説明

複合多孔質体およびその製造方法

【課題】枠部材と多孔質体との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを防ぐ。
【解決手段】三次元網目構造を有するシート状の多孔質体11と、この多孔質体11の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材12とが一体に形成されてなる複合多孔質体10であって、枠部材12は、ゴム状弾性材により形成された緩衝部13と、この緩衝部13をその外周部側から覆う樹脂部14とを備え、緩衝部13は、多孔質体11の側部の一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所に接合され、樹脂部14において緩衝部13をその外周部側から覆う部分に多孔質体11の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体11の側部に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、ガス拡散部材、放熱部材、吸水部材等に用いられる複合多孔質体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造を有するシート状の多孔質体は、フィルタ、ガス拡散部材、放熱部材、吸水部材といった様々な用途に適用され、種々の装置に備えられている。この種の多孔質体は、一般に強度が低く、変形し易い性質を有していることから、多孔質体の側部に面方向に延びる枠部材を設け、これらの多孔質体と枠部材とが一体に形成された複合多孔質体として用いられている。この枠部材は、下記特許文献1に示されるような、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、若しくはゴムにより形成されたり、下記特許文献2に示されるような、ゴム状弾性材により形成されている。
【特許文献1】特開2005−029806号公報
【特許文献2】特開2003−007328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の複合多孔質体において、枠部材を熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂により形成すると、この複合多孔質体の製造後、枠部材では、既に樹脂は硬化しているものの長時間かけて緩やかにさらに硬化が進行して収縮するいわゆる後硬化が生じ、多孔質体に面方向内側に向けた力が作用してこの複合多孔質体に反りや亀裂が発生するおそれがある。
このうち、熱可塑性樹脂は、溶融状態から硬化するまでの硬化収縮率が大きいので、複合多孔質体の製造時に反りが生じ易く、このように反った複合多孔質体を複数積層させた状態で配置すると、複合多孔質体同士の間に隙間が生じるため、この隙間を閉じるのに積層方向に押圧したときに、複合多孔質体に亀裂が生ずるおそれがある等、その取り扱い性を低下させることがある。さらに、熱可塑性樹脂の枠部材と多孔質体とでは、熱膨張係数が大きく異なるので、複合多孔質体の使用時に、これらの熱膨張係数差に起因して前記の反りや亀裂の発生を増長させるおそれもある。
一方、枠部材が、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性材により形成されると、複合多孔質体に反りや亀裂が発生するのを防ぐことができるものの、多孔質体との接合強度を必要十分に確保することが困難になり、多孔質体の側部から枠部材が脱落し易くなるおそれがある。また、ゴム状弾性材は、時間の経過に伴い脆化し易いので、複合多孔質体が使用される過程において前記接合強度が大きく低下し易くなり、複合多孔質体の寿命が短くなるおそれがある。さらに、前記接合強度が低いことに起因して、多孔質体をインサート品としてキャビティ内に配置した状態でゴムを圧入して複合多孔質体を形成する場合、この形成後に型開きして複合多孔質体を取り出す際に枠部材が金型に引張られると容易に多孔質体から外れるおそれもある。
【0004】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、枠部材と多孔質体との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを防ぐことができる複合多孔質体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の複合多孔質体は、三次元網目構造を有するシート状の多孔質体と、この多孔質体の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材とが一体に形成されてなる複合多孔質体であって、枠部材は、ゴム状弾性材により形成された緩衝部と、この緩衝部をその外周部側から覆う樹脂部とを備え、緩衝部は、多孔質体の側部の一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所に接合され、樹脂部において緩衝部をその外周部側から覆う部分に多孔質体の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体の側部に接合されていることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、枠部材が緩衝部と樹脂部とを備えているので、複合多孔質体の製造後、時間の経過に伴い樹脂部が後硬化して収縮し、多孔質体の面方向内側に向けた力が作用した場合においても、この力の少なくとも一部を緩衝部に受けさせて吸収させることが可能になり、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを抑制することができる。しかも、樹脂部において緩衝部をその外周部側から覆う部分に多孔質体の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体の側部に接合されているので、緩衝部と多孔質体の側部との接合強度が低くても、この接合強度を樹脂部と多孔質体との接合強度により補強することが可能になる。さらに、複合多孔質体を使用する過程において徐々に緩衝部が脆化し、緩衝部と多孔質体の側部との接合強度が低下しても、その強度をも樹脂部と多孔質体との接合強度により補強することができる。
さらに、樹脂部は、多孔質体の側部において枠部材が接合された部分の全域ではなく、この部分において緩衝部の接合された部分を除いた部分に接合されているので、多孔質体の側部における樹脂部との接合部分を最小限に抑えることが可能になり、樹脂部の溶融状態から硬化するまでの硬化収縮や、後硬化するときの収縮が、多孔質体にその面方向内側に向けて及ぼす力を抑えることができる。
以上より、枠部材と多孔質体との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを防ぐことができる。
【0007】
ここで、緩衝部は、多孔質体の外周縁にこの周方向に間隔をあけて複数設けられ、樹脂部は、緩衝部をその外周部側から覆い、かつ緩衝部同士の間を埋めるように、この多孔質体の全周にわたって延在してもよい。
【0008】
また、緩衝部は、多孔質体および樹脂部の表面に対して厚さ方向外方に突出してもよい。
【0009】
この場合、例えば燃料電池のガス拡散部材等のように、複数の複合多孔質体が積層されて配置された積層体において、多孔質体の表面に向けてガスや燃料等の流体を流し、この流体を積層体の積層方向に通過させて使用する際に、積層方向で隣合う複合多孔質体の緩衝部同士を密接させることにより、これらの複合多孔質体同士の間から流体が漏れるのを防ぐことが可能になり、シール性が向上できる等、その取り扱い性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の複合多孔質体の製造方法は、三次元網目構造を有するシート状の多孔質体と、この多孔質体の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材とが一体に形成されてなる複合多孔質体の製造方法であって、前記多孔質体をインサート部品として、この多孔質体の側部においてその一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所との間に、この多孔質体の面方向で隙間を設けた状態で、前記側部におけるこの一部若しくは複数個所を除いた部分から面方向に延びる樹脂部を射出成形するインサート成形を行った後に、トランスファー成形により、前記隙間にゴム状弾性材を圧入することによって、前記樹脂部により外周部側から覆われるとともに、多孔質体の側部における前記一部若しくは複数個所に接合した緩衝部を形成し、この緩衝部と樹脂部とを有する枠部材を形成して複合多孔質体を形成することを特徴とする。
【0011】
この場合、前記の作用効果を奏する複合多孔質体を確実に形成することが可能になるのに加え、樹脂部を形成した後に、前記隙間にゴム状弾性材を圧入して緩衝部を形成するので、この緩衝部を形成した後に型開きして複合多孔質体を金型から取り出す際に、緩衝部が金型に引張られたとしても、樹脂部と多孔質体の側部との接合強度によってこの緩衝部が多孔質体の側部から外れるのを防ぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、枠部材と多孔質体との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。
本発明の複合多孔質体10は、図1に示すように、シート状の多孔質体11と、この多孔質体11の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材12とが一体に形成された平面視矩形の薄板とされている。
【0014】
多孔質体11は、三次元網目構造を有する矩形の薄板であり、側部に開口する気孔が各方向に連通していることにより通気性、吸水性を有し、軽量で表面積が大きいという特性を有している。なお、この多孔質体11は、金属製でも、結晶性の黒鉛や、結晶性でない無定形炭素を含むものとしての炭素質でも、さらには金属不職布であってもよい。
また、本実施形態では、多孔質体11の側部は、4つの平板部11bにより構成され、これらの平板部11bにより、平面視矩形とされた多孔質体11の外周縁を構成している。すなわち、多孔質体11の側部は、この多孔質体11の外周縁に沿った方向で隣合う平板部11bの長さ方向端部同士が稜線をなして連結された構成とされている。
【0015】
枠部材12は薄板状とされ、多孔質体11と略同じ厚さで多孔質体11の表裏面に対して段差なくこの多孔質体11の側部に接合されている。このように多孔質体11と枠部材12とが一体に形成されてなる複合多孔質体10は、全体として1枚の薄板部材とされ、このうち枠部材12が固定あるいは挟持される等して各種装置に取り付けられて、フィルタ、吸水部材、放熱体等として用いられたり、あるいは複数の複合多孔質体10が積層された積層体を各種装置に組み込んだ状態で、ガスや燃料等の流体を多孔質体11の表面に向けて流しこの積層体の積層方向に通過させて用いられる。
【0016】
ここで、多孔質体11は、各種方法により製造できるが、例えば、金属粉末を含むスラリーを薄く成形して乾燥させたグリーンシートを焼成することにより製造することができる。
スラリーは、例えばSUS316L等の金属粉末、有機バインダ(例えばメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース)、溶媒(水)を混合してなるものであり、これに加え、加熱処理により昇華あるいは気化する発泡剤(例えば炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤(例えばネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン))や消泡剤(エタノール)等が必要に応じて添加される。
【0017】
グリーンシート製造装置において、まず、スラリーが貯蔵されたホッパから、ローラによって搬送されるキャリアシート上にスラリーが供給される。次に、キャリアシート上のスラリーは、移動するキャリアシートとドクターブレードとの間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
成形されたスラリーは、さらにキャリアシートによって搬送され、加熱炉を通過する。そして、加熱炉中で乾燥されることにより、SUS316L粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートが形成される。
なお、スラリーに発泡剤が含まれる場合、キャリアシート上で延ばされた状態のスラリーを、乾燥前に、高湿度雰囲気下にて加熱処理し、発泡剤を発泡させて発泡スラリーとしてから、乾燥処理を行ってグリーンシートを形成する。
このグリーンシートは、キャリアシートから取り外された後、真空炉にて脱脂、焼成されることにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結された多孔質体11とされる。
【0018】
そして、本実施形態では、枠部材12は、ゴム状弾性材により形成された緩衝部13と、この緩衝部13をその外周部側から覆う樹脂部14とを備えている。このうち、緩衝部13は、多孔質体11の側部の一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所における厚さ方向の全域にわたって接合されている。また、樹脂部14において緩衝部13をその外周部側から覆う部分に多孔質体11の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体11の側部に接合されている。
【0019】
図示の例では、緩衝部13は、多孔質体11の側部にこの外周縁に沿った方向に間隔をあけて複数設けられ、樹脂部14は、緩衝部13をその外周部側から覆い、かつ緩衝部13同士の間を埋めるように、この多孔質体11の全周にわたって延在して、多孔質体11の側部において緩衝部13同士の間の部分に接合されている。
さらに、緩衝部13は、多孔質体11の外周縁に沿った方向で隣合う平板部11bがなす稜線から、これらの各平板部11bにおいて前記稜線に連なる端部にかけた隅部11aに接合されている。なお、本実施形態では、図2および図3に示されるように、多孔質体11、緩衝部13および樹脂部14の厚さは同等とされるとともに、それぞれの表裏面は段差なく略一致している。
【0020】
ここで、緩衝部13としては、シリコーン樹脂等のゴム状弾性を有する熱硬化性樹脂、エチレン・酢酸ビニル(EVA)共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等のゴム状弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、およびその他熱可塑性エラストマー(TPE)等のうち、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。このうち、耐薬品性や耐熱性の観点では、シリコーン樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマーを採用するのが望ましい。また、複合多孔質体10が例えば燃料電池のガス拡散部材として使用される場合には、例えば温度等の使用環境に耐え得る材質、例えばフッ素系熱可塑性エラストマー、またはエンジニアリングプラスチック系熱可塑性エラストマーを採用することができる。
以上の各材質に代えて、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、若しくはアクリロニトリルブタジエンゴム等のジエン系ゴム、またはブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、若しくはフッ素ゴム等の非ジエン系ゴムを採用することもできるが、複合多孔質体10が例えば燃料電池のガス拡散部材として使用される場合には、例えば温度等の使用環境に耐え得る材質、例えばフッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム若しくはシリコーンゴムを採用するのが望ましい。
【0021】
樹脂部14としては、アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、フェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリシクロオレフィン(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等の熱可塑性樹脂、あるいはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を採用することができる。また、複合多孔質体10が例えば燃料電池のガス拡散部材として使用される場合には、前記の各材質のうち、荷重たわみ温度が、燃料電池作動温度範囲の上限温度120℃以上の樹脂材料を採用することができ、この樹脂材料のうちより好ましくは結晶性樹脂で、かつ耐薬品性に優れ、ガス透過性が低い樹脂材料、例えばフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン樹脂を採用することができ、これらの樹脂材料よりさらに好ましくはポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂やポリプロピレン樹脂を採用することができる。
【0022】
次に、多孔質体11の側部に枠部材12を形成する方法について説明する。
まず、一対の金型間に形成されたキャビティに、インサート部品として多孔質体11を配置し、ランナからゲートを介して射出した溶融樹脂をキャビティ内に充填する。この際、多孔質体11の隅部11aとの間に、その厚さ方向の全域にわたってこの多孔質体11の面方向で隙間を設けた状態で、この多孔質体11の側部における隅部11aを除いた部分、つまり平板部11bの長さ方向中央部から面方向に延びる樹脂部14を射出成形するインサート成形を行う。
【0023】
そして、樹脂部14が多孔質体11の側部に接合されて樹脂部14と多孔質体11とが一体に形成された中間部材を金型から取り出し、前記金型とは異なる他の金型のキャビティに配置して、トランスファー成形により、前記隙間にゴム状弾性材を圧入することによって、樹脂部14により外周部側から覆われるとともに、多孔質体11の側部における隅部11aに接合した緩衝部13を形成する。
以上より、多孔質体11の側部に緩衝部13と樹脂部14とからなる枠部材12を形成して接合することにより複合多孔質体10を形成する。
【0024】
以上説明したように本実施形態の複合多孔質体10によれば、枠部材12が緩衝部13と樹脂部14とを備えているので、複合多孔質体10の製造後、時間の経過に伴い樹脂部14が後硬化して収縮し、多孔質体11の面方向内側に向けた力が作用した場合においても、この力の少なくとも一部を緩衝部13に受けさせて吸収させることが可能になり、複合多孔質体10に反りや亀裂が生ずるのを抑制することができる。
【0025】
しかも、樹脂部14において緩衝部13をその外周部側から覆う部分に多孔質体11の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体11の側部に接合されているので、緩衝部13と多孔質体11の側部との接合強度が低くても、この接合強度を樹脂部14と多孔質体11との接合強度により補強することが可能になる。さらに、複合多孔質体10を使用する過程において徐々に緩衝部13が脆化し、緩衝部13と多孔質体11の側部との接合強度が低下しても、その強度をも樹脂部14と多孔質体11との接合強度により補強することができる。
【0026】
さらに、樹脂部14は、多孔質体11の側部において枠部材12が接合された全周ではなく、このうち隅部11aを除いた平板部11bの長さ方向中央部にのみ接合されているので、多孔質体11の側部における樹脂部14との接合部分を最小限に抑えることが可能になり、樹脂部14の溶融状態から硬化するまでの硬化収縮や、後硬化するときの収縮が、多孔質体11にその面方向内側に向けて及ぼす力を抑えることができる。
以上より、枠部材12と多孔質体11との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体10に反りや亀裂が生ずるのを防ぐことができる。
【0027】
また、本実施形態の複合多孔質体の製造方法によれば、前記の作用効果を奏する複合多孔質体10を確実に形成することが可能になるのに加え、樹脂部14を形成した後に、前記隙間にゴム状弾性材を圧入して緩衝部13を形成するので、この緩衝部13を形成した後に型開きして複合多孔質体10を金型から取り出す際に、緩衝部13が金型に引張られたとしても、樹脂部14と多孔質体11との接合強度によってこの緩衝部13が多孔質体11の側部から外れるのを防ぐことが可能になる。
【0028】
なお、以上の実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求に基づき種々変更可能である。
例えば、前記実施形態では、樹脂部14を、多孔質体11の側部の全周にわたって延在させて、前記側部のうち隅部11aを除いた部分に接合したが、枠部材12が、多孔質体11の側部の一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所に接合された緩衝部13と、この緩衝部13をその外周部側から覆う樹脂部14とを備え、この樹脂部14において緩衝部13をその外周部側から覆う部分に多孔質体11の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体11の側部に接合されていれば前記実施形態に限られるものではない。
【0029】
例えば、図4に示されるように、多孔質体11の側部において、この面方向で互いに対向する一対の平板部11bにそれぞれ、その長さ方向両端部に各別に緩衝部13を接合し、これらの緩衝部13をその外周部側から覆うように、これらの緩衝部13が接合された平板部11bの長さ方向全域にわたって延在した樹脂部14を、この平板部11bにおける前記長さ方向両端部を除いた部分に接合してもよい。
【0030】
また、これに代えて、多孔質体11の側部において、この面方向で互いに対向する一対の平板部11bにそれぞれ、その長さ方向中央部に各別に緩衝部13を接合し、これらの緩衝部13をその外周部側から覆うように、この緩衝部13が接合された平板部11bの長さ方向全域にわたって延在した樹脂部14を、この平板部11bにおいて前記長さ方向中央部を除いた部分に接合してもよい。
【0031】
さらに、これに代えて、多孔質体11の側部において、この面方向で互いに対向する一対の平板部11bにそれぞれ、その長さ方向中央部および両端部を除いた2つの中間部分に各別に緩衝部13を接合し、これらの緩衝部13をその外周部側から覆うように、これらの緩衝部13が接合された平板部11bの長さ方向全域にわたって延在した樹脂部14を、この平板部11bにおいて前記2つの中間部分を除いた部分に接合してもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、枠部材12として、多孔質体11と略同じ厚さで段差なくこの多孔質体11の側部に接合された構成を示したが、これに代えて、緩衝部13の表面を多孔質体11および樹脂部14の表面に対して厚さ方向外方に突出させるようにしてもよい。例えば図5に示されるように、緩衝部13が、樹脂部14および多孔質体11よりも厚さが厚くされて、その表裏面がそれぞれ樹脂部14および多孔質体11の表裏面それぞれに対して厚さ方向外方に突出したような構成を採用してもよい。
【0033】
この場合、例えば燃料電池のガス拡散部材等のような複数の複合多孔質体10が積層されて配置された積層体において、多孔質体11の表面に向けてガスや燃料等の流体を流し、この流体を積層体の積層方向に通過させて使用する際に、積層方向で隣合う複合多孔質体10の緩衝部13同士を密接させることにより、これらの複合多孔質体10同士の間から流体が漏れるのを防ぐことが可能になり、シール性が向上できる等、その取り扱い性の向上を図ることができる。
なお、緩衝部13の表面若しくは裏面と多孔質体11の側部とが樹脂部14により接合されていなければ、緩衝部13および樹脂部14の厚さは同等であっても、緩衝部13の方が樹脂部14の厚さよりも薄くなっていてもよい。
【0034】
また、前記実施形態では、複合多孔質体10として多孔質体11が1つだけ設けられた構成を示したが、これに代えて、複数の多孔質体11を面方向に間隔をあけて複数配置し、それぞれの多孔質体11の側部において少なくとも一部に緩衝部13を接合した状態で、これらの多孔質体11同士の間に樹脂部14を満たし、この樹脂部14により緩衝部13をその外周部側から覆い、樹脂部14を前記側部において緩衝部13が接合されていない部分に接合してもよい。
さらに、前記実施形態では、平面視矩形の多孔質体11を示したが、例えば円形状であっても、多角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
枠部材と多孔質体との接合強度を必要十分に保ちつつ、複合多孔質体に反りや亀裂が生ずるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態として示した複合多孔質体を示す平面図である。
【図2】図1に示す複合多孔質体のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1に示す複合多孔質体のB−B線矢視断面図の第1実施形態である。
【図4】本発明の第2実施形態として示した複合多孔質体を示す平面図である。
【図5】図1に示す複合多孔質体のB−B線矢視断面図の第2実施形態である。
【符号の説明】
【0037】
10 複合多孔質体
11 多孔質体
12 枠部材
13 緩衝部
14 樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元網目構造を有するシート状の多孔質体と、この多孔質体の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材とが一体に形成されてなる複合多孔質体であって、
枠部材は、ゴム状弾性材により形成された緩衝部と、この緩衝部をその外周部側から覆う樹脂部とを備え、緩衝部は、多孔質体の側部の一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所に接合され、樹脂部において緩衝部をその外周部側から覆う部分に多孔質体の外周縁に沿った方向で連なる部分が、多孔質体の側部に接合されていることを特徴とする複合多孔質体。
【請求項2】
請求項1記載の複合多孔質体において、
緩衝部は、多孔質体の側部にこの外周縁に沿った方向に間隔をあけて複数設けられ、樹脂部は、緩衝部をその外周部側から覆い、かつ緩衝部同士の間を埋めるように、この多孔質体の全周にわたって延在していることを特徴とする複合多孔質体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合多孔質体において、
緩衝部は、多孔質体および樹脂部の表面に対して厚さ方向外方に突出していることを特徴とする複合多孔質体。
【請求項4】
三次元網目構造を有するシート状の多孔質体と、この多孔質体の側部の少なくとも一部から面方向に延びる枠部材とが一体に形成されてなる複合多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体をインサート部品として、この多孔質体の側部においてその一部、若しくは外周縁に沿った方向に間隔をあけた複数個所との間に、この多孔質体の面方向で隙間を設けた状態で、前記側部におけるこの一部若しくは複数個所を除いた部分から面方向に延びる樹脂部を射出成形するインサート成形を行った後に、
トランスファー成形により、前記隙間にゴム状弾性材を圧入することによって、前記樹脂部により外周部側から覆われるとともに、多孔質体の側部における前記一部若しくは複数個所に接合した緩衝部を形成し、この緩衝部と樹脂部とを有する枠部材を形成して複合多孔質体を形成することを特徴とする複合多孔質体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−313834(P2007−313834A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148205(P2006−148205)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】