説明

複合材料、特には多層材料及び接着又は接合材料

少なくとも2つの構成部材が互いに接着接合により接合されている多層材料を開示する。前記接着接合は接着剤として適しているマトリクス内にナノ繊維材料を含有している接着又は接合層によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の複合材料、特にはセラミック層と前記セラミック層上に設けられた少なくとも1つの金属皮膜又は金属層から成る複合材料に関する。本発明は更に請求項18のプリアンブルに記載の接着又は接合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料、並びにDCB技術に基づいた金属・セラミック基板の形態でのプリント配線板としての複合材料の製造が当該分野において知られている。この方法において、条導体、接続部等の製造に必要な金属皮膜はセラミック、例えば酸化アルミニウムセラミック上に直接銅接合技法を用いて適用され、金属皮膜は金属又は銅箔又は金属又は銅シートによって形成され、表側に金属と反応性ガス、好ましくは酸素との化学結合によって生じた層又はコーティング(溶融層)を備えている。
【0003】
例えばUS−PS 37 44 120及びDE−PS 23 19 854に記載されているこの方法において、この層又はコーティング(熱溶融層)は金属(例えば、銅)の溶融温度より低い溶融温度で共融となるため、セラミック上に箔を置いて全層を加熱する、つまり金属又は銅を実質的に熱溶融層又は酸化物層の領域のみで溶融することで層を互いに接合することが可能である。
【0004】
従って、このDCB法は以下の工程を含む。
銅箔の酸化によるムラのない酸化銅層の形成
銅箔のセラミック層上への配置
約1025〜1083℃、例えば約1071℃の処理温度までの複合体の加熱
室温までの冷却
【0005】
又、金属皮膜を形成している金属層又は金属箔、特には銅層又は銅箔と各セラミック材料との接合に関しては、いわゆる活性ハンダ法(DE 22 13 115;EP−A−153 618)が知られている。特に金属・セラミック基板の製造に使用されるこの方法において、接合は金属箔、例えば銅箔とセラミック基板、例えば窒化アルミニウムセラミックとの間で硬ろうを用いて温度約800〜1000℃で成され、硬ろうは銅、銀及び/又は金等の主成分に加えて活性金属も含有している。Hf、Ti、Zr、Nb、Ceから成る群の少なくとも1元素であるこの活性金属により、ハンダとセラミックとの間が化学反応により接合され、その一方でハンダと金属との間の接合は金属硬ろう接合部となる。
【特許文献1】US−PS 37 44 120
【特許文献2】DE−PS 23 19 854
【特許文献3】DE 22 13 115
【特許文献4】EP−A−153 618
【発明の開示】
【0006】
本発明の目的は、つまりは最適な熱特性を維持しながら特に簡単で経済的なやり方で製造可能な複合材料を提供することである。この目的は、請求項1に記載の複合材料で達成される。接着又は接合材料は請求項18の主題である。
【0007】
本発明の複合材料は好ましくは多層材料であり、好ましくは電気回路、モジュール等に適した、少なくとも片面が絶縁材料から成る層状担持体又は基板と、金属又は銅板又は金属又は銅箔から形成され、複合材料によって基板と接合される少なくとも一つの金属皮膜で構成される多層材料のことである。
【0008】
本発明の複合材料の利点は、簡便かつ経済的に製造可能な点である。更に、接着又は接合材によって形成された層により、金属皮膜と基板の材料の熱膨張係数の差異が補正される。金属皮膜の熱膨張についての補正効果は、特に接合層内のナノ繊維材料の少なくとも一部の対応する配向が接合された表面に平行又はほぼ平行である場合に達成可能である。
【0009】
図1において、概して1で表される多層材料は、例えば電気回路又はモジュール用のプリント基板として適している。多層材料は層状の担持体又は基板2から成り、層状担持体又は基板はこの実施形態においては全体が絶縁材料、例えば酸化アルミニウムセラミック、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック等のセラミックから形成されている。基板2としては他の材料も考えられ、例えばエポキシベース等のプラスチックが挙げられる。
【0010】
薄い金属板又は箔、例えば銅板又は銅箔から形成されている金属皮膜3は、基板2の表面上に二次元的に設けられている。この金属皮膜3と基板2とは、接着剤又は接合材料によって形成された接着又は接合層4によって二次元的に接合されている。図示の実施形態においては基板2の両面に金属皮膜3が設けられている。従って、接合材料又は多層材料1は基板2の中間面で、少なくとも個々の層の種類や順序に関して対称的である。基本的に、基板2の片面だけに金属皮膜3を形成することも可能である。条導体、接触面等を製造するためには、基板2の少なくとも一方の側の金属皮膜3を、当該分野で既知の通常のエッチング及びマスキング技法を用いて然るべくパターン形成する。
【0011】
図2に図示されるように、基板2を多層型に設計することも可能であり、つまり基板2は例えばアルミニウム製の金属支持層2.1と、層状基板2の表面上の絶縁層2.2から成り、つまりここで接合層4は金属皮膜3と隣接している。
【0012】
多層型製品1の特性は、接合層4がエポキシ樹脂マトリクス中に炭素ナノ繊維材料又は炭素ナノ繊維又はナノチューブを含有しているため、接合層の熱抵抗RtH(oK/W)が極端に低い又は反対に熱伝導率1/Rthが高いことである。つまり、酸化アルミニウムセラミック製の基板2を備えた多層材料1は上下の金属皮膜3間での熱伝導性及び熱抵抗の点から見て、以下でより詳細に説明するように、DCB技術を用いて金属皮膜をセラミック基板に適用した多層材料に完全に匹敵するものである。マトリクスは、接着又は接合材料の総重量に対してナノ繊維材料を約5〜30重量%含有している。
【0013】
好ましい実施形態においては、「Pyrograf III」として市販の炭素ナノ繊維をナノ繊維材料として使用する。この材料は、マトリクスに混合する、及びいずれの前処理に先立って温度3000℃で加熱される。エポキシベースのマトリクス、例えばポリエステルをマトリクスに使用する。マトリクス材料中でのナノ繊維材料の結合を最適なものとするためには、溶剤を使用する。この目的に特に適した溶剤はトリエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0014】
図3は接合層4によって生じた熱抵抗を測定するためのアレイの概略図である。アレイは上部加熱板5と、前記加熱板に隣接し、かつ熱伝達に最適なように連結されている測定板6と、下部測定板7から成る。測定板6、7には温度計又はセンサ6.1及び7.1が設置されており、前記板の正確な温度の測定と測定値の測定又は分析電子機器への送信に使用される。加熱板5は電気的に、つまり例えば加熱電圧60ボルトと一定の加熱電流2.7アンペアで稼動され、これにより測定過程中、精密に規定された、一定の熱量が加熱板5によって発生する。
【0015】
硬化した接合層4によって互いに連結されている2枚の銅板9、10から成る各試験片8は2枚の測定板6、7の間に位置している。試験片8と測定板6、7との間で熱を損失することなく伝達するには、既知の性質を有する慣用の熱伝導性化合物から成る層11、12を測定板6、7と隣接する銅板9、10との間にそれぞれ設ける。
【0016】
熱抵抗Rthは以下のように定義される。
Rth(oK/W)−(T1−T2)/Wでの加熱装置5の出力。従って、熱伝導率は1/Rthとなる。
【0017】
図5は様々な試験片について測定したoK/Wでの熱抵抗Rthを示すグラフである。つまり
位置A:接合層4によって接合されていない積層した銅板9、10を備えた試験片
位置B−E:それぞれ接合層4で接合された銅板9、10を備えた試験片。但し
位置B:更なる熱処理をしない場合
位置C:温度120℃で2.8日間に亘って試験片8を処理した場合
位置D:温度120℃で6日間に亘って試験片8を処理した場合
位置E:温度160℃で1日間に亘って試験片8を処理した場合
【0018】
図5は、接合層4の熱伝導率は熱への曝露時間が長くなるにつれて向上することを示しており、それがこの層の更なる硬化によるものなのは明らかである。測定結果は、各試験片8で測定した熱抵抗Rthは最初だけ若干低下する、つまり各測定の初期段階で若干低下することも示しているが、これは明らかに測定システムの反応の遅れによるものであり、この初期段階を過ぎた後、一定となる。
【0019】
図6は銅・セラミック多層材料の熱抵抗を比較として示すものである。この測定に関しては、2枚の銅板9、10を備えた試験片8の代わりに、下部銅板10を同じサイズのセラミック板又はセラミック基板と置き換えた試験片を使用した。図6の位置Aは銅製の上部板9が接合層なしでセラミック(酸化アルミニウムセラミック)製の下部板10と接している試験片の熱抵抗Rth(oK/W)を示している。位置B及びDは銅製の上部板9がセラミック製の下部板10とは接合層4を介して接合されている場合の測定についてのものである。つまり
位置B:温度150℃で3日間に亘って試験片8を処理した場合
位置D:試験片8を更に処理しない場合
である。
【0020】
位置CはDCB基板の熱抵抗を比較として示している。位置Eは試験片8の不在下、つまり測定板6、7が互いに層11、12を介して直接的に接している場合の、図3の測定装置で測定した熱抵抗である。
【0021】
言うまでもなく、全測定について同じサイズの板9、10を使用した。
【0022】
接合層4の熱伝導率は、最適な長さを有するナノ繊維材料から成るナノ繊維、つまりこれらの繊維又はこれらの繊維の少なくとも大半が長さ1〜100μ、好ましくは10μを有しているのだが、の使用によって、及び/又はナノ繊維材料の前処理及びこの前処理の結果としての、接合材料を形成しているマトリクス内でのナノ繊維材料の最適な結合により著しく上昇させることが可能である。この長さはセラミック基板及び/又は銅箔に通常存在する表面ムラに対応することから、このムラをこの長さのナノ繊維で最適に補正することが可能である。
【0023】
接合層4の熱伝導率の更なる改善及びそれに伴う多層材料1の熱特性の改善は、少なくとも主として熱流速の方向へのナノ繊維又はナノチューブの配向によって達成され、配向は例えばナノ繊維又はナノチューブをマトリクスに混合するに先立ってこれらを強磁性にする、つまり例えば強磁性材料のナノ粒子でコーティングすることで行う。次に、多層材料1の製造中、これらのナノ繊維又はナノチューブが基板2の表面及び隣接する金属皮膜3に対して接合層4内で直交又は少なくともほぼ直交して配向されるように、ナノ繊維又はナノチューブを外部磁場により最適に配向する(矢印H)。接合層4を硬化させた後、ナノ繊維又はナノチューブをこの配向で固定する。
【0024】
ここで、強磁性材料又はこの材料から成るナノ粒子のナノ繊維材料又はナノ繊維又はナノチューブへの適用は、表面接着層を形成する適切な重合体、例えばポリアニリンを用いて行われる。
【0025】
多層材料1の熱特性の更なる改善は、硬化後に、例えば熱間等方圧プレス(HIPプロセス)又は真空下での処理により接合層4を圧縮し、各接合層4内に存在する気泡又は空洞を閉じることで達成可能である。
【0026】
本発明を例示的な実施形態に基づいて上述したが、言うまでもなく、本発明が基礎とするところの根底の創意から逸脱することなく、多数の改変、変更を加えることが可能である。
【0027】
特に、熱伝導性接着剤又は接合材料は、多層材料又は基板の製造だけでなく、同時かつ最適な熱伝達を伴う、2つの構成部材間の接着接合が必要な用途全てについて一般的に使用可能である。
【0028】
ナノ繊維材料は炭素ベースであることから、接合材料もまた導電性となり、導電性の接着剤としても最適に使用可能である。つまり、例えば構成部材をプリント基板等上に搭載するにあたって接着性の電気的接続が必要又は所望される場合に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の更なる実施形態は従属請求項の主題である。本発明を、図面を参照しながら例示的な実施形態に基づいてより詳細に以下で説明する。
【図1】それぞれ本発明による多層材料の概略断面図である。
【図2】それぞれ本発明による多層材料の概略断面図である。
【図3】本発明による接着剤として具現化された熱伝導性化合物又は熱伝導性接着剤の熱挙動を求めるための測定アレイの概略図である。
【図4】多様な試験片を作成するためのアレイの概略図である。
【図5】多様な試験片について測定した熱抵抗を示す。
【図6】図3の装置で測定した、異なる材料の接合又は多層材料の場合の熱抵抗を比較したものである。
【符号の説明】
【0030】
1 多層材料
2 基板
2.1 金属支持膜
2.2 絶縁層
3 金属皮膜
4 接着又は接合層
5 加熱板
6,7 測定板
8 試験片
9,10 銅板
11.12 熱伝導性化合物からなる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料、特には多層材料であり、その隣接する表面上に熱伝達のために設けられた接着接合(4)によって互いに接合された少なくとも2つの構成部材(2、3)から成り、接着接合が接着剤としての使用に適した合成マトリクス中にナノ繊維材料を含有している接着又は接合層(4)によって形成されていることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
接合層(4)がエポキシベースのマトリクスから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ナノ繊維材料又は前記材料を形成しているナノ繊維又はナノチューブの少なくとも大部分が互いに隣接している表面に直交する軸方向に配向されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
ナノ繊維材料又は前記材料を形成しているナノ繊維又はナノチューブが配列又は配向のための外部磁場により強磁性であることを特徴とする、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
ナノ繊維材料又は前記材料を形成しているナノ粒子を有するナノ繊維及び/又はナノチューブが例えばFe等の強磁性材料でコーティングされて強磁性であることを特徴とする、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
マトリクスがエポキシベースを有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項7】
マトリクス成分がポリエステルであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項8】
マトリクスが総重量に対してナノ繊維材料を5〜30重量%含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項9】
「Pyrograf III」と指定されたナノ繊維をナノ繊維として使用することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項10】
ナノ繊維材料をマトリクスへの混合に先立って前処理において3000℃で加熱することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項11】
ナノ繊維材料がマトリクス内に溶剤、例えばトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて混合されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項12】
複合材料のある構成部材の少なくとも別の構成部材と接合される表面が絶縁材料で形成されており、別の構成部材が金属、例えば銅から形成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項13】
そのある構成部材が層状の担持体又は層状基板(2)であり、金属層(3)が基板(2)の両面に接合層(4)によってそれぞれ適用されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項14】
そのある構成部材がセラミック基板、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び/又は窒化ケイ素セラミックから形成された基板であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の複合材料。
【請求項15】
ナノ繊維材料が少なくともその表面において化学的に前処理されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項16】
少なくとも1つの接着層(4)を硬化後に例えば熱間等方圧プレス又は真空内での処理によって圧縮することを特徴とする、請求項1から15のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項17】
ナノ繊維材料が炭素又は合成ベースの材料であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項18】
熱伝達を意図して、少なくとも2つの隣接する表面を接着接合するための接着又は接合材料であり、接着剤としての使用に適したマトリクスから成り、マトリクスがナノ繊維材料を含有することを特徴とする、接着又は接合材料。
【請求項19】
マトリクスがエポキシベースを有していることを特徴とする、請求項18に記載の接合材料。
【請求項20】
マトリクス成分がポリエステルであることを特徴とする、請求項18又は19に記載の接合材料。
【請求項21】
マトリクスが総重量に対してナノ繊維材料を5〜30重量%含有していることを特徴とする、請求項1から20のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項22】
「Pyrograf III」と指定されたナノ繊維をナノ繊維として使用することを特徴とする、請求項1から21のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項23】
ナノ繊維材料をマトリクスへの混合に先立って前処理において3000℃で加熱することを特徴とする、請求項1から22のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項24】
ナノ繊維材料がマトリクス内に溶剤、例えばトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて混合されることを特徴とする、請求項1から23のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項25】
ナノ繊維材料に例えばコーティングとして強磁性材料を加えることを特徴とする、請求項1から24のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項26】
ナノ繊維材料が少なくともその表面で化学的に前処理されていることを特徴とする、請求項1から25のいずれか1つに記載の接合材料。
【請求項27】
ナノ繊維材料が炭素又は合成ベースの材料等であることを特徴とする、請求項1から26のいずれか1つに記載の接合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−520612(P2009−520612A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546659(P2008−546659)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003030
【国際公開番号】WO2007/072126
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506263929)
【Fターム(参考)】