説明

複合粘土鉱物粉末及びそれを配合した化粧料

【課題】 高湿度条件下でも吸湿による使用感触の変化や製品表面の膨潤がなく、製造時の収率がよく、なめらかな使用感触を与え、皮膚への保湿効果を発揮する複合粘土鉱物粉末、およびそれを配合した化粧料を提供すること。

【解決手段】
水膨潤性粘土鉱物と、特定のアルキレンオキシド誘導体、具体的にはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルとを含有とを水中に分散・溶解させた後に噴霧乾燥して得る。また、こうして得られた複合粘土鉱物粉末を化粧料に配合することで解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なめらかな使用感触と皮膚への高い保湿効果を発揮し、収率よく製造できる複合粘土鉱物粉末、さらに詳しくは過湿度条件に置いても使用感触が変化せず、べたつかず保湿効果の高い化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粉末化粧料は肌に対するトリートメント効果が低いという欠点があり、そこで種々の保湿剤を配合する検討がなされている。しかしながら、粉末化粧料に十分な保湿効果を与えるために保湿剤成分を高配合させると、特に過湿度環境下で長時間保存したときに、成形品の硬度の変化量が大きいということが問題となっていた。具体的には保存後の成形品が軟化し、この強度低下により、落下等の衝撃に著しく弱く割れてしまうという不都合が生じていた。また、保存後の成形品表面に水滴が発生したりする等の不具合も発生しており、製品としての品質劣化が問題となっていた。このような問題は、保湿剤が本来高い吸湿性を有していることに起因している。
【0003】
保湿剤を配合した粉末化粧料としては特許文献1〜3が知られている。このうち特許文献1では全粉末量中の特定割合以上の粉末を疎水化することにより保湿剤を安定に配合している。特許文献2ではトレハロースを配合することにより、肌へのしっとりさやみずみずしさを付与している。特許文献3では特定のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシドまたはポリオキシプロピレンメチルグルコシドを配合することで肌に対してのうるおい効果を付与している。
しかしながら、かかる特許文献に記載された発明においてはいずれも十分な保湿効果を発揮しつつ過湿度環境下に長時間保存された際に、上記したような問題点を解決できるものではなかった。
【0004】
一方、特許文献4では水膨潤性粘土鉱物に水溶性物質を含有させた球状の有機複合粘土鉱物粉末を配合した化粧料が知られている。保湿効果が高くコスト面でも有利なため汎用されているグリセリンを内包させた複合粘土鉱物粉末を化粧料に配合した場合、例えば、パウダータイプのファンデーションでは高湿度下に置かれた場合、吸湿して使用感触が変化する傾向があり、配合量が限られてしまう問題があった。
また、グリセリンを内包させた複合粘土鉱物をコスト的に有利な噴霧乾燥で得ようとした場合は、グリセリンの複合比を増すと著しく収量が落ちてしまうという問題点もある。
なお、本発明で用いられる一般式(1)のアルキレンオキシド誘導体は公知であり、例えば、特許文献5には、該アルキレンオキシド誘導体が保湿効果、肌荒れ改善効果、べたつき改善効果及び経皮吸収促進効果を有することが記載されている。しかし、水膨潤性粘土鉱物とともに複合化させた粉末については記載されておらず、保湿効果に優れ、使用性がよく、粉末化粧料に配合しても使用感の変化や製品の安定性に影響がなく、収量良く粉末が得られることについては記載されていない。
また、特許文献6には、本発明で用いられるアルキレンオキシド誘導体と粘土鉱物を配合した口紅組成物が開示されているが、本発明のようにアルキレンオキシド誘導体と粘土鉱物を複合化させたものではなく、本発明の課題を解決しているものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−219925号公報
【特許文献2】特開平6−40845号公報
【特許文献3】特開平10−175823号公報
【特許文献4】特公平5−24885号公報
【特許文献5】特開2004−83541号公報
【特許文献6】特開2004−168759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景技術に鑑みなされたものであり、なめらかな使用感触と皮膚への保湿効果を発揮し、収率良く製造できるためにコスト的にも有利な複合粘土鉱物粉末を得ることを目的とする。
さらには過湿度条件に置いても使用感触が変化せず製品の安定性に優れ、べたつかず、なめらかな使用感触で心地よく使用でき、皮膚への保湿効果の高い有用な化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、水膨潤性粘土鉱物と、特定のアルキレンオキシド誘導体とを溶媒中に分散、溶解させ、噴霧乾燥させることにより、なめらかで保湿効果が高い複合粘土鉱物粉末を収率良く製造できることを見出した。 また、この複合粘土鉱物粉末を配合した化粧料は、なめらかな使用感触でべたつかず、過湿条件下に置かれても使用感触が変化せず、製品の安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の複合粘土鉱物粉末は、(a)水膨潤性粘土鉱物と、(b)下記一般式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
(化1)
一般式(1)
O−[(AO)m(EO)n]−R
(式中、は炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m及びnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R及びRは同一もしくは異なっていてもよい炭素数1〜4の炭化水素基又は水素原子であり、R及びRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)を含有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の複合粘土鉱物粉体は、(a)水膨潤性粘土鉱物と、前記(b)アルキレンオキシド誘導体とを水中に分散・溶解させた後に噴霧乾燥して得られるものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の複合粘土鉱物粉体において、前記(b)アルキレンオキシド誘導体が、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルであることが好適である。
【0011】
また、前記いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末において、(a)水膨潤性粘土鉱物の配合量が、複合粘土鉱物全量中の30〜95質量%、(b)アルキレンオキシド誘導体の配合量が複合粘土鉱物全量中の5〜70質量%であることが好適である。
【0012】
また、本発明の化粧料は、前記いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末を配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合粘土鉱物粉末は、なめらかで皮膚への保湿効果に優れ、収率良く製造できる。またこの複合粘土鉱物粉末を配合した化粧料は、保湿効果に優れ、べたつかず、なめらかな使用感で心地よく使用でき、過湿度条件下でも使用性が変化することなく、製品の安定性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳述する。
[複合粘土鉱物粉体]
本発明の化粧料に用いる複合粘土鉱物は(a)水膨潤性粘土鉱物と(b)一般式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
(化1)
一般式(1)
O−[(AO)m(EO)n]−R
(式中、は炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m及びnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R及びRは同一もしくは異なっていてもよい炭素数1〜4の炭化水素基又は水素原子であり、R及びRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)を含有することを特徴とする。
【0015】
<水膨潤性粘土鉱物>
本発明で用いられる(a)水膨潤性粘土鉱物としては、スメクタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物であり、一般にはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト及びヘクトライト等があり、これらは天然または合成品のいずれであっても良い。
市販品ではクニピア、スメクトン(いずれもクニミネ工業製、ビーガム(バンダービルト社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、フッ素四ケイ素雲母(トピー工業製)等がある。本発明にはこれらの水膨潤性粘土鉱物のうちから一種または二種以上が任意に選択される。
【0016】
<アルキレンオキシド誘導体>
本発明で用いられるアルキレンオキシドは、前記一般式(1)のアルキレンオキシド誘導体において、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。EOはオキシエチレン基である。mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦50である。nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは5≦n≦55である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基又はオキシエチレン基が0であると本発明の効果が十分に発揮されず、70を越えるとべたつき感を生じる傾向がある。
【0017】
また、炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%であることが好ましい。オキシエチレン基の割合が20重量%未満であると本願の効果が十分に発揮されず、80質量%より大きいとべたつき感を生じる傾向にある。エチレンオキシド及び炭素数3〜4のアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またオキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。好ましくはランダム状に付加されているものが挙げられる。
【0018】
及びRは炭素数1〜4の炭化水素基もしくは水素原子で、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。炭素数5以上の炭化水素基では本発明の効果が低下する傾向がある。R,Rは、同一であっても異なっていても良い。
【0019】
及びRはそれぞれ1種のみを用いても、炭素数1〜4の炭化水素基と水素原子とが混在しても、炭素数1〜4の炭化水素基が混在しても良い。但し、R及びRの炭化水素基のうち、炭化水素基と水素原子の存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合Y/Xが0.15以下、好ましくは0.06以下である。Y/Xの割合が0.15を越えると、本発明の効果が低下する傾向がある。
【0020】
本発明のアルキレンオキシド誘導体は公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシド及び炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下でエーテル反応させることによって得られる。
【0021】
本発明のアルキレンオキシド誘導体としては、具体的にはPOE(9)POP(2)ジメチルエーテル、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(6)POP(14)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(22)POP(40)ジメチルエーテル、POE(35)POP(40)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(55)POP(30)ジメチルエーテル、POE(30)POP(34)ジメチルエーテル、POE(25)POP(30)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(17)POP(4)ジメチルエーテル、POE(9)POB(2)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略である。
【0022】
本発明に用いるアルキレン誘導体、特にPOE/POPジメチルエーテルとしては、水溶性のものであればPOEおよびPOPの付加モル数に制限されずに使用することができる。特に好ましくは、例えば、POE9モル/POP2モルジメチルエーテル、POE17モル/POP4モルジメチルエーテル、POE14モル/POP7モルジメチルエーテル、POE11モル/POP9モルジメチルエーテルなどが挙げられる。
本発明にはこれらのPOE/POPジメチルエーテルのうちから一種または二種以上が任意に選択される。
【0023】
本発明の複合粘土鉱物粉末は上記の水膨潤性粘土鉱物と前記のアルキレン誘導体、特にPOE/POPジメチルエーテルとを含有してなる粉末であり、粉末の粒径は2〜50μmである。
複合粘土鉱物粉末全量中の水膨潤性粘土鉱物の配合量は30〜95質量%、好ましくは40〜90質量%であり、複合粘土鉱物全量中のPOE/POPジメチルエーテルの配合量は5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%である。複合粘土鉱物全量中のPOE/POPジメチルエーテルの配合量が10質量%未満では滑らかな使用感とならず、また、化粧料に配合した時に十分な保湿性を与えることができない。また、70質量%を越えると製造時の収量が悪くなる傾向がある。
【0024】
本発明の複合粘土鉱物には、前記(b)成分であるPOE/POPジメチルエーテル以外のその他の水溶性成分を内包させてもよく、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、アスコルビン酸グルコシド、グルタミン酸ソーダ、ポリエチレングリコール、ブドウ糖などが挙げられるが、水溶性成分であればこれらに限定されるものではない。なお、前記(b)成分と、内包させる水溶性物質の複合粘土鉱物粉末中の配合比は特に制限されるものではないが、製造時の収率の点から質量比で10:1〜1:3程度が好ましく、さらに好ましくは10:1〜5:1であることが好ましい。
【0025】
本発明の複合粘土鉱物の製造法は任意であるが、噴霧乾燥法によるのが最も簡便で粒径の整った複合粘土鉱物が得られるので好ましい。
すなわち、水膨潤性粘土鉱物を水中に均一に分散させた中に、POE/POPジメチルエーテルを溶解させた水溶液を加えてゲル状液を作り、しかる後にこのゲル状液を噴霧乾燥することによって水膨潤性粘土鉱物とPOE/POPジメチルエーテルを含有する複合粘土鉱物を得ることができる。
噴霧乾燥はディスクタイプや加圧ノズル式、2流体ノズル式などの一般的噴霧乾燥法が適用できる。
いずれの場合も噴霧時の入り口空気温度は複合させる成分の熱的安定性を損なわない温度であることが好ましく、おおよそ150℃〜200℃程度である。
また、排気温度は噴霧流量などで変わるがおおよそ100℃前後である
その他の製造法としては、例えば、凍結乾燥法、ニーダー乾燥法などが挙げられる。
【0026】
[化粧料]
本発明の化粧料は、前記複合粘土鉱物粉末を化粧料基剤に配合することにより調整される。調整方法は特に制限されるものではない。
前記複合粘土鉱物粉末の化粧料中への配合量は、化粧料の形態に応じて任意であるが、油性固形状の製品や軟膏などの製品の場合は0.1〜50質量%が一般的であり、粉末状あるいは粉末プレスド状の製品の場合には0.1〜70質量%が一般的である。
特に粉末状あるいは粉末プレスド状の製品において、本発明における複合粘土鉱物粉末を配合すると、なめらかな使用性に優れ、保湿効果が高いばかりか、高湿条件下においても製品中の保湿剤が水分を含むことにより製品表面が膨らんだり、落下強度が落ちるなどの高保湿剤配合の粉末化粧料における問題がない。また、保湿効果の高い本粉末を製品中に多量配合することが可能であり、十分な保湿効果を有する化粧料を得ることができる。
【0027】
本発明の化粧料には上記の複合粘土鉱物に加えて、通常化粧品や医薬部外品、医薬品で一般的に配合されるその他の成分を本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で配合することができる。
【0028】
そのような成分としては、油分、ワックス、顔料、粉末、界面活性剤、防腐剤、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、多価アルコールなどの保湿剤、キレート剤、酸、アルカリ、水溶性高分子、油溶性高分子、薬剤などを挙げることができる。
【0029】
本発明の化粧料の剤型は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン等どのような剤型でも構わない。不織布等のシートに含浸あるいは塗布した製剤なども可能である。また、本発明の化粧料の製品形態も任意であるが、具体的にはスキンケアを目的とした軟膏、クリーム、リップクリームやメーキャップを目的とした固形ファンデーション、コンシーラー、口紅、リップペンシル、プレスドファンデーション、アイシャドー、マスカラなどが挙げられる。
これらの中でも、粉末成分を製品処方全体の70質量%以上配合する、粉末を多く配合したルースパウダー、プレストパウダー系のスキンケア、メーキャップ製品等が、本発明の効果を奏する上で特に好ましい。
【0030】
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において配合量は特に指定のない限り、質量%で示す。
[製造例1〜3]
表1に本発明に用いられる複合粘土鉱物の噴霧乾燥法による調製結果を示す。
【表1】


【0032】
ラポナイトXLG* 英国ラポルテ社製

<製造条件>
ディスク回転数:30000rpm
入り口温度 :200℃
出口温度 :90℃
流量 :2リットル/h

<結果>
グリセリンを内包させた複合粘土鉱物(製造例1)に比べ、本発明のPOE/POPジメチルエーテルの複合粘土鉱物(製造例2、3)は収率が高く、コスト的に優れていることが分かる。
【0033】
[実施例1、比較例1]
製造例1及び製造例3の複合粘土鉱物を用いてパウダリーファンデーション(実施例1、比較例1)を製造し、その品質特性を測定、使用性試験を行った。その処方を表2に、特性値の測定結果を表3に示す。
<実施例の製造方法、測定方法>
(製造法)
製造は通常のパウダリーファンデーションの製造法に従った。
表2記載の処方のうち、粉末を全て秤量後ヘンシェルミキサーに仕込み均一に攪拌混合した中へ、別釜にて油分や香料などを秤量・溶解攪拌したものを徐々に添加してファンデーションベースを調製し、このベースを中皿に秤量後一定圧にて成型しパウダリーファンデーションを得た。
(硬度の測定方法):
実施例、比較例の処方を表3記載の条件で保存し、保存直後と保存1ヶ月経過後の2回にわたり、オルゼン硬度計(条件:加重;1ポンド(453.6g)、室温25℃)にて硬度を測定した。
(表2)パウダリーファンデーション処方
【表2】

【0034】
(表3)パウダリーファンデーションの硬度変化
【表3】


【0035】

<結果>
実施例1のパウダリーファンデーションは各保存条件下において硬度の変化が少ないのに比べ、比較例1のパウダリーファンデーションは過湿条件下で硬度が著しく上がり(軟らかくなる)、使用する時に崩れてしまい使用感触が悪くなってしまった。

<使用性試験>
また、一般のパネル10名を用い、実施例1のパウダリーファンデーションとパネルが通常使用しているパウダリーファンデーションとの使用性比較を行った。その結果、10名とも、実施例1のパウダリーファンデーションの方が滑らかな使用感触で、使用直後および使用してから4時間後のしっとりさを感じ、総合的に優れているものであった。

【0036】
[製造例4〜8]
POE/POPジメチルエーテルと共にその他の水溶性物質を内包させた各種複合粘土鉱物の調製を行った。製造条件は、製造例1〜3と同じである。表4に一覧を示す。
(表4)各種複合粘土鉱物一覧
【表4】

【0037】
*-1 クニミネ工業製
*-2 英国ラポルテ社製
*-3 米国バンダービルト社製
【0038】
[実施例2〜6]
次に、これらの複合粘土鉱物を用いて種々の化粧品を調製した例を挙げる。
【0039】
実施例2 保湿バーム
製造例4の複合粘土鉱物 5.0
パルミチン酸デキストリン 16.0
スクワラン 28.9
ポリブテン 30.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 20.0
トコフェロール 0.1

(製法)
固形油分、オイル分を釜に投入し加熱溶解後した後、複合粘土鉱物を添加しホモミキサーにて均一に分散した。これを容器に充填し40℃まで冷却して保湿バームを得た。
本発明のバームはべたつきが抑えられ、しっとり感のある使用感触が良好であることを確認した。
【0040】
実施例3 美白コンシーラー
製造例5の複合粘土鉱物 10.0
ポリエチレン−マイクリクリスタリンワックス
2.0
固形パラフィン 4.0
カルナバロウ 1.0
流動パラフィン 32.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
ジイソステアリン酸グリセリン 1.0
カオリン
7.15
酸化チタン 15.0
セリサイト 10.0
酸化鉄赤
0.2
酸化鉄黄
0.6
酸化鉄黒
0.05
多孔質シリカ 2.0

(製法)
オイルとワックスを釜に投入し80℃にて均一に溶解攪拌した。その中に、ヘンシェルミキサーで均一混合した粉末部を投入し、ホモミキサーにて分散処理した。このものを容器に充填し、40℃まで冷却して美白コンシーラーを得た。本発明のコンシーラーはべたつきが抑えられ、使用感触が良好であることを確認した。
【0041】
実施例4 リップクリーム
製造例6の複合粘土鉱物 10.0
セレシン
12.0
マイクロクリスタリンワックス 4.0
キャンデリラロウ 3.0
マカデミアナッツオイル 50.0
流動パラフィン 19.0
オクチルメトキシシンナメート 2.0
(製法)
オイルとワックスを釜に投入し80℃にて均一にて溶解攪拌した。その中に、複合粘土鉱物を投入し、ホモミキサーにて分散処理した。このものを容器に充填し、40℃まで冷却してリップクリームを得た。本品は保湿効果に優れ、べたつきが抑えられ使用感触が良好であることを確認した。
【0042】
実施例5 ベビーパウダー
製造例7の複合粘土鉱物 20.0
タルク 60.0
カオリン 18.9
流動パラフィン 1.0
香料 0.1
(製法)
粉末部をヘンシェルミキサーに投入し均一に攪拌混合した中へオイル、香料を添加し、攪拌混合した。これを所定の容器に充填しベビーパウダーを得た。
本ベビーパウダーは過湿度条件下でも使用性が変化せず、なめらかで使用性のよいものであった。
【0043】
実施例6 ボディ用クリーム
製造例8の複合粘土鉱物 10.0
流動パラフィン 27.0
ワセリン 60.0
セレシン
3.0
(製法)
オイルとワセリンおよびワックスを釜に投入し80℃で溶解した中へ複合粘土鉱物を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させたものを所定の容器に充填し40℃まで冷却してボディ用クリームを得た。本品は保湿効果に優れ、べたつきが抑えられ使用感触が良好であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水膨潤性粘土鉱物と、(b) 下記一般式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
(化1)
一般式(1)
O−[(AO)m(EO)n]−R
(式中、は炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m及びnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R及びRは同一もしくは異なっていてもよい炭素数1〜4の炭化水素基又は水素原子であり、R及びRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)を含有してなる複合粘土鉱物粉末。

【請求項2】
(a)水膨潤性粘土鉱物と、前記(b)アルキレンオキシド誘導体とを水中に分散・溶解させた後に噴霧乾燥して得られるものである請求項1記載の複合粘土鉱物粉末。

【請求項3】
前記(b)アルキレンオキシド誘導体が、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルであることを特徴とする、請求項1、2いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末。

【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末において、(a)水膨潤性粘土鉱物の配合量が、複合粘土鉱物全量中の30〜95質量%、(b)アルキレンオキシド誘導体の配合量が複合粘土鉱物全量中の5〜70質量%であることを特徴とする、複合粘土鉱物粉末。

【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末において、その平均粒径が2〜50μmであることを特徴とする、複合粘土鉱物粉末。

【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の複合粘土鉱物粉末を配合することを特徴とする化粧料。
















【公開番号】特開2009−235033(P2009−235033A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85920(P2008−85920)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】