説明

複眼カメラ及び撮影方法

【課題】 複眼カメラにおいて、撮像素子及び表示手段を有効利用すると共に利便性を向上させる。
【解決手段】 複眼カメラ1は、カメラ本体10上に設けられた、それぞれ撮像光学系及び横長の撮像素子1c、1dを有し、水平方向に離れた異なる視点から被写体を撮像する2つの撮像部1A、1Bと、2つの撮像部1A、1Bを、共通の軸Dを中心として略90度公転させる公転機構と、公転機構による公転に応じて、2つの撮像部1A、1Bの少なくとも撮像素子1c、1dを各々の撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ略90度自転させる自転機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の光学系を有する複眼カメラに関し、特に横撮影と縦撮影とが可能な複眼カメラ及び該複眼カメラを使用する撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば左右2つの撮像部によって被写体を撮像し、撮像により取得した視差画像から立体画像を生成する複眼カメラの開発が進められている。このような複眼カメラでは、一般的に一対の撮像素子が、それぞれ長手方向を水平にした、いわゆる横長の状態で、カメラ本体上に水平方向に離れて配置されているため、例えば人物写真等の撮影を行いたい場合に、カメラ本体の向きを略90度回転させ、撮像素子を縦長の状態つまり撮影視野を縦長にした、いわゆる縦撮影を行うと、一対の撮像素子が鉛直方向に離れて配置されてしまうので視差画像において視差の方向が鉛直方向となってしまい立体画像を生成することが困難であった。
【0003】
しかし立体画像を生成するために、カメラ本体の向きを回転させず、一対の撮像素子が水平方向に離れて配置されたまま、撮影視野が横長である、いわゆる横撮影を行うと、人物は例えば撮影視野の両側をあけて中央付近に位置してしまうため、撮像素子は一部分しか使用されずに、撮像素子の利用効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0004】
そこで特許文献1に、撮影レンズ及び撮像素子を含む一対の光学系を、各々の光軸を中心として略90度回転させて、各々の撮像素子を横長の状態から縦長の状態に位置させることにより、カメラ本体の向きを変えることなく縦撮影を行うことができる複眼カメラ装置が提案されている。
【特許文献1】特開平10−224820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の複眼カメラ装置では、一対の光学系がカメラ本体から突出するように構成されており、さらに一対の光学系をそれぞれ別々に回転させる必要があるため、撮影の際にユーザがカメラ本体をしっかりと保持できなかったり、使い勝手が悪かったりする虞があった。
【0006】
また上記複眼カメラ装置では、カメラ本体の向きを変えずに一対の光学系を回転させて縦撮影を行うため、撮影により得られた画像を液晶モニタに表示するときには液晶モニタを略90度回転させる必要があった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、撮像素子を有効利用すると共に利便性の良い複眼カメラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複眼カメラは、カメラ本体上に設けられた、それぞれ撮像光学系及び横長の撮像素子を有し、水平方向に離れた異なる視点から被写体を撮像する2つの撮像部と、
該2つの撮像部を、共通の軸を中心として略90度公転させる公転機構と、
該公転機構による前記公転に応じて、前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を各々の前記撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ略90度自転させる自転機構とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
ここで「横長の撮像素子」とは、縦横比の異なる撮像素子をいう。
【0010】
本発明の複眼カメラにおいては、前記カメラ本体の背面に、前記撮像部により撮像された被写体画像を表示する横長の表示手段を備えていてもよい。
【0011】
ここで「横長の表示手段」とは、縦横比の異なる表示手段をいう。
【0012】
本発明の複眼カメラにおいては、前記カメラ本体の上面に横撮影用の撮影指示手段を備え、
前記2つの撮像部が前記公転機構により略90度前記公転したときにのみ操作可能な縦撮影用の撮影指示手段を、前記カメラ本体の少なくとも一方の側面側から操作可能な位置に備えていてもよい。
【0013】
この場合、前記縦撮影用の撮影指示手段が、前記公転に応じて前記カメラ本体上に出現するものであってもよい。
【0014】
また本発明の撮影方法は、カメラ本体上に設けられた、それぞれ撮像光学系及び横長の撮像素子を有し、水平方向に離れた異なる視点から被写体を撮像する2つの撮像部と、
該2つの撮像部を、共通の軸を中心として公転させる公転機構と、
該公転機構による前記公転に応じて、前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を各々の前記撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ自転させる自転機構とを備えてなる複眼カメラを使用する撮影方法であって、
前記2つの撮像部を前記公転機構により略90度前記公転させると共に前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を前記自転機構により略90度前記自転させた後に撮影することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複眼カメラ及び撮影方法によれば、公転機構によりカメラ本体上に設けられた2つの撮像部を共通の軸を中心として略90度公転させると、この公転に応じて自転機構が2つの撮像部の少なくとも撮像素子を各々の撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ略90度自転させることができるので、2つの撮像部を公転によって水平方向に離れて配置された位置から鉛直方向に離れて配置された位置に移動させると共に、2つの撮像素子を自転によって長手方向を水平にした横長の位置から長手方向を鉛直にした縦長の位置へ移動させることができる。
【0016】
これにより例えば人物写真の撮影を行う場合等、撮影視野が縦長になるようにした、いわゆる縦撮影を行いたい場合に、2つの撮像部を公転及び自転させた後でカメラ本体を略90度回転させて被写体を撮影すれば、カメラ本体を略90度回転させた状態では、2つの撮像部がそれぞれ水平方向に離れて配置され、かつ撮像素子が縦長に配置されるので、2つの撮像部によってそれぞれ撮影された視差画像は、視差の方向が水平方向となることにより立体画像が生成可能になり、さらに視差画像は撮影視野が縦長の状態で撮影された画像となるので撮像素子の利用効率を向上させることができる。
【0017】
また複眼カメラが、カメラ本体の背面に、撮像部により撮像された被写体画像を表示する横長の表示手段を備えている場合には、縦撮影を行うときに、表示手段もカメラ本体の回転と共に略90度回転することにより縦長の状態となり、2つの撮像部によって縦撮影された縦長の視差画像を表示手段に表示させるときに、表示画面をそのまま利用して画像を確認することができるので利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかる第一の実施形態の複眼カメラ1について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は複眼カメラ1の正面斜視図、図1(b)は複眼カメラ1の背面斜視図、図2は複眼カメラ1の内部機構を示す斜視図、図3は複眼カメラ1の内部機構の動作を説明する図、図4は複眼カメラ1の縦撮影時の状態を示す図である。なお本実施形態の複眼カメラ1においては便宜上、シャッタボタン11が配設されている側を上方とし、液晶モニタ12が配設されている面を背面として以下説明する。
【0019】
本実施形態の複眼カメラ1は、図1(a)に示す如く、カメラ本体10上の上面には撮影を指示するシャッタボタン11が設けられ、カメラ本体10の正面には水平方向に離れた視点から被写体を撮像するために水平方向に離れて配置された一対の撮像部1A、1Bが設けられている。
【0020】
また図1(b)に示す如く、カメラ本体10の背面には、略中央に撮像部1A、1Bにより撮像された画像を表示する液晶モニタ12が長手方向を水平にして配設され、液晶モニタ12の右側近傍にはズームボタンや各種設定ボタン等の操作ボタン13が配設されている。
【0021】
一対の撮像部1A、1Bは、図2に示す如く、それぞれ撮影レンズ1a、1bを含む撮像光学系と、それぞれの撮像光学系の後方に配設され撮像光学系を通過した被写体像光を光電面に結像して光電変換する撮像素子1c、1dとを備えている。撮像素子1c、1dは縦横比の異なる略長方形でありそれぞれ長手方向を水平にして固定板1c’、1d’を介して後述のレンズ歯車3A、3Bに固定されている。
【0022】
撮影レンズ1a、1bは、それぞれ円筒状の鏡筒1a’、1b’に固定され、この鏡筒1a’、1b’はそれぞれ固定板1c’、1d’を介して後述のレンズ歯車3A、3Bに固定されている。
【0023】
またカメラ本体10正面の略中央には、図2に示す如く、円形状の孔10aが設けられており、この孔10aの略中央部には固定歯車2が、固定歯車2の対向する外周面からそれぞれ略直線上に延びる保持部2aを介して孔10aの内面に固定されている。
固定歯車2の後方には、固定歯車2の略中央の軸Dを中心にして回転可能にされた共通歯車4が設けられていて、この共通歯車4の歯が、モータ部6のモータ6bに接続されたモータギア6aの歯と噛み合うように配置され、モータ6bを回転させることにより共通歯車4が回転するようになっている。
【0024】
レンズ歯車3A、3Bは、各々に固定された撮像レンズ1a、abの光軸C1、C2を中心として回転可能に、それぞれ共通歯車4に設けられた図示しない軸部に固定されている。またレンズ歯車3A、3Bと固定歯車2との間には、共通歯車4にさらに別に設けられた図示しない軸部に回転可能に固定されたアイドルギア5A、5Bがそれぞれ設けられており、このアイドルギア5A、5Bの歯はそれぞれ固定歯車2とレンズ歯車3A、3Bの歯と噛み合うように構成されている。このとき固定歯車2とレンズ歯車3A、3Bはピッチ円の等しい略同一仕様の歯車とする。
【0025】
なお固定歯車2と共通歯車4は、固定歯車2の背面側に突設された軸部を共通歯車4の中央に設けられた孔に挿通させることにより軸Dを中心に回転可能にされている。また共通歯車4とレンズ歯車3A、3B、及び共通歯車4とアイドルギア5A、5Bも上記と同様にして回転可能にされている。
【0026】
次に上記のように構成された複眼カメラ1の動作を説明する。先ず図3(a)に示す如く、撮像素子1c、1dが長手方向を水平にした横長の状態で、且つ撮像部1A、1Bが水平方向に離れて配置された状態において、モータ6bを作動させることによりモータギア6aを回転させて、共通歯車4を固定歯車2の軸Dを中心に時計回りに45度回転させる(図2参照)。
【0027】
すると図3(b)に示す如く、共通歯車4の軸部(図示せず)に回転可能に固定されたレンズ歯車3A、3Bとアイドルギア5A、5B、すなわちレンズ歯車3A、3Bに固定された撮像部1A、1Bとアイドルギア5A、5Bは共通歯車4と共に時計回りに45度回転する。このときアイドルギア5A、5Bの歯と固定歯車2の歯とが噛み合っているので、アイドルギア5A、5Bが共通歯車4の回転方向と同じ方向つまり時計回りに回転すると共に、アイドルギア5A、5Bの歯と噛み合っているレンズ歯車3A、3Bもアイドルギア5A、5Bすなわち共通歯車4の回転方向と逆方向つまり反時計回りに回転する。
【0028】
このときレンズ歯車3A、3Bは、アイドルギア5A、5Bを介してそれぞれ固定歯車2と噛み合っていることになるため、固定歯車2の軸Dを中心にして回転している共通歯車4の回転角度と同じ45度半時計回りに回転することになる。従ってレンズ歯車3A、3Bの回転に伴って撮像部1A、1Bも45度半時計回りに回転するので、図3(b)に示す如く、撮像素子1c、1dは、長手方向を水平にした横長の状態を維持する。
【0029】
そして上記と同様にして、共通歯車4をさらに時計回りに45度回転させると、レンズ歯車3A、3Bが反時計回りに45度回転するので、図3(c)に示す如く、撮像部1A、1Bも45度さらに反時計回りに回転することになり、一対の撮像素子1c、1dはそれぞれ長手方向を水平にした横長の状態のまま鉛直方向に離れて配置される。
【0030】
このように動作する複眼カメラ1においては、固定歯車2の軸部、共通歯車4及びモータ部6が、固定歯車2の軸Dを中心として撮像部1A、1Bを略90度回転すなわち公転させる公転機構として機能し、固定歯車2(軸部を含む)、レンズ歯車3A、3B、共通歯車4(軸部を含む)、アイドルギア5A、5B及びモータ部6が、上記公転機構による公転に応じて、撮像撮像部1A、1Bを各々の撮影レンズ1a、1bを含む撮像光学系の光軸C1、C2を中心として略90度回転すなわち自転させる自転機構として機能する。
【0031】
上記のように構成された複眼カメラ1であれば、例えば人物写真の撮影を行う場合等、撮影視野が縦長になるようにした、いわゆる縦撮影を行いたい場合に、図3(c)に示す状態で、複眼カメラ1のカメラ本体10を例えば反時計回りに90度回転させて被写体を撮影すれば、カメラ本体10が90度回転した状態では、図4に示す如く、撮像部1A、1Bがそれぞれ水平方向に離れて並んで配置され、かつ撮像素子1c、1dが長手方向を鉛直にした縦長に配置されるので、撮像部1A、1Bによってそれぞれ撮影された視差画像は、視差の方向が水平方向となることにより立体画像が生成可能になり、さらに視差画像は撮影視野が縦長の状態で撮影された画像なので撮像素子の利用効率を向上させることができる。
【0032】
また撮像部1A、1Bは、カメラ本体10上においてユーザが保持する可能性が低い正面側に設けられているので、ユーザはカメラ本体10をしっかりと保持することができる。
【0033】
また撮像部1A、1Bによって撮影された縦長の視差画像を液晶モニタ12に表示させたときに、液晶モニタ12もカメラ本体10の回転と共に90度回転しているので、図4に示す複眼カメラ1の縦位置では液晶モニタ12も縦長に位置していることになり、液晶モニタ12の画面をそのまま利用して撮影画面を確認することができるので利便性がよい。
【0034】
なお本実施形態の複眼カメラ1では、自転機構による自転時に撮像素子1c、1dを含む撮像部1A、1B全体を自転させるものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば鏡筒1a’、1b’をレンズ歯車3A、3Bの回転に影響されないように共通歯車4に固定させて、撮像素子1c、1dのみを自転させるようにしてもよい。
【0035】
また本実施形態の複眼カメラ1では、公転機構による公転の回転中心を固定歯車2の軸Dつまり一対の撮像部1A、1Bを結んだ線上としたが、本発明はこれに限られるものではなく、各撮像部1A、1Bに共通な軸であればいずれに設定してもよい。ここで図5に第二の実施形態の複眼カメラ1−2の内部機構を示す斜視図を示し、以下図面を参照して詳細に説明する。なお本実施形態において上記実施形態の複眼カメラ1と同様の箇所は、便宜上、同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の複眼カメラ1−2は、図5に示す如く、アイドルギア5を1つのみ設けたものであり、固定歯車2はアイドルギア5の移動範囲を確保するために外周面の一方向のみに延びる保持部2aを介して孔10aの内面に固定されている。そしてレンズ歯車3A、3Bは、この1つのアイドルギア5とそれぞれ噛み合うように配設されている。
【0037】
上記のように構成された複眼カメラ1−2によれば、モータ部6によって共通歯車4を固定歯車2の軸Dを中心として時計回りに回転させると、この回転に伴って共通歯車4に固定されたアイドルギア5とレンズ歯車3A、3Bも軸Dを中心にして回転すなわち公転する。
【0038】
このときアイドルギア5と固定歯車2の歯が噛み合っているのでアイドルギア5は共通歯車4と同方向つまり時計回りに回転し、アイドルギア5bの歯と噛み合っているレンズ歯車3A、3Bは各々の撮像光学系の光軸C1、C2を中心にしてアイドルギア5の回転方向と逆方向つまり反時計回りに、共通歯車4の回転角度と同じ角度回転する。
【0039】
これにより上記実施形態の複眼カメラ1と同様に、縦撮影を行いたい場合に、複眼カメラ1−2のカメラ本体10を例えば反時計回りに90度回転させて被写体を撮影すれば、カメラ本体10が90度回転した状態では、撮像部1A、1Bがそれぞれ水平方向に離れて並んで配置され、かつ撮像素子1c、1dが長手方向を鉛直にした縦長に配置されるので、撮像部1A、1Bによってそれぞれ撮影された視差画像は、視差の方向が水平方向となることにより立体画像が生成可能になり、さらに視差画像は撮影視野が縦長の状態で撮影された画像なので撮像素子の利用効率を向上させることができる。
【0040】
また撮像部1A、1Bは、カメラ本体10上においてユーザが保持する可能性が低い正面側に設けられているので、ユーザはカメラ本体10をしっかりと保持することができる。
【0041】
また撮像部1A、1Bによって撮影された縦長の視差画像を液晶モニタ12に表示させたときに、液晶モニタ12もカメラ本体10の回転と共に90度回転しているので、複眼カメラ1−2の縦位置では液晶モニタ12も縦長に位置していることになり、液晶モニタ12の画面をそのまま利用して撮影画面を確認することができるので利便性がよい。
【0042】
次に第三の実施形態の複眼カメラ1−3について図面を参照して詳細に説明する。図6は第三の実施形態の複眼カメラ1−3の内部機構を示す斜視図である。なお本実施形態において上記実施形態の複眼カメラ1と同様の箇所は、便宜上、同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0043】
本実施形態の複眼カメラ1−3は、歯車等の機構を仕様せずにユーザが手動によって共通歯車4と撮像部1A、1Bを回転可能に構成されている。本実施形態の共通歯車4’及びレンズ歯車3A’、3B’の外周面には歯が設けられておらず、共通歯車4’は、カメラ本体10に対して撮像部1Aと撮像部1Bとが水平方向に並んで配置される位置と、鉛直方向に並んで配置される位置とでそれぞれカメラ本体10に係止可能なように、例えば図示しない鈎状等の係止部が設けられている。
【0044】
またレンズ歯車3A’、3B’にも、縦横比が異なる撮像素子1c、1dがカメラ本体10に対して長手方向を水平にした位置と、長手方向を鉛直にした位置とでそれぞれ共通歯車4’に係止可能なように、例えば図示しない鈎状等の係止部が設けられている。
【0045】
これにより縦撮影を行いたい場合には、ユーザが手動によって共通歯車4’及びレンズ歯車3A’、3B’をそれぞれ時計回り又は反時計回りに90度回転させ、さらに複眼カメラ1−3のカメラ本体10を例えば反時計回りに90度回転させてから被写体を撮影することにより、上述した実施形態の複眼カメラ1、1−2と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお本実施形態の複眼カメラ1−3は、共通歯車4’及びレンズ歯車3A’、3B’のそれぞれを手動によって回転可能としたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば共通歯車4’の外周面に歯を設けて、共通歯車4’のみを上述した実施形態と同様にモータ部6によって回転させるようにしてもよい。
【0047】
次に第四の実施形態の複眼カメラ1−4について図面を参照して詳細に説明する。図7は本実施形態の複眼カメラ1−4の正面斜視図、図8は複眼カメラ1−4の内部機構を示す斜視図であり(a)は横撮影時の状態を示す図(b)は縦撮影時の状態を示す図である。なお本実施形態において上記実施形態の複眼カメラ1と同様の箇所は、便宜上、同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0048】
本実施形態の複眼カメラ1−4は、図7に示す如く、カメラ本体10の正面には水平方向に離れて配置され水平方向に離れた視点から被写体を撮像する一対の撮像部1A’、1B’が設けられている。本実施形態の撮像部1A’、1B’は、図8(a)に示す如く、カメラ本体10の正面側から入射した被写体像光をカメラ本体10の下方側に曲げ後述する撮像素子1c、1dにそれぞれ導く屈曲型レンズ1a−4、1b−4を備えている。屈曲型レンズ1a−4、1b−4は、それぞれ鏡筒を介して共通歯車4に固定されている。
【0049】
撮像素子1c、1dは、長手方向をカメラ本体10の正面と平行にして結像面が水平になるように配置されており、各々の撮像素子1c、1dの略中心を通り、共通歯車4の略中央の軸Dと略鉛直に交わる光軸C1’、C2’を中心に回転可能にされた撮像素子歯車1e、1fにそれぞれ固定されている。この撮像素子歯車1e、1fの歯は、カメラ本体10内に搭載された第二のモータ部7のモータ7bに接続されたモータギア7aの歯と噛み合うように配置されていて、第二のモータ7bを回転させることにより撮像素子歯車1e、1fが共に回転する。
【0050】
次に上記のように構成された複眼カメラ1−4の動作について説明する。図8(a)に示す如く、屈曲型レンズ1a−4、1b−4が水平方向に離れて配置されると共に撮像素子1c、1dが長手方向をカメラ本体10の正面と平行にして結像面が水平になるように配置された状態つまり横撮影用の状態で、モータ部6及び第二のモータ部7のモータ6b、7bを共に作動させることによりモータギア6a、7aを共に回転させ、共通歯車4を軸Dを中心として時計回りに90度回転させると共に撮像素子歯車1e、1fを光軸C1’、C2’を中心として時計回りに90度回転させる。
【0051】
すると図8(b)に示す如く、共通歯車4の回転により、屈曲型レンズ1a−4、1b−4が鉛直方向に離れて配置されると共に撮像素子1c、1dの結像面が鉛直になり、撮像素子歯車1e、1fの回転により、撮像素子1c、1dが短手方向をカメラ本体10の正面と平行にした状態になる。このときモータ部6と第二のモータ部7とを同時制御することにより、共通歯車4の回転に応じて、撮像素子歯車1e、1fを回転させることができる。
【0052】
このように構成された複眼カメラ1−4であれば、例えば人物の全体像を撮影する場合等、撮影視野が縦長になるようにした、いわゆる縦撮影を行いたい場合に、図8(b)に示す状態で、複眼カメラ1−4のカメラ本体10を例えば反時計回りに90度回転させて被写体を撮影すれば、カメラ本体10が90度回転した状態では、屈曲型レンズ1a−4、1b−4がそれぞれ水平方向に離れて並んで配置されると共に、撮像素子1c、1dは端手方向をカメラの正面と平行にして結像面を水平にした縦長の状態となる。
【0053】
これにより撮像部1A’、1B’によってそれぞれ撮影された視差画像は、視差の方向が水平方向となるので立体画像が生成可能になり、さらに視差画像は撮影視野が縦長の状態で撮影された画像なので撮像素子の利用効率を向上させることができる。また撮像部1A’、1B’は、カメラ本体10上においてユーザが保持する可能性が低い正面側に設けられているので、ユーザはカメラ本体10をしっかりと保持することができる。
【0054】
また撮像部1A’、1B’によって撮影された縦長の視差画像を液晶モニタ12に表示させたときに、液晶モニタ12もカメラ本体10の回転と共に90度回転しているので、複眼カメラ1−4の縦位置では液晶モニタ12も縦長に位置していることになり、液晶モニタ12の画面をそのまま利用して撮影画面を確認することができるので利便性がよい。
【0055】
なお本実施形態の複眼カメラ1−4においては、共通歯車4及びモータ部6が、軸Dを中心として撮像部1A’、1B’を略90度公転させる公転機構として機能し、第二のモータ部7及び撮像素子歯車1e、1fが、上記公転機構による公転に応じて、撮像素子1c、1dを光軸C1’、C2’を中心として略90度自転させる自転機構として機能する。
【0056】
次に第五の実施形態の複眼カメラ1−5について図面を参照して詳細に説明する。図9は本実施形態の複眼カメラ1−5の正面斜視図であり(a)は横撮影時の状態を示す図(b)は縦撮影時の状態を示す図、図10は縦撮影用のシャッタボタン8aが出現する機構を説明する図である。なお本実施形態において上記実施形態の複眼カメラ1と同様の箇所は、便宜上、同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。
【0057】
本実施形態の複眼カメラ1−5は、上述した第一の実施形態の複眼カメラ1にさらに縦撮影用のシャッタボタン(撮影指示手段)8aを備えたものであり、この縦撮影用のシャッタボタン8aは横撮影時には、図9(a)に示す如く、カメラ本体10の内部に収容されていて、縦撮影時には図9(b)に示す如く、カメラ本体10上に出現するように構成されている。
【0058】
縦撮影用のシャッタボタン8aは、図10に示す如く、略L字形状のシャッタボタンホルダ8の下側の一端部8bの側面側に配設されている。そして一端部8bから上方に延びる他端部8cの共通歯車4側内面にはホルダギア8c’が一体的に形成されていて、このホルダギア8c’は、カメラ本体10の軸(図示せず)に固定された減速歯車9を介して共通歯車4と噛み合い、共通歯車4の回転すなわち撮像部1A、1Bの公転に応じて、撮像部1A、1Bが90度公転して縦撮影用の位置になったときに、図9(b)に示す如く、縦撮影用のシャッタボタン8aがカメラ本体10から出現するように共通歯車4の回転よりも低速度で回転する。
【0059】
このとき図10に示す如く、撮像部1A、1Bを縦撮影用の位置すなわち鉛直方向に並べるべく共通歯車4が時計回りに回転すると、この回転に応じて、減速歯車9が反時計回りに回転すると共に、ホルダギア8c’が下方に向けて移動し、シャッタボタンホルダ8が、一端部8bの端部の軸Eを中心にして反時計回りに回転することにより、図9(b)に示す如く、シャッタボタン8aがカメラ本体10上に出現する。
【0060】
また撮像部1A、1Bを横撮影用の位置すなわち水平方向に並べるべく共通歯車4が反時計回りに回転すると、この回転に応じて、減速歯車9が時計回りに回転すると共に、ホルダギア8c’が上方に向けて移動し、シャッタボタンホルダ8が軸Eを中心に時計回りに回転することにより、図9(a)に示す如く、シャッタボタン8aがカメラ本体10の内部に収容される。
【0061】
一般的に複眼カメラによる撮影では、視差方向を正確に水平に保つ必要があるため、ユーザによるカメラ本体の保持が極めて重要である。従来の複眼カメラでは横撮影用のシャッタボタン11しか備えていなかったため、縦撮影時にユーザはシャッタボタン11に指を添えた状態でカメラ本体10をしっかりと保持し難かったが、縦撮影用のシャッタボタン8aを備えていることにより、縦撮影時つまりカメラ本体10を90度回転させて撮影を行う場合であってもユーザはシャッタボタン8aに指を添えた状態でカメラ本体10を横撮影時と同じようにカメラ本体10をしっかりと保持することができるので、縦撮影を容易に行うことができる。
【0062】
また本実施形態の複眼カメラ1−5のように縦撮影を行うときのみに縦撮影用のシャッタボタン8aが出現することにより、横撮影時にユーザがカメラ本体10を保持し難くすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)第一の実施形態の複眼カメラの正面斜視図(b)第一の実施形態の複眼カメラの背面斜視図
【図2】第一の実施形態の複眼カメラの内部機構を示す斜視図
【図3】第一の実施形態の複眼カメラの内部機構の動作を説明する図
【図4】第一の実施形態の複眼カメラの縦撮影時の状態を示す図
【図5】第二の実施形態の複眼カメラの内部機構を示す図
【図6】第三の実施形態の複眼カメラの内部機構を示す図
【図7】第四の実施形態の複眼カメラの正面斜視図
【図8】第四の実施形態の複眼カメラの内部機構の動作を説明する図
【図9】第五の実施形態の複眼カメラの正面斜視図(a)縦撮影用シャッタボタン収容時(b)縦撮影用シャッタボタン出現時
【図10】第五の実施形態の複眼カメラの内部機構の動作を説明する図
【符号の説明】
【0064】
1 複眼カメラ
1A、1B 撮像部
1a、1b 撮影レンズ(撮像光学系)
1c、1d 撮像素子
1e、1f 撮像素子歯車
10 カメラ本体
11 シャッタボタン(横撮影用の撮影指示手段)
12 液晶モニタ(表示手段)
13 操作ボタン
2 固定歯車
3A、3B レンズ歯車
4 共通歯車
5A、5B アイドルギア
6 モータ部
6a モータギア
6b モータ
7 第二のモータ部
7a モータ部
7b モータギア
8 シャッタボタンホルダ
8a 縦撮影用シャッタボタン
8b 一端部
8c 他端部
9 減速ギア
D 共通歯車の軸(共通の軸)
C1、C2 撮像部の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体上に設けられた、それぞれ撮像光学系及び横長の撮像素子を有し、水平方向に離れた異なる視点から被写体を撮像する2つの撮像部と、
該2つの撮像部を、共通の軸を中心として略90度公転させる公転機構と、
該公転機構による前記公転に応じて、前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を各々の前記撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ略90度自転させる自転機構とを備えてなることを特徴とする複眼カメラ。
【請求項2】
前記カメラ本体の背面に、前記撮像部により撮像された被写体画像を表示する横長の表示手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の複眼カメラ。
【請求項3】
前記カメラ本体の上面に横撮影用の撮影指示手段を備え、
前記2つの撮像部が前記公転機構により略90度前記公転したときにのみ操作可能な縦撮影用の撮影指示手段を、前記カメラ本体の少なくとも一方の側面側から操作可能な位置に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複眼カメラ。
【請求項4】
前記縦撮影用の撮影指示手段が、前記公転に応じて前記カメラ本体上に出現するものであることを特徴とする請求項3に記載の複眼カメラ。
【請求項5】
カメラ本体上に設けられた、それぞれ撮像光学系及び横長の撮像素子を有し、水平方向に離れた異なる視点から被写体を撮像する2つの撮像部と、
該2つの撮像部を、共通の軸を中心として公転させる公転機構と、
該公転機構による前記公転に応じて、前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を各々の前記撮像光学系の光軸を中心としてそれぞれ自転させる自転機構とを備えてなる複眼カメラを使用する撮影方法であって、
前記2つの撮像部を前記公転機構により略90度前記公転させると共に前記2つの撮像部の少なくとも前記撮像素子を前記自転機構により略90度前記自転させた後に撮影することを特徴とする撮影方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−177565(P2009−177565A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14600(P2008−14600)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】