説明

複合天然素材容器

【課題】環境適性を有するとともに、耐水性、透視性、強度、包装機械適性等に優れた複合天然素材容器を提供すること。
【解決手段】天然素材容器の一部が乳酸系重合体シート状物で形成されており、例えば、容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、オーバーラップ包装シート状物、粘着ラベルからなる群から選ばれる少なくとも1つが乳酸系重合体シート状物で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材と他の材料とからなる複合天然素材容器に関し、特に、生分解性、耐水性、透視性、強度、機械包装適性等に優れた複合天然素材容器に関する。
【背景技術】
【0002】
包装分野においては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック容器が大量に使用されており、プラスチック容器の廃棄処理問題が近年クローズアップされてきたのに伴い、天然素材容器が注目を集めている。すなわち、木材パルプや植物性廃棄物等の天然素材は主に植物からできているため、埋め立て処理であれ、焼却処理であれ、最終的には、その炭素源は二酸化炭素を経て、再度光合成の作用により植物資源に還元される。したがって、一方通行の石油資源由来のプラスチックとは異なり、地球環境中で循環される材料であり、資源の有効活用、廃棄物の処理、大気中の二酸化炭素増加防止といった観点から、環境適性に優れた材料といえる。
【0003】
しかしながら、天然素材容器は、プラスチック容器と比べると、強度、耐水性、透視性、機械包装適性等に劣っており、これらを補うために、例えば、紙コップに延伸ポリスチレンのフタ材を組み合わせたり、紙トレーに耐水性を付与するために紙の原反にポリエチレンやポリプロピレンを押出ラミネートしたり、木製トレーの層間接着剤としてウレタン系の接着剤を使用するような例があった。ところが、部分的にでもプラスチックが複合されると、容器全体としては環境適性が保たれているとはいえず、好ましくなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の本旨は、環境適性とともに、耐水性、透視性、強度、包装機械適性等に優れた複合天然素材容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、このような現状に鑑み鋭意検討した結果、用途に応じて、天然素材からなる容器の一部に乳酸系重合体からなるシート状物等を複合することにより、上記の課題を解決することができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明の複合天然素材容器は、天然素材容器の一部が乳酸系重合体シート状物で形成されていることを特徴とする。
ここで、乳酸系重合体シート状物で形成されている天然素材容器の一部は、容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、オーバーラップ包装シート状物、粘着ラベルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることができる。
また、天然素材容器は、木材パルプ、再生木材パルプ、非木材系植物性パルプ、植物性廃棄物、木材シートおよび木材チップからなる群から選ばれる少なくとも1種類を主原料とすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境適性に優れ、耐水性、透視性、強度、包装機械適性に優れた複合天然素材容器を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合天然素材容器とは、天然素材容器の一部に乳酸系重合体シート状物を使用した容器をいう。天然素材容器は、このままでは、耐水性、透視性、強度、包装機械適性に乏しいため、本発明においては、各用途に応じた特定の形態で、一部に乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
【0008】
ここでシート状物とは、シート又はフィルムをいう。JISにおける定義上、シートとは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さな平らな製品をいい、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900)。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえる。しかし、シートとフィルムとの境界は定かでなく、明確に区別することは困難であるので、本願においては、上記のとおり、シートとフィルムの両方を含んだ概念として「シート状物」の用語を使用する。
【0009】
この発明において、「天然素材容器」とは、その主材料が、下記の1)〜5)からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料からなるものである。
【0010】
1)木材パルプ
2)回収古紙等から得られる再生木材パルプ
3)ケナフ・アシ・麻・竹等から得られる非木材系植物性パルプ
4)もみがら・稲わら・麦わら・おが屑・ビールかす・おから等の植物性廃棄物
5)木材シート、および木材チップ
【0011】
上記天然素材には、各種物性調整剤として、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の無機充填材や、デンプン、セルロース、アミロペクチン等の多糖類、ワックス、松ヤニ、樹脂等の添加剤が含まれていてもよい。
【0012】
天然素材容器の形状としては特に限定されないが、例えば、コップ、丸形お椀、角形お椀、浅絞りトレー、深絞りトレー、弁当箱、折り箱、茶筒、平板状等の各種形状が挙げられる。通常、これらの成形法としては、水に分散させた天然素材成分を型に流し込んだ後に水を切って加熱固化する方法、直接プレス成形する方法、一旦シート化してから、圧空成形またはプレス成形する方法等が挙げられる。容器の厚みとしては、0.05〜2mmの範囲が好ましい。
【0013】
乳酸系重合体とは、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)やこれらの混合体を主成分とするものをいう。本発明においては、さらには、後述する他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であってもよく、また、さらに、必要に応じて、少量の共重合成分として、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いてもよい。
【0014】
さらにまた、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを使用することができる。
【0015】
本発明において使用される乳酸系重合体の重量平均分子量の好ましい範囲としては6万〜100万であり、この範囲を下回る場合は実用物性がほとんど発現されず、上回る場合には、溶融粘度が高すぎ成形加工性に劣る。
【0016】
ポリ乳酸に共重合される上記他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0017】
本発明においては、タフネス、柔軟性、生分解速度等を調整する目的で、乳酸系重合体に生分解性脂肪族ポリエステルをブレンドすることも可能である。生分解性脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸を除くポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合重合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0018】
ここで、ポリ乳酸を除くポリヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体が挙げられる。
【0019】
上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が代表的に挙げられる。これらの脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類以上選んで縮合重合し、あるいは必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーを得ることができる。
【0020】
上記の環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルは、環状モノマーとして、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の1種類又はそれ以上を重合されることにより製造される。
【0021】
上記の合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイド等との共重合体等が挙げられる。
【0022】
上記の菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルが知られている。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ 3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。一般的には、HV共重合比は0〜40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
【0023】
ブレンドする量としては、透明性、柔軟性、接着性など、所望する物性に合わせて適宜調整することができる。容器の透視性を確保する目的で透明性を重視する場合には、乳酸系重合体/生分解性脂肪族ポリエステル=50/50〜97/3の範囲が好ましい。
【0024】
また、上記の乳酸系重合体には、ベヘニン酸、ステアリン酸、ペンタエリスリトールモノエステル、ペンタエリスリトールジエステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアレート複合エステル、ジペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸複合エステル、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等の滑剤、ジオクチルフタレート等の可塑剤、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、グリセリン脂肪族エステル、ポリグリセリン脂肪族エステル等の各種界面活性剤、染料、顔料、その他の添加剤やポリマーを添加することもできる。
【0025】
乳酸系重合体の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知のいずれかの方法を採用することができる。例えば、縮合重合法ではL−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0026】
また、開環重合法では乳酸の環状2量体であるラクチド、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、適当な触媒を使用してポリ乳酸系重合体を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性をもつポリ乳酸を得ることができる。
【0027】
本発明における乳酸系重合体シート状物は、これらの重合体またはブレンド組成物を押出法、カレンダー法、プレス法などの一般的な溶融成形法により、平面状または円筒状に加工したものである。強度等の機械物性を向上させるためには、次いで、これをロール法、テンター法、チューブラー法、インフレーション法などにより一軸延伸または二軸延伸してシート状物を得ることが好ましい。さらに、上記延伸フィルムの耐熱性(熱寸法安定性)を向上させるためには、延伸に続いて熱処理を施すことが望ましい。
【0028】
テンター法による延伸条件としては、延伸温度50〜120℃、延伸倍率1.5倍〜5倍、延伸速度100%/分〜10,000%/分が好ましい。また、熱処理条件としては、シート状物を寸法固定した上で、温度80〜160℃で1〜1,000秒間、熱風や赤外線を用いて加熱することが好ましい。
シート状物の厚みとしては、用途によって適宜選ばれるが、0.01〜1mmが望ましい。かかる範囲外では、本発明の効果が得られ難かったり、シート状物のハンドリングが困難になったりする。
【0029】
本発明においては、天然素材容器と、乳酸系重合体からなるシート状物とを、下記の1)〜7)の形態の少なくとも1つの形態で組み合わせて、複合天然素材容器を形成する。
【0030】
1)天然素材容器の透明なフタ材として、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
2)天然素材容器の窓として、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
3)天然素材容器の表面防湿層として、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
4)天然素材シート状物と乳酸系重合体シート状物とを積層して容器用積層体を形成する。
5)天然素材容器の結束帯として、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
6)天然素材容器のオーバーラップ包装に、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
7)天然素材容器の粘着ラベルとして、乳酸系重合体からなるシート状物を使用する。
【0031】
上記乳酸系重合体シート状物を天然素材容器のフタ材として使用する場合には、使用法は特に限定されないが大きく分けて、二つの方法がある。一つは、厚みが0.05〜1mmのシート状物を用い、真空成形、圧空成形、プレス成形により、アンダーカット部を有するフタ状に成形して、嵌合方式によりフタ材とする方法である。もう一つは、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の開口部の形状に合わせて切り取り、熱圧着するか、接着剤または粘着剤を用いて貼り合わせる方法である。
【0032】
熱圧着は70〜210℃、好ましくは、140℃〜170℃の温度で、1〜30kg/cmの圧力を0.1〜1,000秒かけることにより行われる。接着剤および粘着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ゴム系、ウレタン系などの溶液、または、これらの水性エマルジョンがある。容器全体から見れば、接着剤または粘着剤は少量であるが、これらも生分解性とするのが本来は好ましく、例えば、デンプンなどの炭水化物類、膠、ゼラチン、カゼインなどの蛋白質類、未加硫天然ゴムなどの天然材料を用いることが望ましい。
【0033】
フタ部分が乳酸系重合体シート状物からなる、フタ付き天然素材容器は、フタを有する効果として内容物の保管性、運搬性に優れると同時に、透明性に優れたフタ部分を有するので透視性にも優れている。
【0034】
乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の窓部分に使用する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の開口部(窓)の形状に合わせて切り取るか、大きめに切り取り、熱圧着するか、接着剤または粘着剤を用いて貼り合わせればよい。熱圧着の条件、および、接着剤や粘着剤としては、上記フタ材の説明で述べたものと同様の条件、同様のものを使用することができる。また、あらかじめ窓部をくりぬいたシート状の天然素材に乳酸系重合体シート状物を貼り合わせ、しかる後に、プレス成形、製函等の方法により容器とすることもできる。
こうしてなる窓付き天然素材容器は、ゴミが入りにくく保管性に優れると同時に、透明性に優れた乳酸系重合体シート状物を窓部に適用したので透視性にも優れている。
【0035】
乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の表面防湿層として使用する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の形状に合わせて切り取るか、大きめに切り取り、乳酸系重合体シート状物が容器の表面になるように、熱圧着するか、接着剤または粘着剤を用いて貼り合わせることができる。熱圧着の条件、および、接着剤や粘着剤としては、フタ材の説明で述べたものと同様の条件、同様のものを使用することができる。
【0036】
また、シート状の天然素材シート状物に乳酸系重合体シート状物を貼り合わせ、しかる後に容器表面が乳酸系重合体シート状物となるように、プレス成形、製函等の方法により容器とすることもできる。
こうしてなる天然素材容器は、表面が防湿層で覆われているので耐水性に優れている。
【0037】
天然素材シート状物と乳酸系重合体シート状物とを積層して容器用の積層体を形成する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物とシート状の天然素材を交互に重ね合わせ、熱圧着し、しかる後に、プレス成形、製函等の方法により容器とすることが望ましい。この場合には、少なくとも1層の乳酸系重合体シート状物が天然素材シート状物の間に矜持されていれば、層数、層構成は特に限定されない。
こうしてなる複合天然素材容器は、厚肉化が可能で、強度に優れると同時に、耐水性にも優れている。
【0038】
乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の結束帯として使用する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物を、適切なサイズを考慮しつつスリーブ状に加工した後、天然素材容器をスリーブ中に挿入することにより、結束帯を形成することが望ましい。また、乳酸系重合体シート状物を天然素材容器上に連続的に繰り出した後、フィルムをスリーブ状に接着、切断することも可能である。あるいは、収縮性乳酸系重合体シート状物を用い、収縮結束帯とすることもできる。
このように、天然素材容器に結束帯を用いる目的としては、天然素材容器の本体とフタ材が分離しないように固定すること、容器そのものの形状を保持すること、複数個の容器を集積することなどが挙げられる。
【0039】
乳酸系重合体シート状物を天然素材容器のオーバーラップ包装として使用する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.2mmの乳酸系重合体シート状物を適切なサイズを考慮して袋状に加工した後、天然素材容器を袋中に挿入することにより、オーバーラップ包装することが望ましい。また、乳酸系重合体シート状物を天然素材容器上に連続的に繰り出した後、シート状物をL型シールやRシールして包装することも可能である。また、この際、収縮性乳酸系重合体シート状物を用いて、包装後熱収縮させると、タイト感がより良好になる。
【0040】
このように、天然素材容器にオーバーラップ包装する目的は、天然素材容器の本体とフタ材が分離しないように固定すること、容器そのものの形状を保持すること、複数個の容器を集積することなどが挙げられる。
【0041】
乳酸系重合体シート状物を天然素材容器の粘着ラベルとして使用する場合には、特に使用法は限定されないが、厚みが概ね0.01〜0.4mmの乳酸系重合体シート状物に印刷、粘着加工を施して粘着ラベルとした後に、天然素材容器に貼付することができる。印刷インキや粘着剤は、極少量なので市販のものを用いることができるが、より好ましくは、天然物由来のものか、生分解性のものを使用することが好ましい。粘着ラベルは、天然素材容器を使用した後、剥離して廃棄処理することが困難であるので、このように天然素材容器に乳酸系重合体シート状物からなる粘着ラベルを貼付することは非常に有効である。
【0042】
上述の形態の複合天然素材容器は、所望により、印刷、複合化等の2次加工、3次加工を施すことも可能である。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0044】
なお、各評価は以下に示す方法により行った。
(1)透視法
サンプル容器の内部が透視できるかどうかを、肉眼で確認した。
【0045】
(2)コンポスト試験
家庭用コンポスター(静岡精機(株)製、商品名「エコロンポEC−25D」)に、園芸用の腐葉土10kg、およびドッグ・フード(商品名「ビタワン」)5kgを混合して入れ、さらに水500mlを加え、厚み200mmの埋土とした。サンプル容器を、埋土の底面から50mmの高さに配置して埋設した。埋土の内部を58℃に保ち、毎日500mlの水を追加して、6週間経過後のサンプル容器の外観を肉眼で観察した。
【0046】
(3)耐水性試験(保水率)
サンプル容器に100mlの水を入れて3時間放置した後、サンプル容器中に残った水の量を測定した。測定した水の量を、最初に入れた水の量の100mlで除した後、百分率(%)換算した。
【0047】
(4)衝撃強度試験
サンプル容器中に200gの鉄製分銅を入れ、1mの高さからコンクリート床に自由落下させて、サンプル容器の破損状況を肉眼で観察した。
【0048】
シート状物Iの作製
L−乳酸からなる構造単位とD−乳酸からなる構造単位との割合がおおよそ98:2で、ガラス転移温度60℃、融点170℃、重量平均分子量20万のポリ乳酸に、無機滑剤として微粒子シリカ0.1%を添加し、110mmφ単軸エクストルーダーにて、210℃でTダイより押し出し、キャステイングロールにて急冷し、厚み約0.2mmのポリ乳酸のシート状物Iを得た。
【0049】
シート状物IIの作製
シート状物Iを、引き続き三菱重工(株)製フィルムテンターを用い、75℃で、3.0×3.5倍の逐次2軸延伸を行った後、140℃×10秒で熱処理を行い、厚さ0.02mmのポリ乳酸のシート状物IIを得た。
【0050】
シート状物IIIの作製
シート状物Iの作製において、熱処理温度を60℃とした以外はシート状物Iの作製と同様の方法で、ポリ乳酸のシート状物IIIを得た。このシート状物は熱収縮性を有し、100℃×1分における温水中の収縮率は、MD(フィルムの流れ方向)/TD(フィルムの幅方向)が55%/60%であった。
【0051】
シート状物IVの作製
シート状物Iの作製において、ポリ乳酸をポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子(株)製、商品名:ビオノーレ3001)に変更した以外はシート状物Iの作製と同様の方法でシート状物IVを得た。
【0052】
実施例1
天然素材容器として、三菱商事(株)/三菱商事パッケージング(株)/日本ハイパック(株)製のアシ製パルプモールド容器(商品名:ペパレ(ミニストップ弁当箱サイズ))を準備した。容器のサイズに合わせて、高さ1cmのアンダーカット部を有する金型を作製し、この金型を用いて、シート状物Iのポリ乳酸シート状物を80℃で30秒間予熱した後、真空成形してフタ材を形成した。
【0053】
得られたフタ材をアシ製パルプモールド容器の開口部にセットした。次いで、シート状物IIIのポリ乳酸収縮シート状物を用いてL型シールを行い、100℃の熱風に15秒間さらしてオーバーラップ包装して、本発明の複合天然素材容器を作製した。
【0054】
得られた複合天然素材容器は、フタ部分が透明性に優れたポリ乳酸シート状物で形成されているので、容器内部の透視性に優れていた。また、得られた複合天然素材容器について、コンポスト試験を行ったところ、完全に分解消失した。
なお、得られた複合天然素材容器は包装適性にも優れていることが分かった。
【0055】
比較例1
実施例1において、フタ材としてポリ乳酸シート状物の替わりに延伸ポリスチレン(OPS)フタ材を用い、シール材としてポリ乳酸収縮シート状物の替わりに延伸ポリプロピレン(OPP)収縮シート状物を用いてオーバーラップ包装を行った以外は実施例1と同様にして、フタ付き容器を作製した。
得られたフタ付き容器について、コンポスト試験を行ったところ、本体容器部分は一部分解消失したが、フタ材で覆われた部分が残存し、さらには、OPSフタ材とOPP収縮シート状物は、汚れが付いただけで、全く分解せず残存した。
【0056】
比較例2
実施例1において、フタ材として、ポリ乳酸シート状物の替わりにシート状物IVを用いた以外は実施例1と同様にして、フタ付き容器を作製した。
得られたフタ付き容器は、コンポスト試験により分解消失するものの、フタ材が白濁しているので透視性が不良であった。
【0057】
実施例2
赤松の間伐材から製材した厚さ0.35mmの木製シートを2枚準備した。この木製シートの間に、シート状物IIを挟み込み、これを150mm×200mmの大きさで、深さが12mmのトレー形状の雌雄金型を備えた油圧プレス機を用いて、温度170℃、圧力20kg/mで30秒間圧力をかけて3枚を圧着し、複合天然素材容器を作製した。
得られたトレー形状の複合天然素材容器は外観良好なトレーであった。
得られた複合天然素材容器について耐水性試験を行ったところ、98%の保水率であり、耐水性が良好であることが分かった。
また、200gの分銅をトレー中央部に粘着テープで固定して衝撃試験を行ったところ、トレーに割れは生じなかった。
なお、得られたトレーは包装機械適性にも優れていることが分かった。
【0058】
比較例3
実施例1において、2枚の木製シートの間にシート状物IIの替わりに炭酸カルシウム入りのウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:ディックボンド EXP−K3001(硬化剤が4,4−ジフェニルメチルイソシアネート))を適量塗布して2枚の木製シートを貼り合わせた以外は、実施例2と同様にして、トレーを作製した。
得られたトレーは外観良好なトレーであったが、耐水試験を行ったところ、11%の保水率しかなく、耐水性が不良であった。また、実施例2と同様にして衝撃強度試験を行ったところ、大きな割れが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の複合天然素材容器は、生分解性、耐水性、透視性、強度、機械包装適性等が要求される容器に好ましく利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材容器の一部が乳酸系重合体シート状物で形成されていることを特徴とする複合天然素材容器。
【請求項2】
前記天然素材容器の一部が、容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、オーバーラップ包装シート状物、粘着ラベルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の複合天然素材容器。
【請求項3】
天然素材容器が、木材パルプ、再生木材パルプ、非木材系植物性パルプ、植物性廃棄物、木材シートおよび木材チップからなる群から選ばれる少なくとも1種類を主原料とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の複合天然素材容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材容器の一部が乳酸系重合体シート状物で形成されていることを特徴とする複合天然素材容器。
【請求項2】
前記天然素材容器の一部が、容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、及び、粘着ラベルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の複合天然素材容器。
【請求項3】
天然素材容器が、木材パルプ、再生木材パルプ、非木材系植物性パルプ、植物性廃棄物、木材シートおよび木材チップからなる群から選ばれる少なくとも1種類を主原料とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の複合天然素材容器。

【公開番号】特開2006−1651(P2006−1651A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234669(P2005−234669)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【分割の表示】特願2000−233043(P2000−233043)の分割
【原出願日】平成12年8月1日(2000.8.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】