複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法、複合体モデル解析プログラム、タイヤ製造方法、及び空気入りタイヤ
【課題】複合体モデルに横変形を与えた場合でも安定して解析することができる複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法、複合体モデル解析プログラム、タイヤ製造方法、及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】複合体モデル解析装置は、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成部212bと、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成部212cと、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析部212fと、を備える。
【解決手段】複合体モデル解析装置は、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成部212bと、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成部212cと、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析部212fと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法、複合体モデル解析プログラム、タイヤ製造方法、及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有限要素法(Finite Element Method(FEM))等を用いて、空気入りタイヤ(以下、タイヤ)を有限個の要素でモデル化したタイヤモデルと、ホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデルとを合成することにより、タイヤモデルとホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これにより、試作タイヤを設計・製造し、当該試作タイヤを車輌又はドラム試験器に装着して試験を行う必要がなくなり、試作タイヤの設計・製造や試験を行うための多大な時間、費用、労力及び設備などを低減することができる。
【0004】
ところで、合金製ホイールのように各部分の肉厚が大きく異なる場合、ホイール全体をシェル要素でモデル化された複合体モデルよりも、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルの方が、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することができるため、ホイール全体にソリッド要素が用いられることが一般的である。
【0005】
図11には、ホイールモデル100全体(リム部101及びディスク部102)をソリッド要素SOでモデル化したホイールモデルの一部(センターラインCLより上半分のモデル)のホイール幅方向の断面図を示した。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では、ホイール全体を2次要素以上のソリッド要素でモデル化されたホイールモデルを備えた複合体モデルを用いて解析を行った場合、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することが可能であるが、解析する際に掛かる時間(すなわち、数値解析に掛かる時間)が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
一方、ホイール全体を1次要素のソリッド要素でモデル化されたホイールモデルを備えた複合体モデルを用いて解析を行った場合、数値解析に掛かる時間を短縮することが可能であるが、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することができないという問題があった。
【0008】
このため、ホイールのリム外側面の少なくとも一部をシェル要素でモデル化することにより、ホイール全体をソリッド要素でモデル化した場合と比較して数値解析に係る時間を短縮する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
図12には、ホイールモデル100のリム部101をシェル要素SHでモデル化し、ディスク部102をソリッド要素SOでモデル化したホイールモデルの一部を示した。
【0010】
また、図13には、ホイールモデル100全体(リム部101及びディスク部102)をシェル要素でモデル化したホイールモデルの一部を示した。このようなホイールモデルでは、数値解析に係る時間をさらに短縮することができる。
【0011】
また、図14には、図13に示すようなホイールモデル100全体をシェル要素でモデル化したホイールモデルと、タイヤをモデル化したタイヤモデルとを組み合わせた複合体モデルの一例を示した。タイヤモデルは、ベルトやプライについてはシェル要素や膜要素を使用し、ゴム部やビードワイヤー部についてはソリッド要素を使用し、路面やリム部は剛体シェル要素を使用してモデル化したものである。
【0012】
また、図15には、図14に示すような複合体モデル、すなわちホイールモデル全体(リム部101及びディスク部102)をシェル要素でモデル化したホイールモデルと、タイヤをモデル化したタイヤモデル104とを組み合わせた複合体モデルに対して、タイヤに内圧を充填し、荷重を負荷した状態におけるタイヤ断面の一部を示した。なお、図15では、ディスク部102については省略している。
【特許文献1】特開2002−350294(第2頁−第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2007−1378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図16に示すように、路面Rを図16において左方向に動かしてタイヤを横変形させた場合、タイヤビード部104Bとリム101の端部(リムフランジ)とが接触する部分が、リム101の端部がタイヤビード部104Bに食い込んでしまうことにより異常変形し、解析が停止してしまう場合がある。
【0014】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、複合体モデルに横変形を与えた場合でも安定して解析することができる複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の複合体モデル解析装置は、ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成手段と、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成手段と、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析手段と、を備えている。
【0016】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0017】
なお、請求項2に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面をシェル要素によりモデル化するようにしてもよい。
【0018】
この場合、請求項3に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム部の厚さと、前記ホイールのリム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央と、前記リム中央から前記リム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性を対応付けることが好ましい。
【0019】
また、請求項4に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央をシェル要素によりモデル化するようにしてもよい。
【0020】
この場合、請求項5に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム中央から、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面までの距離を対応付けることが好ましい。
【0021】
また、請求項6に記載したように、前記所定要素は、ソリッド要素であるものとすることができる。
【0022】
請求項7記載の発明の複合体モデル解析方法は、ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成ステップと、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成ステップと、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析ステップと、を含む。
【0023】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0024】
請求項8記載の発明の複合体モデル解析プログラムは、コンピュータを、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置を構成する各手段として機能させる。
【0025】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0026】
請求項9記載の発明のタイヤ製造方法は、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、及び前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラムの何れかを用いて解析された空気入りタイヤを製造することを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明の空気入りタイヤは、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラム、及び前記請求項9記載のタイヤ製造方法の何れかを用いて解析又は製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複合体モデルに横変形を与えた場合でも安定して解析することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0030】
(複合体モデル解析装置の構成)
本実施形態における複合体モデル解析装置200について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における複合体モデル解析装置200の構成を示す図である。
【0031】
図1に示すように、複合体モデル解析装置200は、入力部211と、処理部212(CPU)と、記憶部213と、表示部214と、プログラム保持部215とを備えている。
【0032】
入力部211は、キーボードやマウス等の機器であり、複合体モデル1(図1においては不図示、図7参照)をシミュレーションするときに必要な情報(後述する各種情報や境界条件など)が入力される。この入力部211に入力されたシミュレーションするときに必要な情報は、処理部212に伝達される。
【0033】
処理部212は、各種情報設定部212aと、タイヤモデル作成部212b(タイヤモデル作成手段)と、ホイールモデル作成部212c(ホイールモデル作成手段)と、複合体モデル作成部212dと、境界条件設定部212eと、性能解析部212f(性能解析手段)と、結果出力部212gとを備えている。
【0034】
各種情報設定部212aは、入力部211に入力された各種情報をデータとして記憶部213に設定(記憶)する。なお、「各種情報」とは、材料特性(例えば、タイヤに備えられるゴムやコード等の密度、剛性)や、タイヤやホイールの特性、設計データ(例えば、タイヤやホイールの形状、構造(トレッドパターン等))、後述するホイールの曲げ剛性やリム外側面からリム中央までの距離などである。
【0035】
タイヤモデル作成部212bは、各種情報設定部212aにより設定されたデータ(各種情報)に基づいて、ビードワイヤを含む空気入りタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10(図1においては不図示、図3参照)を作成する。
【0036】
なお、「要素」とは、タイヤモデル10などの構造物を有限の大きさで多数の領域に区分けされた際の領域を示し、上述した各種情報が対応付けられている。
ホイールモデル作成部212cは、各種情報設定部212aにより設定されたデータ(各種情報)に基づいて、リム部とディスク部とによって構成されるホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100(図1においては不図示、図4参照)を作成する。
【0037】
ここで、図5、図6に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面がシェル要素SHによりモデル化されている。また、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化されている。また、ホイールモデル100のディスク部102は、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0038】
複合体モデル作成部212dは、タイヤモデル作成部212bにより作成されたタイヤモデル10と、ホイールモデル作成部212cにより作成されたホイールモデル100とを合成させることによって、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1を作成する。
【0039】
境界条件設定部212eは、入力部211に入力された境界条件をデータとして記憶部213に設定(記憶)する。なお、「境界条件」とは、ドライ路面又はウエット路面等の路面条件や、空気圧や荷重、キャンバー角、スリップ角、速度等のタイヤ条件などである。
【0040】
性能解析部212fは、有限要素法(FEM)を用いて、複合体モデル作成部212dにより作成された複合体モデル1をシミュレーションし、当該複合体モデル1の性能を解析する。
【0041】
なお、「有限要素法(FEM)」とは、上述した要素に各種情報を対応付けて系全体(複合体モデル1)を解析するための手法である。また、「複合体モデルの性能」とは、曲げ剛性や曲げ変形、固有振動数などの総合的なタイヤとホイールとの複合体の性能を示す。
【0042】
結果出力部212gは、性能解析部212fにより解析された複合体モデルの性能の解析結果を表示部214において表示させる指示(信号)を出力する。
【0043】
記憶部213は、入力部211に入力された各種情報や境界条件、すなわち各種情報設定部212aにより設定された各種情報のデータや、境界条件設定部212eにより設定された境界条件のデータを記憶する。
【0044】
表示部214は、結果出力部212gから複合体モデルの性能の解析結果を表示させる指示に従って、当該複合体モデルの性能を表示する。なお、表示部214は、入力部211によって入力された各種情報や境界条件等を表示することも可能である。
【0045】
プログラム保持部215は、各種情報設定部212aやタイヤモデル作成部212b、ホイールモデル作成部212c、複合体モデル作成部212d、境界条件設定部212e、性能解析部212f、結果出力部212g等を処理部212に実行させるための複合体モデル解析プログラムを保持する記憶媒体である。
【0046】
この複合体モデル解析プログラムは、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10を作成するタイヤモデル作成ステップと、リム部とディスク部とによって構成されるホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100を作成するホイールモデル作成ステップと、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1の性能を解析する性能解析ステップとを少なくとも実行させるものである。
【0047】
また、複合体モデル解析プログラムは、ホイールモデル作成ステップにおいて、ホイール幅方向断面において、リム部101の少なくとも一方の端部、すなわちリムフランジの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように、リム部101をシェル要素SHによりモデル化するステップと、ホイールモデル100のディスク部102をソリッド要素SOによりモデル化するステップと、を含む。
【0048】
複合体モデル解析プログラムを保持する記憶媒体は、例えばRAMやハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、ICチップ、カセットテープ等が挙げられる。このようなプログラムを保持した記録媒体によれば、プログラムの保持、運搬、販売等を容易に行うことができる。また、複合体モデル解析装置200は、コンピュータを含んで構成することができ、この場合、複合体モデル解析プログラムは、コンピュータを、複合体モデル解析装置200を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【0049】
なお、本実施形態において、各種情報設定部212aと境界条件設定部212eとを分けて説明したが、必ずしも分ける必要はなく、各種情報設定部212aと境界条件設定部212eとが同一の設定部であってもよい。
【0050】
(複合体モデル解析方法)
次に、図2を参照して、複合体モデル解析方法について説明する。図2は、本実施形態における複合体モデル解析方法を示すフロー図である。
【0051】
図2に示すように、まず、ステップS10において、処理部212(各種情報設定部212a)は、入力部211に入力された各種情報をデータとして記憶部213に設定(記憶)する処理を行う。
【0052】
次に、ステップS20において、処理部212(タイヤモデル作成部212b)は、ステップS10で設定されたデータ(各種情報)に基づいて、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10を作成する処理を行う。
【0053】
具体的には、図3に示すように、タイヤモデル10は、有限個の要素E1によりモデル化されたものである。また、タイヤモデル10は、解析精度を向上させる上で、トレッド部を有限個の要素E2でモデル化したトレッドモデル11を備えていることが好ましい。
【0054】
次に、ステップS30において、処理部212(ホイールモデル作成部212c)は、ステップ10で設定されたデータ(各種情報)に基づいて、ホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100を作成する処理を行う。
【0055】
具体的には、図4に示すように、ホイールモデル100は、ホイールのリム部に対応するリム部101と、ホイールのディスク部に対応するディスク部102とによって構成される。このホイールモデル100のディスク部102には、ボルトやナット等を用いてホイールを車輌に固定するためのボルト孔に対応するボルト孔103が複数設けられている。
【0056】
より具体的には、図5、6に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されたものである。このとき、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化する。
【0057】
また、ホイールモデル100は、ホイールのディスク部に対応するホイールモデル100のディスク部102が、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0058】
次に、ステップS40において、処理部212(複合体モデル作成部212d)は、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1を作成する処理を行う。具体的には、図6に示すように、処理部212は、ステップS20で作成されたタイヤモデル10と、ステップS30で作成されたホイールモデル100とを合成させることによって、複合体モデル1を作成する。
【0059】
なお、図7においては、タイヤモデル10とホイールモデル100とが合成(接触)しているものとして示されているが、当該タイヤモデル10とホイールモデル100とが離れていた場合でも、有限要素法(FEM)を用いて解析を行うことが可能である。
【0060】
ここで、タイヤモデル10とホイールモデル100とが複合されている状態(すなわち、複合体モデル)において、ホイールモデル100のリム外側面101aの少なくとも一部に位置するシェル要素SHには、ホイールのリム部の厚さと、リム中央と、リム中央からリム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性などが対応付けられていることが好ましい。
【0061】
具体的には、図8に示すように、まずホイールのリム部の厚さ(t)を設定する。その厚さ(t)を用いてリム中央101bを求めて、断面2次モーメントを算出する。この断面2次モーメントを“I”、1つのシェル要素SHの断面幅を“b(r)”、リム中央101bからホイール回転軸からの距離を“r”、微小距離を“dr”とした場合、
I=∫r2b(r)dr ・・・(1)
上記(1)式にて、断面2次モーメントが算出される。
【0062】
算出された断面2次モーメントに弾性率を掛け合わせることで曲げ剛性を算出する。すなわち、算出された曲げ剛性が、上述したホイールモデル100のリム外側面101aの少なくとも一部に位置するシェル要素SHに対応付けられていることとなる。
【0063】
次に、ステップS50において、処理部212(境界条件設定部212e)は、入力部211に入力された境界条件をデータとして記憶部213に設定(記憶)する処理を行う。
【0064】
なお、本実施形態において、ステップS10〜ステップS50の処理を行う順序は、必ずしもステップS10〜ステップS50の順序で行う必要はなく、順序を入れ替えてもよい。また、ステップS10とステップS50との処理は同時に行うものであってもよい。
【0065】
次に、ステップS60において、処理部212(性能解析部212f)は、有限要素法(FEM)を用いて、ステップS40で作成された複合体モデル1をシミュレーションし、複合体モデルの性能を解析する処理を行う。
【0066】
具体的には、処理部212は、入力部211に入力された各種情報や境界条件、すなわちステップ10で設定された各種情報のデータや、ステップ50で設定された境界条件のデータに基づいて、有限要素法(FEM)を用いて、ステップ40で作成された複合体モデル1をシミュレーションし、複合体モデルの性能を解析する。
【0067】
次に、ステップS70において、処理部212(結果出力部212g)は、ステップ60で解析された複合体モデル1の性能の解析結果を表示部214において表示させる指示(信号)を出力する処理を行う。
【0068】
このような解析結果に基づいて設計されたタイヤを例えば公知の製造方法によって製造することにより、高性能の空気入りタイヤが得られる。
【0069】
なお、本実施形態では、ディスク部102をソリッド要素でモデル化した場合について説明したが、これに限らず、ディスク部102もシェル要素でモデル化するようにしてもよい。すなわち、ホイールモデル100全体をシェル要素によりモデル化してもよい。この場合、リム部101の両端の形状がホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化することが好ましい。
【0070】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態に係る複合体モデル解析装置200、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムによれば、リム部101の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように、リム部101をシェル要素によりモデル化するので、タイヤビード部とリムフランジとの接触部分がより忠実にモデル化される。このため、タイヤに横変形を与えた場合でもタイヤビード部のリムフランジに接触する部分が異常変形することにより、解析が停止してしまうのを防ぐことができると共に、解析精度を向上させることができる。
【0071】
図9には、本実施形態に係る複合体モデル解析装置200により、リム部101及びディスク部102がシェル要素でモデル化されたホイールモデルとタイヤモデルとの複合体モデルについて、路面Rを図9において左方向に動かしてタイヤを横変形させた場合の解析結果を示した。なお、同図においては、ディスク部102については図示を省略している。
【0072】
図9に示すように、タイヤビード部104Bにリム101の端部(リムフランジ)が接触する部分において、リム101の端部がタイヤビード部104Bに食い込んでしまうことによる異常変形の発生が図16の場合と比較して抑えられていることが判る。
【0073】
ところで、ホイール全体をソリッド要素でモデル化する場合、解析精度を向上させる上で、2次要素以上のソリッド要素でホイール全体をモデル化することが一般的である。2次要素とは、例えば4面体要素の場合に4つの頂点を節点とするとともに、当該頂点を結ぶ辺上の中間にも節点を配置することによって、より細かく解析を行うことができる要素を示す。
【0074】
しかしながら、ホイール全体を2次要素以上のソリッド要素でモデル化すると、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することが可能であるが、数値解析に掛かる時間が長くなってしまう。また、ホイール幅方向断面において、リム部の厚さがディスク部と比べて薄く、当該リム部の厚さ方向には、1要素しか配置することができない場合がある。
【0075】
このホイールのリム部に対応するホイールモデルのリム部を1次要素のソリッド要素でモデル化すると、リム部の厚さ方向の曲げ変形を精度良く解析することができないため、固有振動数を精度良く解析することができないという問題がある。
【0076】
これに対し、本実施形態においては、ホイールモデル100のリム部101におけるリム外側面101aを、シェル要素SHよりモデル化し、ホイールモデル100のディスク部102を、ソリッド要素SOによってモデル化しているので、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルと比べると、節点数を大幅に少なくすることができるため、解析精度を確保しつつ、数値計算に掛かる時間を短縮することができる。
【0077】
また、本発明に係る複合体モデル1は、ホイールモデル100のディスク部102のように肉厚の異なる部分がソリッド要素によりモデル化されていることにより、ホイール全体がシェル要素でモデル化された複合体モデルに比べ、曲げ変形や固有振動数等を精度良く解析することができる。
【0078】
さらに、本発明に係る複合体モデル1は、ホイールのリム中央からリム外側面までの距離の差を用いて算出された曲げ剛性等がシェル要素SHに対応付けられていることにより、断面2次モーメントの算出等において補正を行うことができ、曲げ変形や固有振動数等をさらに精度良く解析することができる。
【0079】
(変更例1)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきでない。
【0080】
上述した実施形態では、ホイールモデル100は、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面101aがシェル要素によりモデル化されているが、変更例1では、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化される。具体的には、図面を参照しながら説明する。なお、上述した本発明の実施形態に係るホイールモデル100と相違する部分を主として説明する。
【0081】
図10は、本発明の変更例1に係るホイールモデル100を示す断面図である。図10に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化されると共に、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイール径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化される。
【0082】
また、タイヤモデル10とホイールモデル100とが複合されている状態(すなわち、複合体モデル)において、ホイールモデル100のリム中央101bに位置するシェル要素SHには、ホイールのリム中央からリム外側面までの距離(d1)などが対応づけられていることが好ましい。
【0083】
このような変更例1に係るホイールモデル100を備えた複合体モデル解析装置200、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムによれば、ホイール全体をシェル要素でモデル化された複合体モデルや、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルが用いられた複合体モデル解析装置に比べ、解析精度を確保しつつ、数値計算に掛かる時間を短縮することができる。
【0084】
具体的には、シェル要素SHがホイールモデル100のリム中央101bに位置することにより、曲げ剛性を精度良く解析することができる。このとき、タイヤとホイールとが接する面の形状を正確に定義する必要がある。そのため、例えばホイールのリム中央からリム外側面までの距離を求め、当該距離の位置でタイヤとホイールとが接触していることを定義することにより、タイヤとホイールとの接触等を精度良く解析することができる。
【0085】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0086】
具体的には、上述した実施形態では、数値解析手法として有限要素(FEM)を用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、境界要素法や差分法、有限体積法などを用いてもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1の解析を行うものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ホイールモデル100に関する解析のみを行うことも可能である。
【0088】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0089】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、従来例及び本発明の実施例に係る複合体モデルを用いて行ったシミュレーションについて説明する。以下において、従来例及び実施例に係る複合体モデルの最大横力について解析した結果について説明する。
【0090】
なお、本実施例に関するデータは、以下に示す条件において測定されたものである。
・タイヤモデルサイズ:PSR205/55R16
・ホイールモデルサイズ:6.5J×16
・内圧:220kPa
・荷重:10.0kN
上記の条件において、横力:10.0kNを目標として路面に横変位を与え、最大横力を求めた。
【0091】
従来例に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図13に示すように、ホイールモデル全体がシェル要素でモデル化されている。このホイールモデルでは、リム部はホイール径方向外側の面がシェル要素でモデル化され、端部は、ホイール径方向内側に折り返されていない。
【0092】
また、実施例1に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図5に示すように、ホイールモデル100は、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面101aがシェル要素によりモデル化されており、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に10mm折り返された形状となるように、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されている。また、ディスク部102は、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0093】
また、実施例2に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図10に示すように、ホイールモデル100は、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化されており、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に10mm折り返された形状となるように、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されている。また、ディスク部102は、ソリッド要素SOでモデル化されている。
【0094】
この従来例及び実施例に係る複合体モデルを用いて解析可能な最大横力の解析結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
従来例では、最大横力が得られる以前に複合体モデルが異常変形し、解析が停止してしまった。この結果、上記表1から明らかなように、従来例では、目標とした最大横力まで安定して解析できていない。
【0096】
これに対し、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部101をシェル要素SHによりモデル化した実施例1、2では、従来例と比較して、目標とした最大横力まで安定して解析できていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態に係る複合体モデル解析装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る複合体モデル解析方法を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係るタイヤモデルを示す図である。
【図4】本実施形態に係るホイールモデルを示す図である。
【図5】本実施形態に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図6】本実施形態に係るホイールモデルのリム部の拡大断面図である。
【図7】本実施形態に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図8】本実施形態に係るホイールモデルのシェル要素を示す周方向断面図である。
【図9】本実施形態に係る複合体モデルに横変形を与えた図である。
【図10】変更例1に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図11】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図12】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図13】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図14】従来例に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図15】従来例に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図16】従来例に係る複合体モデルに横変形を与えた図である。
【符号の説明】
【0098】
1…複合体モデル、10…タイヤモデル、11…トレッドモデル、100…ホイールモデル、101…リム部、101a…リム外側面、101b…リム中央、101c…リム接触面、102…ディスク部、103…ボルト孔、200…複合体モデル解析装置、211…入力部、212…処理部、212a…各種情報設定部、212b…タイヤモデル作成部、212c…ホイールモデル作成部、212d…複合体モデル作成部、212e…境界条件設定部、212f…性能解析部、212g…結果出力部、213…記憶部、214…表示部、215…プログラム保持部、E1,E2…要素、SH…シェル要素、SO…ソリッド要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法、複合体モデル解析プログラム、タイヤ製造方法、及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有限要素法(Finite Element Method(FEM))等を用いて、空気入りタイヤ(以下、タイヤ)を有限個の要素でモデル化したタイヤモデルと、ホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデルとを合成することにより、タイヤモデルとホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これにより、試作タイヤを設計・製造し、当該試作タイヤを車輌又はドラム試験器に装着して試験を行う必要がなくなり、試作タイヤの設計・製造や試験を行うための多大な時間、費用、労力及び設備などを低減することができる。
【0004】
ところで、合金製ホイールのように各部分の肉厚が大きく異なる場合、ホイール全体をシェル要素でモデル化された複合体モデルよりも、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルの方が、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することができるため、ホイール全体にソリッド要素が用いられることが一般的である。
【0005】
図11には、ホイールモデル100全体(リム部101及びディスク部102)をソリッド要素SOでモデル化したホイールモデルの一部(センターラインCLより上半分のモデル)のホイール幅方向の断面図を示した。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では、ホイール全体を2次要素以上のソリッド要素でモデル化されたホイールモデルを備えた複合体モデルを用いて解析を行った場合、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することが可能であるが、解析する際に掛かる時間(すなわち、数値解析に掛かる時間)が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
一方、ホイール全体を1次要素のソリッド要素でモデル化されたホイールモデルを備えた複合体モデルを用いて解析を行った場合、数値解析に掛かる時間を短縮することが可能であるが、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することができないという問題があった。
【0008】
このため、ホイールのリム外側面の少なくとも一部をシェル要素でモデル化することにより、ホイール全体をソリッド要素でモデル化した場合と比較して数値解析に係る時間を短縮する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
図12には、ホイールモデル100のリム部101をシェル要素SHでモデル化し、ディスク部102をソリッド要素SOでモデル化したホイールモデルの一部を示した。
【0010】
また、図13には、ホイールモデル100全体(リム部101及びディスク部102)をシェル要素でモデル化したホイールモデルの一部を示した。このようなホイールモデルでは、数値解析に係る時間をさらに短縮することができる。
【0011】
また、図14には、図13に示すようなホイールモデル100全体をシェル要素でモデル化したホイールモデルと、タイヤをモデル化したタイヤモデルとを組み合わせた複合体モデルの一例を示した。タイヤモデルは、ベルトやプライについてはシェル要素や膜要素を使用し、ゴム部やビードワイヤー部についてはソリッド要素を使用し、路面やリム部は剛体シェル要素を使用してモデル化したものである。
【0012】
また、図15には、図14に示すような複合体モデル、すなわちホイールモデル全体(リム部101及びディスク部102)をシェル要素でモデル化したホイールモデルと、タイヤをモデル化したタイヤモデル104とを組み合わせた複合体モデルに対して、タイヤに内圧を充填し、荷重を負荷した状態におけるタイヤ断面の一部を示した。なお、図15では、ディスク部102については省略している。
【特許文献1】特開2002−350294(第2頁−第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2007−1378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図16に示すように、路面Rを図16において左方向に動かしてタイヤを横変形させた場合、タイヤビード部104Bとリム101の端部(リムフランジ)とが接触する部分が、リム101の端部がタイヤビード部104Bに食い込んでしまうことにより異常変形し、解析が停止してしまう場合がある。
【0014】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、複合体モデルに横変形を与えた場合でも安定して解析することができる複合体モデル解析装置、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の複合体モデル解析装置は、ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成手段と、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成手段と、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析手段と、を備えている。
【0016】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0017】
なお、請求項2に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面をシェル要素によりモデル化するようにしてもよい。
【0018】
この場合、請求項3に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム部の厚さと、前記ホイールのリム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央と、前記リム中央から前記リム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性を対応付けることが好ましい。
【0019】
また、請求項4に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央をシェル要素によりモデル化するようにしてもよい。
【0020】
この場合、請求項5に記載したように、前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム中央から、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面までの距離を対応付けることが好ましい。
【0021】
また、請求項6に記載したように、前記所定要素は、ソリッド要素であるものとすることができる。
【0022】
請求項7記載の発明の複合体モデル解析方法は、ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成ステップと、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成ステップと、前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析ステップと、を含む。
【0023】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0024】
請求項8記載の発明の複合体モデル解析プログラムは、コンピュータを、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置を構成する各手段として機能させる。
【0025】
この発明によれば、リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、リム部の少なくとも一方の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部をシェル要素によりモデル化するので、特に複合体モデルに大きな横変形を与えた場合でも安定して解析することができる。
【0026】
請求項9記載の発明のタイヤ製造方法は、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、及び前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラムの何れかを用いて解析された空気入りタイヤを製造することを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明の空気入りタイヤは、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラム、及び前記請求項9記載のタイヤ製造方法の何れかを用いて解析又は製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複合体モデルに横変形を与えた場合でも安定して解析することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0030】
(複合体モデル解析装置の構成)
本実施形態における複合体モデル解析装置200について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における複合体モデル解析装置200の構成を示す図である。
【0031】
図1に示すように、複合体モデル解析装置200は、入力部211と、処理部212(CPU)と、記憶部213と、表示部214と、プログラム保持部215とを備えている。
【0032】
入力部211は、キーボードやマウス等の機器であり、複合体モデル1(図1においては不図示、図7参照)をシミュレーションするときに必要な情報(後述する各種情報や境界条件など)が入力される。この入力部211に入力されたシミュレーションするときに必要な情報は、処理部212に伝達される。
【0033】
処理部212は、各種情報設定部212aと、タイヤモデル作成部212b(タイヤモデル作成手段)と、ホイールモデル作成部212c(ホイールモデル作成手段)と、複合体モデル作成部212dと、境界条件設定部212eと、性能解析部212f(性能解析手段)と、結果出力部212gとを備えている。
【0034】
各種情報設定部212aは、入力部211に入力された各種情報をデータとして記憶部213に設定(記憶)する。なお、「各種情報」とは、材料特性(例えば、タイヤに備えられるゴムやコード等の密度、剛性)や、タイヤやホイールの特性、設計データ(例えば、タイヤやホイールの形状、構造(トレッドパターン等))、後述するホイールの曲げ剛性やリム外側面からリム中央までの距離などである。
【0035】
タイヤモデル作成部212bは、各種情報設定部212aにより設定されたデータ(各種情報)に基づいて、ビードワイヤを含む空気入りタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10(図1においては不図示、図3参照)を作成する。
【0036】
なお、「要素」とは、タイヤモデル10などの構造物を有限の大きさで多数の領域に区分けされた際の領域を示し、上述した各種情報が対応付けられている。
ホイールモデル作成部212cは、各種情報設定部212aにより設定されたデータ(各種情報)に基づいて、リム部とディスク部とによって構成されるホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100(図1においては不図示、図4参照)を作成する。
【0037】
ここで、図5、図6に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面がシェル要素SHによりモデル化されている。また、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化されている。また、ホイールモデル100のディスク部102は、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0038】
複合体モデル作成部212dは、タイヤモデル作成部212bにより作成されたタイヤモデル10と、ホイールモデル作成部212cにより作成されたホイールモデル100とを合成させることによって、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1を作成する。
【0039】
境界条件設定部212eは、入力部211に入力された境界条件をデータとして記憶部213に設定(記憶)する。なお、「境界条件」とは、ドライ路面又はウエット路面等の路面条件や、空気圧や荷重、キャンバー角、スリップ角、速度等のタイヤ条件などである。
【0040】
性能解析部212fは、有限要素法(FEM)を用いて、複合体モデル作成部212dにより作成された複合体モデル1をシミュレーションし、当該複合体モデル1の性能を解析する。
【0041】
なお、「有限要素法(FEM)」とは、上述した要素に各種情報を対応付けて系全体(複合体モデル1)を解析するための手法である。また、「複合体モデルの性能」とは、曲げ剛性や曲げ変形、固有振動数などの総合的なタイヤとホイールとの複合体の性能を示す。
【0042】
結果出力部212gは、性能解析部212fにより解析された複合体モデルの性能の解析結果を表示部214において表示させる指示(信号)を出力する。
【0043】
記憶部213は、入力部211に入力された各種情報や境界条件、すなわち各種情報設定部212aにより設定された各種情報のデータや、境界条件設定部212eにより設定された境界条件のデータを記憶する。
【0044】
表示部214は、結果出力部212gから複合体モデルの性能の解析結果を表示させる指示に従って、当該複合体モデルの性能を表示する。なお、表示部214は、入力部211によって入力された各種情報や境界条件等を表示することも可能である。
【0045】
プログラム保持部215は、各種情報設定部212aやタイヤモデル作成部212b、ホイールモデル作成部212c、複合体モデル作成部212d、境界条件設定部212e、性能解析部212f、結果出力部212g等を処理部212に実行させるための複合体モデル解析プログラムを保持する記憶媒体である。
【0046】
この複合体モデル解析プログラムは、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10を作成するタイヤモデル作成ステップと、リム部とディスク部とによって構成されるホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100を作成するホイールモデル作成ステップと、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1の性能を解析する性能解析ステップとを少なくとも実行させるものである。
【0047】
また、複合体モデル解析プログラムは、ホイールモデル作成ステップにおいて、ホイール幅方向断面において、リム部101の少なくとも一方の端部、すなわちリムフランジの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように、リム部101をシェル要素SHによりモデル化するステップと、ホイールモデル100のディスク部102をソリッド要素SOによりモデル化するステップと、を含む。
【0048】
複合体モデル解析プログラムを保持する記憶媒体は、例えばRAMやハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、ICチップ、カセットテープ等が挙げられる。このようなプログラムを保持した記録媒体によれば、プログラムの保持、運搬、販売等を容易に行うことができる。また、複合体モデル解析装置200は、コンピュータを含んで構成することができ、この場合、複合体モデル解析プログラムは、コンピュータを、複合体モデル解析装置200を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【0049】
なお、本実施形態において、各種情報設定部212aと境界条件設定部212eとを分けて説明したが、必ずしも分ける必要はなく、各種情報設定部212aと境界条件設定部212eとが同一の設定部であってもよい。
【0050】
(複合体モデル解析方法)
次に、図2を参照して、複合体モデル解析方法について説明する。図2は、本実施形態における複合体モデル解析方法を示すフロー図である。
【0051】
図2に示すように、まず、ステップS10において、処理部212(各種情報設定部212a)は、入力部211に入力された各種情報をデータとして記憶部213に設定(記憶)する処理を行う。
【0052】
次に、ステップS20において、処理部212(タイヤモデル作成部212b)は、ステップS10で設定されたデータ(各種情報)に基づいて、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデル10を作成する処理を行う。
【0053】
具体的には、図3に示すように、タイヤモデル10は、有限個の要素E1によりモデル化されたものである。また、タイヤモデル10は、解析精度を向上させる上で、トレッド部を有限個の要素E2でモデル化したトレッドモデル11を備えていることが好ましい。
【0054】
次に、ステップS30において、処理部212(ホイールモデル作成部212c)は、ステップ10で設定されたデータ(各種情報)に基づいて、ホイールを有限個の要素でモデル化したホイールモデル100を作成する処理を行う。
【0055】
具体的には、図4に示すように、ホイールモデル100は、ホイールのリム部に対応するリム部101と、ホイールのディスク部に対応するディスク部102とによって構成される。このホイールモデル100のディスク部102には、ボルトやナット等を用いてホイールを車輌に固定するためのボルト孔に対応するボルト孔103が複数設けられている。
【0056】
より具体的には、図5、6に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されたものである。このとき、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化する。
【0057】
また、ホイールモデル100は、ホイールのディスク部に対応するホイールモデル100のディスク部102が、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0058】
次に、ステップS40において、処理部212(複合体モデル作成部212d)は、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1を作成する処理を行う。具体的には、図6に示すように、処理部212は、ステップS20で作成されたタイヤモデル10と、ステップS30で作成されたホイールモデル100とを合成させることによって、複合体モデル1を作成する。
【0059】
なお、図7においては、タイヤモデル10とホイールモデル100とが合成(接触)しているものとして示されているが、当該タイヤモデル10とホイールモデル100とが離れていた場合でも、有限要素法(FEM)を用いて解析を行うことが可能である。
【0060】
ここで、タイヤモデル10とホイールモデル100とが複合されている状態(すなわち、複合体モデル)において、ホイールモデル100のリム外側面101aの少なくとも一部に位置するシェル要素SHには、ホイールのリム部の厚さと、リム中央と、リム中央からリム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性などが対応付けられていることが好ましい。
【0061】
具体的には、図8に示すように、まずホイールのリム部の厚さ(t)を設定する。その厚さ(t)を用いてリム中央101bを求めて、断面2次モーメントを算出する。この断面2次モーメントを“I”、1つのシェル要素SHの断面幅を“b(r)”、リム中央101bからホイール回転軸からの距離を“r”、微小距離を“dr”とした場合、
I=∫r2b(r)dr ・・・(1)
上記(1)式にて、断面2次モーメントが算出される。
【0062】
算出された断面2次モーメントに弾性率を掛け合わせることで曲げ剛性を算出する。すなわち、算出された曲げ剛性が、上述したホイールモデル100のリム外側面101aの少なくとも一部に位置するシェル要素SHに対応付けられていることとなる。
【0063】
次に、ステップS50において、処理部212(境界条件設定部212e)は、入力部211に入力された境界条件をデータとして記憶部213に設定(記憶)する処理を行う。
【0064】
なお、本実施形態において、ステップS10〜ステップS50の処理を行う順序は、必ずしもステップS10〜ステップS50の順序で行う必要はなく、順序を入れ替えてもよい。また、ステップS10とステップS50との処理は同時に行うものであってもよい。
【0065】
次に、ステップS60において、処理部212(性能解析部212f)は、有限要素法(FEM)を用いて、ステップS40で作成された複合体モデル1をシミュレーションし、複合体モデルの性能を解析する処理を行う。
【0066】
具体的には、処理部212は、入力部211に入力された各種情報や境界条件、すなわちステップ10で設定された各種情報のデータや、ステップ50で設定された境界条件のデータに基づいて、有限要素法(FEM)を用いて、ステップ40で作成された複合体モデル1をシミュレーションし、複合体モデルの性能を解析する。
【0067】
次に、ステップS70において、処理部212(結果出力部212g)は、ステップ60で解析された複合体モデル1の性能の解析結果を表示部214において表示させる指示(信号)を出力する処理を行う。
【0068】
このような解析結果に基づいて設計されたタイヤを例えば公知の製造方法によって製造することにより、高性能の空気入りタイヤが得られる。
【0069】
なお、本実施形態では、ディスク部102をソリッド要素でモデル化した場合について説明したが、これに限らず、ディスク部102もシェル要素でモデル化するようにしてもよい。すなわち、ホイールモデル100全体をシェル要素によりモデル化してもよい。この場合、リム部101の両端の形状がホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化することが好ましい。
【0070】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態に係る複合体モデル解析装置200、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムによれば、リム部101の端部の形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように、リム部101をシェル要素によりモデル化するので、タイヤビード部とリムフランジとの接触部分がより忠実にモデル化される。このため、タイヤに横変形を与えた場合でもタイヤビード部のリムフランジに接触する部分が異常変形することにより、解析が停止してしまうのを防ぐことができると共に、解析精度を向上させることができる。
【0071】
図9には、本実施形態に係る複合体モデル解析装置200により、リム部101及びディスク部102がシェル要素でモデル化されたホイールモデルとタイヤモデルとの複合体モデルについて、路面Rを図9において左方向に動かしてタイヤを横変形させた場合の解析結果を示した。なお、同図においては、ディスク部102については図示を省略している。
【0072】
図9に示すように、タイヤビード部104Bにリム101の端部(リムフランジ)が接触する部分において、リム101の端部がタイヤビード部104Bに食い込んでしまうことによる異常変形の発生が図16の場合と比較して抑えられていることが判る。
【0073】
ところで、ホイール全体をソリッド要素でモデル化する場合、解析精度を向上させる上で、2次要素以上のソリッド要素でホイール全体をモデル化することが一般的である。2次要素とは、例えば4面体要素の場合に4つの頂点を節点とするとともに、当該頂点を結ぶ辺上の中間にも節点を配置することによって、より細かく解析を行うことができる要素を示す。
【0074】
しかしながら、ホイール全体を2次要素以上のソリッド要素でモデル化すると、ホイールの固有振動数等を精度良く解析することが可能であるが、数値解析に掛かる時間が長くなってしまう。また、ホイール幅方向断面において、リム部の厚さがディスク部と比べて薄く、当該リム部の厚さ方向には、1要素しか配置することができない場合がある。
【0075】
このホイールのリム部に対応するホイールモデルのリム部を1次要素のソリッド要素でモデル化すると、リム部の厚さ方向の曲げ変形を精度良く解析することができないため、固有振動数を精度良く解析することができないという問題がある。
【0076】
これに対し、本実施形態においては、ホイールモデル100のリム部101におけるリム外側面101aを、シェル要素SHよりモデル化し、ホイールモデル100のディスク部102を、ソリッド要素SOによってモデル化しているので、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルと比べると、節点数を大幅に少なくすることができるため、解析精度を確保しつつ、数値計算に掛かる時間を短縮することができる。
【0077】
また、本発明に係る複合体モデル1は、ホイールモデル100のディスク部102のように肉厚の異なる部分がソリッド要素によりモデル化されていることにより、ホイール全体がシェル要素でモデル化された複合体モデルに比べ、曲げ変形や固有振動数等を精度良く解析することができる。
【0078】
さらに、本発明に係る複合体モデル1は、ホイールのリム中央からリム外側面までの距離の差を用いて算出された曲げ剛性等がシェル要素SHに対応付けられていることにより、断面2次モーメントの算出等において補正を行うことができ、曲げ変形や固有振動数等をさらに精度良く解析することができる。
【0079】
(変更例1)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきでない。
【0080】
上述した実施形態では、ホイールモデル100は、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面101aがシェル要素によりモデル化されているが、変更例1では、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化される。具体的には、図面を参照しながら説明する。なお、上述した本発明の実施形態に係るホイールモデル100と相違する部分を主として説明する。
【0081】
図10は、本発明の変更例1に係るホイールモデル100を示す断面図である。図10に示すように、ホイールモデル100は、ホイール幅方向断面において、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化されると共に、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイール径方向内側に折り返された形状となるようにモデル化される。
【0082】
また、タイヤモデル10とホイールモデル100とが複合されている状態(すなわち、複合体モデル)において、ホイールモデル100のリム中央101bに位置するシェル要素SHには、ホイールのリム中央からリム外側面までの距離(d1)などが対応づけられていることが好ましい。
【0083】
このような変更例1に係るホイールモデル100を備えた複合体モデル解析装置200、複合体モデル解析方法及び複合体モデル解析プログラムによれば、ホイール全体をシェル要素でモデル化された複合体モデルや、ホイール全体をソリッド要素でモデル化された複合体モデルが用いられた複合体モデル解析装置に比べ、解析精度を確保しつつ、数値計算に掛かる時間を短縮することができる。
【0084】
具体的には、シェル要素SHがホイールモデル100のリム中央101bに位置することにより、曲げ剛性を精度良く解析することができる。このとき、タイヤとホイールとが接する面の形状を正確に定義する必要がある。そのため、例えばホイールのリム中央からリム外側面までの距離を求め、当該距離の位置でタイヤとホイールとが接触していることを定義することにより、タイヤとホイールとの接触等を精度良く解析することができる。
【0085】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0086】
具体的には、上述した実施形態では、数値解析手法として有限要素(FEM)を用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、境界要素法や差分法、有限体積法などを用いてもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、タイヤモデル10とホイールモデル100との複合体である複合体モデル1の解析を行うものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ホイールモデル100に関する解析のみを行うことも可能である。
【0088】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0089】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、従来例及び本発明の実施例に係る複合体モデルを用いて行ったシミュレーションについて説明する。以下において、従来例及び実施例に係る複合体モデルの最大横力について解析した結果について説明する。
【0090】
なお、本実施例に関するデータは、以下に示す条件において測定されたものである。
・タイヤモデルサイズ:PSR205/55R16
・ホイールモデルサイズ:6.5J×16
・内圧:220kPa
・荷重:10.0kN
上記の条件において、横力:10.0kNを目標として路面に横変位を与え、最大横力を求めた。
【0091】
従来例に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図13に示すように、ホイールモデル全体がシェル要素でモデル化されている。このホイールモデルでは、リム部はホイール径方向外側の面がシェル要素でモデル化され、端部は、ホイール径方向内側に折り返されていない。
【0092】
また、実施例1に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図5に示すように、ホイールモデル100は、リム部101におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面101aがシェル要素によりモデル化されており、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に10mm折り返された形状となるように、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されている。また、ディスク部102は、ソリッド要素SOによりモデル化されている。
【0093】
また、実施例2に係る複合体モデルを構成するホイールモデルでは、図10に示すように、ホイールモデル100は、リム部101の厚さ方向における中央の位置であるリム中央101bがシェル要素SHによりモデル化されており、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に10mm折り返された形状となるように、リム部101がシェル要素SHによりモデル化されている。また、ディスク部102は、ソリッド要素SOでモデル化されている。
【0094】
この従来例及び実施例に係る複合体モデルを用いて解析可能な最大横力の解析結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
従来例では、最大横力が得られる以前に複合体モデルが異常変形し、解析が停止してしまった。この結果、上記表1から明らかなように、従来例では、目標とした最大横力まで安定して解析できていない。
【0096】
これに対し、ホイール幅方向断面において、リム部101のディスク部102との接続側と反対側の端部eの形状が、ホイールの径方向内側に折り返された形状となるようにリム部101をシェル要素SHによりモデル化した実施例1、2では、従来例と比較して、目標とした最大横力まで安定して解析できていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態に係る複合体モデル解析装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る複合体モデル解析方法を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係るタイヤモデルを示す図である。
【図4】本実施形態に係るホイールモデルを示す図である。
【図5】本実施形態に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図6】本実施形態に係るホイールモデルのリム部の拡大断面図である。
【図7】本実施形態に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図8】本実施形態に係るホイールモデルのシェル要素を示す周方向断面図である。
【図9】本実施形態に係る複合体モデルに横変形を与えた図である。
【図10】変更例1に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図11】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図12】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図13】従来例に係るホイールモデルを示す断面図である。
【図14】従来例に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図15】従来例に係る複合体モデルを示す断面図である。
【図16】従来例に係る複合体モデルに横変形を与えた図である。
【符号の説明】
【0098】
1…複合体モデル、10…タイヤモデル、11…トレッドモデル、100…ホイールモデル、101…リム部、101a…リム外側面、101b…リム中央、101c…リム接触面、102…ディスク部、103…ボルト孔、200…複合体モデル解析装置、211…入力部、212…処理部、212a…各種情報設定部、212b…タイヤモデル作成部、212c…ホイールモデル作成部、212d…複合体モデル作成部、212e…境界条件設定部、212f…性能解析部、212g…結果出力部、213…記憶部、214…表示部、215…プログラム保持部、E1,E2…要素、SH…シェル要素、SO…ソリッド要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成手段と、
リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成手段と、
前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析手段と、
を備えた複合体モデル解析装置。
【請求項2】
前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面をシェル要素によりモデル化する
請求項1記載の複合体モデル解析装置。
【請求項3】
前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム部の厚さと、前記ホイールのリム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央と、前記リム中央から前記リム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性を対応付ける
請求項2記載の複合体モデル解析装置。
【請求項4】
前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央をシェル要素によりモデル化する
請求項1記載の複合体モデル解析装置。
【請求項5】
前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム中央から、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面までの距離を対応付ける
請求項4記載の複合体モデル解析装置。
【請求項6】
前記所定要素は、ソリッド要素である
請求項1〜5の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置。
【請求項7】
ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成ステップと、
リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成ステップと、
前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析ステップと、
を含む複合体モデル解析方法。
【請求項8】
コンピュータを、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置を構成する各手段として機能させるための複合体モデル解析プログラム。
【請求項9】
前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、及び前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラムの何れかを用いて解析された空気入りタイヤを製造するタイヤ製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラム、及び前記請求項9記載のタイヤ製造方法の何れかを用いて解析又は製造された空気入りタイヤ。
【請求項1】
ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成手段と、
リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成手段と、
前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析手段と、
を備えた複合体モデル解析装置。
【請求項2】
前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面をシェル要素によりモデル化する
請求項1記載の複合体モデル解析装置。
【請求項3】
前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム部の厚さと、前記ホイールのリム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央と、前記リム中央から前記リム外側面までの距離とを少なくとも用いて算出される曲げ剛性を対応付ける
請求項2記載の複合体モデル解析装置。
【請求項4】
前記ホイールモデル作成手段は、前記ホイール幅方向断面において、前記リム部の厚さ方向における中央の位置であるリム中央をシェル要素によりモデル化する
請求項1記載の複合体モデル解析装置。
【請求項5】
前記ホイールモデル作成手段は、前記シェル要素に対して、前記ホイールの前記リム中央から、前記リム部におけるホイール径方向外側の面であるリム外側面までの距離を対応付ける
請求項4記載の複合体モデル解析装置。
【請求項6】
前記所定要素は、ソリッド要素である
請求項1〜5の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置。
【請求項7】
ビードワイヤを含むタイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成ステップと、
リム部及びディスク部により構成されるホイールのホイール幅方向断面において、前記リム部の少なくとも一方の端部の形状が、前記ホイールの径方向内側に折り返された形状となるように前記リム部をシェル要素によりモデル化し、前記ディスク部を所定要素でモデル化したホイールモデルを作成するホイールモデル作成ステップと、
前記タイヤモデルと前記ホイールモデルとの複合体である複合体モデルの性能を解析する性能解析ステップと、
を含む複合体モデル解析方法。
【請求項8】
コンピュータを、前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置を構成する各手段として機能させるための複合体モデル解析プログラム。
【請求項9】
前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、及び前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラムの何れかを用いて解析された空気入りタイヤを製造するタイヤ製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の複合体モデル解析装置、前記請求項7記載の複合体モデル解析方法、前記請求項8記載の複合体モデル解析プログラム、及び前記請求項9記載のタイヤ製造方法の何れかを用いて解析又は製造された空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−47082(P2010−47082A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211725(P2008−211725)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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