説明

複数の個々のストリングを有するリボン結晶末端ストリング

リボン結晶は、本体と、本体内の末端ストリングと、を有する。少なくとも1つの末端ストリングは、ほぼ凹面断面形状を有し、少なくとも2つの個々のストリングから形成される。上記本体は、厚さの寸法を有し、前記少なくとも2つの個々のストリングは、概して、該本体の厚さの寸法に沿って離間され、該少なくとも2つの個々のストリングは、ほぼ細長い凹面断面形状を形成する。上記少なくとも2つの個々のストリングの間に、本体材料をさらに備える。上記少なくとも2つの個々のストリングは、物理的に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2008年10月8日に、Scott Reitsmaを発明者として出願された米国特許出願第12/252,557号「RIBBON CRYSTAL END STRING WITH MULTIPLE INDIVISUAL STRINGS」(代理人整理番号3153/178)からの優先権を主張し、この特許出願の開示は、本明細書においてその全体が参照により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、ストリングリボン結晶に関し、より具体的には、本発明は、ストリングリボン結晶を形成するために使用されるストリングに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1(1987年発行、単独本発明者として、Emanuel M. Sachsを指定)に論じられるようなストリングリボン結晶は、種々の電子デバイスの基礎を形成し得る。例えば、Evergreen Solar, Inc.(Marlborough、Massachusetts)は、従来のストリングリボン結晶から太陽電池を形成する。
【0004】
上記の特許に詳述されるように、従来のプロセスは、2つ以上のストリングを溶融シリコンに通過させることによって、ストリングリボン結晶を形成する。ストリングの組成および性質は、その効率、およびある事例では、最終的に形成されるストリングリボン結晶のコストに大きな影響を及ぼし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,689,109号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、リボン結晶は、本体と、本体内に埋入される末端ストリングと、を有する。少なくとも1つの末端ストリングは、ほぼ凹面断面形状を有し、少なくとも2つの個々のストリングから形成される。
【0007】
着目される2つの個々のストリングは、概して、本体の厚さの寸法に沿って離間し、ほぼ細長い凹面断面形状を形成してもよい。さらに、本体材料(例えば、シリコン)は、2つの個々のストリングの間にあってもよい。代替実施形態では、着目される2つの個々のストリングは、物理的に接触する。
【0008】
本発明の別の実施形態によると、リボン結晶は、本体と、本体内に埋入される複数の末端ストリングと、を有する。少なくとも1つの末端ストリングは、少なくとも一対の離間した個々のストリングから形成される。本体材料は、対の個々のストリングの間に位置付けられる。
【0009】
ストリングは、ほぼ凹面断面形状を有する。加えて、個々のストリングはそれぞれ、ほぼ細長い断面形状を形成してもよい。さらに、個々のストリングのうちの少なくとも1つは、幅の寸法を中心としてほぼ対象である、凹面を有してもよい。少なくとも1つの末端ストリングの個々のストリングは、概して、本体の厚さの寸法を中心として離間されてもよい。
【0010】
本発明の他の実施形態によると、リボン結晶を形成する方法は、複数の末端ストリングを提供する。末端ストリングのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの離間した個々のストリングを有する。また、本方法は、溶融材料をるつぼに添加し、次いで、末端ストリングを溶融材料に通過させ、界面の上方で溶融材料を冷凍し、したがって、溶融材料のシートを形成する。少なくとも1つの末端ストリングは、界面の上方のその個々のストリングの間に冷凍溶融材料を有する。
【0011】
当業者は、以下に要約される図面を参照して論じられる以下の詳細な説明から、本発明の種々の実施形態の利点をより完全に理解する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の例証的実施形態に従って構成されるストリングから形成され得る、ストリングリボン結晶を概略的に示す。
【図2】図2は、ストリングリボン結晶を形成するために使用される、例証的炉を概略的に示す。
【図3】図3は、従来技術のストリングを伴う、従来技術のリボン結晶の一部の断面図を概略的に示す。
【図4A】図4Aは、本発明の例証的実施形態に従って形成される、ストリングを概略的に示す。
【図4B】図4Bは、本発明の種々の実施形態による、線B−Bに沿った図4Aのストリングの8つの断面図を概略的に示す。
【図5】図5は、本発明の例証的実施形態に従って構成されるストリングを使用して、ストリングリボン結晶を形成する例証的プロセスを示す。
【図6】図6A、6B、および6Cは、細長い断面を伴うストリングを使用する実施形態による、リボン結晶の断面図を概略的に示す。
【図7】図7Aおよび7Bは、複数の個々のストリングから形成される末端ストリングを伴う、リボン結晶の断面図を概略的に示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、略凹面断面形状を有するストリングを伴う、リボン結晶を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例証的ストリングリボン加工プロセスは、リボン結晶の各端に対して、複数の個々のストリングを使用する。例えば、各末端ストリングは、一対の個々の離間したストリングから形成されてもよい。そのようなストリングの幾何学的および熱特性は、より厚い首領域を形成することによって、結晶特性を改善するはずである。種々の実施形態の詳細は、後述される。
【0014】
図1は、本発明の例証的実施形態に従って構成されるストリングリボン結晶10を概略的に示す。他のリボン結晶と同様に、本リボン結晶10は、略矩形形状であって、その前後面上に比較的大きな表面積を有する。例えば、リボン結晶10は、約3インチの幅と、約6インチの長さとを有してもよい。当業者によって周知のように、長さは、大幅に変動する可能性がある。例えば、いくつかの周知のプロセスでは、長さは、その成長に伴ってリボン結晶10を切断すべき場所に関して、炉操作者の裁量に依存する。加えて、幅は、リボン結晶幅の境界を形成するその2つのストリング12(図2参照)の分離に依存して、変動する可能性がある。故に、特定の長さおよび幅の議論は、例証的であって、本発明の種々の実施形態を制限することは意図されない。
【0015】
リボン結晶10の厚さは、可変であって、その長さおよび幅の寸法と比較して、非常に小さくてもよい。例えば、ストリングリボン結晶10は、その幅全体にわたって、約60ミクロン〜約320ミクロンの範囲の厚さを有してもよい。本可変厚にかかわらず、ストリングリボン結晶10は、その長さおよび/または幅全体にわたって、平均厚を有するように考慮されてもよい。
【0016】
リボン結晶10は、用途に応じて、種々の材料(概して、「リボン材料」または「結晶材料」と称される場合が多い)のいずれかから形成されてもよい。例えば、発電用途用の成長の場合、リボン結晶10は、シリコン等の単一要素、またはシリコン系材料(例えば、シリコンゲルマニウム)等の化合物から形成されてもよい。他の例証的リボン材料は、ガリウムヒ素またはリン化インジウムを含んでもよい。リボン材料は、多重結晶、単結晶、多結晶、微結晶、または半結晶等、種々の結晶種のいずれかであってもよい。
【0017】
当業者によって周知のように、リボン結晶10は、概して、リボン材料によって埋入/封入される一対のストリング12から形成される(図2以降参照)。後述のプロセスから確認されるように、対のストリング12は、リボン結晶10の縁を効果的に形成する。すなわち、それらは、リボン結晶10の幅を確定する。故に、ストリングは、概して、「末端ストリング」、または単に、ストリング12と称され得る。さらに、便宜上、リボン結晶10は、ポリシリコンリボン材料から形成されるように論じられる。それでもなお、ポリシリコンの議論は、あらゆる実施形態を制限するものとして意図されるものではないことをあらためて表明する。
【0018】
例証的実施形態は、図2に示されるようなリボン結晶生成炉14内において、リボン結晶10を成長させる。より具体的には、図2は、本発明の例証的実施形態に従って、ストリングリボン結晶10を形成するために使用され得る、シリコンリボン結晶生成炉14を概略的に示す。炉14は、とりわけ、実質的に酸素のない(燃焼を防止するため)密閉内部を形成する筐体16を有する。酸素の代わりに、内部は、アルゴン等のある濃度の別の気体、または気体の組み合わせを有する。また、筐体内部は、とりわけ、るつぼ18と、4つのシリコンリボン結晶10を実質的に同時に成長させるための他の構成要素と、を含有する。筐体16内の供給入口20は、シリコン原料を内部るつぼ18に誘導するための手段を提供する一方、任意の窓22は、内部構成要素の検査を可能にする。
【0019】
示されるように、るつぼ18は、筐体16内の内部基盤上に支持され、実質的に平坦な上表面を有する。るつぼ18の本実施形態は、その長さに沿って、並列構成にシリコンリボン結晶10を成長させるための領域を伴う、細長形状を有する。例証的実施形態では、るつぼ18は、黒鉛から形成され、シリコンをその融点を超えて維持可能な温度に抵抗加熱される。結果を向上させるために、るつぼ18は、その幅をはるかに超える長さを有する。例えば、るつぼ18の長さは、その幅を3倍以上超えてもよい。当然ながら、いくつかの実施形態では、るつぼ18は、このように細長でなくてもよい。例えば、るつぼ18は、ほぼ四角形状または非矩形形状を有してもよい。
【0020】
図2に示され、以下に詳述されるように、炉14は、ストリング12(すなわち、末端ストリング12)を受容するための複数の孔24を有する。具体的には、図2の炉14は、4対の末端ストリング12を受容するために、8つのストリング孔24を有する。各対のストリング12は、るつぼ18内の溶融シリコンを通過し、単一リボン結晶10を形成する。
【0021】
多くの従来のリボン結晶成長プロセスは、ストリング近傍に薄い首部分を伴う、リボン結晶を形成する。より具体的には、図3は、従来技術のストリング12Pを有する、従来技術のリボン結晶10Pの一部の断面図を概略的に示す。本先行技術のリボン結晶10Pは、ストリング12Pとリボン結晶10のより広い部分38との間に薄い首部分36を有する。首部分36が薄すぎる場合、リボン結晶10Pは、非常に脆弱であって、より破砕しやすくなり、したがって、収率損失をもたらし得る。例えば、ストリング12とリボン結晶10Pを形成するリボン材料(例えば、ポリシリコン)との間の熱膨張差係数が著しく大きい場合、リボン結晶10Pは、首部分36でより破砕しやすくなり得る。
【0022】
首部厚を増加させるために、当業者は、リボン成長プロセスに機器を追加していた。例えば、そのような解決策の1つは、炉14にガス噴射器(図示せず)を追加するものである。これらのガス噴射器は、首部分36に向かって比較的冷たい気流を誘導し、したがって、その領域内の温度を低下させ、首部厚を増加させる。他の解決策は、特殊メニスカス整形器の追加を伴う。
【0023】
そのような付加的外部手段を使用せずに、本発明の例証的実施形態は、所定の方法でストリング12の断面寸法を設計する。次いで、例証的実施形態は、成長リボン結晶10の首部分36のサイズを増加させるように、結晶生成炉14内にストリング12を位置付ける。例えば、平均厚約190ミクロンを伴う結果として生じるリボン結晶10は、ある用途では、十分であり得る、最小厚約60ミクロンを伴う首部分36を有し得る。本革新は、結果として、収率損失を低減させ、したがって、生産コストを低減させるはずである。
【0024】
図4Aは、本発明の例証的実施形態に従って形成され得る、ストリング12を概略的に示す。本図は、ほぼ凸面または円唇断面を示すように見られるが、単なる概略図であって、任意の特定の断面形状の代表であるとみなされるべきではない。これを受けて、図4Bは、本発明のいくつかの異なる実施形態による、図4Aの交差線B−Bに沿ったストリング12の8つの異なる可能な断面図を概略的に示す。例えば、形状のいくつかは、ストリング1の不整形形状、ストリング2の矩形形状、およびストリング3のほぼ楕円形状等、ほぼ細長である。
【0025】
細長であるかどうかにかかわらず、種々のストリング12は、ほぼ凹面またはほぼ凸面のいずれかとして分類され得る。本明細書で使用されるように、断面形状は、その外周のいずれかの部分が少なくとも1つの無視できない程度の凹面を形成する場合、ほぼ凹面である。したがって、ストリング1は、その他の凸面部分にかかわらず、ほぼ凹面であるとみなされる。反対に、断面形状は、その外周が無視できない程度の凹面を形成しない場合、ほぼ凸面であるとみなされる。したがって、図4Bのストリング2およびストリング3は、ほぼ凸面である。
【0026】
図4Bは、ほぼ凹面であるいくつかの他の断面ストリング形状を示す。実際、いくつかは、細長および凹面とみなされる場合がある。例えば、ストリング4は、ほぼ「C」形状の凹面かつ細長である一方、ストリング5は、ほぼ十字形状の凹面であるが、細長ではない。ストリング5(十字形状)の形状は、ほぼ対称(十字の水平および垂直部分の両方が約同サイズ)であるため、細長ではない。その実際の寸法に応じて、ほぼ「T」形状のストリング8は、細長とみなされる場合もあれば、そうではない場合もある。例えば、下方に延在する「T」形状の部分が、その水平部分よりも長い場合、ストリング8は、細長とみなされ得る。いずれの場合も、ストリング8は、ほぼ凹面であるとみなされる。
【0027】
実験の際、後述のように、本発明者は、驚くべきことに、複数の個々のストリングから末端ストリング12を形成することによって、首サイズが大幅に改善されたことを発見した。言い換えると、末端ストリング12は、2つ以上の個々のストリングから形成されてもよい。ストリング6および7は、2つのそのような実施形態を示す。具体的には、ストリング6は、個々のストリング12が最終リボン結晶10内で互いに物理的に接触する一実施形態を示す一方、ストリング7は、個々のストリング12が最終リボン結晶10内で互いに離間する別の実施形態を示す。ストリング7によって本質的に示されるように、2つの離間した個々のストリングを使用する末端ストリング12は、2つの個々のストリングに加えて、2つの個々のストリングの間にいくつかのリボン本体材料(例えば、ポリシリコン)を備える。
【0028】
複数の個々のストリングを使用する末端ストリング12は、2つを超える個々のストリングを使用してもよいことに留意されたい。例えば、いくつかの末端ストリング12は、3つまたは4つのストリングを使用して、その奥行寸法を増加させてもよい。加えて、これらの複数のストリング実施形態の個々のストリングは、同一または異なる断面形状(例えば、第1の楕円形に成形されたストリング12と、別の十字または円形に成形されたストリング12)を有してもよい。
【0029】
図4Bの特定の形状は、種々の異なる断面ストリング形状の単なる実施例であることに留意されたい。故に、当業者は、他のストリング形状も、種々の実施形態の範囲内にあることを理解されたい。
【0030】
図5は、本発明の例証的実施形態に従って構成されるストリング12によって、ストリングリボン結晶10を形成する例証的プロセスを示す。便宜上、本プロセスは、図4Bのストリング2のみを参照して論じられる(ストリング2は、その図が本プロセスにおいて論じられる種々のストリング層を明示的に示すという点において、唯一のストリング12であるため)。それでもなお、論じられる原則は、他の断面形状を有するストリング12、または他のプロセスによって形成される他のストリングに適用されることに留意されたい。
【0031】
プロセスは、耐熱性材料層を受容する基板として作用する、コア/基板28を形成することによるステップ500から開始する。代理人整理番号第3253/172号「REDUCED WETTING STRING FOR RIBBON CRYSTAL」(上述の参照によって組み込まれる)を有する同時係属の米国特許出願において詳述されるように、コア28は、従来の押出プロセスによって、炭素から形成可能である。しかしながら、他の実施形態では、コア28は、ワイヤ、フィラメント、または束としてともに巻着される複数の小導電性繊維であってもよい。例えば、加工後プロセスは、酸化、炭化、または浸潤等の周知の加工プロセスを通して、モノフィラメントを形成可能である。
【0032】
コア28は、所望の断面形状を有してもよい。例えば、図4Bに示されるように、ストリング2のコア28は、ほぼ矩形である。代替として、コア28は、異なる断面形状を有してもよい一方、耐熱性材料適用機器は、所望の断面形状を形成するように特別に構成されてもよい。例えば、押出機器は、コア材料から、最終断面ストリング形状と同一または異なる事前に指定された断面形状を有する断面形状を形成するように、特別に構成されてもよい。
【0033】
コア28を形成後、プロセスは、上述の耐熱性材料層30として作用する第1の塗膜/層を形成する(ステップ502)。とりわけ、第1の塗膜30は、炭化ケイ素、タングステン、または炭化ケイ素およびタングステンの組み合わせを含んでもよい。加えて、本第1の層は、従来の(かつ、多くの場合、複雑な)CVD塗膜プロセス等のいくつかの従来の方法で形成されてもよい。
【0034】
CVDプロセスの複雑な機械類および危険な化学物質の使用を回避するために、例証的実施形態は、耐熱性材料をコア/基板28上に直接押し出す。これは、とりわけ、引抜成形プロセス、または後に焼成されるポリマー成分とともに、耐熱性材料両方のスピニング加工を伴ってもよい。プロセスは、炭素、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミニウム、ムライト、二酸化ケイ素、BN粒子、またはポリマー接着剤と混合され、押出/引抜成形によって結合される繊維のうちの少なくとも1つの成分を使用してもよい。また、これは、少なくとも1つの炭化ケイ素、炭素、シリコン、ならびに酸素、ムライト、炭素、および/または炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを伴う被覆とのコア28の複合押出を伴ってもよい。故に、上述のように、コア28は、耐熱性材料層30を支持するための基板として効果的に作用する。
【0035】
したがって、本ステップは、基礎ストリング部分26とみなされるものを形成する。基礎ストリング部分26は、種々の材料のいずれかの1つ以上から形成されてもよいことをあらためて表明する。そのような材料は、黒鉛繊維または束、タングステンまたは炭化ケイ素等の耐熱性材料、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。実際、いくつかの実施形態は、コア28を伴わない基礎ストリング部分26を形成してもよい。
【0036】
プロセスの本時点では、基礎ストリング部分26は、好ましくは、リボン材料の熱膨張係数とほぼ調和する、結合熱膨張係数を有する。具体的には、ストリング12の熱膨張特性は、過剰な応力が界面において発生しないように、リボン材料と十分に調和すべきである。応力は、ストリング12が、合理的その後のリボン結晶の処理および加工ステップの際にリボンから分離する傾向を呈する場合、あるいはストリング12が、リボン結晶縁から外側または内側に屈曲する傾向を呈する場合、過剰であるとみなされる。しかしながら、他の実施形態では、基礎ストリング部分26の熱膨張係数は、リボン材料のものとほぼ調和しない。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、用途に応じて、1つ以上の付加的層を有してもよい。例えば、代理人整理番号第3253/172号を有する上述の組み込まれた特許出願で詳述されるように、ストリング12は、リボン材料の粒子サイズを増加させるために、非湿潤/低湿潤層32を有してもよい。その場合、プロセスは、504に進み、基礎ストリング部分26上に露出非湿潤/低湿潤層32を形成する。熱膨張係数差に敏感な用途では、本層32は、好ましくは、ストリング全体の熱膨張係数に僅かな影響を及ぼすように、非常に薄い。例えば、低湿潤層32は、耐熱性材料層30よりもはるかに薄くあるべきである。
【0038】
本非湿潤層32を使用する実施形態では、その外表面のリボン材料との接触角は、溶融リボン材料を接着させるために、慎重に制御されるべきである。そうでなければ、プロセスは、リボン結晶10を形成不可能である。溶融ポリシリコンを使用する用途では、例えば、約15〜120度のシリコンとの接触角が、満足のゆく結果をもたらすはずであると予測される。25度を超えるそのような角度は、より優れた結果をもたらす場合がある。
【0039】
とりわけ、非湿潤層32は、CVDプロセス、浸漬塗膜、または他の方法によって形成されてもよい。例えば、基礎ストリング部分26は、通過の際、蒸着チャンバ内で電気接触を適用する、したがって、基礎ストリング部分26自体を加熱することによって、CVD塗膜されてもよい。代替として、基礎ストリング部分26は、チャンバを通して誘導加熱することによって、加熱されてもよい。
【0040】
本ステップを実装するための関連技術は、以下を含む。
【0041】
CVD炉の最後の時点または巻取の際の、シリカあるいはアルミナ酸化物、もしくは酸炭化ケイ素のゾルゲル浸漬
外側から石英を加熱し、基礎ストリング部分26を誘導加熱することによって蒸着される、CVD非湿潤塗膜
その後焼除されるであろうポリマー接着剤による、噴霧蒸着
基礎ストリング部分26または束上に粒子を振盪し、次いで、基礎ストリング部分26または束に焼き付ける
耐熱性スラリー(例えば、炭化ケイ素/二酸化ケイ素)または液体によって、基礎ストリング部分26を塗膜し、次いで、残渣を焼き払う
また、ストリング12は、耐熱性材料層30の半径方向外側に処理層34を有し、基礎ストリング部分26の完全性を維持してもよい。それを受けて、含まれる場合、処理層34は、基礎ストリング部分26に僅かな圧縮応力をもたらし、したがって、ストリング12全体の頑健性を改善する。故に、基礎ストリング部分26に亀裂が生じる場合、処理層34の圧縮応力は、ストリング12が破損する可能性を低減させるはずである。とりわけ、処理層34は、炭素の薄層であってもよい(例えば、ほぼ周知のサイズを有するストリング12に対して1または2ミクロン厚)。
【0042】
故に、ステップ504を行なう前に、いくつかの実施形態は、生成された非湿潤層32と別個の処理層34を形成してもよい(例えば、図4Bのストリング2参照)。したがって、そのような実施形態では、非湿潤層32は、処理層34を実質的に被覆する。より具体的には、非湿潤層32は、処理層34の外側円周正面を被覆する。しかしながら、いくつかの実施形態、処理層34内に非湿潤層32を統合してもよい。
【0043】
次いで、ステップ506では、塗膜されたストリング12が、非湿潤層32を通して延在するフィラメント(そのようなフィラメントは、本明細書では、「髭状物」と称される)を有するかどうか判断される。これは、例えば、フィラメントの牽引が、コア28を形成する場合に生じ得る。塗膜されたストリング12が、髭状物を有する場合、プロセスは、ステップ508において、それらを削り取る。次いで、プロセスは、ステップ504に戻り、非湿潤層32を再適用してもよい。
【0044】
代替として、ストリング12が、髭状物を有さない場合、プロセスは、ステップ510に進み、図2に示されるように、炉14にストリング12を提供する。これを受けて、いくつかの実施形態は、各リボン結晶縁に対して単一ストリング12、または各リボン結晶縁に対して複数のストリング12を提供する(例えば、図6Bのストリング6および7)。用語「ストリング」は、それとは反対に明示的に修正されない限り(例えば、「単一」または「複数」によって)、リボン結晶10の境界/幅の形成を参照して言及される場合、概して、1つ以上のストリングを意味する。
【0045】
ストリング12を形成するための上述の方法を使用せずに、いくつかの実施形態は、凹面を円唇または別様にほぼ凸面ストリング12に機械加工あるいは穿孔する。故に、ストリング12は、他の方法によって形成されてもよい。
【0046】
例証的実施形態は、リボン結晶首部分36の厚さを増加させるように、炉14内にストリング12を配向する。例えば、図6A−6Cは、細長、ほぼ楕円、およびほぼ凸面断面形状を有するストリング12を伴う、3つのリボン結晶10の断面図を概略的に示す。首部分36の厚さを増加させるために、これらの実施形態は、それらのそれぞれのリボン結晶10の幅の寸法に伴って逸脱するように、それらのそれぞれのほぼ縦軸42を配向する。言い換えると、逸脱させるために、縦軸42は、幅の寸法と平行ではなく、代わりに、縦軸42および幅の寸法は、交差する。
【0047】
より具体的には、各ストリング12の断面は、それぞれ、図6A−6Cにおいて、両側矢印として示される最大寸法を有する。したがって、参照目的のために、これらの細長断面形状のそれぞれの縦軸42は、最大寸法と共線的であるとみなされる。本発明者に周知の先行技術は、本縦軸42をリボン結晶10の幅の寸法とほぼ平行に配向する。しかしながら、当技術分野における本明示的教示とは対照的に、本発明者は、リボン結晶幅の寸法に伴って逸脱するように縦軸42を配向することによって、首サイズを増加させるはずであることを発見した。
【0048】
例えば、図6Aは、縦軸42を幅の寸法に実質的に垂直に配向する一方、図6Cは、幅の寸法と低角を形成するように縦軸42を配向する。図6Bは、図6Aおよび6Cの極端性間に縦軸42を配向する。いずれの実施形態も、上述の従来の技術と比較して、首部分36のサイズを増加させるはずである。結果として、本首部サイズの増加は、破損を低減させ、したがって、収率を向上させるはずである。
【0049】
また、図6A−6Cに示されるもの以外の配向も、十分な結果をもたらすはずであることに留意されたい。例えば、図6Bに示される角度から約90度(時計回りまたは反時計回り)回転されるように縦軸42を配向することもまた、首部サイズを増加させるはずである。
【0050】
ストリング12が炉14を通過すると、溶融リボン材料(各リボン結晶10の)は、メニスカスを形成する。また、試験の際、本発明者は、メニスカスの高さを上昇させることによって、首部分36の厚さをほぼ増加させることを発見した。これを受けて、本発明者は、断面ストリング形状の主曲率半径が、ある所定の特性を有するはずであることを認めた。
【0051】
より具体的には、気体と溶融材料との間の静的界面全体にわたる圧力差は、以下のように規定されるYoung−Laplaceの式によって定義される。
【0052】
【数1】

式中、
は、溶融材料の圧力
IIは、気体の圧力
r1およびr2は、メニスカスの主曲率半径
σ(ロー)は、表面張力
本発明者は、溶融材料が気体の圧力未満である場合、メニスカス高が増加するはずであると判断した。これを達成するために、本発明者は、メニスカスの主曲率半径は、それらが正である場合(すなわち、断面形状がほぼ凹面である場合)小さいはずであると判断した。反対に、第2の曲率半径r2が負である場合(その場合、断面形状がほぼ凸面である)、第2の曲率半径r2は、大きいはずである。
【0053】
早期試験では、少なくとも予め、これらの結果を確認している。さらに、そのような試験は、付加的な驚くべき結果をもたらした。具体的には、本発明者は、リボン結晶10の単一縁のために2つの個々のストリング12を溶融材料に通過させることによって、メニスカス上昇現象に気付いた。図7Aおよび7Bは、本技術を使用して形成されるリボン結晶10を概略的に示す。
【0054】
また、本発明者は、各縁のための個々のストリング12が分離される際、別の驚くべき結果に気付いた(図7B)。特に、ある試験では、単一縁を形成する2つの個々のストリング12は、約700ミクロン分離された。また、首部分36の厚化に加えて、本縁の精密検査は、その領域近傍により大きな粒子が存在することを示し、その結果は、完全に予想外のものであった(これらの個々のストリング12は、上述の非湿潤層32を有していなかった)。したがって、本発明者は、そのような技術および関連技術もまた、リボン結晶10の電気効率を向上させるはずであると考える。
【0055】
図8Aおよび8Bは、ほぼ凹面断面形状を有するストリング12を伴う、2つのリボン結晶10を概略的に示す。示されるように、ストリング12は、それらの凹面が、ウエハ幅(すなわち、X方向)に完全に向かって、または完全に離れて配向されるように配向される。特に、凹面は、ほぼ対称に配向され、例えば、凹面は、X軸上下に鏡像を形成する。本発明者は、適切な結晶成長を促進するように、メニスカスを成形するであろうと考えるため、本配向は、好ましい。しかしながら、これらの配向からの大幅な回転(時計回りまたは反時計回り)は、メニスカス形状に影響を及ぼし、適切な結晶成長を妨害する場合がある。当業者は、複数の凹面または断面形状(例えば、十字形状)の対向面上に凹面を有するストリング12に本概念を適用することが可能である。
【0056】
本時点で、成長される各リボン結晶10に対して、プロセスは、2つのストリング12(ともに、最終リボン結晶幅を形成する)を炉14およびるつぼ18に通過させ、したがって、ストリングリボン結晶10を形成する(ステップ512)。
【0057】
故に、本発明の例証的実施形態は、特殊構成ストリング12をリボン結晶10内に配向し、首部厚を増加させる。代替として、または加えて、特殊構成ストリング12は、炉14内のメニスカスの高さを上昇させ、首部厚をさらに増加させる。例えば、複数の個々のストリングから形成される末端ストリング12は、末端ストリング12の間のメニスカス部分に加え、各個々のストリングの間のメニスカス部分を隆起させ得る。したがって、これらの技術を使用して成長されるリボン結晶10は、破損しにくく、故に、したがって、収率を改善するはずである。
【0058】
上述の議論は、本発明の種々の例示的実施形態を開示するが、当業者が、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明の利点のうちのいくつかを達成するであろう種々の修正を成すことが可能であることは明白であるはずである。例えば、いくつかの実施形態は、2つを超える末端ストリング12を使用して、単一リボン結晶10を形成してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボン結晶であって、
本体と、
該本体内の末端ストリングであって、少なくとも1つの末端ストリングが、ほぼ凹面断面形状を有し、少なくとも2つの個々のストリングから形成される、末端ストリングと
を備える、リボン結晶。
【請求項2】
前記本体は、厚さの寸法を有し、前記少なくとも2つの個々のストリングは、概して、該本体の厚さの寸法に沿って離間され、該少なくとも2つの個々のストリングは、ほぼ細長い凹面断面形状を形成する、請求項1に記載のリボン結晶。
【請求項3】
前記少なくとも2つの個々のストリングの間に、本体材料をさらに備える、請求項2に記載のリボン結晶。
【請求項4】
前記少なくとも2つの個々のストリングは、物理的に接触する、請求項1に記載のリボン結晶。
【請求項5】
リボン結晶であって、
本体と、
該本体内の複数の末端ストリングであって、少なくとも1つの末端ストリングは、一対の離間した個々のストリングを備える、末端ストリングと、
該一対の個々のストリングの間の本体材料と
を備える、リボン結晶。
【請求項6】
前記本体材料は、シリコンを備える、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項7】
前記少なくとも1つの末端ストリングは、ほぼ凹面の断面形状を有する、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項8】
前記個々のストリングはそれぞれ、ほぼ細長い断面形状を形成する、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項9】
前記本体は、幅の寸法を形成し、前記個々のストリングのうちの少なくとも1つは、該幅の寸法に関してほぼ対称である凹面を有する、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項10】
少なくとも2つの末端ストリングはそれぞれ、一対の離間した個々のストリングを有し、本体材料は、前記前記2つの末端ストリングの個々のストリングの間にある、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項11】
前記本体は、厚さの寸法を有し、前記少なくとも1つの末端ストリングの個々のストリングは、概して、該本体の厚さの寸法に沿って離間される、請求項5に記載のリボン結晶。
【請求項12】
リボン結晶を形成する方法であって、
複数の末端ストリングを提供することであって、該末端ストリングのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの離間された個々のストリングを備える、ことと、
るつぼに溶融材料を添加することと、
該末端ストリングを該溶融材料に通過させ、該溶融材料を界面の上方で冷凍させ、冷凍材料のシートを形成することであって、該少なくとも1つの末端ストリングは、該界面の上方のその個々のストリングの間に冷凍溶融材料を有する、ことと
を含む、方法。
【請求項13】
前記溶融材料は、シリコンを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記個々のストリングはそれぞれ、ほぼ細長い断面形状を形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの末端ストリングはそれぞれ、複数の離間された個々のストリングを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つの末端ストリングはそれぞれ、前記界面の上方のそのそれぞれの個々のストリングの間に冷凍溶融材料を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シートは、厚さの寸法を有し、前記少なくとも1つの末端ストリングの個々のストリングは、概して、該本体の厚さの寸法に沿って離間される、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−505824(P2012−505824A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532226(P2011−532226)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060730
【国際公開番号】WO2010/045399
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(500031674)エバーグリーン ソーラー, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】