説明

複合材料の製造方法および製造装置

【課題】 使用目的に応じて詳細に特性の調整が可能な複合材料の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】 回転中の容器3に、反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物を投入し遠心力を負荷する。遠心力を負荷した状態で、ランプ2によって光照射を行い、反応性組成物を硬化させる。また、加熱炉、ヒーターなどの加熱装置によって加熱することでも反応性組成物を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、特に傾斜機能材料の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在複合材料として、傾斜機能材料が注目されている。傾斜機能材料は、使用環境に応じて必要な機能を得るために、材料内部の組成または微視的組織を変化(傾斜)させて、機械強度、熱伝導度などの特性に位置的な変化を持たせた材料である。たとえば、人工衛星などの機体材料のように表面と内壁の温度差が1000K以上もある環境での使用に耐えられる材料として用いられる。
【0003】
2つの異なる特性を得るために、単に2種類の材料を貼り合わせることも考えられるが、このような場合、材料間の界面で熱膨張係数の格差などによって割れ、剥がれが発生してしまう。これに対して傾斜機能材料では、このような問題を発生することなく十分な特性を実現することができる。
【0004】
傾斜機能材料は、上記のような耐環境特性以外に、異なる電気特性、生体特性などを達成することも可能であり、応用分野は広い。
【0005】
傾斜機能材料の具体的な製造方法には、以下のような方法がある。特許文献1記載の組成分布を有する重合体の製造方法は、円筒反応容器を回転させ、比重の異なるモノマーを遠心力の作用下で加熱し、重合させることで傾斜材料を製造している。
【0006】
特許文献2記載の傾斜材料の製造方法は、重合性モノマーの存在下、ステレオコンプレックスゲル中に、所定の濃度勾配で浸透成分が拡散した傾斜部材を製造している。これにより、熱伝導率、比重、耐溶剤性などの特性が傾斜した材料が得られる。
【0007】
特許文献3記載の一体成型シートは、液状ポリマーと、液状ポリマーの比重とは比重が異なる複数種類の粒子との混合物を回転成型機に投入し、遠心力を作用させて、厚み方向に比重勾配を形成している。
【0008】
【特許文献1】特開平8−157503号公報
【特許文献2】特開2001−354711号公報
【特許文献3】特許第3329687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術によると、遠心力を作用させて傾斜材料を製造する場合、粒子が沈降するか浮上するかして層が形成されるまで低粘度を保つ必要があり、生産性を上げるために加熱を施すと樹脂の急速反応を招いて発色などが生じてしまう。
【0010】
また、装置内で十分に硬化させなければ回転を止めることができず、材料を取り出すことができないため、次工程に進むことができない。
【0011】
本発明の目的は、生産性を大幅に向上させることができる複合材料の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で光照射を行う光照射処理と、前記反応性組成物に対して加熱を行う加熱処理とを含むことを特徴とする複合材料の製造方法である。
【0013】
また本発明は、前記加熱処理は、前記反応性組成物に対して遠心力を負荷しない状態で行うことを特徴する。
また本発明は、前記光照射処理を行った後に前記加熱処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記加熱処理後に、新たな反応性組成物を投入し、再度前記光照射処理と前記加熱処理とを行うことで複合材料が積層された積層体を作製することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物に対して遠心力を負荷する遠心装置と、前記反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で光照射を行う光照射装置とを含むことを特徴とする複合材料の製造装置である。
【0016】
また本発明は、前記遠心装置は、円筒形状を有し、中心軸まわりに回転する容器を含み、
前記光照射装置は、前記中心軸上に設けられることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記遠心装置は、回転シャフトの垂直方向に延びる回転体の両端部に揺動可能に取り付けられた容器を含み、回転シャフトを回転させることで、容器を水平方向に回動させ、容器の底面方向に遠心力が負荷されるように構成され、
前記光照射装置は、静止した状態の前記容器の開口部から容器内部に光を照射するように構成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記容器は、前記反応組成物を収納し、着脱可能な成型トレイを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物を硬化させることで複合材料を製造する。
【0020】
反応性組成物を硬化させる際に、反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で光照射を行う光照射処理と、反応性組成物に対して加熱を行う加熱処理とを施す。
【0021】
光照射反応により表層部分が硬化することで外形を保持することができるので、反応器から速やかに取り出し、次工程で加熱処理など他の処理を行うことができる。
【0022】
これにより、傾斜材料などの複合材料の生産性を大幅に向上させることができる
また本発明によれば、前記加熱処理は、前記反応性組成物に対して遠心力を負荷しない状態で行う。
【0023】
遠心力負荷状態の光照射によって表層部分を傾斜状態で硬化させておき、遠心力を負荷しない状態で加熱することで硬化した表層部分以外の部分を傾斜しない一様な状態で硬化させる。これにより、傾斜部分と一様部分との両方を備えるような複合材料を得ることができ、複合材料の特性調整が可能となる。
【0024】
また本発明によれば、前記光照射処理を行った後に前記加熱処理を行うことを特徴とする。
【0025】
これにより、光照射処理により硬化した表層部分と、加熱処理により硬化した部分とが異なる状態となり、複合材料の特性調整が可能となる。
【0026】
また本発明によれば、前記加熱処理後に、新たな反応性組成物を投入し、再度前記光照射処理と前記加熱処理とを行う。光照射により表層部分が硬化するので、容易に新たな反応性組成物を投入することができ、複合材料が積層された積層体を作製することができる。
【0027】
また本発明によれば、遠心装置によって、光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で、光照射装置によって光照射を行行う。
【0028】
光照射反応により表層部分が硬化することで外形を保持することができるので、反応器から速やかに取り出し、次工程で加熱処理など他の処理を行うことができる。
【0029】
これにより、傾斜材料などの複合材料の生産性を大幅に向上させることができる
また本発明によれば、遠心装置は、円筒形状を有しており、その中心軸まわりに回転する容器を含んでいる。反応性組成物は、この容器内に投入されて遠心力が負荷される。
【0030】
光照射装置は、たとえばランプで実現され、容器の中心軸上に設けられる。
これにより、ランプから照射される光は、ランプを中心にほぼ全方向に均一に照射されるので、遠心力により容器内の反応性組成物表面に均等に光が照射され、一様に硬化させることができる。
【0031】
また本発明によれば、遠心装置は、回転シャフトの垂直方向に延びる回転体の両端部に揺動可能に容器を取り付け、回転シャフトを回転させることで、容器を水平方向に回動させ、容器の底面方向に遠心力が作用するように構成される。反応性組成物は、この容器内に投入されて遠心力が負荷される。
【0032】
光照射装置は、たとえばランプで実現され、静止した状態の前記容器の開口部から容器内部に光を照射するように構成される。
【0033】
これにより、円筒形状のみならず種々の容器を用いて遠心力を負荷させるとともに、光照射を行うことができる。
【0034】
また本発明によれば、前記容器は、前記反応組成物を収納し、着脱可能な成型トレイを備えている。
【0035】
これにより、光照射が終了し、表層部分が硬化して時点で容易に、かつ速やかに容器から取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、複合材料である傾斜機能材料を製造する方法であって、円筒型反応器などを回転させて反応性組成物に遠心力を負荷した状態で光を照射し、反応性組成物の少なくとも一部を硬化させることを特徴としている。光照射によって全体を硬化させてもよいし、さらに、加熱によって全体を硬化させてもよい。
【0037】
光照射と加熱は、同時に行ってもよいし、まず光照射のみを行った後加熱のみをおこなってもよいし、まず光照射のみを行い、光照射と加熱とを行い、加熱のみを行うようにしてもよい。光照射および加熱のタイミングは、反応性組成物の組成および目的生成物である傾斜機能材料に望む特性に応じて設定すればよい。
【0038】
[反応性組成物]
本発明では、光照射処理および加熱処理により硬化させるので、反応性組成物には、反応性ビヒクルと機能性フィラーと少なくとも含み、その他重合開始剤などの添加剤を含む。
【0039】
反応性ビヒクルとしては、光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマーまたは光硬化性プリポリマー、光・熱硬化性モノマー、光・熱硬化性オリゴマーまたは光・熱硬化性プリポリマーなどが挙げられる。アクリル系モノマーまたはオリゴマー、エポキシ系モノマーまたはオリゴマー、イミドモノマーまたはオリゴマーなどを用いることができる。アクリル系モノマーまたはオリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびイソボロニアルアクリレートなどが好ましい。また、モノマー、オリゴマーは、カリックスアレンを有するものを用いてもよい。
【0040】
機能性フィラーは、生成した傾斜機能材料に付加する特性に応じて以下のような各種フィラーを用いる。導電性フィラー、熱伝導性フィラーとしては、カーボン、グラファイト、銀、金または金属酸化物、易溶合金などの粒子を用い、絶縁性フィラーとしては、マイカ粒子を用い、磁性フィラーとしては、フェライト粒子、軟磁性扁平粉などを用い、難燃性としては、酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなどの粒子を用い、抗菌性フィラーとしては、ガラス、銀、酸化チタンなどの粒子を用い、断熱性フィラーとしては、シリカバルーンなどの膨脹カプセルを用い、その他光触媒用酸化チタン、マイクロカプセル、中空微粒子、ウィスカー、機能性酸化鉄などを用いることもできる。
【0041】
重合開始剤は、用いるビヒクル応じて選択する。光硬化反応には、アクリル系のラジカル重合反応と、エポキシ系のカチオン重合反応とがあり、ビヒクルによってカチオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を添加する。
【0042】
他の添加剤としては、粘度低下剤、重合禁止剤、チクソ性付与剤、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、溶剤、非反応性ポリマー、着色剤(顔料、染料)などを用いることができる。
【0043】
なお、本発明では反応性組成物は、有機溶剤や水などの溶媒を含まない不揮発性組成物であることが好ましい。不揮発性とすることで、溶媒の蒸散除去に必要であった時間が不要となる。
【0044】
反応性組成物を構成する上記物質についてさらに具体的に例示する。
親油性アクリル系モノマーの例としては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、トリブロモ(メタ)アクリル酸ベンジル、トリブロモ(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ビフェニルエトキシ、(メタ)アクリル酸ビフェニルエポキシ、(メタ)アクリル酸ナフチルエトキシ、(メタ)アクリル酸フルオレンエポキシ、ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールA、テトラブロモジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールA、エトキシ変性ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールA、テトラブロモエトキシ変性ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールAエポキシ、エトキシ変性ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールAエポキシ、テトラブロモジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールAエポキシ、テトラブロモエトキシ変性ジ(メタ)アクリル酸ビスフェノールAエポキシなどが挙げられる。
【0045】
親水性アクリル系モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−メタアクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのエチレングリコール系の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレートエステル類、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジオール類の(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
エポキシ樹脂には、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂があり、芳香族エポキシ樹脂として、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルであって、たとえばビスフェノールAやビスフェノールFまたはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。また、脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたは、シクロヘキセン、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸などの適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド、またはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
【0047】
脂環族エポキシ樹脂のモノマー例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサン)カルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0048】
脂肪族エポキシ樹脂のモノマー例としては、脂肪族多価アルコール、またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどがあり、その代表例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコ−ルのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン糖などが挙げられる。
【0049】
さらに、エポキシ樹脂以外のカチオン重合反応性物質の例としては、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、などのオキセタン化合物;テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物;トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンのような環状アセタール化合物;β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンのような環状ラクトン化合物;エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンのようなチイラン化合物;1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンのようなチエタン化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテルのようなビニルエーテル化合物;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンのようなエチレン性不飽和化合物及び上記化合物の誘導体などが挙げられる。
【0050】
カチオン重合開始剤の例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、フォスフォニウム塩、チヲピリニウム塩などが挙げられるが、熱的に比較的安定である芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルフォニウム塩などのオニウム塩重合開始剤が好ましい。なお、オニウム塩重合開始剤を活性化させるためには、紫外線・可視光の照射が好ましい。芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルフォニウム塩などのオニウム塩重合開始剤を使用する場合、アニオンとしてはBF、AsF、SbF、PF、B(Cなどが挙げられる。
【0051】
カチオン重合開始剤の市販品としては、たとえば、サイラキュアUVI−6974(ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートとジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物)、サイラキュアUVI−6990(UVI−6974のヘキサフルオロホスフェート)(以上、ユニオンカーバイド製)や、アデカオプトマーSP−151、アデカオプトマーSP−170(ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)フェニル]スルフィド)、アデカオプトマーSP−150(アデカオプトマーSP−170のヘキサフルオロホスフェート)、アデカオプトマーSP−171(以上、旭電化製)や、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103((4−ヒドロキシナフチル)−ジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)、TPS−102(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)、TPS−103(トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート)、MDS−103(4−メトキシフェニル−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)、MPI−103(4−メトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)、BBI−101(ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)、BBI−103(ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)(以下、みどり化学製)や、Irgacure261(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(1+)ヘキサフルオロホスフェート(1−))(チバガイギー製)や、CD−1010,CD−1011、CD−1012(4−(2−ヒドロキシテトラデカニルオキシ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)(以上、サートマー製)や、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達製)や、Degacure K126(ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート)(テグッサ製)や、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074((トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)(Rhodia製)などが挙げられる。
【0052】
ラジカル重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンジルジメチルケタール類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシアルキルフェノン類、カンファーキノンなどのα−ジカルボニル化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、光硬化性組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部使用することが好ましい。
【0053】
以上のような反応性ビヒクル、機能性フィラーおよび重合開始剤を高速衝撃ミル、高速インペラーなどの適宜な方法を用いて分散、混合し、反応性組成物を得る。詳細には、最初に赤色光下で、ビヒクルと重合開始剤とを混合し、高速ミルなどを用いて剪断力を十分に加えながら機能性フィラーを添加する。
【0054】
[円筒型反応器]
反応性組成物に遠心力を負荷するには、円筒型の反応器を所定の回転速度で回転させる。円筒型反応器には、ドラム方式(縦型、横型)とバスケット方式とがある。ドラム方式では、反応器の回転する容器部分を回転させながら反応性組成物を投入し、バスケット方式では、予め反応性組成物を投入した容器部分を回転させる。
【0055】
また、負荷する遠心力Fは、F=mrωで示される。ここで、mは反応性組成物の質量、rは容器の中心から反応性組成物までの位置、ωは容器の角速度である。上記の式より、反応性組成物の比重が大きく、容器の半径が大きく、容器の角速度が大きいものほど負荷する遠心力は大きくなる。容器の角速度は、容器の回転数に比例するので、容器を高速回転することで遠心力は大きくなる。
【0056】
円筒型反応器には、反応性組成物を加熱硬化させるためのランプが備えられている。ランプとしては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀ランプなどを用いることができる。反応性組成物の組成に応じて、最適な波長および出力を有するランプを選択すればよい。ランプは、必要に応じて容器内部から出し入れ可能に構成してもよい。
【0057】
図1は、円筒型反応器1の一例を示す概略図である。図からわかるように、円筒型反応器1は、縦型ドラム方式である。ランプ2は、容器3内の回転軸上に配置し、一端部を摺動装置4に連結されている。摺動装置4は、ランプ2を、容器3の中央部分を中心にして回転軸方向に所定のストロークおよび線速度で摺動させる。容器3は、内壁に着脱可能に成型トレイ5を備え、底部が軸を介して回動装置6に連結されている。回動装置6は、容器3を鉛直方向の回転軸まわりに所定の回転数で回転させる。
【0058】
反応性組成物は、貯溜タンク7に貯溜され、容器3が回転中に、供給ポンプ8によって供給管9の供給口から成型トレイ5に供給される。
【0059】
ランプ2から照射される光は、ランプ2を中心にほぼ全方向に均一に照射されるので、遠心力により成型トレイ5内の組成物表面に均等に光が照射され、一様に硬化させることができる。
【0060】
円筒型反応器としては、図1に示した縦型ドラム方式以外にも、横型ドラム方式も使用することができる。横型ドラム方式は、駆動方式によって分類され、図2(a)に示すような回転シャフトを容器に連結して容器を回動させる回転シャフト駆動方式のもの、図2(b)に示すような容器3の外周に接触する回転ローラ10を回転させることで容器を回動させる回転ロール接触駆動方式のもの、図2(c)に示すような回転ローラ11と容器3とをベルト12で連動させ、回転ローラ11の回転駆動力をベルト12で容器に伝達して容器3を回動させるベルト回転駆動方式のものなどがある。また、ドラム方式以外にも、図3に示すような、回転シャフト20の垂直方向に延びる回転体21の両端部に揺動可能に容器3を取り付け、回転シャフトを回動装置22によって回転させることで、容器3を水平面方向に回動させ、容器3の底面方向に遠心力が作用する回転振り子方式(バスケット方式)の反応器を使用することも可能である。
【0061】
横型ドラム方式の場合、縦型ドラム方式の場合と同様に、ランプ2は容器内部から出し入れ可能に構成され、容器回動中に光照射を行うことができる。回転振り子方式の場合は、図3に示すように、ランプ23を、静止した状態の容器3の開口部付近に設け、容器3が静止した状態で、開口部から容器内部に光を照射する。
【0062】
成型トレイ5については、容器3に内挿される着脱可能な円筒型トレイであってもよいし、複数のトレイが容器3の内周面に着脱可能に保持される(たとえば、内周面に90°ごとに4つのトレイが保持される)ような構成であってもよいし、容器3に内挿される着脱可能な円筒の内周面に複数のトレイが保持されるような構成であってもよい。
【0063】
また、成型トレイは必ずしも必要ではなく、容器内に直接反応性組成物を供給して遠心力負荷および光照射した後、容器を取り外し、容器ごと加熱するような構成であってもよい。
【0064】
光硬化は、熱硬化よりも反応が早く、遠心力により反応生成物内のビヒクルおよびフィラーの分布が定常化するまでの流動的な状態で硬化させることができるので、生成した傾斜機能材料の特性を詳細に調整することができ、所望の特性を付加することができる。
【0065】
また、混合する機能性フィラーによっては、光の到達深度が浅くなるが、光照射によって少なくとも表層部分は硬化させることができるので、表層部分の特性を調整することができる。また、表層部分が硬化することで外形を保持することができるので、円筒型反応器から取り出し、次工程で加熱処理など他の処理を行うことができる。反応器から取り出した後は、遠心力は作用しないので、たとえば遠心力作用下での光照射により硬化した傾斜部分と、取り出したのちの加熱などにより硬化した一様部分とを備える機能材料を生成することもできる。
【0066】
なお、生成する傾斜機能材料に望む特性によっては、遠心力負荷時に半径方向外側の表層部分を硬化させる、または半径方向外側の表層部分から内側に向かって硬化させることが好ましい場合がある。このような場合は、容器を光透過性部材で構成し、これを囲むように外側に複数のランプを配置する。
【0067】
円筒反応器には、反応性組成物を加熱硬化させるための加熱装置を備えていてもよい。加熱装置は、容器全体を覆い、反応性組成物を含み容器全体を一様に加熱する加熱炉装置、容器の周壁内部に埋め込んだ電熱線や熱水パイプなどで反応性組成物の内壁に接している面から加熱するヒーター装置、熱風または熱水などを反応性組成物に噴出し、熱風または熱水に接触した部分を加熱する熱風または熱水噴出装置などを用いることができる。
【0068】
加熱硬化は、容器を回転させて遠心力を負荷した状態で行ってもよいし、光照射後容器の回転を止める、容器から取り出すなどして遠心力を負荷しない状態で行ってもよい。
【0069】
上記のような光照射ランプおよび加熱装置を組み合わせることで、同じ組成の反応組成物を用いたとしても、機能性フィラーの分布状態、反応性ビヒクルの局所的濃度が異なる傾斜機能材料を得ることができる。ここで、組み合わせとは、ランプの配置、加熱装置の種類などに加え、前述のように光照射と加熱のタイミングも含む。光硬化と熱硬化では、その硬化反応速度に大きく差があるので、この速度差を利用し、光照射および加熱の開始時刻、終了時刻、照射および加熱時間を適切に選択することで、機能材料の特性調整をさらに詳細に行うことができる。
【0070】
さらに、前述のようにして表面を光硬化させたものを第一層とし、新たな反応性組成物を投入して光照射および加熱を行うことにより、第一層の表面に第二層を形成する。これを繰り返すことによって複合材料が積層された積層体を形成することもできる。
【0071】
また、板状、箔状、布状、網状材料の載置、固定、接着、埋込によって、複合材料を形成することもできる。たとえば、網状材料であるエキスパンドメタルを、予め成型トレイに設置しておき、前述のように回転成型を行うことでエキスパンドメタルを含む積層体を形成することもできる。
【0072】
以下では、本発明の実施例について説明する。
反応性ビヒクルおよび添加剤であるカチオン重合開始剤は各実施例において共通であり、機能性フィラーの種類を変えて作製した。また、成型する複合材料のシート厚みは1.5mmとした。
【0073】
(反応性組成物)
反応性ビヒクル:エポキシ系モノマー(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ製、
ARALDITE CY-179) 100重量部
添加剤:カチオン重合開始剤(三新化学工業株式会社製、サンエイド SI-60L) 2.
5重量部
機能性フィラー:実施例1 球状黒鉛 φ20μm 30重量部
実施例2 ガラススフィア(比重0.26) φ100〜150μm
10重量部
実施例3 センダスト アスペクト5〜7 100重量部
実施例4 炭素繊維(チョップド) 3重量部
【0074】
(反応条件)
円筒反応器:横型ドラム方式(内径200mm)
回転数および光照射開始までの回転時間:実施例1 500rpm、7分間
実施例2 200rpm、7分間
実施例3 500rpm、7分間
実施例4 700rpm、10分間
光照射条件:高圧水銀ランプ(東芝ライテック株式会社製)反射板無し
60W/cm(照射積算光量9000mJ/cm
【0075】
(加熱条件)
光照射後、成型トレイを取り出して、120℃、10分間加熱した。
【0076】
光照射後の状態では、いずれの実施例においても、表面部分が硬化しており、内部はグリーンシート状で未硬化であった。
【0077】
表面部分が硬化しているため、成型トレイを反応容器から取り出してもシート形状を保持しており、速やかに次工程である加熱工程を開始することができた。
【0078】
各実施例の複合材料は、遠心力により、機能性フィラーが厚み方向に分布したシート材料として得られた。
【0079】
また、実施例5として、エキスパンドメタルを含む複合材料も作製した。成型トレイに予めエキスパンドメタル(太陽金網株式会社製、6/0)を設置し、反応組成物、反応条件、加熱条件は実施例3と同様とした。実施例5では、最外層部分にエキスパンドメタルを含むシート材料として得られた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】円筒型反応器1の一例を示す概略図である。
【図2】横型ドラム方式の円筒型反応器を示す概略図である。
【図3】回転振り子方式の円筒型反応器を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1 円筒型反応器
2 ランプ
3 容器
4 摺動装置
5 成型トレイ
6 回動装置
7 貯溜タンク
8 供給ポンプ
9 供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で光照射を行う光照射処理と、前記反応性組成物に対して加熱を行う加熱処理とを含むことを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記加熱処理は、前記反応性組成物に対して遠心力を負荷しない状態で行うことを特徴する請求項1記載の複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記光照射処理を行った後に前記加熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理後に、新たな反応性組成物を投入し、再度前記光照射処理と前記加熱処理とを行うことで複合材料が積層された積層体を作製することを特徴とする請求項1記載の複合材料の製造方法。
【請求項5】
光反応性および熱反応性を有する反応性ビヒクルと機能性フィラーとを含む反応性組成物に対して遠心力を負荷する遠心装置と、前記反応性組成物に対して遠心力を負荷した状態で光照射を行う光照射装置とを含むことを特徴とする複合材料の製造装置。
【請求項6】
前記遠心装置は、円筒形状を有し、中心軸まわりに回転する容器を含み、
前記光照射装置は、前記中心軸上に設けられることを特徴とする請求項5記載の複合材料の製造装置。
【請求項7】
前記遠心装置は、回転シャフトの垂直方向に延びる回転体の両端部に揺動可能に取り付けられた容器を含み、回転シャフトを回転させることで、容器を水平方向に回動させ、容器の底面方向に遠心力が負荷されるように構成され、
前記光照射装置は、静止した状態の前記容器の開口部から容器内部に光を照射するように構成されることを特徴とする請求項5記載の複合材料の製造装置。
【請求項8】
前記容器は、前記反応組成物を収納し、着脱可能な成型トレイを備えることを特徴とする請求項6または7記載の複合材料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182872(P2006−182872A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376446(P2004−376446)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】