説明

複合流体機械

【課題】膨張機部が駆動された状態で切替手段により圧縮機部と回転電機とを接続状態に切り替えるときに、回転電機に脱調が発生することを防止することができる複合流体機械を提供する。
【解決手段】複合流体機械40において、膨張機部85から出力された機械的エネルギーによりモータ・ジェネレータ50が回転するとともに圧縮機部60が駆動されておらず、かつ切替手段Cにより圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とが切断状態にある状況において、制御部56は、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態とする旨の要求を受領すると、モータ・ジェネレータ50の回転数を減少させる。その後、制御部56は、モータ・ジェネレータ50の回転数が予め設定された所定回転数より小さい場合に、切替手段Cによりモータ・ジェネレータ50と圧縮機部60とを接続状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、発電機又は電動機として機能する回転電機と、回転電機と圧縮機部とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段と、を備えた複合流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の複合流体機械として、例えば特許文献1の流体機械が挙げられる。この流体機械は、流体を圧縮する圧縮機部と、外部駆動源の排熱エネルギーによって回転駆動力を発生する膨張機部と、電動機及び発電機の両機能を備える回転電機部とを有している。膨張機部は、圧縮機部及び回転電機部に接続されている。また、圧縮機部と回転電機部とは、切替手段によって接続状態を切断状態に切替可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−307951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、切替手段を切断状態から接続状態へ切り替える際の流体機械の制御については何ら開示されていない。そして、流体機械において、圧縮機部が駆動されず、ランキンサイクルの冷媒の膨張によって膨張機部のみが駆動されて回転電機部が回転している状況では、圧縮機部の回転数が回転電機部の回転数より小さくなっている。この状況で圧縮機部の駆動要求があると、膨張機部から出力された動力が圧縮機部を駆動させるために要求される動力を越えていないと、回転電機部に給電がなされ回転数を上昇させた状態で、切替手段により圧縮機部と回転電機部とが接続状態に切替えられる。このとき、圧縮機部と回転電機部との回転数に差があると、回転電機部の駆動軸に負荷がかかることにより、回転電機部の回転数が低下し、回転電機部への制御パルスとの同期がとれなくなる現象、所謂脱調が発生してしまう。また、回転電機部に給電がなされていなくても回転数に差があると回転電機部に脱調が発生してしまう。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、膨張機部が駆動された状態で切替手段により圧縮機部と回転電機とを接続状態に切り替えるときに、回転電機に脱調が発生することを防止することができる複合流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の複合流体機械は、ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、発電機又は電動機として機能する回転電機と、前記回転電機と前記圧縮機部とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段と、を備える。さらに、複合流体機械は、前記回転電機の回転数を検出する回転数検出手段と、前記回転数検出手段の検出結果に基づき前記回転電機の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定する回転数判定手段と、前記切替手段及び回転電機の駆動を制御する制御手段と、を備える。そして、前記機械的エネルギーにより前記回転電機が回転するとともに、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とが切断状態にある状況において、前記制御手段は、前記圧縮機部と前記回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すると、前記回転数判定手段の判定結果が肯定判定の場合に、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とを前記接続状態に切り替える。
【0007】
これによれば、制御手段は、圧縮機部と回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すると、切替手段により接続状態とする前において、回転電機の回転数が所定回転数より小さくなったときに切替手段により回転電機と圧縮機部とを接続状態とするため、回転電機に脱調が発生することを防止することができる。よって、脱調時に生じる過電流に対応できるように、複合流体機械に容量の大きい電気素子を用いる必要がなく、複合流体機械の製造コストを抑えることができる。
【0008】
また、前記制御手段は、前記回転数判定手段の判定結果が否定判定の場合には前記回転電機の回転数を減少させ、その後、前記回転数判定手段による前記判定が行われ、前記所定回転数より小さくなる迄、前記回転数を減少させる制御及び前記回転数判定手段による判定が繰り返されてもよい。これによれば、圧縮機部と回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すれば、回転電機の回転数が予め設定された所定回転数まで減少し続けることとなるため、最終的には圧縮機部と回転電機とを脱調を発生させることなく接続することができる。
【0009】
また、前記圧縮機部の吐出圧領域と吸入圧領域との差圧を検出する差圧検出手段を備え、前記制御手段は、前記圧縮機部と前記回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すると、前記差圧検出手段の検出結果に基づき前記差圧が所定差圧より大きい場合には前記回転電機の回転数を減少させ、その後、前記回転数判定手段の判定が行われる一方で、前記差圧が所定差圧より小さい場合には前記回転電機の回転数を減少させることなく前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とを前記接続状態に切り替えてもよい。
【0010】
これによれば、圧縮機部の差圧が所定差圧より大きく、回転電機の回転数を大きくする必要がある場合は、回転電機の回転数を一旦減少させることで、圧縮機部と回転電機とが接続状態に切り替えられたときの負荷を減らして脱調の発生を防止することができる。一方、圧縮機部の差圧が所定差圧より小さい場合は、そのまま切替手段により接続状態に切り替えても負荷が小さいので脱調が発生しない。よって、脱調を防止しながら切替手段により圧縮機部と回転電機とを接続状態とする際に、回転電機の回転数を変動させる機会を少なくして、騒音や振動の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膨張機部が駆動された状態で切替手段により圧縮機部と回転電機とを接続状態に切り替えるときに、回転電機に脱調が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の車両用排熱回収システムを示す模式図。
【図2】実施形態の複合流体機械を示す断面図。
【図3】制御手段の処理を示すフローチャート。
【図4】制御手段の処理の別例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
まず、本実施形態の複合流体機械40を備えた車両用排熱回収システム11の全体構成について説明する。図1に示すように、車両用排熱回収システム11は、排熱源としてのエンジン12を備えるとともに、別々のサイクルで構成された冷凍サイクル30と、ランキンサイクル20とを併せ持つ。冷凍サイクル30内は、車両空調用のために冷凍サイクル用作動流体としての冷媒が循環する。一方、ランキンサイクル20内は、エンジン12からの排熱によって加熱されるランキンサイクル用作動流体としての冷媒が循環する。そして、車両用排熱回収システム11において、複合流体機械40は、ランキンサイクル20の一部及び冷凍サイクル30の一部を構成している。
【0014】
次に、車両に搭載される複合流体機械40について説明する。なお、以下の説明において、複合流体機械40の「前」及び「後」は、図2に示す矢印Yの方向を前後方向とする。
【0015】
図2に示すように、複合流体機械40は、アルミニウム合金よりなるハウジング41を備える。ハウジング41は、筒状をなすセンタハウジング42を備える。このセンタハウジング42の前端(一端)にはフロントハウジング43が接合されている。また、ハウジング41において、センタハウジング42の後端(他端)には、隔壁部44を介してリヤハウジング45が接合されている。
【0016】
センタハウジング42の内周面には、センタハウジング42の内側に向けて延びる仕切壁42aが形成されるとともに、この仕切壁42aによってセンタハウジング42内が前後2つの空間に仕切られている。仕切壁42aより後側の空間と隔壁部44との間には回転電機としてのモータ・ジェネレータ50が収容されている。モータ・ジェネレータ50は駆動軸51を有するとともに、この駆動軸51は、仕切壁42a及び隔壁部44に設けられた軸受46によって回転可能に支持されている。駆動軸51には、モータロータ52aが駆動軸51と一体回転可能に固定されている。また、センタハウジング42の内周面には、ステータ52bがモータロータ52aを取り囲むように固定されている。そして、モータ・ジェネレータ50は、ステータ52bのコイル52cへの給電によりモータロータ52aを回転させる電動機としての機能と、モータロータ52aが回転されることでステータ52bのコイル52cに電力を生じさせる発電機としての機能とを併せ持つ。
【0017】
図1に示すように、モータ・ジェネレータ50にはインバータ54を介してバッテリ55が接続され、モータ・ジェネレータ50で生じた電力はインバータ54を介してバッテリ55に蓄えられるようになっている。また、バッテリ55に蓄電された電力は、インバータ54を介してモータ・ジェネレータ50に供給されるようになっている。そして、本実施形態では、インバータ54は、モータ・ジェネレータ50の回転数を検出する回転数検出手段を構成している。
【0018】
インバータ54には、複合流体機械40を全般に亘って制御する制御手段としての制御部56が接続されている。また、制御部56は、記憶手段(図示せず)に記憶された所定のプログラムデータ及び各種データに従って各種の処理を実行するようになっている。制御部56は、インバータ54からの検出信号に基づきモータ・ジェネレータ50の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定するようになっている。よって、本実施形態では、制御部56が、インバータ54の検出結果に基づきモータ・ジェネレータ50の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定する回転数判定手段を構成している。
【0019】
図2に示すように、センタハウジング42内において、仕切壁42aより前側の空間内には支持ブロック42bが固設されている。仕切壁42aより前側の空間内には、圧縮機部60の圧縮機軸47が支持ブロック42bに設けられた軸受48によって回転可能に支持されるとともに、この圧縮機軸47は駆動軸51と同軸上に配置されている。駆動軸51において、圧縮機軸47と対向する端部には、第1クラッチ板49aが固定されるとともに、圧縮機軸47において駆動軸51と対向する端部には、第2クラッチ板49bが固定されている。
【0020】
そして、制御部56による電磁コイル49cへの給電により第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを吸着させることで、駆動軸51と圧縮機軸47とを接続可能になっている。逆に、制御部56による電磁コイル49cへの給電の停止により第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを離間させることで、駆動軸51と圧縮機軸47とを切断可能になっている。よって、第1クラッチ板49aと、第2クラッチ板49bと、電磁コイル49cとから、モータ・ジェネレータ50と圧縮機部60とを接続状態又は切断状態に切り替える切替手段Cが構成されている。また、電磁コイル49cへの給電が制御部56により制御されることによって、切替手段Cの駆動が制御されるようになっている。
【0021】
複合流体機械40において、センタハウジング42内における仕切壁42aより前側の空間と、フロントハウジング43との間には、スクロール型の圧縮機部60が設けられている。圧縮機軸47の前端には、圧縮機軸47の中心軸に対して偏心した位置に偏心軸61が設けられるとともに、偏心軸61は圧縮機軸47の回転により圧縮機軸47の中心軸の周りを公転するようになっている。偏心軸61にはブッシュ62が固定されるとともに、ブッシュ62は偏心軸61と共に中心軸の周りを公転するようになっている。このブッシュ62には軸受装置63を介して可動スクロール64が回転可能に支持されるとともに、カウンタウェイト65が固定されている。
【0022】
可動スクロール64は、軸受装置63に支持された円盤状をなす可動側端板64aと、この可動側端板64aから突設された渦巻状の可動側渦巻壁64bとからなる。また、センタハウジング42内には固定スクロール67が可動スクロール64と対向するように固設されている。固定スクロール67は、円盤状をなす固定側端板67aと、この固定側端板67aから可動スクロール64に向けて突設された渦巻状の固定側渦巻壁67bとを一体に備えている。そして、可動スクロール64の可動側渦巻壁64bと、固定スクロール67の固定側渦巻壁67bとは互いに噛み合わされて容積変更可能な作動室68を区画する。
【0023】
また、固定スクロール67における固定側端板67aの中央部には吐出口67cが形成されるとともに、この吐出口67cは固定側端板67aに設けられた吐出弁69により開閉可能になっている。固定側端板67aとフロントハウジング43との間には、吐出圧領域としての吐出チャンバ70が区画されるとともに、この吐出チャンバ70には吐出口67cを介して圧縮後の作動室68に連通している。また、フロントハウジング43には、吐出チャンバ70に連通する吐出ポート43aが形成されている。
【0024】
さらに、固定スクロール67の内周面と、可動スクロール64における可動側渦巻壁64bの最外周面との間には、吸入圧領域としての吸入チャンバSが区画形成されるとともに、フロントハウジング43には吸入チャンバSに連通する吸入ポート(図示せず)が形成されている。図1に示すように、複合流体機械40は、圧縮機部60における吐出チャンバ70と、吸入チャンバSとの差圧を検出する圧力センサ66を備えている。この圧力センサ66は、制御部56に接続されており、圧力センサ66の検出信号が制御部56に入力されるようになっている。そして、この圧力センサ66は差圧検出手段を構成している。
【0025】
図2に示すように、リヤハウジング45及びセンタハウジング42の後側には、隔壁部44に対向するように第1サイドプレート71が固設されるとともに、第2サイドプレート72が第1サイドプレート71と対向するように間隔を空けて固設されている。そして、駆動軸51は、隔壁部44、第1サイドプレート71及び第2サイドプレート72を貫通している。また、隔壁部44と第1サイドプレート71との間にはギヤポンプ75が設けられている。
【0026】
隔壁部44とリヤハウジング45とによって区画された空間内には膨張機部85が設けられている。リヤハウジング45において、第1サイドプレート71と第2サイドプレート72の間には筒状をなすシリンダブロック77が収容されている。シリンダブロック77内において、駆動軸51には円筒状をなすロータ79が駆動軸51に一体回転可能に止着されるとともに、ロータ79の外周面には、ロータ79の軸方向全体に亘って延びるベーン80が出没可能に収容されている。そして、駆動軸51の回転に伴うロータ79の回転によってベーン80の先端面がシリンダブロック77の内周面に接触すると、ロータ79の外周面と、シリンダブロック77の内周面と、隣り合うベーン80と、第1及び第2サイドプレート71,72との間に作動室81が区画されるようになっている。
【0027】
また、膨張機部85において、リヤハウジング45と第2サイドプレート72との間には吐出空間86が区画されるとともに、リヤハウジング45には吐出空間86に連通する吐出ポート87が形成されている。また、膨張機部85において、リヤハウジング45には作動室81に連通する吸入ポート(図示せず)が形成されている。
【0028】
次に、上記複合流体機械40を備えた車両用排熱回収システム11におけるランキンサイクル20及び冷凍サイクル30について説明する。図1に示すように、冷凍サイクル30は、複合流体機械40における圧縮機部60、凝縮器34、膨張弁39、及び、蒸発器35が環状に接続されて形成されている。圧縮機部60の吐出ポート43aには圧縮側吐出流路32を介して凝縮器34が接続されている。そして、圧縮機部60で高温高圧に圧縮され吐出チャンバ70へ吐出された冷媒は圧縮側吐出流路32を介して凝縮器34に導入され、凝縮器34で冷却される。凝縮器34の吐出側には流路33を介して蒸発器35が接続されるとともに、流路33上には膨張弁39が設けられている。そして、膨張弁39は、凝縮器34で冷却された冷媒を減圧膨張させ、蒸発器35は膨張弁39によって減圧された冷媒を蒸発させる。
【0029】
また、蒸発器35の吐出側には、圧縮側吸入流路31を介して圧縮機部60の吸入ポートが接続されるとともに圧縮側吸入流路31上には逆止弁37が設けられ、逆止弁37は蒸発器35側から圧縮機部60側のみに冷媒が流れることを許容する。そして、冷媒は、圧縮機部60で圧縮された後、凝縮器34、膨張弁39、蒸発器35、及び逆止弁37を通過して圧縮機部60に吸入され、冷凍サイクル30を循環するようになっている。
【0030】
次に、ランキンサイクル20を説明すると、ギヤポンプ75の吐出側には第1流路21aを介して第1ボイラ26の吸熱器26aが接続されている。第1ボイラ26は、吸熱器26aに加え放熱器26bを備える。この放熱器26bは、エンジン12に接続された冷却水循環経路13上に設けられている。冷却水循環経路13上にはラジエータ13aが設けられている。そして、車両のエンジン12を冷却した冷却水(高温流体)は、冷却水循環経路13を循環して放熱器26b及びラジエータ13aで放熱する。
【0031】
第1ボイラ26において、吸熱器26aの吐出側には接続通路21cを介して第2ボイラ27の吸熱器27aが接続されている。第2ボイラ27は、吸熱器27aに加え放熱器27bを備える。この放熱器27bは、エンジン12に接続された排気通路14上に設けられている。そして、エンジン12からの排気は、放熱器27bで放熱した後、マフラ15から排気される。よって、ギヤポンプ75から吐出された冷媒は、第1及び第2ボイラ26,27の吸熱器26a,27aと放熱器26b,27bとの間での熱交換によりエンジン12からの排熱によって加熱される。
【0032】
第2ボイラ27において吸熱器27aの吐出側には、膨張側吸入流路22aを介して膨張機部85における吸入ポートが接続され、第1及び第2ボイラ26,27で加熱された高温の冷媒は膨張側吸入流路22aを介して膨張機部85に導入されるようになっている。そして、膨張機部85で膨張した低温低圧の冷媒は、吐出空間86に吐出されるようになっている。
【0033】
また、膨張機部85の吐出ポート87には、膨張側吐出流路22bを介して凝縮器23が接続されている。そして、膨張機部85で膨張した低温低圧の冷媒は、吐出ポートから膨張側吐出流路22bを介して凝縮器23へ吐出されるようになっている。凝縮器23の吐出側には第2流路21bを介してギヤポンプ75の冷媒導入側が接続されている。
【0034】
そして、ランキンサイクル20内の冷媒は、ギヤポンプ75のポンプ作用により、膨張機部85、凝縮器23、ギヤポンプ75、第1ボイラ26、及び第2ボイラ27を通過してランキンサイクル20を循環するようになっている。
【0035】
次に、制御部56による複合流体機械40の制御について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、車両用排熱回収システム11は、圧縮機部60の駆動要求がない場合とする。また、複合流体機械40は、切替手段Cが切断状態とされ、圧縮機部60の駆動が停止されるとともに、エンジン12の排熱量が得られ、ランキンサイクル20における冷媒の膨張により膨張機部85が機械的エネルギー(駆動力)を出力しモータ・ジェネレータ50が回転している状況とする。また、モータ・ジェネレータ50には、モータ・ジェネレータ50を回転させるための給電がなされていないものとする。
【0036】
さて、エアコンスイッチがONされ、制御部56が、切替手段Cを接続状態に切り替える旨の要求を受領すると(ステップS1)、制御部56はモータ・ジェネレータ50の回転数を、膨張機部85が駆動していたときの回転数より減少させる(ステップS2)。
【0037】
次に、制御部56は、インバータ54からの検出信号に基づき、モータ・ジェネレータ50の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定する(ステップS3)。なお、この所定回転数とは、切替手段Cにおいて、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続した際に、モータ・ジェネレータ50に脱調が発生しないと保証できるモータ・ジェネレータ50の回転数のうち最も高い値である。また、脱調とは、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続した際に、その接続に起因してモータ・ジェネレータ50の駆動軸51に負荷がかかることによりモータ・ジェネレータ50の回転数が減少して、モータ・ジェネレータ50への給電により生成される制御パルスとの同期がとれなくなる現象のことである。
【0038】
そして、ステップS3の判定結果が否定判定である場合、制御部56は、ステップS2に戻り、モータ・ジェネレータ50の回転数をさらに減少させる。ステップS3の判定結果が肯定判定である場合、制御部56は、切替手段Cの電磁コイル49cに給電し、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続状態とし(ステップS4)、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態に切り替える。次に、制御部56は、モータ・ジェネレータ50に給電し、モータ・ジェネレータ50の回転数を、エアコン側の要求を満たす回転数及び接続前の回転数のうち多い方にまで回転数を上昇させる(ステップS5)。
【0039】
次に、車両用排熱回収システム11の作用について説明する。なお、複合流体機械40は、圧縮機部60の駆動が停止されている状況とする。
さて、車両のエンジン12が駆動されると、第1ボイラ26及び第2ボイラ27において、吸熱器26a,27aと放熱器26b,27bとの間での熱交換により、ランキンサイクル20における冷媒がエンジン12からの排熱によって加熱される。加熱後の高圧の冷媒は、膨張側吸入流路22aを介して吸入ポートから膨張機部85に導入されて膨張し、この膨張により膨張機部85が機械的エネルギー(駆動力)を出力する。すなわち、この駆動力によってモータ・ジェネレータ50の駆動軸51が回転されるとともにギヤポンプ75が駆動される。
【0040】
このとき、エンジン12からの排熱量が大きく、膨張機部85からの出力により、駆動軸51が予め設定された要求回転数を越えて回転する場合には、モータ・ジェネレータ50を発電機として機能させて駆動軸51の回転数を抑えるようにする。そして、要求回転数を越える出力は電力に変換され、インバータ54を介してバッテリ55に充電される。
【0041】
膨張を終えて圧力が低下した冷媒は、吐出空間86に吐出された後、吐出ポート87を介して膨張側吐出流路22bへ吐出される。膨張側吐出流路22bへ吐出された冷媒は、凝縮器23を通過し、第2流路21bを介してギヤポンプ75に導入される。そして、膨張機部85からの出力により駆動されるギヤポンプ75により、冷媒は第1ボイラ26及び第2ボイラ27へ供給される。したがって、エンジン12が駆動されている間は、冷媒はランキンサイクル20を循環する。
【0042】
さて、エアコンスイッチがONされ、制御部56が切替手段Cを接続状態にする旨の要求を受領するとモータ・ジェネレータ50の回転数を、膨張機部85からの出力によって駆動されていたときの回転数より減少させる。その後、制御部56は、減少させたモータ・ジェネレータ50の回転数が、脱調を発生させないように予め設定された所定回転数より小さい場合には、電磁コイル49cに給電し、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続し、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態とする。一方、制御部56は、減少させたモータ・ジェネレータ50の回転数が、脱調を発生させないように予め設定された所定回転数より大きい場合には、モータ・ジェネレータ50の回転数をさらに減少させる。そして、制御部56は、モータ・ジェネレータ50の回転数が所定回転数より小さくなると、電磁コイル49cに給電し、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続し、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態とする。
【0043】
その接続後、制御部56は、モータ・ジェネレータ50に給電し、モータ・ジェネレータ50の回転数を、エアコン側の要求を満たす回転数及び接続前の回転数のうち多い方にまで回転数を上昇させる。すると、モータ・ジェネレータ50の駆動力によって駆動軸51が回転されるとともに圧縮機軸47が回転し圧縮機部60が駆動される。すなわち、圧縮機部60が駆動される際、必要とされる動力の一部がモータ・ジェネレータ50により負担される。その後、膨張機部85からの出力により、圧縮機部60がエアコン要求を満たすための回転数又は接続前の回転数で回転可能になると、制御部56はモータ・ジェネレータ50への給電を停止し、その後、圧縮機部60は膨張機部85からの出力により駆動される。
【0044】
そして、圧縮機部60で圧縮された冷媒は、所定の圧力まで圧縮されると吐出口67cから吐出チャンバ70に吐出される。さらに、圧縮された冷媒は、凝縮器34、膨張弁39、蒸発器、及び逆止弁37を経由して圧縮側吸入流路31から圧縮機部60に吸入される。
【0045】
エアコンスイッチがOFFされる、又はエアコンによる圧縮機部60の駆動要求がない場合は、制御部56は電磁コイル49cへの給電を停止し、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとの接続状態が切断状態となる。すると、圧縮機部60の駆動が停止される。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)膨張機部85のみが駆動され、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とが切断状態にある状況で、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態にする旨の要求があると、制御部56はモータ・ジェネレータ50の回転数を減少させる。そして、モータ・ジェネレータ50の回転数が、脱調を発生させないように予め設定された所定回転数より小さくなると、切替手段Cによりモータ・ジェネレータ50と圧縮機部60とを接続状態とする。このため、接続状態としたときに、その接続に伴い駆動軸51に負荷がかかり、その負荷によってモータ・ジェネレータ50の回転数が低下してしまうことを防止することができる。その結果として、モータ・ジェネレータ50の回転数の低下による脱調の発生を防止することができる。よって、脱調時に生じる過電流に対応できるように、インバータ54に容量の大きい電気素子を用いる必要がなく、複合流体機械40の製造コストを抑えることができる。
【0047】
(2)制御部56は、モータ・ジェネレータ50の回転数を減少させた後に、インバータ54の検出結果に基づきモータ・ジェネレータ50の回転数が所定回転数より小さいか否かを判定し、モータ・ジェネレータ50の回転数が所定回転数より小さくなるまで、モータ・ジェネレータ50の回転数を減少させ続ける。このため、最終的には、モータ・ジェネレータ50の回転数を所定回転数より小さくすることができ、切替手段Cにより接続状態に切り替えたときにモータ・ジェネレータ50に脱調が発生することを確実に防止することができる。
【0048】
(3)制御部56は、モータ・ジェネレータ50の回転数が所定回転数より小さくなり、切替手段Cにより接続状態とした後、圧縮機部60がエアコン要求を満たすための回転数又は接続前の回転数で回転可能になるように、モータ・ジェネレータ50に給電する。このため、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とが接続された後は、圧縮機部60によってエアコン要求に適正に応じることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図4にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0050】
さて、図4のフローチャートに示すように、エアコンスイッチがONされ、制御部56が切替手段Cを接続状態に切り替える旨の要求を受領すると(ステップS11)、制御部56は、圧力センサ66からの検出信号に基づき、圧縮機部60における差圧(吐出圧−吸入圧)が予め設定された所定差圧より大きいか否かを判定する(ステップS12)。なお、この差圧が大きければ大きい程、圧縮機部60の回転数が増加する。そして、所定差圧は、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続した瞬間に、モータ・ジェネレータ50に脱調が生じないと保証できる圧縮機部60の回転数のうち最も高い値のことであり、低回転時の回転数のことである。
【0051】
ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、制御部56はモータ・ジェネレータ50の回転数を、膨張機部85が駆動していたときの回転数より減少させる(ステップS13)。次に、制御部56は、インバータ54からの検出信号に基づき、モータ・ジェネレータ50の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定する(ステップS14)。なお、この所定回転数とは、切替手段Cにおいて、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続した際に、モータ・ジェネレータ50に脱調が発生しないと保証できるモータ・ジェネレータ50の回転数のうち最も高い値である。
【0052】
そして、ステップS14の判定結果が否定判定である場合、制御部56は、ステップS13に戻り、モータ・ジェネレータ50の回転数をさらに減少させる。ステップS14の判定結果が肯定判定である場合、制御部56は、切替手段Cの電磁コイル49cに給電し、第1クラッチ板49aと第2クラッチ板49bとを接続し(ステップS15)、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態に切り替える。
【0053】
なお、ステップS12の判定結果が否定判定である場合、制御部56は、ステップS15に移行する。次に、制御部56は、モータ・ジェネレータ50に給電し、モータ・ジェネレータ50の回転数を、エアコン側の要求を満たす回転数及び接続前の回転数のうち多い方にまで回転数を上昇させる(ステップS16)。
【0054】
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(4)膨張機部85のみが駆動され、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とが切断状態にある状況で、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態にする旨の要求があると、制御部56は圧縮機部60の差圧が所定差圧より大きいか否かを判定し、大きい場合にモータ・ジェネレータ50の回転数を減少させる。圧縮機部60の差圧が所定差圧より大きい場合は、モータ・ジェネレータ50の回転数を大きくする必要がある場合であるため、モータ・ジェネレータ50の回転数を一旦減少させ、圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50との回転数の差を小さくすることで、接続状態に切り替えられた際の負荷を小さくし脱調の発生を防止することができる。一方、圧縮機部60の差圧が所定差圧より小さい場合は、モータ・ジェネレータ50の回転数が大きくないため、そのまま切替手段Cにより接続状態に切り替えても負荷が小さく脱調が発生しない。よって、脱調を防止しながら切替手段Cにより圧縮機部60とモータ・ジェネレータ50とを接続状態とする際に、モータ・ジェネレータ50の回転数を変動させる機会を少なくして、騒音や振動の発生を抑えることができる。
【0055】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、ポンプはギヤポンプ75の他の形態のポンプとしてもよい。
○ 実施形態において、圧縮機部60はスクロール型とは他の形式の圧縮機構であってもよい。
【0056】
○ 実施形態において、膨張機部85はベーン式とは他の形式の膨張機構であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0057】
(イ)前記回転数検出手段はインバータである請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の複合流体機械。
(ロ)ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、発電機又は電動機として機能する回転電機と、前記回転電機と前記圧縮機部とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段と、を備えた複合流体機械の制御方法であって、
前記機械的エネルギーにより前記回転電機が回転するとともに、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とが切断状態にある状況において、前記圧縮機部と前記回転電機と接続状態とする旨の要求を受領すると、前記回転電機の回転数が予め設定された所定回転数より小さい場合に、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とを前記接続状態に切り替えることを特徴とする複合流体機械の制御方法。
【符号の説明】
【0058】
C…切替手段、40…複合流体機械、50…回転電機としてのモータ・ジェネレータ、54…回転数検出手段としてのインバータ、56…回転数判定手段及び制御手段としての制御部、60…圧縮機部、66…差圧検出手段としての圧力センサ、85…膨張機部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、
冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、
発電機又は電動機として機能する回転電機と、
前記回転電機と前記圧縮機部とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段と、
を備えた複合流体機械であって、
前記回転電機の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数検出手段の検出結果に基づき前記回転電機の回転数が予め設定された所定回転数より小さいか否かを判定する回転数判定手段と、
前記切替手段及び回転電機の駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記機械的エネルギーにより前記回転電機が回転するとともに、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とが切断状態にある状況において、前記制御手段は、前記圧縮機部と前記回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すると、前記回転数判定手段の判定結果が肯定判定の場合に、前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とを前記接続状態に切り替えることを特徴とする複合流体機械。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転数判定手段の判定結果が否定判定の場合には前記回転電機の回転数を減少させ、その後、前記回転数判定手段による前記判定が行われ、前記所定回転数より小さくなる迄、前記回転数を減少させる制御及び前記回転数判定手段による判定が繰り返される請求項1に記載の複合流体機械。
【請求項3】
前記圧縮機部の吐出圧領域と吸入圧領域との差圧を検出する差圧検出手段を備え、前記制御手段は、前記圧縮機部と前記回転電機とを接続状態とする旨の要求を受領すると、前記差圧検出手段の検出結果に基づき前記差圧が所定差圧より大きい場合には前記回転電機の回転数を減少させ、その後、前記回転数判定手段の判定が行われる一方で、前記差圧が所定差圧より小さい場合には前記回転電機の回転数を減少させることなく前記切替手段により前記圧縮機部と前記回転電機とを前記接続状態に切り替える請求項1又は請求項2に記載の複合流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80447(P2011−80447A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235233(P2009−235233)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】