説明

複数のワイヤを導電結合するための方法およびアセンブリ

本発明は、絶縁材を備えた複数のワイヤの束を導電結合するための方法およびアセンブリに関し、絶縁材を少なくとも部分的に超音波作用によって除去する。良好な導電結合において高い機械的剛性を保証するためには、第1の段階で、複数のワイヤの絶縁材をプラスチック超音波溶接によって少なくとも部分的に除去し、かつ、第2の段階で、複数のワイヤを、金属超音波溶接または抵抗溶接によって材質同士で結合させることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材、特に絶縁ワニスを備えたワイヤの束を導電結合するための方法であって、絶縁材を、少なくとも部分的に、超音波作用によって除去し、必要な場合には、束を、超音波作用の前に、金属材料のスリーブによって保持する方法に関する。更に、本発明は、絶縁されたワイヤの、特に、絶縁ラックを備えたワイヤの束を、超音波によって材質同士で結合するためのアセンブリであって、束は、超音波溶接装置の圧縮室に設けられることができ、該圧縮室は、向かい側では、超音波振動を発生させるソノトロードおよびアンビルによって、および、横方向では、必要な場合には調整可能なサイドジョーによって区画されていてなるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
材料を材質同士で結合するために、超音波溶接を用いることができる。この場合、溶接のために必要なエネルギを、機械的振動の形態で溶接金属へ導入する。この目的のために、ソノトロードに、縦方向に、超音波振動が引き起こされる。同時に、ソノトロードに関連した対向電極−アンビルとも呼ばれる−への相対移動がなされる。その目的は、必要な、静的な、溶接加圧力を加えるためである。対向電極とソノトロードとの間に、接合される材料が設けられている。
【0003】
超音波溶接では、プラスチック超音波溶接と金属超音波溶接との間の区別がなされる。プラスチックの超音波溶接の際には、溶接領域における加熱が、機械的な振動の吸収によって、溶接領域における振動の反射によって、および接合面での境界面摩擦によってなされる。振動は、垂直に導入される。すなわち、ソノトロードの縦軸は、対向電極によって規定される平面に対し垂直に延びている。該平面上に、接合相手が設けられている。プラスチック超音波溶接の典型的な周波数は、20kHzと70kHzの間である。
【0004】
プラスチック溶接とは異なり、金属超音波溶接では、機械的な振動が、アンビルによって規定された平面に対し平行に導入される。この場合、ソノトロードと対向電極との間に作用する静的な力と、振動せん断力と、接合面ゾーンにおける温度上昇との間に複雑な関係が生じる。金属超音波溶接の典型的な周波数は、20kHzと40kHzの間にあって、動作周波数は、通常、20kHzの範囲にある。
【0005】
プラスチック超音波周波数および金属超音波周波数では、接合ゾーンは、最大振動にある。
【0006】
特許文献1からは、ワニスが塗られたワイヤを導電結合するための方法が読み取られる。ここでは、ワニスが塗られたワイヤは、該ワイヤが結合される領域で、導電材料によって、少なくとも部分的に囲まれる。その目的は、続いて、超音波作用によって、同時に絶縁ワニスを破壊しつつ、ワイヤを力で材料と結合させるためである。
【0007】
ワニスが塗られたワイヤを溶接前に絶縁除去する必要がないように、該ワイヤは、特許文献2によれば、超音波溶接装置の、ソノトロードおよびアンビルによって区画された保持空間(Aufnahmeraum)に導入される。ソノトロードおよび/またはアンビルは、プロファイルを有する。
【0008】
絶縁材を有するワイヤは、特許文献3によれば、導電材料からなるスリーブによって囲まれる。該スリーブは、次に、超音波溶接装置の中でワイヤに結合される。ソノトロードは、断面がW字形の形状を有し、かつ、アンビルに関して、凸面状の曲線を有する。
【0009】
特許文献4からは、電気的に絶縁された導体をケーブルラグと結合するための方法が、読み取られる。絶縁除去のためには、ワイヤには、超音波が作用する。同時に、クリンプ片(Crimpfahnen)が、ワイヤをケーブルラグに取り付けるために、曲げられる。
【0010】
絶縁材によって囲まれる導電体を接続手段と結合させるために、前者は並設される。その目的は、次に、超音波によって、材質同士の結合を達成するためである(特許文献5)。
【0011】
絶縁材によって囲まれるワイヤを、接続手段と結合させるために、特許文献6は、絶縁材を貫通する突出部を有し、かつ、ワイヤを囲む金属要素を意図する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE-B-102 29 565
【特許文献2】DE-A-196 36 217
【特許文献3】JP-A-22075481
【特許文献4】JP-A-4370669
【特許文献5】US-A-6,009,366
【特許文献6】US-A-4,317,277
【発明の概要】
【0013】
明細書の最初の部分に記載のタイプの方法およびアセンブリを、絶縁ワイヤ、特に、絶縁ワニスを備えたワイヤ同士の間の、安全な、材質同士の結合が可能であるように、改善するという課題が、本発明の基礎になっている。同時に、知られた方法に比較して、簡素化が与えられていることを意図する。良好な導電結合では、高い機械的強度が保証されていることが意図される。
【0014】
他方、溶接中に問題を引き起こす裸のワイヤまたはストランド同士を必要な程度に結合させるという課題が基礎になっている。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、実質的に以下のことを意図する。すなわち、第1の段階で、ワイヤの絶縁材をプラスチック超音波溶接によって少なくとも部分的に除去し、かつ、第2の段階で、ワイヤ同士を金属超音波溶接または抵抗溶接によって材質同士で結合させること、あるいは、ワイヤの束を、スリーブのような金属製の被覆によって保持し、かつ、金属製の被覆の縦軸を、超音波振動を伝達するソノトロードの縦軸に対し横方向に設け、超音波溶接によって、絶縁材の部分的な除去のみならず、ワイヤを互いのおよび金属製の被覆との材質同士による結合を行なうことである。この場合、同時に、スリーブのような該金属製の被覆の縦軸に対し横方向に、溝状の切り欠きのような凹部が成形される。絶縁除去は、好ましくは、被覆の中での材質同士での結合に先行する工程段階でなされるとき、驚くべきことに、被覆の中での溶接中にも、絶縁材の少なくとも部分的な除去がなされることができる。
【0016】
絶縁ワニスを備えたこのようなワイヤは、通常、少なくとも0.3mmの直径を有する。好ましい直径の範囲は、0.4mmと1.5mmの間にあるが、このことによって、本発明に係わる教示は、限定されない。ワイヤは、基本的に、中実の銅ワイヤまたはアルミニウムワイヤ、あるいは、銅合金またはアルミニウム合金のワイヤである。材料の混合物、すなわち、異なる材料からなるワイヤも、同様に可能である。この場合、十分な剛性を得るためには、追加的に、少なくとも1つのスチールワイヤが、ワイヤの束に含められていてもよい。しかし、ソノトロードの寿命を短縮することはない。というのは、成形されたシート部分のような、金属製の被覆は、ソノトロードとワイヤの間の直接的な接触を防止するからである。
【0017】
利点は、特に、アルミニウムのワイヤ、大きな横断面のワイヤの溶接の際にも生じる。というのは、スリーブは、付着または部分的な合金化(Anlegierung)に対する防止を提供するからである。
【0018】
スズめっきされたワイヤも、問題なく溶接することができる。
【0019】
ワイヤのコアの剥離が、スリーブにより回避される。
【0020】
異なる横断面のワイヤの束を、超音波によって問題なく溶接することができる。異なる横断面のワイヤの溶接の際の、他の場合には見いだされる減衰は、金属製の被覆により発生しない。
【0021】
本発明によれば、2段階の方法を用いることは好ましい。この方法によって、まず、絶縁材すなわち絶縁ワニスを破壊しかつ取り除き、次に、第2の工程段階で、少なくとも部分的に絶縁除去されたワイヤを互いに材質同士で結合させる。このことが超音波によってなされることは好ましい。但し、抵抗溶接による、少なくとも部分的に除去されたワイヤの溶接が、同様に可能であるとしても、である。
【0022】
絶縁除去および材質同士の結合が、2つの工程段階でなされるのではなく、只1つの工程段階で実行されるとき、本発明の代替案は、ワイヤの束をスリーブにまたは対応の被覆に導入し、かつ、該スリーブを、超音波溶接装置の、超音波振動を伝達するソノトロードに対して、以下のように、すなわち、スリーブまたは被覆の縦軸が、超音波振動の縦方向に対し横方向に、従って、ソノトロードの縦軸に対し横方向に延びているように、整列されることを意図する。このようなアセンブリでは、驚くべきことに、絶縁ワニスを、同様に、必要な程度に破壊しかつ取り除き、次に、材質同士の結合を可能にすることが明らかになった。同時に、スリーブまたは被覆の二次成形がなされる。スリーブまたは被覆は、超音波溶接中に、ソノトロードを介して作用する力によって、縦方向に対し垂直に、切り欠きのような凹部を生じさせる。このことによって、更に、スリーブと、絶縁除去されたワイヤとの結合が強められる。
【0023】
スリーブまたは被覆−簡略化のために以下基本的にスリーブと呼ぶ−の縦軸は、ワイヤの方向に、すなわち、ワイヤからなる溶接される束の縦方向に延びている。
【0024】
2段階の作業プロセスでは、ワイヤを、プラスチック超音波溶接後に、スリーブによって囲み、次に、スリーブと共に材質同士で結合させることが意図される。この場合、ワイヤを有するスリーブの縦軸を、超音波振動の縦方向に整列することができるのは、超音波の適用が、金属超音波溶接中になされるときである。
【0025】
しかしながら、プラスチック金属溶接によって、ノードへと圧縮されたワイヤをスリーブに導入することは、必ずしも必要ではない。
【0026】
スリーブが使用されるとき、更に、スリーブの縦軸を超音波振動に対し横方向に設けて、この場合、前述のように、切り欠きが生じるようにする可能性がある。
【0027】
特に良好な振動結果が得られるのは、ワイヤを、プラスチック超音波溶接中に、圧縮して、超音波振動の縦方向における高さH1および縦方向に対し横方向における幅B1を有する第1の平行六面体形状に形成し、次に、ワイヤを、金属超音波溶接中に二次成形して、高さH2および幅B2を有する第2の平行六面体形状を形成し、但し、H2<H1およびB2>B1であるときである。
【0028】
ワイヤを、更に、金属超音波溶接中に、支持体と材質同士で結合させることができる。この場合に、予め絶縁除去されたワイヤが、スリーブによって囲まれていることは、しばしば不要である。
【0029】
ワイヤを超音波振動装置の圧縮室へ供給する際に、ワイヤが広げられていて、ワイヤの問題となる導入があり得ることを排除するために、本発明の改善では、ワイヤを、少なくとも、プラスチック超音波溶接への供給中に、補助固定手段によって保持し、あるいは、該補助固定手段によって囲むことを意図する。この場合、補助固定手段として、固定スリーブを使用することができる。実際また、もっぱら圧力室への供給の際にワイヤの束を囲むツールが用いられる。
【0030】
絶縁材の少なくとも部分的な除去、特に、ワニスの破壊を、第1の処理ステーションで実行することができ、これに対し、材質同士の結合を、第2の処理ステーションで実行することができる。
【0031】
しかしながら、本発明の、強調される実施の形態では、プラスチック超音波溶接および金属超音波溶接を、同一の処理ステーションで実行し、プラスチック超音波溶接の場合には、金属超音波溶接のためのソノトロードが、プラスチック超音波溶接の際のアンビルであり、金属超音波溶接の場合には、プラスチック超音波溶接のためのソノトロードが、金属超音波溶接のためのアンビルであることが意図されている。
【0032】
超音波作用中に、絶縁ワニスを破壊する際に、絶縁ワニスの部分的な蒸発および絶縁ワニスの焼け焦げがなされる。このことによって金属超音波溶接中に材質同士の結合が損なわれることを回避するために、本発明は、ワイヤの端部の領域で、プラスチック超音波溶接中に、ワイヤの束に超音波を当て、束を圧縮して平行六面体を形成し、次に、プラスチック超音波溶接後に、圧縮された束の自由端を分離、例えば切断することを意図する。このことによって、ワイヤ同士の間にあるワニスの残りが更に除去される。
【0033】
更に、本発明は、裸のストランドまたはワイヤの束を超音波作用によって導電結合する方法であって、束を超音波作用の前に、金属材料のスリーブのような金属製の被覆によって保持する方法において、束を金属製の被覆によって保持し、金属製の被覆の縦軸を、超音波振動を伝達するソノトロードの縦軸に対し横方向に設け、ワイヤまたはストランドの互いのまたは金属製の被覆との材質同士の結合を、超音波振動によって実行し、同時に、金属製の被覆の縦軸に対し横方向に、該被覆に、凹部を成形することを特徴とする。適切な方法では、このことに応じて、前述の特徴が、請求される。
【0034】
更に、絶縁されたワイヤの、特に、絶縁ラックを備えたワイヤの束を、超音波によって材質同士で結合するためのアセンブリであって、束は、超音波溶接装置の圧縮室に設けられることができ、該圧縮室は、向かい側では、超音波振動を発生させるソノトロードおよびアンビルによって、および、横方向では、必要な場合には調整可能なサイドジョーによって区画されているアセンブリは、該アセンブリは、第1のおよび第2のソノトロードを有し、両者の縦軸は、直角で交差していること、アセンブリは、金属超音波溶接およびプラスチック超音波溶接のために適していること、および、金属超音波溶接の場合には、第2のソノトロードが励起しておらず、第1のソノトロードのためのアンビルおよび該第1のソノトロードは励起可能であり、プラスチック超音波溶接の場合、第1のソノトロードは励起されておらず、第2のソノトロードのためのアンビルおよび該第2のソノトロードは励起可能であることを特徴とする。このアセンブリによって、前になされた記述の、方法に係わる特徴を適用することができる。
【0035】
本発明の複数の他の詳細、利点および特徴は、複数の請求項と、これらの請求項から読み取れる、単独および/または組合せで生じる複数の特徴とからのみならず、図面から見て取れる複数の好ましい実施の形態の以下の記述からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】超音波溶接アセンブリの原理図を示す。
【図2】プラスチック超音波溶接装置の部分図を示す。
【図3】金属超音波溶接装置の部分図を示す。
【図4】プラスチック・金属超音波溶接装置の部分図を示す。
【図5a】本発明に係わるプロセスシーケンスを示す。
【図5b】本発明に係わるプロセスシーケンスを示す。
【図5c】図5aおよび5bの変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
基本的には同一の要素に対して同一の参照符号が用いられてなる図には、絶縁材を備えた複数のワイヤを材質同士で(stoffschluessig)結合させるための本発明に係わる方法の、好ましい実施の形態または適用例が示されている。ワイヤ10が、塗装されたワイヤであることは好ましい。溶接されるワイヤは、前もってまとめられて、束に形成される。広がることを回避するために、束12は、基本的に図から明らかなように、リング14またはスリーブの形態をとる固定補助手段によって囲まれていることができる。
【0038】
0.3mmと1.5mmの間の直径を有することができ従ってまた十分に硬い絶縁されたワイヤ10の束12を圧縮し、かつ導電接続するために、プラスチック超音波溶接が、金属超音波溶接と組み合わせて用いられる。金属超音波溶接を、必要な場合には、抵抗溶接によって置き換えることができる。
【0039】
図1には、重要な要素を説明するために、超音波溶接アセンブリが基本的に示されている。ここでは、アセンブリ110を、金属を溶接するために定められた超音波溶接装置111を参照して説明する。
【0040】
超音波溶接アセンブリ110は、重要な要素として、コンバータ112およびソノトロード114を有する。両者の間には、振幅を増大させるためのブースタ116が設けられている。コンバータ112、ブースタ116およびソノトロード114は、ブースタ116に取り付けられているいわゆる超音波発振機117を形成する。ソノトロードのヘッドは、図1には認められない。ソノトロード114には、対向電極115が関連づけられている。該対向電極に対して発振機117が下げられることができる。その目的は、溶接の際に力を接合相手に導入するためである。更に、サイドスライダがある。その目的は、ソノトロード114、対向電極またはアンビル115およびサイドスライダによって囲まれた圧縮室の高さおよび幅を所望の程度に調節することができるためである。対向電極115は、例えば、US-A-4,596,352に記載されているように、特に複数の部分に形成されている。
【0041】
コンバータ112は、ライン118を介して、ジェネレータ120に接続されている。該ジェネレータ自体は、ライン122を介して、コンピュータ124に接続されている。ジェネレータ120を介して、コンバータ112、詳しくは該コンバータに設けられた圧電性結晶ディスクには、高周波数電圧が印加される。その目的は、このことに対応して、ディスクを膨張させ、または収縮させるためである。このことによって、超音波振動は、ブースタ116によって強化されてソノトロードに伝達される振幅で、発生される。
【0042】
本発明によれば、束12にまとめられたワイヤ10のワニス絶縁材は、超音波によって破壊されかつ除かれる。硬いワイヤ10は、超音波および力の導入の際に、必要な抵抗を形成する。その目的は、ワニスが剥がれることができるためである。同時に、圧縮がなされる。このことは、図2から基本的に見て取れるように、プラスチック超音波溶接装置26の中でなされる。
【0043】
万が一ワイヤ10が十分に硬くないときは、束の中に、スチールワイヤを挿入してもよい。このことによって、所望のまたは必要な硬さが得られる。その目的は、超音波の適用の際に、絶縁材またはワニスを除去し、または剥がすためである。
【0044】
このようなスチールワイヤは、束が、以下に説明するように、溶接の前に、金属製の被覆またはスリーブによって保持され、該被覆またはスリーブが束と溶接されるときは、ソノトロードを、増加した磨耗に晒すことをもたらさない。
【0045】
このような装置26の重要な構成要素は、振動ノードに取り付けられているソノトロード28である。実施の形態ではλ/2の振動機であるソノトロード28は、端面を有するソノトロードヘッド30を具備する。端面は、対向電極34の支持面32に平行に延びている。該支持面に、束12が位置決めされる。ソノトロード28は、縦軸の方向に振動される。それ故に、ソノトロード28を設けることによって、および、ソノトロードヘッド30の端面によって形成された、ソノトロードの溶接面を、同様に溶接面として用いられる、アンビル34の支持面32に対し設けることによって、超音波振動が、ワイヤの縦軸に対し垂直方向に、束12のワイヤ10に導入されるのは、アンビル34の溶接面32上に、このような束12が設けられている場合である。従って、圧縮室内のワイヤ10または束12の縦軸は、ソノトロード28の縦軸に対し垂直に延びている。超音波振動を導入するために、このことに対応して、ソノトロード28は、図示しない束12の方向に下げられる。一方ではソノトロードヘッド30の端面によっておよび他方ではアンビル34の溶接面32によって区画された圧縮室を、側方で、詳細には示されないスライダによって閉じることができる。その目的は、幅を調整することができるためである。
【0046】
適切な工程段階は、図5aからも見て取れる。該工程段階には、参照符号1が付されている。かくして、固定スリーブ14によって囲まれているワイヤ10の束12は、図2に対応している超音波溶接装置の適切な圧縮室に入れられる。超音波の適用によって、ワニスの破壊および取り除きが、圧縮・溶接室内の束12の圧縮と同時に、なされる。それ故に、圧縮室の周囲形状に対応して、束12の圧縮された端部領域36に、平行六面体形状が生じる。
【0047】
超音波作用によって、既述のように、同時に、ワイヤ10の絶縁ワニスが、破壊されかつ取り除かれる。更に、部分的な蒸発がなされる。後続の工程段階を妨げる焼けすぎたラックが、端部領域にあるときは、平行六面体状に二次成形された端部領域36の自由端は切断されるだろう。
【0048】
プラスチック超音波溶接に晒された束12が、圧縮室から取り出された後には(図5aの段階2)、実施の形態では、束12の、平行六面体状の端部部分36の表面に沿って、接続スリーブまたはいわゆるリングケーブルラグ38が押し被せられる(工程段階3)。このようなユニットは、次に、金属超音波溶接装置40の圧縮室に挿入される。その目的は、リングケーブルラグ38または他方の要素、例えばスリーブまたはシートと、少なくとも部分的にラックで絶縁された剥き出しのワイヤ束12との間で材質同士の結合をするためである。この場合、結合アイ(Anschlussoese)を、金属超音波溶接装置40の圧縮室へ、ソノトロード42の縦方向に(図面平面に対し垂直に)、あるいは、図5bからは基本的に明らかなように、該ソノトロードに対し横方向に、すなわち、矢印5の方向に挿入する可能性がある。この場合には、リングケーブルラグ38の縦軸は、ソノトロードの縦軸に対し垂直に延びている。その結果、力の作用および超音波の伝達の際に、ソノトロードの形状に対応して、ソノトロードがリングケーブルラグ38に作用してなる振動ピークにおいて、切り欠き44が形成される(図5bの除去段階6を参照せよ)。このことによって、追加的に、リングケーブルラグ38と束12との間の形状係合および力の係合(Form-und Kraftschluss)が強化される。
【0049】
リングケーブルラグ38の代わりに、束12は、適切な形状の金属製の被覆によって保持されていることができる。
【0050】
図5の実施の形態では、ソノトロード42として、λ-ソノトロードが使用される。該λ-ソノトロードは、一端で取り付けられており、かつ、端面44から間隔λ/2をあけて、リングケーブルラグ38に作用する。
【0051】
リングケーブルラグ38は、金属超音波溶接の際に、ソノトロードの縦軸に平行に位置決めされるとき、二次成形は、図5bの右下の図によって基本的に示すように、リングケーブルラグ38の縦方向になされる。
【0052】
換言すれば、リングケーブルラグ38と材質同士で結合されかつ予め部分的に絶縁が除去された複数のワイヤ10は、図5bの左下の図では、リングケーブルラグ38の整列の際に、ソノトロードの縦軸に対し横方向に、かつ右下の図では、ソノトロード縦軸に対し平行に、詳しく示されない圧縮室に位置決めされたのである。
【0053】
複数の絶縁されたワイヤの互いのまたはリングケーブルラグとの、材質同士の結合のための措置および工程段階を、図4および5との関連で説明した。該措置および工程段階は、対応して、裸のストランドおよびワイヤ同士の、または対応のリングケーブルラグ38との、または適切な形状の金属製の他の被覆との、材質同士での結合に当てはまる。超音波溶接後に、リングケーブルラグまたは被覆の縦方向に対し横方向に延びておりかつ図5bに示した切り欠き44に対応する切り欠きが、リングケーブルラグ38または被覆に成形されている。
【0054】
図3には、超音波溶接装置46の部分図が示されている。該超音波溶接装置によって、部分的に絶縁が除去された複数のワイヤ10が、材質同士で互い結合される。実施の形態では、ワイヤ10は、ソノトロード48の縦軸に対し平行に整列される。ここでは、ワイヤ10が、絶縁除去後に、スリーブによって保持される必要はない。むしろ、ワイヤ10を、例えばシートと溶接することができる。該シートは、超音波溶接装置46のアンビル50上に位置決めされる。更に、サイドスライダ52,54が認められ、該サイドスライダは、圧縮室を側方に区画する。
【0055】
実際また、ワイヤ10の、まず部分的に絶縁が除去された束12が、他の金属製の要素との結合がなされることなく、圧縮されてノードに形成され、かつ溶接される可能性がある。
【0056】
本発明に係わる教示によれば、図2のような第1の作業ステーションにおいて、ワイヤ10の絶縁除去を行ない、更なる圧縮、ならびに、互いの、および支持体またはスリーブとの材質同士の結合を、図3に示すように第2の作業ステーションで行なうことができる。
【0057】
図4の実施の形態から、他の代替方法が生じる。該代替方法によれば、ワイヤ10の少なくとも部分的な絶縁除去およびワイヤの材質同士の結合を、只1つの作業ステーションで行なう。該作業ステーションは、この目的のために、図2および3に示すように、2つのソノトロード28,48を有する。ここでは、ヘッド30,49を有するソノトロード28,48は、該ヘッドが二重機能を果たし、すなわち、一方では、必要な超音波振動を伝達するために用いられ、他方では、アンビルの機能を果たすように、互いに整列される。
【0058】
図4に示す、ソノトロードヘッド30,49によって区画された圧縮室で、ワイヤ10の絶縁除去がなされることが意図されるとき、ソノトロード48のソノトロードヘッド49が、アンビルとして用いられる。ソノトロード28は、次に、ワニスまたは絶縁材を破壊するために、超音波振動を発する。従って、プラスチック溶接プロセスが実行される。
【0059】
続いて、必要な場合には、スリーブをワイヤ10の束12の表面に沿って押し被せた後に、材質同士の結合がなされることが意図されるとき、ソノトロード28のソノトロードヘッド30が、対向電極またはアンビルとして用いられる。これに対し、ソノトロード48は、超音波振動され、該超音波振動を、接合される材料に伝達する。金属溶接工程がなされる。
【0060】
まず、ワイヤ10の絶縁除去および次にリングケーブルラグ38のようなスリーブとの、または、例えば成形されたシートによって形成された他の被覆との溶接がなされるとき、通常は、ワイヤ10は、スリーブの外側で、数ミリメートルの部分に亘って絶縁除去されている。この領域37は、2つの環状の境界によって、一方では、スリーブ38の開口部39によって、および他方では、ワイヤ10の絶縁材の縁部43によって、区画される。この領域37を、ワイヤ10を絶縁するために、収縮チューブ45によって問題なく囲むことができる(図5c)。
【0061】
溶接されるワイヤ10に関して、以下のことに言及しなければならない。すなわち、ワイヤが、同一の材料からならず、かつ、同一の横断面を有する必要がないことである。
【0062】
むしろ、材料混合物を溶接することできる。異なった横断面のワイヤ10も、溶接することができる。
【0063】
実際また、本発明に係わる教示は、被覆の中でまたは被覆と材質同士で結合される裸のワイヤまたはストランドにも当てはまる。
【0064】
従って、金属製の被覆の中で裸のストランドまたはワイヤを溶接することは、同様に、本発明に係わる教示に含まれる。溶接の際に、被覆の縦軸が、ソノトロードの縦軸に対し横方向に設けられる。その目的は、被覆の縦軸に対し横方向に、被覆に、凹部を成形するためである。
【0065】
複数の実施の形態において、本発明に係わる教示を、ワニスで絶縁された、すなわち硬い絶縁材を有するワイヤを用いて、説明した。この場合、用途は、軟らかい絶縁材を備えた他のワイヤのためにも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 ワイヤ
12 束
26 超音波溶接装置
28 ソノトロード
34 アンビル
48 ソノトロード
50 アンビル
52 サイドジョー
54 サイドジョー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材、特に絶縁ワニスを備えた複数のワイヤの束を導電結合するための方法であって、前記絶縁材を、少なくとも部分的に、超音波作用によって除去し、必要な場合には、前記束を、前記超音波作用の前に、金属材料のスリーブのような金属製の被覆によって保持する方法において、
前記複数のワイヤの前記束を、前記金属製の被覆によって保持し、該金属製の被覆の縦軸を、超音波振動を伝達するソノトロードの縦軸に対し横方向に設け、超音波溶接によって、前記複数のワイヤを互いのおよび前記金属製の被覆との材質同士の結合を行ない、同時に、該金属製の被覆の前記縦軸に対し横方向に、この金属製の被覆に、凹部を成形し、前記絶縁材の少なくとも1つの部分的な除去を、前記金属製の被覆によって保持された束における超音波溶接の最中に、または前記金属製の被覆への挿入の前に、先行の工程段階で、プラスチック超音波溶接によって行ない、あるいは、第1の段階で、前記複数のワイヤの前記絶縁材を、プラスチック超音波溶接によって少なくとも部分的に除去し、第2の段階では、前記複数のワイヤを、金属超音波溶接または抵抗溶接によって材質同士で結合することを特徴とする方法。
【請求項2】
絶縁ワニスを備えた複数のワイヤを、材質同士で結合し、該複数のワイヤは直径Dを有し、但し、D≧0.3mm、特に、0.4mm≦D≦1.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のワイヤを、前記プラスチック超音波溶接後に、前記金属製の被覆によって囲み、次に、該金属製の被覆と共に、材質同士で結合することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属超音波溶接の際に必要な場合には金属製の被覆によって囲まれている前記複数のワイヤを、前記超音波振動の縦方向に設けることを特徴とする請求項1ないし3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のワイヤを有する前記金属製の被覆を、前記超音波溶接の際に、超音波振動方向に対し横方向に設けることを特徴とする請求項1ないし4の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記束のワイヤ端部の領域に、プラスチック超音波溶接中に、超音波を印加すること、該プラスチック超音波溶接中に、前記束を圧縮して平行六面体の形状を形成すること、およびプラスチック超音波溶接後に、前記圧縮された束の自由端を切り離すことを特徴とする請求項1ないし5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のワイヤを、前記プラスチック超音波溶接中に、圧縮して、超音波振動の縦方向における高さH1および該縦方向に対し横方向における幅B1を有する第1の平行六面体形状に形成すること、および前記ワイヤを、前記金属超音波溶接中に二次成形して、高さH2および幅B2を有する第2の平行六面体形状を形成し、但し、H2<H1およびB2>B1であることを特徴とする請求項1ないし6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のワイヤの前記束を、前記プラスチック超音波溶接中に、超音波溶接装置のソノトロードとアンビルの間に設けられる金属製の被覆によって囲むことを特徴とする請求項1ないし7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のワイヤを、金属超音波溶接の際に、支持体に材質同士で結合することを特徴とする請求項1ないし8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のワイヤを、少なくとも、プラスチック超音波溶接への供給中に、補助固定手段によって保持し、あるいは、該補助固定手段によって囲むことを特徴とする請求項1ないし9の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
補助固定手段として、固定スリーブまたは固定リングを使用することを特徴とする請求項1ないし10の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチック超音波溶接を、第1の処理ステーションで実行し、前記金属超音波溶接を第2の処理ステーションで実行することを特徴とする請求項1ないし11の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチック超音波溶接および前記金属超音波溶接の際に、前記複数のワイヤの前記束を、アンビルと、超音波を発するソノトロードとの間に設ける、請求項1ないし12の少なくとも1項に記載の方法において、前記方法は、
前記プラスチック超音波溶接および前記金属超音波溶接を、同一の処理ステーションで実行し、前記プラスチック超音波溶接の場合には、前記金属超音波溶接のための前記ソノトロードがアンビルであり、前記金属超音波溶接の場合には、前記プラスチック超音波溶接のためのソノトロードがアンビルであることを特徴とする。
【請求項14】
前記金属製の被覆と、前記束を形成する前記複数のワイヤの前記絶縁材との間に延びている絶縁除去された領域を、圧縮ホースのような絶縁材によって囲むことを特徴とする請求項1ないし13の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
複数の裸のストランドまたは複数のワイヤの束を超音波作用によって導電結合する方法であって、前記束を超音波作用の前に、金属材料のスリーブのような金属製の被覆によって保持する方法において、
部分的に保持された束を有する前記被覆の縦軸を、超音波振動を伝達するソノトロードの縦軸に対し横方向に設け、前記複数のワイヤまたは複数のストランドの互いのまたは前記金属製の被覆との材質同士の結合を、超音波振動によって実行し、同時に、前記金属製の被覆の縦軸に対し横方向に、該被覆に、凹部を成形することを特徴とする方法。
【請求項16】
複数の絶縁されたワイヤ(10)の、特に、絶縁ラックを備えた複数のワイヤの束(12)を、超音波によって材質同士で結合するためのアセンブリであって、前記束は、超音波溶接装置(26)の圧縮室に設けられることができ、該圧縮室は、向かい側では、超音波振動を発生させるソノトロード(28,48)およびアンビル(34,50)によって、および、横方向では、必要な場合には調整可能なサイドジョー(52,54)によって区画されているアセンブリにおいて、
該アセンブリは、第1のおよび第2のソノトロード(28,48)を有し、両者の縦軸は、直角で交差していること、前記アセンブリは、前記金属超音波溶接および前記プラスチック超音波溶接のために適していること、および、前記金属超音波溶接の場合には、前記第2のソノトロード(28)が励起しておらず、前記第1のソノトロード(48)のアンビルおよび該第1のソノトロードは励起可能であり、前記プラスチック超音波溶接の場合、前記第1のソノトロードは励起されておらず、前記第2のソノトロードのためのアンビルおよび該第2のソノトロードは励起可能であることを特徴とするアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2013−516029(P2013−516029A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545191(P2012−545191)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068278
【国際公開番号】WO2011/076515
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505404688)シュンク・ソノシステムズ・ゲーエムベーハー (15)
【Fターム(参考)】