説明

複合廃棄物焼却処理システム及び方法

【課題】 廃棄物焼却処理により発生した灰から重金属類、塩素を確実に除去し、且つ処理系統にて発生する生成物を有効利用し、環境保全の観点から資源の有効利用及び排出物の減量化が可能である複合廃棄物焼却処理システム及び方法を提供する。
【解決手段】 廃棄物を処理する焼却炉10を備えた焼却処理系統と、湿潤系廃棄物を処理するメタン発酵槽30を備えたメタン発酵処理系統と、を備えた複合廃棄物焼却処理システムにおいて、前記焼却処理系統にて発生した灰を湿式洗浄する第1水洗装置及び第2水洗装置と、前記メタン発酵槽30にて発生した発酵ガスからメタンガス34と二酸化炭素35とを分離するVPSA装置31と、を設け、該VPSA装置31で分離回収した二酸化炭素を第2水洗装置に導入するとともに、メタンガスを焼却炉10に導入して助燃用燃料又は起動用燃料として用いる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ、下水汚泥、産業廃棄物等の廃棄物を焼却処理する焼却炉を備えた焼却処理系統と、湿潤系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理系統とからなる廃棄物複合焼却処理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理問題の顕在化に伴い、資源を有効利用し循環サイクルを構築することにより環境保全及び省資源化を図る廃棄物の複合システムが提案、実用化されている。これは、各種廃棄物を処理する複数の処理系統を有機的に結び付け、ある処理系統で発生した生成物を他の処理系統にて有効利用し、系外へ排出される廃棄物を極力抑えるとともに省エネルギ、省資源化を図るものである。
例えば、特許文献1では、廃棄物の焼却装置を備えたボイラと、過熱器と、過熱器からの蒸気により発電する発電設備とを有し、別に、廃棄物から発酵ガスを生成する発酵槽を設け、該発酵槽からの発酵ガスを前記過熱器の燃料として用いるように構成したシステムが開示されている。
このように、廃棄物処理の過程で発生した生成物を有効利用することにより資源の循環サイクルが形成される。
【0003】
また、廃棄物処理にて発生する生成物を別の産業で再利用する方法も種々提案、実用化されている。廃棄物を焼却処理した際に発生する焼却灰、飛灰等の灰は、セメント原料、細骨材等の土木資材などとして再利用できる。さらに、特許文献2では、廃棄物をメタン発酵処理した際に発生する発酵ガスを燃料として発生させた電気、熱、炭酸ガスを植栽物の栽培工程で消費する資源として利用する方法が開示されている。
しかし、上記したように廃棄物処理における生成物を他の産業で再利用する場合には、特に安全性、信頼性の確保が要求されるためこれらを完全に無害化する必要がある。
【0004】
廃棄物の焼却処理にて発生する灰は、カドミウム、鉛、亜鉛等の重金属類や塩素分が含有され、これらの成分は土木資源として再利用する際に品質に悪影響を与えるとともに重金属類は人体に対しても有害であるため、灰を再利用する場合にも、又埋立する場合においても灰を確実に無害化する処理方法の確立が求められている。
従来は灰を水で洗浄することにより、重金属類、塩素を除去する方法が広く用いられていたが、単に灰を水洗するだけではこれらの有害物質を除去しきれず、灰中に残留してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献3では廃棄物焼却装置で発生する焼却残渣の処理において、炭酸若しくは炭酸水素塩を含有するキャリア媒体を供給することにより焼却残渣を炭酸塩化し、焼却残渣に含有される重金属類を固定化する方法を開示している。
また、特許文献4では、灰の洗浄懸濁液に二酸化炭素を含むガスを吹き込んで撹拌洗浄することにより、難溶性のフリーデル氏塩が含まれている場合には該フリーデル氏塩を分解して塩素を溶出させ、さらにガスの吹き込みを停止して、この塩素を含む洗浄懸濁液にて灰を洗浄することにより灰中の重金属類を溶出させる処理方法が開示されている。
さらに前記特許文献3、4において、炭酸若しくは炭酸水素塩、二酸化炭素の供給源として焼却炉排ガスを用いることが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−265858号公報
【特許文献2】特開2003−23887号公報
【特許文献3】特開2000−157953号公報
【特許文献4】特開平10−128304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
廃棄物焼却処理により発生した灰を無害化処理するに際し、従来は特許文献3に代表されるように、灰に含有される重金属類等の有害物質を固定化して無害化する方法が広く用いられていた。しかし、近年の有害物質排出基準は厳しくなる傾向にあり、セメント原料、細骨材等の土木資材などとして資源化を図る場合には、安全性、信頼性を確保するために重金属類の溶出基準とともに含有量についても低減することが要求されている。従って、重金属類を多量に含む灰については灰中に封じ込めるだけでは不十分であり、重金属類を積極的に分離して重金属類含有量の低い資材を提供する必要がある。
【0008】
特許文献4では、灰の洗浄懸濁液中に二酸化炭素を導入してフリーデル氏塩を溶出した後に塩素により重金属類を除去する方法が提案されているが、洗浄懸濁液に二酸化炭素を導入することにより灰に含有される重金属類も同時に炭酸塩化してしまい、灰中に固定化されて残留してしまう惧れがある。これにより、塩素による重金属類の除去が円滑に行なわれず、重金属類の含有量を低減することは困難であった。
また、排ガスを用いて炭酸塩化する方法では、排ガス中の煤塵や腐食成分が洗浄装置に悪影響を及ぼす惧れがあり、一方、外部から炭酸塩化用の二酸化炭素を供給するとコストが嵩むという問題があった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、廃棄物焼却処理により発生した灰から重金属類、塩素を確実に除去し、且つ灰処理用薬剤を外部から供給することなくシステム内で供給できる複合廃棄物焼却処理システムを提供することを目的とする。
【0009】
また、他の目的として、廃棄物焼却炉を備えた焼却処理系統とメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理系統からなる複合廃棄物焼却処理システムを構築するにあたって、これらの処理系統にて発生する生成物を有効利用し、環境保全の観点から資源の有効利用及び排出物の減量化が可能である複合廃棄物焼却処理システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、廃棄物を処理する焼却炉を備えた焼却処理系統と、湿潤系廃棄物を処理するメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理系統と、を備えた複合廃棄物焼却処理システムにおいて、
前記焼却処理系統にて発生した灰を湿式洗浄する灰洗浄手段と、前記メタン発酵槽にて発生した発酵ガスからメタンガスと二酸化炭素とを分離するガス分離装置と、を設け、
前記ガス分離装置により分離回収した二酸化炭素を前記灰洗浄手段に導入し、前記灰を二酸化炭素の存在下で洗浄するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、上記したように灰を水等の洗浄溶液にて懸濁洗浄する際に、二酸化炭素を供給して二酸化炭素存在下で洗浄することにより、灰に含有される難溶性のフリーデル氏塩を炭酸塩化し、塩素の溶出を促進することが可能となる。また、洗浄溶液にて洗い落とせない重金属類も二酸化炭素の導入によって炭酸塩化するため、灰中で固定化されて無害化することができる。このように、灰を洗浄溶液にて洗浄する際に二酸化炭素の存在下で洗浄することにより、重金属類、塩素を確実に除去でき、灰の無害化が可能で、灰を再利用に適した資材とすることができる。
また、本発明ではメタン発酵処理系統にて発生した発酵ガスから分離精製し、回収した二酸化炭素を利用しているため、外部から二酸化炭素を供給することなくシステム内で発生した二酸化炭素を有効利用でき、且つ前記回収される二酸化炭素は高濃度であるため、排ガス等を利用する場合に比べて炭酸塩化の反応効率が高く、効果的な無害化処理とすることができる。
【0012】
また、前記灰洗浄手段が直列に複数段設けられ、前段側の灰洗浄手段では洗浄溶液による灰の湿式洗浄にて重金属類、塩素の初期除去が行なわれ、後段側の灰洗浄手段では前記二酸化炭素存在下での洗浄溶液による湿式洗浄にて重金属類及び塩素分の炭酸塩化と塩素の除去が行なわれるようにしたことを特徴とする。
これは、灰洗浄において先に炭酸塩化工程を行なうと、灰に含有される重金属類が固定化されて高濃度で灰中に残存してしまう惧れがあるため、本発明のように先ず重金属類の大部分を重金属類初期除去工程にて溶出させた後に炭酸塩化工程を行なうことにより、灰中の重金属類含有量を低減するとともに、塩素含有量を低減することが可能となる。
【0013】
また、前記ガス分離装置で分離回収したメタンガスを前記焼却炉に導入し、該メタンガスを焼却炉の助燃用燃料又は起動用燃料として用いることを特徴とする。
本発明によれば、前記発酵ガスから分離精製し、回収したメタンガスを利用しているため、外部から燃料ガスを供給することなくシステム内で発生したメタンガスを有効利用できコスト削減が図れ、また前記回収されるメタンガスは高濃度であるため、燃焼効率が高く、且つ排ガス発生量が少ないため後段の排ガス処理設備にかかる負荷を軽減することができる。
【0014】
さらに、前記ガス分離装置が、前記発酵ガスを流通させる処理槽と、該処理槽内を減圧排気する減圧排気手段と、該処理槽内部に設けられた二酸化炭素吸着剤と、を備え、真空圧力スイング吸着法により前記発酵ガスに含有される二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着剤にて選択的に吸着、分離するようにしたことを特徴とする。
このように、前記発酵ガスに含有される二酸化炭素を真空圧力スイング吸着法により選択的に分離、回収することにより、濃度の高い二酸化炭素、メタンガスを得ることが可能である。
【0015】
また、前記焼却炉の前段に廃棄物を破砕する破砕機が設けられ、前記ガス分離装置で分離回収した二酸化炭素を前記破砕機に導入し、該二酸化炭素を破砕機の防爆剤用不活性ガスとして用いることが好ましく、さらに、前記ガス分離装置で分離回収した二酸化炭素を溶接用ガス若しくは植物成長促進剤として利用することが好適である。
前記ガス分離設備で分離したメタンガスと二酸化炭素は高濃度で高品質なガスとなるため、システム内若しくは他の産業にて有効利用することができる。
これらの発明のごとく、ガス化処理系統とメタン発酵処理系統とを有機的に結合して生成物を有効利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、資源の有効利用及び排出物の減量化が達成できる。
【0016】
また方法の発明として、廃棄物を焼却炉にて焼却する焼却処理工程と、湿潤系廃棄物をメタン発酵するメタン発酵処理工程と、を備えた複合廃棄物焼却処理方法において、
前記焼却処理工程にて発生した灰を洗浄する灰洗浄工程を備え、
前記メタン発酵処理工程にて発生した発酵ガスから真空圧力スイング吸着法により二酸化炭素を分離し、該分離した二酸化炭素を前記灰洗浄工程に導入し、前記灰を二酸化炭素の存在下で洗浄するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、前記灰洗浄工程では灰の洗浄が段階的に行なわれ、前段側で洗浄溶液による灰の洗浄にて重金属類、塩素の初期除去が行なわれ、後段側で前記二酸化炭素存在下の洗浄により重金属類の炭酸塩化及び塩素除去が行なわれることを特徴とする。
また、前記発酵ガスから分離回収したメタンガスを前記焼却炉に導入し、該メタンガスを焼却炉の助燃用燃料又は起動用燃料として用いることを特徴とする。
さらに、前記焼却処理工程では、前記廃棄物を破砕した後に焼却するようにし、
前記メタン発酵処理工程にて分離回収した二酸化炭素を前記破砕における防爆剤用不活性ガスとして用いることを特徴とする。
さらにまた、前記メタン発酵処理工程にて分離回収した二酸化炭素を溶接用ガスとして用いても良いし、前記二酸化炭素を植物成長促進剤として用いるようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のごとく本発明によれば、灰を洗浄溶液にて洗浄する際に二酸化炭素の存在下で湿式洗浄することにより、重金属類を炭酸塩化し、塩素を除去することで確実に灰を無害化することができる。このとき、前記二酸化炭素として発酵ガスから分離した二酸化炭素を用いることにより、外部から二酸化炭素を供給することなくシステム内で発生した二酸化炭素を有効利用でき、且つ前記回収される二酸化炭素は高濃度であるため、排ガス等を利用する場合に比べて炭酸塩化の反応効率が高く、効果的な無害化処理が行なわれる。
また、前記灰洗浄手段にて、先ず重金属類の大部分を重金属類粗除去工程にて粗取りした後に炭酸塩化工程を行なうことにより、灰中の重金属類含有量を低減するとともに、塩素含有量を低減することが可能となる。
【0019】
さらに、前記発酵ガスから分離回収したメタンガスを焼却炉の助燃用燃料又は起動用燃料として用いることにより、外部から燃料ガスを供給することなくシステム内で発生したメタンガスを有効利用できコスト削減が図れ、また前記回収されるメタンガスは高濃度であるため、燃焼効率が高く、且つ排ガス発生量が少ないため後段の排ガス処理設備にかかる負荷を軽減することができる。
さらにまた、メタン発酵処理系統で発生した発酵ガスに含有される二酸化炭素を真空圧力スイング吸着法により選択的に分離精製することにより、濃度の高い二酸化炭素を回収することができる。
本発明によれば、ガス化処理系統とメタン発酵処理系統とを有機的に結合して生成物をシステム内若しくは他の産業にて有効利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、資源の有効利用及び排出物の減量化が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明において処理対象とされる廃棄物は、焼却処理系統で処理される廃棄物、例えば都市ごみ、下水汚泥、産業廃棄物等と、メタン発酵処理系統で処理される湿潤系廃棄物、例えば浄化槽汚泥、し尿、家畜糞尿、厨芥ごみ等が挙げられる。特に、本実施例では焼却処理系統で処理される廃棄物は低カロリー又は高含水率の低質ごみとする。
図1は本発明の実施例に係る複合廃棄物焼却処理システムの全体構成図、図2は図1に示したVPSA装置の概略構成を示す図である。
【実施例】
【0021】
図1に示されるように、本実施例に係る複合廃棄物焼却処理システムは、低質ごみを処理するための焼却炉10を含む焼却処理系統と、湿潤廃棄物を処理するためのメタン発酵槽30を含むメタン発酵処理系統が組み合わされた構成となっている。
前記焼却処理系統は、低質ごみを加熱して焼却する焼却炉10と、該焼却炉10の排ガス出口と流路を介して接続されるボイラ11と、ボイラ11の蒸気送出口と流路を介して接続される蒸気タービン12と、蒸気タービン12の駆動軸に連結された発電機13と、ボイラ11のガス送出口と流路を介して接続される減温塔14と、該減温塔14の後段に順に設けられたバグフィルタ15及び脱硝装置16と、から構成される。
【0022】
また、前記焼却処理系統は、前記焼却炉10、ボイラ11、減温塔14、バグフィルタ15にて発生、回収された灰を湿式洗浄して灰中の重金属類を除去する第1水洗装置21と、該水洗した灰に二酸化炭素を導入して灰中の塩素を除去し、重金属類を炭酸塩化して灰を無害化する第2水洗装置22と、水洗した灰を脱水する脱水機23と、脱水した灰を乾燥させる乾燥装置25と、脱水により発生した水分を処理する排水処理設備24と、からなる灰処理系統を備えている。
一方、前記メタン発酵処理系統は、湿潤系廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽30と、メタン発酵槽30にて発生した発酵ガスから二酸化炭素35を分離し、クリーンなメタンガス34と二酸化炭素35とを回収するVPSA(真空圧力スイング吸着法)装置31と、メタンガスを燃料ガスとして発電を行なうガスエンジン32と、該ガスエンジン32に連結された発電機33と、から構成される。
【0023】
また、本実施例では、前記蒸気タービン12及び前記発電機13にて発電した電力、及び前記ガスエンジン32及び発電機33で発電した電力を、前記VPSA装置31に送給する送電ラインが設けられている。
さらに、前記VPSA装置31で分離回収したメタンガス34は、前記焼却炉10の助燃用燃料又は起動用燃料として焼却炉10に送給されるようになっている。また、該メタンガス34は、前記乾燥装置25にも送給される。
前記VPSA装置31で分離回収した二酸化炭素35は、前記第2水洗装置22に送給される。また、二酸化炭素35は、前記焼却炉10の前処理として設けられた破砕機36に送給して、防爆用不活性ガス42として利用しても良い。さらにまた、二酸化炭素35を溶接用原料40や植物成長促進剤41等として再利用するようにしても良い。
【0024】
ここで、前記焼却炉10は、廃棄物を焼却処理する装置であれば何れでも良く、例えばストーカ炉、気泡型流動床炉、循環型流動床炉、ロータリーキルン炉等が挙げられる。
また前記焼却炉10は、燃焼用空気を供給する空気導入口と、起動用或いは助燃用の補助バーナが設けられている。該補助バーナには前記VPSA装置31で分離精製した高濃度のメタンガスが供給される。
前記脱硝装置16は、排ガス中のNOを除去する装置であり、好適にはSCRを用いる。SCR(Selective Catalytic Reactor)は選択触媒還元脱硝装置であり、排ガスに含まれるNO、NO等のNOにアンモニアガスまたはアンモニア水を吹きつけ、SCR触媒で反応させることにより、NOをNとHOに分解する装置である。
【0025】
前記第1水洗装置21は、焼却処理系統にて発生した灰を洗浄溶液により懸濁洗浄する装置である。
前記第2水洗装置22は、前記第1水洗装置21の後段に配設され、前記灰を二酸化炭素の存在下で洗浄溶液により懸濁洗浄する装置である。本実施例では、前記洗浄溶液として水を利用しているが、酸又はアルカリ等を添加して夫々の処理に適した条件とすることが好ましい。また、前記第1水洗装置21及び前記第2装置は夫々複数段設ける構成としても良い。
灰の洗浄において、前記第1水洗装置では水洗により灰中に含有される溶解性の重金属類を溶出除去する重金属類粗除去工程を行う。溶出した重金属類は回収し、再利用することが好適である。また、前記第2水洗装置では二酸化炭素の存在下で灰を水洗することにより灰の炭酸塩化を行い、含有重金属類を炭酸塩の形成によって封じ込め、また難溶性のフリーデル氏塩を溶解し、水中に塩素を溶出する。(下記式(1)参照))
3CaO・Al・CaCl・10HO+CO(g)+HO(l)
→ CaCO3+2HCl …(1)
このように、二酸化炭素の存在下で灰を湿式洗浄することにより、容易に且つ効果的に重金属類、塩素を無害化することができ、灰を再利用に適した資材とすることができる。
【0026】
前記メタン発酵槽30は、湿潤系廃棄物が供給されて嫌気性条件下にてメタン菌により廃棄物中に含有される有機物を分解し、発酵残渣と、メタン及び二酸化炭素を主成分とする発酵ガスを生成する装置である。
前記発電機33は、ガスエンジン式の他、ガスタービン式発電装置、燃料電池式発電装置、ガスエンジン−蒸気タービン式発電装置、ガスタービン−蒸気タービン式発電装置、燃料電池−スチームタービン式発電装置、燃料電池−ガスエンジン−スチームタービン式発電装置等にすることも可能である。
【0027】
前記VPSA装置31は、例えば図2に示す構成を有するものが用いられる。前記メタン発酵槽30にて発生した発酵ガス中には、主成分となるメタンガス34、二酸化炭素35の他にも硫化水素等の硫黄系不純物、シロキサン等の有機珪素系不純物、水などが含有されている。従って本実施例ではメタンガス、二酸化炭素を分離するほか、これらの不純物も除去し、ガス精製する構成となっている。
【0028】
具体的には前記VPSA装置31は、複数設けられ並列に連結されている吸着塔301と、該吸着塔301の下方側から上方側へ発酵ガスを流通させるブロア303、と、これら吸着等内を減圧排気する真空ポンプ304と、これら吸着塔301の下方側と上方側とを仕切るように塔内に配設され、シロキサン、HS、HO等の目的とする不純物を吸着する吸着剤302と、複数設けられ並列に連結されている吸着塔305と、前記吸着塔305の下方側から上方側へ流通した発酵ガスを前記吸着塔305の下方側から上方側へ流通させるブロア307と、これら吸着塔305を減圧排気する真空ポンプ308と、前記吸着塔305の下方側と上方側とを仕切るように塔内に配設され、二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着剤306と、排気された吸着塔305内のガスを該吸着塔301の一方側から他方側へ再び流通させるとともに、さらに前記吸着塔301の他方側から一方側へ再び流通させる排気再送給手段であるサージタンク309と、を備えるものである。
【0029】
発酵ガスの処理は、まずバルブとブロワ303の操作により該発酵ガスを吸着塔301に導入し、該吸着塔301内(圧力1ata前後 )にて吸着剤302を通過させてシロキサン、HS、HO等の目的とする不純物を分離除去する。吸着剤302の吸着能力が飽和状態に近づいたら吸着塔301内を前記真空ポンプ304により減圧排気し(0.1ata程度)、前記吸着剤302に吸着除去された不純物を離脱して、吸着塔301より排出して回収し、吸着剤302を再生する。
次に前記吸着塔301から送出されたガスを前記吸着塔305に導入し、該吸着塔305内(圧力1ata前後)にて吸着剤306を通過させてCOを分離し、吸着塔305からサージタンク309内に回収する。上記と同様に、吸着剤306の吸着能力が飽和状態に近づいたら吸着塔305内を前記真空ポンプ308により減圧排気し(0.1ata程度)、前記吸着剤306に吸着除去されたCOを離脱して、吸着塔305よりサージタンクに回収し、吸着剤306を再生する。また、前記吸着塔305の上部から送出された精製ガスは、純度の高いメタンガスとして回収される。
【0030】
次に、本実施例の作用を説明する。
まず低質ごみは破砕機36により所定径以下まで破砕された後、前記焼却炉10に投入される。該焼却炉10では、起動時には前記VPSA装置31から送給されるメタンガス34を燃料として補助バーナにより着火され、さらに該メタンガス34を助燃用燃料ガスとして用いて、廃棄物が焼却処理される。焼却炉10から排出した排ガスはボイラ11に送給され、ここで熱回収される。ボイラ11は、排ガスから回収された熱で水を加熱して蒸気を発生させる。該蒸気は蒸気タービン12に送給され、このタービンを回転させ、発電機13を駆動させることにより発電を行なう。蒸気タービン12から排出された蒸気は、復水器に送給され、ここで水に戻されボイラに再び供給される。前記発電機13により発電した電気は、前記VPSA装置31に送電される。
前記ボイラ11を通過した排ガスは減温塔14に送給され、後段のバグフィルタ15に送給できる温度まで水噴霧等により減温される。減温された排ガスはバグフィルタ15に送給され、ここでダストや塩酸分が除去された後、脱硝装置16にて触媒との接触等によりNOが除去されて煙突17より大気放出される。
【0031】
前記焼却炉10、ボイラ11、減温塔14、バグフィルタ15で回収された主灰、飛灰を含む灰は、第1水洗装置21で水洗され、重金属類の大部分が洗い流された後、第2水洗装置22にて前記VPSA装置31から供給される二酸化炭素の存在下で水洗され、灰中の塩素を溶出し、重金属類が固定化される。
このようにして、灰中の重金属類、塩素が溶出、固定化されて無害化された灰は脱水機23にて脱水された後に前記メタンガス34を燃料とする乾燥装置25にて乾燥され、セメント原料や細骨材等として再利用される。
また、前記脱水後の排水は、排水処理装置24により各種有害成分を除去され、放流基準まで浄化された後に放流される。
【0032】
一方、湿潤系廃棄物は、前記メタン発酵槽30内にてメタン発酵され、メタンガス34、二酸化炭素35を主成分とする発酵ガスと発酵残渣に分解されて、発酵残渣は前記固形廃棄物とともに焼却炉10にて処理される。前記発酵ガスは、前記VPSA装置31に送給され、ここで硫黄系不純物、有機珪素系不純物等を分離除去されるとともに、高純度のメタンガス34と二酸化炭素35とに分離精製される。
そして、前記メタンガス34は前記焼却炉10の起動用燃料、助燃用燃料として、又はガスエンジン32の燃料ガスとして、又は乾燥装置24の燃料ガスとして用いられる。
また、前記二酸化炭素35は、前記第2水洗装置22に送給され、灰中の塩素、重金属類の無害化に利用される。また、該二酸化炭素35は前記破砕機36に送給され、防爆用不活性ガス42として利用することもできる。さらにまた、該二酸化炭素35は、溶接工場に搬送されて溶接用ガス40として利用することもでき、また植物工場に搬送されて植物成長促進剤41として利用することもできる。
本実施例によれば、焼却処理系統とメタン発酵処理系統とを有機的に結合して生成物を有効利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、資源の有効利用及び排出物の減量化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る複合廃棄物焼却処理システムの全体構成図である
【図2】図1に示したVPSAの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 焼却炉
11 ボイラ
12 蒸気タービン
13 発電機
14 減温塔
15 バグフィルタ
16 脱硝装置
21 第1水洗装置
22 第2水洗装置
23 脱水機
24 排水処理設備
25 乾燥装置
30 メタン発酵槽
31 VPSA装置
32 ガスエンジン
33 発電機
34 メタンガス
35 二酸化炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理する焼却炉を備えた焼却処理系統と、湿潤系廃棄物を処理するメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理系統と、を備えた複合廃棄物焼却処理システムにおいて、
前記焼却処理系統にて発生した灰を湿式洗浄する灰洗浄手段と、前記メタン発酵槽にて発生した発酵ガスからメタンガスと二酸化炭素とを分離するガス分離装置と、を設け、
前記ガス分離装置により分離回収した二酸化炭素を前記灰洗浄手段に導入し、前記灰を二酸化炭素の存在下で洗浄するようにしたことを特徴とする複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項2】
前記灰洗浄手段が直列に複数段設けられ、前段側の灰洗浄手段では洗浄溶液による灰の洗浄にて重金属類、塩素の初期除去が行なわれ、後段側の灰洗浄手段では前記二酸化炭素存在下での洗浄溶液による洗浄にて重金属類の炭酸塩化及び塩素除去が行なわれるようにしたことを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項3】
前記ガス分離装置で分離回収したメタンガスを前記焼却炉に導入し、該メタンガスを焼却炉の助燃用燃料又は起動用燃料として用いることを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項4】
前記ガス分離装置が、前記発酵ガスを流通させる処理槽と、該処理槽内を減圧排気する減圧排気手段と、該処理槽内部に設けられた二酸化炭素吸着剤と、を備え、真空圧力スイング吸着法により前記発酵ガスに含有される二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着剤にて選択的に吸着、分離するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは3記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項5】
前記焼却炉の前段に廃棄物を破砕する破砕機が設けられ、前記ガス分離装置で分離回収した二酸化炭素を前記破砕機に導入し、該二酸化炭素を破砕機の防爆剤用不活性ガスとして用いることを特徴とする請求項1若しくは4記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項6】
前記ガス分離装置で分離回収した二酸化炭素を溶接用ガスとして利用することを特徴とする請求項1若しくは4記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項7】
前記ガス分離装置で分離回収した二酸化炭素を植物成長促進剤として利用することを特徴とする請求項1若しくは4記載の複合廃棄物焼却処理システム。
【請求項8】
廃棄物を焼却炉にて焼却する焼却処理工程と、湿潤系廃棄物をメタン発酵するメタン発酵処理工程と、を備えた複合廃棄物焼却処理方法において、
前記焼却処理工程にて発生した灰を洗浄する灰洗浄工程を備え、
前記メタン発酵処理工程にて発生した発酵ガスから真空圧力スイング吸着法により二酸化炭素を分離し、該分離した二酸化炭素を前記灰洗浄工程に導入し、前記灰を二酸化炭素の存在下で洗浄するようにしたことを特徴とする複合廃棄物焼却処理方法。
【請求項9】
前記灰洗浄工程では灰の洗浄が段階的に行なわれ、前段側で洗浄溶液による灰の洗浄により重金属類、塩素の初期除去が行なわれ、後段側で前記二酸化炭素存在下の洗浄により重金属類の炭酸塩化及び塩素除去が行なわれることを特徴とする請求項8記載の複合廃棄物焼却処理方法。
【請求項10】
前記発酵ガスから分離回収したメタンガスを前記焼却炉に導入し、該メタンガスを焼却炉の助燃用燃料又は起動用燃料として用いることを特徴とする請求項8記載の複合廃棄物焼却処理方法。
【請求項11】
前記焼却処理工程では、前記廃棄物を破砕した後に焼却するようにし、
前記メタン発酵処理工程にて分離回収した二酸化炭素を前記破砕における防爆剤用不活性ガスとして用いることを特徴とする請求項8記載の複合廃棄物焼却処理方法。
【請求項12】
前記メタン発酵処理工程にて分離回収した二酸化炭素を溶接用ガスとして用いることを特徴とする請求項8記載の複合廃棄物焼却処理方法。
【請求項13】
前記メタン発酵処理工程にて分離回収した二酸化炭素を植物成長促進剤として用いることを特徴とする請求項8記載の複合廃棄物焼却処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−212524(P2006−212524A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27001(P2005−27001)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】