説明

複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法

【課題】複合型ダンパーによる制振架構の施工後において、小振幅用ダンパーを構成するストッパピンとピン孔間のクリアランスを確保する。
【解決手段】複合型ダンパーは、鋼材系の大振幅用ダンパーと延設部6を介して直列に結合される小振幅用ダンパー7を備える。小振幅用ダンパー7は、一対の外部プレート71と、複数枚の内部プレート72と、内部プレート72間に挟装される粘弾性体73と、これらを積層方向に貫通するピン孔76に挿脱自在に装着されるストッパピン75とを備える。延設部6は、一対の外部プレート71と対応する位置に配置される一対の延設外部プレート61と、複数枚の延設内部プレート62と、延設内部プレート62間に着脱自在に挟装される複数枚のスペーサ63と、小振幅用ダンパー7と延設部6間の振幅を規制するロック機構Rと、小振幅用ダンパー7と延設部6間の振幅を許容するロック解除機構RKとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法に係わり、建造物の制振技術の分野に属し、特に、大地震による建造物の大きな揺れから、小地震や強風による建造物の小さな揺れまでを広域に低減することができる複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、大地震による建造物の大きな揺れから、小地震や強風による建造物の小さな揺れまでを広域に低減することを目的として、複合型ダンパーによる制振架構の開発が進められている。
【0003】
従来、このような複合型ダンパーによる制振架構としては、建造物の架構面内に配置される大振幅用ダンパーとしての鋼製の支持架構材と、支持架構材に直列状に結合された小振幅用ダンパーとしての制振装置とで構成されたものが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
この制振装置は、双方向のプレートを複数互い違いに積層配置すると共に、それぞれのプレートで粘弾性体を挟着せしめ、粘弾性体のせん断変形で振動エネルギーを吸収するように構成されている
しかしながら、このような複合型ダンパーによる制振架構は、小振幅用ダンパーである制振装置における粘弾性体の剛性を、塑性化する支持架構の剛性以上に設計する必要があるところ、すなわち、小振幅用ダンパーでありながら最大変形時の剛性および振動減衰性能によって制振装置としての性能が設定されるため、小振幅時の振動減衰効果が低下するという難点がある。また、小振幅用ダンパーとして弾塑性ダンパー、粘性体ダンパー、若しくは摩擦ダンパーなどを使用すると、大振幅時にも支持架構材を塑性化させることができなくなるため、これらのダンパーを使用できないという難点がある。
【0005】
このため、ブレース状に配置された鋼材系の大振幅用ダンパーと大振幅用ダンパーに直列状に結合された小振幅用ダンパーとを組み合わせた複合型ダンパーによる制振架構が案出されている。(例えば、特許文献2等)
このような複合型ダンパーによる制振架構によれば、大振幅時にも過大な変形によって小振幅用ダンパーに損傷が発生せず、また、小振幅用ダンパーの変形による、大振幅時の大振幅用ダンパーの作用効果にロスが発生しないことから、大振幅用ダンパーが作用効果を発揮しない小地震や風荷重による構造物の応答(居住性レベルの応答やコンクリートのひび割れレベルの応答)に対しては、小振幅用ダンパーが減衰機能を発揮して制振作用を奏し、いわゆる大地震時の構造物の安全レベルの応答に対しては、大振幅用ダンパーがその弾塑性効果により減衰作用を発揮して制振作用を奏する。また、何らかの原因で小振幅用ダンパーの減衰部材が破損しても、大地震時には大振幅用ダンパーが適正に効果を発揮するように構成されている。
【0006】
特に、大地震時の応答においては、小振幅用ダンパーは限定された振幅の大きさにおいて、ストッパにより減衰性能を発揮しない静的状態に固定化され、大振幅時の過大な変形においても損傷、破壊の心配がなく、しかも小振幅用ダンパーの存在が大振幅用ダンパーの作用効果(制振効果)にロスを生じさせない。
【0007】
ところで、振幅の大きさを限定するストッパとしては、小振幅用ダンパーの各抵抗プレートを積層方向に貫通するストッパピンを、その外径よりも数mm程度口径が大きいピン孔の中に通して、ストッパピンとピン孔の直径差の隙間を限度に振幅を限定する構成としていることから、ストッパピンの取り付けは1mm単位の精度で施工する必要がある。
【0008】
しかしながら、このような構成の複合型ダンパー施工方法では、建造物の柱や梁を接合するときの精度が1cm単位のレベルであることから、ストッパピンの高精度レベルでの取り付けには十分な施工管理が必要であった。また、床スラブを張る前後では建造物の重量が大きく異なり、仮に、1mm単位の高精度で複合型ダンパーを取り付けることができたとしても、床スラブを建造物に固定すると床スラブの重量を受けて複合型ダンパーが1〜2mm変形してしまうことが想定されるため、十分な施工管理を行わないときには、ストッパピンとピン孔のクリアランスが確保できなくなる場合がある。その際には、小振幅用ダンパーとしての機能を発揮しなくなるという可能性がある。
【0009】
そして、複合型ダンパーの施工後において、ストッパピンとピン孔のクリアランスが確保できなかった場合には、対応策の1つとして、チェーンブロック等を用いて大振幅用ダンパーと小振幅用ダンパーの双方、あるいは大振幅用ダンパーと小振幅用ダンパーの接合部におけるボルトを外して小振幅用ダンパーのみを建造物から外し、交換または微調整して、再度取り付けることが考えられる。その際には、複合型ダンパーの交換や微調整等に長時間を要し、コスト的にも割高である上、また、重量物であるため、複合型ダンパーの交換作業や微調整作業に危険を伴うという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−247870号公報(図2〜図4)
【特許文献2】特開平10−280727号公報(図2、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、複合型ダンパーによる制振架構の施工後において、小振幅用ダンパーを構成するストッパピンとピン孔間のクリアランスを確保することができる複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様である複合型ダンパーによる制振架構は、建造物の柱、梁架構の面内に配置される鋼材系の大振幅用ダンパーと、一端部に延設部を有し、延設部を介して大振幅用ダンパーに直列に結合される小振幅用ダンパーとを備え、小振幅用ダンパーは、軸線方向に平行に離間して配置される一対の外部プレートと、一対の外部プレート間に軸線方向に平行に離間して配置される複数枚の内部プレートと、内部プレート間に挟装される粘弾性体と、一対の外部プレート、複数枚の内部プレートおよび粘弾性体を積層方向に貫通するピン孔に挿脱自在に装着されるストッパピンとを備え、延設部は、一対の外部プレートと対応する位置に、軸線方向に平行に離間して配置される一対の延設外部プレートと、複数枚の内部プレートのうち少なくとも2枚の内部プレートが延設部側に向かって延長され、軸線方向に平行に離間して配置される複数枚の延設内部プレートと、延設内部プレート間に着脱自在に挟装される複数枚のスペーサと、小振幅用ダンパーと延設部間の振幅を規制するロック機構と、小振幅用ダンパーと延設部間の振幅を許容するロック解除機構とを備えるものである。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様である複合型ダンパーによる制振架構において、複数枚のスペーサのうち、少なくとも2枚のスペーサの両側縁部に幅方向外方に向かって延長する延長部が設けられ、延長部間にストッパプレートが挟装されているものである。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である複合型ダンパーによる制振架構において、ロック機構およびロック解除機構は、一対の延設外部プレート、複数枚の延設内部プレートおよびスペーサを積層方向に貫通する貫通孔に挿脱自在に装着されるボルトと、ボルトの先端部に螺着されるナットとを備えるものである。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様である複合型ダンパーによる制振架構において、小振幅用ダンパーの外面側と延設部の外面側には、小振幅用ダンパーと延設部間の間隔を調整し得る間隔調整機構が着脱自在に配置されているものである。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様である複合型ダンパーによる制振架構において、間隔調整機構は、一対の外部プレートの外面にそれぞれ着脱自在に取り付けられ、軸線方向に貫通する第1の貫通孔を有する一対の第1の治具と、一対の延設外部プレートの外面にそれぞれ着脱自在に取り付けられ、第1の貫通孔と対応する位置に軸線方向に貫通する第2の貫通孔を有する一対の第2の治具と、一対の第1の貫通孔と一対の第2の貫通孔間に跨ってそれぞれ挿脱自在に装着される一対のシャフトと、一対のシャフトの両端部にそれぞれ螺着される一対のナットとを備えるものである。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様である複合型ダンパーによる制振架構において、一対の第1の治具および一対の第2の治具は、断面四角状の鋼材若しくは断面L型の鋼材から成るものである。
【0018】
本発明の第7の態様である複合型ダンパーによる制振架構の施工方法は、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様である複合型ダンパーによる制振架構を備え、複合型ダンパーによる制振架構を構成する延設部のロック機構を作動させた状態で複合型ダンパーによる制振架構を建造物に取り付け、建造物への取付施工完了後にロック機構の作動を解除させるものである。
【0019】
本発明の第8の態様である複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法は、第4の態様乃至第7の態様の何れかの態様である複合型ダンパーによる制振架構を備え、複合型ダンパーによる制振架構を構成するロック解除機構を作動させた状態で、複合型ダンパーによる制振架構を構成する間隔調整機構により、複合型ダンパーによる制振架構を構成するストッパピンとピン孔間が所定のクリアランスとなるように調整し、調整後に複合型ダンパーによる制振架構を構成するロック機構を作動させるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の態様乃至第8の態様の複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法によれば、次のような効果がある。
【0021】
第1に、本発明の複合型ダンパーによる制振架構によれば、大振幅用ダンパーに延設部を介して小振幅用ダンパーが直列に結合されており、延設部にロック機構が設けられていることから、小振幅用ダンパーが施工時における外力によって変形することを防止することができる。
【0022】
また、複合型ダンパーによる制振架構の施工完了時に、延設部のロック機構を解除することで、ストッパピンとピン孔の適正なクリアランスを維持した状態で建造物に取付けることができ、ひいては、小地震や風荷重による建造物の振動に対して、小振幅用ダンパーに対して設計通りの良好な減衰機能を発揮させることができる。
【0023】
第2に、本発明の間隔調整機構を使用すれば、ナットの回転(締め、緩め)によって得られる軸線方向(X方向)への軸力で小振幅用ダンパーに対して少しずつ変形を与えて位置決めすることができ、ひいては、現地において、小振幅用ダンパーの位置を容易に微調整することができる。また、延設部におけるロック機構はダンパーと建造物の取り合い部には干渉しない場所に取り付けられていることから、建造物への固定とロック機構の作動を独立して作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における複合型ダンパーによる制振架構の施工状態の一例を示す説明図である。
【図2】本発明における複合型ダンパーによる制振架構の一例を示す説明図で、分図(a)は平面図、分図(b)は一部断面図である。
【図3】本発明における延設部を有する小振幅用ダンパーの一例を示す説明図で、分図(a)は平面図、分図(b)は分図(a)のIII−III線に沿う断面図、分図(c)は側面図、分図(d)はストッパピンとピン孔の関係を示す説明図である。
【図4】本発明における間隔調整機構を有する小振幅用ダンパーの一例を示す説明図で、分図(a)は平面図、分図(b)は一部断面図である。
【図5】本発明における小振幅用ダンパーと延設部間の間隔の測定状況の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明における間隔調整機構を取り外した状態の小振幅用ダンパーの一例を示す説明図で、分図(a)は平面図、分図(b)は一部断面図である。
【図7】本発明の他の実施例における間隔調整機構を有する小振幅用ダンパーの一例を示す説明図で、分図(a)は平面図、分図(b)は一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の複合型ダンパーによる制振架構、複合型ダンパーによる制振架構の施工方法および複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法を適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
図1は、本発明における複合型ダンパーによる制振架構の施工状態の一例を示す説明図、図2は、本発明における複合型ダンパーによる制振架構の一例を示す説明図、図3は、本発明における延設部を有する小振幅用ダンパーの一例を示す説明図である。
【0026】
図1において、高層ビルや超高層ビル等の建造物1は所定の間隔をおいて立設された柱2と、隣接する柱2間を連結する梁3とを備えており、左右に隣接する一対の柱2および上下に隣接する梁3によって囲まれた空間の鉛直面内には本発明における複合型ダンパーによる制振架構4が設置されている。
【0027】
複合型ダンパーによる制振架構4は、図2に示すように、前記の鉛直面内にブレース状に配置される鋼材系の大振幅用ダンパー5と、一端部に延設部6を有し、当該延設部6を介して大振幅用ダンパー5に直列に結合される小振幅用ダンパー7とを備えている。このような複合型ダンパーによる制振架構4においては、大地震による大振幅の揺れに対しては大振幅用ダンパー5が、強風による小振幅の揺れに対しては小振幅用ダンパー7が効果を発揮するように構成され、このような構成とすることで、一つの装置で幅広い振幅の振動に対応することができ、二つのダンパーを一体化することで省スペース化を図ることができる。
【0028】
ここで、本発明において、小振幅用ダンパー7を大振幅用ダンパー5に対して「直列に結合」するとは、大振幅用ダンパー5と小振幅用ダンパー7の間でダンパーの作用方向に力の伝達が確実に行われる結合構造をいい、以下においては、前記の力の伝達が確実に行われる方向を軸線方向として説明する。
【0029】
大振幅用ダンパー5としては、例えば箱型鋼が使用され、当該箱型鋼の一端部は第1の連結部5a(図1参照)を介して延設部6に連結され、他端部は第2の連結部5b(図1参照)を介して第1の接続部材8(図1参照)に連結されている。なお、大振幅用ダンパー5としては、圧縮力によって座屈しない設計であることが重要であり、例えば普通の鋼材に比して小さな応力で降伏する極軟鋼のような弾塑性部材でH形鋼や円形鋼管を製作し、これに座屈防止用の補剛材を添わせたアンボンドブレース等が好適する。
【0030】
小振幅用ダンパー7としては、粘性と弾性を有する粘弾性材料が互いに平行な複数枚の鋼板に挟まれたサンドイッチ構造を呈しており、軸線方向(X方向)の外力によって粘弾性材料がせん断変形する際に生じる抵抗力により振動エネルギの吸収が行われるいわゆる粘弾性ダンパーが好適する。
【0031】
具体的には、小振幅用ダンパー7としての粘弾性ダンパーは、図3に示すように、軸線方向(X方向)に平行に離間して配置される一対の金具等から成る外部プレート71と、一対の外部プレート71間に軸線方向(X方向)に平行に離間して配置される複数枚の金具等から成る内部プレート72と、隣接する内部プレート72間、一方の外部プレート71(図中上部)とこの上部の外部プレート71に隣接する内部プレート72間および他方の外部プレート71(図中下部)とこの下部の外部プレート71に隣接する内部プレート72間に挟装される粘弾性体73と、後述する積層体74の振幅の大きさを限定する2本のストッパピン75とを備えている。
【0032】
ここで、外部プレート71は、積層体74を構成する本体部71aと、第2の接続部材9(図1参照)に連結される連設部71bとを備えており、本体部71aの両側縁部(図3(a)中の上下部)には複数本のボルト71dを貫通させるための複数個の貫通孔(不図示)がX方向に沿って等間隔で設けられ、連設部71bには複数本のボルト(不図示)を貫通させるための複数個の貫通孔71cがZ方向に沿って等間隔で設けられている。
【0033】
また、複数枚の内部プレート72は、幅(Z方向)がZ1、長さ(X方向)がX2(図3(a)参照)の第1の内部プレート72aと、幅(Z方向)がZ2、長さ(X方向)がX1と、第1の内部プレート72aよりもX方向の寸法が長く、延設部6の一部としても構成される第2の内部プレート72bとを備えており、第1の内部プレート72aと第2の内部プレート72bは、一対の外部プレート71間において積層方向(Y方向)に沿って交互に配置されている。
【0034】
粘弾性体73は、厚さ数mm程度のゴムシート、アスファルトのようにせん断変形して抵抗する材料、すなわち、減衰力と復元力を併有する高分子材料で形成され、幅(Z方向)および長さ(X方向)寸法は各々Z2、X2となっている。
【0035】
このような構成の一対の外部プレート71、複数枚の第1、第2の内部プレート72a、72bは、図3に示すように、粘弾性体73を介して積層され、当該粘弾性体73の加硫により、これらの一対の外部プレート71、複数枚の第1、第2の内部プレート72a、72bが一体化されている。
【0036】
また、このような構成の一対の外部プレート71、複数枚の第1の内部プレート72a、隣接する内部プレート72a間および外部プレート71に隣接する内部プレート72a間に、幅(Z方向)Z3、長さ(X方向)X2のスペーサ(不図示)を介して、Y方向に貫通する貫通孔(不図示)に装着されたボルト71dおよび当該ボルト71dの先端部に螺着されたナット71eにより一体化されている。
【0037】
さらに、このような構成の積層体74には、積層方向(Y方向)に貫通する二つのピン孔76(図3(b)には1個のピン孔76のみが現れている)が離間して設けられており、これらのピン孔76には、例えば直径50mm程度の建築構造用圧延棒から成るストッパピン75が挿抜自在に装着されている。建築構造用圧延棒は例えばSS400、SNR400B、SNR490B、SM490Aなど、設計に応じて材料選定すればよい。この実施例では、積層体74の対角線上に所定の間隔をおいて二つのピン孔76が設けられている。なお、ピン孔76の口径は、図3(d)に示すように、ストッパピン75の直径Dよりも数mm程度大きくされており、ピン孔76の口径とストッパピン75の直径Dとの差の限度に振幅が限定されるように構成されている。なお、図3(a)、(b)中、符合75aは外部プレート71の外面に当接される厚さ10mm程度のゴムシート、75bはストッパピン75の外部プレート71の外面から突出する部分に設けられる平座金、75cはC型止め輪を示している。
【0038】
延設部6は、一対の外部プレート71と対応する位置に、軸線方向(X方向)に平行に離間して配置される一対の金具等から成る延設外部プレート61と、一対の延設外部プレート61間に軸線方向(X方向)に平行に離間して配置される複数枚の延設内部プレート62と、隣接する延設内部プレート62間に着脱自在に挟装される金具等から成るスペーサ63と、後述するロック機構Rおよびロック解除機構RKとを備えている。
【0039】
ここで、一対の延設外部プレート61は、積層体69を構成する本体部61aと、第1の連結部5a(図1参照)に連結される連設部61bとを備えており、本体部61aには第1、第2のボルト65a、66aを貫通させるための複数個の貫通孔(不図示)がZ方向に沿って等間隔で設けられており、また、連設部61bには複数本のボルト(不図示)を貫通させるための複数個の貫通孔61cがZ方向に沿って等間隔で設けられている。
【0040】
また、複数枚の延設内部プレート62は、小振幅用ダンパー7を構成する第2の内部プレート72bが延設部6側に向かって延長されたもので、第2の内部プレート72bと延設内部プレート62は1枚物で形成されている。
【0041】
さらに、複数枚のスペーサ63は、Z方向の幅が延設内部プレート62と同一とされた複数枚の第1のスペーサ63aと、第1のスペーサ63aよりも幅が大きい一対の第2のスペーサ63bとを備えており、第1のスペーサ63aは積層体69の外部側に配置され、第2のスペーサ63bは積層体69の内部側に配置されている。
【0042】
このような構成の延設内部プレート62と第1、第2のスペーサ63a、63bは、一対の延設外部プレート61間においてY方向に沿って交互に配置されている。また、一対の第2のスペーサ63bの両端縁部(Z方向の端部)にはZ方向の外方に向けて延長された延長部63cがそれぞれ設けられており、当該延長部63c間には金具等から成る第1のストッパプレート64が挟装されている。なお、延長部63cの延設外部プレート61側には第2のストッパプレート65および短尺のスペーサ68が配設されている。なお、第1、第2のストッパプレート64、65および短尺のスペーサ68の幅(Z方向)および長さ(X方向)寸法は各々Z3、X3となっている。
【0043】
このような構成の一対の延設外部プレート61、複数枚の延設内部プレート62および第1、第2のスペーサ63a、63bは、Y方向に貫通する貫通孔(不図示)に装着された第1、第2のボルト65a、66aおよびこれらの第1、第2のボルト65a、66aの先端部にそれぞれ螺着された第1、第2のナット65b、66bにより一体化されている。また、一対の第2のスペーサ63bの両端縁部(Z方向の端部)に設けられた延長部63c、第1のストッパプレート64、第2のストッパプレート65および短尺のスペーサ68は、Y方向に貫通する貫通孔(不図示)に装着されたボルト67aおよび当該ボルト67aの先端部に螺着されたナット67bにより一体化されている。
【0044】
このような構成の延設部6においては、積層方向(Y方向)に貫通する貫通孔(不図示)に第1、第2のボルト65a、66aを挿脱自在に挿通し、これらの第1、第2のボルト65a、66aの先端部にそれぞれ螺着された第1、第2のナット65b、66bをそれぞれ締めて、さらに、延長部63cの貫通孔(不図示)にボルト67aを挿脱自在に挿通し、当該ボルト67aの先端部に螺着されたナット67bを締めることで、ロック機構Rを作動させることができる。また、延長部63cにおけるナット67bを緩めて、当該ナット67b、ボルト67a、第1のストッパプレート64、第2のストッパプレート65および短尺のスペーサ68を取り外すことで、前記のロック機構Rの作動を解除する、すなわちロック解除機構RKを作動させることができる。
【0045】
次に、本発明における複合型ダンパーによる制振架構の施工方法について説明する。
【0046】
先ず、図2、図3に示すように、延設部6を構成する複数枚の延設内部プレート62(第2の内部プレート72b)間にそれぞれスペーサ63を挟装した積層構造の延設部6の貫通孔に第1、第2のボルト65a、66aを装着し、第1、第2のボルト65a、66aの先端部に螺着させた第1、第2のナット65b、66bを締める。さらに、一対の第2のスペーサ63bの延長部63c間に第1のストッパプレート64を挟装し、第2のストッパプレート65および短尺のスペーサ68を配置した上で貫通孔にボルト67aを装着し、ボルト67aの先端部に螺着させたナット67bを締める。
【0047】
これにより、任意のストローク位置で粘弾性体73が変形しない状態で小振幅用ダンパー7がロックされる。
【0048】
次に、建造物1を構成する柱2や梁3と共に複合ダンパーによる制振架構4をクレーン(不図示)等で吊り上げて建造物1に仮組みし、図示しないスラブを床(不図示)に張設する。そして、床にスラブが張設されて建造物1の重量が安定した後に複合ダンパーによる制振架構4を建造物1に固定する。ここで、溶接作業は熱の影響で複合ダンパーによる制振架構4に変形が付与されるので、可及的に熱の影響を受けないような製品形態にする必要がある。
【0049】
最後に、複合ダンパーによる制振架構4のロック機構Rを解除する。具体的には、延長部63cに配設したボルト67aの先端部に螺着したナット67bを緩めてボルト67aを貫通孔から抜くと共に、延長部63c間に挟装した第1のストッパプレート64や、延長部63cの外側に配置した第2のストッパプレート65および短尺のスペーサ68を取り出す。これにより、ロック機構Rの作動を解除させることができ、小振幅用ダンパー7と延設部6間の軸線方向の振幅を許容するロックが解除される。
【0050】
以上のように、本発明の複合型ダンパーによる制振架構によれば、大振幅用ダンパー5に延設部6を介して小振幅用ダンパー7が直列に結合されており、延設部6にロック機構Rおよびロック解除機構RKが設けられていることから、小振幅用ダンパー7が施工時における外力によって変形することを防止することができる。
【0051】
そして、複合型ダンパーによる制振架構の施工完了時に、延設部6のロック機構Rを解除することで、ストッパピン75とピン孔76の適正なクリアランスを維持した状態で建造物1に取付けることができ、ひいては、小地震や風荷重による建造物1の振動に対して、小振幅用ダンパー7に対して設計通りの良好な減衰機能を発揮させることができる。
[実施例2]
図4は、本発明における間隔調整機構の一例を模式的に示す説明図である。なお、同図において、図1〜図3と共通する部分には同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
この実施例においては、図3に示す小振幅用ダンパー7と、すなわち、ロック機構Rが作動している状態の小振幅用ダンパー7と延設部6間に後述する間隔調整機構が着脱自在に取り付けられている。なお、図4に示す小振幅用ダンパー7および延設部6は、図3に示す小振幅用ダンパー7および延設部6と型式(積層体の寸法やボルトの本数等が異なる)が異なるだけで、構造的には図3に示す小振幅用ダンパー7および延設部6と同様とされている。
【0053】
図4において、小振幅用ダンパー7を構成する一対の外部プレート71の外面側および延設部6を構成する一対の延設外部プレート61の外面側間に、小振幅用ダンパー7と延設部6間の間隔gを調整し得る間隔調整機構が着脱自在に配設されている。
【0054】
具体的には、間隔調整機構は、一対の外部プレート71の外面側にそれぞれ着脱自在に取り付けられる断面四角状の一対の第1の治具10、11と、一対の延設外部プレート61の外面側にそれぞれ着脱自在に取り付けられる断面四角状の一対の第2の治具12、13とを備えている。また、一対の第1の治具10、11の略中央部には、それぞれX方向に第1の貫通孔10a、11aが設けられており、さらに、一対の第1の治具10、11の幅方向(Z方向)の端部にはそれぞれY方向に貫通孔(不図示)が設けられている。なお、一対の第1の治具10、11は、2本のストッパピン75の間に配置されている。
【0055】
同様に、一対の第2の治具12、13の略中央部にも、第1の貫通孔10a、11aと対応する位置にそれぞれX方向に第2の貫通孔12a、13aが設けられており、さらに、一対の第1の治具12、13の幅方向(Z方向)の端部にもそれぞれY方向に貫通孔(不図示)が設けられている。
【0056】
このような構成の一対の第1の治具10、11は、一対の第1の治具10、11の幅方向(Z方向)の端部に設けられた貫通孔間に第1のシャフト20を挿通し、その両端部に第1のナット22、23を螺着することで、当該一対の第1の治具10、11が一対の外部プレート71の外面側に対してそれぞれ着脱自在に取り付けられることになる。
【0057】
同様に、一対の第2の治具12、13は、一対の第2の治具12、13の幅方向(Z方向)の端部に設けられた貫通孔間に第2のシャフト21を挿通し、その両端部に第2のナット24、25を螺着することで、当該一対の第2の治具12、13が一対の延設外部プレート61の外面側に対してそれぞれ着脱自在に取り付けられることになる。
【0058】
このようにして、一対の第1の治具10、11を一対の外部プレート71の外面側に取り付け、さらに、一対の第2の治具12、13を一対の延設外部プレート61の外面側に取り付けた後に、第1の貫通孔10aと第2の貫通孔12a間に第3のシャフト14を挿通し、第3のシャフト14の両端部に第3の一対のナット16a、16b、17a、17bをそれぞれ螺着する。なお、第3の一対のナット16a、16b、17a、17bのうち、一方の一対のナットの16a、16bは、第3のシャフト14の一方の端部(図中左側)であって、第1の治具10を挟むようにして螺着され、他方の一対のナットの17a、17bは、第3のシャフト14の他方の端部(図中右側)であって、第2の治具12を挟むようにして螺着されている。
【0059】
同様に、第1の貫通孔11aと第2の貫通孔13a間に第4のシャフト15を挿通し、第4のシャフト15の両端部に第4の一対のナット18a、18b、19a、19bをそれぞれ螺着する。なお、第4の一対のナット18a、18b、19a、19bのうち、一方の一対のナットの18a、18bは、第4のシャフト15の一方の端部(図中左側)であって、第1の治具11を挟むようにして螺着され、他方の一対のナットの19a、19bは、第4のシャフト15の他方の端部(図中右側)であって、第2の治具13を挟むようにして螺着されている。
【0060】
以上により、一対の外部プレート71の外面側および一対の延設外部プレート61の外面側間に間隔調整機構を着脱自在に配設することができる。
【0061】
次に、このような間隔調整機構を用いて、小振幅用ダンパー7と延設部6間の間隔gを調整する方法について説明する。
【0062】
先ず、ロック解除機構RKを作動させて延設部6におけるロック機構Rを解除する。このような状態において、例えば、第2の治具12、13側のナット17a、17b、19a、19bを固定した状態で、第1の治具10、11側の図中左側のナット16a、18aを緩め、第1の治具10、11側の図中右側のナット16b、18bを締めることで延設部6を小振幅用ダンパー7と離間する方向に移動させ、あるいは、第1の治具10、11側の図中右側のナット16b、18bを緩め、第1の治具10、11側の図中左側のナット16a、18aを締めることで小振幅用ダンパー7を延設部6側に向かって移動させる。これらのナットの回転により、小振幅用ダンパー7と延設部6間の間隔gを調整することで、ストッパピン75とピン孔76が所定のクリアランスとなるように調整する。この場合、図5に示すように、隙間測定部材30の先端部を小振幅用ダンパー7と延設部6間の隙間gに挿入することで、簡単に両者間の隙間gを測定することができる。この実施例では、間隔調整機構による小振幅用ダンパー7と延設部6間の間隔gの調整により、ストッパピン75の中心がピン孔76の中心に対して0.2mm〜0.5mmの精度範囲となるように調整することができる。
【0063】
そして、ストッパピン75とピン孔76が所定のクリアランスとなるように調整した後、延設部6におけるロック機構Rを作動させて小振幅用ダンパー7をロックさせると共に、図6に示すように間隔調整機構を取り外す。
【0064】
次いで、第1の実施例と同様に、小振幅用ダンパー7がロックされた状態で、建造物1に仮固定する。そして、建造物1を構成する柱2や梁3の接合、並びに床へのスラブの打設などが終了し、工事の進行に伴う建造物1の重量の変化が小さくなってから、大振幅用ダンパー5および小振幅用ダンパー7を建造物1に強固に結合する。
【0065】
最後に、第1の実施例と同様に、ロック機構Rを解除させて、小振幅用ダンパー7が所定のダンパー機能を発揮できるようにする。
【0066】
以上のように、本発明の間隔調整機構を使用すれば、ナットの回転(締め、緩め)によって得られる軸線方向(X方向)への軸力で小振幅用ダンパー7に対して少しずつ変形を与えて位置決めすることができることから、現地において、小振幅用ダンパー7の位置を容易に微調整することができる。また、延設部におけるロック機構Rはダンパーと建造物1の取り合い部には干渉しない場所に取り付けられていることから、建造物1への固定とロック機構Rの作動を独立して作業することができる。
[実施例3]
図7は、本発明における間隔調整機構の他の例を模式的に示す説明図である。なお、同図において、図4〜図6と共通する部分には同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
この実施例においては、図4に示す一対の第1の治具10、11に代えて、当接部41aとフランジ部41bを有するL型の第3の治具41が一対の外部プレート71の外面側にそれぞれ図示しない固着手段を介して着脱自在に取り付けられており、また、図4に示す一対の第2の治具12、13に代えて、当接部43aとフランジ部43bを有するL型の第4の治具43が一対の外部プレート71の外面側にそれぞれ図示しない固着手段を介して着脱自在に取り付けられている。
【0068】
また、第3の治具41に設けられた貫通孔と第4の治具43に設けられた貫通孔間にシャフト45を挿通し、シャフト45の両端部には一対のナット46a、46b、47a、47bが螺着されている。
【0069】
この実施例においても、第2の実施例と同様に、ストッパピン75とピン孔76のクリアランスの微調整が可能となり、ストッパピン75とピン孔76は最適なクリアランスを維持した状態で建造物に接合できるので、小地震や風荷重による構造物の振動に対して、小振幅用ダンパー7が設計どおりに良好な減衰機能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
前述の実施例においては、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、次のように構成してもよい。
【0071】
第1に、前述の実施例においては、ダンパーをブレース状に設置しているが隣接する一対の梁3間に垂直に設置してもよい。
【0072】
第2に、前述の実施例においては、大振幅用ダンパーとして箱型鋼を使用しているが、大振幅用ダンパーはこれに限定されず、例えばH型鋼やL型鋼から成る鋼材を使用してもよい。
【0073】
第3に、前述の実施例においては、ストッパピン75とピン孔76のクリアランスを数mm程度としているが、このクリアランスに限定されない。
【0074】
第4に、前述の実施例においては、間隔調整機構を構成する治具間にシャフトを挿通しているが、シャフトに代えて、頭部を有するボルトを使用してもよい。
【0075】
第5に、前述の実施例においては、延設部を構成する内部プレートとして2枚の内部プレートを使用しているが、2枚を越える内部プレートを使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1・・・建造物
2・・・柱
3・・・梁
5・・・大振幅用ダンパー
6・・・延設部
61・・・延設外部プレート
62・・・延設内部プレート
63・・・スペーサ
63c・・・延長部
64・・・ストッパプレート
65a、66a・・・ボルト
65b、66b・・・ナット
R・・・ロック機構
RK・・・ロック解除機構
7・・・小振幅用ダンパー
71・・・外部プレート
72・・・内部プレート
73・・・粘弾性体
75・・・ストッパピン
76・・・ピン孔
10a、11a・・・第1の貫通孔
10、11・・・第1の治具
12a、13a・・・第2の貫通孔
12、13・・・第2の治具
14、15・・・シャフト
16a、16b〜19a、19b・・・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の柱、梁架構の面内に配置される鋼材系の大振幅用ダンパーと、一端部に延設部を有し、前記延設部を介して前記大振幅用ダンパーに直列に結合される小振幅用ダンパーとを備え、
前記小振幅用ダンパーは、軸線方向に平行に離間して配置される一対の外部プレートと、前記一対の外部プレート間に軸線方向に平行に離間して配置される複数枚の内部プレートと、前記内部プレート間に挟装される粘弾性体と、前記一対の外部プレート、前記複数枚の内部プレートおよび前記粘弾性体を積層方向に貫通するピン孔に挿脱自在に装着されるストッパピンとを備え、
前記延設部は、前記一対の外部プレートと対応する位置に、軸線方向に平行に離間して配置される一対の延設外部プレートと、前記複数枚の内部プレートのうち少なくとも2枚の内部プレートが前記延設部側に向かって延長され、軸線方向に平行に離間して配置される複数枚の延設内部プレートと、前記延設内部プレート間に着脱自在に挟装される複数枚のスペーサと、前記小振幅用ダンパーと前記延設部間の振幅を規制するロック機構と、前記小振幅用ダンパーと前記延設部間の振幅を許容するロック解除機構とを備えることを特徴とする複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項2】
前記複数枚のスペーサのうち、少なくとも2枚のスペーサの両側縁部に幅方向外方に向かって延長する延長部が設けられ、前記延長部間にストッパプレートが挟装されていることを特徴とする請求項1記載の複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項3】
前記ロック機構および前記ロック解除機構は、前記一対の延設外部プレート、前記複数枚の延設内部プレートおよび前記スペーサを積層方向に貫通する貫通孔に挿脱自在に装着されるボルトと、前記ボルトの先端部に螺着されるナットとを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項4】
前記小振幅用ダンパーの外面側と前記延設部の外面側には、前記小振幅用ダンパーと前記延設部間の間隔を調整し得る間隔調整機構が着脱自在に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載の複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項5】
前記間隔調整機構は、前記一対の外部プレートの外面にそれぞれ着脱自在に取り付けられ、前記軸線方向に貫通する第1の貫通孔を有する一対の第1の治具と、前記一対の延設外部プレートの外面にそれぞれ着脱自在に取り付けられ、第1の貫通孔と対応する位置に前記軸線方向に貫通する第2の貫通孔を有する一対の第2の治具と、前記一対の第1の貫通孔と前記一対の第2の貫通孔間に跨ってそれぞれ挿脱自在に装着される一対のシャフトと、前記一対のシャフトの両端部にそれぞれ螺着される一対のナットとを備えることを特徴とする請求項4記載の複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項6】
前記一対の第1の治具および前記一対の第2の治具は、断面四角状の鋼材若しくは断面L型の鋼材から成ることを特徴とする請求項5記載の複合型ダンパーによる制振架構。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3何れか1項記載の複合型ダンパーによる制振架構を備え、
前記複合型ダンパーによる制振架構を構成する延設部のロック機構を作動させた状態で前記複合型ダンパーによる制振架構を建造物に取り付け、前記建造物への取付施工完了後に前記ロック機構の作動を解除させることを特徴とする複合型ダンパーによる制振架構の施工方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7何れか1記載の複合型ダンパーによる制振架構を備え、
前記複合型ダンパーによる制振架構を構成するロック解除機構を作動させた状態で、前記複合型ダンパーによる制振架構を構成する間隔調整機構により、前記複合型ダンパーによる制振架構を構成するストッパピンとピン孔間が所定のクリアランスとなるように調整し、前記調整後に前記複合型ダンパーによる制振架構を構成するロック機構を作動させることを特徴とする複合型ダンパーによる制振架構の間隔調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−236197(P2010−236197A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82710(P2009−82710)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】