討することができる。
【0053】
用語「及び/又は」等とは、「及び」等、「又は」等、及びこの用語に関連する要素の他のすべての可能な組合せの意味を含むものとする。
【0054】
本発明のその他の詳細や利点は、純粋に指標として下に与える実施例を見れば、より一層明らかになるであろう。
【実施例】
【0055】
実施例においては、様々なポリアミドを用いた。
【0056】
PAC1(比較例):256の粘度数VN(ギ酸中、ISO307)を有する標準的な線状ポリアミド6
PAC2(比較例):115のVNを有する標準的な線状ポリアミド6
PA3:国際公開WO97/24388号に従って2,2,6,6−テトラキス(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノンの存在下でカプロラクタムから共重合によって得られた、106のVNを有する星形ポリアミド6
PA4:国際公開WO97/24388号に従って2,2,6,6−テトラキス(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノンの存在下でカプロラクタムから共重合によって得られた、94のVNを有する星形ポリアミド6
PAC3(比較例):134の粘度数VNを有する標準的な線状ポリアミド6.6
PA5:97の粘度数VNを有する高メルトフローポリアミド6.6
PA6:104の粘度数VNを有する高メルトフローポリアミド6.6。
【0057】
これらのポリアミドを、Aresプレート/プレートレオメーター(Rheometrics社)を用い、ポリアミドPA6については250℃、ポリアミドPA6.6については280℃において実施した溶融粘度測定によって、特徴付けした。剪断速度の関数としての粘度の曲線は、懸案下のポリマーがニュートン式挙動を有することを示す:選択した粘度は平坦域における値である(1〜150秒-1の範囲)。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
実施例において用いた補強材は、シートを製造するために必要な寸法、即ち150×150mmに切ったガラス織物製の予成形品の形のものである。用いた補強用布帛は、1200テックスの粗紡から得られた、Synteen and Luckenhaus社からのガラス(0°〜90°)ファイバー製の織物であって、600g/m2の坪量を示すものである。
【0061】
例1:複合材料の製造
【0062】
懸案下の様々なポリマーを例としてフィルムの形に加工した。これらのフィルムは、フラットダイ及びフィルム形成装置を備えた、34の直径及び34のL/Dを有するLeistritz二軸スクリュー押出機を用いて、細粒の押出を行うことによって製造される。押出機の流量は10kg/時間とし、スクリューの回転速度は250rpmとする(プロファイルあり、排気は行わない);温度は、PA6については250℃、PA6.6については270℃にする。ダイの口の間隔は、ほぼ30cmの幅について300μmである。115℃に調節したローラーに対して、送出速度は3.2m/分とする。得られるフィルムは、160〜180μmの範囲の厚さを有する(300mmの幅のスプール)。
【0063】
上で得られたスプールから、ポリマーフィルムを150×150mmの寸法のシートの形で切り取る。
【0064】
加熱プレート(加熱抵抗)と冷却プレート(水の循環)との2つの温度制御プレートを有するSchwabenthan液圧プレス(Polystat 300A)により、複合部品を製造する。150mm×150mmの寸法のキャビティを有する金型を用いる。
【0065】
600g/m2の坪量の織物に対してガラスファイバー80重量%を含む複合材料を製造するために、合計6枚のガラス織物のシート及び5枚のポリマーのシートを含む交互積層物から成る予成形品を前記成形型中に導入する。2つの外側層がガラス織物のシートになるようにする。
【0066】
予成形品を導入する前に、プレスのプレートの温度を前もって、PA6サンプルについては250℃に、PA6.6サンプルについては290℃に、上昇させる。この温度において、数バール(5バール)〜70バールまでの範囲で圧力を加え、この値に保つ;素早く排気を行う。組立体を同じ温度及び圧力に、排気なしで、保つ。次いで一連の排気を再び行い、次いで組立体を再びさらに同じ温度及び圧力に保つ。次いで冷却されたプレートを含む装置上に前記成形型を移し、70バールの圧力下に保つ。高圧及び中圧、短時間及び長時間の様々なタイプのサイクルを用いた。
【0067】
こうして得られた複合部品は、150×150mmの寸法及び約2mmの厚さを有していた。
【0068】
例2:PA6をベースとする複合材料の特徴付け
【0069】
70バール下で20分間のロングサイクル(サイクル1)及び70バール下で5分間のショートサイクル(サイクル2)の2つのタイプのサイクルを実施した。これらの時間は、成形型の加温と加圧冷却との間のサイクルの合計時間に相当する。
【0070】
150×150mmのシートを切り抜いて150×20×2mmの寸法のサンプルを得た。次いでISO規格1110「Plastics-Polyamides-Accelerated conditioning of test specimens」に従って状態調節処理を行う。62%の相対湿度RH下で70℃において11日間のサイクルで複合部品を状態調節することにより、平衡時の水含有率が得られる。
【0071】
23℃、50%の湿度RHにおいて機械的特性を得た(23℃、RH=50%において48時間の試験片の安定化)。
【0072】
ISO規格14125番に従い、Zwick 1478装置を用い、平行六面体の試験片(150×20×2mm)に対して、周囲温度における3点曲げ試験を行う:64mmの棒間距離、5mm/分のクロスヘッド速度。ヤング弾性率E値(GPa)及びピーク最大応力値(MPa)を測定・計算する。
【0073】
【表3】

【0074】
ロング製造サイクル(サイクル1)の場合、得られた機械的性能は高い:26.5〜28GPaの範囲の弾性率値について、506〜611MPaの最大応力(ピーク)。
【0075】
ショート時間(サイクル2)については、異なるポリマーの間での性能の有意の差がはっきりする。ポリマーPAC1及びPAC2は、特性、特に破壊応力の大幅な低下を被り、250MPa未満となった。対照的に、驚くべきことに、ポリマーPA3及びPA4は用いたサイクル時間に拘らずそれらの特性を維持する。
【0076】
例3:PA6.6をベースとする複合材料の特徴付け
【0077】
15.5バールの中庸圧力下で5分間のサイクル(サイクル3)及び4バールの低圧下で5分間のサイクル(サイクル4)の2つのタイプのサイクルを実施した。これらの時間は、成形型の加温と加圧冷却との間のサイクルの合計時間に相当する。
【0078】
150×150mmのシートを切り抜いて150×20×2mmの寸法のサンプルを得た。次いでISO規格1110「Plastics-Polyamides-Accelerated conditioning of test specimens」に従って状態調節処理を行う。62%の相対湿度RH下で70℃において11日間のサイクルで複合部品を状態調節することにより、平衡時の水含有率が得られる。
【0079】
23℃、50%の湿度RHにおいて機械的特性を得た(23℃、RH=50%において48時間の試験片の安定化)。
【0080】
ISO規格14125番に従い、Zwick 1478装置を用い、平行六面体の試験片(150×20×2mm)に対して、周囲温度における3点曲げ試験を行う:64mmの棒間距離、5mm/分のクロスヘッド速度。ヤング弾性率E値(GPa)及びピーク最大応力値(MPa)を測定・計算する。
【0081】
【表4】

【0082】
中庸圧力下で5分間の製造サイクル(サイクル3)の場合、得られた機械的性能は高い:27〜28.5GPaの範囲の弾性率値について、510〜575MPaの最大応力(ピーク)。
【0083】
低圧(サイクル4)については、異なるポリマーの間での性能の有意の差がはっきりする。ポリマーPAC3は、特性、特に破壊応力のかなりの低下を被り、450MPa未満となった。対照的に、驚くべきことに、ポリマーPA5及びPA6は用いたサイクル圧力に拘らずそれらの特性を維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合物品の製造方法であって、少なくとも次の工程:
(a)8000超の分子量Mnを有し、1〜50Pa・sの範囲の溶融粘度ηを示す、溶融状態のポリアミド組成物を、このポリアミドの融点に対して±50℃の温度に保った補強用布帛に、含浸させる工程;及び
(b)複合物品を冷却し、次いで回収する工程:
を含み、
前記のポリアミド組成物による布帛の含浸を、
・前記布帛上に溶融状態の前記ポリアミド組成物を射出することによって;又は
・前記布帛を粉体若しくはフィルムの形の前記ポリアミド組成物と一緒にし、次いで該ポリアミド組成物を溶融させることによって:
実施する、前記方法。
【請求項2】
前記溶融粘度が、50mmの直径を有するプレート/プレートレオメーターを用いて、1〜160秒-1の範囲の段階的な剪断スイープ下で、厚さ150μmのポリアミドのフィルムを、その融点より25〜30℃高い温度において溶融させることによって測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアミドが星形マクロ分子鎖及び任意としての線状マクロ分子鎖を含む星形ポリアミドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記星形ポリアミドが、重合の際にポリアミドのモノマーの存在下でアミン官能基又はカルボン酸官能基タイプの少なくとも3個の同一の反応性官能基を含む少なくとも1種の多官能性化合物を混合することによって得られたものであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
星形構造を有する星形マクロ分子鎖を含むポリアミドが、少なくとも
(a)次の一般式(I)のモノマー:
【化1】

(b)次の一般式(IIa)及び/又は(IIb)のモノマー:
【化2】

(c)随意としての次の一般式(III)のモノマー:
【化3】

(ここで、
1は、少なくとも2個の炭素原子を含み、直鎖状又は環状であり、芳香族又は脂肪族であり、且つヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
Aは共有結合又は1〜20個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基であり、
Zは第1アミン官能基又はカルボン酸官能基を表わし、
Yは、Xがカルボン酸官能基を表わす場合には第1アミン官能基を表わし、Xが第1アミン官能基を表わす場合にはカルボン酸官能基を表わし、
2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、2〜20個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含んでいてもよい、置換又は非置換の脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素基を表わし、
mは3〜8の範囲の整数を表わす)
を含むモノマー混合物の共重合によって得られたものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミドが、少なくとも1種の直鎖状脂肪族ジカルボン酸と脂肪族若しくは環状ジアミンとの重縮合又は少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族若しくは芳香族ジアミンとの間の重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸若しくはラクタム自体の重縮合によって得られるポリアミド、並びにそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドより成る群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミドがポリアミドのモノマーの重合の前又は間にジアミン、ジカルボン酸、モノアミン及び/又はモノカルボン酸タイプのモノマーを添加することによって得られたものであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミドが、ポリアミドと鎖の長さを変更するモノマー、特にジアミン類、ジカルボン酸類、モノアミン類及び/又はモノカルボン酸類等とをブレンドすることによって得られたものであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記補強用布帛が繊維又はフィラメントの網状構造であって、そのヤーン及びファイバーが炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル、コイア、黄麻、ケナフ及び/又はそれらの混合物から形成されたヤーン及び/又はファイバーから選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1の補強用布帛を入れた成形チャンバー中に前記ポリアミド組成物を注入することによって含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
1以上の補強用布帛と1以上の前記ポリアミドのフィルムとを接触させ、前記ポリアミドを溶融させることによって前記含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
1以上の補強用布帛と前記ポリアミドの粉体とを接触させ、前記ポリアミドを溶融させることによって前記含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記複合物品が該物品の総重量に対して25〜66体積%の補強用布帛を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって得ることができる複合物品又は予成形品。

【公表番号】特表2010−538098(P2010−538098A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512665(P2010−512665)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057587
【国際公開番号】WO2008/155318
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】