説明

複合材料の改良された製造方法及び製造装置

本発明は、少なくともツールの一部を乾燥織布強化材で覆うステップと、乾燥織布強化材及びツールを入れた真空バッグを密封するステップと、真空バッグの内部の圧力が真空バッグの外部の圧力よりも低くなるように、真空バッグの内部と外部との間に圧力差を生じさせるステップと、樹脂を乾燥織布強化材に含浸させるステップと、樹脂を硬化させるステップと、を含む複合材料の製造方法に関する。本発明はまた、本方法に従って複合材料を製造する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複合材料の製造方法では、剛性の金型を使用し、そこに材料を配置して密封し、金型に合わせて成形を行うことが多い。このような複合材料の製造方法には、レジントランスファ成形や、柔軟性工具によるレジンインフュージョン(RIFT)などがある。このシステムを図1に示す。RIFTでは、平坦もしくは所望の形状を呈する、例えばアルミニウムのベースプレートなどの剛性の下側金型10と、柔軟な上側膜、すなわち真空バッグ20とが用いられる。金型の表面を適切な離型材12によって覆い、金型10上には乾燥織布強化材14を配置する。乾燥織布強化材とは樹脂を含まない織布のことである。織布強化材上には剥離層16を配置し、剥離層上には誘導手段18を配置する。剥離層とは、主にナイロンなどの密に織られた織布に、任意の離型剤を含浸させたものである。その後、これらの層を真空バッグ20により覆い、ベースプレートに対してテープ22で密封する。樹脂注入口24及び排出口26は真空バッグ内に密封する。
【0003】
排出口26には真空ポンプを接続し、真空バッグ内が−1バール程度の真空になるまで作動させる。その後真空ポンプの電源を切り、排出口26を密封する。次に圧力差により、樹脂を樹脂注入口からシステム内に流入させる。バッグ内は真空となっているので、樹脂は誘導手段に沿って流入し、「積層」全体が完全にぬれた状態となる。次に樹脂注入口及び排出口を密封し、適切な条件下で樹脂を硬化させる。排出口は必要に応じて密封しなくてもよい。
【0004】
従来の方法における問題点としては、複合材料製品をある特定の形に成形するためには、鋳造又は機械により、剛性の下部プレートをその特定の形に成形しなければならないことが挙げられる。このような金型を製造するためにはコストがかかり、「一回限り」の型が高額になってしまう。また、金型プレートによって成形できるのは、部品の一つの面の形状のみである。複合材料製品が、異なる三次元の面を複数有する場合は、同じ装置を使って製造することができない。両面に曲面を有する部品を製造したいならば、反対側の曲面を成形するために、追加の金型を使用しなければならない。このように両面に曲面を有する部品としては、例えば風車やプロペラの羽根などの翼形状があるが、追加のツールを使用して、例えばレジントランスファ成形(RTM)でマッチモールドを製造するか、又は、一つ以上の部品を一つ以上のツールを使用して成形した後にそれらの部品の接着/組立を行い、最終的に部品を完成させる必要がある。
【0005】
さらに、乾燥織布をウェットアウト状態にして、真空バッグ及びたった一つの剛性ツールと共に使用するという現在のプロセス、例えばRIFT及びレジンフィルムインフュージョン(RFI)では、一度に成形できるのは一つの曲面のみである。一つ以上の曲面を有する部品、例えば、非相補的な二つの曲面を有するロータブレードなどの場合、繊維を真空バッグに入れる前にあらかじめ樹脂を含浸(ウェットアウト)させておくか、又は一つ以上の剛性ツールを使用しない限り、一つの工程だけでは部品を成形することができない。「非相補的」とは、第一面の形状が第二面の形状と一致しないことを言う。
【0006】
複合材料を製造するその他の方法としては、ツール(成形具)の上に「プリプレグ」材を重ねたものを真空バッグに入れ、真空バッグ内から空気を除去して加熱する方法、又は、さらに圧力を加える必要がある場合には、当該バッグをオートクレーブに入れる方法がある。プリプレグとは複数枚の不撓性繊維/織布(カーボンファイバー等)であり、ツール/金型の上に配置する前にあらかじめ樹脂を含浸させたものである。プリプレグの織布はあらかじめ樹脂を含浸させたものであるが、織布を完全にウェットアウト状態にして、樹脂の硬化と同時に織布を硬化させるためには、熱及び/又は圧力が必要となる。オートクレーブにより真空バッグに高圧が加えられると、材料の積層が互いに押し付けられる。複合材料をより厚くするためには、より多くのプリプレグ繊維を層にして重ね、真空バッグに入れればよい。オートクレーブには高温及び高圧が必要であるため、この方法により複合材料を製造する場合、コストが比較的高くなる。
【0007】
従来の繊維強化プラスチック部品の製造方法では、複合材料をウェットアウト状態にするために流体力を使用する場合があるが、この方法によると、少なくとも一つの剛性の外部ツールが必要である。剛性の外部金型を使用しない場合には、一般的に、複合材料をウェットアウト状態にして金型に合わせて成形するために、機械的な力を使う必要がある。機械的な力とは、例えばローラなどの一時的に局在する直圧を使用して、樹脂を強化材に接触させることを言う。
【0008】
機械的な方法を使用してウェットアウト状態とした部品の品質を向上させるために真空バッグを使用する場合は、部品を必要な補助材料と共に真空バッグ内に配置する前に、ウェットアウト状態にした上でツールに接触させる必要がある。この工程には時間がかかる。
【0009】
本発明は、これらの方法を出発点としてなされたものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複合材料の製造方法であって、少なくともツールの一部を複合材料強化材で覆うステップと、複合材料強化材及びツールを覆う真空バッグを密封するステップと、真空バッグの内部の圧力が真空バッグの外部の圧力よりも低くなるように、真空バッグの内部と真空バッグの外部との間に圧力差を生じさせるステップと、複合材料強化材をウェットアウト状態とするステップと、樹脂を硬化させるステップと、を含み、ツールの少なくとも一部が、硬化した構造体の内部に位置することを特徴とする複合材料の製造方法、を対象とする。
【0011】
従来の手法によると、一つのツールにより成形できるのは複合材料部品の一つの面の形状のみであったが、この方法によると、全体ではないにしても少なくともその一部が、硬化し完成した複合材料構造体内、すなわち製品内に位置する剛性ツールと、柔軟な真空バッグとを使用することにより、複合材料部品の全ての面の形状を一つのツールにより成形することができる。現状では、二つ以上の面の形状を成形するためには、少なくとも二つの剛性ツールを使用するか、又は、金型に配置するか真空バッグ内に入れる前に、樹脂で機械的にウェットアウト状態にしておいた繊維を使用する必要がある。必要なのは内部ツール一つだけである上、その剛性ツールを所望の形状に製造することができるため、一つのツールによって複数の面が成形でき、高価なマッチモールドや、二つ以上のツールが不要となる。必要であれば、複数個の内部ツールを使用してもよい。かかる圧力が比較的低いため、ツールは、自重及び部品製造用材料の重量を支え、気圧に耐えることができればよい。本方法及び装置で使用される剛性のツールによると、複合材料製品の全ての面を同時に成形することができる。また本発明によると、剛性の外部金型は不要になる。複合材料をウェットアウト状態にする前とその工程を真空状態で行うことにより、浮き、レジンポケット、空気溜り等の欠陥の発生を大幅に防ぐことが可能になる。真空バッグにより、強化材及びツールに対して均一な圧力が加えられる。さらに圧力が必要な場合は、本方法をオートクレーブ内で実施してもよく、又は、例えば真空バッグを液体に沈めて流体力などの水圧を使用してもよい。液体を使用する場合は、液体を必要な温度まで加熱することにより、熱を加えてもよい。これにより、本構成を比較的早く加熱したり冷却したりすることが可能になる。
【0012】
好適な一実施形態によると、複合材料強化材はプリプレグ複合材料であることを特徴とする。高品質で安定した製品を実現するために、プリプレグ複合材料には制御された割合の樹脂が含まれていてもよい。プリプレグは通常、樹脂の硬化を防ぐため、使用前日まで冷却されている。半硬化樹脂は高粘性であり、樹脂を複合材料強化材内に浸透させて完全にウェットアウト状態にするためには、圧力及び温度を加える必要がある。プリプレグ複合材料を使用することにより、あらかじめ樹脂を含浸させた強化材の使用が可能になり、これによって、密封された真空バッグに樹脂を導入する追加の工程が不要になる。これにより、複合材料構造体の製造時間を短縮することができる。
【0013】
他の実施形態によると、複合材料強化材は乾燥複合材料強化材であり、硬化させるステップの前であって、かつ真空バッグを密封するステップの後に、樹脂を乾燥織布強化材中に含浸させることを特徴とする。
【0014】
その他の実施形態によると、真空バッグ内を真空状態にして、真空バッグの内側と外側との間の圧力差により真空バッグの注入口から液体樹脂を浸入させることで、樹脂を導入することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、製造方法は、液体樹脂の浸入を促進するための誘導手段を設けるステップを更に含むことを特徴とする。誘導手段とは比較的低抵抗の経路のことであり、真空バッグの長さ方向に沿って樹脂を導入するために使用される。樹脂は誘導手段から、浸透性の剥離層が存在する場合はそれに浸透し、その後乾燥繊維強化材に浸透する。
【0016】
誘導手段は、ツール表面の複数の凹部、シート状のプラスチック製メッシュ、又は複数本のプラスチック製材料のいずれかにより構成すると有効である。ツール自体に刻み目をつけると、完成した複合材料のその刻み目の場所に樹脂から成る畝が形成されるため好適である。
【0017】
その他の実施形態によると、真空バッグを密封するステップの前に、複数枚のシート状の樹脂を乾燥織布強化材の上に配置する形で樹脂を導入する。これにより、真空バッグに樹脂注入口が不要となる。シート状の樹脂とは、粘性樹脂を非粘性材料の間に挟んだものであり、金型に配置する前に樹脂が滲出したり硬化したりするのを防ぐために、冷蔵又は冷凍により冷却される。
【0018】
真空ポンプにより真空バッグ内に圧力差を生じさせ、圧力が加わることで、複数枚のシート状の樹脂を乾燥織布強化材に強制的に含浸させることが好ましい。温度及び/又は圧力を加えることで、シート状樹脂の含浸を容易にしたり、乾燥織布強化材に樹脂を強制的に含浸させるようにしたりしてもよい。シート状の樹脂は、プリプレグ複合材料強化材と一緒に使用してもよい。例えば、コアと織布強化プラスチックとの密着性を高めるために、木材などのセル状物質から成るツールとプリプレグの間に樹脂フィルムを挟んでもよい。
【0019】
真空バッグ外の大気は約1気圧であることが好ましい。本発明の更なる利点としては、圧力差がオートクレーブで生じる圧力差ほど大きくなくても構わないため、オートクレーブでは変形又は破損の虞れのあるハニカム状のツール、発泡体、又は一部が発泡体であるツールやコアなどを使用することができることが挙げられる。これにより、ツールの軽量化が実現すると共に、最高13789515Pa(2000psi)の圧力と最高815℃(1500°F)の温度を発生させることができるオートクレーブの使用時に比べると、複合材料部品の製造コストを比較的安く抑えることができる。本発明のプロセスは、「通常の」大気圧(101325Pa)下で使用することができる上、樹脂は、使用する樹脂により温度が変わるものの、例えば120℃と、オートクレーブ内よりも大幅に低い温度で硬化する。圧力についてもオートクレーブ内より大幅に低い。
【0020】
好ましくは、低融点プラスチック製材料でツールを形成し、樹脂を硬化するステップの後、プラスチック製材料を融点以上に加熱し、複合材料製品から取り出すことにより、中空構造を有する複合材料構造体を製造するようにしてもよい。低融点プラスチック製のツールを使用する場合、複合材料製品がツールに合わせて成形された後に、完成品をプラスチック材料の融点よりも高い温度に加熱し、プラスチック材料が十分に流動性を有し、及び/又は液体となったところで、それを複合材料製品の穴から除去する。あるいは、複合材料構造体を割り開き、プラスチック材料を溶かして複合材料から取り出してもよい。これにより中空構造を有し、更にその中に製品を成形することのできる複合材料構造体を成形することができる。その他、例えば熱による方法、化学的方法、機械的な方法、又はそれらの組み合わせなどによりツールを取り出してもよい。
【0021】
本発明はまた、複合材料の製造装置であって、バッグの内部とバッグの外部との間の流体連通を可能にするポートを少なくとも一つ有する、密封可能な不透過性の真空バッグと、バッグ内に配置される実質上剛性のツールと、真空バッグの内部と外部との間に圧力差を発生させる手段と、を備える複合材料の製造装置に関する。
【0022】
真空バッグ内に圧力差を発生させる手段を、真空バッグ内の圧力を下げる真空ポンプにより構成すると有効である。真空バッグは、シリコン製の真空バッグやその他のタイプ、例えば、ポリエチレンなどのプラスチック製材料を使った真空バッグであってもよい。真空バッグは、ツールや、ツールと真空バッグ間の積層に合わせて成形できる程度に、かつ繊維強化材に特定の異常な形をつけないように、十分柔軟性を有している必要がある。バッグは密封できることが好ましい。樹脂の熱硬化を可能にするため、真空バッグは耐熱性であってもよい。
【0023】
真空バッグの二つ目のポートは樹脂注入口であることが好ましい。
【0024】
ツールは、ポリマー発泡体、ポリマーハニカム、固形プラスチック、金属発泡体、金属ハニカム、グラファイト発泡体、強化プラスチック複合材料、金属発泡体、セラミック発泡体、複合材料発泡体、複合材料ハニカム、又は木材等の天然物質により構成すると有効である。複数の部品を組み合わせることにより、一つの完成したツールをなすようにしてもよい。例えば、スクリューやボルトを取り付ける部分を、硬いアルミニウムで構成してもよい。更に、複合材料のある部分にかかる負荷が他の部分よりも大きいことが分かっている場合には、その部分に、負荷の小さい部分に比べて高強度の発泡体を使用することが望ましい。
【0025】
装置は、樹脂の浸入を促進するための誘導手段を更に備えることが好ましい。これは、樹脂フィルムよりも液状樹脂を使用する場合に特に好適であり、真空バッグの長手方向に沿って樹脂の流入を容易にするものである。
【0026】
本工程は、例としてタービンの翼、ボートの製造、及びサーフボードやスキー用品等のスポーツ用品の製造に使用してもよい。更に、サーフボード等の既存のアイテムから複合材料構造体を製造し、その後、元のツールのレプリカを製造する金型として複合材料を使用してもよい。サーフボードを複合材料構造体から取り外すために、真空バッグを密封する前に離型フィルムを配置しておいたり、複合材料構造体を複数のピースにカットしたりしてもよい。その後の成形を容易にするために、構造体にフランジをつけてもよい。
【0027】
本発明のその他の利点としては、装置の運搬が比較的容易なことが挙げられる。複合材料構造体を製造後に運搬するのではなく、本装置を所望の場所に搬送し、「現場で」複合材料部品を製造することが可能である。
【0028】
図面における図示、及び/又はそれに適宜関連する添付の文章を参照して、ここに実質的に説明を行った、複合材料の製造方法及び製造装置は、本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
一つの例として、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る複合材料製造装置を示す断面概略図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る複合材料製造装置を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図2は、本発明に係る複合材料の製造装置40を表す。装置40は、排出口46と流体連通する樹脂注入口44を有する不透過性の真空バッグ42を備える。真空バッグ内部の一体式の剛性ツール、すなわちコアであるツール48は、三次元形状を呈しており、製造工程において複合材料に強度を与えると共に、型の役割を果たすものである。ツール48は、カーボンファイバー又はグラスファイバーなどの乾燥繊維強化材50の層に覆われている。乾燥繊維強化材50は、樹脂が付着しない透過性の膜である剥離層52に覆われているため、複合材料製品が完成したときに真空バッグからの取り出しが可能となる。剥離層52は、メッシュ状の高透過性プラスチックである誘導手段54により覆われる。これらの層50、52、54により、「積層(レイアップ)」が構成される。
【0031】
ツール48を、その周囲を覆う乾燥繊維強化材50、剥離層52、及び誘導手段54内の適切な位置に配置した後、粘着テープ(図示せず)を使用して真空バッグ42を密封する。樹脂注入口44をクランプによって閉じ、真空ポンプ(図示せず)を排出口46に接続する。真空ポンプを作動させ、真空バッグ42内から空気を除去すると共に、真空バッグ42内の圧力を下げ、バッグ内と大気間に−1バール程度の圧力差を生じさせる。真空バッグ42及び積層は、圧力差により、内部に位置するツール48の形状となる。その後、樹脂供給源に接続された樹脂注入口44が開かれる。真空バッグ42内と外部との間の圧力差により、樹脂がバッグ42内に流入する。樹脂は誘導メッシュ54に沿って長手方向に流入し、透過性の剥離層52に浸透し、乾燥繊維強化材50内に浸透する。乾燥繊維強化材50が樹脂により十分にぬれた状態になると、樹脂注入口44は閉じられる。その後、ポンプの部品の消耗を防ぐため、真空ポンプの電源を切る。あるいは、ポンプを装置40に接続したままにしておき、真空バッグ42から余分な樹脂やヒュームが排出されるようにしてもよい。積層が十分にぬれた状態になったら、既知の硬化方法により樹脂を硬化させる。樹脂が硬化したら、硬化した複合材料を真空バッグ42からとり出すことが出来る。
【0032】
図3は本発明の第二の実施形態を表すものであり、樹脂注入口44がない以外は第一の実施形態と類似するものである。装置80は、排出口84を有する真空バッグ82を備え、端部から延出する排出口84は、バッグ82内からバッグ82の外部への流体連通を可能にする。ツール86は真空バッグ82内に配置され、カーボンファイバーなどの乾燥織布強化材88がツール86を覆うように配置される。乾燥織布強化材88は、複数枚のシート状の樹脂90により覆われる。
【0033】
樹脂90及び乾燥織布強化材を適切な位置に配置させた後、粘着テープ(図示せず)を使用して真空バッグ82を密封し、排出口84に真空ポンプ(図示せず)を接続して真空バッグ内から空気を除去すると共に、真空バッグ82内と真空バッグ82の外部との間に圧力差を生じさせる。真空バッグ82内の圧力を下げると、織布がツール86の形状となる。樹脂の層に圧力を加えると共に、必要に応じて熱を加えることにより、乾燥織布88に樹脂の層を含浸させる。その後既知の手法により樹脂を硬化させる。
【0034】
樹脂がシート状であるため、第一の実施形態のように誘導手段を使用する必要がない。誘導手段の代用品として通気織布を使用して、空気や余分な樹脂の排出を容易にしてもよい。通気織布とは高多孔性の織布材料のことを言い、圧力を加えても潰れることなく、積層からの空気や余分な樹脂の排出を促進する。
【0035】
複合材料をより厚くするためには、層を複数にするよりも乾燥織布強化材を厚くするとよい。
【0036】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、図示した構成以外にも様々な変形形態や修正形態に想到しうるであろう。例えば、ツール及び/又は樹脂シートの外側に剥離層や離型布(図示せず)を配置して、完成品の取り出しを容易にすることも可能である。真空バッグを密封するために、ヒートシールや接着剤などの方法を利用してもよい。ツールやその他の層を覆い、密封させることのできる素材として、別の材料を使用出来ることは明らかであり、例えば、一枚のプラスチックフィルムの少なくとも3方向の面を密閉することにより、密封バッグとしてもよい。
【0037】
ツール上に乾燥織布強化材を配置するのは、ツールをバッグ内に入れる前であっても、ツールをバッグに入れた後であってもよい。乾燥織布強化材が一層である場合の説明を行ったが、同じ素材又は異なる素材からなる複数の層であってもよい。
【0038】
有形かつ曲面を有する複合材料製品について本発明の説明を行ってきたが、本発明は、サンドイッチパネルなどの平坦なシート状の複合材料にも同様に適用することが出来る。このようにシート状の場合、発泡体やハニカム状の材料、又は上記において説明したその他の種類の材料でコアを作成することにより、シート状複合材料の軽量化が実現される。
【0039】
「樹脂」とは、複合材料の母材(マトリクス)となる材料を表す総称であり、例えば、エポキシ樹脂で母材を形成し、カーボンファイバーで強化材を形成してもよい。この「樹脂」、つまり母材となる材料は、完全には硬化していない、つまり、織布に浸透する程度に液体の状態である熱硬化プラスチックであってもよい。または、当業者には明らかなように、本明細書中に開示された工程において、熱可塑性材料を使用し、例えば二つ以上の成分を混ぜることにより、その反応により熱可塑性物質が硬化するようにしてもよい。または、シート状、粉状、織布又は繊維の形状をした固形の熱可塑性材料によってツールを覆うようにしても、また、熱と圧力とを併用して材料を溶かし、強化材に浸透するようにしてもよい。
【0040】
しかし、特に好ましい実施形態では、樹脂はエポキシ樹脂やそれに類似する熱硬化プラスチックである。
【0041】
「プリプレグ強化材」とは、半硬化樹脂から成る複合材料の強化材のことを言う。プリプレグの樹脂は半硬化であるため、未硬化樹脂を含浸させた織布の場合は材料として扱い易いうえ、適切な圧力や熱が加えられると、複合材料に浸透し、ウェットアウト状態にすることが可能である。
【0042】
「乾燥織布強化材」とは、使用する前に樹脂を含まない織布あるいは繊維のことを言う。
【0043】
「複合材料強化材」とは、織布の強化材やその他の強化材のことを言う。
【0044】
「ウェットアウト」とは、強化材中の空気を樹脂により置換することを言う。
【0045】
本明細書において説明した方法によると、二つ以上の複合材料部品を同時に製造することができる。本明細書において説明したように、同じ形状あるいは異なる形状の複数のツールを一つの真空バッグの中に入れ、乾燥織布強化材を使用することで、複数の部品を製造することが可能である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料の製造方法であって、
少なくともツールの一部を複合材料強化材で覆うステップと、
複合材料強化材及びツールを覆う真空バッグを密封するステップと、
真空バッグの内部の圧力が真空バッグの外部の圧力よりも低くなるように、真空バッグの内部と真空バッグの外部との間に圧力差を生じさせるステップと、
複合材料強化材をウェットアウト状態とするステップと、
樹脂を硬化させるステップと、を含み、
ツールの少なくとも一部が、硬化した複合材料構造体の内部に位置することを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項2】
複合材料強化材はプリプレグ複合材料であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料の製造方法。
【請求項3】
複合材料強化材は乾燥複合材料強化材であり、硬化させるステップの前であって、かつ真空バッグを密封するステップの後に、樹脂を乾燥織布強化材中に含浸させることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料の製造方法。
【請求項4】
真空バッグの内側と外側との間の圧力差により、真空バッグの注入口から液体樹脂を浸入させることで、樹脂を導入することを特徴とする、請求項3に記載の複合材料の製造方法。
【請求項5】
液体樹脂の浸入を促進するための誘導手段を設けるステップを更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の複合材料の製造方法。
【請求項6】
誘導手段は、ツール表面の複数の凹部、シート状のプラスチック製メッシュ、又は複数本のプラスチック製材料のいずれかであることを特徴とする、請求項5に記載の複合材料の製造方法。
【請求項7】
真空バッグを密封するステップの前に、複数枚のシート状の樹脂を乾燥織布強化材上に配置する形で樹脂を導入し、圧力差によりそれらに圧力がかかることで、複数枚のシート状の樹脂を乾燥織布強化材に強制的に含浸させることを特徴とする、請求項3に記載の複合材料の製造方法。
【請求項8】
真空バッグ外の大気は約1気圧であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項9】
ツールは低融点プラスチック製材料から成り、樹脂を硬化するステップの後、プラスチック製材料を融点以上に加熱し、複合材料製品から取り出すことにより、中空構造を有する複合材料構造体を製造することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項10】
複合材料の製造装置であって、
バッグの内部とバッグの外部との間の流体連通を可能にするポートを少なくとも一つ有する、密封可能な不透過性の真空バッグと、
バッグ内に配置される実質上剛性のツールと、
バッグの内部と外部との間に圧力差を発生させる手段と、を備え、
バッグ内の圧力は、バッグ外の圧力よりも低いことを特徴とする、複合材料の製造装置。
【請求項11】
真空バッグ内に圧力差を発生させる手段は、真空バッグ内の圧力を下げる真空ポンプであることを特徴とする、請求項10に記載の複合材料の製造装置。
【請求項12】
真空バッグの二つ目のポートは樹脂注入口であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の複合材料の製造装置。
【請求項13】
ツールは、ポリマー発泡体、ポリマーハニカム、固形プラスチック、金属発泡体、金属ハニカム、グラファイト発泡体、複合材料発泡体、複合材料ハニカム、又は天然物質からなることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の複合材料の製造装置。
【請求項14】
装置は、システムの使用時に樹脂の浸入を促進するための誘導手段を更に備えることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の複合材料の製造装置。
【請求項15】
図2及び/又は図3における図示、及び/又はそれに適宜関連する添付の文章を参照して、ここに実質的に説明を行った、複合材料の製造方法及び製造装置をその範囲に含む発明。


【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−504454(P2013−504454A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528456(P2012−528456)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051540
【国際公開番号】WO2011/030169
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512061870)
【氏名又は名称原語表記】Alexander FERGUSSON
【Fターム(参考)】