説明

複合粒子

【課題】 酸化亜鉛の表面活性を高度に抑制した複合粒子及びそれを含有する化粧料の提供。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子を、酸及びアルカリから選ばれる少なくとも1種で処理して得られる複合粒子、及びこの複合粒子を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛の表面活性を大幅に抑制したポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む複合粒子及びそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層が一部、破壊されていることによって、地表に到達する紫外線量の増加が問題にされており、従来に増して、効果の高い日焼け止め化粧料が要望されている。
【0003】
酸化亜鉛は、本来、380nm付近に鋭い吸収端を有するので、A領域の紫外線に対する遮蔽効果が高いが、更に、その後になって、超微粒子酸化亜鉛が開発され、この超微粒子酸化亜鉛は、B領域からA領域の広い波長域にわたる紫外線を遮蔽するのみならず、超微粒子ルチル型酸化チタンが屈折率2.7を有するところ、超微粒子酸化亜鉛は屈折率が2.0と小さく、透明性に優れているので、紫外線遮蔽剤として注目されている。
【0004】
他方、酸化亜鉛は、元来、水に微量溶解する性質があり、その溶出亜鉛イオンによる生理作用が化粧品分野では古くより収斂剤として利用されている。更に、脂肪酸と反応して金属石鹸を生成する化学反応性は、皮膚から分泌される皮脂を吸収して、化粧持ちをよくしたり、また、体臭成分を吸収するデオドラント効果として利用されることもある。
【0005】
一方、上述した酸化亜鉛の水への溶解性と化学反応性は、化粧料の配合設計上、種々の不都合を来している。即ち、化粧料の最も重要な原料成分は、人体の主要な構成成分でもある水であるが、超微粒子酸化亜鉛を含む化粧料の場合、溶出亜鉛イオンが他成分と反応するために、水の比率を高めることができず、処方の自由度が狭められている。例えば、従来の超微粒子酸化亜鉛を含む日焼け止め化粧料の場合、水の比率を50%以上にすることは困難であり、乳化製品の殆どは、油中水型(W/O)に限定されている。こうした乳化製品は、オイルベースであるためにさっぱりした使用感が得られにくい。
【0006】
更に、超微粒子酸化亜鉛の化粧料への使用は、超微粒子酸化亜鉛が化粧品の他の配合成分である種々の油剤、香料、色料、有機紫外線吸収剤、水溶性高分子等と反応して、化粧料の粘度の増加や低減、異臭の発生、変色等を起こす問題からも、処方の自由度を狭めている。
【0007】
このような問題点を解決するために、例えば、特許文献1には、酸化亜鉛粒子の表面にケイ素酸化物からなる高密度の被覆層を設けることによって、純水への溶解度を抑制する技術が開示されているが、この特許文献の実施例中にも示されているとおり室温7日間保存品においてわずかながら粘度の低減が見られる。
【0008】
また、特許文献2には、酸化亜鉛を分散させたモノマー相を懸濁重合もしくは乳化重合法で粒子化することで、他成分のビヒクルへの作用を抑制する技術が開示されている。一般的に懸濁又は乳化重合系で使用されるモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられるが、得られるポリマーの耐薬品性はどれも乏しい。例えば特許文献2の実施例中で用いられているメタクリル酸メチルはエステル結合を有するため、耐薬品性は十分とはいえない。また、一般的に化粧料に配合されるエタノールや油剤に対しても膨潤性を示すため、実質的に酸化亜鉛とビヒクルなど他の成分との反応を十分に抑制するには至っていない。
【特許文献1】特開平11−302015号公報
【特許文献2】特開平8−53568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、酸化亜鉛における上述した種々の問題、中でも、日焼け止め化粧料に用いるための超微粒子酸化亜鉛における問題を解決し、酸化亜鉛の表面活性を高度に抑制した複合粒子及びそれを含有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子(以下処理前粒子という)を、酸及びアルカリから選ばれる少なくとも1種で処理して得られる複合粒子、及びこの複合粒子を含有する化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合粒子は、水への酸化亜鉛の溶解度が抑制され、該複合粒子を含み長期間良好な配合安定性を有する化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリブタジエン等のオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体等のオレフィン共重合体等が挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素原子を有するポリオレフィンも用いることができる。これらのポリオレフィン系樹脂の中では、ポリエチレンが特に好ましい。ポリエチレンとしては、酸化亜鉛の分散性を良くする観点から、酸変性物が有効である。
【0013】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、溶融粘度を好ましくは600mPa・s以下にする観点から、分子量が500〜20000であるものが好ましく、1000〜10000であるものが更に好ましい。ポリオレフィン系樹脂の分子量は、粘度法により求めることが出来る。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂の融点(又は軟化温度)は、複合粒子の製造しやすさの観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、製造の容易さから、200℃以下が好ましい。ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K0064:1992により測定できる。
【0015】
[酸化亜鉛]
本発明における酸化亜鉛は、粒径0.1μm以下の酸化亜鉛が、紫外線遮蔽性を得るために好ましい。また、酸化亜鉛表面を予め疎水化処理した酸化亜鉛を用いると、ポリオレフィン系樹脂との混練性を高めることが出来るため好ましい。酸化亜鉛の表面処理方法としては、オルガノポリシロキサンによる表面処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0016】
[処理前粒子]
本発明の処理前粒子は、酸化亜鉛とポリオレフィン系樹脂を主成分とするもので、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分、例えば無機及び有機顔料、有機染料等の色材、界面活性剤、シリコーン化合物あるいは酸化防止剤等を含有しても良い。
【0017】
処理前粒子中のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛の割合は、後述する製法への適性と紫外線遮蔽効果の観点から、ポリオレフィン系樹脂/酸化亜鉛(重量比)が、99/1〜30/70が好ましく、95/5〜50/50が更に好ましく、80/20〜60/40が特に好ましい。
【0018】
本発明の処理前粒子の体積平均粒径は、ざらつき感やきしみ感を抑制する観点から、0.5〜30μmが好ましく、2〜10μmが更に好ましい。
【0019】
ここで体積平均粒径は、コールターカウンター(装置名:ベックマンコールター社製,LS−230)を用いて、エタノール中で測定した値である。
【0020】
[処理前粒子の製法]
本発明の処理前粒子の製法としては、噴霧冷却法、噴霧乾燥法、ハイブリダイゼーション法、粉砕法、溶融分散法等が挙げられる。ここで溶融分散法とは、ポリオレフィン系樹脂等の分散質と酸化亜鉛を、これと相溶しない分散媒中で、分散質の融点(又は軟化点)以上の温度環境において、機械的剪断力や分散剤の働きを利用して希望する粒径にまで分散した後、分散質の融点(又は軟化点)以下の温度にまで冷却し、固体の粒子として得る方法である。例えば、分散質としてポリエチレン、分散媒として水又はグリセリンが挙げられる。これらの操作は高圧下で行っても良い。
【0021】
これらの製法の中では噴霧冷却法、特に溶融噴霧冷却法が好ましい。溶融噴霧冷却法は、ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を、ポリオレフィン系樹脂の軟化温度(又は融点)以上の温度で混合した後、得られた熱溶融混練物を冷媒中に噴霧して冷却固化する方法である。
【0022】
[酸及び/又はアルカリによる処理]
本発明においては、上記の様な処理前粒子を酸及びアルカリから選ばれる少なくとも1種で処理する。このような処理により複合粒子の表面に露出している酸化亜鉛粒子、又は複合粒子の表面近傍に存在し溶出しやすい環境にある酸化亜鉛粒子をあらかじめ除去することができ、該複合粒子を配合した化粧料に高い安定性を与えることができる。
【0023】
本発明で使用する酸としては、無機酸及び有機酸が用いられる。無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、グルコン酸等の1価の有機酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸等の2価の有機酸、クエン酸、トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン)等の3価の有機酸等が例示される。有機酸においては、分子量の小さい酸は浸透性が高く複合粒子内部の酸化亜鉛をも溶解する傾向がある。従って、分子量が100以上、特に100〜1000の有機酸がより好ましく用いられる。
【0024】
本発明で使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0025】
これら酸及びアルカリの中では酸が好ましく、無機酸又は分子量100以上の有機酸が更に好ましい。
【0026】
酸及び/又はアルカリによる処理は、処理前粒子と酸及び/又はアルカリを適当な方法で接触させることで実施しうるが、具体的には処理前粒子を酸及び/又はアルカリ溶液に分散させ、その後、酸及び/又はアルカリ溶液から複合粒子を分離することで行うことができる。酸及び/又はアルカリ溶液は水溶液でもよいが、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合した溶液を用いることで複合粒子の表面と液との親和性を高めることができ、より効果的に処理を行うことができる。水と有機溶媒の混合割合は重量比で、水:有機溶媒=100:0〜20:80が好ましい。
【0027】
処理に用いられる酸及び/又はアルカリの量は、処理前粒子中の酸化亜鉛に対し0.1〜2モル倍が適当である。処理溶液中の酸及び/又はアルカリの濃度は、適宜調節することができるが、0.01〜6mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましい。処理時間は、粒子表面に近い部分の酸化亜鉛をより選択的に溶解させるという観点より、短時間であることが望ましく、1分〜10時間が好ましく、10分〜5時間がより好ましい。処理温度は、粒子が融解又は凝集する温度以下であれば特に限定されるものではなく、処理時間と酸化亜鉛の除去量とから適宜設定できる。
【0028】
処理における酸化亜鉛の除去量は、処理前粒子に含有されていた酸化亜鉛の1〜50重量%が除去される条件が好適である。酸化亜鉛除去率は、処理前後の複合粒子の強熱残分より測定することができるが、必要に応じて、ろ液のICP発光分析等、他の手法も利用することができる。
【0029】
処理後の複合粒子中の酸化亜鉛の含有率は1〜70重量%が好ましく、5〜50重量%が更に好ましく、10〜40重量%が特に好ましい。
【0030】
[化粧料]
本発明の化粧料中、本発明に係わる複合粒子の含有量は、その化粧料の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、0.1〜50重量%、特に1〜30重量%が好ましい。
【0031】
本発明の化粧料の形態は特に限定されず、油中水型のみならず水中油型の乳化化粧料、油性化粧料、スプレー化粧料、スティック状化粧料、水性化粧料、シート状化粧料、ゲル状化粧料等として好適に用いることができる。また本発明の化粧料の種類も特に限定されず、例えばパック、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、ネイルエナメル、ローション、コールドクリーム、ハンドクリーム、皮膚洗浄剤、柔軟化化粧料、栄養化粧料、収斂化粧料、美白化粧料、シワ改善化粧料、老化防止化粧料、洗浄用化粧料、制汗剤、デオドラント剤等の皮膚化粧料;シャンプー、リンス、トリートメント、整髪剤、養毛剤等の毛髪化粧料が挙げられ、紫外線遮蔽効果、皮膚隠蔽効果を発揮させ得る化粧料が好ましく、メイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、下地化粧料として用いられるものが更に好ましい。
【0032】
本発明の化粧料は、アルコールを含有することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の1価又は多価アルコールが挙げられ、中でも1価アルコール、特にエタノールが好ましい。アルコールの配合量は、本発明の化粧料中5〜30重量%が好ましく、また本発明に係わる複合粒子の1〜50重量倍とすることが特に好ましい。
【0033】
本発明の化粧料には、更に化粧料成分として一般に使用されているその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で、上記化粧料の形態、種類等に応じて適宜配合することができる。
【0034】
かかる化粧料成分としては、例えばマイカ、タルク、セリサイト、カオリン、ナイロンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン、硫酸バリウム等の体質顔料;酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄等の固形顔料;これら粉体をシリコーン処理、金属石鹸処理、N−アシルグルタミン酸処理等の表面疎水化処理した粉体;固体状又は液状のパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、オゾケライト、モンタンろう等の炭化水素類;オリーブ、地ろう、カルナウバろう、ラノリン、鯨ろう等の植物性油脂、動物性油脂又はろう;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルミリスチン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、ブチルステアリン酸エステル等の脂肪酸又はそのエステル類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ヘキシルドデシルアルコール等の高級アルコール類;カチオン化セルロース、カルボキシベタイン型ポリマー、カチオン化シリコーン等の吸着又は増粘剤;グリコール、ソルビトール等の保湿作用を有する多価アルコール類;ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、グリセリルエーテル変性シリコーン等のシリコーン油用の乳化剤;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、トラガント、寒天、ゼラチン等の増粘剤;アルミニウムヒドロキシクロリド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムフェノールスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等の制汗剤;3,4,4−トリクロロカルバアニリド(TCC)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、サリチル酸、ヘキサクロロフェン等の殺菌剤;ジャ香、スカトール、レモンオイル、ラベンダーオイル、アブソリュート、ジャスミン、バニリン、ベンゾイン、ベンジルアセテート、メントール等のマスキング剤、その他、乳化安定剤、キレート剤、紫外線防御剤、pH調整剤、防腐剤、色素類、美白剤、鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤等の薬効成分;水;界面活性剤;W/O又はO/W型乳化剤、香料等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
例中の「%」、「部」は、特に記載がない限り、それぞれ「重量%」、「重量部」である。また、以下の例において、粒子中の酸化亜鉛含有量は次の方法で測定した。
【0036】
<粒子中の酸化亜鉛含有量測定法>
粒子を800℃、2時間処理して得られた強熱残分を測定し、この強熱残分を粒子内の酸化亜鉛量として、以下の式により、粒子中の酸化亜鉛含有量を測定した。
【0037】
X(%)=[Y/Z]×100
ここで
X:粒子中の酸化亜鉛含有量(%)
Y:強熱残分(g)
Z:粒子の重量(g)
製造例1
ポリエチレン(分子量1300、商品名:C105/シューマン・サゾール社)と酸化亜鉛(ポリシロキサン処理酸化亜鉛、平均一次粒径0.02μm、商品名:ファイネックス50S−LP2/堺化学)を、重量比率70:30で混合し、エクストルーダーPCM30((株)池貝製)を用いて、スクリュー回転数200RPM、シリンダー温度30℃−60℃−100℃−100℃−100℃−100℃−100℃、フィード10kg/時間にて混練した。得られた混練物を、溶融噴霧冷却造粒装置を用い、下記条件で粒子化し、平均粒径3.4μmの粒子Aを得た。強熱残分により測定した粒子中の酸化亜鉛含有量は30%であった。
【0038】
<造粒装置の条件>
ノズル:4流体ノズル ストレートタイプ(藤崎電機(株)製)
混練物温度:150℃
混練物送液量:5mL/分
アシストエア温度:500℃
アシストエア流量:50L/分
製造例2
ポリエチレンとして、分子量900(商品名:HW−100P/三井化学(株)製)と分子量2000(商品名:HW−220MP/三井化学(株)製)の2種類を用い、ポリエチレンと酸化亜鉛(ポリシロキサン処理酸化亜鉛、平均一次粒径0.02μm、商品名:ファイネックス50S−LP2/堺化学)の重量比率を、HW−100P:HW−220MP:酸化亜鉛=35:35:30とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、平均粒径3.7μmの粒子Bを得た。強熱残分により測定した粒子中の酸化亜鉛含有量は29%であった。
【0039】
実施例1
粒子Aを用い、0.5mol/Lのリン酸溶液(溶媒組成として、水:エタノール=50:50(体積比))を250mL作製し、これに粒子Aを15g混合し、ポリエチレンの容器に入れ、振とう機(ストローク長10cm、100往復/分)で4時間振とうした。
【0040】
振とう後、分液ロートに粒子A分散液と1000mLのイオン交換水を入れ、良く振り混ぜた。粒子Aは液面に浮くので、下層の粒子Aを含まない液を捨て、さらに1000mLのイオン交換水を入れ、また下層の液のみを捨てる、この操作を下層の液のpHがpH試験紙(pH試験紙UNIV、アドバンテック東洋製)で6〜8を示すまで繰り返した。得られた粒子Aの水分散液を3.0μmのメンブランフィルターでろ過し、60℃減圧の環境下で十分に乾燥させ、粒子Aのリン酸処理品を得た。強熱残分により測定した処理後の複合粒子中の酸化亜鉛含有量は17%であった。
【0041】
実施例2
粒子Aを用い、リン酸の代わりに0.5mol/Lのコハク酸溶液(溶媒組成として、水:エタノール=50:50(体積比))を用いた以外は、実施例1と同じ酸処理を行い、粒子Aのコハク酸処理品を得た。強熱残分により測定した処理後の複合粒子中の酸化亜鉛含有量は16%であった。
【0042】
実施例3
粒子Bを用い、実施例1と同じ酸処理を行い、粒子Bのリン酸処理品を得た。強熱残分により測定した処理後の複合粒子中の酸化亜鉛含有量は27%であった。
【0043】
実施例4
粒子Bを用い、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒組成として、水:エタノール=50:50(体積比))を250mL作製し、これに粒子Bを15g混合し、ポリエチレンの容器に入れ、振とう機(ストローク長10cm、100往復/分)で4時間振とうした。
【0044】
振とう後、分液ロートに粒子B分散液と1000mLのイオン交換水を入れ、良く振り混ぜた。粒子Bは液面に浮くので、下層の粒子Bを含まない液を捨て、さらに1000mLのイオン交換水を入れ、また下層の液のみを捨てる、この操作を下層の液のpHがpH試験紙(pH試験紙UNIV、アドバンテック東洋製)で6〜8を示すまで繰り返した。得られた粒子Bの水分散液を3.0μmのメンブランフィルターでろ過し、60℃減圧の環境下で十分に乾燥させ、粒子Bの水酸化ナトリウム処理品を得た。強熱残分により測定した処理後の複合粒子中の酸化亜鉛含有量は28%であった。
【0045】
比較例1
酸化亜鉛含有量が30%である粒子Aを、酸処理を行わずそのまま用いた。
【0046】
比較例2
酸化亜鉛含有量が29%である粒子Bを、酸又はアルカリによる処理を行わずそのまま 用いた。
【0047】
実施例1〜4及び比較例1〜2の粒子について、下記方法で配合安定性試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0048】
<配合安定性試験>
以下の手順で水中油型UVケアジェルを調製した。これを、100mLスクリュー管に入れ、50℃恒温槽に3週間保存し、保存期間の粘度変化を測定した。
【0049】
・水中油型UVケアジェルの調製手順
1)95度合成エタノール(32.5g)、パラメトキシケイ皮酸 2−エチルヘキシル(8.5g)を混合し、これをa液とする。
2)精製水(39.5g)、エデト酸二ナトリウム(0.01g)を混合し、次いで高速インペラー分散機による撹拌下においてカーボポールETD2020(アクリル酸系増粘剤、0.3g)を均一に混合する。これをb液とする。
3)95度合成エタノール(9.0g)、評価粒子(7.0g)を高速インペラー分散機により均一に混合する。これをc液とする。
4)プロペラ撹拌下において、a液、b液、アキュリン22(増粘乳化剤、0.60g)を混合し、次いでc液を徐々に混合する。十分に撹拌し、これをd液とする 。
5)d液をホモミキサー等の分散機を用いて分散し、目視で均一なO/W分散液を調製する。
6)d液に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(0.08g)と精製水(0.5g)の混合液をプロペラ撹拌下で混合し、次いで濃グリセリン(0.5g)を混合する。
【0050】
・水中油型UVケアジェルの組成
95度合成アルコール 41.50%
パラメトキシケイ皮酸 2−エチルヘキシル 8.50
評価粒子 7.00
カーボポールETD2020(BFGoodrich社製) 0.30
アキュリン22(ROHM AND HASS COMPANY) 0.60
化粧用濃グリセリン 0.50
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.08
エデト酸二ナトリウム 0.01
精製水 バランス。
【0051】
・粘度の測定
水中油型UVケアジェルを入れたスクリュー管を、測定前に手で良く振り、25℃に設定した水槽に30分間漬けおいた後、B型粘度計を用いて粘度を測定した。測定条件は、30RPM、4号ローター、1分間とした。配合直後の粘度を100%とした場合の、50℃、3週間保存後の粘度割合を粘度変化率として、下記式により求めた。
【0052】
粘度変化率(%)=(η2/η1)×100
ここで、
η1:UVケアジェルの配合直後の粘度(mPa・s)
η2:UVケアジェルの保存後の粘度(mPa・s)
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、水中油型乳化組成物中では、酸又はアルカリによる処理を行わなかった比較例1及び比較例2の粒子は、酸化亜鉛の溶出が多く、化粧料の粘度低下が著しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子(以下処理前粒子という)を、酸及びアルカリから選ばれる少なくとも1種で処理して得られる複合粒子。
【請求項2】
処理前粒子が溶融噴霧冷却法で製造される粒子である、請求項1記載の複合粒子。
【請求項3】
処理前粒子の平均粒径が0.5〜30μmである、請求項1又は2記載の複合粒子。
【請求項4】
酸及びアルカリから選ばれる少なくとも1種が、無機酸又は分子量100以上の有機酸である、請求項1〜3いずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
複合粒子中の酸化亜鉛の含有率が1〜70重量%である、請求項1〜4いずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の複合粒子を含有する化粧料。

【公開番号】特開2006−124656(P2006−124656A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264790(P2005−264790)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】