説明

複層ガラス

【課題】 良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる複層ガラスを提供する。
【解決手段】 複層ガラス10は、互いに所定間隔を隔てて対向する一対の板ガラス11,12と、複層ガラス10における一対の板ガラス11,12間に一次シール材15を介して介装されたスペーサ13と、スペーサ13の外側(複層ガラス10の外周縁側)において板ガラス11,12間に充填され、スペーサ13を外部からシールする二次シール材16と、板ガラス11の下縁部11bに貼着された断面略L字型のテープ材17から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスに関し、特に、住宅・非住宅等の建築分野や自動車・車両・船舶・航空機等の輸送分野で用いられる複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、複層ガラス60は、主として、互いに所定間隔を隔てて対向する厚み5mmの一対の板ガラス61,62と、板ガラス61,62間の所定間隔を一定、例えば6mmに規定すべく板ガラス61,62の周辺部においてそれらの間に嵌挿されたスペーサ64と、スペーサ64及び板ガラス61,62で画定される外周縁部に充填され、スペーサ64を外部からシールする硬化性樹脂製の封着材65とから成る。スペーサ64は、アルミ、鉄、又はステンレス等の金属製の断面略U字形剛性隔離部材66と、剛性隔離部材66及び板ガラス61,62の各間を接合する接合材67とから成る。
【0003】
上記のように構成される複層ガラス60の製造工程では、複層ガラス60の周縁部にテープが貼着される。これにより、複層ガラス60の搬送時やサッシへの組付け時に生じ得る周縁部の破損を防止し、複層ガラスの品質を向上させている。
【0004】
ここで、複層ガラス60の周縁部の全体にテープを取り付けた場合に、複層ガラス60の内部に水分が進入したときは、進入した水分を複層ガラス60の外部に排出することができないという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するべく、複層ガラスの下縁部において水分排出孔が設けられた保護材を備える複層ガラスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、複層ガラスの内部に進入した水分の排水性を確保することができる。
【特許文献1】特開平8−208279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の複層ガラスでは、複層ガラスの下縁部に設けられた保護材に水分排出孔が設けられているが、複層ガラスの使用状況によっては下縁部の水分排出孔のみでは水分の排出が十分でなく、良好な排水性を確保することができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる複層ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の複層ガラスは、互いに所定間隔を隔ててほぼ直立状態で対向する複数の板ガラスを備える複層ガラスにおいて、前記複数の板ガラスの少なくとも1つにおける周縁部の一部に貼着されたテープ材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の複層ガラスは、請求項1記載の複層ガラスにおいて、前記テープ材は、前記複数の板ガラスの少なくとも1つにおける下縁部に貼着されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の複層ガラスは、請求項1又は2記載の複層ガラスにおいて、複数の板ガラスは一対の板ガラスからなることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の複層ガラスは、請求項3記載の複層ガラスにおいて、前記一対の板ガラス間に介装されたスペーサと、前記スペーサの外側において前記一対の板ガラス間に充填され、前記スペーサを外部からシールする二次シール材とを有し、前記テープ材は、前記二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の複層ガラスは、請求項3又は4記載の複層ガラスにおいて、前記一対の板ガラスの一方は熱強化処理が施された熱強化板ガラスであり、前記テープ材は前記熱強化板ガラスの下縁部に貼着されることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の複層ガラスは、請求項5記載の複層ガラスにおいて、前記下縁部における外周面は、前記板ガラスの外側方向に突出している曲面であることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の複層ガラスは、請求項1又は2記載の複層ガラスにおいて、前記複数の板ガラスは、一対の板ガラス間に中間膜を介装した合わせガラスと、前記一対の板ガラスの一方と所定間隔を隔てて対向する他の板ガラスとを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の複層ガラスは、請求項7記載の複層ガラスにおいて、前記合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に介装されたスペーサと、前記スペーサの外側において前記合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に充填され、前記スペーサを外部からシールする二次シール材とを有し、前記テープ材は、前記二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の複層ガラスは、請求項7又は8記載の複層ガラスにおいて、前記テープ材は前記合わせガラスの下縁部に貼着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の複層ガラスによれば、複数の板ガラスの少なくとも1つにおける周縁部の一部に貼着されたテープ材を有するので、主として搬送時に破損を生じ易い板ガラスの周縁部にテープ材が貼着され、さらに、複層ガラスの内部に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる。
【0018】
請求項2記載の複層ガラスによれば、テープ材が複数の板ガラスの少なくとも1つにおける下縁部に貼着されるので、複層ガラスの下縁部において板ガラス以外の下縁部にテープ材が貼着されず、主として搬送時に破損を生じ易い板ガラスの下縁部にテープ材が貼着され、さらに、複層ガラスの内部に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる。
【0019】
請求項3記載の複層ガラスによれば、複数の板ガラスは一対の板ガラスからなるので、一対の板ガラスの内部に進入した水分の良好な排水性を確保することができる。
【0020】
請求項4記載の複層ガラスによれば、テープ材は、一対の板ガラス間に介装されたスペーサの外側において一対の板ガラス間に充填された二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されるので、一対の板ガラスの内部に進入した水分の良好な排水性を確実に確保することができる。
【0021】
請求項5記載の複層ガラスによれば、一対の板ガラスの一方は熱強化処理が施された熱強化板ガラスであり、テープ材が前記熱強化板ガラスの下縁部に貼着されるので、熱強化板ガラスの下縁部を保護することができる。
【0022】
請求項6記載の複層ガラスによれば、下縁部における外周面は、板ガラスの外側方向に突出している曲面であるので、熱強化板ガラスの下縁部の破損を低減することができる。
【0023】
請求項7記載の複層ガラスによれば、複数の板ガラスは、一対の板ガラス間に中間膜を介装した合わせガラスと、一対の板ガラスの一方と所定間隔を隔てて対向する他の板ガラスとを備えるので、合わせガラスを有する複層ガラスの内部に進入した水分の良好な排水性を確保することができる。
【0024】
請求項8記載の複層ガラスによれば、合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に介装されたスペーサと、スペーサの外側において合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に充填され、スペーサを外部からシールする二次シール材とを有し、テープ材は、二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されるので、複層ガラスの内部に進入した水分の良好な排水性を確実に確保することができる。
【0025】
請求項9記載の複層ガラスによれば、テープ材が合わせガラスの下縁部に貼着されるので、合わせガラスにおける一対の板ガラスと中間膜との界面に水分が進入するのを防ぐことができ、もって複層ガラスの品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る複層ガラスを備える複層ガラス体の構成を概略的に示す部分断面斜視図である。
【0028】
図1において、複層ガラス体1は、複層ガラス10と、複層ガラス10の外周縁部に嵌め込まれた塩化ビニル製複層ガラス保持部材20とから成り、複層ガラス10は、複層ガラス保持部材20を介してサッシ30に保持される。
【0029】
図2は、図1における複層ガラス10の部分断面図である。
【0030】
図2において、複層ガラス10は、互いに所定間隔を隔ててほぼ直立状態で対向する一対の板ガラス11,12と、複層ガラス10における一対の板ガラス11,12間に一次シール材15を介して介装されたスペーサ13と、スペーサ13の外側(複層ガラス10の外周縁側)において板ガラス11,12間に充填され、スペーサ13を外部からシールする二次シール材16と、板ガラス11の周縁部の一部に貼着された断面略L字型のテープ材17からなる。複層ガラス10内に形成された中空層14には乾燥空気が封入されている。
【0031】
板ガラス12は、例えばフロート板ガラスからなり、その下縁部における外周面が板ガラス12の主面に対して略直角である。
【0032】
板ガラス11は、主として防火ガラスとして使用される熱強化板ガラスからなり、板ガラス11の下縁部11bにおける外周面は板ガラス11の外側方向に突出している曲面である。これにより、搬送又はサッシ30への組付時に生じる板ガラス11の下縁部11bの破損を防止することができる。尚、板ガラス11の下縁部11bは、サッシへの組付け時において下側に位置する部位に限定されるものではなく、複層ガラス10の搬送・ハンドリング時に下側に位置する部位を含む。例えば、縦長形状の複層ガラスを搬送する場合は、複層ガラスの長辺側外周部(側辺側外周部)を下側に位置させることがある。この場合は複層ガラスの長辺側外周部を複層ガラスの下縁部と定義する。
【0033】
板ガラス11は、具体的には、ソーダ石灰系の板ガラスを後述の周縁部仕上げ工程及び熱強化処理を施すことにより形成される。
【0034】
板ガラス11は、その外周面を、板ガラス11の厚み方向での中間部ほど板ガラス11の外側方向に突出している曲面形状に研磨(研磨された面の最大凹凸は0.05mm以下)する第一研磨工程と、第一研磨工程によって板ガラス11の端面に形成された曲面縁部と板ガラス11の主面との境部を、第一研磨工程より滑らか(仕上げ面の最大凹凸は0.007mm以下)に加工する第二研磨工程とからなる周縁部仕上げ工程が施される。
【0035】
第一研磨工程は、軸芯廻りに回転する円筒ホイールの外周面を使って研磨する平廻り円筒ホイール型研磨方式の研磨方法によって実施するもので、円筒ホイールは、その外周面が軸芯方向での中間部ほど外径寸法が小径になるように形成されており、被研磨部分となる板ガラスが、外側方向に突出した曲面形状に研磨されるように構成してある。また、円筒ホイールの外周面は、#200番手より細かな研磨部に形成してある。この第一研磨工程において研磨された板ガラス11の周縁部は、表面内の凹凸が0.03mm程度に仕上げられており、非常に細かな凹凸であるから、板ガラス11の内部応力が集中的に作用するのを避け易くなる。更には、第一研磨工程での研磨方向は、板ガラス11の長手方向に沿って設定してあるから、研磨に伴う筋(キズ)は、同様に板ガラス11の長手方向に沿って形成されるので、板ガラス11の主面に沿って作用する熱破壊力等の集中を回避し易くなる。
【0036】
第二研磨工程は、二軸の回転軸に張り廻されて回転する研磨用ベルトの外周面を使って研磨するバフ磨き方式の研磨方法によって実施するものである。このバフ磨きとは、極上仕上げとも呼ばれ、一般的には、羊の皮で形成したベルトで研磨し、その研磨に際しては、酸化セリウム(非常に細かい粒度の研磨粉)の水溶液を被研磨部分に掛けながら実施することによって、表面粗さが3〜7μm(殆ど板ガラス表裏面の表面粗さと等しい値)にまで細かくなり、ツヤを出すことも可能で、境部への内部応力の集中が起こり難くすることができる。これを強度に換算すると、約39MPa(4kgf/mm2)である。
【0037】
上記第一研磨工程及び第二研磨工程により、板ガラス11の下縁部11bに内部応力を集中し難くすることができ、特に、板ガラス11の主面に沿って作用する内部応力の集中を回避し易くなる。その結果、火災による熱を受けても破壊し難くすることが可能となり、熱強化処理によって施される応力に換算して約39MPa(4kgf/mm2)応力緩和することができる。
【0038】
さらに、周縁部仕上げ工程後、加熱温度をガラスの軟化点(720〜730℃)以下、冷却空気吹付け背圧4.9kPa(約500mmAq)で、板ガラス11に熱強化処理を施す。この熱強化処理による板ガラス11の表面圧縮応力は約167MPa(17kgf/mm)である。したがって、熱強化処理及び上記周縁部仕上げ工程を施すことにより、板ガラス11のエッジ強度を206MPa(約21kgf/mm)とすることができ、もって板ガラス11の周縁部の十分なエッジ強度を確保することができる。
【0039】
スペーサ13は、内部に不図示の乾燥剤を収容する断面略矩形のアルミ製長尺状中空体であり、その厚みは、例えば0.35mmである。
【0040】
一次シール材15は、特に水分を透過し難くするために、例えばブチルゴム製であり、その厚みは、例えば0.25mmである。
【0041】
二次シール材16は、接着力の高いシリコン系またはポリサルファイド系のシール材で構成されている。
【0042】
テープ材17は金属製であり、その厚さは、例えば50μmである。また、テープ材17は、その幅が板ガラス11の厚さより大きく、後述する板ガラス11の下縁部11bと板ガラス11の外表面側主面の一部に貼着される。また、テープ材17は、二次シール材16の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着される。
【0043】
また、テープ材17の粘着材は、アクリル系、シリコン系、又はブチル系材料からなるのが好ましい。これにより、板ガラス11との粘着性を向上させることができる。
【0044】
図3は、図2における複層ガラス10を板ガラス11側から見た断面斜視図である。
【0045】
図3に示すように、水平から起こした状態でガラス保持枠に保持される複層ガラス10において、その周縁部は、上縁部10a,下縁部10b、及び側縁部10c,10dで構成され、板ガラス11の周縁部は、上縁部11a,下縁部11b、及び側縁部11c,11dで構成される。テープ材17は、複層ガラス10の周縁部のうち下縁部11bに貼着される。
【0046】
複層ガラス10は、図1に示すように、複層ガラス保持部材20を介してサッシ30に保持される。このとき、二次シール材16と複層ガラス保持部材20との間にテープ材17の一部が介在し、下縁部11bと複層ガラス保持部材20との間にテープ材17が介在する。
【0047】
上述したように、本実施の形態によれば、複層ガラス10は板ガラス11の周縁部の一部に貼着されたテープ材17を有するので、主として搬送時に破損を生じ易い板ガラス11の周縁部がテープ材17によって保護され、さらに、複層ガラス10の内部に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる。
【0048】
また、テープ材17が板ガラス11の下縁部11bに貼着されるので、破損を生じ易い板ガラス11の下縁部11bがテープ材17によって保護され、さらに、複層ガラス10内に形成された中空層14に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ複層ガラス40の品質を向上することができる。
【0049】
さらに、テープ材17は、二次シール材16の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されるので、複層ガラス10の内部に進入した水分の良好な排水性を確実に確保することができる。
【0050】
図4は、図3におけるテープ材17の変形例を示す図であり、(a)〜(d)は、夫々第1〜第4の変形例を示す。
【0051】
図4(a)〜(d)において、テープ材51は、板ガラス11の下縁部11b、側縁部11cの一部、及び側縁部11dの一部に貼着される(図4(a))。このとき、テープ材51は、側縁部11c及び側縁部11dにおいて板ガラス11の各下端から所定長さに亘って貼着されている。これにより、板ガラス11の側縁部11c及び側縁部11dを保護しつつ複層ガラス10の製造コストを低減することができる。
【0052】
また、テープ材52は、板ガラス11の下縁部11b及び側縁部11c,11dに貼着される(図4(b))。これにより、側縁部11c,11dを確実に保護することができる。
【0053】
また、テープ材53は、板ガラス11の下縁部11b、側縁部11c,11d、及び上縁部11aの一部に貼着される(図4(c))。このとき、テープ材53は、上縁部11aにおいて板ガラス11の各上端から所定長さに亘って貼着されている。これにより、板ガラス11の上縁部11aを保護しつつ複層ガラス10の製造コストを低減することができる。
【0054】
さらに、テープ材54は、板ガラス11の下縁部11b、側縁部11c,11d、及び上縁部11a、すなわち板ガラス11の周縁部全体に貼着される(図5(d))。これにより、板ガラス11の上縁部11dを確実に保護することができる。
【0055】
図5は、図2における複層ガラス10の変形例を示す部分断面図である。
【0056】
図5において、複層ガラス40は、後述する一対の板ガラス41,42を有する合わせガラスと、板ガラス42に関して板ガラス41と反対側に配され、板ガラス42と所定間隔を隔てて対向する板ガラス43とを有する。
【0057】
また、複層ガラス40は、板ガラス42と板ガラス43との間に一次シール材46を介して介装されたスペーサ44と、スペーサ44の外側(複層ガラス40の外周縁側)において板ガラス42,43間に充填され、スペーサ44を外部からシールする二次シール材47と、合わせガラスの周縁部の一部に貼着された断面略L字型のテープ材57を有する。板ガラス42と板ガラス43との間に形成された中空層45には乾燥空気が封入されている。
【0058】
合わせガラスは、互いに所定間隔を隔ててほぼ直立状態で対向する一対の板ガラス41,42と、一対の板ガラス41,42の間に介装された一対の中間膜48,49と、一対の中間膜48,49の間に介装されたポリカーボネート層50とを有する。
【0059】
板ガラス41,42,43は、例えばフロート板ガラスからなり、各下縁部における外周面は板ガラス41,42,43の主面に対して略直角である。また、中間膜48,49は、厚さが0.3〜4.0mm、好ましくは0.38〜3.04mmのポリビニルブチラール樹脂(PVB)製フィルムで構成される。
【0060】
スペーサ44は、内部に不図示の乾燥剤を収容する断面略矩形のアルミ製長尺状中空体であり、その厚みは、例えば0.35mmである。
【0061】
一次シール材46は、特に水分を透過し難くするために、例えばブチルゴム製であり、その厚みは、例えば0.25mmである。
【0062】
二次シール材47は、接着力の高いシリコン系またはポリサルファイド系のシール材で構成されている。
【0063】
テープ材57は金属製であり、その厚さは、例えば50μmである。また、テープ材57は、その幅が板ガラス41,42を有する合わせガラスの厚さより大きく、板ガラス41の下縁部41b及び板ガラス42の下縁部42bを含む合わせガラスの下縁部に貼着される。また、テープ材57は、二次シール材47の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着される。
【0064】
本変形例によれば、複層ガラス40は合わせガラスの周縁部の一部に貼着されたテープ材57を有するので、主として搬送時に破損を生じ易い合わせガラスの周縁部がテープ材57によって保護され、さらに、複層ガラス40の内部に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ品質を向上することができる。また、樹脂製の板ガラス保持部材20に油脂等の可塑剤が添加されている場合において、経年変化により板ガラス保持部材20の内表面に漏出した可塑剤が、板ガラス41と中間膜48との界面や板ガラス42と中間膜49との界面に進入するのを防ぐことができ、もって複層ガラス40の品質を向上させることができる。
【0065】
また、テープ材57が板ガラス41,42を有する合わせガラスの下縁部41b,42bに貼着されるので、破損を生じ易い合わせガラスの下縁部がテープ材57によって保護され、さらに、複層ガラス40内に形成された中空層45に進入した水分を十分に排水することができ、もって良好な排水性を確保しつつ複層ガラス40の品質を向上することができる。
【0066】
さらに、テープ材57は、二次シール材47の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されるので、複層ガラス40の内部に進入した水分の良好な排水性を確実に確保することができる。
【0067】
本実施の形態では、テープ材17は、板ガラス11の下縁部と二次シール材16の外表面の一部に貼着されるが、これに限るものではなく、板ガラス11の下縁部のみに貼着されてもよい。また、テープ材57は、板ガラス41,42を有する合わせガラスの下縁部と二次シール材47の外表面の一部に貼着されるが、これに限るものではなく、合わせガラスの下縁部のみに貼着されてもよい。
【0068】
また、テープ材17は、板ガラス11の下縁部の一部に貼着されるが、一対の板ガラス11,12の少なくとも一方における下縁部の一部に貼着されてもよい。また、テープ材57は、一対の板ガラス41,42を有する合わせガラスの下縁部に貼着されるが、板ガラス41,42,43の少なくとも1つにおける下縁部の一部に貼着されてもよい。
【0069】
さらに、テープ材17は、板ガラス11の側縁部11c,11dの一部又は全部に貼着されるが、板ガラス11,12の少なくとも一方における側縁部に貼着されてもよい。加えて、テープ材17は、板ガラス11の上縁部11aの一部又は全部に貼着されるが、板ガラス11,12の少なくとも一方における側縁部に貼着されてもよい。
【0070】
また、テープ材17,57の厚さは50μmであるが、これに限るものではなく、複層ガラス10が嵌め込まれる複層ガラス保持部材20の内法寸法に応じて適宜変更される。
【0071】
さらに、テープ材17,57は金属製であるが、樹脂製であってもよく、また、板ガラス11又は板ガラス41,42の周縁部を保護し得るものであれば如何なる材質であってもよい。
【0072】
本実施の形態では、板ガラス11の下縁部11bにおける外周面は板ガラス11の外側方向に突出している曲面であるが、これに限るものではなく、板ガラス11,12の少なくとも一方の下縁部における外周面が板ガラス11,12の外側方向に突出している曲面であってもよい。また、板ガラス11,12の各下縁部における外周面が板ガラス11,12の主面に対して略直角であってもよい。
【0073】
また、板ガラス12はフロート板ガラスであるが、これに限るものではなく、上記のような用途に応じて、例えば、型板ガラス、表面処理により光拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入板ガラス、倍強化ガラス、低反射ガラス、高透過板ガラス、セラミック板ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラス、又は、これらの組み合わせ等、種々のガラスを適宜選択して使用することができる。
【0074】
さらに、板ガラス11の組成についても、ソーダ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、各種結晶化ガラス等を使用することができる。また、一対の板ガラス11,12の厚さについても、適宜選択自由である。
【0075】
本実施の形態では、中間膜48,49は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)製フィルムで構成されるが、これに限るものではなく、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、部分ケン化されたエチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリレート共重合体、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂とアルキルベンジルフタレートから成るプラスチゾル等のフィルムで構成されてもよく、また、ガラスとの密着性、透明性、衝撃エネルギー吸収性等の観点から、特に自動車分野においては、ポリビニルブチラール樹脂に代表されるポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる厚さ0.1〜1.5mm程度のポリビニルアセタール樹脂製フィルムが最も好ましく、また、建材用等の分野においては、部分ケン化されたエチレン/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等の樹脂製フィルムで構成されてもよい。
【0076】
また、中間膜48,49は、中間膜自体に紫外線カット性、電磁波シールド性等が付与された機能性膜であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係る複層ガラスを備える複層ガラス体の構成を概略的に示す部分断面斜視図である。
【図2】図1における複層ガラスの部分断面図である。
【図3】図2における複層ガラスを板ガラス側から見た断面斜視図である。
【図4】図3におけるテープ材の変形例を示す図であり、(a)〜(d)は、夫々第1〜第4の変形例を示す。
【図5】図2における複層ガラスの変形例を示す部分断面図である。
【図6】従来の複層ガラスの部分断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 複層ガラス
11 板ガラス
11b 下縁部
17 テープ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定間隔を隔ててほぼ直立状態で対向する複数の板ガラスを備える複層ガラスにおいて、前記複数の板ガラスの少なくとも1つにおける周縁部の一部に貼着されたテープ材を有することを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】
前記テープ材は、前記複数の板ガラスの少なくとも1つにおける下縁部に貼着されることを特徴とする請求項1記載の複層ガラス。
【請求項3】
複数の板ガラスは一対の板ガラスからなることを特徴とする請求項1又は2記載の複層ガラス。
【請求項4】
前記一対の板ガラス間に介装されたスペーサと、前記スペーサの外側において前記一対の板ガラス間に充填され、前記スペーサを外部からシールする二次シール材とを有し、
前記テープ材は、前記二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されることを特徴とする請求項3記載の複層ガラス。
【請求項5】
前記一対の板ガラスの一方は熱強化処理が施された熱強化板ガラスであり、前記テープ材は前記熱強化板ガラスの下縁部に貼着されることを特徴とする請求項3又は4記載の複層ガラス。
【請求項6】
前記下縁部における外周面は、前記板ガラスの外側方向に突出している曲面であることを特徴とする請求項5記載の複層ガラス。
【請求項7】
前記複数の板ガラスは、一対の板ガラス間に中間膜を介装した合わせガラスと、前記一対の板ガラスの一方と所定間隔を隔てて対向する他の板ガラスとを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の複層ガラス。
【請求項8】
前記合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に介装されたスペーサと、前記スペーサの外側において前記合わせガラスにおける一対の板ガラスの一方と他の板ガラスとの間に充填され、前記スペーサを外部からシールする二次シール材とを有し、
前記テープ材は、前記二次シール材の外表面の少なくとも一部が露出するように貼着されることを特徴とする請求項7記載の複層ガラス。
【請求項9】
前記テープ材は前記合わせガラスの下縁部に貼着されることを特徴とする請求項7又は8記載の複層ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−39299(P2007−39299A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227932(P2005−227932)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】