説明

複合化水性ゲルとその製造方法、並びに、その複合化水性ゲルを含有するゲル化製剤、皮膚外用剤、及び化粧料

【課題】 特定のイオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を相互作用させることにより形成されるチキソトロピー性を有する複合化水性ゲルとその製造方法、並びに、その複合化水性ゲルを含有するゲル化製剤、皮膚外用剤、及び化粧料に関し、カチオン性成分、pH緩衝剤、塩化ナトリウム等の塩や酸化チタン、酸化鉄等の粉体によるゲル構造破壊が起こるおそれもなく、皮膚に安全で、pH3〜5.5付近に調整しても、高い粘性やチキソトロピー性を維持することのできる複合化水性ゲル及びその複合化水性ゲルを含有するゲル化製剤、皮膚外用剤、化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】 イオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を相互作用させ複合化させることによって複合化水性ゲルを得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のイオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を相互作用させることにより形成されるチキソトロピー性を有する複合化水性ゲルとその製造方法、並びに、その複合化水性ゲルを含有するゲル化製剤、皮膚外用剤、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水を連続相とするゲル、すなわち水性ゲルは、夏用等としての使用感や清涼感が好まれることから、近年、化粧料に用いられるようになっている。このような水性ゲル化剤として、高い粘性を有し且つチキソトロピー性に優れていることから、従来では、主としてアニオン性高分子であるカルボキシビニルポリマーが用いられており、このようなカルボキシビニルポリマーを含む化粧料や皮膚外用剤として、たとえば下記特許文献1や特許文献2のような特許出願がなされている。
【特許文献1】特開2004−91360号公報
【特許文献2】特開2000−239147号公報
【0003】
しかし、カルボキシビニルポリマーは負に電荷しているため、たとえばカチオン性の有効成分を化粧料や皮膚外用剤に含有させると、イオンコンプレックスにより沈殿物を形成して薬物や有効成分の効果が激減するという問題がある。又、水酸化ナトリウム等のアルカリで中和させてゲル化させるため、皮膚に安全で有用なpH3〜5.5付近に調整することが困難である。またグリコール酸やサリチル酸等のケミカルピーリング剤は、pH3〜4の酸性側で効果が有効に発揮することが知られているが、このことからも、pH3〜5.5付近での調整が困難なことは好ましくない。さらに、塩化ナトリウムやpH緩衝剤等の塩や酸化チタンや酸化鉄等の粉体によるゲル構造破壊が起こりやすいという問題がある。
【0004】
一方、非イオン性高分子のゲル化剤としてヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体も用いられており、このようなヒドロキシプロピルセルロースを含む化粧料や皮膚外用剤として、たとえば上記特許文献2や下記特許文献3のような特許出願がなされている。
【特許文献3】特開2000−204016号公報
【0005】
しかし、このようなヒドロキシプロピルセルロースは、ゲルの粘性やチキソトロピー性が低いという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、カチオン性成分、pH緩衝剤、塩化ナトリウム等の塩や酸化チタン、酸化鉄等の粉体によるゲル構造破壊が起こるおそれもなく、皮膚に安全で、pH3〜5.5付近に調整しても、高い粘性やチキソトロピー性を維持することのできる複合化水性ゲル及びその複合化水性ゲルを含有するゲル化製剤、皮膚外用剤、化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、このような課題を解決すべく鋭意研究したところ、特定のイオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を相互作用させ複合化させることにより、高い粘性(粘度:10000〜2000000cps)とチキソトロピーを持つゲルが得られ、上記従来の問題が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、複合化水性ゲルに係る請求項1記載の発明は、イオン性両親媒性高分子と、両イオン性高分子とを含有することを特徴とする。また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子が、炭素数8〜22の疎水基を、0.1〜50.0%部分導入したものであることを特徴とする。さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子が、アミノ基を有するものであることを特徴とする。
【0009】
さらに請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子が、キチン、キトサン、キチン誘導体、又はキトサン誘導体であることを特徴とする。さらに請求項5記載の発明は、請求項4記載の複合化ゲルにおいて、キチン、キトサン、キチン誘導体、又はキトサン誘導体が、炭素数8〜22の疎水基を、0.1〜50.0%部分導入したものであることを特徴とする。さらに請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子の重量比が、1:0.1〜1:10.0の範囲内であることを特徴とする。
【0010】
さらに請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、両イオン性高分子のゼータ電位が、−20mV〜+20mVであることを特徴とする。さらに請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、両イオン性高分子が、リン脂質構造を有するものであることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、両イオン性高分子がリン脂質構造を有し、疎水基を有するものであることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子とが複合化された状態におけるpH3.5〜5.5におけるゼ−タ電位が、0mV〜+80mVであることを特徴とする。さらに請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の複合化水性ゲルにおいて、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子の他に、多価アルコールが含有されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、複合化水性ゲルの製造方法に係る請求項12記載の発明は、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子とを混合し、該イオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を複合化させて複合化水性ゲルを製造することを特徴とする。さらに、請求項13記載の発明は、請求項12記載の複合化水性ゲルの製造方法において、イオン性両親倍性高分子と両イオン性高分子の重量比が、1:0.1〜1:10.0の範囲内となるように、イオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を複合化させて製造することを特徴とする。
【0013】
さらに請求項14記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルからなるゲル化製剤に係る発明であり、請求項15記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルを含有することを特徴とする皮膚外用剤に係る発明である。さらに請求項16記載の発明は、請求項15記載の皮膚外用剤において、複合化水性ゲルの他に、カチオン性成分を含有することを特徴とする。
【0014】
さらに請求項17記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルを含有することを特徴とする化粧料に係る発明であり、請求項18記載の発明は、請求項17記載の化粧料において、複合化水性ゲルの他に、カチオン性成分を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複合化水性ゲルを用いることにより、従来では困難であったカチオン性有効成分やグリコール酸等のケミカルピーリング剤、pH緩衝剤等の塩、さらには粉体や顔料の共存下でも安定性・有効性が高く、また皮膚に安全で有用なpH3〜5.5付近の調整下でも、高い粘性とチキソトロピーに優れたゲル状の皮膚外用剤や化粧料、ゲル状の乳化外用剤や乳化化粧料の製剤として提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の複合化水性ゲルは、上述のようにイオン性両親媒性高分子と、両イオン性高分子とを含有するものであるが、そのイオン性両親媒性高分子としては、好ましくは、アミノ基を有し、炭素数8〜22の疎水基を0.1〜50.0%部分導入したポリアミンが用いられる。疎水基を導入したポリアミンの具体例として、ゼラチン、ポリリジン、コラーゲン、セリシン等の絹タンパク質、大豆タンパク等の植物性タンパク質やこれらのタンパク質の誘導体、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等の合成高分子、キトサンやキチンの多糖類やその誘導体等が挙げられる。平均分子量は特に限定されないが、10000〜5000000程度が望ましい。
【0017】
キトサン若しくはキチン、又はキチン、キトサンの誘導体としては、たとえばカルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン、サクシニル化キトサン、部分加水分解キチン、硫酸化キチン、硫酸化キトサン、リン酸化キトサン、リン酸化キチン、ジカルボキシメチルキトサン、カルボキシブチルキトサン、グリコールキトサン、サクシニル化カルボキシメチルキトサン、サクシニル化キチン、ヒドロキシプロピルキトサン等のヒドロキシアルキルキトサン、四級塩化キトサン、キチンやキトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸塩、グルタミン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩等のキチンやキトサンの塩類等が挙げられる。
【0018】
キトサン若しくはキチン、又はキチン、キトサンの誘導体の平均分子量は特に限定されるものではないが、両イオン性高分子を複合化させる観点からは、平均分子量10000〜5000000程度のものを用いるのが好ましい。この場合の平均分子量は、たとえばデータモジュールGPC用カートリッジを連結させたGPC−HPLC〔ゲル濾過クロマトグラフィーカラム:東ソー(株)製TSK−gel−G3000WXL+TSK−gel−G2500PWXL、溶媒:0.4M酢酸−酢酸Na緩衝液(pH=4.8)〕分析により分子量分布を明らかにすることによって測定される。分子量スタンダードとしては、キトサンオリゴ糖(分子量:413〜1006)、デキストラン硫酸塩(分子量:5000、8000) 及びプルラン分子量スタンダードが用いられる。また、粘度測定法等からも平均分子量を求めることが可能である。
【0019】
またキチン若しくはキトサン、又はキチン若しくはキトサンの誘導体としては、アミノ基含有率10〜100%を示すものを用いるのが好ましい。キトサンは、天然多糖であるキチンの高脱アセチル化物であり、脱アセチル化度50〜100%を示す脱アセチル化キチンを元に誘導体を合成するのが好ましい。
【0020】
さらに、粘性に優れた複合化水性ゲルを形成させる観点からは、これらの誘導体のアミノ基や水酸基に炭素数8〜22の疎水基を0.1〜50.0%部分導入させることが好ましい。疎水基の種類は特に限定されないが、脂肪酸基が望ましい。具体的には部分オレイル化キトサン・ピロリドンカルボン酸塩、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(製品名:PM−キトサン:ピアス株式会社)、部分ミリストイル化キチン乳酸塩、部分ミリストイル化四級化キトサングリコ−ル酸塩、部分ラウロイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩、部分ミリストイル化サクシニルキトサン、部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン、部分ラウロイル化カルボキシメチルキトサン、部分アセチルミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩等を使用することができる。
【0021】
ここで、「部分導入」とは構成単糖1残基当たりにアシル基等の脂肪酸基がどの程度導入されているかを示すもので、「脂肪酸基を0.1〜50.0%部分導入した」とは、たとえばキトサンの場合であれば、構成単糖であるヘキソサミン1000残基に、脂肪酸基が1〜500個導入されていることを意味する。このように炭素数8〜20のアシル基等の脂肪酸基が部分導入されたキチン、キトサンの誘導体は、両親媒性を示すものである。
【0022】
さらに、本発明においては、キチン、キトサン、若しくはこれらの誘導体以外のイオン性両親媒性高分子にも、「部分導入」という概念を用いる。この場合の「部分導入」とは、モノマー等の1残基当たりに疎水性基がどの程度導入されているかを示すもので、「疎水性基を0.1〜50.0%部分導入した」とは、たとえばゼラチン、ポリリジン、コラーゲン、セリシン、大豆タンパク等のタンパク質であれば、これらのタンパク質を構成する1000のアミノ酸残基に、疎水性基が1〜500個導入されていることを意味する。またポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等の合成高分子の場合には、これらの合成高分子を構成するモノマー1000残基に、疎水性基が1〜500個導入されていることを意味する。
【0023】
本発明に用いられる両イオン性高分子は、分子中にアニオン基とカチオン基の両方を含有することが不可欠であり、その種類は特に限定されない。両イオン性高分子の分子量も特に限定されないが、平均分子量50000〜2000000程度が望ましい。
【0024】
両イオン性高分子の電荷の指標となるゼータ電位は−20mV〜+20mVであることが好ましい。ゼータ電位は界面電気二重層による静電反発効果を支配する表面電位を示すものであり、両イオン性高分子のゼータ電位が−20mV〜+20mVであることにより、イオン性両親媒性高分子と複合化を生じさせ易い。具体的に説明すると、イオン性両親媒性高分子がキトサン誘導体のようなものの場合、ゼータ電位は+50mV〜+120mV程度であるが、ゼータ電位が−20mV〜+20mVの両イオン性高分子と複合化させると、pH3.5〜5.5におけるゼ−タ電位が0mV〜+80mVの複合化水性ゲルが得られ、複合化が好適に生じることとなる。また、上記両イオン性高分子には、2〜20個の炭素原子である疎水部位を含有させることが望ましい。さらに、生体適合性やゲル特性等の点から、分子中にリン脂質類似構造を有することが望ましい。
【0025】
リン脂質類似構造としては、たとえばポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと炭素数2〜20の疎水基含有モノマーを含有する成分が挙げられる。具体的にはポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメクリレートのモノマーを含有したポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(製品名:リピジュア)等がある。
【0026】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子から合成され、イオン性両親媒性高分子のアミノ基部分と両イオン性高分子とが結合し、さらにイオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子との疎水間結合も賦与されることにより、粘性・チキソトロピ−性に優れた複合水性ゲルが得られる。複合化水性ゲルを製造する場合には、イオン性両親媒性高分子の水溶液を均一攪拌しながら、両イオン性高分子を対比0.1〜10.0倍量を徐々に添加し、ホモミキサー(5000rpm、1分処理)等の攪拌器で均一処理することにより、粘性・チキソトロピ−性に優れたゲルが得られる。複合化は室温下でも調製可能であり、経済性に優れる利点がある。
【0027】
アミノ基を有するイオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子が複合化されてゲル化される機構は、一応次のように推定される。すなわち、ポリアミンから形成されるイオン性両親媒性高分子のアミノ基に両イオン性高分子のアニオンサイトが選択的に弱く結合しながら、イオン性両親媒性高分子の疎水基と両イオン性高分子の疎水基との疎水間結合も賦与され、その結果、高分子鎖同士が均一に3次元網目構造・ゲルネットワーク構造を形成するのである。本発明の複合化水性ゲルは、好ましくは、ポリアミンから形成されるイオン性両親媒性高分子のアミノ基や荷電アミノ基に両イオン性高分子の両性イオン中のアニオンサイトが選択的に弱く相互作用しながら、高分子鎖同士が均一な3次元網目構造・ゲルネットワーク構造を形成し、粘性とチキソトロピ−性に優れたゲルに変化することから得られる。
【0028】
本発明の複合化ゲルは、カチオン性有効成分やpH緩衝剤等の塩の共存、皮膚や毛髪に安全で有用なpH3.5〜5.5付近の設定下でも、高い粘性とチキソトロピー性を示すことから、より有効性、安全性、安定性、使用性の良い皮膚外用剤や化粧料に応用できる。カチオン性有効成分の効能低下も認められないことから、さらには安全性も高まることから、敏感肌用の化粧料、DDS(ドラッグデリバリーシステム)製剤にも応用できる。 このように本発明は、上記複合化水性ゲルを含有する皮膚外用剤や化粧料、その他のゲル化製剤をも対象とするものであるが、複合化水性ゲル以外に上述のようなカチオン性成分を併存させることができる。カチオン性成分としては、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム、グルコン酸フタルヘキシジン等のカチオン性抗菌剤、塩化ベルベリン、塩酸ブナゾジン等の塩酸塩系の有効成分や薬剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム塩、ステアリン酸エチルアミノエチルアミド等のアミドアミン系化合物、塩化ベンゼトニウム等の芳香族アンモニウム塩、N−α−長鎖アシル塩基性アミノ酸アルキルエステルやその塩等のアミノ酸系化合物等を用いることができる。
【0029】
本発明の複合化水性ゲルは、上述のように、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子との相互作用で複合化させることにより、高い粘性を有するものであるが、その粘度は限定されるものではない。ただし、優れたチキソトロピー等の性状を有するゲルを得るためには、粘度は10000〜2000000cpsであることが好ましい。
【0030】
本発明の複合化水性ゲルを構成するイオン性両親媒性高分子〔成分(a)〕と両イオン性高分子〔成分(b)〕の組成比(重量比)は特に限定されるものではないが、(a):(b)=1:0.01〜1:100が好ましく、(a):(b)=1:0.1〜1:10.0がより好ましい。成分(a)に対する成分(b)の重量比が、0.1未満であるとゲル形成が不十分であり機能性が十分に発揮できない。また成分(a)に対する成分(b)の重量比が10を超えると、ゲル形成度の極大点を越えゲル強度が低下するため、複合ゲルの機能性が不十分となる。
【0031】
さらに、本発明の複合化水性ゲルは、ゲル物性の経時安定性を高めるために多価アルコールを共存させることが望ましい。多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタジオール、ポリエチレングリコ−ル、ソルビト−ル、マンニトール等が例示される。
【0032】
本発明の複合化水性ゲルは, アミノ基由来の機能性が高まることから、イオンコンプレックス形成性は低く、効能機能とその持続性を向上させながらアミノ基を保護している。本発明の複合化水性ゲルは、安定性が高く温度変化や経時的なゲルの強度や物性はほとんど認められない。
【0033】
本発明は、皮膚に適用する医薬品、皮膚や毛髪、口腔に適用する医薬部外品や化粧料等に広く適用することが可能であり、製剤型もゲル系、可溶化系、乳化系、やや粘性を有するゾル系やエッセンス系、液状系、水−油2層系、粉末含有系等、幅広い製剤に応用できる。さらに、本発明の複合化水性ゲルを含有する皮膚外用剤や化粧料の剤型は問わず、ローション、乳液、パック、乳化ローション及びクリーム等の製剤形態で提供することができる。たとえばクリーム状のスキンケア剤、乳液状の化粧下地、乳化型マスカラやファンデーション等の製剤として提供することができる。
【0034】
その他、皮膚外用剤や化粧料で一般的に用いられる成分を本発明の複合化水性ゲルの効果や機能性を阻害しない範囲で広く配合できる。たとえば、セタノール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、流動パラフィン、スクワラン等の非極性油剤類、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル系油剤類、小麦胚芽油やオリーブ油等の植物油類、トリメチルシロキシケイ酸、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン化合物類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素化合物類が挙げられる。
【0035】
界面活性剤として、脂肪酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤がある。また、保湿柔軟化剤、抗酸化剤、収斂剤、美白剤、抗菌剤、抗炎症剤、殺菌剤、抗アレルギー剤、紫外線吸収剤類、紫外線散乱剤、安定化剤、ビタミン類、酵素等の医薬部外品原料規格、化粧品種別配合成分規格、化粧品原料基準、日本薬局方、食品添加物公定書規格等の成分等が挙げられる。
【0036】
本発明における皮膚外用剤又は化粧料に対する複合化水性ゲルの配合量は、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤等の全量中、乾燥固形物重量で0.0005〜5質量%が好ましい。0.0005質量%未満では本発明の効果が充分に得られない可能性があり、一方、5質量%を越えても、その増量に見合った効果の向上は認められないからである。この観点からは、0.001〜3質量%がより好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
イオン性両親媒性高分子である部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(ピアス株式会社製、商品名:PM−キトサン)1gを精製水100mlに分散させた。この部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩の分散液のゼータ電位は+80mVを示した。一方、疎水性モノマーを有する両イオン性高分子であるリン脂質共重合体(日本油脂製、商品名:リピジュアPMB)2.5gを精製水50mlで分散溶解させた。このリン脂質共重合体の分散液のゼータ電位は−2mVを示した。
【0038】
室温下において、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩の分散液に、リン脂質共重合体の分散液を、攪拌器で攪拌させながら徐々に添加し、次に多価アルコールであるジプロピレングリコール3gを添加した後、さらにホモミキサー(5000rpm×2分)にて室温で均一分散化させた。
【0039】
紫外線滅菌後、室温下で24時間静置することにより、チキソトロピー性を有する無色半透明の複合化水性ゲルを得た。後述の試験例1のように、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子との組成比を変えて、それぞれB型粘度計により粘度を測定したが、いずれの組成比のものも50000〜370000(0.6rpm)の粘度を示し、チキソロピ−性も優れていた。また、イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子との組成比を代えて得られた複合化水性ゲルのゼータ電位は、いずれも+30mV〜+60mVの範囲内であった。
【0040】
(試験例1)
上記実施例1のイオン性両親媒性高分子である部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩と、両イオン性高分子であるリン脂質共重合体の組成比(重量比)を変え、それぞれの組成比における粘度を測定し、組成比と粘度との関連性を確認した。その結果を図1に示す。図1からも明らかなように、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩に対するリン脂質共重合体の量を増やすにつれて、粘度が上昇した。そして、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩とリン脂質共重合体との組成比が約1:1.5のときに、粘度が350000を超えて最も高くなった。しかしながら、1:1.5の組成比から、さらにリン脂質共重合体を増やしてリン脂質共重合体の重量比が高くなると、粘度は徐々に低下した。
【0041】
一方、上記疎水性モノマーを有する両イオン性高分子であるリン脂質共重合体(リン脂質コポリマー)に代えて、疎水性モノマーを有さない両イオン性高分子であるリン脂質共重合体(日本油脂製、商品名:リピジュアHM)を用いて同様に試験したところ、複合ゲルの形成は一応認められたが、そのゲル形成能は必ずしも十分ではなかった。このことから、複合化水性ゲルの形成には、キトサン誘導体(部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩)のアミノ基と、両イオン性高分子であるリン脂質共重合体のアニオンサイトとの結合のみならず、キトサン誘導体の疎水基とリン脂質共重合体の疎水基との疎水間結合も重要であることが示唆された。
【0042】
(試験例2)
実施例1のような調製方法で、イオン性両親媒性高分子である部分アシル化キトサンピロリドンカルボン酸塩の疎水基であるアシル基の炭素数が複合化水性ゲル形成能に及ぼす影響を観察した。具体的には、部分アシル化キトサンピロリドンカルボン酸塩のうち、炭素数の異なる部分カプリル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(アシル基の炭素数8)、部分カプリン化キトサンピロリドンカルボン酸塩(アシル基の炭素数10)、部分ラウリル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(アシル基の炭素数12)、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(アシル基の炭素数14)、及び部分オレイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩(アシル基の炭素数18)を、それぞれ疎水性モノマーを有する両イオン性高分子であるリン脂質共重合体(日本油脂製、商品名:リピジュアPMB)と複合化させた。
【0043】
その結果を表1に示す。
【表1】

【0044】
表1からも明らかなように、いずれの部分アシル化キトサンピロリドンカルボン酸塩も、一応複合化ゲルを形成した。ただし、炭素数12以上のラウリル化、ミリストイル化、オレイル化キトサンピロリドンカルボン酸塩では、複合化水性ゲルの形成が非常に良好に行われたのに対し、炭素数10のカプリン化キトサンピロリドンカルボン酸塩では少し形成能が低下し、炭素数8のカプリル化キトサンピロリドンカルボン酸塩ではさらに形成能が低下した。このことから、複合化水性ゲル形成には、疎水基の炭素数が8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましいことが示唆された。
【0045】
(試験例3)
実施例1の方法で得た複合化水性ゲルを凍結乾燥することにより白色のスポンジを調製しFT−IR分析(反射型)を遂行した。その結果、図2に示すように、複合ゲルは分子中のアミノ基(1575cm-1)のピークが高波数側に約9cm-1シフトしていた。一方、ピークが高波数側にシフトしたにもかわらず、吸収ピーク強度に変化は認められなかった。このことから、イオン性両親媒性高分子であるキトサン誘導体の荷電アミノ基と、両性イオン高分子であるリン脂質共重合体の相互作用による複合化が確認された。
【0046】
一方、ヒアルロン酸との共存で形成される、ポリイオンコンプレックス体では、ピーク強度の著しい低下が認められ、強い結合性が示唆された。これはポリアミンから形成されるイオン性両親媒性高分子のアミノ基に両イオン性高分子の両性イオン基分子中のアニオンサイトが選択的に結合するが、ポリイオンコンプレックスに見られる結晶構造化は示さないことが示唆された。
【0047】
(試験例4)
本試験例では、抗菌性評価について検討した。実施例1の方法で得られた複合化水性ゲルにMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を接種させ生菌数の経時的変化から抗菌性を評価した。一方、複合化していないキトサン誘導体、及びリン脂質共重合体にそれぞれMRSAを接種させ、複合化水性ゲルに接種した場合と比較した。図3に示すように、リン脂質共重合体にMRSAを接種した場合には、60分を経過しても、MRSAを死滅させることができなかったのに対し、複合化水性ゲルにMRSAを接触した場合には、20分で死滅させることができた。また、キトサン誘導体にMRSAを接触した場合には、死滅させるのに60分を要した。このことから、リン脂質共重合体には抗菌性がないのに対し、キトサン誘導体には抗菌性が認められたが、キトサン誘導体にリン脂質共重合体を複合化させることにより、抗菌性が一層向上することが確認された。
【0048】
(試験例5)
実施例1の方法で得られた複合化水性ゲルにカチオン性殺菌剤である0.1%塩化セチルピリジウムを共存させた。カチオン性殺菌剤を含有させても、ゲル物性に経時的変化は認められなかった。MRSAを接種させ生菌数の経時的変化から殺菌性を評価し結果、接触後2分で死滅させた。実施例1の複合化水性ゲルはカチオン性殺菌剤の効能を低下させず、安定性にも優れていた。これに対して、比較例である1.0%カルボキシビニルポリマー水溶液と水酸化カリウムで形成されたゲルにおいては、カチオン性殺菌剤の著しい効能低下とゲルの粘度低下が認められた。
【0049】
(試験例6)
上記実施例1の複合化水性ゲルを含むゲル化製剤について、安定性、使用感、薬効性等を試験した。上記実施例1の複合化水性ゲルを含む次のような処方例1のゲル化製剤を調製し、また複合化水性ゲルに代えて5%カルボキシビニルポリマー溶液及び5%ヒドロキシプロピルセルロース溶液を配合したものを比較例1及び2とした。
【0050】
〔処方例1〕
成分 配合量(重量%)
(1)実施例1の複合化水性ゲル(粘度:370000cps) 35.0
(2)ジプロピレングリコール 3.0
(3)酸化チタン 3.0
(4)塩化ベンザルコニウム 0.1
(5)塩化ベルベリン 0.1
(6)グリコール酸 0.5
(7)水酸化ナトリウム 0.04
(8)パラベン 0.05
(9)精製水 残量
加熱処理した(2)〜(9)の水相組成に(1)の複合化水性ゲルを添加し、均一分散して、24時間放置することによりゲル化させて、ゲル化製剤(粘度:100000cps、pH:4.0)を調製した。
【0051】
〔比較例1〕
成分 配合量(重量%)
(1)5%カルボキシビニルポリマー溶液 20.0
(2)ジプロピレングリコール 3.0
(3)酸化チタン 3.0
(4)塩化ベンザルコニウム 0.1
(5)塩化ベルベリン 0.1
(6)グリコール酸 0.5
(7)水酸化ナトリウム 0.2
(8)パラベン 0.05
(9)精製水 残量
加熱処理した(2)〜(9)の水相組成に(1)のゲルを添加し、均一分散して、24時間放置することによりゲル化させて、ゲル状製剤(粘度:90000cps、pH:6.7)を調製した。
【0052】
〔比較例2〕
成分 配合量(重量%)
(1)5%ヒドロキシプロピルセルロース溶液 20.0
(2)ジプロピレングリコール 3.0
(3)酸化チタン 3.0
(4)塩化ベンザルコニウム 0.1
(5)塩化ベルベリン 0.1
(6)グリコール酸 0.5
(7)水酸化ナトリウム 0.08
(8)パラベン 0.05
(9)精製水 残量
加熱処理した(2)〜(9)の水相組成に(1)のゲルを添加し、均一分散して、24時間放置することによりゲル化させて、ゲル状製剤(粘度:30000cps、pH:5.3)を調製した。
【0053】
上記処方例1、比較例1、比較例2のゲル化製剤について、40℃と45℃の条件下で1ヶ月、凍結解凍2回処理での経時変化を外観及び粘度物性変化から求めた。また女性モニター20人による皮膚及び毛髪の使用感を試験した。さらに塩化ベンザルコニウム、塩化ベルベリン等のカチオン性有効成分の効果低下についても試験した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0054】
尚、表2において、各記号は次の事項を示す。
(1)安定性
○:物性・外観に変化は見られない
△:物性・外観に変化がやや見られる
×:物性・外観に変化が見られる
(2)皮膚使用性、毛髪使用性
○:女性モニター20人中、良いと答えた回答率:50%以上
△:女性モニター20人中、良いと答えた回答率:30〜50%
×:女性モニター20人中、良いと答えた回答率:30%未満
(3)薬効性
○:カチオン性有効成分(塩化ベンザルコニウム、塩化ベルベリン)の効果低下が認 められない
△:カチオン性有効成分(塩化ベンザルコニウム、塩化ベルベリン)の効果低下がや や認められる
×:カチオン性有効成分(塩化ベンザルコニウム、塩化ベルベリン)の効果低下が認 められる
【0055】
表2からも明らかなように、処方例1のゲル化製剤の安定性は比較例1、2に比べて高く、外観及び粘度低下はほとんど認められなかった。また、女性モニターによる使用感も、処方例1のゲル化製剤は比較例1、2に比べて良好な結果が得られた。さらに、比較例1ではカチオン性有効成分の効果低下が認められたが、処方例1では認められなかった。
【0056】
(試験例7)
皮膚の粘弾性改善及びシワ改善作用についての試験を行った。男女20人(平均年齢:38.5才)の前腕外側部にローションをサーキット方式で6週間塗布(2回/日)した。測定の際は、水洗後22℃、湿度50%の環境下に20分順応させてから測定した。皮膚粘弾性はキュートメーター(C・K社)、角層水分量はSKIKON-200EX(アイ・ビイ・エス社製)を利用して求めた。さらに評価部位のレプリカを採取後、ハロゲンランプ照射で生じる影をCCDカメラ(キーエンス社製)に取り込み、画像解析により、シワの平均深さを求めた。試験結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
尚、表3において、各記号は次の事項を示す。
(1)皮膚粘弾性
◎:向上率は20%以上を示す
○:向上率は10〜20%を示す
△:向上率は5〜10%を示す
×:向上作用は認められない
(2)角層水分量
◎:向上率は40%以上を示す
○:向上率は20〜40%を示す
△:向上率は10〜20%を示す
×:向上作用は認められない
(3)シワ改善
◎:シワの平均深さが30%以上浅くなる
○:シワの平均深さが20〜30%浅くなる
△:シワの平均深さが10〜20%浅くなる
×:改善作用は認められない
【0059】
表3からも明らかなように、本発明の処方例1は比較例1、2と比べて皮膚粘弾性、皮膚水分量、シワ改善作用が優れていた。また処方例1のゲル製剤は、製剤自体に高いスキンケア効果を有しており、またケミカルピーリング剤であるグリコール酸の抗老化作用を安全に高めることが示唆された。
【0060】
(試験例8)
処方例1のゲル化製剤と比較例2のゲル化製剤をヒト皮膚モデル(東洋紡製、TESTSKIN LSE003)に塗布させ、37℃、24時間反応させ、培地中に放出された刺激性の指標となるサイトカインであるIL-1αの定量をELISA 法で行った。上記処方例1の複合化ゲルは、カチオン性薬物の刺激性を緩和させており、徐放性であるDDS作用によることが推定された。
【0061】
〔処方例2〕
本処方例は、ゲル状クリームの処方例であり、その組成は次のとおりである。
成分 配合量(重量%)
(1)セタノール 3.0
(2)ミリスチン酸イソプロピル 3.0
(3)ミネラルオイル 8.0
(4)POE(25) モノラウリル酸ソルビタン 3.5
(5)実施例1の複合化水性ゲル(粘度:370000cps) 25.0
(6)グリセリン 9.0
(7)ジプロピレングリコール 3.0
(8)メチルパラベン 0.1
(9)精製水 残量
加熱処理した(5)〜(9)の水相組成にパート(1)〜(4)を加熱溶解させたものを添加しホモミキサー処理(7000rpm、1分)による乳化によりゲル状クリームゲル状製剤(粘度:800000cps、pH:4.3)を調製した。
【0062】
〔処方例3〕
本処方例は、白濁エッセンスローションの処方例であり、その組成は次のとおりである。
成分 配合量(重量%)
(1)流動パラフィン 1.0
(2)ミリスチン酸イソプロピル 1.0
(3)POE(25) モノラウリル酸ソルビタン 3.0
(4)実施例1の複合化ゲル(粘度:250000cps) 10.0
(5)ブチレングリコール 5.0
(6)甘草フラボノイド 0.2
(7)シトルリン 2.0
(8)エクトイン 0.8
(9)水素添加大豆リン脂質 0.5
(10)精製水 残量
加熱処理した(4)〜(10)の水相組成にパート(1)〜(3)を加熱溶解させたものを添加しホモミキサー処理により乳化し、白濁状の粘度のあるエッセンスローションを調製した。
【0063】
〔処方例4〕
本処方例は、ゲル状のヘアトリートメントの処方例であり、その組成は次のとおりである。
成分 配合量(重量%)
(1)セラミド3 0.5
(2)ポリメチルシロキサン 3.0
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル 1.0
(4)セタノール 1.0
(5)実施例1の複合化水性ゲル(粘度:350000cps) 25.0
(6)ブチレングリコール 5.0
(7)エクトイン 0.2
(8)塩化ベンザルコニウム 0.5
(9)微粒子酸化チタン 1.0
(10)精製水 残量
加熱処理した(5)〜(10)の水相組成にパート(1)〜(4)を加熱溶解させたものを添加しホモミキサー処理(7000rpm、1分)による乳化によりゲル状クリームゲル状製剤(粘度:800000cps、pH:4.3)を調製した。
【0064】
〔処方例5〕
本処方例は、水系のゲル状ファンデーションの処方例であり、その組成は次のとおりである。
成分 配合量(重量%)
(1)オリーブオイル 0.5
(2)ポリメチルシロキサン 3.0
(3)酸化チタン 7.0
(4)酸化鉄 0.8
(5)タルク 2.5
(6)ベンガラ 0.7
(7)実施例1の複合化水性ゲル(粘度:250000cps) 45.0
(8)ブチレングリコール 5.0
(9)エクトイン 0.2
(10)塩化ベンザルコニウム 0.5
(11)微粒子酸化チタン 1.0
(12)精製水 残量
加熱処理した(3)〜(12)の水相組成にパート(1)〜(2)を加熱溶解させたものを添加しホモミキサー処理(7000rpm、1分)による乳化によりゲル状ファンデーション製剤(粘度:900000cps、pH:4.2)を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の複合化水性ゲルは、皮膚外用剤、化粧料、その他各種のゲル化製剤等に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】キトサン誘導体とリン脂質共重合体の組成比と複合ゲル粘度の関連性を示すグラフ。
【図2】複合化ゲルのFT−IRチャート。
【図3】MRSAに対する殺菌作用を示すグラフ。
【図4】カチオン性薬剤を含有した複合化ゲルの安定性を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性両親媒性高分子と、両イオン性高分子とを含有することを特徴とする複合化水性ゲル。
【請求項2】
イオン性両親媒性高分子が、炭素数8〜22の疎水基を、0.1〜50.0%部分導入したものである請求項1記載の複合化水性ゲル。
【請求項3】
イオン性両親媒性高分子が、アミノ基を有するものである請求項1又は2記載の複合化水性ゲル。
【請求項4】
イオン性両親媒性高分子が、キチン、キトサン、キチン誘導体、又はキトサン誘導体である請求項1乃至3のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項5】
キチン、キトサン、キチン誘導体、又はキトサン誘導体が、炭素数8〜22の疎水基を、0.1〜50.0%部分導入したものである請求項4記載の複合化水性ゲル。
【請求項6】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子の重量比が、1:0.1〜1:10.0の範囲内である請求項1乃至5のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項7】
両イオン性高分子のゼータ電位が、−20mV〜+20mVである請求項1乃至6のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項8】
両イオン性高分子が、リン脂質構造を有するものである請求項1乃至7のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項9】
両イオン性高分子が、リン脂質構造を有し、疎水基を有するものである1乃至7のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項10】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子とが複合化された状態におけるpH3.5〜5.5におけるゼ−タ電位が、0mV〜+80mVである請求項1乃至9のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項11】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子の他に、多価アルコールが含有されている請求項1乃至10のいずれかに記載の複合化水性ゲル。
【請求項12】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子とを混合し、該イオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を複合化させて製造することを特徴とする複合化水性ゲルの製造方法。
【請求項13】
イオン性両親媒性高分子と両イオン性高分子の重量比が、1:0.1〜1:10.0の範囲内となるように、イオン性両親媒性高分子に両イオン性高分子を複合化させて製造する請求項12記載の複合化水性ゲルの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルを含有することを特徴とするゲル化製剤。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項16】
複合化水性ゲルの他に、カチオン性成分を含有する請求項15記載の皮膚外用剤。
【請求項17】
請求項1乃至11のいずれかに記載の複合化水性ゲルを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項18】
複合化水性ゲルの他に、カチオン性成分を含有する請求項17記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45115(P2006−45115A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228164(P2004−228164)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年7月1日 社団法人日本キチン・キトサン学会発行の「第18回 キチン・キトサンシンポジウム講演要旨集」「キチン・キトサン研究 第10巻第2号」に発表
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】