複合表面粗さ標準片
【課題】複数の種類の校正およびチェクが容易にできる粗さ標準片を提供する。
【解決手段】複数の測定領域14、16を、1つのブランク12の表面に連続して、もしくは相互に間隔を置いて作る。測定領域14、16の溝パターンは、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、測定方向の波長がそれぞれ2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmである溝パターンの内の2乃至5種類の測定領域14、16を有しているようにする。測定方向の波長が測定方向の距離に対して直線的に変化するようにしたり、対数関数の関係を有して変化するようにしてもよい。あるいは、複数の測定領域14、16は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されているようにしてもよい。
【解決手段】複数の測定領域14、16を、1つのブランク12の表面に連続して、もしくは相互に間隔を置いて作る。測定領域14、16の溝パターンは、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、測定方向の波長がそれぞれ2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmである溝パターンの内の2乃至5種類の測定領域14、16を有しているようにする。測定方向の波長が測定方向の距離に対して直線的に変化するようにしたり、対数関数の関係を有して変化するようにしてもよい。あるいは、複数の測定領域14、16は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されているようにしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さ標準片に関し、特に、相互に異なる振幅や波形の溝を有する2つ以上の測定領域を備える複合表面粗さ標準片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面粗さ測定機の校正を行う場合などにおいて粗さ標準片として、相互に異なる振幅や波形の溝を有する測定領域を備える2つの標準片を並べて合成し1つにした複合表面粗さ標準片がある。2つの測定領域を測定することにより、測定精度の確認を行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような2つの表面粗さ標準片を並べて合成した複合表面粗さ標準片では、2つの標準片の整合をとることが難しいために、一方の標準片を用いて測定した後に他方の標準片を測定する際に、傾斜調整など再セッティングをしなければならないなどの面倒さと、測定結果の不確かさの増加があった。
【0004】
本発明はこのような従来の複合型の表面粗さ標準片の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
複数の測定領域が、1つのブランクの表面に連続して、もしくは相互に間隔を置いて作られた粗さ標準片を提供する。
【0006】
この標準片では、1つのブランクの基準となる表面を加工して複数の標準片を形成しているので、1つの標準片を用いた後に他の標準片を用いる場合に、従来のように測定機の傾斜調整などの再セッティングをする必要がなく、測定機に対して1回の操作で複数の表面粗さ標準片をセットすることができ、校正作業を効率的に行うことができる。
【0007】
具体的には、前記複数の測定領域の溝パターンを、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、測定方向の波長がそれぞれ2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmである溝パターンの内の2乃至5種類の測定領域を有しているようにすることができる。
【0008】
前記溝パターンは、深さ方向には1μm以下の同一の振幅を有する2つの測定領域を有し、前記2つの溝パターンの一方は測定方向の波長が50μm以下の三角波状であり、他方は測定方向の波長が50μm以上の正弦波状であるようにすることができる。
【0009】
前記複数の測定領域の溝パターンを、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、前記測定方向の波長が8mmから、2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mm、0.008mmまでの6種類の波長成分を有し、それぞれ隣接する波長間を1つの波長領域とすると、それぞれの測定領域の溝パターンは隣接する測定領域の溝パターンと連続しており、それぞれの測定領域の中で連続的に変化している2乃至6の波長領域を有しているようにすることができる。
【0010】
又、前記測定方向の波長が測定方向の距離に対して直線的に変化するように、それぞれの測定領域の測定方向の両端の波長を定めるようにすることができる。
【0011】
更に又、前記測定方向の波長が、測定方向の距離に対して対数関数の関係を有して変化するように、それぞれの領域の測定方向の両端の波長を定めるようにすることができる。
【0012】
又、測定領域の測定方向の両端もしくはいずれか一方に、前記測定領域とは異なる溝形状の複数本の細線を刻線することができる。
【0013】
又更に、前記測定領域の、前記測定方向に対する幅方向の一方の端部に、その位置での前記測定方向の波長が8mm、2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mm又は0.008mmであることが視認可能なように短い細線を刻線することができる。
【0014】
他の実施形態として、前記複数の測定領域は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されているようにすることができる。
【0015】
以下図面に基づいて、本発明に係る複合表面粗さ標準片の実施形態につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の複合表面粗さ標準片の外観斜視図である。
【図2】図1の複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図3】第2の実施形態の複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図4】第3の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図5】第4の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図6】第5の実施形態係る溝形状を示す図である。
【図7】第6の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図8】第7の実施形態に係る溝形状であり、波長が8mmから0.008mmまで直線的に連続的に溝形状を示す図である。
【図9】第8の実施形態に係る溝形状であり、波長が8mmから0.008mmまで対数関数的に連続的に変化する溝形状を示す図である。
【図10】第8の実施形態に係る複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図11】第9の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図12】第10の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図13】第11の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る複合表面粗さ標準片10は、1つのブランク12の上に形成された2つの測定領域14,16を有する。各領域は、図2に示すような正弦波形をなす多数の溝を備えており、両領域は溝の波形の並びの方向で相互に間隔をあけて整列されている。図示の例では、左側の領域における溝の波長λ1が0.1mm、右側の領域における溝の波長λ2が0.8mmとされている。この実施形態に係る複合表面粗さ標準片10は、図面で見て左右方向の幅が約60mm、奥行きが約30mm、厚みが約10mmとされている。
【0018】
上述のように、2つの測定領域14,16は1つのブランク12に対して成形されたものであり、該ブランクに対する1つの仮想の基準面を基準として各測定領域14,16の溝が形成されている。
【0019】
このような複合表面粗さ標準片10の利用方法を説明する。JIS B0601及びJIS B0633に基づく最も代表的な表面粗さパラメータであるRa及びRzをカットオフ値λc=0.8mmで求める過程において、測定機の使用前チェックとして、先ず表面粗さの通過帯域波長である左側の波長λ1=0.1mm側を測定し、縦方向と横方向の感度チェックを行う。次に右側の波長λ2=0.8mm側を測定して、縦方向の振幅がλ1側の振幅の50%になっていることを確認する。こうすると、上記のJISの規格において、カットオフ値λc=0.8mmの輪郭曲線フィルタ特性は波長λ=0.8mmにおける振幅伝達率が50%とされているので、設定に間違いのないことが確認できる。また、高域フィルタ特性も通過域とカットオフ値の2点で確認することができる。
【0020】
従来の標準片を用いた測定では単に縦方向と横方向の校正又は感度チェックのみであったのに対して、本発明に係る標準片10では、2つの測定領域の溝が1つの仮想の基準面を基準にして形成されているために、測定機の測定条件や設定を変えずに測定することができる結果、重要な要素である輪郭曲線フィルタのチェックも、より高い信頼性をもって容易に行うことができるようになる。
【0021】
図3に示す他の実施形態の複合表面粗さ標準片18は、上記第1の実施形態に係る複合表面粗さ標準片10と同様に、1つのブランクに対して1つの仮想の基準面を基準にして形成した3つの測定領域22、24、26を有している。この場合の測定領域の図で見て左右方向の幅は約15mmとされ、中央の測定領域24の溝の波長を、通常の表面粗さ測定において比較的に多いカットオフ値λcである0.25mmとし、左側の測定領域の波長λ1を0.08mmに変更してある。
【0022】
図4は更に他の実施形態に係る複合表面粗さ標準片の、2つの測定領域の溝形状の側面断面図である。この実施形態においては、深さの異なる3本溝の測定領域(図で見て左側)と波長λ1=0.1mmの正弦波(図で見て右側)の断面形状を有している。
【0023】
この校正用複合表面粗さ標準片は、深さ及び段差を測定することによる縦倍率の校正とRa、RSmの校正及びチェックを意図するものである。図中左側の3本溝の溝深さを0.3mm、1μm及び10μmとした場合について説明すると、通常最も多く利用される表面粗さの測定レンジは、波形記録拡大率で500倍乃至100,000倍と考えられるが、深さ10μmの溝は拡大倍率500倍乃至5,000倍の場合に、拡大深さが5mm乃至50mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。深さ1μmの溝は、同様に拡大倍率5,000倍乃至50,000倍の場合に拡大深さが5mm乃至50mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。また、深さ0.3mmの溝は拡大倍率20,000倍乃至100,000倍の場合に拡大深さが6mm乃至30mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。このように、3種類の溝深さを有する標準片を用いることにより、各レンジを測定値の視覚的確認に適した3つのブロックに分けて倍率校正及びチェックを行うことが可能であり、更に各ブロックの間で拡大倍率をオーバーラップさせることができるので、校正の信頼性を高くすることができる。このようにして図中左側の3本溝を用いた縦倍率の校正とチェックを行った後に、標準片を交換することなく、続けて図中右側の表面粗さ領域の波長を有する正弦波状の領域を測定してRaやRz又はRSmなどの表面粗さパラメータの校正を行うようにすると、表面粗さ測定機の使用前の校正とチェックの信頼性を著しく向上させることができる。
【0024】
図5は、図4に示す実施形態の複合表面粗さ標準片の、図で見て左側の深さの異なる溝の数を5本とした場合を示す。このように溝を増すことにより、縦倍率の校正をより詳細に行うことが可能となる。
【0025】
図6は、波長λ1=0.1mmの正弦波(図で見て左側)とC4タイプ(図で見て右側)の2種類の溝形状を有するようにした複合表面粗さ標準片の溝形状を示す側面断面図である。この組み合わせは、粗さパラメータであるRz、Ra、RSmと断面曲線パラメータであるPa、PSm及びモチーフパラメータの校正及びチェックを可能とすることを意図したものである。
【0026】
この標準片を用いた場合は、先ず図で見て左側の単一波長で正弦波状の測定領域で縦倍率の校正を行い、続いて右側の測定領域で断面曲線パラメータ及びモチーフパラメータの校正及びチェックを行う。このような標準片を用いて校正を行うことによって、高倍率の校正であっても標準片のレベル調整や傾斜調整をやり直す必要が無く、校正作業を効率よく行うことができる。
【0027】
図7は単一波長の正弦波の溝形状を有する測定領域(図で見て左側)と三角波の溝形状を有する測定領域(図で見て右側)との2種類の溝形状を、実質的に等しい深さを有するようにして作った複合表面粗さ標準片の溝形状を示す側面断面図である。
【0028】
この標準片において、正弦波の溝形状の溝底部は表面粗さ測定機の触針先端半径より十分に大きい曲率半径を有し、触針先端の形状に鈍感である。これに対して、三角波は触針先端の曲率半径の影響を敏感に受ける形状である。
【0029】
通常の触針先端の曲率半径は2乃至5μmであり、触針先端の摩耗によって曲率半径が変化しても表面粗さの絶対値の変化が小さく、摩耗の判断が明確にできない場合が多い。従って、触針以外の変動要素を除去して触針の摩耗を判定するために、触針先端の形状に鈍感な溝形状を有する標準片と敏感な溝形状を有する標準片との測定値の比較を採ることが推奨されている。図7に示すような2種類の溝形状を有する標準片を用いることによって、触針先端の曲率半径の、摩耗を判断することが可能となる。
【0030】
図8及び図9は、図で見て左側の長波長(例えばλ=8.0mm)から右側の短波長(例えばλ=0.025mm)の領域まで、連続して変化する正弦波状の溝形状を有する複合表面粗さ標準片の溝のなす波形を示し、図8は波長が測定長さ方向の測定距離に対して直線的に変化しているものを、又図9は対数関数的に変化しているものを示す。
【0031】
通常の表面粗さ測定で主に用いられるカットオフ周波数は、2.5mm、0.8mm、0.25mm、及び0.08mmであるが、図8及び図9に示す標準片ではこれらを含んで更に長波長側は8mmまで短波長側は0.025mmまで変化する波長を含んだものとされている。図9に示す標準片は上記のように溝形状の波長が測定長さ方向の測定距離に対して対数関数的に変化しているので、この標準片を測定したときの縦倍率を記録すると直線的な変化を示し、上記4種類のカットオフフィルターの振幅伝達特性を視覚的に容易に確認することができる。この複合表面粗さ標準片では、8mm〜2.5mm、2.5mm〜0.8mm、0.8mm〜0.25mm、及び、0.25mm〜0.08mmの5つの測定領域が連続して形成されているものとすることができる。
【0032】
図10は、他の実施形態に係る複合表面粗さ標準片を示しており、測定領域32には、図8と同じ波形をなす溝が形成されており、測定領域32の右側には位置スケールの基準とするために、例えば2本の細線34、34を刻設してあり、また、測定領域32の上縁部に波長を示す位置スケールとして短い細線マーカー36を刻設してある。このような標準片を用いることによって、校正の作業者が目視により感覚的に測定の設定を行ったり、測定の進行状態あるいは結果を把握したりすることが容易となり、作業効率の向上や精度の向上に寄与するという効果を有する。
【0033】
図11乃至図13は、又別な実施形態を示すもので、図11は波長が等しく振幅の異なる2つの正弦波状の溝を、溝深さの中央値を揃えて作ったものであり、図12はその溝の上面高さを揃えたものである。又、図13は3つの異なる波形(図で見て左側から正弦波、台形波及び三角波)で、溝深さも異なる3つの測定領域の溝深さの中央値を揃えて作ったものである。
【0034】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、これらは例示にすぎず、各種の校正及びチェックに応じて複数種類の測定領域を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
複合粗さ標準片10、18;ブランク12、20、30;測定領域14、16、22、24、26、32;細線34;マーカー36
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さ標準片に関し、特に、相互に異なる振幅や波形の溝を有する2つ以上の測定領域を備える複合表面粗さ標準片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面粗さ測定機の校正を行う場合などにおいて粗さ標準片として、相互に異なる振幅や波形の溝を有する測定領域を備える2つの標準片を並べて合成し1つにした複合表面粗さ標準片がある。2つの測定領域を測定することにより、測定精度の確認を行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような2つの表面粗さ標準片を並べて合成した複合表面粗さ標準片では、2つの標準片の整合をとることが難しいために、一方の標準片を用いて測定した後に他方の標準片を測定する際に、傾斜調整など再セッティングをしなければならないなどの面倒さと、測定結果の不確かさの増加があった。
【0004】
本発明はこのような従来の複合型の表面粗さ標準片の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
複数の測定領域が、1つのブランクの表面に連続して、もしくは相互に間隔を置いて作られた粗さ標準片を提供する。
【0006】
この標準片では、1つのブランクの基準となる表面を加工して複数の標準片を形成しているので、1つの標準片を用いた後に他の標準片を用いる場合に、従来のように測定機の傾斜調整などの再セッティングをする必要がなく、測定機に対して1回の操作で複数の表面粗さ標準片をセットすることができ、校正作業を効率的に行うことができる。
【0007】
具体的には、前記複数の測定領域の溝パターンを、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、測定方向の波長がそれぞれ2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmである溝パターンの内の2乃至5種類の測定領域を有しているようにすることができる。
【0008】
前記溝パターンは、深さ方向には1μm以下の同一の振幅を有する2つの測定領域を有し、前記2つの溝パターンの一方は測定方向の波長が50μm以下の三角波状であり、他方は測定方向の波長が50μm以上の正弦波状であるようにすることができる。
【0009】
前記複数の測定領域の溝パターンを、深さ方向には同一の振幅を有する正弦波状であり、前記測定方向の波長が8mmから、2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mm、0.008mmまでの6種類の波長成分を有し、それぞれ隣接する波長間を1つの波長領域とすると、それぞれの測定領域の溝パターンは隣接する測定領域の溝パターンと連続しており、それぞれの測定領域の中で連続的に変化している2乃至6の波長領域を有しているようにすることができる。
【0010】
又、前記測定方向の波長が測定方向の距離に対して直線的に変化するように、それぞれの測定領域の測定方向の両端の波長を定めるようにすることができる。
【0011】
更に又、前記測定方向の波長が、測定方向の距離に対して対数関数の関係を有して変化するように、それぞれの領域の測定方向の両端の波長を定めるようにすることができる。
【0012】
又、測定領域の測定方向の両端もしくはいずれか一方に、前記測定領域とは異なる溝形状の複数本の細線を刻線することができる。
【0013】
又更に、前記測定領域の、前記測定方向に対する幅方向の一方の端部に、その位置での前記測定方向の波長が8mm、2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mm又は0.008mmであることが視認可能なように短い細線を刻線することができる。
【0014】
他の実施形態として、前記複数の測定領域は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されているようにすることができる。
【0015】
以下図面に基づいて、本発明に係る複合表面粗さ標準片の実施形態につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の複合表面粗さ標準片の外観斜視図である。
【図2】図1の複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図3】第2の実施形態の複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図4】第3の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図5】第4の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図6】第5の実施形態係る溝形状を示す図である。
【図7】第6の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図8】第7の実施形態に係る溝形状であり、波長が8mmから0.008mmまで直線的に連続的に溝形状を示す図である。
【図9】第8の実施形態に係る溝形状であり、波長が8mmから0.008mmまで対数関数的に連続的に変化する溝形状を示す図である。
【図10】第8の実施形態に係る複合表面粗さ標準片の平面図(A)と、その測定領域のB−B線に沿ってみた溝形状を示す図(B)である。
【図11】第9の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図12】第10の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【図13】第11の実施形態に係る溝形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る複合表面粗さ標準片10は、1つのブランク12の上に形成された2つの測定領域14,16を有する。各領域は、図2に示すような正弦波形をなす多数の溝を備えており、両領域は溝の波形の並びの方向で相互に間隔をあけて整列されている。図示の例では、左側の領域における溝の波長λ1が0.1mm、右側の領域における溝の波長λ2が0.8mmとされている。この実施形態に係る複合表面粗さ標準片10は、図面で見て左右方向の幅が約60mm、奥行きが約30mm、厚みが約10mmとされている。
【0018】
上述のように、2つの測定領域14,16は1つのブランク12に対して成形されたものであり、該ブランクに対する1つの仮想の基準面を基準として各測定領域14,16の溝が形成されている。
【0019】
このような複合表面粗さ標準片10の利用方法を説明する。JIS B0601及びJIS B0633に基づく最も代表的な表面粗さパラメータであるRa及びRzをカットオフ値λc=0.8mmで求める過程において、測定機の使用前チェックとして、先ず表面粗さの通過帯域波長である左側の波長λ1=0.1mm側を測定し、縦方向と横方向の感度チェックを行う。次に右側の波長λ2=0.8mm側を測定して、縦方向の振幅がλ1側の振幅の50%になっていることを確認する。こうすると、上記のJISの規格において、カットオフ値λc=0.8mmの輪郭曲線フィルタ特性は波長λ=0.8mmにおける振幅伝達率が50%とされているので、設定に間違いのないことが確認できる。また、高域フィルタ特性も通過域とカットオフ値の2点で確認することができる。
【0020】
従来の標準片を用いた測定では単に縦方向と横方向の校正又は感度チェックのみであったのに対して、本発明に係る標準片10では、2つの測定領域の溝が1つの仮想の基準面を基準にして形成されているために、測定機の測定条件や設定を変えずに測定することができる結果、重要な要素である輪郭曲線フィルタのチェックも、より高い信頼性をもって容易に行うことができるようになる。
【0021】
図3に示す他の実施形態の複合表面粗さ標準片18は、上記第1の実施形態に係る複合表面粗さ標準片10と同様に、1つのブランクに対して1つの仮想の基準面を基準にして形成した3つの測定領域22、24、26を有している。この場合の測定領域の図で見て左右方向の幅は約15mmとされ、中央の測定領域24の溝の波長を、通常の表面粗さ測定において比較的に多いカットオフ値λcである0.25mmとし、左側の測定領域の波長λ1を0.08mmに変更してある。
【0022】
図4は更に他の実施形態に係る複合表面粗さ標準片の、2つの測定領域の溝形状の側面断面図である。この実施形態においては、深さの異なる3本溝の測定領域(図で見て左側)と波長λ1=0.1mmの正弦波(図で見て右側)の断面形状を有している。
【0023】
この校正用複合表面粗さ標準片は、深さ及び段差を測定することによる縦倍率の校正とRa、RSmの校正及びチェックを意図するものである。図中左側の3本溝の溝深さを0.3mm、1μm及び10μmとした場合について説明すると、通常最も多く利用される表面粗さの測定レンジは、波形記録拡大率で500倍乃至100,000倍と考えられるが、深さ10μmの溝は拡大倍率500倍乃至5,000倍の場合に、拡大深さが5mm乃至50mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。深さ1μmの溝は、同様に拡大倍率5,000倍乃至50,000倍の場合に拡大深さが5mm乃至50mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。また、深さ0.3mmの溝は拡大倍率20,000倍乃至100,000倍の場合に拡大深さが6mm乃至30mmに記録されるので、測定値の視覚的確認に適している。このように、3種類の溝深さを有する標準片を用いることにより、各レンジを測定値の視覚的確認に適した3つのブロックに分けて倍率校正及びチェックを行うことが可能であり、更に各ブロックの間で拡大倍率をオーバーラップさせることができるので、校正の信頼性を高くすることができる。このようにして図中左側の3本溝を用いた縦倍率の校正とチェックを行った後に、標準片を交換することなく、続けて図中右側の表面粗さ領域の波長を有する正弦波状の領域を測定してRaやRz又はRSmなどの表面粗さパラメータの校正を行うようにすると、表面粗さ測定機の使用前の校正とチェックの信頼性を著しく向上させることができる。
【0024】
図5は、図4に示す実施形態の複合表面粗さ標準片の、図で見て左側の深さの異なる溝の数を5本とした場合を示す。このように溝を増すことにより、縦倍率の校正をより詳細に行うことが可能となる。
【0025】
図6は、波長λ1=0.1mmの正弦波(図で見て左側)とC4タイプ(図で見て右側)の2種類の溝形状を有するようにした複合表面粗さ標準片の溝形状を示す側面断面図である。この組み合わせは、粗さパラメータであるRz、Ra、RSmと断面曲線パラメータであるPa、PSm及びモチーフパラメータの校正及びチェックを可能とすることを意図したものである。
【0026】
この標準片を用いた場合は、先ず図で見て左側の単一波長で正弦波状の測定領域で縦倍率の校正を行い、続いて右側の測定領域で断面曲線パラメータ及びモチーフパラメータの校正及びチェックを行う。このような標準片を用いて校正を行うことによって、高倍率の校正であっても標準片のレベル調整や傾斜調整をやり直す必要が無く、校正作業を効率よく行うことができる。
【0027】
図7は単一波長の正弦波の溝形状を有する測定領域(図で見て左側)と三角波の溝形状を有する測定領域(図で見て右側)との2種類の溝形状を、実質的に等しい深さを有するようにして作った複合表面粗さ標準片の溝形状を示す側面断面図である。
【0028】
この標準片において、正弦波の溝形状の溝底部は表面粗さ測定機の触針先端半径より十分に大きい曲率半径を有し、触針先端の形状に鈍感である。これに対して、三角波は触針先端の曲率半径の影響を敏感に受ける形状である。
【0029】
通常の触針先端の曲率半径は2乃至5μmであり、触針先端の摩耗によって曲率半径が変化しても表面粗さの絶対値の変化が小さく、摩耗の判断が明確にできない場合が多い。従って、触針以外の変動要素を除去して触針の摩耗を判定するために、触針先端の形状に鈍感な溝形状を有する標準片と敏感な溝形状を有する標準片との測定値の比較を採ることが推奨されている。図7に示すような2種類の溝形状を有する標準片を用いることによって、触針先端の曲率半径の、摩耗を判断することが可能となる。
【0030】
図8及び図9は、図で見て左側の長波長(例えばλ=8.0mm)から右側の短波長(例えばλ=0.025mm)の領域まで、連続して変化する正弦波状の溝形状を有する複合表面粗さ標準片の溝のなす波形を示し、図8は波長が測定長さ方向の測定距離に対して直線的に変化しているものを、又図9は対数関数的に変化しているものを示す。
【0031】
通常の表面粗さ測定で主に用いられるカットオフ周波数は、2.5mm、0.8mm、0.25mm、及び0.08mmであるが、図8及び図9に示す標準片ではこれらを含んで更に長波長側は8mmまで短波長側は0.025mmまで変化する波長を含んだものとされている。図9に示す標準片は上記のように溝形状の波長が測定長さ方向の測定距離に対して対数関数的に変化しているので、この標準片を測定したときの縦倍率を記録すると直線的な変化を示し、上記4種類のカットオフフィルターの振幅伝達特性を視覚的に容易に確認することができる。この複合表面粗さ標準片では、8mm〜2.5mm、2.5mm〜0.8mm、0.8mm〜0.25mm、及び、0.25mm〜0.08mmの5つの測定領域が連続して形成されているものとすることができる。
【0032】
図10は、他の実施形態に係る複合表面粗さ標準片を示しており、測定領域32には、図8と同じ波形をなす溝が形成されており、測定領域32の右側には位置スケールの基準とするために、例えば2本の細線34、34を刻設してあり、また、測定領域32の上縁部に波長を示す位置スケールとして短い細線マーカー36を刻設してある。このような標準片を用いることによって、校正の作業者が目視により感覚的に測定の設定を行ったり、測定の進行状態あるいは結果を把握したりすることが容易となり、作業効率の向上や精度の向上に寄与するという効果を有する。
【0033】
図11乃至図13は、又別な実施形態を示すもので、図11は波長が等しく振幅の異なる2つの正弦波状の溝を、溝深さの中央値を揃えて作ったものであり、図12はその溝の上面高さを揃えたものである。又、図13は3つの異なる波形(図で見て左側から正弦波、台形波及び三角波)で、溝深さも異なる3つの測定領域の溝深さの中央値を揃えて作ったものである。
【0034】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、これらは例示にすぎず、各種の校正及びチェックに応じて複数種類の測定領域を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
複合粗さ標準片10、18;ブランク12、20、30;測定領域14、16、22、24、26、32;細線34;マーカー36
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる振幅や波形の溝からなる複数の測定領域を、波形の並びの方向で相互に整列して備える複合粗さ標準片において、1つのブランクより形成されており、該ブランクに対する1つの仮想の基準面に対して前記複数の測定領域の前記溝が形成されている複合粗さ標準片。
【請求項2】
前記複数の測定領域の溝は、同一の振幅を有する正弦波状であり、それぞれ、波長が2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmの内の相互に異なる1つとされている、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項3】
1μm以下の同一の振幅を有する2つの測定領域を有し、一方の測定領域は波長が50μm以下の三角波であり、他方は波長が50μm以上の正弦波状である、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項4】
振幅が同じで、波長が8mmから2.5mm、2.5mmから0.8mm、0.8mmから0.25mm、0.25mから0.08mm、0.08mmから0.025mmに、それぞれ連続的に変化する溝を備える6つの測定領域を、上記の順に連続的に並べ、各測定領域の溝が連続するようにされた、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項5】
前記8mmから0.008mmまでの波長が、溝の並びの方向の距離に対して直線的に変化するように溝の波形が形成されている請求項4に記載の複合粗さ標準片。
【請求項6】
前記8mmから0.008mmまでの波長が、溝の波形の並びの方向の距離に対して対数関数の関係を有して変化するように溝の波形が形成されている請求項4に記載の複合粗さ標準片。
【請求項7】
前記連続して形成された測定領域の前記溝の波形の並びの方向における少なくとも一方の端部に隣接して、前記測定領域とは異なる波形の複数の溝を有する、請求項4乃至6に記載の複合粗さ標準片。
【請求項8】
前記連続して形成された測定領域に波長が2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmであることを示す視認可能なマーカーを設けた、請求項4乃至7に記載の複合粗さ標準片。
【請求項9】
前記複数の測定領域は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されている請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項1】
相互に異なる振幅や波形の溝からなる複数の測定領域を、波形の並びの方向で相互に整列して備える複合粗さ標準片において、1つのブランクより形成されており、該ブランクに対する1つの仮想の基準面に対して前記複数の測定領域の前記溝が形成されている複合粗さ標準片。
【請求項2】
前記複数の測定領域の溝は、同一の振幅を有する正弦波状であり、それぞれ、波長が2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmの内の相互に異なる1つとされている、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項3】
1μm以下の同一の振幅を有する2つの測定領域を有し、一方の測定領域は波長が50μm以下の三角波であり、他方は波長が50μm以上の正弦波状である、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項4】
振幅が同じで、波長が8mmから2.5mm、2.5mmから0.8mm、0.8mmから0.25mm、0.25mから0.08mm、0.08mmから0.025mmに、それぞれ連続的に変化する溝を備える6つの測定領域を、上記の順に連続的に並べ、各測定領域の溝が連続するようにされた、請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【請求項5】
前記8mmから0.008mmまでの波長が、溝の並びの方向の距離に対して直線的に変化するように溝の波形が形成されている請求項4に記載の複合粗さ標準片。
【請求項6】
前記8mmから0.008mmまでの波長が、溝の波形の並びの方向の距離に対して対数関数の関係を有して変化するように溝の波形が形成されている請求項4に記載の複合粗さ標準片。
【請求項7】
前記連続して形成された測定領域の前記溝の波形の並びの方向における少なくとも一方の端部に隣接して、前記測定領域とは異なる波形の複数の溝を有する、請求項4乃至6に記載の複合粗さ標準片。
【請求項8】
前記連続して形成された測定領域に波長が2.5mm、0.8mm、0.25mm、0.08mm、0.025mmであることを示す視認可能なマーカーを設けた、請求項4乃至7に記載の複合粗さ標準片。
【請求項9】
前記複数の測定領域は、それぞれが正弦波状、三角波状、及び円弧を連ねた溝パターンを有し、これらが実質的に平坦な領域を挟んで配置されている請求項1に記載の複合粗さ標準片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−158368(P2011−158368A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20906(P2010−20906)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(501292142)株式会社小坂研究所 (16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(501292142)株式会社小坂研究所 (16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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