説明

複層塗膜形成方法

【課題】環境への負荷が少ない化成処理剤を用いており、そして種々の金属に対して良好な塗膜を形成することができる、複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および、得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、を包含する、複層塗膜形成方法であって;被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cmであり;この電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および;この化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤である、複層塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への負荷が少ない化成処理剤を用いており、そして種々の金属に対して良好な塗膜を形成することができる、複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。さらに電着塗装は、被塗物に高い防食性を与えることができ、被塗物の保護効果にも優れている。
【0003】
このようなカチオン電着塗装を施す被塗物には、通常、電着塗装の前に化成処理が施される。化成処理を施すことによって、耐食性、塗膜密着性等の性質を向上させることができる。しかしながら塗膜の密着性や耐食性をより向上させることができる観点から従来用いられてきたクロメート処理は、近年、クロムの有害性が指摘されるようになっており、クロムを含まない化成処理剤の開発が必要とされてきた。このようなクロムを含まない化成処理剤として、リン酸亜鉛を含む化成処理剤が用いられている(例えば、特開平10−204649号公報(特許文献1)参照)。
【0004】
しかしながら、リン酸亜鉛系処理剤は、金属イオン及び酸濃度が高くそして非常に反応性の強い処理剤であるため、排水処理における経済性および作業性が劣るという欠点がある。更に、リン酸亜鉛系処理剤を用いて金属表面処理を行う際には、水に不溶である塩類が生成して沈殿となって析出する。このような沈殿物は一般にスラッジと呼ばれる。リン酸亜鉛系処理剤を用いる場合は、塗装工程において発生するこのスラッジを除去し、廃棄するのに必要とされるコストの発生などが問題となっている。さらに、リン酸亜鉛系処理剤中に含まれるリン酸イオンは、環境に富栄養化をもたらすことがあり、これにより環境に対して負荷を与えるおそれがある。そのため、リン酸亜鉛系処理剤は、廃液の処理に際して多大な労力を必要とするという問題もある。更に、リン酸亜鉛系処理剤による金属表面処理においては、表面調整を行うことが必要とされており、工程が長くなるという問題もある。
【0005】
このようなリン酸亜鉛系処理剤又はクロメート化成処理剤以外の金属表面処理剤として、ジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤が知られている(例えば、特開平7−310189号公報(特許文献2)参照)。このようなジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤は、スラッジの発生が抑制される点で上述したようなリン酸亜鉛系処理剤に比べて優れた性質を有している。
【0006】
しかしながら、このようなジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤により得られる化成処理膜は、被塗物である基材の部位(形状)の違いによって被膜析出量が大きく異なるという問題があった。このため、自動車車体等の複雑な形状を有する被塗物の化成処理剤として用いるのは困難であった。
【0007】
このようなジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤に、リン酸イオン等の成分を加えることによって、密着性の向上や耐食性を改善する方法も考えられる。しかしながら、リン酸イオンを併用した場合、上述したような富栄養化という問題が生じる。
【0008】
特開2002−60699号公報(特許文献3)には、上述したような塗膜密着性の問題を改善したジルコニウム化合物含有金属表面処理剤として、リン酸イオンを含まず、ジルコニウム化合物、バナジウム、及び、樹脂からなる金属表面処理剤について記載されている。しかしながらこの金属表面処理剤は、バナジウムを含むため人体に対する有害性や廃液処理の問題等を生じる点で好ましくない。
【0009】
上記不具合の解決を図ったジルコニウム化合物含有金属表面処理剤に関して、本願出願人による特開2004−218070号公報(特許文献4)、特開2004−218073号公報(特許文献5)そして特開2004−218075号公報(特許文献6)は、ジルコニウム等、フッ素、そして密着性および耐食性付与剤を含む化成処理剤を開示している。しかしながらこの化成処理剤は、冷延鋼板などの特定の材料に対する化成処理膜形成能力が、リン酸亜鉛系処理剤と比較して劣り、その後の電着塗膜の形成においてつきまわり性が低下するという不具合が生じることが判明してきた。特に自動車車体等の塗装においては、種々の金属素材から構成される被塗物も多く含まれる。そのためこの問題の解決が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開平10−204649号公報
【特許文献2】特開平7−310189号公報
【特許文献3】特開2002−60699号公報
【特許文献4】特開2004−218070号公報
【特許文献5】特開2004−218073号公報
【特許文献6】特開2004−218075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、環境への負荷が少ない化成処理剤を用いており、そしてつきまわり性を維持しつつ種々の金属に対して良好な塗膜を形成することができる、化成処理膜形成工程および電着塗膜形成工程からなる複層塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する、複層塗膜形成方法であって、
被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cmであり、
この電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および
この化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
この密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
複層塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0013】
上記バインダー樹脂は、ガラス転移温度が20〜40℃であるのがより好ましい。
【0014】
また、上記カチオン電着塗料組成物は中和酸を含み、この中和酸の量はバインダー樹脂固形分100gに対して18〜25mg当量であるのがより好ましい。
【0015】
さらに、上記カチオン電着塗料組成物中に含まれる溶剤含有量が0.1〜1.0重量%であるのがより好ましい。
【0016】
本発明はさらに、上記複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜も提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、環境への負荷が少ない化成処理剤を用いて、優れた塗膜物性を有する、化成処理膜および電着塗膜から構成される複層塗膜を得ることができる。本発明の複層塗膜形成方法は、つきまわり性に優れているため、自動車車体などの複雑な形状を有する被塗物の塗装に特に好適である。本発明の複層塗膜形成方法はまた、冷延鋼板そして亜鉛めっき鋼板などの基材に対しても、優れたつきまわり性を発揮する。本発明の方法は、有害な重金属等を含まず、さらにスラッジも発生しない化成処理剤を用いて、優れた塗膜物性を有する複層塗膜を形成することができる。なおつきまわり性とは、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質をいう。下塗り塗装である化成処理および電着塗装においては、高つきまわり性であることが求められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の複層塗膜形成方法は、
化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する方法である。以下、各工程において用いられる化成処理剤およびカチオン電着塗料組成物について、順次記載する。
【0019】
化成処理剤
本発明で用いることができる化成処理剤は、
ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
化成処理剤、である。この化成処理剤は、リン酸イオンや、有害な重金属イオンを実質的に含有しないという特徴を有する。
【0020】
ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)
上記化成処理剤に含まれるジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)は、化成処理膜形成成分である。ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)を含む化成処理膜が被塗物に形成されることにより、被塗物の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、次に形成される塗膜との密着性を高めることができる。
【0021】
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、KZrF等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NHZrF等のフルオロジルコネート;HZrF等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0022】
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NHTiF等のフルオロチタネート;HTiF等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
【0023】
上記ハフニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等を挙げることができる。上記ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF2−、TiF2−、HfF2−からなる群より選択される少なくとも一種を有する化合物が好ましい。
【0024】
上記化成処理剤に含まれる、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)の含有量は、金属換算で下限20ppm、上限10000ppmの範囲であることが好ましい。上記下限未満であると得られる化成処理膜の性能が不充分であり、上記上限を超えると、それ以上の効果は望めず経済的に不利である。上記下限は50ppmがより好ましく、上記上限は2000ppmがより好ましい。
【0025】
フッ素(B)
上記化成処理剤に含まれるフッ素(B)は、被塗物のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素の供給源としては特に限定されず、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
【0026】
密着性および耐食性付与剤(C)
本発明において用いることができる化成処理剤は、さらに、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する。本発明において密着性および耐食性付与剤(C)とは、下記(a)〜(h)からなる群より選択される少なくとも一種を含有するものである。密着性および耐食性付与剤(C)を配合することにより、化成処理膜の安定性及び塗膜密着性を改善し、従来のジルコニウム化合物からなる表面処理剤による処理が不適であった鉄系基材に対しても良好な化成処理膜を形成することができる。
【0027】
上記亜鉛イオン、マンガンイオン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)は、それぞれ2価又は3価の価数を有する金属イオンである。上記イオンのなかでも、亜鉛イオンが好ましい。上記化成処理剤における含有量は、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。1ppm未満であると、得られる化成処理膜の耐食性が低下して好ましくない。5000ppmを超えると、それ以上の効果の向上はみられず経済的に不利であり、塗装後密着性が低下するおそれがある。上記下限は、20ppmがより好ましく、上記上限は、2000ppmがより好ましい。
【0028】
上記アルカリ土類金属イオン(b)としては特に限定されず、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン等を挙げることができるが、なかでも、マグネシウムイオンが好ましい。上記アルカリ土類金属イオンの含有量は、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。1ppm未満であると、得られる化成処理膜の耐食性が低下して好ましくない。5000ppmを超えると、それ以上の効果の向上はみられず経済的に不利であり、塗装後密着性が低下するおそれがある。上記下限は、20ppmがより好ましく、上記上限は、2000ppmがより好ましい。
【0029】
上記13族元素の金属イオン(c)としては、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオンを挙げることができるが、なかでもアルミニウムイオンが好ましい。上記周期律表13族元素の金属イオンの含有量は、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。1ppm未満であると、得られる化成処理膜の耐食性が低下して好ましくない。5000ppmを超えると、それ以上の効果の向上はみられず経済的に不利であり、塗装後密着性が低下する場合もある。上記下限は、5ppmがより好ましく、上記上限は、2000ppmがより好ましい。
【0030】
上記銅イオン(d)の含有量は、下限0.5ppm、上限100ppmの範囲内であることが好ましい。0.5ppm未満であると、得られる化成処理膜の耐食性が低下して好ましくない。100ppmを超えると、亜鉛系基材及びアルミニウム系基材に対して負の作用をもたらすおそれがある。上記下限は、2ppmがより好ましく、上記上限は、50ppmがより好ましい。上記銅イオンは、特に、被塗物表面に置換めっきすることにより化成処理膜を安定化する効果が高いため、他の成分と比較して少量で高い効果を得ることができると推測される。
【0031】
上記(a)、(b)、(c)及び(d)の各成分の供給源としては特に限定されず、例えば、硝酸化物、硫酸化物、又は、フッ化物等として化成処理剤に配合することができる。なかでも、化成反応に悪影響を与えないため、硝酸化物が好ましい。
【0032】
上記ケイ素含有化合物(e)としては特に限定されず、例えば、水分散性シリカ等のシリカ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸塩化合物、ケイ酸エステル類、ジエチルシリケート等のアルキルシリケート類等を挙げることができる。なかでも、化成処理膜のバリアー性を高める効果があることからシリカが好ましく、化成処理剤中での分散性が高いことから水分散性シリカがより好ましい。上記水分散性シリカとしては特に限定されず、例えば、ナトリウム等の不純物が少ない、球状シリカ、鎖状シリカ、アルミ修飾シリカ等を挙げることができる。上記球状シリカとしては特に限定されず、例えば、「スノーテックスN」、「スノーテックスO」、「スノーテックスOXS」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスXS」、「スノーテックスAK」、「スノーテックスOUP」、「スノーテックスC」、「スノーテックスOL」(いずれも日産化学工業株式会社製)等のコロイダルシリカや、「アエロジル」(日本アエロジル株式会社製)等のヒュームドシリカ等を挙げることができる。上記鎖状シリカとしては特に限定されず、例えば、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−MO」、「スノーテックスPS−SO」(いずれも日産化学工業株式会社製)等のシリカゾル等を挙げることができる。上記アルミ修飾シリカとしては、「アデライトAT−20A」(旭電化工業株式会社製)等の市販のシリカゾル等を挙げることができる。上記ケイ素含有化合物は、単独で用いるものであってもよいが、上述した(a)〜(d)の金属イオンと組み合わせて使用したときによりすぐれた効果を発揮する。
【0033】
上記ケイ素含有化合物(e)の含有量は、ケイ素成分として、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。1ppm未満であると、得られる化成処理膜の耐食性が低下して好ましくない。5000ppmを超えると、それ以上の効果の向上はみられず経済的に不利であり、塗装後密着性が低下するおそれがある。上記下限は、5ppmがより好ましく、上記上限は、2000ppmがより好ましい。なお、上記(a)〜(e)の密着性付与成分は、同時に耐食性を付与する効果もあると考えられる。
【0034】
上記ポリアミン水溶性樹脂(f)は、下記式(1)
【0035】
【化1】

【0036】
および/または、下記式(2)
【0037】
【化2】

【0038】
で表される構成単位を、樹脂骨格の少なくとも一部として有する樹脂である。上記樹脂からなる化成処理膜は、上記樹脂に含まれるアミノ基の作用により、被塗物及び塗膜との密着性が高くなる化成処理膜を形成することができると考えられる。上記水溶性樹脂(f)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。
【0039】
上記水溶性樹脂(f)は、下記式(1)
【0040】
【化3】

【0041】
で表される構成単位のみからなる重合体であるポリビニルアミン樹脂、
及び/又は、下記式(2)
【0042】
【化4】

【0043】
で表される構成単位のみからなる重合体であるポリアリルアミン樹脂、
が特に好ましい。上記ポリビニルアミン樹脂及びポリアリルアミン樹脂は、特に、密着性を向上する効果に優れているという利点を有する。上記ポリビニルアミン樹脂としては特に限定されず、PVAM−0595B(三菱化学株式会社製)等の市販のポリビニルアミン樹脂を使用することができる。上記ポリアリルアミン樹脂としては特に限定されず、例えば、PAA−01、PAA−10C、PAA−H−10C、PAA−D11HCl(いずれも日東紡株式会社製)等の市販のポリアリルアミン樹脂を使用することができる。また、ポリビニルアミン樹脂とポリアリルアミン樹脂とを併用して使用するものであってもよい。
【0044】
上記ポリアミン水溶性樹脂(f)は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記ポリビニルアミン樹脂及び/又はポリアリルアミン樹脂のアミノ基の一部をアセチル化する等の方法によって修飾したもの、アミノ基の一部又は全部が酸により中和されたもの、溶解性に影響を与えない範囲で架橋剤によって架橋したもの等も使用することができる。
【0045】
上記ポリアミン水溶性樹脂(f)は、樹脂100g当たり、下限0.01モル、上限2.3モルの範囲内のアミノ基を有することが好ましい。0.01モル未満であると、充分な効果が得られず好ましくない。2.3モルを超えると、目的とする効果が得られないおそれがある。上記下限は、0.1モルがより好ましい。
【0046】
本発明にかかる化成処理剤における上記ポリアミン水溶性樹脂(f)の含有量は、固形分で下限5ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。5ppm未満であると、充分な塗膜密着性を有する化成処理膜が得られず好ましくない。5000ppmを超えると、皮膜形成を阻害するおそれがある。上記下限は、10ppmがより好ましく、上記上限は、500ppmがより好ましい。
【0047】
上記ポリアミン水溶性樹脂(f)は、数平均分子量が下限500、上限500000の範囲内であることが好ましい。500未満であると、充分な塗膜密着性を有する化成処理膜が得られず好ましくない。500000を超えると、皮膜形成を阻害するおそれがある。上記下限は、5000がより好ましく、上記上限は、70000がより好ましい。
【0048】
上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)としては、必要量を化成処理剤中に溶解できる程度の溶解性を有するものであれば、特に限定されない。上記アミノ基としては特に限定されず、例えば、−NH基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノヒドロキシアミノ基、ジヒドロキシアミノ基、その他1級〜3級のアミンを有する化合物等を挙げることができる。
【0049】
上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)は、エポキシ樹脂を骨格とするものであってよい。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加型エポキシ樹脂、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加型エポキシ樹脂等を挙げることができる。なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールFエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0050】
上記骨格を形成するエポキシ樹脂にアミノ基を導入する反応としては特に限定されるものではなく、溶媒中でエポキシ樹脂とアミン化合物とを混合する方法等を挙げることができる。
【0051】
上記化成処理剤は、上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)を固形分で、下限が20ppm、上限5000ppmの範囲内で含有することが好ましい。20ppm未満であると、得られる化成処理膜中において、適正な塗装後性能が得られないおそれがあり、5000ppmを超えると、効率的に化成処理膜が形成されないおそれがある。より好ましい下限は50ppm、より好ましい上限は1000ppmである。
【0052】
上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)は、更に、イソシアネート基を有するものであることが好ましい。上記イソシアネート基を有することによって、エポキシ化合物との間に架橋反応を生じ、これによって皮膜の物性が向上する点で好ましい。上記イソシアネート基は、ブロック剤でブロックされたブロックイソシアネート基であることが好ましい。ブロックされていることによって、化成処理剤中に安定に配合することができる。
【0053】
上記ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基の一部がブロックされたポリイソシアネート化合物をエポキシ化合物と反応させることによってエポキシ化合物中に導入することができる。上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0054】
上記ブロック剤としては特に限定されず、例えば、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(又は芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類等を挙げることができる。オキシム類及びラクタム類のブロック剤は低温で解離するため、樹脂硬化性の観点からより好ましい。
【0055】
上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)としては、アデカレジンEM−0436シリーズ、アデカレジンEM−0436Fシリーズ、アデカレジンEM0718シリーズ(いずれも旭電化工業社製)等の市販の製品を使用することもできる。
【0056】
上記アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)は、更にリン元素を有するものであってもよい。上記リン元素は、リン酸エステル基として上記アミノ基を有する化溶性エポキシ化合物中に含まれることが好ましい。上記リン酸エステル基は、部分的にアルキル化されたものであってもよい。上記リン酸エステル基は、上記エポキシ基とリン酸化合物との反応によってエポキシ化合物に導入することができる。
【0057】
上記シランカップリング剤、及び/又は、その加水分解物(h)を化成処理剤に配合することによって、得られる化成処理膜と被塗物が水素結合的に吸着し、安定性及び密着性が向上すると考えられる。
【0058】
上記シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、信越化学工業、日本ユニカー、チッソ、東芝シリコーン等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、密着性の向上において特に優れた効果を有することから、アミノ基を有するアミノシランカップリング剤を使用することがより好ましい。
【0059】
上記シランカップリング剤の加水分解物は、従来公知の方法、例えば、上記アミノ基含有シランカップリング剤をイオン交換水に溶解し、任意の酸で酸性に調整する方法等により製造することができる。上記シランカップリング剤の加水分解物としては、KBP−90、KBP−60、KBP−40、KBP−41、KBP−43、KBP−44、X−12−414(いずれも信越シリコーン社製)等の市販の製品を使用することもできる。なかでも、密着性向上の観点から、KBP−90が好ましい。
【0060】
本発明にかかる化成処理剤における上記シランカップリング剤、及び/又は、その加水分解物(h)の含有量は、下限5ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。5ppm未満であると、充分な密着性を有する化成処理膜が得られず好ましくない。5000ppmを超えると、皮膜形成を阻害するおそれがある。上記下限は、30ppmがより好ましく、上記上限は、2000ppmがより好ましい。
【0061】
上記(a)〜(h)の各成分は、単独で使用するものであってもよいが、必要に応じて2以上の成分を併用して使用するものであってもよい。2以上の成分を同時に使用する場合、各成分毎の含有量がそれぞれ上記範囲内にあることが好ましく、各成分の合計量は、特に限定されるものではない。特に好ましい組み合わせとしては、(a)+(b)、(a)+(b)+(d)+(f)、(a)+(b)+(c)+((f)又は(g))、(a)+(b)+((e)、(f)又は(h))、(a)+(b)+(e)+((f)、(g)又は(h))を挙げることができる。
【0062】
化成反応促進剤
本発明にかかる化成処理剤は、必要に応じてさらに化成反応促進剤を含有してもよい。化成反応促進剤を含有することにより、得られる化成処理膜の膜厚が場所によって不均一になるという問題を解決することができる。従来のジルコニウム化合物からなる表面処理剤により、エッジ部を有する被塗物を処理すると、エッジ部でアノード溶解反応が選択的に生じるため、カソード反応がエッジ部近傍で起こりやすくなり、結果としてエッジ部近傍に皮膜が析出しやすくなる。一方、被塗物の平面部では、アノード溶解反応が起こりにくいため、皮膜の析出が抑制される。このため、得られる化成処理膜にムラが生じる。本発明における化成反応促進剤は、上述したような問題を解決するために使用される化合物であり、化成処理剤に配合することによって、上述したエッジ部及び平面部における化成処理反応の差を生じることなく化成処理を行うことができるようにする性質を有するものである。
【0063】
上記化成反応促進剤は、亜硝酸イオン、ニトロ基含有化合物、硫酸ヒドロキシルアミン、過硫酸イオン、亜硫酸イオン、次亜硫酸イオン、過酸化物、鉄(III)イオン、クエン酸鉄化合物、臭素酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、並びに、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種であるが、なかでも、エッチング反応を効率よく促進するため、酸化作用を有するもの又は有機酸が好ましい。
これらの化成反応促進剤を化成処理剤に配合することにより、皮膜析出の偏りを調整し、被塗物のエッジ部及び平面部においてもムラのない良好な化成処理膜を得ることができる。
【0064】
上記亜硝酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム等を挙げることができる。上記ニトロ基含有化合物としては特に限定されず、例えば、ニトロベンゼンスルホン酸、ニトログアニジン等を挙げることができる。上記過硫酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、Na、K等を挙げることができる。上記亜硫酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等を挙げることができる。上記次亜硫酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸アンモニウム等を挙げることができる。上記過酸化物としては特に限定されず、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム等を挙げることができる。
【0065】
上記鉄(III)イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等を挙げることができる。上記クエン酸鉄化合物としては特に限定されず、例えば、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸鉄カリウム等を挙げることができる。上記臭素酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸アンモニウム等を挙げることができる。上記過塩素酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0066】
上記塩素酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム等を挙げることができる。上記亜塩素酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム等を挙げることができる。上記アスコルビン酸及びその塩としては特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸アンモニウム等を挙げることができる。上記クエン酸及びその塩としては特に限定されず、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム等を挙げることができる。上記酒石酸及びその塩としては特に限定されず、例えば、酒石酸、酒石酸アンモニウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム等を挙げることができる。上記マロン酸及びその塩としては特に限定されず、例えば、マロン酸、マロン酸アンモニウム、マロン酸カリウム、マロン酸ナトリウム等を挙げることができる。上記コハク酸及びその塩としては特に限定されず、例えば、コハク酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸アンモニウム等を挙げることができる。上述した化成反応促進剤は、単独で使用するものであってもよいが、必要に応じて2以上の成分を使用するものであってもよい。
【0067】
本発明にかかる化成処理剤における上記化成反応促進剤の配合量は、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内である。1ppm未満であると、充分な効果が得られず好ましくない。5000ppmを超えると、皮膜形成を阻害するおそれがある。上記下限は、3ppmが好ましく、5ppmがより好ましい。上記上限は、2000ppmが好ましく、1500ppmがより好ましい。
【0068】
化成処理剤の調製
化成処理剤は、上記成分(A)、(B)および(C)を水性溶媒中に混合することによって調製することができる。水性溶媒としては、水道水、イオン交換水、純水などを用いることができる。水性溶媒は、必要に応じて少量のアルコール類などを含んでいてもよい。なお、本発明にかかる化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含有しないものであることが好ましい。実質的にリン酸イオンを含まないとは、リン酸イオンが化成処理剤中の成分として作用する程含まれていないことを意味する。本発明にかかる化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含まないことから、環境負荷の原因となるリンを実質的に使用することがなく、リン酸亜鉛処理剤を使用する場合に発生するリン酸鉄、リン酸亜鉛等のようなスラッジの発生を抑制することができる。
【0069】
本発明にかかる化成処理剤は、pHが下限1.5、上限6.5での範囲内であることが好ましい。1.5未満であると、エッチング過剰となり充分な皮膜形成ができなくなる。6.5を超えると、エッチングが不充分となり良好な皮膜が得られない。上記下限は、2.0がより好ましく、上記上限は、5.5がより好ましい。上記下限は、2.5が更に好ましく、上記上限は、5.0が更に好ましい。pHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。
【0070】
化成処理膜形成工程
上記化成処理剤を用いて被塗物の表面に化成処理膜を形成する方法は、特に限定されるものではなく、通常の処理条件によって化成処理剤と被塗物表面とを接触させることによって行うことができる。上記化成処理における処理温度は、下限20℃、上限70℃の範囲内であることか好ましい。上記下限は30℃であることがより好ましく、上記上限は50℃であることがより好ましい。上記化成処理における化成時間は、下限5秒、上限1200秒の範囲内であることが好ましい。上記下限は30秒がより好ましく、上記上限は120秒がより好ましい。化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
【0071】
被塗物の表面は、化成処理を行う前に、予め脱脂処理、脱脂後水洗処理を行っておくのが好ましい。また、化成処理後には化成後水洗処理を行うのが好ましい。ここで脱脂処理は、被塗物の表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
【0072】
脱脂後水洗処理は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理を行うことにより行われるものである。
【0073】
化成後水洗処理は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。また、本発明にかかる化成処理剤を使用する化成処理は、従来より実用化されているリン酸亜鉛系化成処理剤を用いて処理する方法において、必要となっている表面調整処理を行わなくてもよいため、より少ない工程で被塗物に化成処理膜を形成することが可能となる。
【0074】
本発明にかかる化成処理剤を使用する化成処理においては、上記化成後水洗処理の後における乾燥工程は必ずしも必要ではない。乾燥工程を行わず化成処理膜がウェットな状態のまま、塗装を行っても得られる性能に影響は与えない。また、乾燥工程を行う場合は、冷風乾燥、熱風乾燥等を行うことが好ましい。熱風乾燥を行う場合、有機分の分解を防ぐためにも、300℃以下が好ましい。
【0075】
本発明にかかる化成処理剤は、従来のジルコニウム等からなる化成処理剤での前処理が不適であった鉄系基材に対しても、充分な塗膜密着性を付与することができるという利点を有する。本発明にかかる化成処理剤は、少なくとも一部に鉄系基材を含む被処理物の処理にも使用することができる点において優れた性質を有するものである。
【0076】
本発明にかかる化成処理剤により得られる化成処理膜は、皮膜量が化成処理剤に含まれる金属の合計量とエポキシ化合物に含まれる炭素量との合計量で下限0.1mg/m、上限500mg/mの範囲内であることが好ましい。0.1mg/m未満であると、均一な化成処理膜が得られず好ましくない。500mg/mを超えると、経済的に不利である。上記下限は、5mg/mがより好ましく、上記上限は、200mg/mがより好ましい。
【0077】
カチオン電着塗料組成物
本発明の方法は、まず被塗物に化成処理膜を形成し、次いでカチオン電着塗料組成物を用いて電着塗膜を形成する。本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、水性溶媒、水性溶媒中に分散するかまたは溶解した、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、溶剤、そして必要に応じた顔料を含む。
【0078】
カチオン性エポキシ樹脂
代表的なカチオン性エポキシ樹脂として、アミン変性エポキシ樹脂が挙げられる。本発明においては、カチオン性エポキシ樹脂として、アミン変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0079】
アミン変性エポキシ樹脂
アミン変性エポキシ樹脂は、電着塗料組成物において一般に使用されるアミンで変性されたエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。アミン変性エポキシ樹脂として、当業者に公知のアミン変性エポキシ樹脂および市販のエポキシ樹脂をアミン変性したものなどを使用することができる。
【0080】
好ましいアミン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるアミン変性エポキシ樹脂である。一般に、アミン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩等のアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などである。
【0081】
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
【0082】
【化5】

【0083】
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を、アミン変性エポキシ樹脂の調製に用いて、アミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を調製してもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このアミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
【0084】
出発原料であるエポキシ樹脂は、必要に応じて、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。
【0085】
また、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、エポキシ樹脂の一部のオキシラン環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
【0086】
エポキシ樹脂のオキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用することができるアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
【0087】
ブロックイソシアネート硬化剤
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0088】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0089】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤として使用してよい。
【0090】
脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
【0091】
本発明においては、ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むポリイソシアネートを使用するのが好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むポリイソシアネートを使用することにより、高いつきまわり性を得ることができるからである。
【0092】
本発明で使用されるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)として、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、またはこれらの混合物、あるいは一般にクルードMDIといわれる多核体との混合物、の何れも使用することができる。
【0093】
ブロックイソシアネート硬化剤は、イソシアネート基末端前駆体の遊離のイソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温では不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。
【0094】
ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤として、例えば1−クロロ−2−プロパノール、n−プロパノール、フルフリルアルコール、アルキル基置換フルフリルアルコールなどの脂肪族または複素環式アルコール類、フェノール、m−クレゾール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール類、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸エチルなどの活性メチレン化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのカプロラクタム類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルなど、を挙げることができる。なおこれらのブロック剤は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上のものを併用してもよい。
【0095】
本発明においては、ブロックイソシアネート硬化剤として、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むポリイソシアネートを、プロピレングリコールを含むブロック剤でブロックしたブロックイソシアネート硬化剤を用いるのが好ましい。このようなブロックイソシアネート硬化剤を用いることによって、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)を高く設定することができ、例えばバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)を20〜40℃に調節することができる。
【0096】
顔料
本発明の方法に用いられるカチオン電着塗料組成物は、顔料を含んでもよい。含まれうる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
【0097】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0098】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂と顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
【0099】
他の成分
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のための解離触媒を含んでもよい。このような解離触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部であるのが好ましい。
【0100】
カチオン電着塗料組成物は、上記のほかにさらに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。また必要に応じて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等の樹脂成分をさらに含んでもよい。
【0101】
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、そして顔料分散ペーストおよび必要に応じた触媒を水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂のエマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0102】
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して、18〜25mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は20mg当量であるのがより好ましく、上記上限は23mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が18mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、安定性に欠ける状態となるおそれがある。一方、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0103】
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤を、水性溶媒に分散させることにより、調製することができる。ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましいブロックイソシアネート硬化剤の量は、カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜55/45の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0104】
カチオン性エポキシ樹脂と硬化剤とを含むバインダー樹脂は、一般に、電着塗料組成物の全固形分の50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
【0105】
溶剤は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶媒として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に溶剤が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。カチオン電着塗料組成物に通常含まれる溶剤としては、例えばメチルイソブチルケトン、プロピレングリコール、2−エチルヘキシルグリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒そしてケトン系溶媒などが挙げられる。
【0106】
従来の電着塗料組成物においては、樹脂成分からこれらの溶剤を完全には除去せず、また、別途溶剤を加えることにより、電着塗料組成物中の溶剤含有量をある程度高めている。一般的な電着塗料組成物の溶剤含有量は、重量基準で1〜5%程度である。溶剤とは、沸点250℃以下の溶剤のことをいい、上記で具体的に列挙したものが該当する。
【0107】
これに対し、本発明の電着塗料組成物では、溶剤の含有量を従来と比較して低くすることが好ましい。具体的には、電着塗料組成物の溶剤含有量を0.1〜1.0重量%とするのが好ましい。上記下限は0.2重量%であるのがより好ましい。また上記上限は0.7重量%であるのがより好ましい。電着塗料組成物の溶剤含有量が上記範囲から外れる場合は、析出塗膜に対する流動性が増加して塗膜抵抗値が減少し、塗料のつきまわり性が低下するおそれがある。
【0108】
電着塗料組成物の溶剤含有量を1.0重量%以下にする方法としては、反応温度を上げ低溶剤又は無溶剤で反応させることによって、反応時の粘度調整に使用される溶剤などを削減することができる。また、低沸点の溶媒を使用し、反応後に脱ソルベントなどの工程で回収することにより、溶剤含有量を下げることもできる。電着塗料組成物の溶剤含有量の測定は、内部標準法によるガスクロマトグラフィー測定を実施することにより、測定することができる。
【0109】
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)が20〜40℃であるのが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満である場合は、塗膜の粘性が低く塗膜抵抗値が十分ではなく所望の膜抵抗値を得ることができず、つきまわり性が劣ることとなるおそれがある。またガラス転移温度が40℃を越える場合は、電着塗装時の熱フローが十分得られず外観不良となるおそれがある。
【0110】
カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂のガラス転移温度を上記範囲とする方法として、例えば、分子量2000以上のカチオン性エポキシ樹脂を使用すること、カチオン性エポキシ樹脂中におけるアミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を使用すること、ブロックイソシアネート硬化剤の調製に用いられるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の比率を高くすること、などが挙げられる。なお、バインダー樹脂のガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計を用いて樹脂のガラス転移に伴う熱変化を検出することにより測定することができる。使用できる示差走査熱量計としては、例えば、セイコー電子工業社製DSC220C等を挙げることができる。
【0111】
電着塗膜形成
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常100〜300Vの電圧が印加される。印加電圧が100V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、300Vを超えると、特に亜鉛めっき鋼板などの塗装においてガスピンの塗膜不具合が発生し、異常外観となるおそれがある。電着塗装時の塗料組成物の浴液温度は、通常26〜32℃に調節される。電着塗膜の膜厚は10〜20μmとすることが好ましい。膜厚が10μm未満であると、防錆性が不充分であり、20μmを超えると、塗料の浪費につながる。
【0112】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼付けることによって、焼き付け硬化された電着塗膜が形成される。
【0113】
本発明の方法により形成される電着塗膜の膜抵抗は、膜厚15μmにおいて下限800kΩ・cm2、上限1600kΩ・cm2の範囲であることが好ましい。上記上限は1500kΩ・cm2であるのがより好ましい。電着塗膜の膜抵抗が800kΩ・cm2未満であると十分な電気抵抗が得られていない状態であり、つきまわり性に劣る状態となり、1600kΩ・cm2を超えると塗膜析出量が低下し、所定の膜厚が得られなくなるおそれがある。
【0114】
本発明の複層塗膜形成方法は、リン酸イオン、有害な重金属イオンなどを含有しない化成処理剤を用いつつ、優れたつきまわり性を発揮するという特徴を有している。なお、リン酸イオン、有害な重金属イオンなどを含有しない化成処理剤として、例えば、従来から用いられていた、密着性および耐食性付与剤を含有しないジルコニウム含有化成処理剤が挙げられる。このようなジルコニウム含有化成処理剤を用いて被塗物を処理する場合は、化成処理剤中に溶出した金属イオンがZrF2−のフッ素イオンを引き抜き、または、界面pHの上昇により、ジルコニウムの水酸化物又は酸化物が生成され、このジルコニウムの水酸化物又は酸化物が被塗物表面に析出すると考えられる。
【0115】
ところがこのようなジルコニウム含有化成処理剤を用いる場合は、化成処理膜の厚みムラが発生するという問題がある。このような皮膜の厚みムラの不具合は、被塗物のエッジ部及び平面部等のように形状の違う部位における皮膜析出量が異なることに由来する。
【0116】
また、化成処理方法として汎用されているリン酸亜鉛処理に代えて、密着性および耐食性付与剤を含有しないジルコニウム含有化成処理剤により被処理物を処理する場合は、特に鉄系基材においては充分な塗膜密着性が得られない等の不具合がある。本発明にかかる化成処理剤を用いることによって、上記のような問題は解決され、そして皮膜のムラを引き起こさず、鉄系基材に対しても充分な安定性及び塗膜密着性を有する化成処理膜を形成することができる。
【0117】
本発明にかかる化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種、そして密着性および耐食性付与剤を皮膜形成成分として含有する化成処理剤である。本発明にかかる化成処理剤は、化成処理膜の安定性を改善すると考えられることから、従来ジルコニウム等からなる化成処理剤での前処理が不適であった冷延鋼板または亜鉛めっき鋼板などの鉄系基材に化成処理膜を良好に形成することができる。そしてさらに本発明における電着塗料組成物を用いることによって、優れたつきまわり性が発揮されることとなる。
【0118】
上記化成処理剤はさらに、リン酸イオンを実質的に含まないため、環境に対する負荷が少なく、スラッジ(汚泥)も発生しないという利点も有している。さらに、上記化成処理剤を使用する化成処理は、表面調整工程を必要としないため、より少ない工程で被塗物の化成処理を行うことができる。
【0119】
本発明の方法により、上記化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成して、次いで電着塗膜を形成することにより、化成処理膜および硬化電着塗膜からなる複層塗膜を形成することができる。そしてこの複層塗膜は、上記利点に加えて、被塗物密着性および耐候性等に優れているという利点も有している。本発明の複層塗膜形成方法はさらに、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板などの種々の基材に対しても、耐候性等に優れる塗膜を形成することができるという利点も有している。
【実施例】
【0120】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0121】
製造例1 アミン変性エポキシ樹脂(1)の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、液状エポキシ(エポキシ当量188)940部、メチルイソブチルケトン(以下「(MIBK)」と略すこともある。)61.4部およびメタノール24.4部を仕込んだ。反応混合物は撹拌下室温から40℃まで昇温したあと、ジブチル錫ラウレート0.01部およびトリレンジイソシアネート(以下TDIと略すこともある。)21.75部を投入した。40〜45℃で30分間反応を継続した。反応はIRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0122】
上記反応物にポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル82.0部、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート 125.0部を添加した。反応は55℃〜60℃で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。続いて昇温し、100℃でN,N-ジメチルベンジルアミン2.0部投入し、130℃で保持し、分留管を用いメタノールを分留すると共に反応させたところ、エポキシ当量は284となった。
【0123】
その後、メチルイソブチルケトンで不揮発分95%となるまで希釈し反応混合物を冷却し、ビスフェノールA268.1部と2-エチルヘキサン酸93.6部を投入した。反応は120℃〜125℃で行い、そしてエポキシ当量が1320となったところで、メチルイソブチルケトンで不揮発分85%となるまで希釈し反応混合物を冷却した。ジエチレントリアミンの1級アミンをメチルイソブチルケトンブロックしたもの93.6部、N−メチルエタノールアミン65.2部を加え、120℃で1時間反応させた。こうして、アミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂固形分85%、分子量2820)を得た。
【0124】
製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤(1)の製造
クルードMDI 1330部およびメチルイソブチルケトン585.6部を反応容器に仕込み、これを85〜95℃まで加熱した後、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(分子量162)486部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、一時間保温した。その後メチルイソブチルケトン194.8部を投入し50℃まで冷却し、プロピレングリコール(分子量76)532部を滴下した。滴下完了後60℃に加温し、一時間保温した。ジブチル錫ラウレートを0.4部投入した後昇温し、70℃にて1時間保温した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、ガラス転位温度が8℃のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0125】
製造例3 顔料分散樹脂(1)の製造
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器にイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略す)2220部MIBK342.1部を仕込み、昇温し50℃でジブチル錫ラウレート2.2部を投入し60℃でメチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシムと略)878.7部を仕込んだ。その後、60℃で1時間保温し、NCO当量が348となっていることを確認し、ジメチルエタノールアミン890部を投入した。60℃で1時間保温しIRでNCOピークが消失していることを確認後60℃を超えないよう冷却しながら50%乳酸1872.6部と脱イオン水495部を投入して4級化剤を得た。ついで異なる反応容器にTDI870部およびMIBK49.5部を仕込み、50℃以上にならないように2−エチルヘキサノール667.2部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後MIBK35.5部を投入し、30分保温した。その後NCO当量が330〜370になっていることを確認しハーフブロックポリイソシアネートを得た。
【0126】
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、液状エポキシ940.0部メタノール38.5部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート0.1部を加えた。これを50℃に昇温した後、TDI87.1部投入さらに昇温した。100℃でN,N-ジメチルベンジルアミン1.4部を加え130℃で2時間保温した。このとき分留管によりメタノールを分留した。これを115℃まで冷却し、MIBKを固形分濃度90%になるまで仕込み、その後ビスフェノールA270.3部、2−エチルヘキサン酸39.2部を仕込み125℃で2時間加熱攪拌した後、前述のハーフブロックポリイソシアネート516.4部を30分間かけて滴下し、その後30分間加熱攪拌した。ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1506部を徐々に加え溶解させた。90℃まで冷却後、前述の四級化剤を加え、70〜80℃に保ち酸価2以下を確認して、顔料分散樹脂を得た(樹脂固形分30%)。
【0127】
製造例4 顔料分散ペースト(1)の製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂(1)を106.9部、カーボンブラック1.6部、カオリン40部、二酸化チタン55.4部、リンモリブデン酸アルミニウム3部、脱イオン水13部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分60%)。
【0128】
製造例5 アミン変性エポキシ樹脂(2)の合成
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188)752.0部、メタノール77.0部、メチルイソブチルケトン200.3部およびジラウリン酸ジブチルスズ0.3部を仕込み、室温で攪拌し均一溶液とし、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート80/20(質量比)混合物174.2部を50分間かけて滴下すると発熱により系内の温度が70℃に達した。IRスペクトルはイソシアネートに基づく2280cm−1の吸収の消失およびウレタンのカルボニル基に基づく1730cm−1の吸収の出現を示した。
【0129】
N,N−ジメチルベンジルアミン2.7部を加えた後、系内を120℃まで昇温し、副生するメタノールをデカンターを用いて留去させながらエポキシ当量が463に達するまで反応を行った。IRスペクトルはウレタンのカルボニル基に基づく1730cm−1の吸収の消失およびオキサゾリドン環のカルボニル基に基づく1750cm−1の吸収の出現を示した。
【0130】
オクチル酸158.3部およびメチルイソブチルケトン83.3部を加え125℃の温度を保持しながらエポキシ当量が1146に達するまで反応を行った。系内の温度が110℃になるまで冷却し、アミノエチルエタノールアミンのケチミン(79質量%のメチルイソブチルケトン溶液)47.2部、ジエタノールアミン42.0部、N−メチルエタノールアミン30.0部およびメチルイソブチルケトン17.3部を加えた後、昇温し、120℃で2時間反応させた。このようにして不揮発分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂を得た。
【0131】
製造例6 ブロック化脂肪族ポリイソシアネート硬化剤(2−1)の合成
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体(コロネートHX、日本ポリウレタン社製)199部、メチルイソブチルケトン122.8部、およびジブチルスズジラウレート0.2部を秤取し、50℃まで昇温した。外部から冷却して温度を50℃に保ちながらメチルエチルケトオキシム87部を2時間かけて滴下した。滴下終了後70℃に昇温し、この温度を保ちながらIR分析によりイソシアネート基が消失するまで反応させ、脂肪族ブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0132】
製造例7 ブロック化芳香族ポリイソシアネート硬化剤(2−2)の合成
製造例5と同様のフラスコに、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート723部、メチルイソブチルケトン350部およびジブチルスズジラウレート0.01部を仕込んだ。得られた反応混合物を70℃まで昇温し、その反応混合物が均一に溶解した後、ブチルセロソルブ546部に、ε−カプロラクタム131部を溶解させた後、その溶解物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃に保持したまま、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで反応を継続させて、ブロック化芳香族ポリイソシアネート硬化剤を得た(樹脂固形分80%)。
【0133】
製造例8 顔料分散樹脂(2)の製造
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ジブチルスズラウレート0.2部を加えた。その後、50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌しながら、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDIが得られた。
【0134】
次いで、エピコート828(油化シェルエポキシ社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量182〜194)376.0部、ビスフェノールA114.0部およびオクチル酸29.2部を、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に仕込んだ。反応混合物を窒素雰囲気中で130℃に加熱し、ジメチルベンジルアミン0.15部を添加して、発熱反応のもと170℃で1時間反応させることにより、エポキシ当量649のビスフェノールA型エポキシ樹脂を得た。
【0135】
次いで、140℃に冷却した後、上記で調整した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI396.8部を加え、140℃に1時間保持して反応させた。次に、エチレングリコールモノブチルエーテル323.2部を加えて希釈した後、その反応混合物を100℃に冷却した。次いで、アミノエチルエタノールアミンのメチルイソブチルモノケチミン化物の78.3%MIBK溶液188.8部を加えた。
【0136】
この混合物を110℃で1時間保温した後、90℃まで冷却し、イオン交換水360.0部を加えて、更に30分間攪拌を継続することにより、エポキシ樹脂中のケチミン化部分を1級アミノ基に転化した。この混合物から過剰の水とMIBKを減圧下で除去した後、エチレングリコールモノブチルエーテル588.1部で希釈して、1級アミノ基を有する顔料分散用樹脂を得た。(樹脂固形分50%)
【0137】
製造例9 顔料分散ペースト(2)の製造
サンドグラインドミルに、製造例8で得られた顔料分散樹脂(2)を固形分で60部、カーボンブラック2部、酸化チタン48部、焼成カオリン50部、そしてイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。
【0138】
製造例10 化成処理剤(1)の調製
ジルコンフッ化水素酸、硝酸亜鉛およびアミノ基含有シランカップリング剤(h)であるKBM−603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン:有効濃度100%:信越化学工業株式会社製)を使用して化成処理剤を調製した。これらを、ジルコニウム濃度250ppm、アミノ基含有シランカップリング剤濃度100ppm、亜鉛濃度500ppmとなるように、イオン交換水に加えて混合し、さらにクエン酸鉄(III)アンモニウムを化成反応促進剤として、濃度200ppmとなるように添加し、次いで水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整することによって、化成処理剤(1)を得た。
【0139】
比較製造例1 アミン変性エポキシ樹脂(3)の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル57部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体42部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0140】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
【0141】
続いて、ビスフェノールA61部およびオクチル酸33部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、ガラス転移温度が8℃のアミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%、分子量1510)を得た。
【0142】
比較製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤(3)の製造
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0143】
比較製造例3 顔料分散樹脂の製造
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0144】
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
【0145】
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0146】
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
【0147】
比較製造例4 顔料分散ペースト(3)の製造
サンドグラインドミルに比較製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0148】
比較製造例5 化成処理剤(2)の調製
ジルコンフッ化水素酸を使用して化成処理剤を調製した。ジルコニウム濃度250ppmとなるように、イオン交換水に加えて混合し、さらにクエン酸鉄(III)アンモニウムを化成反応促進剤として、濃度200ppmとなるように添加し、次いで水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整することによって、化成処理剤(2)を得た。
【0149】
比較製造例6 化成処理剤(3)の調製
リン酸亜鉛系化成処理剤であるサーフダインSD−6350(日本ペイント社製)を、化成処理剤(3)として用いた。
【0150】
実施例1
カチオン電着塗料組成物(1)の調製
製造例1で得られたアミン変性(オキサゾリドン環含有)エポキシ樹脂(1)と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤(1)を固形分比で70/30で均一になるよう混合した。さらに2−エチルヘキシルグリコールを樹脂固形分に対し3%添加したものに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が27になるよう氷酢酸で中和し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は34℃であった。なお本明細書において、ガラス転移温度の測定はセイコー電子工業社製DSC220Cを用いて測定した。
【0151】
このエマルション1730部および製造例4で得られた顔料分散ペースト(1)295部と、イオン交換水1970部およびジブチル錫オキサイド10部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物(1)を得た。このカチオン電着塗料組成物の溶剤含有量は0.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は23.0であった。
【0152】
複層塗膜形成
脱脂処理した冷延鋼板を、製造例10の化成処理剤(1)(温度40℃)中に60秒間浸漬処理して化成処理膜を形成した。化成処理膜の皮膜量は、10mg/mであった。なお皮膜量は、水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、80℃で5分間乾燥したうえで「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて、化成処理剤に含まれる金属の合計量として分析した。得られた被塗物を、次いで水道水で30秒間スプレー処理し、更にイオン交換水で10秒間スプレー処理した。
【0153】
その後、乾燥工程を経ることなく電着塗装を行った。得られたカチオン電着塗料組成物(1)を用いて、浴温30℃で、硬化電着塗膜の膜厚が15μmとなるように設定した塗装電圧で電着塗装した。ここでの塗装電圧を表に示す。水洗した後、160℃で20分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1230KΩ・cm2であった。
【0154】
実施例2
カチオン電着塗料組成物(2)の調製
製造例5のアミン変性エポキシ樹脂(2)とブロックイソシアネート硬化剤(2)(製造例6と製造例7のポリイソシアネート硬化剤の製造例6/製造例7の重量比1/1の混合物)を固形分配合比60:40で均一に混合した後、90%酢酸を加えてMEQ(A)が27となるように中和し、更にイオン交換水を加えてゆっくり希釈した。固形分が36.0%となるように減圧化でMIBKを除去して、バインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は25℃であった。
【0155】
このバインダー樹脂エマルション1500.0部に製造例9の顔料分散ペースト(2)541.7部をイオン交換水1674部及びジブチルスズオキサイド9.0部と混合して、エチレングリコールモノヘキシルエーテルを加え、固形分20.0%のカチオン電着塗料組成物(2)を調製した。このカチオン電着塗料組成物(2)の溶剤含有量は0.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は22であった。
【0156】
複層塗膜形成
得られたカチオン電着塗料組成物(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1020KΩ・cm2であった。
【0157】
実施例3
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1340KΩ・cm2であった。
【0158】
実施例4
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は実施例2と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1210KΩ・cm2であった。
【0159】
比較例1
カチオン電着塗料組成物(3)の製造
比較製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂(3)と比較製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤(3)とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が35になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は12℃であった。
【0160】
このエマルション1500部および比較製造例4で得られた顔料分散ペースト(3)540部と、イオン交換水1940部およびジブチル錫オキサイド10部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物(3)を得た。このカチオン電着塗料組成物(3)の溶剤含有量は1.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は25.7であった。
【0161】
複層塗膜形成
得られたカチオン電着塗料組成物(3)を用いて膜厚20μmの電着塗膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は660KΩ・cm2であった。
【0162】
比較例2
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は900KΩ・cm2であった。
【0163】
比較例3
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は770KΩ・cm2であった。
【0164】
比較例4
化成処理剤として、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は410KΩ・cm2であった。
【0165】
比較例5
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1340KΩ・cm2であった。
【0166】
比較例6
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1170KΩ・cm2であった。
【0167】
比較例7
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は830KΩ・cm2であった。
【0168】
比較例8
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は740KΩ・cm2であった。
【0169】
比較例9
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例5と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1400KΩ・cm2であった。
【0170】
比較例10
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例6と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1220KΩ・cm2であった。
【0171】
比較例11
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例7と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は780KΩ・cm2であった。
【0172】
上記実施例および比較例について、下記評価を行った。
【0173】
つきまわり性の評価
つきまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1にしめすように、各実施例および比較例で使用した化成処理剤で処理した4枚の冷延鋼板または合金化亜鉛めっき鋼板11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。
【0174】
カチオン電着塗料4リットルを塩ビ製容器に移して第1の電着浴とした。図2に示すように、上記ボックス10を、被塗装物として電着塗料21を入れた電着塗料容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
【0175】
マグネチックスターラー(非表示)で塗料21を攪拌した。そして、各鋼鈑11〜14を電気的に接続し、最も近い鋼鈑11との距離が150mmとなるように対極22を配置した。各鋼鈑11〜14を陰極、対極22を陽極として電圧を印加して、カチオン電着塗装を行なった。塗装は、印加開始から30秒間で鋼鈑11のA面に形成される塗膜の膜厚が15μmに達する電圧まで昇圧し、その後通常電着では150秒間その電圧を維持することにより行った。
【0176】
塗装後の各鋼鈑は、水洗した後、170℃で25分間焼き付けし、空冷後、対極22から最も近い鋼鈑11のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極22から最も遠い鋼鈑14のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)によりつきまわり性を評価した。一般に、この値が60%を超えた場合は良好であり、この値が60%以下の場合を不良と判断できる。
【0177】
スラッジ性
各実施例および比較例で使用した化成処理剤1L当たり1mの金属基材を処理した後、化成処理剤中の濁りを目視観察した。
〇:濁りなし
×:濁りあり
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
冷延鋼板を被塗物とした実施例1および2においては、用いられたカチオン電着塗料組成物から得られる電着塗膜の膜抵抗が適正範囲にあることによって、つきまわり性に欠陥は見られない。さらに、特定の化成処理剤を用いることによって、スラッジ発生などの不具合も生じていない。実施例3および4は、実施例1および2と同様の化成処理剤およびカチオン電着塗料組成物を用いて、冷延鋼板の代わりに合金化亜鉛めっき鋼板を被塗物とした実験例である。実施例3および4からは、合金化亜鉛めっき鋼板を被塗物とした場合であっても、冷延鋼板を被塗物とした実施例1および2と同様の利点があることに加えて、合金化亜鉛めっき鋼板を被塗物とする場合であっても電着塗装時の印加電圧の大幅な変動を伴わないという利点があることが明らかとなった。
【0183】
一方、比較例1、4および7は、得られる電着塗膜の膜抵抗が適性範囲から外れることとなるカチオン電着塗料組成物を用いた例である。この場合は、つきまわり性に劣ることが確認された。比較例2〜4は、密着性および耐食性付与剤(C)を含まない化成処理剤(2)を用いた例である。この場合は、つきまわり性に劣ることが確認された。比較例5〜7および9〜11は、通常用いられるリン酸亜鉛化成処理剤を用いた例である。この場合は、スラッジ性が劣ることが確認された。さらに、被塗物として冷延鋼板を用いた比較例2〜4からわかるように、比較例の方法においては、冷延鋼板を被塗物とすることによって電着塗装時の印加電圧が低くなる不利益があることが明らかとなった。この印加電圧の低下は、例えば冷延鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板から構成される被塗物を塗装する場合に、印加電圧が低い冷延鋼板に多くの電着塗膜が析出してしまうこととなる。このため、均一な厚さを有する電着塗膜を被塗物全体に形成することが困難となるという不具合がある。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、環境への負荷が少ない化成処理剤を用いて、優れた塗膜物性を有する、化成処理膜および電着塗膜から構成される複層塗膜を得ることができる。本発明の複層塗膜形成方法は、つきまわり性に優れているため、自動車車体などの複雑な形状を有する被塗物の塗装に特に好適である。本発明の複層塗膜形成方法はまた、冷延鋼板そして亜鉛めっき鋼板などの基材に対しても、優れたつきまわり性を発揮する。本発明の方法は、有害な重金属等を含まず、さらにスラッジも発生しない化成処理剤を用いて、優れた塗膜物性を有する複層塗膜を形成することができることから、産業上において非常に有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】つきまわり性を評価する際に用いるボックスの一例を示す斜視図である。
【図2】つきまわり性の評価方法を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0186】
10:ボックス、
11〜14:化成処理鋼板、
15:貫通穴、
20:電着塗装容器、
21:電着塗料、
22:対極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する、複層塗膜形成方法であって、
被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cmであり、
該電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および
該化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
該密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、ガラス転移温度が20〜40℃である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記カチオン電着塗料組成物は中和酸を含み、該中和酸の量はバインダー樹脂固形分100gに対して18〜25mg当量である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
前記カチオン電着塗料組成物中に含まれる溶剤含有量が0.1〜1.0重量%である、
請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−231452(P2008−231452A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68338(P2007−68338)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】