説明

複合材

【課題】複数枚で構成され、剛性、断熱性、遮音性能などに優れる複合材を提供すること。
【解決手段】アルミニウム製の平板状の板体1Bの上に凸部20A及び平面部20Cが形成されたアルミニウム製の板体1Aを凸部20Aが上方に突出するように、すなわち凸部20Aの開口部が下となるように、載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bに複数の凸部20Bを形成して凸部20B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の触媒コンバータやマフラなどの断熱に好適に使用できるヒートインシュレータや、自動車のホィールエプロン、トウボード、カウルパネルなどや、また自動車以外にも適用できる複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヒートインシュレータは、自動車の車両フロア下方の空きスペースに設置されることが多いため、フューエルチューブ等との干渉を避けるためにビードを十分突出させることができない場合やビードを板面全体には形成できない場合があるので、ヒートインシュレータの板厚を厚くすることで剛性を確保するのが一般的である。また、剛性を高めるために、凹凸を形成することも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、剛性を確保できても、断熱性や遮音性の面において、十分なものとはいえないものである。このため、断熱性、遮音性能などに優れる複合材を提供すべく、本出願人は国際特許出願において、特許文献2において開示する技術を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−60878号公報
【特許文献2】国際出願番号PCT/JP2009/055360明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今さらに剛性を確保しつつ、断熱性や遮音性能のより高いものが求められている。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、さらに剛性、断熱性や遮音性能などに優れる複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため第1の発明は、2枚の板体から構成される複合材において、一方の平板である板体と空間形成用の多数の凸部若しくは凹部若しくは凹凸部が形成された他方の板体とを、前記2枚の板体に接合用の凸部をプレス成形により複数形成することにより接合して成ることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、3枚の板体から構成される複合材において、2枚の平板である板体との間に空間形成用の多数の凸部若しくは凹部若しくは凹凸部が形成された板体を介在させた状態で、前記3枚の板体に接合用の凸部をプレス成形により複数形成することにより接合して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、剛性、断熱性、遮音性能などが優れる複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の凸部を形成した後のヒートインシュレータの部分斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】平板である板体1Bに対して凸部2A等が形成された板体1Aを第1の実施形態とは表裏反対にして凸部2Bで接合した状態の断面図である。
【図4】第2の実施形態の凸部を形成した後のヒートインシュレータの部分斜視図である。
【図5】第3の実施形態を示す三層構造のヒートインシュレータの断面図である。
【図6】板体1Aを第3の実施形態とは表裏反対にした三層構造のヒートインシュレータの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面に基づき、本発明の第1の実施形態を説明する。この第1の実施形態は、2枚の板体から構成される複合材のうち、自動車の車体に取り付けられて、触媒コンバータやマフラなどの断熱に好適に使用できるヒートインシュレータを例としており、以下説明する。図1は凸部2A、2Bを形成した後のヒートインシュレータ1の部分斜視図、図2は図1のA−A断面図である。
【0012】
次に、前記ヒートインシュレータ1の製造方法について説明するが、初めに例えば、アルミニウム製の1枚の平板状の板体1Aをプレス金型装置内にセットして、多数の凸部2Aをこの凸部2A同士の間に平板部が直線状に残らないような配列状態で形成すると共に平面視円形を呈する複数の平板部2Cを規則的に又は不規則に配列して形成する。一定の配設パターンで形成された前記凸部2Aは平面視が正六角形を呈し、対角を形成する頂点を通る縦断面が円弧状を呈している。なお、この場合、本実施形態では、前記板体1Aを所定長さで順送しながら或いは一括して同時に凸部2A及び平面部2Cをプレス成形により作製する。
【0013】
そして、例えば、アルミニウム製の平板状の板体1Bの上に、前述したように、凸部2A及び平面部2Cがプレス成形により作製された板体1Aを載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bの複数の凸部2B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合するが、この場合、板体1Aでは平面部2Cに凸部2Bが形成され、両板体1A、1Bに形成される凸部2B同士を接合することによっても剛性が高められる。
【0014】
そして、上の前記板体1Aは厚さが0.125mmで、下の板体1Bは厚さが0.3mmであり、凸部2Aの幅W1を10mm以上〜16mm以内とし、ベース幅W2を11mm以上〜17mm以内とし、平面寸法(C/2)を1mmとして、凸部2Aの高さHを凸部の高さH/凸部の幅W1が12%以上〜20%以内となるように1.2mm以上〜3.2mm以下とし、平面寸法(C/2)の2倍である凸部2A同士の間隔がベース幅W2の75%以下である。
【0015】
そして、図2に示すように、前記凸部2Bは平板部2Cの中央部に、直径が例えば4mmで前記凸部2Aの高さより少し低い高さに形成するが、同程度の高さとしてもよい。
【0016】
なお、前記凸部2Bは下の板体1Bが上の板体1Aに張り出した状態で接合したものであり、プレス金型装置内において、例えば丸型ポンチ部がダイ部となる円筒溝へ板体1A、1Bを押し込み、更なる加圧により下の板体1Bが上の板体1Aに張り出した状態でインターロックを形成する(図2参照)。これにより、2枚の板体1A、1Bがこの凸部2B部分で接合されることとなる。このとき、前記凸部2Bはその上端周縁部2BBが上方へ突出するように形成される。
【0017】
なお、以上のように、平板状の板体1Bの上に凸部2A及び平面部2Cが形成された板体1Aを凸部2Aが上方に突出するように(凸部2Aの開口部が下となるように)、載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bに形成される凸部2B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合したが、図3に示すように接合してもよい。
【0018】
即ち、板体1Bに対して凸部2A及び平面部2Cが形成された前記板体1Aを表裏反対にして、平板状の板体1Bの上に前記板体1Aを凸部2Aが下方に突出するように(凸部2Aの開口部が上となるように)、載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bに形成される凸部2B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合してもよい。
【0019】
この場合、図2に示すような凸部2Aにより2枚の板体1A、1B間に形成される空間S1の方が、図3に示すような凸部2Aにより2枚の板体1A、1B間に形成される空間S2より大きくなる。
【0020】
次に、図4は凸部20A、20Bを形成した後のヒートインシュレータ1の部分斜視図であり、以下第2の実施形態について説明する。ヒートインシュレータ1に形成した凸部20A、20Bの配列パターンは、第1の実施形態と同様であるが、この凸部20Aは平面視が円形を呈し、縦断面が円弧状を呈しており、球の一部を構成する形状であり、凸部20Bは平板部20Cの中央部に形成され円筒状を呈している。
【0021】
但し、この第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、凸部20Aの幅W3を10mm以上〜16mm以内とし、ベース幅W2を11mm以上〜17mm以内とし、平面寸法(C/2)を1mmとして、凸部20Aの高さHを凸部の高さH/凸部の幅W3が12%以上〜20%以内となるように1.2mm以上〜3.2mm以下とし、平面寸法(C/2)の2倍である凸部20A同士の間隔がベース幅W4の75%以下である。
【0022】
また、この第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、平板状の板体1Bの上に凸部20A及び平面部20Cが形成された板体1Aを凸部20Aが上方に突出するように(凸部20Aの開口部が下となるように)、載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bに形成される凸部20B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合する。しかし、第1の実施形態で説明したように、板体1Bに対して前記板体1Aを表裏反対にして、平板状の板体1Bの上に凸部20A及び平面部20Cが形成された板体1Aを凸部20Aが下方に突出するように(凸部20Aの開口部が上となるように)、載せてプレス金型装置内にセットして、2枚の板体1A、1Bに形成される凸部2B同士を接合することによって2枚の板体1A、1Bを接合してもよい。
【0023】
以上の第1、第2の実施形態のように、凸部2A、2Bや、20A、20Bを形成すると、1枚の0.3mm厚のアルミニウム製の板体でも0.5mm厚のアルミニウム製の板体と同程度以上の剛性を発揮することができ、しかも両板体1A、1B間に空間を形成しないで両板体1A、1Bを重合させた状態で凸部2Bや20Bで接合したものに比べ、両板体1A、1B間に空間S1又はS2を形成するように凸部2Bや20Bで接合したものの方が剛性に優れ、更には断熱性や遮音性能などにも優れる。
【0024】
なお、第1及び第2の実施形態が、板体1Aと1Bとの二層構造であったが、第3の実施形態のように、三層構造としてもよい。即ち、図4のB−B断面図である図5に示すように、平板状の1Bと1Cとの間に、前述したような第1又は第2の実施形態で作製した凸部2A又は20Aを形成した板体1Aを凸部2A又は20Aが上方に突出するように(凸部2A又は20Aの開口部が下となるように)、介在させた状態で、プレス金型装置内にセットして、3枚の板体1A、1B、1Cに形成される凸部30B同士を接合することによって3枚の板体1A、1B、1Cを接合してもよい。
【0025】
また、図6に示すように、平板状の1Bと1Cとの間に前記板体1Aを表裏反対にして凸部2A又は20Aが下方に突出するように(凸部2A又は20Aの開口部が上となるように)、載せてプレス金型装置内にセットして、3枚の板体1A、1B、1Cに形成される凸部30B同士を接合することによって3枚の板体1A、1B、1Cを接合してもよい。
【0026】
前記凸部30Bは第1、第2の実施形態と同様に、平板部2C又は20Cの中央部に、直径が例えば4mmで前記凸部2Aの高さより少し低い高さに形成するが、同程度の高さとしてもよい。
【0027】
なお、前記凸部30Bは板体1B、1Aが1Cに張り出した状態で接合したものであり、プレス金型装置内において、例えば丸型ポンチ部がダイ部となる円筒溝へ板体1A、1B、1Cを押し込み、更なる加圧により板体1B、1Aが1Cに張り出した状態でインターロックを形成する(図5、図6参照)。これにより、3枚の板体1A、1B、1Cがこの凸部30B部分で接合されることとなる。このとき、前記凸部30Bはその上端周縁部30BBが上方へ突出するように形成される。
【0028】
このような三層構造の第3の実施形態によれば、第1、第2の実施形態の板体1Aと1Bとの二層構造に比べ、尚一層剛性、断熱性、遮音性能が高められる。
【0029】
また、以上の第1乃至第3の実施形態によれば、凸部2A、20A同士の間に平板部が直線状に残らないようにすると、力学的な方向性が無くなり、剛性を大きく向上させることができる。また、平板部2Cや20Cに形成される凸部2B、20B、30Bにより、より剛性が高められる。
【0030】
なお、第1乃至第3の実施形態で説明した凸部2A、20Aの形状は、上述したような形状に限定されず、その他の形状でもよく、凸部2B、20B、30Bの形状も同様に、その他の形状でもよい。更には、板体1Aに形成される凸部は、上述したような凸部2A、20Aに限らず、凹部でも凹凸部でもよく、第1、第2の実施形態にあっては板体1Aと一方の平板である板体1Bとの間に、第3の実施形態にあっては板体1Aと平板1Bとの間に及び板体1Aと1Cとの間に空間が形成され、しかも凸部2B、20B、30Bによる接合により前記空間を閉断面構造で作製するものであればよい。
【0031】
また、凸部2B、20B、30Bを形成することによる接合であるから、第1、第2の実施形態にあっては板体1Aと1Bとを、第3の実施形態にあっては平板1Aと1Bと1Cとを接着剤を用いる必要もなく、固定することができ、しかも端部においてクリンチング処理をすることなく、固定することができるものである。
【0032】
なお、以上の実施形態は自動車の触媒コンバータやマフラなどの断熱に好適に使用できるヒートインシュレータに適用したが、これに限らず、特に剛性、断熱性、遮音性能が要求される自動車のホィールエプロン、トウボード、カウルパネルなどや、また自動車以外、例えば航空機、船舶などの部品にも適用できる複合材にも適用することができる。
【0033】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
剛性、断熱性、遮音性能などに優れる複合材を提供することができ、特に自動車のヒートインシュレータ、ホィールエプロン、トウボード、カウルパネルなどや、自動車以外にも適用できる複合材に要求される用途に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 ヒートインシュレータ
1A、1B、1C 板体
2A、20A 凸部
2B、20B、30B 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板体から構成される複合材において、一方の平板である板体と空間形成用の多数の凸部若しくは凹部若しくは凹凸部が形成された他方の板体とを、前記2枚の板体に接合用の凸部をプレス成形により複数形成することにより接合して成ることを特徴とする複合材。
【請求項2】
3枚の板体から構成される複合材において、2枚の平板である板体との間に空間形成用の多数の凸部若しくは凹部若しくは凹凸部が形成された板体を介在させた状態で、前記3枚の板体に接合用の凸部をプレス成形により複数形成することにより接合して成ることを特徴とする複合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264664(P2010−264664A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118099(P2009−118099)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(592259037)株式会社深井製作所 (7)
【Fターム(参考)】